以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
(1)移動体
(1-1)全体構成
図1は、移動体としての自動車1の構成を例示する概略図である。図1に示す自動車1は、4輪のハイブリッド車である。ハイブリッド車としての自動車1は、駆動源として、モータ3と、このモータ3と協働するエンジン2と、を備える。エンジン2及びモータ3は、互いに協働することで、4つの車輪4F,4F,4R,4Rのうち、車体の後側に位置する駆動輪4R,4Rを回転駆動する。この回転駆動によって、自動車1が移動(走行)する。
この自動車1の場合、エンジン2は車体の前側に配置され、駆動輪4Rは前述のように車体の後側に配置される。すなわち、自動車1は、いわゆるFR車である。さらに、この自動車1の場合、モータ3よりもエンジン2が主体となって動力を発生する。モータ3は、エンジン2の駆動をアシストする形で利用される。すなわち、自動車1は、いわゆるマイルドハイブリッド車である。また、モータ3は、駆動源として機能するばかりでなく、回生時には発電機としても利用される。
なお、自動車1は、マイルドハイブリッド車に限定されない。自動車1は、モータ3が主体となって動力を発生するように構成された、いわゆるフルハイブリッド車とすることもできる。
自動車1は、エンジン2及びモータ3の他、駆動系の装置として、第1クラッチ5、インバータ6、第2クラッチ7、変速機8、デファレンシャルギア9、バッテリ10などを備える。これら装置の複合体(駆動システム)の作用により、自動車1は走行する。
自動車1はまた、制御系の装置として、エンジンコントロールユニット(ECU)20、モータコントロールユニット(MCU)21、変速機コントロールユニット(TCU)22、ブレーキコントロール(BCU)23、総合コントロールユニット(GCU)24などを備える。
制御系の装置には、各種センサが電気的に接続されている。後述のように、自動車1は、特にモータ3に関連したセンサとして、モータ回転センサ51と、サーチコイル55と、電圧センサ56と、を備える。
(1-2)駆動系の装置
エンジン2は、例えばガソリンを燃料にして燃焼を行う内燃機関である。エンジン2は、いわゆる4サイクルエンジンである。すなわち、本実施形態に係るエンジン2は、吸気、圧縮、膨張及び排気の各サイクルを繰り返すことで回転動力を発生させる。なお、エンジン2の種類及び形態は、本実施形態に示すものに限定されない。エンジン2は、ディーゼルエンジン等、様々な形態を取り得る。
エンジン2は、回転動力を出力する出力軸(不図示)を備える。この出力軸は、車体の前後方向に沿わせた状態で、車幅方向における略中央部に配置される。自動車1は、吸気システム、排気システム、燃料供給システムなど、エンジン2に付随した様々なシステムを備える。それらのシステムの図示及び説明は省略する。
図2Aは、モータ3の構成を概略的に例示する側面図である。図2Bは、モータ3の構成を概略的に例示する断面図である。図2A及び図2Bに示すモータ3は、図1に例示するようにエンジン2の後方に配置される。このモータ3は、第1クラッチ5を介してエンジン2と直列に連結される。モータ3は、3相交流によって駆動される永久磁石型の同期モータである。図2Aに示すように、モータ3は、大略、モータケース31と、シャフト32と、ロータ33と、ステータ34と、を備える。
モータケース31は、円柱状のスペースを区画する円筒状の容器からなる。モータケース31は、その中心軸方向における両端面が封止された状態で、自動車1の車体に固定され。ロータ33及びステータ34は、モータケース31に収容される。シャフト32は、その中心軸方向における両端部をそれぞれモータケース31から突出させた状態で、モータケース31に回転自在に支持される。
第1クラッチ5は、シャフト32の一端部(前端部)と、エンジン2の出力軸との間に介在するように設置される。第1クラッチ5は、出力軸とシャフト32とが連結された状態(連結状態)と、出力軸とシャフト32とが分離した状態(解放状態)と、の間で切替可能に構成される。
第2クラッチ7は、シャフト32の他端部(後端部)と、変速機8の入力軸との間に介在するように設置される。第2クラッチ7は、シャフト32と入力軸とが連結された状態(連結状態)と、シャフト32と入力軸とが分離した状態(解放状態)と、の間で切替可能に構成されている。
なお、第1クラッチ5及び第2クラッチ7は、それぞれ、前述の連結状態と解放状態との間の状態(部分連結状態)において、シャフト32を介して伝達される動力の大きさを調整可能に構成される。
ロータ33は、磁石35を有しかつ回転動力を出力するように構成される。具体的に、本実施形態に係るロータ33は、円柱状の部材からなる。この円柱状の部材は、中心に軸孔を有する複数の金属板を、その中心軸方向に沿って積層することで構成される。ロータ33の軸孔に対してシャフト32の中間部分を固定することで、ロータ33は、シャフト32と一体化される。
ロータ33の外周部分には、該ロータ33の回転方向に沿って、複数の磁石35が配置される。複数の磁石35は、ステータ34の内周面にS極を指向させた第1磁石35aと、回転方向において第1磁石35aと隣接しかつステータ34の内周面にN極を指向させた第2磁石35bと、を含む。
なお、「ロータ33の回転方向」は、該ロータ33、ひいてはステータ34及びモータ3の周方向に等しい。以下の記載では、「ロータ33の回転方向」の語を、単に「回転方向」という。同様に、「ロータ33の径方向」の語を、以下の記載では単に「径方向」という。
また、以下の記載では、ステータ34に対する第1磁石35aの姿勢を明確にするために、第1磁石35aをS磁石35aともいう。同様に、第2磁石35bをN磁石35bともいう。
複数の磁石35は、例えば図2Aに示す構成では、4個の第1磁石35aと、4個の第2磁石35bと、からなる。第1磁石35a及び第2磁石35bは、回転方向に沿って、等間隔で交互に並ぶように配置される。
また、複数の磁石35は、2A及び図2Bに示す断面、つまりシャフト32に垂直な断面上では、それぞれ、径方向の寸法に比して回転方向の寸法が長い矩形状に形成される。
また、複数の磁石35は、いずれも、いわゆる磁力可変マグネットとして構成される。すなわち、複数の磁石35は、それぞれ、各磁石35から発せられる磁力の大きさを大小に可変することができる。通常、この種のモータ3には、その磁力を長期にわたり保持できるよう、保磁力(Coercivity)が大きい永久磁石が使用される。このモータ3では、磁力を比較的容易に変更できるように、通常よりも保持力の小さい永久磁石が磁石35として用いられる。
磁石35として用いられる永久磁石には、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石など、様々な種類があり、保持力も様々である。磁石35の素材は、使用に応じて選択可能であり、特に限定されない。
また、各磁石35は、ロータ33の周縁に沿って区画された収容スペース37に収容される。図2Bに例示するように、収容スペース37は、磁石35を支持するための一対の支持面37a,37bによって区画される。一対の支持面37a,37bは、径方向における両側から磁石35を挟持する。
ステータ34は、ロータ33に対しギャップを隔てて対向するように配置された複数のコイル36を有する。具体的に、本実施形態に係るステータ34は、複数の金属板を積層してなるステータコア34aと、そのステータコア34aに電線を巻回してなる複数のコイル36と、を有する。
このうち、ステータコア34aには、径方向に沿って放射状に延びる複数のティース34bが設けられる。複数のティース34bの間に区画されるスロットには、所定の順序で電線が巻回される。そうして巻き掛けられた電線によって、複数のコイル36が形成される。すなわち、複数のコイル36は、それぞれ、いわゆる集中巻きのコイルとして構成されている。
複数のコイル36は、流れる電流の位相が異なるU相、V相及びW相からなる3相のコイル群を構成する。各コイル群は、回転方向に沿って順番に配置される。例えば図2Aに示す構成では、複数のコイル36は、計12個のコイル36からなる。12個のコイル36は、4つのコイル36からなるU相コイル群と、4つのコイル36からなるV相コイル群と、4つのコイル36からなるW相コイル群と、に区分される。
以下、U相コイル群に属するコイル36をU相コイル36uと呼称し、V相コイル群に属するコイル36をV相コイル36vと呼称し、W相コイル群に属するコイル36をW相コイル36wと呼称する場合がある(図2B等を参照)。
なお、本実施形態では、8極12スロットのモータ3を例示したが、モータ3の構成は、この例に限定されない。モータ3は、より多くの極数及びスロット数を有するよう構成してもよい。例えば、Nを整数として、2×N個の磁石35と、3×N個のスロットとでモータ3を構成することができる。
コイル36に通電するために、これらコイル36には3本の接続ケーブル36a,36a,36aが接続される。3本の接続ケーブル36a,36a,36aは、U相のコイル群に接続される接続ケーブル36aと、V相のコイル群に接続される接続ケーブル36aと、W相のコイル群に接続される接続ケーブル36aと、を有する。これら接続ケーブル36a,36a,36aは、モータケース31の外側に導出されるとともに、インバータ6を介してバッテリ10と接続される。この自動車1の場合、バッテリ10は、50V以下の定格電圧とされたバッテリ、具体的には48Vの直流バッテリ(低電圧バッテリ)が用いられる。
