JP7369433B2 - エキス抽出用のフィルター 並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
(1) ペーパーフィルターを簡易ドリッパーにセット、
(2) 抽出する人数分(杯数)に見合った量のコーヒー粉の投入、
(3) そして、このように準備した簡易ドリッパーを、カップやサーバ等の上部開口に載置 し、簡易ドリッパーに湯を注ぎ、適宜、蒸らした後、再注湯して抽出を行う。
まず、ペーパーフィルターでは、素材である紙、例えばリグニン等の異物の匂いや味が、抽出液(これを本明細書では「コーヒー液」と称することがある)に生じてしまうものであった。なお、コーヒーは嗜好品であることから、ユーザも味わいそのものに拘りを持つ人が近年急増しており、より本格的な味わいや呈味を求める傾向が強くなってきている。
また、ペーパーフィルターでは、コーヒーが本来有するコーヒーオイルやコーヒーアロマ等が紙に吸収され抽出できないものであった。
しかし、現実には、金属製フィルターの目開きを単にコーヒー粉の微粉よりも小さいサイズにすると、コーヒー液や湯等についてもフィルター面を極めて通過し難くなり、抽出に極めて長い時間を要してしまい、実用上はフィルター機能を発揮し得ないものとなっていた。因みに、一回の抽出時間は1.5分~4分程度が適している(5分程度が限度、ただしコーヒー豆の焙煎度合い、コーヒー粉の粒度や粉量、湯量等で幅がある)と言われ、これを越えるような抽出フィルターは、実際のユーザには到底受け入れられない状況にある。
なお、現在、市場に流通している金属製コーヒーフィルターは、微粉の混入が少ないことを謳っているものもあるが、このような実製品においても微粉の混入が激しく、上記のようにユーザは、ざらつき感を甘受して抽出直後の高温のコーヒー液を飲用するか、コーヒー液の温度が低下することを甘受して微粉の少ない上澄み部分を飲用するかのどちらかが多かった。
また、本出願人は、下方先端が尖った円錐形の金属製コーヒーフィルターについて更なる研究開発を継続するなか、以下のような問題を見出した。すなわち金属製コーヒーフィルターは、漏斗状(下方に向かって窄まる状態)に形成されるフィルターの底部において、フィルター面となる金属製メッシュを封鎖状態に処理する場合、ここに別途、非透過性の金属製(ステンレス等)のプレート状ないしはトレー状とでも表現できる別部材(円錐状キャップ)をあてがうものがあるが、この構成では、混ざって欲しくない不純物が、抽出液たるコーヒー液に混入してしまうという問題があった。すなわち、上記構成は、下窄まり状の底部突起に、水漏れを防ぐために円錐状キャップを内側と外側に溶着したものである。その結果、フィルター内の液レベルが下がるにしたがって滞留状態になり(言わば抽出速度の低下)、コーヒーエキスの過抽出現象が起こって、不純物までコーヒー液に混入することとなっていた。
因みに、上記図10のフィルター1′は、穿孔金属薄板(例えばパンチングメタル)から扇形の平面展開形状のフラット状メッシュW0′を打ち抜き、この扇形の二本の半径を接合するように丸めて円錐形のフィルター1′(フィルター本体2′)を立体化形成したものである(図8参照)。更に円錐形のフィルター1′の下方底部をカットした後、このカット部に、穿孔Hを有したプレート状ないしはトレー状の別部材(T′)を溶接等で固定したものであり、穿孔H部分にフィルター本体2′は実質的に存在しない。そのため、穿孔H自体、コーヒー粉(P)の通過を阻むべく、小さいサイズに開口されており、これが上記のような除去し難いコーヒーカス(P)の詰まりを招いていたと考えられる。
金属製メッシュによって下窄まりの容器状に形成されたフィルター本体を具え、このフィルター本体の内側に形成された原料収容部に、適宜の抽出原料を収容し、注湯によって抽出原料からエキス分を抽出するようにしたエキス抽出用のフィルターにおいて、
前記フィルターは、フィルター本体の下窄まり形状を維持する支持材が、少なくともフィルター本体の底部に設けられ、
