JP7368042B2 - 水棲動物用経口投与薬剤 - Google Patents

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Description

本開示は、薬効成分、炭素粉末および油性成分を含み、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤に関する。さらに、本開示は、当該水棲動物用経口投与薬剤の製造方法、および当該水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与して、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法に関する。
水棲動物の養殖においては、水棲動物を養殖している生簀の外から中へ病原菌および寄生虫が侵入しうるので、これらに起因する水棲動物の疾病の予防、治療を常に考えておかなければならない。疾病を治療するために、一般的には、疾病に応じた薬剤を水棲動物用飼料に付着または混入させ、この水棲動物用飼料が水棲動物に投与されている。近年、マダイやブリの養殖においては、養殖魚の肉質が良くなること、および養殖作業が楽になることなどの理由から、従来の混ぜ込み飼料、すなわち、モイストペレット(MP)飼料が人工固形飼料であるエクストルーダーペレット(EP)飼料に移り変わりつつある。MP飼料を用いて薬剤を魚に投与する場合には、飼料の中に薬剤を練り込むことができるので、確実に魚に薬剤を投与することができた。
一方、EP飼料の場合には、薬剤をEP飼料に混ぜ込むことができないので、グアガムなどの水溶性展着剤を用いて薬剤をEP飼料の表面に付着させたものを魚に投与していた。しかし、EP飼料は多量に脂質を含むので、水溶性展着剤はEP飼料に対して有効ではなく、投与の際に、薬剤がEP飼料の表面から機械的に剥離すると共に、水中で薬剤が飼料から容易に離脱する。EP飼料の場合には、付着した薬剤の50%以上が海水中に流失し、魚体内に取り込まれない場合がある。薬剤の環境水中への流失は、単なる経済的損失をもたらすだけでなく、薬剤耐性菌の出現という危険性をもたらしうる。また、従来の水溶性展着剤を使用する場合には、薬剤をEP飼料に付着させるために使用される機具に水溶性展着剤と薬剤との混合物が付着し、薬剤が機具に残留する恐れがあった。薬剤が残留している機具を用いて出荷直前の魚に投餌をすると、出荷時に魚体内から残留した薬剤が検出され出荷停止となる可能性がある。
上述の問題を解決するために、特許文献1(特開2006-340622号公報)には、EP飼料と薬剤との結合に展着剤として炭素粉末を使用するという技術が報告されている。炭素粉末を展着剤として利用する場合には、使う人によって使いこなす技術が異なり、同じ薬剤を同じ量で混ぜても、治療効果に大きな差が出る場合があった。さらに、炭素粉末は比重が軽いので、養殖作業中に風の影響を受けて炭素粉末が飛散し易いという大きな欠点があった。このように、炭素粉末は固形飼料に付着するという長所がある反面、養殖現場では様々な欠陥のため使用が難しく、普及が進まなかった。
炭素粉末を展着剤として使用するのではなく、炭素粉末を薬剤の賦形剤として使用する技術が報告されている(特許文献2:特開2007-523108号公報)。また、薬効成分および炭素粉末を含む薬剤として、薬効成分および炭素粉末を含む混合物を造粒する工程を含む方法で形成された固形状の魚類用経口投与薬剤が報告されている(特許文献3:特開2017-8012号公報)。本発明者が検討したところ、炭素粉末を賦形剤として使った薬剤は、炭素粉末が元来有する吸水力のために、長期間保存中に空気中の水分を吸収して薬効成分の力価が顕著に低下する場合があった。なお、水棲動物の養殖において炭素粉末が展着剤として使用される場合には、炭素粉末を薬効成分と混ぜてから直ぐに水棲動物に投与し、長期間保存することはない。よって、炭素粉末の吸水性は、展着剤としての炭素粉末の使用を否定するものではないので、炭素粉末を薬剤の賦形剤として使用した場合の薬効成分の力価の低下は予想外であった。
特開2006-340622号公報 特開2007-523108号公報 特開2017-8012号公報
本発明の目的は、保存中の薬効成分の力価の低下を抑制でき、取扱いの際に飛散しにくく、かつ飼料への付着性に優れた水棲動物用経口投与薬剤を提供することである。
本発明の一実施形態は、薬効成分、薬剤の全重量を基準にして15~98重量%の炭素粉末、並びに薬剤の全重量を基準にして1~13重量%の油性成分を含み、薬剤中の水分量が薬剤の全重量を基準にして12重量%以下であり、薬剤中の油性成分と水分の合計量が薬剤の全重量を基準にして18重量%以下である、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤を提供する。
本発明の一実施形態は、炭素粉末と薬効成分とを混合して、炭素粉末および薬効成分を含む混合物を形成し、前記混合物中の炭素粉末に油性成分を吸着させることを含む、上述の水棲動物用経口投与薬剤を製造する方法を提供する。
本発明の一実施形態は、炭素粉末と油性成分とを混合して炭素粉末に油性成分を吸着させ、油性成分を吸着した炭素粉末と薬効成分とを混合することを含む、上述の水棲動物用経口投与薬剤を製造する方法を提供する。
本発明の一実施形態は、上述の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与することにより、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法を提供する。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は、保管中の薬効成分の効力の低下を抑制でき、飼料に付着させる際など取扱いの際に飛散しにくく、かつ飼料への付着性に優れるという有利な効果を奏する。