本実施形態に係るバッテリ10は、従来知られたハイブリッド車に搭載されるバッテリのように高電圧ではない。そのため、バッテリ10自体を軽量かつコンパクトにすることができる。さらに、高度な感電対策が不要となるため、絶縁部材等も簡素化することができる。この簡素化によって、バッテリ10をより軽量かつコンパクトにすることができる。このように、自動車1の重量を抑制することができるため、燃費及び電力消費を抑制することができる。
バッテリ10は、インバータ6に直流電流を供給する。インバータ6は、その直流電流をU相、V相及びW相からなる3相の交流電流に変換する。インバータ6は、U相に変換された交流電流をU相コイル群に通電し、V相に変換された交流電流をV相コイル群に通電し、W相に変換された交流電流をW相コイル群に通電する。
交流電流の通電により、各コイル群をなすコイル36が磁界を生成する。そうして、磁界を生成したコイル36と、各磁石35とが互いに引力または斥力を及ぼし合うことで、ロータ33が回転駆動される。回転駆動されたロータ33は、シャフト32を介して回転動力を出力する。この回転動力は、シャフト32及び第2クラッチ7を介して変速機8に入力される。
この自動車1の場合、変速機8は、多段式自動変速機、いわゆるATである。変速機8は、一方の端部に入力軸を有し、他方の端部に出力軸を有する。これら入力軸と出力軸との間に、複数の遊星歯車機構、クラッチ、ブレーキなどの変速機構が組み込まれる。そうした変速機構を切り替えることで、自動車1の前進又は後退を切り替えたり、変速機8の入力軸と出力軸との間で回転数を変更したりすることができる。変速機8の出力軸は、車体の前後方向に沿って延びる。この出力軸は、該出力軸と同軸に配置されるプロペラシャフト11を介してデファレンシャルギア9に連結される。
デファレンシャルギア9は、一対の駆動シャフト13,13に連結される。一対の駆動シャフト13,13は、車幅方向に延びて左右の駆動輪4R,4Rに連結される。プロペラシャフト11を介して出力される回転動力は、デファレンシャルギア9によって各駆動シャフト13に振り分けられた後、各駆動シャフト13を通じて各駆動輪4Rに伝達される。各車輪4F,4F,4R,4Rには、その回転を制動するためのブレーキ14が取り付けられる。
また、本実施形態に係るモータ3は、ロータ33を構成する磁石35の温度(以下、単に「磁石温度」という)を判定するために、2種類のセンサ55,56を備える。2種類のセンサ55,56は、サーチコイル55と、電圧センサ56と、からなる(図3参照)。これらのセンサ55,56は、双方とも、ロータ33の回転に応じて生じる誘起電圧を検出することができる。
このうち、サーチコイル55は、図2Bに例示するように、複数のコイル36のうちのいずれか1つに電線を重畳することで構成される。サーチコイル55は、電線が重畳されたコイル36と同軸になる。サーチコイル55は、サーチ用接続ケーブル36bを介することでMCU21に接続される。サーチ用接続ケーブル36bは、インバータ6に通じる3本の接続ケーブル36a,36a,36aとは電気的に切り離されている。すなわち、サーチ用接続ケーブル36bは、モータ3を駆動するインバータ6とは独立した回路に接続されるようになっている。
サーチコイル55は、ロータ33の回転に際し、サーチコイル55が構成されたコイル36を磁石35が通り過ぎるときに生じる誘起電圧を検出し、その検出信号をMCU21に入力する。
一方、電圧センサ56は、詳細な図示は省略するが、モータ3の中性点と、各接続ケーブル36a,36a,36aとの間の電圧を検出し、その検出信号をMCU21に入力する。
ここで、図1等に示すモータ3は、サーチコイル55及び電圧センサ56による誘起電圧の検出に適した特徴部を備える。具体的に、本実施形態に係るロータ33には、回転方向において磁石35と隣接する空隙38が設けられる。この空隙38は、回転方向における磁石35の両端に隣接して配置される。
各空隙38は、いわゆるフラックスバリアとして機能する。すなわち、空隙38は、ある磁石35が発する磁束が、ロータ33内で他の磁石35に回り込むのを抑制する機能をなす。これにより、ギャップを介してステータ33と鎖交する磁束を増やすことができる。
詳しくは、各空隙38は、回転方向に沿って、対応する磁石35から離間する方向に延びる。回転方向における各空隙38の寸法は、コイル36の寸法に基づいて規定される。具体的に、ロータ33の回転軸(シャフト32)に垂直な断面、つまり図2Bに示す断面上で、回転方向における空隙38の寸法をD1とし、回転方向におけるコイル36の直径をD2とすると、
D1≧D2/4 …(A)
の関係が満足される。式(A)は、回転方向における空隙38の寸法の下限を規定する。また、図2Bに示す断面上で、回転方向における磁石35同士の間隔をD3とすると、
D3≧2×D1 …(B)
の関係が満足される。式(B)は、回転方向における空隙38の寸法の上限を規定する。
式(A)及び式(B)より、下式(C)に示す関係が満足される。
D2/4≦D1≦D3/2 …(C)
また、各空隙38は、回転方向において磁石35から離間するにつれて、径方向における寸法が短くなる。すなわち、各空隙38は、図2Bに例示するように先細に形成される。同図に示すように、各空隙38の先端部は、回転方向において互いに向かい合う。
また、空隙38は、ロータ33における磁石35の収容スペース37と連通する。図2Bに示すように、収容スペース37を区画する支持面37a,37bのうち、径方向の外側に位置する支持面37aは、空隙38の内周面と面一に繋がっている。一方、径方向の内側に位置する支持面37bは、空隙38の内周面に対し、段差を介して繋がっている。
(1-3)制御系の装置
自動車1は、該自動車1の走行をコントロールするために、前述したECU20、MCU21、TCU22、BCU23及びGCU24を備える。これらのユニットのうち、ECU20は、エンジン2の作動を主に制御するユニットである。MCU21は、モータ3の作動を主に制御するユニットである。TCU22は、第1クラッチ5、第2クラッチ7及び変速機8の作動を主に制御するユニットである。BCU23は、ブレーキ14の作動を主に制御するユニットである。GCU24は、ECU20、MCU21、TCU22及びBCU23と電気的に接続され、これらのユニットを総合的に制御する上位ユニットである。
前述したユニットのうち、MCU21は、「モータの制御装置」の主体を構成する。MCU21は、コントローラの一例である。図3に示すように、MCU21は、マイクロコンピュータ211と、メモリ212と、I/F回路213と、を備える。マイクロコンピュータ211は、プログラムを実行する。メモリ212は、プログラム及びデータを格納する。メモリ212は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)である。I/F回路213は、電気信号の入出力を行う。
また、GCU24等、MCU21以外の各ユニットは、MCU21と協働することによって「モータの制御装置」を構成する。各ユニットは、MCU21と同様に、マイクロコンピュータ(不図示)と、メモリ(不図示)と、I/F回路(不図示)と、を備える。
MCU21には、センサとしてのサーチコイル55及び電圧センサ56が接続される。サーチコイル55及び電圧センサ56の検出信号は、それぞれMCU21に入力される。サーチコイル55及び電圧センサ56以外のセンサのうち、自動車1の走行に関連するものとしては、以下のセンサ50-54が上げられる。
まず、エンジン回転センサ50は、エンジン2の回転数を検出してECU20に入力する。エンジン回転センサ50は、エンジン2に取り付けられる。モータ回転センサ51は、ロータ33の回転数及び回転位置を検出してMCU21に入力する。モータ回転センサ51は、モータ3に取り付けられる。電流センサ52は、各コイル36に通電される電流値を検出してMCU21に入力する。電流センサ52は、接続ケーブル36aに取り付けられる。
磁気センサ53は、磁石35が発する磁界を検出し、その強度を示す信号をMCU21に入力する。磁気センサ53は、モータ3に取り付けられる。アクセルセンサ54は、自動車1の駆動に要求される出力に相当するアクセル開度を検出し、その大きさを示す信号をECU20に入力する。アクセルセンサ54は、運転者が自動車1を駆動するときに踏み込まれるアクセルペダル15に取り付けられる。
これらセンサから入力される検出信号に基づいて、各ユニットが協働して駆動システムを制御することで自動車1が走行する。エンジン2の駆動によって自動車1が走行するときには、アクセルセンサ54及びエンジン回転センサ50の検出信号に基づいて、ECU20がエンジン2の運転を制御する。
そして、TCU22は、第1クラッチ5及び第2クラッチ7が連結状態になるように制御する。自動車1の制動時には、BCU23が各ブレーキ14を制御する。回生による制動時には、TCU22は、第1クラッチ5が解放状態又は部分連結状態となるように制御するとともに、第2クラッチ7が連結状態となるように制御する。こうすることで、MCU21は、モータ3によって発電を実行し、その発電によって生成される電力がバッテリ10に回収されるように制御する。
一方、MCU21は、複数のコイル36への通電を通じてモータ3を制御する。詳しくは、MCU21は、モータ3が単独で回転動力を出力する状態で、あるいは、モータ3がエンジン2の駆動をアシストする状態で、モータ3の回転動力によって自動車1が走行するように制御する。
具体的に、アクセルセンサ54、エンジン回転センサ50等の検出値に基づいて、ECU20がエンジン2の回転動力を設定する。それに伴い、予め設定されたエンジン2とモータ3との間での出力の分配比率に従って、所定の出力範囲に収まるように、GCU24がモータ3の回転動力の要求量を設定する。MCU21は、その要求量が出力されるように、モータ3に流れる3相交流を介してモータ3を制御する。