且つフィルター本体の底部を支持する支持材には、抽出原料の粒度である粒子径0.72mmよりも大きな開口の濾過促進開口が形成され、なお且つ当該濾過促進開口には、抽出原料の20μmの微粉の通り抜けを阻むフィルター本体が張設されていることを特徴として成るものである。
前記フィルター本体は、始発状態で平面展開状を成すフラット状メッシュが折り曲げられて下窄まり状の立体形状に形成されるものであり、
またフラット状メッシュの平面展開形状としては、立体形成されるフィルター本体の底部を対称として二枚の略等脚台形を左右対称に並べた形状であり、
フラット状メッシュが折り曲げられて下窄まり状の立体形状に形成されるにあたっては、前記対称となる二枚の略等脚台形の上底を折れ線として、各々の略等脚台形が面合わせ状に折り曲げられ、前記折れ線の端部を基点とする各々の略等脚台形の二辺が互いに接合されて、下窄まり状の立体形状に形成されることを特徴として成るものである。
前記フィルター本体を形成する金属製メッシュは、略水平方向に沿って一定の間隔で配設される横線同士の間隙寸法が、略垂直方向に沿って一定の間隔で配設される縦線同士の間隙寸法よりも小さく形成され、縦横でメッシュの目開きが異なる構造であることを特徴として成るものである。
前記フィルター本体を形成する金属製メッシュは、縦線の線径が、横線の線径よりも大きく形成され、縦横で線径が異なる構造であることを特徴として成るものである。
前記下窄まり状のフィルター本体の底部には、両端の隅部を覆う被覆キャップが、フィルター本体の外側から設けられることを特徴として成るものである。
金属製メッシュによって下窄まりの容器状に形成されたフィルター本体を具え、このフィルター本体の内側に形成された原料収容部に、適宜の抽出原料を収容し、注湯によって抽出原料からエキス分を抽出するようにしたエキス抽出用のフィルターの製造方法であって、
前記フィルターには、フィルター本体の下窄まり形状を維持する支持材を、少なくともフィルター本体の底部に設けるものであり、
且つフィルター本体の底部を支持する支持材には、抽出原料の粒度である粒子径0.72mmよりも大きな開口の濾過促進開口が形成され、なお且つ当該濾過促進開口には、抽出原料の20μmの微粉の通り抜けを阻むフィルター本体を張設するようにしたことを特徴として成るものである。
まず請求項1または6記載の発明によれば、フィルター本体が、金属製のメッシュフィルターで形成されるため、例えばコーヒーを抽出する場合、ペーパーフィルターでは抽出できなかったコーヒーオイルやコーヒーアロマが抽出でき、コーヒー本来の味わいを楽しむことができる。またコーヒー粉の微粉が、ほとんど混入しない美味しいコーヒーを抽出することができる。
また、フィルター本体は、下窄まり状を成すフィルター本体の底部に濾過促進開口が形成されるため、抽出が進んでフィルター本体内の液レベルが低下して行っても、コーヒー液(抽出液)の通り抜け性は維持でき、抽出が停滞してしまうことがない。このため過抽出現象によって不純物までが抽出液に混入してしまうことを防止できる。
また濾過促進開口は、大きく形成される(コーヒー粉等の抽出原料よりも大きく形成される)ため、金属性メッシュが張設された濾過促進開口に、コーヒー粉の微粉やコーヒーカスが溜まっても、水洗いするだけで簡単に除去することができ、コーヒー粉の微粉やコーヒーカスを濾過促進開口に詰まらせてしまうこと(いわゆるブリッジ)がない。
なお、説明にあたっては、まずエキス抽出用のフィルター(金属製メッシュフィルター)1について説明し、その後、このフィルターの製造方法について説明する。
そして、本発明では、このフィルター本体2を上記のように金属製メッシュによって形成するものであり、当該金属製メッシュにおいて、略水平方向に沿って配設される横線同士の一定の間隙寸法(空間距離)を、略垂直方向に沿って配設される縦線同士の一定の間隙寸法よりも小さく形成し、フィルター面の縦横でメッシュの目開きが異なるように形成している。また、金属製メッシュの縦と横で目開きを異ならせること等から、縦線と横線の線径も異なるようにしており、特に本実施例では縦線の線径が横線よりも大きく形成される。