保存によるアンピシリンの力価の変化に対して、油性成分が及ぼす影響を示すグラフである。
本発明の一実施形態は、薬効成分、薬剤の全重量を基準にして15~98重量%の炭素粉末、並びに薬剤の全重量を基準にして1~13重量%の油性成分を含み、薬剤中の水分量が薬剤の全重量を基準にして12重量%以下であり、薬剤中の油性成分と水分の合計量が薬剤の全重量を基準にして18重量%以下である、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤である。
本発明においては、薬効成分は水棲動物に何らかの有用な作用を及ぼす成分であればよく、特に限定されるものではない。本発明の一実施形態においては、薬効成分は、水棲動物の疾病を予防および/もしくは治療するような薬効成分、並びに水棲動物の健康を維持し、および/もしくは肉質を改善する様な薬効成分でありうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分は、例えば、抗生物質、合成抗菌剤、駆虫剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、および色調強化剤(例えば、カロテノイド)等でありうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分は、マクロライド系、テトラサイクリン系、フルオロキノロン系、チアンフェニコール系、ベンズイミダゾール系、サルファ剤系、ウルソデオキシコール酸、アミノ酸類、水溶性ビタミン類(例えば、ビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、B12、葉酸、およびアスコルビン酸など)、脂溶性ビタミン類(例えば、ビタミンA、D、およびEなど)、ミネラル類、カロテノイド(例えば、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カロテン類、およびルテインなど)等の薬効成分からなる群から選択されうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分としては、例えば、プラジクアンテル(PZQ)、サリチルアニリド系の薬剤、イベルメクチン、エリスロマイシン(EM)、オキシテトラサイクリン(OTC)、フロルフェニコール、チアンフェニコール、アンピシリン(ABPC)、オキソリン酸、スルファモノメトキシンナトリウム(ダイメトン(登録商標)ソーダ)、スルフィゾールナトリウム(イスラン(登録商標)ソーダ)、ST製剤(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)、フェバンテル、アルベンダゾール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、グルタチオン、およびアスタキサンチンなどが挙げられうる。薬効成分は化合物自体だけでなく、その水和物およびその塩の形態であっても良い。例えば、オキシテトラサイクリンは塩酸塩の形態であっても良い。例えば、アンピシリンはアンピシリン無水物、アンピシリン水和物、およびアンピシリンナトリウムなどであって良い。また、本発明の水棲動物用経口投与薬剤に含まれる薬効成分は1種類だけでなく複数種類であってもよく、複数種類のものとしては、プラジクアンテルとオキシクロザニドを含む合剤、およびST製剤(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)が挙げられるがこれに限定されない。
本発明の一実施形態において、水棲動物用経口投与薬剤に含まれる薬効成分の量は、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、0.2~70重量%であり、より好ましくは、1~60重量%であり、さらにより好ましくは、2~50重量%である。
本発明においては、炭素粉末は任意の物質に由来するものであって良い。例えば、炭素粉末は、備長炭、黒炭等の木炭、ヤシガラ炭、コーヒー炭、竹炭、活性炭など任意の炭を粉末にすることにより調製することができる。本発明の一実施形態においては、炭素粉末としては、竹炭粉末、木炭粉末、ヤシガラ炭粉末、コーヒー炭粉末、および活性炭粉末などが挙げられうる。本発明の一実施形態においては、好ましくは、炭素粉末は、竹炭粉末、木炭粉末およびヤシガラ炭粉末からなる群から選択され、より好ましくは、炭素粉末は竹炭粉末またはヤシガラ炭粉末であり、さらにより好ましくは、炭素粉末は竹炭粉末である。
炭素粉末の大きさは本発明の目的に反しない限り特に限定されるものではないが、炭素粉末の粒径は、好ましくは、50メッシュを通過する大きさである。本明細書において、粒子の大きさについて、「Xメッシュを通過する大きさ」は「Xメッシュパス」とも称され、「Xメッシュを通過するがYメッシュを通過しない大きさの範囲」は「XメッシュパスYメッシュオン」とも称される。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤に含まれる炭素粉末の量は、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、15~98重量%であり、より好ましくは、30~85重量%である。