さらに詳しくは、MCU21は、3相交流におけるトルク電流成分を制御することで、ロータ33に発生するトルクを変更する。それによって、モータ3に、回転動力の要求量を出力させる。
MCU21はまた、3相交流における磁化電流成分を制御することで、コイル36に発生する磁界強度を変更する。詳細は省略するが、コイル36に発生する磁界強度を変更することで、磁石35によって生成される磁界強度(磁石35の磁力)を変更することができる。具体的に、磁石35の磁力は、駆動電流によってコイル36に発生する磁界強度と略一致するように変更される。
前述の如き制御を実現するべく、本実施形態に係るMCU21は、回転動力の要求量等に対応した正弦波信号を生成する正弦波生成部218と、正弦波信号が入力されかつ、その正弦波信号に対応したパルス幅変調(PWM)信号を生成するPWM信号生成部219と、を有する(図5参照)。PWM信号生成部219から出力されるPWM信号に基づいて、インバータ6がスイッチング素子のオンオフ制御を実行する。これにより、所望の3相交流が各コイル群に通電されてモータ3が回転し、要求されたトルクを出力するようになっている。
また、MCU21は、予め定められている制御ロジックに従って、磁石温度の推定と、磁石温度に基づいたモータ制御と、を実行することができる。以下、磁石温度を推定するための制御ロジックと、モータの制御ロジックと、について順番に説明する。
(2)磁石温度の推定ロジック
MCU21は、磁石温度を判定するための制御ロジックとして、2種類の推定ロジックを単体で又は組み合わせて実行することができる。すなわち、MCU21は、「モータの磁石温度推定装置」も構成する。モータの磁石温度推定装置としてのMCU21の構成は、図4に示す通りである。
2種類の推定ロジックのうち、第1の推定ロジックは、誘起電圧が平坦となるタイミングに着目した制御ロジックである。また、第2の推定ロジックは、誘起電圧の高調波成分に着目した制御ロジックである。2種類の推定ロジックは、予めメモリ212に記憶されている。
(2-1)第1の推定ロジック
図6は、コイル36に生じる誘起電圧を例示するグラフである。図7は、空隙面積と電圧安定性及び機械強度との関係を例示するグラフである。ここでは、図6及び図7を参照しながら、第1の推定ロジックについて説明する。
図6に示すグラフG1は、U相コイル36uに生じる誘起電圧Vu、V相コイル36vに生じる誘起電圧Vv、及びW相コイル36wに生じる誘起電圧Vwそれぞれの時間変化を例示している。
以下、U相コイル36uに生じる誘起電圧Vuを例に取り説明する。この場合、誘起電圧Vuは、4つのU相コイル36uのうちの1つにサーチコイル55を重畳した上で、そのサーチコイル55における電圧をモニターすることで検出される。以下の説明は、V相コイル36v及びW相コイル36wについても同様である。
図6の下部に示すように、S磁石(第1磁石)35aが生成する磁束のうち、このS磁石35aを貫く磁束は、径方向の内側を指向する(矢印Asを参照)。一方、N磁石(第2磁石)35bが生成する磁束のうち、このN磁石35bを貫く磁束は、径方向の外側を指向する(矢印Anを参照)。S磁石35a及びN磁石35bによって生成される磁束と、例えばU相コイル36uと、が鎖交することで、U相コイル36uに誘起電圧Vuが生じる。
ここで、ファラデーの誘導法則から明らかなように、誘起電圧Vuの大きさは、U相コイル36uに鎖交する磁束の時間変化に比例する。したがって、磁束の時間変化が最大となるタイミングで、誘起電圧Vuはピークを迎えることになる。
具体的に、磁束の時間変化が最大となるタイミングは、ロータ33の外周部のうちS磁石35aとN磁石35bとの中間に位置する部位と、U相コイル36uの中心軸線Lcと、が交わるタイミングに等しい(図6の囲み部C2を参照)。このタイミングは、U相コイル36uに鎖交する磁束の向きが反転するタイミングに相当する。
一方、磁束の時間変化が最小あるいは可及的に小さくなるタイミングにおいては、誘起電圧Vuの時間変化を可能な限り抑制することができる。具体的に、S磁石35a又はN磁石35bと、U相コイル36uと、が向かい合うタイミングにおいて、誘起電圧Vuの時間変化は最小となる(図6の囲み部C1及びC3を参照)。さらに詳しくは、回転方向におけるS磁石35a又はN磁石35bの中央部と、U相コイル36uの中心軸線Lc、とが交わるタイミング(以下、「最小タイミング」ともいう)において、誘起電圧Vuの時間変化は最小となる。
図6の上部に示す例では、囲み部C1及びC3において誘起電圧Vuが実質的に平坦となることが見て取れよう。具体的に、囲み部C1においては、N磁石35bによる磁束が主体となって生じる誘起電圧Vuが平坦となる。囲み部C3においては、S磁石35aによる磁束が主体となって生じる誘起電圧Vuが平坦となる。以下、誘起電圧Vuにおいて平坦となる部分を「誘起電圧の肩部」と呼称する。
また、誘起電圧Vuの肩部における時間変化は、ロータ33に空隙38を設けることでより平坦となる。この現象は、空隙38がフラックスバリアとして機能することで、U相コイル36uに向かい合う磁石35の端部からの磁束漏れを低減し、その端部における磁束量変化を安定化するとともに、U相コイル36uに向かい合う磁石35に隣接した他の磁石35からの磁束の回り込みが抑制されて発生する。
空隙38が奏する効果は、図7に示す通りである。図7の上段に示すグラフG2は、空隙面積と電圧安定性との関係を示す。一方、図7の下段に示すグラフG3は、空隙面積と電圧安定性との関係を示す。ここで、「空隙面積」の語は、シャフト32に垂直な断面、すなわち図2Bに示す断面上での各空隙38の断面積を意味する。一方、「電圧安定性」の語は、誘起電圧Vuの時間変化の大小を意味する。誘起電圧Vuの時間変化が大きいとき、該時間変化が小さいときに比して、電圧安定性は低くなる。また、「機械強度」の語は、ロータ33の機械的強度を意味する。
図7のグラフG2に示すように、空隙面積が大きいときには、それが小さいときに比して電圧安定性は高くなる。しかしながら、同図のグラフG3に示すように、空隙面積が大きいときには、それが小さいときに比して機械強度は低くなる。図7に示すように、所定の範囲R1内に収まるように空隙面積を設定することで、電圧安定性と機械強度を両立することができる。この範囲R1内に空隙面積を設定した場合、その空隙38の寸法D1は、上式(C)を満足することになる。上式(C)、ひいては式(A)を満足するように構成することで、各空隙38に、フラックスバリアとしての機能を十分に発揮させることが可能となる。
以上の知見を踏まえ、本願発明者らは、第1の推定ロジックを以下の如く構築した。
すなわち、本実施形態に係るMCU21は、ロータ33の回転に伴って磁石35と複数のコイル36のいずれか1つとが向かい合う際に検出される誘起電圧Vuに基づいて、磁石温度を推定する。
具体的に、MCU21は、サーチコイル55を介して誘起電圧Vuの肩部を検出する。誘起電圧Vuの肩部を検出することは、時間変化が最小となるタイミングで誘起電圧Vuを検出することに等しい。誘起電圧Vuの肩部を検出することと、空隙38をフラックスバリアとして機能させることとが相まって、誘起電圧Vuの検出に際し、その時間変動を可能な限り抑制することができる。これにより、誘起電圧Vuの検出精度を高めることができる。
MCU21は、そうして検出された誘起電圧Vuに基づいて、磁石温度を推定する。周知のように、誘起電圧Vuと、磁石35が発する磁束密度と、は比例関係にある。また、図9のグラフG7に例示するように、磁石35が発する磁束密度と、磁石温度と、は直線状の関係をなす。したがって、誘起電圧Vuを検出することで、磁束密度を介して磁石温度を算出することができる。
特に本実施形態では、MCU21のメモリ212には、磁束密度と磁石温度との関係を示すテーブルが予め記憶されている。したがって、MCU21は、誘起電圧Vuに基づいて磁束密度を算出するとともに、そうして算出された磁束密度とメモリ212に記憶されたテーブルとを用いることで、磁石温度を推定することができる。誘起電圧Vuの検出精度を高めた状態で磁石温度を推定することで、磁石温度を精度よく推定することができるようになる。
また、MCU21のメモリ212には、ロータ33の回転に際し、回転方向における磁石35の中央部と、複数のコイル36の各々の中心軸線Lcと、が交わるタイミング(最小タイミング)が予め記憶されており、MCU21は、その最小タイミングで誘起電圧Vuを取得する。最小タイミングは、誘起電圧Vuの時間変化が最小となるタイミングに等しい。したがって、最小タイミングで誘起電圧Vuを検出することは、その検出精度を高める上で有効である。また、最小タイミングを予め記憶しておくことで、誘起電圧Vuをより確実に抑制することが可能となり、ひいては、磁石温度を精度よく推定する上で有利になる。
また、MCU21による誘起電圧Vuの検出は、最小タイミングにおいてのみ実行されるのではなく、最小タイミングを含んだ所定期間Tsにわたり実行することもできる。
具体的に、MCU21は、最小タイミングを含んだ所定期間Tsにわたって誘起電圧Vuを取得するとともに、その所定期間Tsにわたって取得された誘起電圧Vuの平均値に基づいて、磁石温度を推定する。特定のタイミングで検出される誘起電圧Vuではなく、その平均値を用いることで、誘起電圧Vuの時間変動の影響を可能な限り抑制したり、ノイズ等に起因した誘起電圧Vuのバラツキの影響を低減したりすることができる。これにより、磁石温度を精度よく推定する上で有利になる。