より詳細に上記寸法を説明すると、例えば上記図6に示すように、横線の線径約20μm、間隙寸法約20μm(概ね600メッシュ程度)の場合、垂直方向から視た投影距離では横線同士の間隙寸法は約3μmとなり、これはコーヒー粉の微粉サイズ(約20μm)よりも小さい寸法である。なお、この垂直方向から視た投影距離は、フィルター面の傾斜角度によって異なるが、ここではフィルター本体2を、一般的な家庭で備えていることが多い簡易ドリッパー(扇形ドリッパーとも呼ばれ、折り畳み状態で略等脚台形状(扇形状)のペーパーフィルターを拡げ、内密着状態にセットする簡易抽出器)の角度に合わせた傾斜角度としており、一例として片側の開き角度が約35度である。因みに一般的な家庭で備えていることが多いドリッパーを「簡易」と称したのは、主に業務用に用いられるネルドリップ式やサイフォン式の本格的なドリップ機器に比べ、極めて手軽に扱えるために用いた用語であり、またこのために簡易ドリッパーは、特に家庭用として広く普及しているコーヒー抽出用器具である。
一方、縦線同士の間隙寸法は、コーヒー粉の微粉サイズ(約20μm)よりも大きな間隙寸法、例えば線径約50μm、間隙寸法約104μm(概ね165メッシュ程度)とし、抽出したコーヒー液の通り抜け性を向上させ、抽出時間の長時間化を防ぐようにしている。
なお、上述したメッシュ(目開き)は、あくまでも一例であり、横線方向のメッシュは、500~650メッシュ程度まで適用でき、縦線方向のメッシュは、100~250メッシュ程度まで適用できる。
支持材3は、一例として図1(b)・図2に示すように、基本的にフィルター本体2を、内側(原料収容部R側)と外側との両側から適宜の幅寸法で挟持する支持部材(補強枠材)である。特に、立体的なフィルター本体2の接合部WJでは、ここに形成された挟持代Wa同士を重ね合わせ、適宜の幅寸法で当該接合部WJを保持する構成となる。そして、この挟持状態で支持材3と金属製メッシュ(重ね合わせ部)とを、例えばスポット溶接等で接合して一体化するものであり、このような支持材3によって、薄いメッシュ地のフィルター本体2は、確実に立体化状態に形成され、且つその立体化状態が長年にわたって維持されるものである。
ここで本発明では、フィルター本体2としては、図1に示すように、立体化状態で下方先端が平面状(線分を含む)に形成されたものを基本とし、これを略円錐台状(立体台形型)と称することがある(図4(a)参照)。またフィルター本体2としては、立体化状態で下方先端が尖ったものも考えられ、これを円錐形と称することがある(図8参照)。
以下、支持材3を構成する各部材について説明する。
このため内側支持材31は、フィルター本体2の底部2Bを支持する底部内側支持材31Bと、フィルター本体2の接合部WJ(側部)を支持する側部内側支持材31Sとを具えて成り、全体的には、細長いフラット状を成す底部内側支持材31Bに対して、細長い側部内側支持材31Sを傾斜状に折り曲げたように形成される。なお、底部内側支持材31Bは、幅方向に湾曲しないほぼフラット状に形成されるものの、側部内側支持材31Sは、幅方向(短手方向)において、やや湾曲するように形成されることが好ましく、これはフィルター本体2の側周面(曲面)にほぼ沿うことが望ましいためである。
また、抽出時には、一例として図3の部分拡大図に示すように、フィルター本体2で捕捉された抽出原料P(コーヒー粉の微粉やコーヒーカス)は濾過促進開口34に貯留されるが、濾過促進開口34を大きなサイズに開口することによって、捕捉・貯留された抽出原料P(コーヒーカス)は、濾過促進開口34に詰まることがなく(ブリッジを形成することがなく)、抽出後、内外の両面側から水洗いするだけで容易に、濾過促進開口34から除去することができる。