本発明において、油性成分としては、特に限定されないが、例えば、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、ロウ類、ステロイド類等が挙げられる。本発明の一実施形態においては、油性成分は植物油または動物油であってよく、好ましくは、油性成分は植物油、例えばサラダ油でありうる。油性成分は常温で液体、ペースト、固体のいずれであってもよい。油性成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくは、油性成分は炭化水素類および油脂類でありうる。より好ましくは、油性成分は流動パラフィンおよび植物油からなる群から選択されうる。さらにより好ましくは、油性成分は流動パラフィンでありうる。
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、パラフィン、固形パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、スクワラン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、水添ポリイソブテン、エチレン・α-オレフィン・コオリゴマー、エチレンプロピレンポリマー等が挙げられる。油脂類としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、アマニ油、オリーブ油、エゴマ油、ツバキ油、ヒマシ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、大豆油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、パーム核油、ヤシ油、パーム油、牛脂、豚脂、馬脂、羊脂、シア脂、カカオ脂、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーセリン油、ヒマワリ油、ホホバ油、グレープシード油、マカデミアナッツ油、綿実油、メドウホーム油、落花生油、タラ肝油、ローズヒップ油、牛脂硬化油、牛脂極度硬化油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤に含まれる油性成分の量は、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、1~13重量%であり、より好ましくは、2~10重量%であり、さらにより好ましくは、3~7重量%である。
本発明の一実施形態においては、保存中の薬効成分の力価の低下を抑制するという観点から、水棲動物用経口投与薬剤中の水分量が、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、12重量%以下であり、より好ましくは、10重量%以下であり、さらにより好ましくは、5重量%以下である。本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤中の水分量の範囲の下限は0重量%である。本発明の水棲動物用経口投与薬剤中の水分は、水棲動物用経口投与薬剤を製造するための原料に含まれる水分に由来する場合がある。例えば、乾燥などの脱水処理を行っていない炭素粉末は、その保管状態にもよるが、炭素粉末の重量を基準にして5重量%程度の水分を含んでいる場合がある。よって、本発明の薬剤を製造する原料として、脱水処理を行っていない炭素粉末を使用する場合には、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、炭素粉末に吸着した水分を含むこととなる。また、本発明の薬剤を製造する原料として薬効成分の水溶液が使用される場合には、この水溶液由来の水分が薬剤中に含まれうることとなる。
本発明の一実施形態においては、粉末状の水棲動物用経口投与薬剤が塊状になるのを抑制するという観点から、薬剤中の油性成分と水分の合計量が薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、18重量%以下であり、より好ましくは、15重量%以下である。本発明の一実施形態においては、薬剤中の油性成分と水分の合計量が薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、1重量%以上であり、より好ましくは、6重量%以上である。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は造粒されていない粉末状である。「造粒されていない粉末状」とは、特許文献3(特開2017-8012号公報)に開示された「薬効成分および炭素粉末を含む混合物を造粒する工程を含む方法によって形成された、固形状の魚類用経口投与薬剤」との違いを明確にするものである。すなわち、特許文献3に開示された発明の薬剤は、加圧を用いるか、デンプン、小麦粉などのバインダーを使用するなどして、薬効成分および炭素粉末の混合物が造粒されて、一体となった成形体(例えば、顆粒状、錠剤状、ペレット状など)の形状を有する。一方、本発明の薬剤は、「造粒されていない粉末状」であり、特許文献3に開示された薬剤とは異なる。
本発明の一実施形態においては、手で触れるとすぐに壊れる塊が粉末状混合物の中に部分的に存在するような場合、そのような塊は、造粒され一体となった固形状の成形体には該当しない。
本発明において、「水棲動物」とは、水中に生息する動物であり、例えば、魚類、並びに、エビおよびカニなどの十脚目が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、水棲動物は魚類である。
本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、本発明の目的に反しない限りは、炭素粉末および油性成分以外の任意の他の材料、例えば、賦形剤をさらに含んでいてもよい。賦形剤としては、ブドウ糖、乳糖、炭酸カルシウム、タルク、ベントナイト、米ぬかなどが挙げられるが、特に限定されない。
