JP7368043B2 - 水棲動物用経口投与薬剤 - Google Patents

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Description

本開示は、薬効成分、炭素粉末および水分を含み、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤に関する。さらに、本開示は、当該水棲動物用経口投与薬剤の製造方法、および当該水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与して、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法に関する。
水棲動物の養殖においては、水棲動物を養殖している生簀の外から中へ病原菌および寄生虫が侵入しうるので、これらに起因する水棲動物の疾病の予防、治療を常に考えておかなければならない。疾病を治療するために、一般的には、疾病に応じた薬剤を水棲動物用飼料に付着または混入させ、この水棲動物用飼料が水棲動物に投与されている。近年、マダイやブリの養殖においては、養殖魚の肉質が良くなること、および養殖作業が楽になることなどの理由から、従来の混ぜ込み飼料、すなわち、モイストペレット(MP)飼料が人工固形飼料であるエクストルーダーペレット(EP)飼料に移り変わりつつある。MP飼料を用いて薬剤を魚に投与する場合には、飼料の中に薬剤を練り込むことができるので、確実に魚に薬剤を投与することができた。
一方、EP飼料の場合には、薬剤をEP飼料に混ぜ込むことができないので、グアガムなどの水溶性展着剤を用いて薬剤をEP飼料の表面に付着させたものを魚に投与していた。しかし、EP飼料は多量に脂質を含むので、水溶性展着剤はEP飼料に対して有効ではなく、投与の際に、薬剤がEP飼料の表面から機械的に剥離すると共に、水中で薬剤が飼料から容易に離脱する。EP飼料の場合には、付着した薬剤の50%以上が海水中に流失し、魚体内に取り込まれない場合がある。薬剤の環境水中への流失は、単なる経済的損失をもたらすだけでなく、薬剤耐性菌の出現という危険性をもたらしうる。また、従来の水溶性展着剤を使用する場合には、薬剤をEP飼料に付着させるために使用される機具に水溶性展着剤と薬剤との混合物が付着し、薬剤が機具に残留する恐れがあった。薬剤が残留している機具を用いて出荷直前の魚に投餌をすると、出荷時に魚体内から残留した薬剤が検出され出荷停止となる可能性がある。
上述の問題を解決するために、特許文献1(特開2006-340622号公報)には、EP飼料と薬剤との結合に展着剤として炭素粉末を使用するという技術が報告されている。炭素粉末を展着剤として利用する場合には、使う人によって使いこなす技術が異なり、同じ薬剤を同じ量で混ぜても、治療効果に大きな差が出る場合があった。
炭素粉末を展着剤として使用するのではなく、炭素粉末を薬剤の賦形剤として使用する技術が報告されている(特許文献2:特開2007-523108号公報)。また、薬効成分および炭素粉末を含む薬剤として、薬効成分および炭素粉末を含む混合物を造粒する工程を含む方法で形成された固形状の魚類用経口投与薬剤が報告されている(特許文献3:特開2017-8012号公報)。本発明者が検討したところ、炭素粉末を賦形剤として使った薬剤は、炭素粉末が元来有する吸水力のために、長期間保存中に薬効成分の力価が顕著に低下するものがあった。なお、水棲動物の養殖において炭素粉末が展着剤として使用される場合には、炭素粉末を薬効成分と混ぜてから直ぐに水棲動物に投与し、長期間保存することはない。よって、炭素粉末の吸水性は、展着剤としての炭素粉末の使用を否定するものではないので、炭素粉末を賦形剤として使用した場合の薬効成分の力価の低下は予想外であった。
炭素粉末を賦形剤として使用することによる上述の問題を回避するために、炭素粉末に含まれる水分量を低減させることが考えられた。しかし、炭素粉末は比重が軽いので、炭素粉末に含まれる水分量を低減させると、養殖作業中に風の影響を受けて炭素粉末が飛散し易いという欠点が生じることが明らかとなった。このように、炭素粉末を薬剤の賦形剤として使用する場合には、力価の低下の抑制と養殖現場での飛散の抑制などの取扱性とのバランスを取らなければならないことが明らかとなった。
特開2006-340622号公報 特開2007-523108号公報 特開2017-8012号公報
本発明の目的は、保存中の薬効成分の力価の低下を抑制でき、取扱いの際に飛散しにくく、かつ飼料への付着性に優れた水棲動物用経口投与薬剤を提供することである。
本発明の一実施形態は、薬剤の全重量を基準にして0.1重量%以上の薬効成分、薬剤の全重量を基準にして15~96.9重量%の炭素粉末、並びに薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の水分を含み、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤を提供する。
本発明の一実施形態は、薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の量の水分を含む炭素粉末を調製し、前記水分を含む炭素粉末と薬効成分とを混合することを含む、上述の水棲動物用経口投与薬剤を製造する方法を提供する。