外側支持材32は、上述した内側支持材31(特に側部内側支持材31S)と対を成し、フィルター本体2を挟み込むように設けられる部材である。すなわち外側支持材32は、フィルター本体2を外側(原料収容部Rの外側)から支持する作用を担う。ただし、ここでは濾過促進開口34が形成されたフィルター本体2の底部中央付近には、外側支持材32が存在しない構成となっており、これはフィルター本体2(濾過促進開口34に張設されたフィルター本体2)による濾過をスムーズに行わせるためである。
このため外側支持材32は、一例として上記図1(b)に示すように、実質的に、左右一組の側部外側支持材32Sによって分断されたような構成を採るが、フィルター本体2の底部2Bの支持は、後述する被覆キャップ35によって行われる。因みに、左右に分断状態に設けられた外側支持材32(側部外側支持材32S)同士の下方の間隙は、広義的には上記濾過促進開口34に包含される。
なお、フィルター本体2(フィルター面)の全体が、下窄まりの傾斜状に形成されることから、外側支持材32は、内側支持材31よりも幾らか幅広状に形成されることが好ましく、これはフィルター本体2の挟持を強固に行うためである。
また外側支持材32(側部外側支持材32S)は、側部内側支持材31Sとほぼ同じ傾斜状態に形成される。
被覆キャップ35は、一例として図1(b)に示すように、フィルター本体2の底部2B、より詳細には底部2Bの両端隅部を下方から支持するように溶接等で取り付けられる。
また被覆キャップ35の取り付けにあたっては、一例として図3の拡大図に示すように、このものの上端を、外側支持材32の下端に突き合わせるようにして取り付けられる。
また、被覆キャップ35は、上記図1(b)に示すように、両サイドに立ち壁部35Wが形成され、フィルター本体2の底部2B(四隅)を、この立ち壁部35Wの内側に収めるように(被覆するように)取り付けられる。
なお、本発明では金属製メッシュで形成された左右の略等脚台形をフィルター本体2の底部2Bで両側から折り曲げるようにしてフィルター本体2を形成しており、この折り曲げの際、底部2Bの両端四隅でピンホールが発生することがあったが、たとえピンホールが発生しても、上記被覆キャップ35によってピンホールが確実に被覆されるものであり、ピンホールからコーヒーの微粉をほとんど通過させない(抽出液たるコーヒー液に混入させない)構造となった。
上部支持材33は、上述したように立体化形成したフィルター本体2の上方開口部(上方開放部)を支持するためのフレーム部材(補強枠部材)であり、この上部支持材33もフィルター本体2の開口縁を内側と外側とから全周にわたって挟持するように設けられる。そして、この挟持部分で上部支持材33と金属製メッシュ(フィルター本体2)とを溶接(例えばスポット溶接等)して一体化させるものである。なお、上部支持材33を内側と外側で区別する場合には、内側上部支持材33I、外側上部支持材33Uとする。
因みに、内側上部支持材33Iは、一例として図2の部分拡大図に示すように、天面側から外周側に張り出すように折り曲げ形成され、更にその一部を外周側に突出状に張り出して、フィルター1の把手36を構成するものである。
また、上部支持材33は、上記図2(特に部分拡大図)に示すように、上述した内側支持材31及び外側支持材32の上端に当接するように設けられることが好ましく、これにより支持材3全体としての一体化が図られ、立体化形成したフィルター本体2の全体的な形状維持・強度アップを達成している。
また、ここでは支持材3で支持する前に、金属製メッシュたるフラット状メッシュW0の挟持代Waを先行して重ね合わせ、ここをスポット溶着するものであり、これにより、その後の内側支持材31及び外側支持材32による挟み込みと接合が行い易くなるものである。
因みに、フラット状メッシュW0の平面展開形状は、一例として図4(a)・図5に示すように、底部2Bの長手(折れ線)方向延長状に、例えば約10mmの長さで、折り込み片となる挟持代Waが形成される。
