JP7364213B2 - ストロンチウム吸着材およびその製造方法 - Google Patents

ストロンチウム吸着材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、NaTiNbO系のストロンチウム吸着材およびその製造方法に関する。
一般に、液体中から放射性核種を回収する方法の一つとして、共沈法が知られている(特許文献1:特開昭62-266499号公報参照)。共沈法は、液体中に共沈試薬を添加して放射性核種と反応させ、沈降した沈殿を分離することにより放射性核種を回収する方法である。しかしながら、沈殿の分離に際しては設備や工程が煩雑になりやすい。そのため、例えば海水や原子炉における放射性廃液等の大量の液体中からストロンチウム90、セシウム137等の放射性核種を回収する場合には、吸着材を用いて放射性核種を吸着させることによりこれらの回収が行われている(特許文献2:特開2013-057599号公報参照)。
特開昭62-266499号公報 特開2013-057599号公報
ここで、ストロンチウムやセシウムの吸着材として、例えばゼオライトが知られている。ゼオライトは、規則的な細孔と空洞とを有する結晶構造を持つことから、ストロンチウムやセシウムを空洞内に取り込み、あるいはイオン交換することによってこれらの放射性核種を吸着させることが可能である。
しかしながら、ゼオライトは粘性鉱物である。そのため、カラム式には適さず、より吸着能を発揮させるには、そのまま液体と混合する方が適している。しかしながら、この場合には、沈降したゼオライトを回収する手数が掛かることになる。こうしたことから、ゼオライトは、吸着材として比較的扱いにくい面がある。
一方、海水や原子炉における放射性廃液等の大量の液体を処理する吸着材には、比較的簡易に製造可能で、且つ高い吸着能を有することが求められるが、上記のゼオライトをはじめとするこれまでの吸着材の吸着能はいずれも十分でない。そのため、より高い吸着能を有する吸着材が望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、比較的簡易に製造可能で、扱いやすく、さらに吸着能に優れたストロンチウム吸着材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、一実施形態として以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
すなわち、本発明に係るストロンチウム吸着材は、(Na/H)xTiNbyzの組成を有し、x=0.1~4、y=1.0~10、z=4.0~29であるNaTiNbO系の層状化合物である。そして、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10.0~14.0[°]の範囲に最も高いピークが存在し、回折角2θが28.5~30.5[°]の範囲に2番目に高いピークが存在するという構造的特徴を有する。
また、前記回折角2θが10.0~14.0[°]の範囲に存在するピークの最大強度(A)が、前記回折角2θが28.5~30.5[°]の範囲に存在するピークの最大強度(B)の2倍以上である。また、前記回折角2θが10.0~14.0[°]の範囲に存在するピークは、少なくとも回折角2θ(±0.2[°])=12.9[°]および回折角2θ(±0.2[°])=13.4[°]の位置にスプリットしており、前記回折角2θが28.5~30.5[°]の範囲に存在するピークは、少なくとも回折角2θ(±0.2[°])=29.1[°]および回折角2θ(±0.2[°])=29.7[°]の位置にスプリットしている。そして、前記最大強度(A)は、前記回折角2θ(±0.2[°])=12.9[°]の位置に存在し、前記最大強度(B)は、前記回折角2θ(±0.2[°])=29.1[°]の位置に存在する。
この吸着材は、粘性がない無機化合物であって高放射線量、高pH環境に対する耐久性を有し、扱いやすい。また、ストロンチウムに対して優れた吸着能を有する。
本発明者らは、本発明に係る吸着材を水熱合成法によって製造することに成功した。すなわち、当該方法は、Nb源、Tiの塩化物からなるTi源、Na源および水を、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲で混合する工程と、該工程で得た混合物を水熱反応させる工程と、を含むことを特徴とする。
これによれば、原料の混合物から、水を溶媒とする水熱反応によって吸着材を製造することができる。このとき、水熱反応の温度を130~230[℃]とすれば十分に本発明に係る吸着材を得ることができる。このように、本発明に係る吸着材は、煩雑な設備や工程に依ることなく比較的簡易に製造可能である。
本発明によれば、比較的簡易に製造可能で、粘性がない無機化合物であって高放射線量、高pH環境に耐久性を有して扱いやすく、さらに吸着能に優れたストロンチウム吸着材を提供することができる。