本発明の一実施形態は、上述の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与することにより、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法を提供する。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は、保存中の薬効成分の効力の低下を抑制でき、飼料に付着させる際など取扱いの際に飛散しにくく、かつ飼料への付着性に優れるという有利な効果を奏する。
EP飼料に展着した薬剤から薬効成分が水中に流失する割合と、薬剤中の炭素粉末の含有量との関連性を表すグラフである。 11~15重量%の水分を含む薬剤を保存した場合の、薬剤に残存するエリスロマイシンの力価の経時的変化を表すグラフである。 20~25重量%の水分を含む薬剤を保存した場合の、薬剤に残存するエリスロマイシンの力価の経時的変化を表すグラフである。
本発明の一実施形態は、薬剤の全重量を基準にして0.1重量%以上の薬効成分、薬剤の全重量を基準にして15~96.9重量%の炭素粉末、並びに薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の水分を含み、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤である。
本発明においては、薬効成分は水棲動物に何らかの有用な作用を及ぼす成分であればよく、特に限定されるものではない。本発明の一実施形態においては、薬効成分は、水棲動物の疾病を予防および/もしくは治療するような薬効成分、並びに水棲動物の健康を維持し、および/もしくは肉質を改善する様な薬効成分でありうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分は、例えば、抗生物質、合成抗菌剤、駆虫剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、および色調強化剤(例えば、カロテノイド)等でありうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分は、マクロライド系、テトラサイクリン系、フルオロキノロン系、チアンフェニコール系、ベンズイミダゾール系、サルファ剤系、ウルソデオキシコール酸、アミノ酸類、水溶性ビタミン類(例えば、ビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸、B6、ビオチン、B12、葉酸、およびアスコルビン酸など)、脂溶性ビタミン類(例えば、ビタミンA、D、およびEなど)、ミネラル類、カロテノイド(例えば、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カロテン類、およびルテインなど)等の薬効成分からなる群から選択されうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分としては、例えば、プラジクアンテル(PZQ)、サリチルアニリド系の薬剤、イベルメクチン、エリスロマイシン(EM)、オキシテトラサイクリン(OTC)、フロルフェニコール、チアンフェニコール、オキソリン酸、スルファモノメトキシンナトリウム(ダイメトン(登録商標)ソーダ)、スルフィゾールナトリウム(イスラン(登録商標)ソーダ)、ST製剤(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)、フェバンテル、アルベンダゾール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、グルタチオン、およびアスタキサンチンなどが挙げられうる。本発明の一実施形態においては、薬効成分はオキシテトラサイクリンでありうる。薬効成分は化合物自体だけでなく、その水和物およびその塩の形態であっても良い。例えば、オキシテトラサイクリンは塩酸塩の形態であっても良い。また、本発明の水棲動物用経口投与薬剤に含まれる薬効成分は1種類だけでなく複数種類であってもよく、複数種類のものとしては、プラジクアンテルとオキシクロザニドを含む合剤、およびST製剤(スルファメトキサゾールおよびトリメトプリムの合剤)が挙げられるがこれに限定されない。
本発明の一実施形態において、水棲動物用経口投与薬剤に含まれる薬効成分の量は、薬剤の全重量を基準にして0.1重量%以上であり、好ましくは、0.1~77重量%であり、より好ましくは、1~70重量%である。
本発明においては、炭素粉末は任意の物質に由来するものであって良い。例えば、炭素粉末は、備長炭、黒炭等の木炭、ヤシガラ炭、コーヒー炭、竹炭、活性炭など任意の炭を粉末にすることにより調製することができる。本発明の一実施形態においては、炭素粉末としては、竹炭粉末、木炭粉末、ヤシガラ炭粉末、コーヒー炭粉末、および活性炭粉末などが挙げられうる。本発明の一実施形態においては、好ましくは、炭素粉末は、竹炭粉末、木炭粉末およびヤシガラ炭粉末からなる群から選択され、より好ましくは、炭素粉末は竹炭粉末またはヤシガラ炭粉末であり、さらにより好ましくは、炭素粉末は竹炭粉末である。
炭素粉末の大きさは本発明の目的に反しない限り特に限定されるものではないが、炭素粉末の粒径は、好ましくは、50メッシュを通過する大きさである。本明細書において、粒子の大きさについて、「Xメッシュを通過する大きさ」は「Xメッシュパス」とも称され、「Xメッシュを通過するがYメッシュを通過しない大きさの範囲」は「XメッシュパスYメッシュオン」とも称される。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤に含まれる炭素粉末の量は、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、15~96.9重量%であり、より好ましくは、30~90重量%である。