そして、このフラット状メッシュW0を立体化形成するにあたっては、まず略等脚台形の接合部WJに形成された挟持代Wa同士を重ね合わせるように折り曲げ、その後、この重ね合わせた接合部WJの更に外側から、上記折り込み片(挟持代Wa)を重ねるように折り曲げる(図5参照)。このため、底部2Bの両端延長部は、計三枚の挟持代Wa(メッシュ地)が重なり合って形成され(図4・図5中の「三重」参照)、他の接合部WJは、計二枚の挟持代Wa(メッシュ地)が重なり合って形成される。もちろん、このように挟持代Waを三枚重ね・二枚重ねとすることで、その分、厚み寸法としては増すが、厚さ約1mmの内側支持材31と外側支持材32とで挟むため、悪影響は無い。更に、フィルター本体2として形成した後、セラミックス焼き付け塗布をフィルター面の表裏全てに施すため、微小な隙間は、この塗布剤の流れ込みによって埋めることができる。
カップ載置台4は、例えばコーヒー液等の抽出液を貯留するカップC(サーバ等を含む)の開口縁部に載置される中空円板41を具え、そのほぼ中央部に下窄まり状の折り返し部42が連続状に形成される。この折り返し部42は、フィルター本体2の外側支持材32に溶接等で固定され、フィルター本体2との一体化が図られる(フィルター本体2とカップ載置台4との一体化)。このため、折り返し部42の下窄まり角度(傾斜角度)は、外側支持材32とほぼ同じ角度となる。
因みに、ここではカップ載置台4を、フィルター本体2に対し、固定状態に設けるように説明したが、カップ載置台4は、フィルター本体2に対し、着脱自在に設けることも可能である。
(1)フラット状メッシュの平面展開形状
フィルター本体2は、上述したように始発状態で平面展開状を成すフラット状メッシュW0から立体的に形成されるものであり、その平面展開形状としては、一例として図4(a)に示すように、フィルター本体2の下端部(立体形成したときの底部2B)を対称として二枚の略等脚台形を左右対称に並べた展開形状とする。そして、立体化形成する際には、二枚の略等脚台形を、対称となる底部2Bで折り曲げながら、二枚の略等脚台形の辺同士を接合するようにして立体化形成する(ここで略等脚台形の接合される辺が接合部WJである)。
フラット状メッシュW0の形状をより詳細に説明すると、まず接合部WJに、互いに重ね合わせるための挟持代Waを具える。
また、立体化形成時における底部2Bの長手(折れ線)方向延長状にも挟持代Waが設けられ、ここは底部2Bの端部から例えば約10mm張り出すように設けられた折り込み片である。
ここで、図中符号「WB」は、底部2Bに対し、二枚の略等脚台形を折り曲げるための底部折れ線WBであり、ここでは二本並列状に形成される。また図中符号「WS」は、接合部WJに形成された挟持代Waを折り曲げるための側部折れ線である。
なお図4(a)における底部2Bの長手方向寸法を短く設定すれば、立体的なフィルター本体2として略円錐台状(立体台形型)というよりは、むしろ略円錐状を成すフィルター1を得ることができ、これは従来の円錐形ドリッパーに対応したフィルター本体2を想定したものである。
その後、上記のようなフラット状メッシュW0を、下窄まり状を成すフィルター本体2に立体化形成するものであり、これには図4(a)・図5に示すように、まず略等脚台形の接合部WJに形成された挟持代Waが、重なり合うように折り曲げる。次いで、この重ね合わせた接合部WJの更に外側に、上記底部2Bの両端延長状に形成された折り込み片たる挟持代Waが、重なるように折り曲げられる。このため、底部2Bの両端延長部は、計三枚の挟持代Wa(メッシュ地)が重なり合って形成され、他の接合部WJは、計二枚の挟持代Wa(メッシュ地)が重なり合って形成される。
このように本実施例では、底部2Bの両端延長部では、当該部位に形成された折り込み片たる挟持代Waを、フィルター本体2の最も外側に位置するように折り重ねるものである。ここで挟持代Waを形成するメッシュ地(金属製メッシュ)は、薄いとは言え、厚みを有するため、三枚重ねされる底部両端の延長部では、折り込み片たる挟持代Waが精緻に重ならず、コーナー部から幾らかはみ出ることもあり得る。しかしながら、本実施例では、底部2Bの両端には、下方外側から被覆キャップ35を嵌め込むため、たとえ折り込み片たる挟持代Waがコーナー部からはみ出ても、被覆キャップ35の立ち壁部35W内に収まり(被覆されてしまい)、外部への露出は防止される。