実施例1、2、3および比較例1、2で得た化合物(吸着材)のCuKα線を用いたX線回折パターンである。 実施例1、2、3および比較例1、2で得た化合物(吸着材)のSEM像(走査型電子顕微鏡像)である。 実施例1、2、3および比較例1、2、3、4で得た化合物(吸着材)のストロンチウムイオン(Sr2+)の吸着量を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るストロンチウム吸着材について、その製造方法と共に説明する。
本実施形態に係るストロンチウム吸着材は、NaTiNbO系の化合物であって、(Na/H)xTiNbyzの組成を有する。当該化合物は、CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10.0~14.0[°]の範囲に最も高いピークが存在し、回折角2θが28.5~30.5[°]の範囲に2番目に高いピークが存在するという構造的特徴を有する(図1の実施例1、2、3)。
本実施形態に係る吸着材は、Na(ナトリウム)、Ti(チタン)、Nb(ニオブ)およびO(酸素)からなるNaTiNbO系の化合物である。当該化合物は、層状のチタン酸化物とナトリウムとの骨格に対してニオブが部分置換した構造であると考えられる。すなわち、チタン・ニオブ酸化物の層の間にナトリウムイオンが位置した構造を有し、これに対してストロンチウム等の放射性核種がナトリウムと置換される等して取り込まれ、その結果吸着されると考えられる。なお、H(水素)が一部ナトリウムと置換したり、H+あるいはH2Oの状態でも存在したりしていると考えられるため、組成としては、(Na/H)xTiNbyzとなる。
また、本実施形態に係る吸着材は、粘性がない無機化合物である。そのため、カラムに充填した場合であっても良好に通水可能である。したがって、カラム式の装置に好適に適用することができ、扱いやすい。また、高放射線量、高pH環境に対する耐久性を有することから、特に海水等が混合された放射性廃液であって、不純物を除去するために高pH(10以上)に調整された廃液等に対しても適用することができる。
本発明者らは、本実施形態に係る上記の(Na/H)xTiNbyz組成を有する吸着材を以下の方法によって製造した。
すなわち、本実施形態に係るストロンチウム吸着材の製造方法は、Nb源、Tiの塩化物からなるTi源、Na源および水を、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲で混合する工程と、該工程で得た混合物を水熱反応させる工程と、を含むことを特徴とする。以下、詳しく説明する。
各原料について、Ti源には、TiCl2、TiCl3、TiCl4といったチタンの塩化物(その水溶液を含む)を使用する。チタンの塩化物以外に、例えばTiO2、TiO、Ti23等の酸化物、チタンテトライソプロポキシド等のチタンアルコキシド、シュウ酸チタン(IV)アンモニウム、オキシ二シュウ酸チタン二アンモニウム等のカルボン酸塩、酸化硫酸チタン(IV)等の硫酸塩等をTi源に使用した場合でも、一定の吸着能を有する吸着材を製造することができるが(図3の比較例2)、反応性が高いチタンの塩化物をTi源に使用すると、より優れた吸着能を有する吸着材を製造することができる。なお、チタンの塩化物の中でも、TiCl4については特に反応性が高く、好適に使用することができる。
また、Nb源には、例えばNb25等のニオブの酸化物、ニオブ(V)エトキシド等のニオブアルコキシド、塩化ニオブ、フッ化ニオブ、シュウ酸ニオブアンモニウム、ペンタキス(シュウ酸水素)ニオブ(n水和物)等のニオブ塩等を好適に使用することができる。また、Na源には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のオキソ酸の塩、Na2O、NaOH等の酸化・水酸化物、NaCl、NaF、NaBr、NaI等のハロゲン化物、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩等を好適に使用することができる。
先ず、上記のNb源、Ti源、Na源および水を混合して混合物を得る。一例として、例えばNa源および水をNaOH水溶液として、これにNb25粉末およびTiCl4溶液を混合するとよい。
ただし、NbとTiとのモル比は、Nb:Ti=1~4:1の範囲とする。具体的には、一例として整数比を列挙すると、例えばNb:Ti=1:1、Nb:Ti=2:1、Nb:Ti=3:1、またはNb:Ti=4:1とする。
次に、上記の工程で得た混合物を水熱反応させることによって、本実施形態に係る吸着材(Na/H)xTiNbyzを得ることができる。
水熱反応は、高温高圧の熱水の存在下で進行する化学反応であり、電離した水を触媒として化合物の合成や結晶成長を行うことができる。したがって、本工程では、例えば前工程で得た混合物を所定の容器に収容し、容器内の水を加熱・加圧していき、所定の温度および圧力で一定時間保持して混合物を水熱反応させた後、冷却して化合物(吸着材)を得る。この工程は、水熱反応装置等を用いて実施するとよい。