本発明の一実施形態においては、保存中の薬効成分の力価の低下を抑制し、かつ粉末薬剤の固形化を防止するという観点から、水棲動物用経口投与薬剤中の水分量は、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、15重量%以下であり、より好ましくは、12重量%以下である。本発明の一実施形態においては、養殖作業中での炭素粉末の飛散を抑制し、作業性を向上させるという観点から、水棲動物用経口投与薬剤中の水分は、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、3重量%以上であり、より好ましくは、4重量%以上である。本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤中の水分量が、薬剤の全重量を基準にして、好ましくは、3~15重量%であり、より好ましくは、4~12重量%である。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は造粒されていない粉末状である。「造粒されていない粉末状」とは、特許文献3(特開2017-8012号公報)に開示された「薬効成分および炭素粉末を含む混合物を造粒する工程を含む方法によって形成された、固形状の魚類用経口投与薬剤」との違いを明確にするものである。すなわち、特許文献3に開示された発明の薬剤は、加圧を用いるか、デンプン、小麦粉などのバインダーを使用するなどして、薬効成分および炭素粉末の混合物が造粒されて、一体となった成形体(例えば、顆粒状、錠剤状、ペレット状など)の形状を有する。一方、本発明の薬剤は、「造粒されていない粉末状」であり、特許文献3に開示された薬剤とは異なる。
本発明の一実施形態においては、手で触れるとすぐに壊れる塊が粉末状混合物の中に部分的に存在するような場合、そのような塊は、造粒され一体となった固形状の成形体には該当しない。
本発明において、「水棲動物」とは、水中に生息する動物であり、例えば、魚類、並びに、エビおよびカニなどの十脚目が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、水棲動物は魚類である。
本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、本発明の目的に反しない限りは、炭素粉末および水分以外の任意の他の材料、例えば、賦形剤などをさらに含んでいてもよい。賦形剤としては、ブドウ糖、乳糖、炭酸カルシウム、タルク、ベントナイト、米ぬかなどが挙げられるが、特に限定されない。
本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、原料としての薬効成分、炭素粉末、および水分を混合することによって製造されうる。原料として使用される炭素粉末および/または薬効成分が、薬剤に含まれるのに充分な量の水分を含んでいる場合には、本発明の薬剤は追加の水分を加えることなく、これら原料を混合することにより製造されうる。(本明細書において、原料として使用される炭素粉末は炭素粉末材料とも称されうる。また、本明細書において、原料として使用される薬効成分は薬効成分材料とも称されうる。)この混合方法は、本発明の目的に反しない限り特に限定されないが、例えば、パドルミキサー、リボンミキサー、ナウターミキサーなどを用いる混合方法が挙げられ得る。この実施形態において、薬効成分、炭素粉末、および水分の混合の順序は特に限定されないが、薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の量の水分を含む炭素粉末を調製した後で、当該水分を含む炭素粉末と薬効成分とを混合するのが好ましい。
本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤を製造するために使用される原料としての薬効成分は、粉末状態であってもよいし、水溶液など、溶媒中の溶液の状態であってもよい。原料として使用される薬効成分が薬効成分粉末である場合には、薬効成分粉末の大きさは特に限定されず、好ましくは、50メッシュを通過する大きさである。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は、薬剤の全重量を基準にして3~15重量%となる量の水分を含む炭素粉末と、薬効成分粉末とを混合することにより製造されうる。本発明の別の実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は、水分を含んでいてもよい炭素粉末と、薬効成分粉末と、追加の水分とを混合することにより製造されうる。本発明の一実施形態は、薬剤の全重量を基準にして0.1重量%以上の薬効成分粉末、薬剤の全重量を基準にして15~96.9重量%の炭素粉末、並びに薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の水分を含み、造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤である。
本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、密封容器に封入されていてもよい。密封容器に封入することにより、薬剤中に含まれる水分の低下および増大を抑制でき、薬剤を適切な状態に維持できる。密封容器としては、封入された薬剤中の水分の変動を抑制できるものであれば特に限定されない。例えば、密封容器としては、アルミ箔袋、ポリプロピレン袋などが挙げられるが特に限定されない。また、密封容器は二重以上の層により形成された容器であっても良い。