その後、挟持代Waを上記のように重ね合わせた状態で、支持材3による挟み込みに先行してフラット状メッシュW0の挟持代Waをスポット溶着(仮溶着)する。スポット溶着を先行させることにより、その後に行う支持材3による挟み込みと接合が行い易くなる。
なお、スポット溶着を行うにあたっては、例えばフラット状メッシュW0において対向する略等脚台形の二辺(接合部WJの挟持代Wa)を、適宜の受け治具の上から重ね合わせ、その後、この重ね合わせ部(挟持代Wa)をスポット溶着するものである。
その後、支持材3(内側支持材31と外側支持材32)によって、フラット状メッシュW0(フィルター本体2)を内側と外側から挟み込み、この挟持状態で支持材3とフィルター本体2(金属製メッシュ)とを溶接(例えばスポット溶接)等により接合する(図4(a)の拡大図参照)。もちろん、外側支持材32を取り付けた後には、その下端部に当接するように被覆キャップ35を接合する。
なお、支持材3とフィルター本体2とを接合する際のスポット溶接の間隔は、接合部WJ(挟持代Wa)の上下にわたって等間隔でも構わないが、フィルター面の濾過作用は下側(約下半分)が主となるため、下方ほど溶接の間隔を小さくすることが好ましい。
また、支持材3のうち特に内側支持材31は、平面から視て、底部2Bを支持する底部内側支持材31Bと、その両側の接合部WJを支持する側部内側支持材31Sとが、一直線上になるように設けられ、これによりフィルター本体2としての強化が図られている。
また、このようにして立体化形成されたフィルター本体2の上方開口部には、上記のように全周にわたって上部支持材33が取り付けられる(図2参照)。具体的には、ここでもフィルター本体2の上方開口縁を内側と外側から挟み込むように、内側上部支持材33Iと外側上部支持材33Uとが取り付けられる。なお、これら上部支持材33は、上述したように内側支持材31及び外側支持材32との上端に当接するように設けられる(図2の部分拡大図参照)。
また、内側上部支持材33Iは、天面側から外周側に張り出すように折り返し状に形成され、更にその一部を外周側に突出状に張り出させて、フィルター1の把手36が構成される。
その後、フィルター本体2の表面及び裏面の全ての面に、セラミックの焼き付け塗装を施すことが好ましく、これは親水性を高める塗装処理である。具体的には、フィルター面に汚れが付着した場合、まずフィルター本体2に付着したコーヒーカスを流水で流し落とした後、スポンジなどで軽くこするだけで、またはフィルター本体2を水に漬けておいた後、流水下でスポンジなどで軽くこするだけで、水が塗装膜と汚れとの間に入り込み、汚れを浮かび上がらせ、落とし易くするものである。すなわち、上記セラミックの焼き付け塗装により、フィルター本体2が汚れても、水洗いだけで簡単に洗浄でき、日常的な衛生管理が誰でも手軽に行えるものである。
なお、上述したように底部2Bの両端延長部は、計三枚の挟持代Wa(メッシュ地)が重ね合わせて形成されるため、当該部位の厚みが増す。しかし、立体化形成後のフィルター本体2の表裏全てにセラミックスの焼き付け塗布を施すため、微小な隙間は、この塗布剤の流れ込みによって埋めることができる。
また、上記説明では、フラット状メッシュW0の平面展開形状として略等脚台形の二辺(接合部WJ)に挟持代Waを設けるとともに、底部2Bの延長状にも挟持代Waを設けたものを示しており、このような挟持代Waを設けたフラット状メッシュW0も「略等脚台形状」に包含される。
すなわち、ここでは平面展開状のフラット状メッシュW0を、先窄まり状のフィルター本体2(略円錐台状のフィルター本体2)に立体化形成するにあたり、平面展開形状において、二枚の略等脚台形を左右対称に並べたフラット状メッシュW0を、底部2B(底部折れ線WB)で折り曲げるようにした。
また、このようなズレを極力抑えるため、すなわち上記エリアAR2を極力少なくするためには、底部2B(底部折れ線WB)をできる限り長く確保して、略円錐台状(立体台形型)のフィルター本体2を形成することが好ましい。