本工程における水熱反応の温度(保持温度)は、130~230[℃]の範囲が好適であり、より好ましくは170~180[℃]の範囲が好適である。反応時間(保持時間)は、反応温度に応じて適宜調整すればよい。例えば反応温度を175[℃]とする場合、当該温度で以って48[時間]程度保持すれば、十分に本実施形態に係る吸着材を得ることができる。
このように、本実施形態に係る吸着材は、原料の混合物から、水を溶媒とする水熱反応によって吸着材を製造することができる。反応温度も130~230[℃]程度で反応させることが可能であるため、煩雑な設備や工程に依ることなく比較的簡易に製造可能である。
[実施例1]
NbおよびTiのモル比をNb:Ti=2:1で混合した混合物を基にしてNaTiNbO系の化合物を作製した。Nb25粉末(富士フイルム和光純薬製。以下同じ)4.3[g]、および5.2[mol/L]のTiCl4溶液(大阪チタニウムテクノロジーズ製。以下同じ)3.3[mL]、ならびに4.2[mol/L]のNaOH水溶液(富士フイルム和光純薬製。以下同じ)70[mL]を混合した。試料70[mL]をステンレス製耐圧容器に収容し、容器内の水を加熱・加圧していき、175[℃]で48[時間]保持した。その後、容器を室温まで冷却してNaTiNbO系の化合物を得た。実施例1で得た化合物(「0.5Ti-NNO」と表記する)について、CuKα線を用いたX線回折パターンを図1に示す。また、SEM像(走査型電子顕微鏡像)を図2(a)に示す。
[実施例2]
NbおよびTiのモル比をNb:Ti=4:1で混合した混合物を基にしてNaTiNbO系の化合物を作製した。Nb25粉末5.2[g]、および5.2[mol/L]のTiCl4溶液2.0[mL]、ならびに4.2[mol/L]のNaOH水溶液70[mL]を混合した。その後は、実施例1と同一の方法によってNaTiNbO系の化合物を得た。実施例2で得た化合物(「0.25Ti-NNO」と表記する)について、CuKα線を用いたX線回折パターンを図1に示す。また、SEM像(走査型電子顕微鏡像)を図2(b)に示す。
[実施例3]
NbおよびTiのモル比をNb:Ti=1:1で混合した混合物を基にしてNaTiNbO系の化合物を作製した。Nb25粉末2.2[g]、および5.2[mol/L]のTiCl4溶液3.3[mL]、ならびに4.2[mol/L]のNaOH水溶液70[mL]を混合した。その後は、実施例1と同一の方法によってNaTiNbO系の化合物を得た。実施例3で得た化合物(「1Ti-NNO」と表記する)について、CuKα線を用いたX線回折パターンを図1に示す。また、SEM像(走査型電子顕微鏡像)を図2(c)に示す。
[比較例1]
実施例に対して、Ti源を混合せずに、NbおよびTiのモル比をNb:Ti=1:0とした混合物を基にしてNaNbO系の化合物を作製した。Nb25粉末0.7[g]、および4.2[mol/L]のNaOH水溶液15[mL]を混合した。その後は、実施例1と同一の方法によってNaNbO系の化合物を得た。比較例1で得た化合物(「NNO」と表記する)について、CuKα線を用いたX線回折パターンを図1に示す。また、SEM像(走査型電子顕微鏡像)を図2(d)に示す。
[比較例2]
実施例に対して、Ti源としてチタンの塩化物(TiCl4)に代えてチタンの酸化物(TiO2)を用いて、NbおよびTiのモル比をNb:Ti=2:1で混合した混合物を基にしてNaTiNbO系の化合物を作製した。Nb25粉末4.3[g]、およびTiO2粉末(富士フイルム和光純薬製)0.7[g]、ならびに4.2[mol/L]のNaOH水溶液70[mL]を混合した。その後は、実施例1と同一の方法によってNaTiNbO系の化合物を得た。比較例2で得た化合物(「0.25Ti-NNO-2」と表記する)について、CuKα線を用いたX線回折パターンを図1に示す。また、SEM像(走査型電子顕微鏡像)を図2(e)に示す。
[比較例3および比較例4]
市販の吸着材を比較例3および比較例4とした。具体的には、代表的なゼオライトであるA型ゼオライト(ユニオン昭和製)を比較例3とした。また、イオン交換樹脂として知られているアンバーライト(オルガノ製)を比較例4とした。
<結晶構造>
図1に示す実施例1~実施例3で得た化合物のX線回折パターンは、回折角2θが10.0~14.0[°]の範囲に最も高いピーク(以下、主ピークと表記する)が存在し、回折角2θが28.5~30.5[°]の範囲に2番目に高いピーク(以下、第2ピークと表記する)が存在している。また、これらの強度比は、実施例1では主ピークの最大強度が第2ピークの最大強度の約2.25倍、実施例2では主ピークの最大強度が第2ピークの最大強度の約2.5倍、実施例3では主ピークの最大強度が第2ピークの最大強度の約2倍となっており、いずれも2倍以上となっている。