本発明の一実施形態においては、水棲動物用経口投与薬剤は水棲動物用飼料、好ましくは、養魚用飼料と共に使用されうる。水棲動物用経口投与薬剤と共に使用されうる水棲動物用飼料の形態は特に限定されないが、好ましくは、水棲動物用飼料は固形状、例えば、ペレット状であり、より好ましくは、エクストルーダーペレット(EP)飼料である。本発明の一実施形態においては、粉末状の水棲動物用経口投与薬剤は、水棲動物用飼料の表面上に付着した状態で存在しうる。本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、水棲動物用飼料の表面上に付着した状態で使用されうる。本発明の一実施形態においては、本発明の水棲動物用経口投与薬剤は、エクストルーダーペレットの表面上に付着させられて、水棲動物に経口投与される薬剤である。
水棲動物用エクストルーダーペレット飼料の原料は、水棲動物用のエクストルーダーペレット飼料の製造のための一般的な原料であってよく、特に限定されない。また、その製造方法も一般的な方法であってよく、例えば、水棲動物用のエクストルーダーペレット飼料は、原料混合物をエクストルーダーで押出造粒して造粒物を形成し、必要であればこれを乾燥させることにより製造されうる。
また、水棲動物用エクストルーダーペレット飼料は、好ましくは、魚粉10~50重量%、大豆粕5~30重量%、澱粉1~5重量%、魚油3~30重量%、ビタミン剤1~2重量%、および水5~30重量%(合計100重量%)を原料として含むが、これに限定されるものではない。
本発明の水棲動物用経口投与薬剤が投与される対象は、魚類および十脚目などの水棲動物であれば特に限定されないが、好ましくは、スズキ目魚類、例えば、ブリ、マダイ、マアジ、カンパチ、スズキ、シマアジ、ヒラマサ、マグロ、クロマグロ、キハダマグロ、サバ、スギ、クエ、ハタ、アラ、イサキ、ティラピアなど、サケ目魚類、例えば、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、サーモントラウト、マスノスケ(キングサーモン)、銀鮭、ニジマス、ヤマメ、アマゴ、イワナ、サクラマス、サツキマス、鮎など、カレイ目魚類、例えば、ヒラメ、ホシガレイ、マコガレイ、マツカワなど、フグ目魚類、例えば、トラフグ、カワハギ、ウマヅラハギなど、コイ目魚類、例えば、コイ、レンギョ、ソウギョなど、ナマズ目魚類、例えば、ナマズ、ウナギ目魚類、例えば、ウナギが挙げられ、より好ましくは、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マダイ、マグロ、クロマグロ、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、銀鮭、ニジマス、サクラマス、サツキマス、ヒラメ、トラフグ、ティラピア、コイ、レンギョ、ソウギョ、ナマズ、ウナギが挙げられ、さらにより好ましくは、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マグロ、タイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)、ティラピア、コイ、レンギョ、ソウギョ、ナマズ、ウナギが挙げられ得る。
本発明の一実施形態は、本発明の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与することにより、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法である。本発明の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与する態様としては、当該薬剤をそのまま水棲動物に投与する態様であってもよいし、当該薬剤が表面に付着した水棲動物用飼料、好ましくは、エクストルーダーペレット飼料を水棲動物に投与する態様であってもよい。予防および治療の対象となる疾病は、薬剤に含まれる薬効成分の予防および/または治療対象となる疾病であり、特に限定されない。また、複数種類の疾病を同時に予防、治療する態様も本発明の範囲内に含まれる。水棲動物への薬剤の投与量および投与期間は、薬効成分の種類、対象水棲動物の大きさ、水温等によっても異なり、特に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
試験例1:本発明の薬剤のエクストルーダーペレット(EP)飼料への展着性
試験例1においては、炭素粉末ではない従来の展着剤を使用して薬効成分をEP飼料に展着させた場合と比較して、本発明の薬剤の展着性が検討された。
薬剤を展着させたEP飼料の調製方法は以下の通りであった。
実施例1:実施例1の薬剤を製造するために使用された炭素粉末材料は、炭素粉末材料の重量を基準にして5.6重量%の水分を含み、かつ100メッシュパスのサイズを有する竹炭粉末であった。また、実施例1の薬剤を製造するために使用された薬効成分材料は、プラジクアンテル(PZQ)粉末(プラジクアンテル原末、100メッシュパス)であった。0.18gの炭素粉末材料および0.02gの薬効成分粉末材料を混合することにより粉末薬剤が調製された。調製された薬剤中の竹炭粉末、PZQ、および水分の量は、薬剤の全重量を基準にしてそれぞれ、74.4重量%、20重量%、および5.6重量%であった。この薬剤(0.2g)を20gのEP飼料(サイズ13mm、脂肪分22%)に投入し、1分間攪拌後、15分間放置して、本発明の薬剤を展着させたEP飼料が得られた。