なお、本実施形態に係る所定期間Tsは、誘起電圧Vuがピークを迎えるタイミングを含まないように設定される。すなわち、所定期間Tsは、回転方向において2つの磁石35の中間に位置する部位と、コイル36の中心軸線Lcと、が交わるタイミングを含まない期間として設定される。
また、MCU21は、モータ3の駆動に要するコイル36ではなく、それらコイル36のうちの1つに重畳されるサーチコイル55に生じる誘起電圧Vuに基づいて、磁石温度を推定する。サーチコイル55を用いることで、そのサーチコイル55が重畳されたコイル36に生じる誘起電圧を間接的に検出することが可能となる。これにより、サーチコイル55とすれ違う各磁石35の温度を個別に推定することができるようになり、ひいては磁石温度をより正確に判定することができるようになる。磁石温度の正確な判定は、後述のように、磁石温度に基づいたモータ制御を実行するときに、取り分け有効となる。
なお、誘起電圧Vuに基づいて磁石温度を把握する術としては、誘起電圧Vuの実効値、平均値及び最大値等を用いたり、第2の推定ロジックのように、誘起電圧Vuを周波数成分に分解したときの最低次高調波を用いたりすることも考えられる。しかしながら、それらの方法を用いた場合、磁石35全体の温度や、磁石35間の温度差こそ精度よく推定できるものの、各磁石35の温度を個別に推定するには不向きである。
一方、第1の推定ロジックによれば、磁石35毎に誘起電圧を検出することで、磁石温度を個別に推定することが可能となる。このように、第1の推定ロジックは、各磁石35の温度を個別にかつ精度よく推定できるという点で有効である。
また、図2Bに例示したように、各空隙38は、回転方向において磁石35から離間するにつれて、ロータ33の径方向における寸法が短くなる。この場合、空隙38において磁石35に近接する部位は、径方向における寸法が相対的に長くなる分だけ断面積が広く確保され、フラックスバリアとしての機能を発揮させる上で有利になる。一方、空隙38において磁石から離間する部位は、径方向における寸法が徐々に短くなって先細となるため、ロータ33の機械的強度を確保する上で有利になる。
また、図2Bに例示したように、一対の支持面37a,37bのうち、径方向の外側に位置する一方の支持面37aは、空隙38の内周面と面一に繋がっている。支持面37aと空隙38の内周面とを面一に繋げることで、両面をスムースに接続することが可能となる。この構成は、支持面37aと空隙38の内周面との間に段差が存する構成に比して、誘起電圧Vuを滑らかに変動させることが可能となる。これにより、誘起電圧Vuの時間変動をより確実に抑制し、ひいては、磁石温度を精度よく推定する上で有利になる。
(2-2)第2の推定ロジック
図8は、誘起電圧の高速フーリエ変換によって得られる振幅及び位相を例示する図である。図9は、磁石35の磁束密度と磁石温度との関係を例示するグラフである。ここでは、図8及び図9を参照しながら、第2の推定ロジックについて説明する。
以下、U相コイル36uに生じる誘起電圧Vuを例に取り説明する。この場合、誘起電圧Vuは、モータ3の中性点と、U相コイル36uに接続される接続ケーブル36aとの間の電位差をモニターすることで検出される。以下の説明は、V相コイル36v及びW相コイル36wについても同様である。
図8の左部に示すグラフG4は、U相コイル36uに生じる誘起電圧Vuを示す。一方、図8の右部に示す棒グラフG5は、その誘起電圧Vuを高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)をすることで得られる周波数スペクトルの絶対値(振幅)を示す。また、図8の右部に示す折れ線グラフG6は、FFTによって得られる周波数スペクトルの偏角(位相)を示す。
また、図8の右部に示す折れ線グラフG6’は、S磁石35bとN磁石35bとの温度差がグラフG6と同一であり、かつ、S磁石35bとN磁石35bとの温度の大小関係が、グラフG6に示す状況とは逆転した場合を示す。
グラフG4に示すように、誘起電圧Vuの波形は、正弦波から相違する。このことは、第1の推定ロジックの説明の際に言及したように、ロータ33の回転に伴って磁石35とコイル36との位置関係が変化することに起因する。見方を変えると、グラフG4に示す波形は、所定周波数を有する正弦波(基本波)に対し、その所定周波数の整数倍の周波数成分(高調波)が重畳することで実現されると捉えることもできる。
ここで、基本波の周波数をf0とし、最低次高調波の周波数をf1とし、モータ3の極数をNpとし、モータ回転数をRmとし、1極の磁石35の数(一極対あたりの磁石35の個数)をNmとすると、
f0=Np×Rm …(D)
f1=Nm×f0 …(E)
の関係が満足される。本実施形態の場合、Np=8であり、Nm=2である。したがって、最低次高調波は、基本波に対し2倍の周波数を有する2次高調波となる。なお、前記磁石35の代わりに分割磁石を用いた場合、Nmは4以上の整数となり得る。
本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、誘起電圧VuにFFTを施すことで得られる周波数スペクトルのうち、最低次高調波の周波数スペクトルには、第1磁石35aとしてのS磁石35aと、第2磁石35bとしてのN磁石35bと、の温度差を間接的に示す情報が含まれることを突き止めた。
本願発明者らによって得られた知見によれば、最低次高調波の周波数スペクトルの振幅は、S磁石35aとN磁石35bとの温度差に比例する。例えば、高調波に係る振幅は、磁石間の温度差が大きいときには、その温度差が小さいときに比して大きくなる。図8に示す例では、S磁石35aとN磁石35bとの温度差が大きくなるにつれて、囲み部C4に示す振幅がより大きくなる。
また、本願発明者らによれば、高調波の周波数スペクトルの位相は、S磁石35aに比してN磁石35bが高温のときと、N磁石35bに比してS磁石35aが高温のときと、で位相が反転する。図8に示す例は、N磁石35bに比してS磁石35aが高温の場合を示している。この場合、高調波の位相の符号は、囲み部C5に示すように正となる。一方、磁石35間の温度差が図8に示す例と同じであったとしても、S磁石35aに比してN磁石35bが高温の場合には、囲み部C5と同一周波数における位相の符号は、囲み部C5’に示すように反転して負となる。
さらに、本願発明者らによれば、基本波の周波数スペクトルの振幅は、S磁石35a及びN磁石35bの平均温度と関連する。詳しくは、基本波に係る振幅は、S磁石35a及びN磁石35bが発する磁束密度の平均値が大きいときには、その平均値が小さいときに比して大きくなる。一方、磁束密度の大きさは、前述のように、磁石温度と直線状の関係にある。したがって、基本波に係る振幅を用いることで、各磁石35が取り得る平均温度を推定することができる。
以上の知見を踏まえ、本願発明者らは、第2の推定ロジックを以下の如く構築した。
すなわち、本実施形態に係るMCU21は、誘起電圧を構成する周波数成分のうち、所定周波数に対応した周波数スペクトルに基づいて磁石温度を推定する。
具体的に、MCU21は、所定周波数に対応した周波数スペクトルを取得するべく、誘起電圧に対してFFTを実行する。ここで、所定周波数は、磁石35の個数に応じて規定される第n次高調波(nは整数)のうち、最低次高調波(本実施形態では、2次高調波)の周波数である。
次いで、MCU21は、FFTを通じて得られた周波数スペクトルの振幅に基づいて、磁石35が発する磁束密度を推定する。具体的に、MCU21は、基本波に係る振幅と、最低次高調波に係る振幅と、を加算する。これにより、磁石35間の温度差を考慮した振幅の最大値(最大振幅)を算出することができる。この演算を行うべく、本実施形態に係るMCU21は、FFTを通じて得られた周波数スペクトルが入力されるバンドパスフィルタ57を備える。このバンドパスフィルタ57の構成は、最低次高調波の周波数に応じて、適宜変更することができる。
そして、MCU21は、そうして得られた最大振幅に基づいて磁束密度を算出し、その磁束密度に基づいて磁石温度を推定する。最大振幅は、磁石35間の温度差を考慮した誘起電圧Vuの最大値を示す。一方、誘起電圧Vuと、磁石35が発する磁束密度と、は前述のように比例関係にある。また、磁石35が発する磁束密度と、磁石温度と、は直線状の関係をなす。したがって、誘起電圧Vuを検出することで、磁束密度を介して磁石温度を算出することができる。
MCU21はまた、FFTを通じて得られた周波数スペクトルの位相に基づいて、N磁石35bとS磁石35bとのうち、相対的に高温又は低温な磁石35を特定することができる。この機能は、磁石温度を用いた後述のモータ制御に用いられる。
このように、第2の推定ロジックによれば、誘起電圧Vuにフーリエ変換を施すことで得られる周波数スペクトルの振幅を用いることで、磁石温度を精度よく推定できる。
ところで、誘起電圧Vuに基づいて磁石温度を把握する術としては、第1の推定ロジックのように、特定のタイミングで検出される誘起電圧Vuに基づいて磁石温度を推定することも考えられる。しかしながら、この方法を用いるためには、誘起電圧をA/D変換する際のサンプリング周波数を、モータ3の回転数に見合うように高く設定する必要がある。このような方法は、モータが高回転となる場合には不都合である。
一方、第2の推定ロジックは、特定のタイミングで誘起電圧Vuを検出せずとも磁石温度を推定することができるため、従来よりもサンプリング周波数を低く抑えることができる。サンプリング周波数を低く抑えることで、フィルタリング処理等、誘起電圧Vuに対する処理を簡素化することが可能になる。また、誘起電圧Vuに対する処理の簡素化は、磁石温度をより迅速に推定したり、より確実に推定したりする上で有効である。
