JP3557008B2 - 変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、経時的な溶解性の低下、不溶化が防止され、安定した薬物放出性を有する変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
硬質ゼラチンカプセル剤は、硬質ゼラチンカプセル中に薬物等の充填物を充填したもので、薬物の取扱い性の向上等各種の目的で使用されている。酸に不安定な薬物を含有する製剤や徐放性製剤等の設計において、錠剤とした場合には、被投与者間でバイオアベイラビリティに差を生じるため、その回避を目的として硬質ゼラチンカプセル剤とすることが一般的に行われている。
【0003】
例えば、薬物の消化管内移動速度の相違による腸内吸収率の差を小さくするため、腸溶性高分子や水不溶性高分子で薬物の顆粒を水系コーティングし、硬質ゼラチンカプセルに充填する方法がしばしば用いられる。また、難溶性薬物の水に対するぬれ性を改善するために、Tween(商品名)、Span(商品名)、ポリエチレングリコール(PEG)等の両親媒性化合物を添加する場合にも、外観の劣化等の回避のために硬質ゼラチンカプセル剤とする方法が用いられる。
【0004】
しかし、上記方法において、水系コーティングした薬物の顆粒やポリオキシエチレン鎖を有する両親媒性化合物を硬質ゼラチンカプセルに充填した場合、加温保存時に硬質ゼラチンカプセルが変質し、薬物放出性が著しく低下することがある。
この原因としては、水系コーティングの際に可塑剤として使用されるPEG、クエン酸トリエチル等の化合物や両親媒性化合物中のポリオキシエチレン鎖等が熱分解し、これにより生成するアルデヒド等の過酸化生成物により、ゼラチンが分子内又は分子間で架橋、重合することが考えられる。
【0005】
上記の対策として、例えば、コーティングの際に、可塑剤を使用しない有機溶媒を用いることが挙げられる。しかし、この方法は、残留溶媒の問題があり、また、環境汚染等の観点から有機溶媒の使用が近年規制される傾向にあることから、望ましいものではない。過酸化物を生成しないトリアセチン、グリセリンモノステアレート等の可塑剤を用いることも考えられるが、フィルムの形成性が悪い、可塑剤自体が酸分解し経時的に耐酸性や薬物放出性が劣化する、酢酸臭等の臭気を飛散する等の欠点があり、やはり好ましいものではない。
【0006】
また、他の方法として、カプセル充填物にカゼイン、大豆タンパク質、スキムミルク、コラーゲン等のタンパク質を添加する方法が知られている(特開昭51−15094号公報)。しかし、この方法は、過酸化物の生成を抑制するものではなく、所望の効果を得るには添加量を多くする必要があるため、カプセル剤が大型化して服用が困難となる。また、タンパク質自体が熱変性しやすい、乳糖、粉糖、白糖等の還元糖が充填物中に共存していると、メイラード反応による著しい外観変化をきたす、等の欠点もあり、満足すべき方法ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、ゼラチンの経時変化による硬質ゼラチンカプセルの溶解性の低下及び不溶化を抑制し、安定した薬物放出性を有する変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、過酸化反応がフリーラジカル反応であることに着目し、鋭意検討の結果、フリーラジカルを捕獲する活性の高い化合物をカプセル充填物に微量添加することにより、硬質ゼラチンカプセルの溶解性の低下や不溶化を抑制することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨は、変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤を、フリーラジカル捕獲剤を充填物全量に対して0.01〜5重量%含有させて構成するところにある。
本明細書において、「フリーラジカル捕獲剤」とは、フリーラジカル捕獲作用(フリーラジカル・スカベンジング・アクティビィティ;以下「RSA」ともいう)を有するものをいう。また、フリーラジカル捕獲剤1モルあたり捕獲することができるフリーラジカルのモル数を、RSA値という。
本発明の変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤は、硬質ゼラチンカプセル内に上記フリーラジカル捕獲剤及び薬物、添加剤等の他の充填物を充填してなる。
【0010】