本発明の一実施形態においては、本発明の粉末状の水棲動物用経口投与薬剤は、薬効成分、炭素粉末、および油性成分を混合することによって製造されうる。この混合方法は、本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、例えば、パドルミキサー、リボンミキサー、ナウターミキサーなどを用いる混合方法が挙げられ得る。この実施形態において、薬効成分、炭素粉末、および油性成分の混合の順序は特に限定されない。本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、炭素粉末と薬効成分とを混合して、炭素粉末および薬効成分を含む混合物を形成し、前記混合物中の炭素粉末に油性成分を吸着させることを含む方法により製造されうる。本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、炭素粉末と油性成分とを混合して炭素粉末に油性成分を吸着させ、油性成分を吸着した炭素粉末と薬効成分とを混合することを含む方法により製造されうる。
本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤を製造するために使用される原料としての薬効成分は、粉末状態であってもよいし、水溶液など、溶媒中の溶液の状態であってもよい。薬効成分が薬効成分粉末である場合には、薬効成分粉末の大きさは特に限定されず、好ましくは、50メッシュを通過する大きさである。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は、炭素粉末と薬効成分粉末とを混合して、炭素粉末および薬効成分粉末を含む混合物を形成し、前記混合物中の炭素粉末に油性成分を吸着させることを含む方法により製造されうる。本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は、炭素粉末と油性成分とを混合して炭素粉末に油性成分を吸着させ、油性成分を吸着した炭素粉末と薬効成分粉末とを混合することを含む方法により製造されうる。本発明の一実施形態は、薬効成分粉末、薬剤の全重量を基準にして20~98重量%の炭素粉末、並びに薬剤の全重量を基準にして1~13重量%の油性成分を含み、薬剤中の水分量が薬剤の全重量を基準にして12重量%以下であり、薬剤中の油性成分と水分の合計量が薬剤の全重量を基準にして18重量%以下である、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤である。
本発明の一実施形態においては、薬効成分、炭素粉末、および油性成分を混合することにより製造された粉末状の水棲動物用経口投与薬剤はさらなる任意の処理、例えば、乾燥処理にかけられてもよい。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は水棲動物用飼料、好ましくは、養魚用飼料と共に使用されうる。水棲動物用経口投与薬剤と共に使用されうる水棲動物用飼料の形態は特に限定されないが、好ましくは、水棲動物用飼料は固形状、例えば、ペレット状であり、より好ましくは、エクストルーダーペレット飼料である。本発明の一実施形態においては、粉末状の水棲動物用経口投与薬剤は、水棲動物用飼料の表面上に付着した状態で存在しうる。本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、水棲動物用飼料の表面上に付着した状態で使用されうる。本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、エクストルーダーペレットの表面上に付着させられて、水棲動物に経口投与される薬剤である。
水棲動物用エクストルーダーペレット飼料の原料は、水棲動物用のエクストルーダーペレット飼料の製造のための一般的な原料であってよく、特に限定されない。また、その製造方法も一般的な方法であってよく、例えば、水棲動物用のエクストルーダーペレット飼料は、原料混合物をエクストルーダーで押出造粒して造粒物を形成し、必要であればこれを乾燥させることにより製造されうる。
また、水棲動物用エクストルーダーペレット飼料は、好ましくは、魚粉10~50重量%、大豆粕5~30重量%、澱粉1~5重量%、魚油3~30重量%、ビタミン剤1~2重量%、および水5~30重量%(合計100重量%)を原料として含むが、これに限定されるものではない。
本発明の水棲動物用経口投与薬剤が投与される対象は、魚類および十脚目などの水棲動物であれば特に限定されないが、好ましくは、スズキ目魚類、例えば、ブリ、マダイ、マアジ、カンパチ、スズキ、シマアジ、ヒラマサ、マグロ、クロマグロ、キハダマグロ、サバ、スギ、クエ、ハタ、アラ、イサキ、ティラピアなど、サケ目魚類、例えば、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、サーモントラウト、マスノスケ(キングサーモン)、銀鮭、ニジマス、ヤマメ、アマゴ、イワナ、サクラマス、サツキマス、鮎など、カレイ目魚類、例えば、ヒラメ、ホシガレイ、マコガレイ、マツカワなど、フグ目魚類、例えば、トラフグ、カワハギ、ウマヅラハギなど、コイ目魚類、例えば、コイ、レンギョ、ソウギョなど、ナマズ目魚類、例えば、ナマズ、ウナギ目魚類、例えば、ウナギが挙げられ、より好ましくは、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マダイ、マグロ、クロマグロ、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、銀鮭、ニジマス、サクラマス、サツキマス、ヒラメ、トラフグ、ティラピア、コイ、レンギョ、ソウギョ、ナマズ、ウナギが挙げられ、さらにより好ましくは、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マグロ、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、ティラピア、コイ、レンギョ、ソウギョ、ナマズ、ウナギが挙げられ得る。