比較例2:20gのEP飼料(サイズ13mm、脂肪分22%)に、PZQ粉末およびブドウ糖(PZQ:ブドウ糖=2:8重量比)を含む粉末薬剤(0.2g)を投入し、水0.2mLを加えた後、グアガム0.2gを添加し、15分間放置することにより、薬効成分(PZQ)をEP飼料に展着させた。
溶出試験方法
攪拌バーを備えたビーカーに人工海水を500mL入れ、攪拌バーを150rpmで回転させつつ、実施例1または比較例2の薬剤を展着させたEP飼料を人工海水に投入し、1秒後、5秒後、および30秒後に、人工海水およびEP飼料の一部分をそれぞれ回収した。下記のHPLCサンプルの調製方法に従って、回収した人工海水およびEP飼料からHPLC用サンプルを調製した。下記のHPLC条件で、それぞれのサンプルをHPLCで分析して、人工海水中のPZQの量およびEP飼料に残存したPZQの量を特定した。流失率は下記式に従って特定された:
流失率=(人工海水中のPZQの総重量)/(人工海水中のPZQの総重量+EP飼料に残存したPZQの総重量)。
HPLC用サンプルの調製方法
約1gの回収されたEP飼料または人工海水を精密に秤量し、100mLのメスフラスコに入れた。メスフラスコにエタノールを約50mLを加え、超音波を20分間掛けてPZQを溶解させた後、メスフラスコの内容物にエタノールを加えてメスフラスコの内容物を100mLに調整して、PZQ含有サンプル溶液を得た。PZQの濃度が約100μg/mLとなるようにPZQ含有サンプル溶液をエタノールで希釈した。希釈されたPZQ含有サンプル溶液を0.45μmのメンブランフィルタでろ過してHPLC用サンプルとした。
HPLC分析条件は以下の通りであった。
カラム:C18, Wako Handy ODS 150mm
移動相:アセトニトリル:水=60:40
カラム温度:室温
流量:1.0ml/min
注入量:10μL
検出:UV(210nm)
分析時間:8分
定量:絶対検量線法(PZQ標準品:和光純薬)
測定範囲:0.01~10μg/mL。
炭素粉末を使用した本発明の薬剤の場合(実施例1)には、人工海水への薬効成分の流失率は1秒後で10.3%、5秒後で12.9%、および30秒後で12.9%であった。一方、展着剤としてグアガムを使用した場合(比較例2)には、人工海水への薬効成分の流失率は1秒後で17.0%、5秒後で41.0%、および30秒後で61.8%であった。このことから、炭素粉末を含む本発明の薬剤は、炭素粉末を使用せず従来の展着剤を使用した薬剤よりも、海水中への薬効成分の流失を有意に抑制できることが明らかとなった。
試験例2:本発明の薬剤のEP飼料への展着性
試験例2においては、炭素粉末の種類を変えた場合における、本発明の薬剤のEP飼料への展着性の違いが検討された。
試験例2において、以下の材料が使用された。
薬効成分材料として、プラジクアンテル(PZQ)粉末(プラジクアンテル原末、100メッシュパス)が使用された。
炭素粉末材料として竹炭粉末(炭素粉末原料の重量を基準にして5.6重量%の水分を含んでいた)、ヤシガラ炭粉末(炭素粉末原料の重量を基準にして5.0重量%の水分を含んでいた)、および活性炭粉末(炭素粉末原料の重量を基準にして1.0重量%の水分を含んでいた)が使用された。
EP飼料としては、ブリ用EP(13mm、脂肪分22%)が使用された。
炭素粉末含有薬剤の調製
実施例3~5の炭素粉末含有薬剤が以下に示されるように調製された。
実施例3:竹炭粉末(0.4g)にPZQ粉末(0.13g)を添加、混合して炭素粉末含有PZQ薬剤を調製した。実施例3の薬剤は、薬剤全体の重量を基準にして4.5重量%の水分を含んでいた。
実施例4:ヤシガラ炭粉末(0.4g)にPZQ粉末(0.13g)を添加、混合して炭素粉末含有PZQ薬剤を調製した。実施例4の薬剤は、薬剤全体の重量を基準にして4.0重量%の水分を含んでいた。
実施例5:活性炭粉末(0.4g)にPZQ粉末(0.13g)を添加、混合して炭素粉末含有PZQ薬剤を調製した。実施例5の薬剤は、薬剤全体の重量を基準にして0.8重量%の水分を含んでいた。
展着性試験方法
500mlビーカー内で20gのEP飼料と実施例3、実施例4または実施例5の薬剤(0.53g)とを1分間攪拌、混合し、15分間放置して、EP飼料に薬剤を展着させた。
溶出試験機(NTR-6200A)内で、パドルを150rpmで回転させつつ、人工海水500ml中に、実施例3、実施例4または実施例5の薬剤を展着させたEP飼料を投入し、内容物を1分間攪拌(150rpm)した。この操作により、EP飼料に付着した薬剤から人工海水に薬効成分(PZQ)が流失し、薬効成分を含む人工海水を生じさせた。溶出試験機から、EP飼料および人工海水をそれぞれ回収した。回収されたEP飼料および人工海水から、HPLC用サンプルを調製した。このサンプルをHPLCで分析することで人工海水中のPZQの量およびEP飼料に残存したPZQの量を特定した。HPLC用サンプルの調製方法およびHPLC測定条件は試験例1と同じであった。結果を表1に示す。表1中の流失率は3回の試験で得られた値の平均値である。
Figure 0007368043000001
炭素粉末が竹炭粉末、ヤシガラ炭粉末、および活性炭粉末のいずれの場合であっても、炭素粉末を含む薬剤はEP飼料に対して良好な展着力を示した。
試験例3:本発明の薬剤のEP飼料への展着性
試験例3においては、薬剤中の炭素粉末の含有量と、EP飼料への薬効成分の展着性との関連性について検討が行われた。
試験例3において、以下の材料が使用された。
薬効成分材料として、エリスロマイシン(EM)粉末(エリスロマイシン原末)が使用された。
炭素粉末材料として竹炭粉末(150メッシュパス、水分含有量5.6重量%)が使用された。