また、第2の推定ロジックによれば、周波数スペクトルの位相を用いることで、S磁石35aとN磁石35bのうち、相対的に高温な磁石35を特定することができる。このことは、各磁石35の温度をきめ細かく制御する上で有効である。
特に、最低次高調波の振幅及び位相を用いることで、各磁石35の温度差を精度よく推定したり、より高温な磁石35を精度よく特定したりすることができる。このことは、各磁石35の温度をより的確に推定する上で有効である。
また、前述のように、最低次高調波の振幅と、基本波の振幅とを加算してなる最大振幅を用いて磁石温度を推定することで、各磁石35が取り得る温度ばらつきを考慮した温度推定を実現することができる。これにより、磁石温度を過小評価することなく、より安全サイドに立って磁石温度を推定することができる。
(3)モータの制御ロジック
MCU21は、磁石温度に基づいたモータ3の制御ロジックとして、以下に説明するロジックを実行することができる。モータの制御装置としてのMCU21の構成は、図5に示す通りである。
以下に説明するロジックは、コイル36に通電される交流電流と、ロータ33に対する磁石35の相対位置関係と、に着目した制御ロジックである。この制御ロジックは、予めメモリ212に記憶されている。
図10は、交流電流と、それを変調するための重畳波と、の波形を例示するグラフである。また、図11は、重畳波によって変調されるタイミングを説明するための図である。図12は、磁石温度と、重畳波の変調度との関係を例示するグラフである。ここでは、図10から図12を参照しながら、モータの制御ロジックについて説明する。
図10に示すグラフG8は、W相コイル36wに流れる交流電流(W相電流)Iw、V相コイル36vに流れる交流電流(V相電流)Iv、及びU相コイル36uに流れる交流電流(U相電流)Iuそれぞれの時間変化を例示している。
以下、W相電流を例に取り説明するが、以下の説明は、U相コイル36uに流れる交流電流(U相電流)と、V相コイル36vに流れる交流電流(V相電流)と、において共通である。
ファラデーの誘導法則から明らかなように、磁石35に生じる渦電流のうち、W相コイル36wに起因する渦電流の強さ(誘導電圧の強さ)は、W相コイル36wにより生成されて磁石35を貫く磁束の時間変化に比例する。
ここで、W相コイル36wによって生成される磁束は、W相電流の時間変化が大きいときには、それが小さいときに比してより短期間で変化することになる(磁束の時間変化が大きくなる)。
加えて、磁石35を貫く磁束の大きさは、回転方向における磁石35の端部が回転方向におけるコイル36の端部(いわゆるティース表面)を通り過ぎるタイミングにおいて、他のタイミングに比して大きく変動する。以下、磁石35の端部がティース表面を通り過ぎるタイミングを「通過タイミング」と呼称する。以下、N磁石35bの端部がティース表面を通り過ぎる際の通過タイミングに符号「T1」を付し、S磁石35aの端部がティース表面を通り過ぎる際の通過タイミングに符号「T2」を付す。
なお、ここでいう通過タイミングT1,T2とは、ロータ33の径方向に沿って見たときに、該ロータ33の回転に伴って磁石35といずれかのコイル36との重なりが消失するタイミングに等しい。
例えば図11の左図に示すタイミングでは、W相コイル36wの中心軸線Lcが、回転方向におけるN磁石35bの中央部と交わる。この場合、ロータ33の径方向に沿って見たときのN磁石35bとW相コイル36wとの重なりR2は、他のタイミングに比して大きい。その際、W相コイル36wによって生成されてN磁石35bを貫く磁束の大きさは、時間的に大きく変動しない。
一方、図11の右図に示す通過タイミングT1では、W相コイル36wのティース表面に沿って延びる直線Leが、回転方向におけるN磁石35bの後端部をかすめる(より詳細には、直線Leが空隙38を通過する)。この場合、前述した重なりR2は、消失することになる。その際、W相コイル36wによって生成されてN磁石35bを貫く磁束の大きさは、時間的により大きく変動することになる。
通過タイミングT1,T2は、電気角という観点から見れば、W相電流がピークを迎えた後のタイミング、又は、W相電流がピークを迎える前のタイミングに相当する。すなわち、通過タイミングT1,T2においては、W相電流がピークを迎えるタイミングに比して、W相電流自体がより大きく変化することになる。
したがって、磁石35の端部がティース表面を通り過ぎることと、W相電流自体の時間変化と、が相まって、通過タイミングT1,T2では相対的に大きな渦電流が発生することになる。見方を変えると、通過タイミングT1,T2におけるW相電流の時間変化を緩慢にすれば、渦電流の発生を抑制することが可能となる。
以上の知見を踏まえ、本願発明者らは、モータの制御ロジックを以下の如く構築した。
すなわち、本実施形態に係るMCU21は、ロータ33の径方向に沿って見たときに、該ロータ33の回転に伴って磁石35と複数のコイル36のいずれかとの重なりが消失する通過タイミング(所定タイミング)T1,T2において、交流電流の時間変化を緩慢にする変調制御を実行する。
交流電流の時間変化を緩慢にすることで、通過タイミングT1,T2における渦電流の発生を抑制し、その渦電流に起因したジュール熱の発生を抑制することが可能になる。また、前述のように、通過タイミングT1,T2は、W相電流がピークを迎えるタイミングとは相違する。そのため、モータ3の出力トルクへの影響を可能な限り抑制しつつ、ジュール熱の発生を抑制することができる。
この変調制御は、N磁石35bがティース表面を通り過ぎるタイミング(N磁石35bの通過タイミングT1)と、S磁石35aがティース表面を通り過ぎるタイミング(S磁石35aの通過タイミングT2)と、の双方で実行することができる。これにより、N磁石35b及びS磁石35aの温度上昇を抑制することができ、ひいては、ロータ33の外周全体の温度上昇を抑制する上で有利になる。
具体的に、MCU21は、正弦波生成部218から出力される正弦波信号(グラフG8に相当)に対し、後述の変調電流生成部21oから出力される三角波信号を重畳することで、変調制御を実行する。換言すれば、MCU21は、変調制御の非実行時には、三角波信号を重畳することなく、正弦波となるように交流電流を制御する。モータ3の通常運転時(変調制御の非実行時)には、三角波を重畳することなく、周知の正弦波を用いてモータ3を制御する。これにより、トルク変動が発生し得る機会を最小限に抑えることができる。
三角波信号の波形は、図10のグラフG9,グラフG10に示す通りである。このうち、グラフG9は、N磁石35bの通過タイミングに対応した三角波信号を示す。一方、グラフG10は、S磁石35aの通過タイミングに対応した三角波信号を示す。以下、前者の三角波信号を「N極側三角波」と呼称し、これに符号G9を付す。同様に、後者の三角波信号を「S極側三角波」と呼称し、これに符号G10を付す。
MCU21が変調制御を実行することで、正弦波信号(以下、符号「G8」を付す)にN極側三角波G9とS極側三角波G10とが重畳されて、グラフG7に示す変調波が生成される。この変調波を各相に属するコイル36に通電することで、前述のように、モータ3の出力トルクへの影響を可能な限り抑制しつつ、ジュール熱の発生を抑制することができる。
ここで、N磁石35bの通過タイミングT1は、正弦波信号G8ピークを迎えた以降でかつ、その正弦波信号G8がプラス側からゼロに交差する前の期間内に設定される。この通過タイミングT1は、図10に示す例では、ピーク後30°のタイミングに相当する。
また、図10に示すように、N磁石35bの通過タイミングT1は、W相コイル36wを「第1コイル」とみなしたときに、「第2コイル」としてのU相コイル36uに通電されるU相電流Iuがゼロと交差するタイミングに等しい。
N極側三角波G9は、N磁石35bの通過タイミングT1と、時間方向におけるN極側三角波G9の中点と、が略一致するように構成される。N極側三角波G9の波形は、その時間方向における中点を境とした上で、正弦波信号G8におけるピーク側の振幅を低減しかつ正弦波信号G8における反ピーク側の振幅を増幅するように構成される。その結果、N極側三角波G9の波形は、位相=π[rad]を始点とした一周期分の三角波として構成される。なお、N磁石35bの通過タイミングT1及びN極側三角波G9の周期は、モータ3の設計、仕様等に応じて規定される。それらの情報は、メモリ212に予め記憶される。
対して、S磁石35aの通過タイミングT2は、正弦波信号G8がマイナス側からゼロに交差した以降でかつ、正弦波信号G8がピークを迎える前の期間内に設定される。この通過タイミングは、図10に示す例では、ピーク前30°のタイミングに相当する。
また、図10に示すように、S磁石35aの通過タイミングT2は、W相コイル36wを「第1コイル」とみなしたときに、「第3コイル」としてのV相コイル36vに通電されるV相電流Ivがゼロと交差するタイミングに等しい。
S極側三角波G10は、S磁石35aの通過タイミングT2と、時間方向におけるS極側三角波G10の中点と、が略一致するように構成される。S極側三角波G10の波形は、その時間方向における中点を境とした上で、正弦波信号G8におけるピーク側の振幅を低減しかつ正弦波信号G8における反ピーク側の振幅を増幅するように構成される。その結果、S極側三角波G10の波形は、位相=0[rad]を始点とした一周期分の三角波として構成される。なお、S磁石35aの通過タイミングT2及びS極側三角波G10の周期は、モータ3の設計、仕様等に応じて規定される。それらの情報は、メモリ212に予め記憶される。
また、MCU21は、前述した第1又は第2の推定ロジックに基づいて磁石温度を推定し、推定された磁石温度が高いときには、低いときに比して交流電流の時間変化がゼロに接近するように変調制御を実行する。