上記フリーラジカル捕獲剤としては、フリーラジカル捕獲作用を有しているものであれば特に限定されず、なかでもRSA値が0.01以上である有機化合物、無機化合物及びこれらの製薬上許容しうる塩が好ましく、例えば、亜硫酸の製薬上許容しうる塩、亜硫酸水素の製薬上許容しうる塩、システイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、リボフラビン、β−カロチン、アセトアミノフェン、マレイン酸クロルフェニラミン、クロルプロマジン、ピンドロール、セサミノール、ゴシポール、大豆サポニン、ロズマリン酸、ゲラニイン、ケルセチン、グリチルリチン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、塩化第2鉄等を挙げることができる。これらのうち、亜硫酸の製薬上許容しうる塩、亜硫酸水素の製薬上許容しうる塩、並びに、トコフェロール、アスコルビン酸、ポリリン酸、ピロリン酸及びこれらの製薬上許容しうる塩等が好ましく、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トコフェロール、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等がさらに好ましい。
【0011】
上記フリーラジカル捕獲剤の含有量は、上記フリーラジカル捕獲剤及び他の充填物を合わせた充填物全量に対して0.01〜5重量%である。0.01重量%未満であるとゼラチンカプセル不溶化抑制効果が不充分であり、5重量%を超えても不溶化抑制効果はあまり大きくならず、逆に製剤の形状が大きくなりすぎるため、上記範囲に限定される。好ましくは0.01〜1重量%である。
【0012】
上記他の充填物としては、成分としてアルデヒドを含有するもの以外であれば特に限定されず、カプセル剤中に一般に含有される薬物及び添加剤等が好適に用いられ得る。
上記フリーラジカル捕獲剤及び他の充填物の形態は、粉末、顆粒、半固形、溶液等のいずれであってもよく、また、上記顆粒は水系あるいは有機溶媒系でコーティングしたものであってもよい。
【0013】
本発明においては、充填物として使用される薬物や添加剤の組み合わせに応じて、上記フリーラジカル捕獲剤を適宜選択し必要であれば2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
上記硬質ゼラチンカプセルとしては、通常製剤に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、3号ゼラチンカプセル等が好適に用いられる。
【0015】
本発明の変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤の製造は、常法により行うことができ、例えば、上記フリーラジカル捕獲剤は、製剤組成粉末又は製剤組成顆粒に単純混合して該硬質ゼラチンカプセルに充填すればよい。場合によっては、上記顆粒内又はコーティング層内に該フリーラジカル捕獲剤を内包させてもよい。
【0016】
ゼラチンカプセルの不溶化は、水系コーティングの際に使用されるPEGや両親媒性化合物中のポリエチレン鎖等から発生するアルデヒド等の過酸化生成物がゼラチンのアミノ基と反応し、薄膜を形成することにより生じる現象である。本発明においては、加温保存中等におけるカプセル充填物の経時的過酸化によって発生するフリーラジカルは、フリーラジカル捕獲剤によって捕獲され、過酸化反応が抑制される。このため、アルデヒド等の生成が抑制され、充填物にPEG等を使用しても、ゼラチンカプセルの薄膜形成や、これに伴う不溶化を生じない。
【0017】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲がこれらにより限定されるものではない。
【0018】
RSA値の測定
0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)又はメタノールに試料を溶解又は均一に分散させた試料液2ml、0.6mMDPPH・メタノール溶液1ml、及び、メタノール又は0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)2mlを共栓付き試験管に入れ、室温で軽く振とう後、遠心分離し、得られた上澄み液の530nmの吸光度変化を測定してRSA値を求めた。
【0019】
実施例1
秤量瓶にPEG6000を95部、表1に示すフリーラジカル捕獲剤を5部混合して入れ、その上に空の3号ゼラチンカプセルを入れたバスケットを置き、カプセルとこの混合物が非接触の状態を保つようにして密栓したガラス瓶中に60℃で1週間保存した。このカプセルをJP12崩壊試験用の補助筒の中に入れ、JP12第2液約30ml(37℃)を満たしたガラス容器に補助筒ごと静かに入れ、5〜6分間放置して溶解性を観察した。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例1によれば、フリーラジカル捕獲剤を添加していないPEG6000単独のカプセルは薄膜を形成し、不溶化したが、アスコルビン酸、リボフラビン、トコフェロール、硝酸チアミン又は亜硫酸ナトリウムをそれぞれ添加することによりカプセルの溶解性の低下を完全に抑止することができた。