本発明の一実施形態は、本発明の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与することにより、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法である。本発明の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与する態様としては、当該薬剤をそのまま水棲動物に投与する態様であってもよいし、当該薬剤が表面に付着した水棲動物用飼料、好ましくは、エクストルーダーペレット飼料を水棲動物に投与する態様であってもよい。予防および治療の対象となる疾病は、薬剤に含まれる薬効成分の予防および/または治療対象となる疾病であり、特に限定されない。また、複数種類の疾病を同時に予防、治療する態様も本発明の範囲内に含まれる。水棲動物への薬剤の投与量および投与期間は、薬効成分の種類、対象水棲動物の大きさ、水温等によっても異なり、特に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
試験例1:本発明の薬剤のエクストルーダーペレット(EP)飼料に対する展着性
薬効成分および炭素粉末を含む薬剤において、炭素粉末に油性成分(流動パラフィンまたは食用調合油(サラダ油))を添加した場合に、油性成分が炭素粉末本来のEP飼料に対する展着力にどの程度影響するかについて検証を行った。
試験例1において、以下の材料が使用された。なお、本明細書において、原料として使用される炭素粉末は炭素粉末材料とも称されうる。また、本明細書において、原料として使用される薬効成分は薬効成分材料とも称される。
薬効成分材料は、プラジクアンテル(PZQ)粉末(プラジクアンテル原末)であった。
炭素粉末材料は、100メッシュパスのサイズを有する竹炭粉末材料であった。この竹炭粉末材料は、竹炭粉末材料の重量を基準にして5.5重量%の水分を含んでいた。
油性成分は、流動パラフィン(ハイコールK-160:カネダ株式会社)または食用調合油(サラダ油、味の素株式会社)であった。
EP飼料としては、ブリ用EP(サイズ13mm、脂肪分22%)が使用された。
炭素粉末含有薬剤の調製
実施例1および2、並びに比較例1の炭素粉末含有薬剤が以下の通り調製された。下記に示される薬剤中の各成分の比率は、薬剤全重量を基準にした重量%である。
比較例1:竹炭粉末材料(80重量%)にPZQ粉末(20重量%)を添加、混合して、油性成分非含有の炭素粉末含有PZQ薬剤を調製した。
実施例1:竹炭粉末材料(75.2重量%)に流動パラフィン(4.8重量%)を添加して混合物を得た。この混合物にPZQ粉末(20重量%)を添加、混合して、流動パラフィン含有の炭素粉末含有PZQ薬剤を調製した。
実施例2:竹炭粉末材料(67重量%)に食用調合油(サラダ油)(13重量%)を添加して混合物を得た。この混合物にPZQ粉末(20重量%)を添加、混合して、食用調合油含有の炭素粉末含有PZQ薬剤を調製した。
展着性試験方法
実施例1、実施例2または比較例1の薬剤(0.2g)をEP飼料(20g)に添加、攪拌して、薬剤をEP飼料に展着させた。溶出機(NTR-6200A)に入れた人工海水500ml中にこのEP飼料を投入し、内容物を30秒間攪拌(250rpm)した。この流失操作により、EP飼料に付着した薬剤から人工海水に薬効成分が流失し、薬効成分を含む人工海水を生じさせた。溶出機から、EP飼料および人工海水をそれぞれ回収した。回収されたEP飼料および人工海水から、以下の手順に従ってHPLC用サンプルを調製した。このサンプルを以下の条件でHPLCで分析することで、人工海水中のPZQの量およびEP飼料に残存したPZQの量を特定した。また、分析が適切に行われていることを確認するために、薬剤自体、および人工海水に投入する前の、薬剤を展着させたEP飼料から、HPLC用サンプルを調製し、これらのサンプルについてもHPLC分析を行った。
HPLC用サンプルの調製方法
約1gの回収されたEP飼料または人工海水を精密に秤量し、100mLのメスフラスコに入れた。メスフラスコにエタノールを約50mLを加え、超音波を20分間掛けてPZQを溶解させた後、メスフラスコの内容物にエタノールを加えてメスフラスコの内容物を100mLに調整して、PZQ含有サンプル溶液を得た。PZQの濃度が約100μg/mLとなるようにPZQ含有サンプル溶液をエタノールで希釈した。希釈されたPZQ含有サンプル溶液を0.45μmのメンブランフィルタでろ過してHPLC用サンプルとした。
HPLC分析条件は以下の通りであった。
カラム:ODS (Waters symmetry C18, Wako Handy ODS 150mm)
移動相:アセトニトリル:水=55:45
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/min
注入量:10μL
検出:210nm
分析時間:6分
定量:絶対検量線法(PZQ標準品:和光純薬)
測定範囲:0.01~10μg/mL。