抽出にあたっては、例えば図1(a)に示すように、カップ載置台4をカップCに載せて、カップCの上方にフィルター本体2を安定的に保持する。
本発明では、上述したように、平面展開状態のフラット状メッシュW0におけるメッシュの縦線・横線の関係が、立体化状態のフィルター本体2でも縦線・横線の関係(水平・垂直の関係)としてほぼ維持される。
このため、メッシュの目開き(開度)もほぼ維持され、立体化状態のフィルター本体2における横線(水平線)の間隔は、コーヒー粉の微粉を通過させない間隙寸法(平面視約3μm)に維持される。また縦線の間隔は、コーヒー粉の微粉よりも大きい間隙寸法(約104μm)に維持され、コーヒー粉の微粉の通過を阻みながらも、抽出したコーヒー液の通り抜け性を向上させ、抽出時間の短縮化を達成し得る。
また、抽出後の原料カス(コーヒーカス)は、濾過促進開口34に張設されたフィルター本体2(金属製メッシュ)上に残存するが(図3の拡大図参照)、濾過促進開口34が大きく開口されているため、このようなコーヒーカスは、フィルター本体2を内外の両面側から水洗いするだけで容易に洗い流すことができ、濾過促進開口34に詰まらせてしまうことがない(ブリッジを生じさせない)ものである。
本発明は以上述べた実施例を基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、フラット状メッシュW0として二枚の略等脚台形を左右対称に並べた平面展開形状を基本的な形態とした。これは、このようなフラット状メッシュW0を略円錐台状(立体台形型)のフィルター本体2として立体化すると、メッシュの横線・縦線の関係(方向)がほぼ維持され、高レベルでの抽出に適しているためである。
このような略円錐台状(立体台形型)のフィルター本体2に対し、下方先端が尖った円錐形のフィルター本体2を形成するには、上記図8に示すように、フラット状メッシュW0の始発形状を扇形に形成しておき、この扇形の二辺(二本の半径)を突き合わせるように丸めて円錐形のフィルター本体2を形成することができる旨、説明した。ただし、このような形成手法では、上述したように、完成後の目開きの縦横の大小関係が立体的な円錐形のフィルター本体2の各部で相違する箇所があり、均一な抽出は行い難い。
すなわち、この場合には、完成後の円錐形のフィルター本体2において、水平方向に沿って配設される横線同士の間隙寸法が、垂直方向に沿って配設される縦線同士の間隙寸法よりも大きく形成される部位が生じてしまい、当該部位では特にコーヒー粉の微粉を通過させてしまうことが懸念され、コーヒー抽出等の高レベルでの抽出には不向きと言える。
ここで、円錐形のフィルター本体2から底部2Bが平面状(線分状またはフラット状)を成すフィルター1を形成する手法について説明する。これには例えば図9に示すように、円錐形のフィルター本体2の下方先端部を適宜の寸法で側部に折り返して、底部2Bを線分状またはフラット状に形成した後、この底部2Bに、断面V字状を成す孔付きプレートTを溶接等で接合することにより、円錐形のフィルター本体2(フィルター1)を得ることができる。
しかしながら、濾過促進開口34としては、必ずしも大きな開口を一つだけ形成する必要はなく、抽出原料Pの大きさ等に応じて種々の形態が採り得る。具体的には、例えば図7(a)に示すように、濾過促進開口34として底部内側支持材31Bの長手方向に沿うように複数の円孔を直列状に形成してもよいし、あるいは図7(b)に示すように、基本の実施例で挙げた長円よりも小さい径寸法の長円孔を二つ並列状に形成して濾過促進開口34を構成することも可能である。
しかし、フィルター本体2には、カップ載置台4を設けないことも可能であり、この場合には簡易ドリッパーの内側に、このフィルター本体2を内嵌め状にセットして、抽出を行うこともできる(言わば従来のペーパーフィルターのような使い方)。