【0022】
実施例2
結晶セルロース30.0mg、塩酸ピリドキシン10.0mg、乳糖54.0mg、コーンスターチ5.0mg、タルク31.5mg、アエロジル0.3mg、ステアリン酸マグネシウム1.2mg、クエン酸トリエチル7.7mg、HPC−L0.5mg、HPMC−AS38.3mgを混合したコーティッド顆粒(以下「混合物A」という)に表2に示す種々の化合物を添加した組成物を調製した。これを3号ゼラチンカプセルに充填し、密栓したガラス瓶中に60℃で5日間保存後溶出試験を行った。溶出液としてJP12第2液900mlを用い、局方パドル法(パドル回転数100回転)で行った。その結果を図1及び図2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
実施例2によれば、混合物Aのみの製剤A並びにフリーラジカル捕獲作用を有していないリン酸二水素ナトリウム、エテンザミド又はアスピリンをそれぞれ添加した製剤B、C及びDは加温保存後にはカプセルの不溶化を生じ、薬物放出性が著しく低下した。一方、RSA値の大きなアセトアミノフェン、システイン、ピロリン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムをそれぞれ添加した製剤E、F、G、H及びIは加温保存後でもカプセルの不溶化を生じず、薬物放出性の低下は認められなかった。
【0025】
実施例3
表3に示すフリーラジカル捕獲剤を5部、PEG4000を95部乳鉢で混合し、ゼラチン3号カプセルに充填した。密栓したガラス瓶中に60℃で1週間保存後、充填物を除去し、実施例1と同様にしてカプセルの溶解性を調べた。その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
実施例3によれば、フリーラジカル捕獲剤を添加しない場合はカプセルが薄膜を形成し不溶化したが、添加した場合は、加温保存後でもカプセルの溶解性の低下は認められなかった。
【0028】
実施例4
エテンザミド10部及びトコフェロール、システイン又は亜硫酸ナトリウム5部を、Tween80(商品名)50部及びSpan20(商品名)35部に溶解した。それをゼラチンカプセルに充填し、密栓したガラス瓶中に60℃で1週間保存後、実施例2と同様にして溶出試験を行った。その結果を図3に示す。
【0029】
実施例4によれば、トコフェロール等のフリーラジカル捕獲剤を添加しない場合は、カプセルは不溶化し、著しい薬物放出性の低下が認められたが、添加した場合はカプセルの不溶化は生じず、薬物放出性の低下も認められなかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、経時的な溶解性の低下及び不溶化が防止され、安定した薬物放出性を有する変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2における硬質ゼラチンカプセル剤の薬物放出曲線。
【図2】実施例2における硬質ゼラチンカプセル剤の薬物放出曲線。
【図3】実施例4における硬質ゼラチンカプセル剤の薬物放出曲線。
【発明の属する技術分野】
本発明は、経時的な溶解性の低下、不溶化が防止され、安定した薬物放出性を有する変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
硬質ゼラチンカプセル剤は、硬質ゼラチンカプセル中に薬物等の充填物を充填したもので、薬物の取扱い性の向上等各種の目的で使用されている。酸に不安定な薬物を含有する製剤や徐放性製剤等の設計において、錠剤とした場合には、被投与者間でバイオアベイラビリティに差を生じるため、その回避を目的として硬質ゼラチンカプセル剤とすることが一般的に行われている。
【0003】
例えば、薬物の消化管内移動速度の相違による腸内吸収率の差を小さくするため、腸溶性高分子や水不溶性高分子で薬物の顆粒を水系コーティングし、硬質ゼラチンカプセルに充填する方法がしばしば用いられる。また、難溶性薬物の水に対するぬれ性を改善するために、Tween(商品名)、Span(商品名)、ポリエチレングリコール(PEG)等の両親媒性化合物を添加する場合にも、外観の劣化等の回避のために硬質ゼラチンカプセル剤とする方法が用いられる。
【0004】
しかし、上記方法において、水系コーティングした薬物の顆粒やポリオキシエチレン鎖を有する両親媒性化合物を硬質ゼラチンカプセルに充填した場合、加温保存時に硬質ゼラチンカプセルが変質し、薬物放出性が著しく低下することがある。