以下の表1は、薬剤自体、および人工海水に投入する前の薬剤を展着させたEP飼料についての分析結果を示す。表1中の「試供粉末原料(%)」は試験に供されたそれぞれの薬剤を分析して得られた、薬剤0.2g中のPZQの量である。表1中の「EP(ブランク)残存率(%)」は、人工海水に投入する前の、薬剤を展着させたEP飼料を分析して得られた、EP飼料に展着していたPZQの量である。表2は、流失処理後のEP飼料および人工海水についての分析結果を示す。表2中の「EP残存率(%)」は流失処理後にEP飼料に残存したPZQの量である。表2中の「流失率(%)」は流失処理後に得られた人工海水中のPZQの量である。表1および表2に示される各値は、使用した薬剤0.2g中のプラジクアンテルの量(すなわち、プラジクアンテル0.04g)を100%とした場合のパーセンテージで表したプラジクアンテルの量である。表1および表2においては、比較例1の薬剤を使用した試験区が「A無添加区」と表示され、実施例1の薬剤を使用した試験区が「B流動パラフィン区」と表示され、および実施例2の薬剤を使用した試験区が「C食用油区」と表示される。
Figure 0007368042000001
Figure 0007368042000002
炭素粉末に流動パラフィンを添加した場合の海水への薬剤流失率は4.54%であり、無添加区(対照区)が3.71%であり、差はほとんど認められなかった。サラダ油を使用した場合もEP飼料への薬剤の展着性能の低下は認められなかった。このことから、炭素粉末に油性成分を添加しても、油性成分は炭素粉末の薬剤展着性能を妨げず、海水中への薬効成分の流失を有意に抑制できることが明らかとなった。なお、表1の試供粉末原料についての結果が100%を超えていることは、実験誤差に起因していると考えられる。
試験例2:従来の展着剤を使用した場合と比較した、本発明の薬剤のエクストルーダーペレット(EP)飼料に対する展着性
試験例2においては、炭素粉末以外の従来の展着剤を使用して薬効成分を展着させたEP飼料(比較例2のEP飼料)を用いて、展着性試験が行われた。
比較例2のEP飼料は、以下のように調製された。20gのEP飼料(13mm、脂肪分22%)に、PZQ粉末(試験例1で使用されたのと同じ)およびブドウ糖(PZQ:ブドウ糖=2:8重量比)を含む粉末薬剤(0.2g)を投入し、水0.2mlを加えた後、グアガム0.2gを添加し、15分間放置することにより、薬効成分(PZQ)をEP飼料に展着させた。
比較例2のEP飼料は試験例1と同じ方法で処理され、得られたサンプルが試験例1と同じ条件でHPLC分析されて、薬効成分(PZQ)のEP飼料への残存率と溶出液中の薬剤流失率が、3回の試験を行った平均値として算出された。試験の結果は、EP残存率が38.6%であり、流出率は60.6%であった。
試験例1の実施例1および2、並びに試験例2の比較例2の結果から、炭素粉末以外の従来の展着剤を使用した場合と比較して、本発明の薬剤は海水中への薬効成分の流失を顕著に抑制できることが明らかとなった。
参考試験例3:炭素粉末の含有量が薬剤のEP飼料への展着性に及ぼす影響
参考試験例3においては、薬剤中の炭素粉末の含有量と、EP飼料への薬効成分の展着性との関連性について検討が行われた。
参考試験例3において、以下の材料が使用された。
薬効成分材料として、エリスロマイシン(EM)粉末(エリスロマイシン原末)が使用された。
炭素粉末材料として竹炭粉末(150メッシュパス、水分含有量5.6重量%)が使用された。
EP飼料として、粗脂肪22重量%、サイズ13mmのEP飼料が使用された。
展着性試験方法
表3に示される量で薬効成分材料(エリスロマイシン(EM)粉末)および炭素粉末材料(5.6重量%の水分を含む竹炭粉末)が混合されて、参考例6~10の薬剤を調製した。参考例6の薬剤は90重量%の炭素粉末材料(85.0重量%の竹炭粉末および5重量%の水分)を含んでいた。参考例7の薬剤は22重量%の炭素粉末材料(20.8重量%の竹炭粉末および1.2重量%の水分)を含んでいた。参考例8の薬剤は15重量%の炭素粉末材料(14.2重量%の竹炭粉末および0.8重量%の水分)を含んでいた。参考例9の薬剤は10重量%の炭素粉末材料(9.4重量%の竹炭粉末および0.6重量%の水分)を含んでいた。参考例10の薬剤は炭素粉末材料を含んでいなかった。参考例6~10のいずれの薬剤も、油性成分を含んでいなかった。
調製された薬剤(約0.2g)と、表2に示される量(約20g)のEP飼料とをビーカー内で1分間攪拌後、15分間放置することにより、薬剤をEP飼料に展着させた。スターラー(AZ-ONE社製)を備えたビーカーに水を500mL入れ、スターラーの回転出力50%で水を攪拌しつつ、薬剤を展着させたEP飼料を水中に投入した。15秒経過時点でEP飼料を取り出し、ビーカー内の水を回収した。以下の手順に従って、回収した水から、エリスロマイシンを定量するためのHPLC用サンプルを調製した。参考例6~10のそれぞれについて、2つの薬剤が調製された。この2つの薬剤を別個に使用して、各参考例において2回の展着性試験が行われた。
Figure 0007368042000003
HPLC用サンプルの調製方法
EM100mg(力価:EMとしての重量)程度を含むサンプル(すなわち、回収された水)を精密に秤量し、100mLのメスフラスコに入れた。メタノール25mLをメスフラスコに入れ、サンプル中に含まれるエリスロマイシンを溶解させた。この溶液にpH8.0の0.1mol/mLリン酸塩緩衝液を加えて、メスフラスコの内容物を100mLとした。(なお、リン酸塩緩衝液は、250mLの0.2mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液(このリン酸二水素カリウム水溶液はリン酸二水素カリウム27.218gを水に溶かし、1000mLとしたものであった)、230.5mLの0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(この水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウム8.0gに新たに煮沸して冷却した水を加えて溶かし、1000mLとしたものであった)、および全体を1000mLとする量の水から調製された。)メスフラスコの内容物をNo.2ろ紙でろ過した。EMの濃度が約1000μg(力価)/mLとなるように、ろ過された溶液がpH8.0の0.1mol/mLリン酸塩緩衝液で希釈されて100mLの希釈溶液を得た。この希釈溶液を0.45μmのメンブランフィルタでろ過して、HPLC用サンプルとした。