さらに、MCU21は、変調制御を実行するときに、通過タイミングT1,T2における交流電流の時間変化をゼロとした状態が限度となるように、交流電流の変調を制限することができる。変調の制限は、N極側三角波G9の振幅D1と、S極側三角波G10の振幅D2と、を介して実行される。
具体的に、メモリ212には、磁石温度と、変調制御における変調度(=振幅D1,D2)と、を関連付けたマップが記憶されている(図12のグラフG11参照)。ここで、グラフG11の横軸は磁石温度の推定値を示し、グラフG11の縦軸は変調度を示す。
図12に示すように、磁石温度が温度閾値Tt未満の場合、変調度は、磁石温度が高いときには、低いときに比して大きく設定される。変調度が大きく設定されるにしたがって、交流電流の時間変化はより緩慢になる。
また、磁石温度が温度閾値Ttに一致するときの変調度を変調度閾値Dtとすると、この変調度閾値Dtは、通過タイミングT1,T2における交流電流の時間変化がゼロとなる変調度に相当する。これ以上変調度を高めてしまっては、交流電流の時間変化がゼロよりも大きくなってしまう。
またそもそも、交流電流の時間変化を過度に変化させてしまっては、交流電流のひずみに起因したトルク変動が生じてしまうため、やはり不都合である。
そこで、磁石温度が温度閾値Tt以上の場合、MCU21は、変調度閾値Dtのまま変調度を一定に保つ。このように設定することで、交流電流の時間変化の上限をゼロに保つことができるようになる。このように、交流電流の変調を制限することで、ジュール熱の発生を抑制しつつ、トルク変動の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、MCU21は、通過タイミングT1,T2において、U相コイル36u、V相コイル36v及びW相コイル36wの各相を流れる交流電流Iu,Iv,Iwの全てに対し、変調制御を実行する。これにより、ステータ34の外周に沿って配置された全コイル36に対し、変調制御を略同時に実行することができる。そのことで、ロータ33の外周に沿って配置された全磁石35について、渦電流の発生を略同時に抑制することができる。これにより、ジュール熱の発生を可能な限り迅速に抑制することができる。
(4)モータの制御装置
図4は、モータの磁石温度推定装置の構成を例示するブロック図である。
図4に示す推定装置は、複数の機能ブロックを備えてなる。具体的に、この推定装置は、第1及び第2の推定ロジックのうちの一方を選択する推定方法選択部214と、第1の推定ロジックを実行する第1推定部215と、第2の推定ロジックを実行する第2推定部216と、第1推定部215又は第2推定部216の実行結果に基づいて変調制御等を実行するモータ制御部217と、を備える。このうち、図4に示す装置は、モータの制御装置と捉えることもできる。モータの制御装置に特有の機能ブロックの構成は、図5に示す通りである。
以下、各機能ブロックについて順番に説明する。
(4-1)推定方法選択部
推定方法選択部214は、ロータ33の回転数に基づいて、第1推定部215によって第1の推定ロジックを実行するか、或いは、第2推定部216によって第2の推定ロジックを実行するかを選択する。
具体的に、推定方法選択部214は、モータ回転数センサ41からの検出信号に基づいて、ロータ33の回転数が所定閾値未満の場合は第1推定部215を選択し、ロータ33の回転数が所定閾値以上の場合は第2推定部216を選択する。推定方法選択部214は、第1推定部215及び第2推定部216のうち、選択された一方を介して温度推定を実行させる。
第1推定部215による磁石温度の推定は、磁石温度を個別にかつ精度よく推定することができる。一方、第2推定部216による磁石温度の推定は、従来よりもサンプリング周波数を低く抑えることができるため、モータ3の回転数が高い場合であっても、磁石温度を確実に推定することができる。
そこで、図4に示す推定方法選択部は、モータ3の回転数が相対的に低い場合は第1推定部215による温度推定を実行させる一方、モータ3の回転数が高い場合は第2推定部216による温度推定を実行させる。このように構成することで、磁石温度の推定精度を可能な限り確保しつつも、モータ3の回転数が高い場合であっても、磁石温度を確実に推定することができるようになる。
なお、推定方法選択部214による選択の基準となる所定閾値は、モータ3の仕様に応じて規定される。この所定閾値は、MCU21のメモリ212に予め記憶される。
(4-2)第1推定部
第1推定部215は、第1の推定ロジックを実行するための機能ブロックとして、誘起電圧検出部21aと、平均電圧算出部21bと、磁束密度算出部21cと、磁石温度推定部21dと、制限量算出部21eと、を有する。
このうち、誘起電圧検出部21aは、サーチコイル55を介して誘起電圧Vuを検出する。この誘起電圧Vuは、計12個のコイル36のうち、サーチコイル55が重畳されたU相コイル36uに生じる誘起電圧と略一致する。具体的に、誘起電圧検出部21aは、不図示のA/Dコンバータを介して誘起電圧Vuを検出し、それをディジタル信号に変換する。誘起電圧検出部21aによってディジタル信号に変換された誘起電圧Vuは、平均電圧算出部21bに入力される。
平均電圧算出部21bは、誘起電圧検出部21aから入力される誘起電圧Vuに基づいて、前述した肩部、具体的には最小タイミングを含んだ所定期間Tsにおける平均電圧を算出する。平均電圧の算出は、N磁石35bに起因して生じる肩部(図6の囲み部C1参照)と、N磁石35bに起因して生じる肩部(図6の囲み部C3参照)と、の双方に対し、個別に実行される。また、この所定期間Tsに相当する電気角の範囲は、予めメモリ212に記憶されている。平均電圧算出部21bは、メモリ212に記憶されている電気角の範囲と、モータ回転センサ51の検出信号と、に基づいて、所定期間Tsにおける誘起電圧Vuの平均値を算出する。そうして算出された平均値は、磁束密度算出部21cに入力される。
以下、平均電圧算出部21bによって算出される平均値のうち、N磁石35bに係る平均値を第1電圧Vnと呼称し、S磁石35aに係る平均値を第2電圧Vpと呼称する。
磁束密度算出部21cは、平均電圧算出部21bから入力される第1電圧Vn及び第2電圧Vpに基づいて、N磁石35bから発せられる磁束密度Bnと、S磁石35aから発せられる磁束密度Bpと、を算出する。具体的に、磁束密度算出部21cは、下式(F),(G)に基づいて磁束密度Bn,Bpを算出する。
Bn=Vn/(Rm×Nc×c) …(F)
Bp=Vs/(Rm×Nc×c) …(G)
上式(F),(G)において、Rmはモータ回転数であり、Ncはコイル巻き数であり、cは定数である。モータ回転数Rmは、モータ回転センサ51によって都度検出される。コイル巻き数Ncと定数cは、メモリ212に予め記憶され、磁束密度Bn,Bpの算出に際して読み込まれる。磁束密度算出部21cによって推定された磁束密度Bn,Bpは、磁石温度推定部21dに入力される。
磁石温度推定部21dは、磁束密度算出部21cにより推定された磁束密度Bn,Bpに基づいて、S磁石35aの磁石温度Tpと、N磁石35bの磁石温度Tnと、を推定する。具体的に、磁石温度推定部21dは、図9のグラフG7に対応したテーブルをメモリ212から読み込んで、そのテーブルと磁束密度Bn,Bpとを照らし合わせることで磁石温度Tp,Tnを推定する。磁石温度推定部21dによって推定された磁石温度Tn,Tpは、制限量算出部21eに入力される。
制限量算出部21eは、磁石温度推定部21dによって推定された磁石温度Tn,Tpに基づいて、各磁石35a,35bの温度状態を判定する。制限量算出部21eは、その温度状態が異常であると判定される場合、モータ3の出力を制限するためのモータ制限量Pmを算出する。
具体的に、制限量算出部21eは、各磁石温度Tn,Tpと、予め設定された上限温度Tmaxと、を比較する。制限量算出部21eは、N磁石35bに係る磁石温度Tnと、S磁石35aに係る磁石温度Tpと、が双方とも上限温度Tmaxを上回る場合、磁石35の温度状態が異常であると判定する。ここで、上限温度Tmaxは、モータ3の仕様、設計に応じて規定され、メモリ212に予め記憶される。磁石35の温度状態が異常であると判定された場合、制限量算出部21eは、下式(H)を通じてパワー制限量を算出する。
パワー制限量=K|Tn-Tmax|+K|Tp-Tmax| …(H)
上式(H)において、定数Kは、メモリ212に予め記憶されており、パワー制限量の算出に際して読み込まれる。制限量算出部21eにより算出されたパワー制限量は、モータ制御部217に入力される。
なお、磁石温度Tn,Tpのうちの少なくとも一方が上限温度Tmax以下となった場合、制限量算出部21eは、磁石35の温度状態は正常であると判定する。この場合、パワー制限量の算出は実行されない。
(4-3)第2推定部
第2推定部216は、第2の推定ロジックを実行するための機能ブロックとして、誘起電圧検出部21fと、FFT実行部21gと、温度ばらつき算出部21hと、磁束密度算出部21iと、磁石温度推定部21jと、制限量算出部21kと、を有する。
このうち、誘起電圧検出部21fは、電圧センサ56を介して誘起電圧Vuを検出する。この誘起電圧Vuは、計12個のコイル36のうち、4個のU相コイル36uに生じる誘起電圧と略一致する。具体的に、誘起電圧検出部21aは、不図示のA/Dコンバータを介して誘起電圧Vuを検出し、それをディジタル信号に変換する。誘起電圧検出部21fによってディジタル信号に変換された誘起電圧Vuは、平均電圧算出部21bに入力される。