この原因としては、水系コーティングの際に可塑剤として使用されるPEG、クエン酸トリエチル等の化合物や両親媒性化合物中のポリオキシエチレン鎖等が熱分解し、これにより生成するアルデヒド等の過酸化生成物により、ゼラチンが分子内又は分子間で架橋、重合することが考えられる。
【0005】
上記の対策として、例えば、コーティングの際に、可塑剤を使用しない有機溶媒を用いることが挙げられる。しかし、この方法は、残留溶媒の問題があり、また、環境汚染等の観点から有機溶媒の使用が近年規制される傾向にあることから、望ましいものではない。過酸化物を生成しないトリアセチン、グリセリンモノステアレート等の可塑剤を用いることも考えられるが、フィルムの形成性が悪い、可塑剤自体が酸分解し経時的に耐酸性や薬物放出性が劣化する、酢酸臭等の臭気を飛散する等の欠点があり、やはり好ましいものではない。
【0006】
また、他の方法として、カプセル充填物にカゼイン、大豆タンパク質、スキムミルク、コラーゲン等のタンパク質を添加する方法が知られている(特開昭51−15094号公報)。しかし、この方法は、過酸化物の生成を抑制するものではなく、所望の効果を得るには添加量を多くする必要があるため、カプセル剤が大型化して服用が困難となる。また、タンパク質自体が熱変性しやすい、乳糖、粉糖、白糖等の還元糖が充填物中に共存していると、メイラード反応による著しい外観変化をきたす、等の欠点もあり、満足すべき方法ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、ゼラチンの経時変化による硬質ゼラチンカプセルの溶解性の低下及び不溶化を抑制し、安定した薬物放出性を有する変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、過酸化反応がフリーラジカル反応であることに着目し、鋭意検討の結果、フリーラジカルを捕獲する活性の高い化合物をカプセル充填物に微量添加することにより、硬質ゼラチンカプセルの溶解性の低下や不溶化を抑制することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨は、変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤を、フリーラジカル捕獲剤を充填物全量に対して0.01〜5重量%含有させて構成するところにある。
本明細書において、「フリーラジカル捕獲剤」とは、フリーラジカル捕獲作用(フリーラジカル・スカベンジング・アクティビィティ;以下「RSA」ともいう)を有するものをいう。また、フリーラジカル捕獲剤1モルあたり捕獲することができるフリーラジカルのモル数を、RSA値という。
本発明の変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤は、硬質ゼラチンカプセル内に上記フリーラジカル捕獲剤及び薬物、添加剤等の他の充填物を充填してなる。
【0010】
上記フリーラジカル捕獲剤としては、フリーラジカル捕獲作用を有しているものであれば特に限定されず、なかでもRSA値が0.01以上である有機化合物、無機化合物及びこれらの製薬上許容しうる塩が好ましく、例えば、亜硫酸の製薬上許容しうる塩、亜硫酸水素の製薬上許容しうる塩、システイン、グルタチオン、トコフェロール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、リボフラビン、β−カロチン、アセトアミノフェン、マレイン酸クロルフェニラミン、クロルプロマジン、ピンドロール、セサミノール、ゴシポール、大豆サポニン、ロズマリン酸、ゲラニイン、ケルセチン、グリチルリチン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、塩化第2鉄等を挙げることができる。これらのうち、亜硫酸の製薬上許容しうる塩、亜硫酸水素の製薬上許容しうる塩、並びに、トコフェロール、アスコルビン酸、ポリリン酸、ピロリン酸及びこれらの製薬上許容しうる塩等が好ましく、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トコフェロール、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等がさらに好ましい。
【0011】
上記フリーラジカル捕獲剤の含有量は、上記フリーラジカル捕獲剤及び他の充填物を合わせた充填物全量に対して0.01〜5重量%である。0.01重量%未満であるとゼラチンカプセル不溶化抑制効果が不充分であり、5重量%を超えても不溶化抑制効果はあまり大きくならず、逆に製剤の形状が大きくなりすぎるため、上記範囲に限定される。好ましくは0.01〜1重量%である。
【0012】
上記他の充填物としては、成分としてアルデヒドを含有するもの以外であれば特に限定されず、カプセル剤中に一般に含有される薬物及び添加剤等が好適に用いられ得る。