このHPLC用サンプルをHPLCで分析して、サンプルに含まれるEMの量を測定することにより、薬剤を展着させたEP飼料を水に投入した際の水中に流失したEMの量を特定し、下記式に従って、EMの流失率を算出した:
薬効成分の流失率=[水中のEMの総重量/EP飼料に展着させたEMの総重量(表2に示されるEMの重量)]。
また、それぞれの参考例について、2回の実験の平均および標準偏差(SD)を算出した。
HPLC分析条件は以下の通りであった。
HPLC装置:Waters e2695、
カラム:C18, Wako Handy ODS 150mm
移動相:アセトニトリル:水:25%アンモニア水=75:25:0.3
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
検出:UV(215nm)
定量:絶対検量線法(エリスロマイシン標準品:和光純薬)
測定範囲:100~10000μg/mL。
結果は表4に示される。
Figure 0007368042000004
竹炭粉末の量が85.0重量%の場合(参考例6)、薬効成分の流失率は2.35%であった。竹炭粉末の量が20.8重量%の場合(参考例7)、薬効成分の流失率は7.89%であった。竹炭粉末の量が14.2重量%の場合(参考例8)、薬効成分の流失率は11.40%であった。竹炭粉末の量が9.4重量%の場合(参考例9)、薬効成分の流失率は55.37%であった。竹炭粉末の量が0重量%の場合(参考例10)、薬効成分の流失率は62.11%であった。参考試験例3において検討された薬剤には油性成分が含まれていない。しかし、試験例1において示されるように、炭素粉末に添加された油性成分は、炭素粉末の薬剤展着性能を妨げない。よって、参考試験例3および試験例1の結果から、薬剤が油性成分を含む場合であっても、薬剤に炭素粉末を15重量%以上配合すれば、薬効成分の海水中への流失を抑制でき、水棲動物用の経口投与に適した医薬品を提供できることが推察される。
試験例4:油性成分の量が薬剤の飛散性および固形化に及ぼす影響
試験例4においては、薬効成分および炭素粉末を含む薬剤の飛散性および固形化に対して油性成分が及ぼす影響についての検討が行われた。
薬剤1~7として、表5に示される成分を、表5に示される量(薬剤の全重量を基準にした重量%)で含む粉末状の薬剤を調製した。
これら薬剤を調製するために使用された材料は以下の通りである。
薬効成分材料としては、エリスロマイシン(EM)原末またはオキシテトラサイクリン(OTC)原末が使用され、それぞれの薬効成分を含む薬剤の飛散性および固形化が確認された。例えば、表5の薬剤1として、EMを含む薬剤およびOTCを含む薬剤が調製され、それぞれの薬効成分を含む薬剤の飛散性および固形化が検討された。薬効成分の量は薬剤の全重量を基準にして20重量%であった。
炭素粉末材料としては竹炭粉末(150メッシュパス)が使用された。竹炭粉末の量は、薬効成分(20重量%)、水分(5重量%)および流動パラフィン(0~14重量%)を除いた残量全部であった。
水分の量は薬剤の全重量を基準にして5重量%であった。
油性成分としては、流動パラフィン(ハイコールK-160:カネダ株式会社)が使用された。流動パラフィンの量は、表5に示される通り、薬剤の全重量を基準にして0~14重量%の範囲であった。
それぞれの薬剤の飛散性および固形化が検討された。結果が表5に示される。
表5において、薬剤1および7は比較例であり、薬剤2~6が本発明の実施例に該当する。
薬剤の飛散性試験は、養殖現場で飼料に薬剤を展着させる際に薬剤が飛散することをシミュレートする試験である。薬剤の飛散性の評価は、製造された粉末薬剤を上部から落下させ、落下中の粉末薬剤が扇風機による一定の風を受けた際の、粉末薬剤の飛散の程度を目視確認したものである。
評価基準は以下の通りであった:
○(飛散性に問題無し)、
△(少し飛散性に問題あるが我慢すれば使えるレベル)、
×(風の影響が大きすぎて養殖現場での使用に不適)。
評価〇および△を合格とし、評価×を不合格とした。結果は表5の「飛散性」の欄に示される。
薬剤の固形化試験は、調製されたそれぞれの粉末薬剤を開口1ミリ/18メッシュの試験篩(東京スクリーン株式会社製)でふるって固まりが残るかどうかで評価した。
評価基準は以下の通りであった:
○(全量通過)、
△(少しダマのような固まりが残るが手で触ると直ぐにつぶれる)、
×(大きな固まりが残り、製剤として不適)。
評価結果が〇および△の場合を合格とし、×の場合を不合格とした。結果は表5の「固形化」の欄に示される。
Figure 0007368042000005
流動パラフィンの量が1重量%未満の場合には、飛散性に問題があり現場での使用には適さないと推察される。流動パラフィンの量が14重量%以上の場合には、薬剤の塊(ダマ)ができて製剤として適さないと推察される。
試験例5:保存によるABPCの力価の変化に対して油性成分が及ぼす影響
炭素粉末を医薬品の賦形剤として使用する場合、添加剤(液体)を加えなければ竹炭の飛散が激しく、養殖現場での使用が困難となる。しかし、加える添加剤の種類によっては、薬剤の力価(薬効成分の含有量)を低下させてしまう恐れがある。そこで添加剤として適した物質について検討が行われた。試験例5においては、以下の薬剤A~Eが調製された。
薬剤A:9gの竹炭粉末材料に1gのアンピシリン(ABPC)原末を添加、混合して薬剤を調製した。
薬剤B:9gの竹炭粉末材料に1gのABPC原末および0.9gの水を添加、混合して薬剤を調製した。