ただし、この場合には、簡易ドリッパーの底部に抽出液を通過させるための孔が開口されているものが好ましい。逆に言えば、簡易ドリッパーのなかには、側面上方にこのような開口が形成されたものも存在するが、これを適用した場合には、濾過促進開口34の通り抜け作用が発揮できなくなるため、このような簡易ドリッパーを適用した抽出は好ましくない。
2 フィルター本体
2B 底部
3 支持材
4 カップ載置台
31 内側支持材
31B 底部内側支持材
31S 側部内側支持材
32 外側支持材
32S 側部外側支持材
33 上部支持材
33I 内側上部支持材
33U 外側上部支持材
34 濾過促進開口
35 被覆キャップ
35W 立ち壁部
36 把手
41 中空円板
42 折り返し部
W0 フラット状メッシュ
WJ 接合部
WB 底部折れ線
WS 側部折れ線
Wa 挟持代
C カップ
P 抽出原料
R 原料収容部
H 穿孔
T 孔付きプレート
AR1 エリア
AR2 エリア
Claims (6)
- 金属製メッシュによって下窄まりの容器状に形成されたフィルター本体を具え、このフィルター本体の内側に形成された原料収容部に、適宜の抽出原料を収容し、注湯によって抽出原料からエキス分を抽出するようにしたエキス抽出用のフィルターにおいて、
前記フィルターは、フィルター本体の下窄まり形状を維持する支持材が、少なくともフィルター本体の底部に設けられ、
且つフィルター本体の底部を支持する支持材には、抽出原料の粒度である粒子径0.72mmよりも大きな開口の濾過促進開口が形成され、なお且つ当該濾過促進開口には、抽出原料の20μmの微粉の通り抜けを阻むフィルター本体が張設されていることを特徴とする、エキス抽出用のフィルター。
- 前記フィルター本体は、始発状態で平面展開状を成すフラット状メッシュが折り曲げられて下窄まり状の立体形状に形成されるものであり、
またフラット状メッシュの平面展開形状としては、立体形成されるフィルター本体の底部を対称として二枚の略等脚台形を左右対称に並べた形状であり、
フラット状メッシュが折り曲げられて下窄まり状の立体形状に形成されるにあたっては、前記対称となる二枚の略等脚台形の上底を折れ線として、各々の略等脚台形が面合わせ状に折り曲げられ、前記折れ線の端部を基点とする各々の略等脚台形の二辺が互いに接合されて、下窄まり状の立体形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の、エキス抽出用のフィルター。
- 前記フィルター本体を形成する金属製メッシュは、略水平方向に沿って一定の間隔で配設される横線同士の間隙寸法が、略垂直方向に沿って一定の間隔で配設される縦線同士の間隙寸法よりも小さく形成され、縦横でメッシュの目開きが異なる構造であることを特徴とする請求項1または2記載の、エキス抽出用のフィルター。
- 前記フィルター本体を形成する金属製メッシュは、縦線の線径が、横線の線径よりも大きく形成され、縦横で線径が異なる構造であることを特徴とする請求項3記載の、エキス抽出用のフィルター。
- 前記下窄まり状のフィルター本体の底部には、両端の隅部を覆う被覆キャップが、フィルター本体の外側から設けられることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項記載の、エキス抽出用のフィルター。
- 金属製メッシュによって下窄まりの容器状に形成されたフィルター本体を具え、このフィルター本体の内側に形成された原料収容部に、適宜の抽出原料を収容し、注湯によって抽出原料からエキス分を抽出するようにしたエキス抽出用のフィルターの製造方法であって、
前記フィルターには、フィルター本体の下窄まり形状を維持する支持材を、少なくともフィルター本体の底部に設けるものであり、
且つフィルター本体の底部を支持する支持材には、抽出原料の粒度である粒子径0.72mmよりも大きな開口の濾過促進開口が形成され、なお且つ当該濾過促進開口には、抽出原料の20μmの微粉の通り抜けを阻むフィルター本体を張設するようにしたことを特徴とする、エキス抽出用のフィルターの製造方法。
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