上記フリーラジカル捕獲剤及び他の充填物の形態は、粉末、顆粒、半固形、溶液等のいずれであってもよく、また、上記顆粒は水系あるいは有機溶媒系でコーティングしたものであってもよい。
【0013】
本発明においては、充填物として使用される薬物や添加剤の組み合わせに応じて、上記フリーラジカル捕獲剤を適宜選択し必要であれば2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
上記硬質ゼラチンカプセルとしては、通常製剤に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、3号ゼラチンカプセル等が好適に用いられる。
【0015】
本発明の変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤の製造は、常法により行うことができ、例えば、上記フリーラジカル捕獲剤は、製剤組成粉末又は製剤組成顆粒に単純混合して該硬質ゼラチンカプセルに充填すればよい。場合によっては、上記顆粒内又はコーティング層内に該フリーラジカル捕獲剤を内包させてもよい。
【0016】
ゼラチンカプセルの不溶化は、水系コーティングの際に使用されるPEGや両親媒性化合物中のポリエチレン鎖等から発生するアルデヒド等の過酸化生成物がゼラチンのアミノ基と反応し、薄膜を形成することにより生じる現象である。本発明においては、加温保存中等におけるカプセル充填物の経時的過酸化によって発生するフリーラジカルは、フリーラジカル捕獲剤によって捕獲され、過酸化反応が抑制される。このため、アルデヒド等の生成が抑制され、充填物にPEG等を使用しても、ゼラチンカプセルの薄膜形成や、これに伴う不溶化を生じない。
【0017】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲がこれらにより限定されるものではない。
【0018】
RSA値の測定
0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)又はメタノールに試料を溶解又は均一に分散させた試料液2ml、0.6mMDPPH・メタノール溶液1ml、及び、メタノール又は0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)2mlを共栓付き試験管に入れ、室温で軽く振とう後、遠心分離し、得られた上澄み液の530nmの吸光度変化を測定してRSA値を求めた。
【0019】
実施例1
秤量瓶にPEG6000を95部、表1に示すフリーラジカル捕獲剤を5部混合して入れ、その上に空の3号ゼラチンカプセルを入れたバスケットを置き、カプセルとこの混合物が非接触の状態を保つようにして密栓したガラス瓶中に60℃で1週間保存した。このカプセルをJP12崩壊試験用の補助筒の中に入れ、JP12第2液約30ml(37℃)を満たしたガラス容器に補助筒ごと静かに入れ、5〜6分間放置して溶解性を観察した。その結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例1によれば、フリーラジカル捕獲剤を添加していないPEG6000単独のカプセルは薄膜を形成し、不溶化したが、アスコルビン酸、リボフラビン、トコフェロール、硝酸チアミン又は亜硫酸ナトリウムをそれぞれ添加することによりカプセルの溶解性の低下を完全に抑止することができた。
【0022】
実施例2
結晶セルロース30.0mg、塩酸ピリドキシン10.0mg、乳糖54.0mg、コーンスターチ5.0mg、タルク31.5mg、アエロジル0.3mg、ステアリン酸マグネシウム1.2mg、クエン酸トリエチル7.7mg、HPC−L0.5mg、HPMC−AS38.3mgを混合したコーティッド顆粒(以下「混合物A」という)に表2に示す種々の化合物を添加した組成物を調製した。これを3号ゼラチンカプセルに充填し、密栓したガラス瓶中に60℃で5日間保存後溶出試験を行った。溶出液としてJP12第2液900mlを用い、局方パドル法(パドル回転数100回転)で行った。その結果を図1及び図2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
実施例2によれば、混合物Aのみの製剤A並びにフリーラジカル捕獲作用を有していないリン酸二水素ナトリウム、エテンザミド又はアスピリンをそれぞれ添加した製剤B、C及びDは加温保存後にはカプセルの不溶化を生じ、薬物放出性が著しく低下した。一方、RSA値の大きなアセトアミノフェン、システイン、ピロリン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムをそれぞれ添加した製剤E、F、G、H及びIは加温保存後でもカプセルの不溶化を生じず、薬物放出性の低下は認められなかった。