FFT実行部21gは、誘起電圧検出部21fから入力される誘起電圧Vuに対しFFTを実行し、誘起電圧Vuを周波数スペクトルに変換する。具体的に、FFT実行部21gは、誘起電圧Vuのうち、N周期にわたるデータに対してFFTを実行する。なお、ここでいう「N周期」とは、モータ回転数が大きく変化しない範囲を指す。Nの大きさは、予めメモリ212に記憶してもよいし、モータ回転センサ51の検出信号に基づいて都度算出してもよい。
FFT実行部21gは、誘起電圧VuにFFTを施すことで、実時間から周波数へと変数変換してなる周波数スペクトルを得る。より詳細には、FFT実行部21gによって得られる周波数スペクトルは、周波数スペクトルの絶対値(振幅)と、周波数スペクトルの偏角(位相)と、からなる。
そうして得られた周波数スペクトルに対し、FFT実行部21gは、バンドパスフィルタ57によるフィルタリングを施す。このフィルタリングによって、FFT実行部21gは、少なくとも、基本波の振幅Faと、最低次高調波の振幅Fb及び位相Pbと、を導出し、それらを温度ばらつき算出部21hに入力する。
温度ばらつき算出部21hは、FFT実行部21gからの入力信号に基づいて、温度ばらつきに起因した振幅の最大値(最大振幅)Fmaxを算出する。具体的に、温度ばらつき算出部21hは、下式(I)に基づいて最大振幅Fmaxを算出する。
Fmax=Fa+Fb …(I)
上式(I)に示すように、温度ばらつき算出部21hは、基本波の振幅Faと、最低次高調波の振幅Fbと、を加算することで最大振幅Fmaxを算出する。温度ばらつき算出部21hによって算出された最大振幅Fmaxは、磁束密度算出部21iに入力される。
磁束密度算出部21iは、温度ばらつき算出部21hによって算出された最大振幅Fmaxに基づいて、各磁石35から発せられる磁束密度Bmを算出する。具体的に、磁束密度算出部21iは、下式(J)に基づいて磁束密度Bmを算出する。
Bm=Vn/(Rm×Nc×c) …(J)
引数Rm、Nc、cが意味するところは、上式(J),(G)と共通である。磁束密度算出部21cによって推定された磁束密度Bn,Bpは、磁石温度推定部21dに入力される。
磁石温度推定部21jは、磁束密度算出部21iにより推定された磁束密度Bmに基づいて、各磁石35の磁石温度Tmを推定する。具体的に、磁石温度推定部21jは、図9のグラフG7に対応したテーブルをメモリ212から読み込んで、そのテーブルと磁束密度Bmとを照らし合わせることで磁石温度Tmを推定する。磁石温度推定部21jによって推定された磁石温度Tmは、制限量算出部21kに入力される。
制限量算出部21kは、磁石温度推定部21jによって推定された磁石温度Tmに基づいて、各磁石35の温度状態を判定する。制限量算出部21kは、その温度状態が異常であると判定される場合、モータ3の出力を制限するためのモータ制限量Pmを算出する。
具体的に、制限量算出部21kは、磁石温度Tmと、予め設定された上限温度Tmaxと、を比較する。制限量算出部21kは、磁石温度Tmが上限温度Tmaxを上回る場合、磁石35の温度状態が異常であると判定する。ここで、上限温度Tmaxは、第1推定部215における制限量算出部21eと同様に、メモリ212に予め記憶される。磁石35の温度状態が異常であると判定された場合、制限量算出部21kは、下式(K)を通じてパワー制限量を算出する。
パワー制限量=K2|Tm-Tmax| …(K)
上式(K)において、定数K2は、メモリ212に予め記憶されており、パワー制限量の算出に際して読み込まれる。制限量算出部21kにより算出されたパワー制限量は、モータ制御部217に入力される。
なお、磁石温度Tmが上限温度Tmax以下となった場合、制限量算出部21kは、磁石35の温度状態は正常であると判定する。この場合、パワー制限量の算出は実行されない。
(4-4)モータ制御部
モータ制御部217は、変調制御に関連した機能ブロックとして、要求出力判定部21lと、磁石温度判定部21mと、変調度設定部21nと、変調電流生成部21oと、を有する。
このうち、要求出力判定部21lは、温度推定部としての第1又は第2推定部215,216によって算出されたパワー制限量に基づいて、モータ3の要求出力を判定する。具体的に、要求出力判定部21lは、パワー制限量とモータ3の要求出力とを比較し、要求出力がパワー制限量を上回っているか否かを判定する。
ここで、要求出力がパワー制限量を上回っている場合、モータ制御部217は、磁石35の温度異常に対応するための高温対策制御として、前述の変調制御を実行する。この場合、モータ制御部217は、磁石温度判定部21mと、変調度設定部21nと、変調電流生成部21oと、を介して変調制御を実行しつつ、インバータ6を介してモータ3を駆動する。一方、要求出力がパワー制限量以下の場合、磁石35の温度異常への対応は不要と判定し、通常通り、インバータ6を介してモータ3を駆動する。
磁石温度判定部21mは、第1又は第2推定部215,216によって推定された磁石温度に基づいて、相対的に高温な磁石35を特定する。具体的に、磁石温度判定部21mは、S磁石35a及びN磁石35bのうちの高温状態にある一方を判定したり、S磁石35aとN磁石35bとが双方とも高温状態にあることを判定したりする。この判定を通じて、磁石温度判定部21mは、変調制御を行うべき磁石35を特定することが可能となる。なお、第2推定部216によって推定された磁石温度を用いる場合、磁石温度判定部21mは、最低次高調波の位相Pbに基づいて、前記判定を実行する。磁石温度判定部21mによる判定結果(S磁石35a及びN磁石35bのうち、変調制御を行うべき磁石35を示す情報)は、変調度設定部21nに入力される。
変調度設定部21nは、第1又は第2推定部215,216によって推定された磁石温度と、磁石温度判定部21mによる判定結果と、に基づいて、S磁石35aにおける渦電流を抑制するための変調度、及び、N磁石35bにおける渦電流を抑制するための変調度のうちの少なくとも一方を設定する。具体的に、変調度設定部21nは、図12のグラフG11に対応したマップをメモリ212から読み込んで、そのマップと、変調制御を行うべき磁石35の温度と、を照らし合わせることで変調度を設定する。変調度設定部21nによって設定された変調度は、変調電流生成部21oに入力される。
変調電流生成部21oは、変調度設定部21nによって設定された変調度に基づいて、コイル36に流れる交流電流を変調する。具体的に、変調電流生成部21oは、変調度に対応した振幅を有する三角波信号を生成する。変調電流生成部21oは、そうして生成された三角波信号と、正弦波生成部218により生成される正弦波と、が前述の通過タイミングT1,T2に対応した電気角で重畳されるように、三角波信号をPWM信号生成部219に入力する。なお、本実施形態では、三角波信号による重畳は、計12個のコイル36のうち、U相コイル群、V相コイル群及びW相コイル群の全てに対し実行される。
(5)モータ制御の具体例
以下、MCU21が実行するモータ制御の具体例を説明する。図13は、第1及び第2推定制御に関連する処理を例示するフローチャートである。また、図14は、第1推定部215による磁石温度の推定手順を例示するフローチャートであり、図15は、第2推定部216による磁石温度の推定手順を例示するフローチャートであうr。
まず、図13のステップS1において、MCU21は、モータ3の要求トルクがゼロであるか否かを判定する。この判定は、アクセルセンサ54等、各種センサの検出信号に基づいて実行される。モータ3の要求トルクがゼロという状況は、自動車1の加減速が要求されていない状態、モータ3に発電が要求されていない状態等が該当する。ステップS1の判定がNOの場合、制御プロセスはステップS8に進む。ステップS1の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS2に進む。
ステップS2において、MCU21は、インバータ6のスイッチングを停止する。具体的に、MCU21は、インバータ6の内部でスイッチング素子のオンオフ制御を停止する。
続くステップS3において、MCU21は、各種センサの検出信号を読み込む。ステップS3で読み込まれる検出信号には、少なくとも、モータ回転センサ51の検出信号が含まれる。
続くステップS4において、MCU21における推定方法選択部214が、モータ3の回転数が所定閾値以上か否かを判定し、所定閾値以上の場合はステップS5に進み、所定閾値未満の場合はステップS6へ進む。
ステップS5においては、第1推定部215が、第1の推定ロジックに基づいた制御(第1推定制御)を実行し、磁石温度を推定する。一方、ステップS6においては、第2推定部216が、第2の推定ロジックに基づいた制御(第2推定制御)を実行し、磁石温度を推定する。
図14は、図13におけるステップS5の詳細を例示するフローチャートである。すなわち、図14のステップS51~S58が、図13のステップS5を構成することになる。
まず、ステップS51において、誘起電圧検出部21aに、U相コイル36uに生じる誘起電圧Vuが入力される。誘起電圧検出部21aに入力される誘起電圧Vuは、サーチコイル55によって検出される誘起電圧Vuに等しい。
続くステップS52において、平均電圧算出部21bは、誘起電圧Vuのピーク手前側の肩部(すなわち、N磁石35bに起因して生じる肩部)における電圧値を平均し、それを第1電圧Vnとする。ここでいう肩部は、前述した所定期間Tsに相当する。この所定期間Tsは、例えば40°以上50°以下の電気角とすることができる。
続くステップS53において、平均電圧算出部21bは、誘起電圧Vuのピーク通過後の肩部(すなわち、S磁石35aに起因して生じる肩部)における電圧値を平均し、それを第2電圧Vpとする。ピーク通過後の肩部に相当する所定期間Tsは、例えば130°以上140°以下の電気角とすることができる。