また、実施例1、2、3のいずれの主ピークも、少なくとも回折角2θが約12.9[°]および約13.4[°]の位置にスプリットしており、実施例1、2、3のいずれの第2ピークも、少なくとも回折角2θが約29.1[°]および約29.7[°]の位置にスプリットしている。このうち、主ピークの最大強度は、回折角2θが約12.9[°]でスプリットする位置に存在し、一方、第2ピークの最大強度は、回折角2θが約29.1[°]でスプリットする位置に存在している。
なお、本願では、スプリットするピークについて、各スプリットをそれぞれ別のピークとせずに、これらの各スプリットをまとめて一つのピークとしている。その上で各ピークの最大強度を比較し、「最も高いピーク」、「2番目に高いピーク」等として捉えている。
このようなX線回折パターンを有する各実施例のSEM像は、図2(a)~図2(c)に示すように、5~30[μm]程の大きさの不定形の粒子形態を有している。ここで、NaTiNbO系の化合物は、層状のチタン酸化物とナトリウムとの骨格に対してニオブが部分置換した構造であると考えられる。したがって、SEM像の粒子は、チタン・ニオブ酸化物からなる層状形態と、各層の間に位置するナトリウムイオンとからなる二次粒子であると考えられる。吸着材としては、ストロンチウム等の放射性核種がナトリウムと置換される等して取り込まれ、その結果吸着されると考えられる。
また、実施例1、2、3で得た化合物は、X線回折パターンにおいて主ピークをはじめとする各ピークの強度が比較的小さく(図1参照)、SEM像の二次粒子も不定形であることから(図2参照)、構造的には、チタン・ニオブ酸化物の並びがそれ程緻密でなくやや緩やかになっていると考えられる。したがって、チタン・ニオブ酸化物の層には空間(隙間)が形成されることによって放射性核種がより吸着されやすい構造になっていると考えられる。
以上の結晶構造は、Ti源としてチタンの塩化物を用いると共に、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲で混合した混合物を基にして得たNaTiNbO系の化合物(実施例1、2、3)のみが有する特徴である。
一方、比較例1および比較例2で得た化合物は、いずれも実施例1、2、3が有する構造的特徴を備えていない。すなわち、図1に示す比較例1および比較例2では、いずれも回折角2θが10.0~14.0[°]の範囲に主ピークが存在しない。具体的に、比較例1では、回折角2θが20.0~25.0[°]の範囲、および回折角2θが30.0~35.0[°]の範囲に、他の位置に存在するピークと比較して顕著に高いピークがそれぞれ存在している。そして、これらのピークの強度は、実施例1、2、3の主ピークと比較して大きくなっている。また、図2(d)に示すSEM像は比較的エッジが明確な粒子形態を有しており、図2(a)~図2(c)に示す各実施例の粒子形態とは相違している。
また、比較例2では、回折角2θが5.0~10.0[°]の範囲に最も高いピークが存在し、一方、他の位置には明確なピークが存在しない。また、図2(e)に示すSEM像は表面が崩れた粒子形態を有しており、アモルファスとなっている可能性が考えられる。このように、図2(a)~図2(c)に示す各実施例の粒子形態とは相違している。
このように、Ti源としてチタンの塩化物以外のもの(ここではチタンの酸化物)を用いた場合(比較例2)、あるいはTi源そのものを混合しない場合(比較例1)、実施例1、2、3が有する構造的特徴を備える化合物が製造されない。
<組成>
ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって実施例1、2、3で得た化合物の組成を分析した。各化合物をフッ化水素酸で溶解して、溶出するNa、TiおよびNb量を分析し、各化合物の原子量比を分析した。その結果、実施例1で得た化合物の原子量比は、Na:Ti:Nb=2.6:1:9.3であった。また、実施例2で得た化合物の原子量比は、Na:Ti:Nb=1.4:1:4.6であった。また、実施例3で得た化合物の原子量比は、Na:Ti:Nb=1.0:1:0.5であった。したがって、Nb源、Tiの塩化物からなるTi源、Na源および水を、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲で混合した混合物を基にして得たNaTiNbO系の化合物は、以下の組成を有することができる。すなわち、(Na/H)xTiNbyz、x=0.1~4、y=1.0~10、z=4.0~29、の組成である。なお、当該組成の算出に当たっては、各イオンの価数について、Naを一価、Tiを四価、Nbを五価、Oを二価とした。
<ストロンチウム吸着能性>