【0025】
実施例3
表3に示すフリーラジカル捕獲剤を5部、PEG4000を95部乳鉢で混合し、ゼラチン3号カプセルに充填した。密栓したガラス瓶中に60℃で1週間保存後、充填物を除去し、実施例1と同様にしてカプセルの溶解性を調べた。その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
実施例3によれば、フリーラジカル捕獲剤を添加しない場合はカプセルが薄膜を形成し不溶化したが、添加した場合は、加温保存後でもカプセルの溶解性の低下は認められなかった。
【0028】
実施例4
エテンザミド10部及びトコフェロール、システイン又は亜硫酸ナトリウム5部を、Tween80(商品名)50部及びSpan20(商品名)35部に溶解した。それをゼラチンカプセルに充填し、密栓したガラス瓶中に60℃で1週間保存後、実施例2と同様にして溶出試験を行った。その結果を図3に示す。
【0029】
実施例4によれば、トコフェロール等のフリーラジカル捕獲剤を添加しない場合は、カプセルは不溶化し、著しい薬物放出性の低下が認められたが、添加した場合はカプセルの不溶化は生じず、薬物放出性の低下も認められなかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、経時的な溶解性の低下及び不溶化が防止され、安定した薬物放出性を有する変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2における硬質ゼラチンカプセル剤の薬物放出曲線。
【図2】実施例2における硬質ゼラチンカプセル剤の薬物放出曲線。
【図3】実施例4における硬質ゼラチンカプセル剤の薬物放出曲線。
Claims (6)
- 硝酸チアミン及びその製薬上許容しうる塩からなる群より選択された少なくとも1種のフリーラジカル捕獲剤を充填物全量に対して0.01〜5重量%含有することを特徴とする変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤。
- フリーラジカル捕獲剤の含有量が、充填物全量に対して0.01〜1重量%である請求項1記載の変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤。
- 硬質ゼラチンカプセル剤の製造方法において、硝酸チアミン及びその製薬上許容しうる塩からなる群より選択された少なくとも1種のフリーラジカル捕獲剤を充填物全量に対して0.01〜5重量%含有させることを特徴とする変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤の製造方法。
- フリーラジカル捕獲剤の含有量が、充填物全量に対して0.01〜1重量%である請求項3記載の変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤の製造方法。
- 硝酸チアミン及びその製薬上許容しうる塩からなる群より選択された少なくとも1種のフリーラジカル捕獲剤を、カプセル充填物全量に対して0.01〜5重量%の割合で充填物に添加することを特徴とする、硬質ゼラチンカプセルの溶解性低下の抑制方法。
- 硝酸チアミン及びその製薬上許容しうる塩からなる群より選択された少なくとも1種のフリーラジカル捕獲剤を有効成分とする、硬質ゼラチンカプセル溶解性低下抑制剤。
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---|---|---|---|
JP21975695A JP3557008B2 (ja) | 1994-08-05 | 1995-08-04 | 変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (3)
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---|---|---|---|
JP20432294 | 1994-08-05 | ||
JP6-204322 | 1994-08-05 | ||
JP21975695A JP3557008B2 (ja) | 1994-08-05 | 1995-08-04 | 変性の防止された硬質ゼラチンカプセル剤及びその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0899869A JPH0899869A (ja) | 1996-04-16 |
JP3557008B2 true JP3557008B2 (ja) | 2004-08-25 |
Family
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