続くステップS54において、磁束密度算出部21cは、第1電圧Vnに基づいて、N磁石35bの磁束密度Bnを算出する。磁束密度Bnの算出は、前述した式(F)に基づいて行われる。
続くステップS55において、磁束密度算出部21cは、第2電圧Vpに基づいて、S磁石35aの磁束密度Bpを算出する。磁束密度Bpの算出は、前述した式(G)に基づいて行われる。
続くステップS56において、磁石温度推定部21dは、メモリ212に記憶されているテーブルと、N磁石35b及びS磁石35aの磁束密度Bn,Bpと、を照らし合わせることで、N磁石35bの磁束密度Bnに対応した磁石温度Tnと、S磁石35aの磁束密度Bpに対応した磁石温度Tpと、を読み出す。
続くステップS57において、制限量算出部21eは、N磁石35bの磁石温度Tnと上限温度Tmaxとの比較と、S磁石35aの磁石温度Tsと上限温度Tmaxとの比較と、を実行する。そして、制限量算出部21eは、2つの磁石温度Tn,Tsが双方とも上限温度Tmaxよりも大きい場合にはステップS58に進む。制限量算出部21eはまた、2つの磁石温度Tn,Tsのうちの一方が上限温度Tmax以下の場合にはステップS58をスキップしてリターンする。
ステップS58において、制限量算出部21eは、上式(H)を用いてパワー制限量を算出してリターンする。制御プロセスは、図14に示すフローから戻り、図13のステップS7に進む。
一方、図15は、図13におけるステップS6の詳細を例示するフローチャートである。すなわち、図15のステップS61~S69が、図13のステップS6を構成することになる。
まず、ステップS61において、誘起電圧検出部21fに、U相コイル36uに生じる誘起電圧Vuが入力される。誘起電圧検出部21aに入力される誘起電圧Vuは、電圧センサ56によって検出される誘起電圧Vuに等しい。
続くステップS62において、FFT実行部21gは、誘起電圧VuのN周期データに対し、FFTを実行する。前述のように、N周期とは、モータ回転数が大きく変化しない期間を指す。FFT実行部21gはまた、FFTによって得られる周波数スペクトルをバンドパスフィルタ57でフィルタリングすることで、基本波の振幅Faと、最低次高調波の振幅Fb及び位相Pbを出力する。
続くステップS63において、温度ばらつき算出部21hは、FFTによって得られた基本波の振幅Faを読み込む。それに続くステップS64において、温度ばらつき算出部21hは、FFTによって得られた最低次高調波の振幅Fb及び位相Pbを読み込む。
続くステップS65において、温度ばらつき算出部21hは、基本波の振幅Faと最低次高調波の振幅Fbとを加算することで、温度ばらつきの最大値に対応する最大振幅Fmaxを算出する。
続くステップS66において、磁束密度算出部21iは、最大振幅Fmaxに基づいて、磁石35の磁束密度Bmを算出する。磁束密度Bmの算出は、前述した式(J)に基づいて行われる。
続くステップS67において、磁石温度推定部21jは、メモリ212に記憶されているテーブルと、磁石35の磁束密度Bmと、を照らし合わせることで、磁束密度Bmに対応した磁石温度Tmを読み出す。
続くステップS68において、制限量算出部21kは、磁石温度Tmと上限温度Tmaxとの比較を実行する。そして、制限量算出部21kは、磁石温度Tmが上限温度Tmaxよりも大きい場合にはステップS69に進む。制限量算出部21kはまた、磁石温度Tmが上限温度Tmax以下の場合にはステップS69をスキップしてリターンする。
ステップS58において、制限量算出部21eは、上式(K)に基づいてパワー制限量を算出してリターンする。制御プロセスは、図15に示すフローから戻り、図13のステップS7に進む。
図13のフローに戻ると、ステップS5及びステップS6から続くステップS7において、MCU21は、インバータ6のスイッチングを停止する。具体的に、MCU21は、インバータ6の内部でスイッチング素子のオンオフ制御を開始する。
続くステップS8において、モータ制御部217における要求出力判定部21lが、モータ3の要求出力がパワー制限量を上回っているか否かを判定する。この判定がYESの場合、制御プロセスはステップS9に進む一方、NOの場合、制御プロセスは、ステップS9をスキップして終了する。
ステップS9において、MCU21は、高温対策制御としてモータ制御部217による変調制御を実行し、磁石35周辺での渦電流の発生を抑制する。
図15は、図13におけるステップS9の詳細を例示するフローチャートである。すなわち、図15のステップS91~S97が、図13のステップS9を構成することになる。
まず、ステップS91において、磁石温度判定部21mが、第1又は第2推定部215,216による推定結果を読み込む。次いで、ステップS92において、磁石温度判定部21mは、ステップS91で読み込まれた推定結果に基づいて、N磁石35bの温度が過度に上昇しているか否かを判定する。この判定がYESの場合、制御プロセスは、ステップS93とステップS94とを順番に実行する。一方、ステップS92での判定がNOの場合、制御プロセスは、ステップS93とステップS94をスキップしてステップS95に進む。
ステップS93において、変調度設定部21nは、N磁石35bの温度に基づいて変調度を設定する。前述のように、変調度の設定は、図12のグラフG11に対応したマップを参照することで実行される。
続くステップS94において、変調電流生成部21oは、ステップS93で設定された変調度に基づいて三角波信号を生成し、それを正弦波信号に重畳する。三角波信号が重畳される期間は、N磁石35bがティース表面を通り過ぎるタイミング(通過タイミングT1)を含んだ所定期間(図10参照)に設定される。この所定期間は、交流電流がピークを迎えた後の期間に相当する。三角波信号の重畳は、U相、V相、W相の全相に対し実施される。三角波信号を重畳することで、例えば図10に示すように、通過タイミングT1における交流電流の時間変化が緩慢になる。
続くステップS95において、磁石温度判定部21mは、ステップS91で読み込まれた推定結果に基づいて、S磁石35aの温度が過度に上昇しているか否かを判定する。この判定がYESの場合、制御プロセスは、ステップS96とステップS97を順番に実行する。一方、ステップS95での判定がNOの場合、制御プロセスは、ステップS96とステップS97をスキップしてリターンする。
ステップS96において、変調度設定部21nは、S磁石35aの温度に基づいて変調度を設定する。N磁石35bに係る変調度と同様に、変調度の設定は、図12のグラフG11に対応したマップを参照することで実行される。
続くステップS97において、変調電流生成部21oは、ステップS96で設定された変調度に基づいて三角波信号を生成し、それを正弦波信号に重畳する。三角波信号が重畳される期間は、S磁石35aがティース表面を通り過ぎるタイミング(通過タイミングT2)を含んだ所定期間(図10参照)に設定される。この所定期間は、交流電流がピークを迎える前の期間に相当する。三角波信号の重畳は、U相、V相、W相の全相に対し実施される。三角波信号を重畳することで、例えば図10に示すように、通過タイミングT2における交流電流の時間変化が緩慢になる。
《他の実施形態》
前記実施形態では、第1推定部215は、サーチコイル55の検出信号に基づいて第1の推定ロジックを実行するように構成されていたが、本開示は、その構成には限定されない。第1推定部215は、例えば、電圧センサ56の検出信号に基づいて第1の推定ロジックを実行することができる。
同様に、前記実施形態では、第2推定部216は、電圧センサ56の検出信号に基づいて第2の推定ロジックを実行するように構成されていたが、本開示は、その構成には限定されない。第2推定部216は、例えば、サーチコイル55の検出信号に基づいて第2の推定ロジックを実行することができる。
また、前記実施形態では、MCU21は、通過タイミングT1,T2において、U相コイル36u、V相コイル36v及びW相コイル36wの各相を流れる交流電流Iu,Iv,Iwの全てに対し、変調制御を実行するように構成されていたが、本開示は、その構成には限定されない。
例えば、コントローラとしてのMCU21は、所定タイミングとしての通過タイミングT1,T2において、U相コイル36u、V相コイル36v及びW相コイル36wのうちのいずれか一相について変調制御を実行することもできる。
この構成によれば、インバータ等、変調制御に要する部品点数を削減することができる。これにより、装置の低コスト化を図ることができる。また、U相コイル36u、V相コイル36v及びW相コイル36wのうち、例えばW相コイル36wについてのみ変調制御を実行したとしても、ロータ33の回転に伴って全磁石35がW相コイル36wとすれ違うことになるため、全磁石35においてジュール熱の発生を抑制することができる。このように、この変形例は、全磁石35においてジュール熱の発生を抑制しながらも、制御装置の低コスト化を図ることができる。
前記変形例を採用した場合の制御の具体例は、図17に示す通りである。図17のステップS94’及びステップS97’に示すように、交流電流の変調対象を、U相、V相、W相のうちのいずれか一相に設定すればよい。
また、前記実施形態では、W相コイル36wを第1コイルとみなし、U相コイル36uを第2コイルとみなし、V相コイル36vを第3コイルとみなした場合について説明したが、本開示は、その構成には限定されない。例えば、W相コイル36wを第2又は第3コイルとみなしたり、U相コイル36u又はV相コイル36vを第1コイルとみなしたりすることもできる。