図3に、各実施例および各比較例で得た化合物のストロンチウムイオン(Sr2+)の吸着量を示す。比較例3、4では、2.0[mmol/g]を下回ったのに対し、実施例1、2、3および比較例1、2では、2.0[mmol/g]を超えた。このうち、比較例1、2では、2.0[mmol/g]を僅かに上回った程度であったのに対し、実施例1では、3.2[mmol/g]、実施例2では2.9[mmol/g]、実施例3では2.81[mmol/g]と、特に優れた吸着能を示した。これは、前述の通り、実施例1、2、3で得たNaTiNbO系の化合物は、チタン・ニオブ酸化物の並びがやや緩やかであることによってチタン酸化物の層に空間(隙間)が形成される結果、ストロンチウムの吸着により有利に作用していることによると考えられる。
なお、上記の通り、実施例1、2、3はいずれも優れた吸着能を示したが、実施例3は、実施例1および実施例2と比較すると吸着量がやや少なかった。これについて、実施例3では、実施例1および実施例2と比較して、X線回折パターンにおける各ピークの強度が特に小さく(図1参照)、SEM像はやや表面が崩れた粒子形態を有している(図2(c)参照)。このように、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲であっても、NbとTiとの混合割合によって、得られる化合物の構造的特徴が変化してストロンチウムの吸着能が変化する。したがって、混合割合を最適化することによって、実施例の結果を上回るさらに優れた吸着能を示す化合物を得ることができる。
以上の結果から、NaTiNbO系の化合物およびNaNbO系の化合物が、従来の吸着材(A型ゼオライトおよびアンバーライト)と比較して優れたストロンチウム吸着能を有することが示された。ここで、Ti源を混合しないNaNbO系の化合物であっても、一定の吸着能を有する。これに対して、Ti源としてチタンの塩化物を用いると共に、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲で混合した混合物を基に得た(Na/H)xTiNbyzの組成を有する本発明に係る化合物は、さらに顕著に優れた吸着能を有することが示された。また、本吸着能性試験は、pH11の高pH環境で実施した。したがって、本発明に係る化合物が、高放射線量、高pH環境下において耐久性を有すると共に、安定した吸着能を有するストロンチウム吸着材として適用可能であることが示された。
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、本発明に係る吸着材はストロンチウムに対して好適に適用されるが、セシウム等の他の放射性核種に対して適用することも可能である。

Claims (6)

  1. (Na/H)xTiNbyzの組成を有し、x=0.1~4、y=1.0~10、z=4.0~29であって、
    CuKα線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが10.0~14.0°の範囲に最も高いピークが存在し、回折角2θが28.5~30.5°の範囲に2番目に高いピークが存在すること
    を特徴とするストロンチウム吸着材。
  2. 前記回折角2θが10.0~14.0°の範囲に存在するピークの最大強度(A)が、前記回折角2θが28.5~30.5°の範囲に存在するピークの最大強度(B)の2倍以上であること
    を特徴とする請求項1記載のストロンチウム吸着材。
  3. 前記回折角2θが10.0~14.0°の範囲に存在するピークは、少なくとも回折角2θ(±0.2°)=12.9°および回折角2θ(±0.2°)=13.4°の位置にスプリットしており、
    前記回折角2θが28.5~30.5°の範囲に存在するピークは、少なくとも回折角2θ(±0.2°)=29.1°および回折角2θ(±0.2°)=29.7°の位置にスプリットしていること
    を特徴とする請求項1または請求項2記載のストロンチウム吸着材。
  4. 前記最大強度(A)は、前記回折角2θ(±0.2°)=12.9°の位置に存在し、
    前記最大強度(B)は、前記回折角2θ(±0.2°)=29.1°の位置に存在すること
    を特徴とする請求項2記載のストロンチウム吸着材。
  5. Nb源、Tiの塩化物からなるTi源、Na源および水を、NbとTiとのモル比がNb:Ti=1~4:1の範囲で混合する工程と、
    該工程で得た混合物を水熱反応させる工程と、を含むこと
    を特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のストロンチウム吸着材の製造方法。
  6. 前記水熱反応は、130~230℃の温度範囲で行うこと
    を特徴とする請求項記載のストロンチウム吸着材の製造方法。
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JP2017209594A (ja) 2016-05-23 2017-11-30 株式会社クボタ イオン交換材料、イオン交換体、イオン吸着装置、水処理システム、イオン交換材料の製造方法、及びイオン交換体の製造方法

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