EP飼料として、粗脂肪22重量%、サイズ13mmのEP飼料が使用された。
展着性試験方法
表2に示される量で薬効成分材料(エリスロマイシン(EM)粉末)および炭素粉末材料(5.6重量%の水分を含む竹炭粉末)が混合されて、実施例6~8および比較例9~10の薬剤を調製した。実施例6の薬剤は90重量%の炭素粉末材料(85.0重量%の竹炭粉末および5重量%の水分)を含んでいた。実施例7の薬剤は22重量%の炭素粉末材料(20.8重量%の竹炭粉末および1.2重量%の水分)を含んでいた。実施例8の薬剤は15重量%の炭素粉末材料(14.2重量%の竹炭粉末および0.8重量%の水分)を含んでいた。比較例9の薬剤は10重量%の炭素粉末材料(9.4重量%の竹炭粉末および0.6重量%の水分)を含んでいた。比較例10の薬剤は炭素粉末材料を含んでいなかった。
調製された薬剤(約0.2g)と、表2に示される量(約20g)のEP飼料とをビーカー内で1分間攪拌後、15分間放置することにより、薬剤をEP飼料に展着させた。スターラー(AZ-ONE社製)を備えたビーカーに水を500mL入れ、スターラーの回転出力50%で水を攪拌しつつ、薬剤を展着させたEP飼料を水中に投入した。15秒経過時点でEP飼料を取り出し、ビーカー内の水を回収した。以下の手順に従って、回収した水から、エリスロマイシンを定量するためのHPLC用サンプルを調製した。実施例6~8および比較例9~10のそれぞれについて、2つの薬剤が調製された。この2つの薬剤を別個に使用して、各実施例および比較例において2回の展着性試験が行われた。
Figure 0007368043000002
HPLC用サンプルの調製方法
EM100mg(力価:EMとしての重量)程度を含むサンプル(すなわち、回収された水)を精密に秤量し、100mLのメスフラスコに入れた。メタノール25mLをメスフラスコに入れ、サンプル中に含まれるエリスロマイシンを溶解させた。この溶液にpH8.0の0.1mol/mLリン酸塩緩衝液を加えて、メスフラスコの内容物を100mLとした。(なお、リン酸塩緩衝液は、250mLの0.2mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液(このリン酸二水素カリウム水溶液はリン酸二水素カリウム27.218gを水に溶かし、1000mLとしたものであった)、230.5mLの0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(この水酸化ナトリウム水溶液は、水酸化ナトリウム8.0gに新たに煮沸して冷却した水を加えて溶かし、1000mLとしたものであった)、および全体を1000mLとする量の水から調製された。)メスフラスコの内容物をNo.2ろ紙でろ過した。EMの濃度が約1000μg(力価)/mLとなるように、ろ過された溶液がpH8.0の0.1mol/mLリン酸塩緩衝液で希釈されて100mLの希釈溶液を得た。この希釈溶液を0.45μmのメンブランフィルタでろ過して、HPLC用サンプルとした。
このHPLC用サンプルをHPLCで分析して、サンプルに含まれるEMの量を測定することにより、薬剤を展着させたEP飼料を水に投入した際の水中に流失したEMの量を特定し、下記式に従って、EMの流失率を算出した:
薬効成分の流失率=[水中のEMの総重量/EP飼料に展着させたEMの総重量(表2に示されるEMの重量)]。
また、それぞれの実施例または比較例について、2回の実験の平均および標準偏差(SD)を算出した。
HPLC分析条件は以下の通りであった。
HPLC装置:Waters e2695、
カラム:C18, Wako Handy ODS 150mm
移動相:アセトニトリル:水:25%アンモニア水=75:25:0.3
カラム温度:40℃
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
検出:UV(215nm)
定量:絶対検量線法(エリスロマイシン標準品:和光純薬)
測定範囲:100~10000μg/mL。
結果は表3および図1に示される。
Figure 0007368043000003
竹炭粉末の量が85.0重量%の場合(実施例6)、薬効成分の流失率は2.35%であった。竹炭粉末の量が20.8重量%の場合(実施例7)、薬効成分の流失率は7.89%であった。竹炭粉末の量が14.2重量%の場合(実施例8)、薬効成分の流失率は11.40%であった。竹炭粉末の量が9.4重量%の場合(比較例9)、薬効成分の流失率は55.37%であった。竹炭粉末の量が0重量%の場合(比較例10)、薬効成分の流失率は62.11%であった。いずれも、海水中への薬効成分の流失率は低いものの、竹炭粉末の含量が10%以下になった時点から流失率が50%を超えたことから、医薬品としての使用に適している竹炭粉末の含量は15%以上であることが望ましいと言える。以上のことから、薬剤に炭素粉末を15重量%以上配合すれば、薬効成分の海水中への流失を抑制可能な、水棲動物用の経口投与に適した医薬品を提供できることが確認できた。
試験例4:本発明の薬剤の飛散性
試験例4においては、薬剤中の炭素粉末の含有量が比較的少ない場合での、薬剤中の水分量と、薬剤の飛散性との関連性について検討が行われた。
試験例4においては、薬効成分材料として、オキシテトラサイクリン(OTC)粉末(オキシテトラサイクリン塩酸塩原末、30メッシュパス)が使用され、炭素粉末材料として竹炭粉末(100メッシュパス)が使用された。表4に示される量で竹炭粉末、オキシテトラサイクリン粉末および水分を含むように、薬効成分材料、炭素粉末材料および水分が混合されて、比較例11および12、並びに実施例13および14の薬剤を調製した。試験例4においては、竹炭粉末および水分の合計量が、薬剤全体の重量を基準にして30重量%となるように設定され、OTCの量は薬剤全体の重量を基準にして70重量%とされた。