薬剤C:9gの竹炭粉末材料に1gのABPC原末および0.48gの流動パラフィンを添加、混合して薬剤を調製した。
薬剤D:9gの竹炭粉末材料に1gのABPC原末および1.3gのサラダ油を添加、混合して薬剤を調製した。
薬剤E:9gの竹炭粉末材料に1gのABPC原末を添加、混合して薬剤を調製した。
薬剤A、B、およびEは比較例であり、薬剤CおよびDは本発明の実施例である。
薬剤A~Eの製造に使用された材料は以下の通りであった。
アンピシリン(ABPC)原末は、粉末状のアンピシリン水和物原末であった。
竹炭粉末材料は、150メッシュパスのサイズを有し、使用された竹炭粉末材料中に5.5重量%の水分を含んでいた。すなわち、使用された9gの竹炭粉末材料中には0.5gの水分が存在していた。
流動パラフィンはカネダ株式会社のハイコールK-160であった。
サラダ油は味の素株式会社の食用調合油であった。
薬剤A~Dは温度40℃、湿度75%の加速条件下に7日間配置され、加速試験が行われた。一方、薬剤Eは加速のない通常環境下に7日間配置された。7日間の試験期間の経過後、以下の手順に従って、各薬剤からHPLC分析用サンプルが調製された。それぞれのサンプルを以下の条件でHPLCで分析して、サンプル中のABPCの量を特定した。試験開始時(0日目)におけるそれぞれの薬剤中のABPCの量も特定した。これらABPC含有量の測定値に基づいて、試験開始時から7日後までの力価の変化を確認した。図1の縦軸は、薬剤に1gのABPCが含まれている場合を100%としたときの、各薬剤に含まれるABPCの量を%で表した値を示す。
HPLC用サンプルの調製方法
ABPC100mg(力価)程度となるような量で薬剤を精密に秤量して、100mLのメスフラスコに入れた。HPLC分析で使用される移動相を加えメスフラスコ内容物を100mLにした。超音波洗浄器内で3分間、メスフラスコ内容物を振り混ぜ、ABPCを移動相に溶解させ、ABPC溶液を得た。No.2ろ紙でABPC溶液をろ過した。ABPCが約1000μg(力価)/mLとなるようにABPC溶液を移動相で希釈した。希釈されたABPC溶液を0.45μmのメンブランフィルタでろ過してHPLC用サンプルとした。
HPLC分析条件は以下の通りであった。
カラム:ODS(Wakosil II 5C18、(Waters Symmetry C18)
移動相:水850mLにリン酸水素二アンモニウム5.943gを溶かして得られた溶液にアセトニトリル100mLを加え、リン酸でこの溶液のpHを約5に調整した後、水を加えて1000mLとしたものを移動相として使用した。
カラム温度:30℃
流量:1.0mL/min
注入量:10μL
検出:230nm
分析時間:6分
定量:絶対検量線法(ABPC標準品:和光純薬)。
結果が図1に示される。水を加えた薬剤BにおけるABPCの力価は著しく低下した。一方、流動パラフィン、またはサラダ油を含む薬剤Cおよび薬剤Dでは、ABPCの力価の低下は認められなかった。なお、サラダ油は、流動パラフィンと比較して粘性が強く、均一に混合することが困難な傾向があった。これらのテストにより、力価に影響を与えない飛散防止剤として使用できる添加剤として、流動パラフィンおよびサラダ油は有力であり、特に流動パラフィンが有力であると考えられた。
本願発明の水棲動物用経口投与薬剤は水棲動物の養殖に使用されうる。

Claims (8)

  1. 薬効成分であるアンピシリン
    薬剤の全重量を基準にして15~98重量%の炭素粉末、並びに
    薬剤の全重量を基準にして1~13重量%の油性成分を含み、
    薬剤中の水分量が薬剤の全重量を基準にして12重量%以下であり、
    薬剤中の油性成分と水分の合計量が薬剤の全重量を基準にして9.35~15.93重量%である、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤。
  2. 油性成分が流動パラフィンおよび植物油からなる群から選択される、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  3. 炭素粉末が竹炭粉末、ヤシガラ炭粉末および木炭粉末からなる群から選択される、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  4. 炭素粉末の粒径が50メッシュを通過する大きさである、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  5. エクストルーダーペレット飼料と共に使用するための、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  6. 炭素粉末と薬効成分とを混合して、炭素粉末および薬効成分を含む混合物を形成し、前記混合物中の炭素粉末に油性成分を吸着させることを含む請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤を製造する方法。
  7. 炭素粉末と油性成分とを混合して炭素粉末に油性成分を吸着させ、油性成分を吸着した炭素粉末と薬効成分とを混合することを含む、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤を製造する方法。
  8. 請求項1~5のいずれか1項に記載の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与することにより、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法。
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