薬剤の飛散性試験方法
薬剤の飛散性試験は、養殖現場で飼料に薬剤を展着させる際に薬剤が飛散することをシミュレートする試験である。薬剤の飛散性の評価は、製造された粉末薬剤を上部から落下させ、落下中の粉末薬剤が扇風機による一定の風を受けた際の、粉末薬剤の飛散の程度を目視確認したものである。評価基準は以下の通りである:○(飛散性に問題無し)、△(少し飛散性に問題あるが我慢すれば使えるレベル)、×(風の影響が大きすぎて養殖現場での使用に不適)。評価〇および△を合格とし、評価×を不合格とした。結果が表4に示される。
Figure 0007368043000004
薬剤の全重量を基準にして水分量が2重量%以下の場合(比較例11および比較例12)、養殖作業現場で使用する時に薬剤が風で飛ばされ易く作業員が吸飲して健康被害が発生する恐れがあり、養殖魚用医薬品として不適であることが確認された。薬剤の全重量を基準にして水分量が3重量%の場合(実施例13)、少し飛散性に問題あるが我慢すれば使えるレベルであった。薬剤の全重量を基準にして水分量が4重量%の場合(実施例14)、飛散性に問題がないことが確認できた。以上のことから、薬剤の全重量を基準にして水分量が3重量%以上であれば、本発明の薬剤は問題なく養殖現場で使用できることが明らかとなった。
試験例5:本発明の薬剤の飛散性
試験例5においては、薬剤中の炭素粉末の含有量が比較的多い場合での、薬剤中の水分量と、薬剤の飛散性との関連性について検討が行われた。
試験例5においては、薬効成分材料として、オキシテトラサイクリン(OTC)粉末(オキシテトラサイクリン塩酸塩原末、30メッシュパス)が使用され、炭素粉末材料として竹炭粉末(100メッシュパス)が使用された。表5に示される量で竹炭粉末、オキシテトラサイクリン粉末および水分を含むように、薬効成分材料、炭素粉末材料および水分が混合されて、比較例15、並びに実施例16、17、および18の薬剤を調製した。試験例5においては、竹炭粉末および水分の合計量が、薬剤全体の重量を基準にして99重量%となるように設定され、OTCの量は薬剤全体の重量を基準にして1重量%とされた。薬剤の飛散性試験方法は試験例4と同じであった。結果が表5に示される。
Figure 0007368043000005
薬剤の全重量を基準にして水分量が1重量%の場合(比較例15)、養殖作業現場で使用する時に医薬品が風で飛ばされ易く作業員が吸飲して健康被害が発生する恐れがあり、養殖魚用医薬品として不適であることが確認された。薬剤の全重量を基準にして水分量が3重量%の場合(実施例16)、少し飛散性に問題あるが我慢すれば使えるレベルであった。薬剤の全重量を基準にして水分量が8重量%(実施例17)及び10重量%(実施例18)の場合、飛散性に問題がないことが確認できた。以上のことから、薬剤の全重量を基準にして水分量が3重量%以上であれば、本発明の薬剤は問題なく養殖現場で使用できることが明らかとなった。
試験例6:本発明の薬剤の固形化
試験例6においては、薬剤中の水分量と、薬剤の固形化との関連性について検討が行われた。
試験例6においては、薬効成分材料として、オキシテトラサイクリン(OTC)粉末(オキシテトラサイクリン塩酸塩原末、30メッシュパス)が使用され、炭素粉末材料として竹炭粉末(100メッシュパス)が使用された。表6に示される量で竹炭粉末、オキシテトラサイクリン塩酸塩粉末および水分を含むように、薬効成分材料、炭素粉末材料および水分が混合されて、実施例19、20、および21、並びに比較例22の薬剤を調製した。試験例6においては、竹炭粉末および水分の合計量が、薬剤全体の重量を基準にして99重量%となるように設定され、OTCの量は薬剤全体の重量を基準にして1重量%とされた。
薬剤の固形化試験
薬剤の固形化試験は、調製されたそれぞれの粉末薬剤を開口1ミリ/18メッシュの試験篩(東京スクリーン株式会社製)でふるって固まりが残るかどうかで評価した。評価基準は、○(全量通過)、△(少しダマのような固まりが残るが手で触ると直ぐにつぶれる)、×(大きな固まりが残り、製剤として不適)とした。固形化に関する評価結果が〇および△の場合を合格とし、×の場合を不合格とした。結果を表6に示す。
Figure 0007368043000006
薬剤の全重量を基準にして水分量が16重量%の場合(比較例22)、薬剤の固形化の程度が著しく高く、製剤としては不適な状態であることが確認された。薬剤の全重量を基準にして水分量が15重量%の場合(実施例21)、やや固形化はするものの、製剤として使用できるレベルであった。薬剤の全重量を基準にして水分量が12重量%(実施例20)及び10重量%(実施例19)の場合、薬剤は全く固形化せず、製剤として適切な状態であることが確認された。以上のことから、薬剤の全重量を基準にして水分量が15重量%以下であれば、本発明の薬剤は固形化の問題を生じさせないことが確認された。
試験例7:薬剤の安定性
試験例7においては、薬剤中の水分が薬効成分の力価の変化に対して及ぼす影響を検討するために、薬剤の安定性試験が行われた。
試験例7においては、薬効成分材料として、エリスロマイシン(EM)粉末(エリスロマイシン原末)が使用された。最終的に調製される、20重量%のエリスロマイシンを含む薬剤中の水分量が11重量%、13重量%、または15重量%となるように、竹炭粉末(150メッシュパス)に水分を添加したものを炭素粉末材料として使用した。この炭素粉末材料と、エリスロマイシン粉末とを混合して、実施例23~25の薬剤を調製した。実施例23の薬剤は、20重量%のエリスロマイシン、11重量%の水分、および69重量%の竹炭粉末を含んでいた。実施例24の薬剤は、20重量%のエリスロマイシン、13重量%の水分、および67重量%の竹炭粉末を含んでいた。実施例25の薬剤は、20重量%のエリスロマイシン、15重量%の水分、および65重量%の竹炭粉末を含んでいた。調製されたそれぞれの薬剤はアルミ袋に100gずつ分包され、アルミ袋に分包した薬剤は、ポリエチレンでコートされたクラフト紙で包装された。包装した薬剤についての加速試験が、高湿恒温器内で、温度40℃±2℃、湿度75%±5%の条件で行われた。加速試験開始時のEM力価をHPLCを用いて測定した。この測定値は初期値として、図2において「Initial」と示される。HPLC用サンプルの調製方法およびHPLC分析方法は、試験例3に記載された方法と同じであった。保存開始から、14日後、28日後、56日後および112日後に、高湿恒温器から薬剤を取り出し、薬剤に残存するEM力価を測定した。薬剤安定性についての評価は、保存中に薬効成分の力価が95%以上残存することを基準として判断された。それぞれの実施例について、3つの薬剤が調製され、安定性試験に供された。各実施例において、3つの薬剤から得られた、各測定時点で薬剤に残存するEM力価の平均値および標準偏差(図中、標準偏差はエラーバーで表される)が図2に示される。
実施例23~25の結果から、薬剤に含まれる水分含量が少ないほど、保存中の薬効成分の力価変化も少ないことが確認された。薬剤中の水分含量が15重量%の場合には、112日間経過後に、薬剤中に残存するEM力価は97.4%であった。よって、薬剤の全重量を基準にして水分含量が15重量%以内であれば、薬剤中の薬効成分の力価変化は医薬品として適切な範囲にあると推察される。
試験例8:薬剤の安定性
試験例8においては、水分含量が20重量%または25重量%である薬剤の安定性試験が行われた。
試験例8においては、薬効成分材料として、エリスロマイシン(EM)粉末(エリスロマイシン原末)が使用された。竹炭粉末(150メッシュパス)とエリスロマイシン粉末との混合物を調製し、この混合物に水を添加および混合することにより、比較例26および27の薬剤を調製した。比較例26の薬剤は、20重量%のエリスロマイシン、20重量%の水分、および60重量%の竹炭粉末を含んでいた。比較例27の薬剤は、20重量%のエリスロマイシン、25重量%の水分、および55重量%の竹炭粉末を含んでいた。調製されたそれぞれの薬剤はアルミ袋に100gずつ分包され、アルミ袋に分包した薬剤は、ポリエチレンでコートされたクラフト紙で包装された。包装した薬剤についての加速試験が、高湿恒温器内で、温度40℃±2℃、湿度75%±5%の条件で行われた。加速試験開始時のEM力価をHPLCを用いて測定した。この測定値は初期値として、図3において「Initial」と示される。HPLC用サンプルの調製方法およびHPLC分析方法は、試験例3に記載された方法と同じであった。保存開始から、30日後、60日後、90日後および184日後に、高湿恒温器から薬剤を取り出し、薬剤に残存するEM力価を測定した。薬剤安定性についての評価は、保存中に薬効成分の力価が95%以上残存することを基準として判断された。それぞれの実施例について、1つの薬剤が調製され、安定性試験に供された。各実施例において、各測定時点で薬剤に残存するEM力価が図3に示される。
比較例26および27の結果から、薬剤に含まれる水分含量が20重量%以上であると、保存開始から90日後には、薬剤中に残存するEM力価が95重量%未満となった。よって、薬剤の全重量を基準にして水分含量が20重量%以上である場合には、薬効成分の力価の低下により、医薬品としては製品化できないことが確認された。
本願発明の水棲動物用経口投与薬剤は水棲動物の養殖に使用されうる。

Claims (7)

  1. 薬剤の全重量を基準にして0.1重量%以上の薬効成分であるエリスロマイシン
    薬剤の全重量を基準にして15~96.9重量%の炭素粉末、並びに
    薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の水分を含み、
    造粒されていない粉末状の水棲動物用経口投与薬剤。
  2. 炭素粉末が竹炭粉末、ヤシガラ炭粉末および木炭粉末からなる群から選択される、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  3. 炭素粉末の粒径が50メッシュを通過する大きさである、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  4. エクストルーダーペレット飼料と共に使用するための、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  5. 密封容器に封入されている請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤。
  6. 薬剤の全重量を基準にして3~15重量%の量の水分を含む炭素粉末を調製し、前記水分を含む炭素粉末と薬効成分とを混合することを含む、請求項1に記載の水棲動物用経口投与薬剤を製造する方法。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載の水棲動物用経口投与薬剤を水棲動物に投与することにより、水棲動物の疾病を予防および/または治療する方法。
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