JP7363041B2 - プリプレグ、プリント配線基板、及び、半導体装置 - Google Patents

プリプレグ、プリント配線基板、及び、半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、プリプレグ、プリント配線基板、及び半導体装置に関する。
近年、パッケージ基板の薄化、高密度化の要求に伴い、様々なパッケージ構造が提案されている。例えば、PoP(Package on Package)実装が省スペース化を実現するための一技術として適用されている。PoP実装は、チップ組み合わせ選択の自由度が高く、取り換えも容易であることが最も大きなメリットで、実装の選択肢を大幅に広げることができる。しかしながら、接続するパッケージ間において、接続が破壊され導通不良が発生することがあった。
多層基板でのデラミネーションを抑制する技術としては、特許文献1に、繊維基材と樹脂組成物とを含むプリプレグが積層した多層基板に係る発明が開示されている。引用文献1には、前記プリプレグを硬化して得られる硬化物において、室温から260℃に20℃/minで加熱し、260℃で5分保持した後、260℃から室温へ20℃/minで冷却するサイクルを5回繰り返した熱サイクルでのZ軸方向の膨張と収縮を合わせた総変位量を、加熱サイクル前の前記硬化物の厚さに対して3.5%以下とすることで、多層基板でのデラミネーションを抑制することができることが開示されている。
特開2017-157787号公報
多層基板やPoPの製造工程では、各プリント配線基板の積層工程、プリント配線基板上に素子を搭載する工程、パッケージに半田ボールを搭載する工程、パッケージ同士を積層する工程など数々の熱処理工程、リフロー工程を経るため、多層基板やPoPを構成するコア基材や複数のプリプレグは、複数回の熱履歴を経ることとなる。また、これらを構成する複数のプリプレグは、それぞれの加熱・冷却過程において、熱硬化性樹脂の硬化、加熱、冷却等により膨張・収縮するため、各コア基材とプリプレグ、それらの間にはそれぞれ内部応力が蓄積されることとなり、各層を構成する材料の膨張・収縮・変形を考慮したPoPの材料設計は、非常に困難であった。
上記したように、引用文献1には、熱サイクルを5回繰り返した際の総変位量を特定の範囲以下としたプリプレグの硬化物によって構成される多層基板が開示されているが、本発明者が検討したところ、引用文献1に開示されたように、総変位量を特定の範囲内とした場合であっても、製造工程中に反りが生じ、導通不良が抑制できない場合があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、プリント配線基板や、半導体装置、PoPにおいて、反りを抑制することができ、半田剥がれ等の導通不良を低減させることができる、プリプレグ、プリント配線基板、及び、半導体装置を提供するものである。
本発明者は導通不良の発生原因について検討したところ、プリント配線基板やPoPにおいては、これらを構成する各コア基材、各プリプレグ、及び、各パッケージにおいて、製造工程中の加熱・冷却過程で反り・変形が発生し、あるいは、これらの間に内部応力が蓄積することにより、各材料間の接続が破壊され、導通不良が発生する場合があると推測された。また、本発明者らは、特定の要件を満たすプリプレグを用いることによって、変形や内部応力の発生を制御することができ、導通不良の発生をより少なくすることが可能であることを知見した。
すなわち、上記したように、多層基板やPoPを構成するプリプレグは、複数回の加熱加圧・冷却過程を経ることとなるが、この際、2回目以降の加熱冷却工程において、収縮量の変動が少ないプリプレグを用いることで、パッケージ間の接続が破壊される導通不良を低減させることができることが明らかになった。
本発明者は、プリント配線基板、半導体装置、PoPにおける、導通不良に影響を及ぼす数々の因子の中から、用いるプリプレグについて、熱処理サイクルを2回繰り返した際の収縮率A%と、熱処理サイクルを3回繰り返した際の収縮率B%の差である収縮率差B-A%を特定の数値範囲内とすることで、導通不良を低減することができることを新たに見出し、本発明をなし得たものである。
すなわち本発明は、
プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる、
熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグであって、
熱機械分析装置TMAを用いて、下記測定条件1で測定した、当該プリプレグの硬化物の温度30℃における収縮率差B-A%が、-0.005%以上、0%以下である、プリプレグである。
(測定条件1)
・温度30℃における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をA%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をB%とする。これにより算出されるB-A%を30℃における収縮率差B-A%として評価する。
・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、熱機械分析(TMA)を用い、荷重10g、圧縮モードの条件で、温度30℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、温度260℃から30℃まで降温速度10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
本発明のプリプレグによれば、複数回の熱履歴を要するプリント配線基板、半導体装置、PoPの製造において、各プリプレグ及び各パッケージの反りを低減させることができるため、各プリプレグ及び各パッケージ間の内部応力を低減させることができ、導通不良を低減することができ、不良品発生が少なくなり、歩留り・信頼性を向上させることができる。
収縮量測定用穴あきのプリプレグの硬化物の一例を示す。 本実施形態におけるプリント配線基板の構成の一例を示す断面図である。 本実施形態における半導体装置の構成の一例を示す断面図である。 本実施形態におけるプリント配線基板の製造プロセスの一例を示す工程断面図である。 実施例1のプリプレグの硬化物のTMA測定時のヒステリシスを示す。 比較例1のプリプレグの硬化物のTMA測定時のヒステリシスを示す。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本発明のプリプレグは、プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられるプリプレグであって、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグである。
本発明のプリプレグは、熱機械分析装置TMAを用いて、下記測定条件1で測定した、当該プリプレグの硬化物の温度30℃における収縮率差B-A%が、-0.005%以上、0%以下である、プリプレグである。
(測定条件1)
・温度30℃における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をA%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をB%とする。これにより算出されるB-A%を30℃における収縮率差B-A%として評価する。
・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、熱機械分析(TMA)を用い、荷重10g、圧縮モードの条件で、温度30℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、温度260℃から30℃まで降温速度10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
収縮率差B-A%は、-0.005%以上、0%以下であり、-0.004%以上0%以下が好ましく、-0.003%以上0%以下がより好ましい。
本発明は、プリプレグを用いたプリント配線基板や半導体装置の製造に際し、導通不良の原因となる数々の因子のうち、プリプレグの硬化物に対し、2回の特定の熱処理サイクルを実施した後の収縮率A%と、3回の特定の熱処理サイクルを実施した後の収縮率B%の差である、B-A%を特定の値としたところに特徴がある。収縮率差であるB-A%を上記した値の範囲内と特定することにより、プリプレグの寸法を工程の初期に安定させ、2回目以降の熱処理における収縮量の変動を抑えることで、導通不良を低減することができると考えられる。
上記収縮率差B-A%は、例えば、熱機械分析装置TMA用いて測定する。具体的には、例えば、熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30~260℃、昇温速度10℃/min、荷重10g、圧縮モードの条件で、熱機械分析(TMA)を所定のサイクル測定する。
収縮率A%、及び、収縮率B%は、それぞれ、上記した熱処理サイクルを特定の回数繰り返した後の30℃におけるプリプレグの硬化物の試験片におけるXY方向の寸法が、加熱を開始する前の30℃におけるプリプレグの硬化物の試験片におけるXY方向の寸法を基準とし、どの程度収縮したかを表すものである。
なお、プリプレグの硬化物とは、例えば、本実施形態に係るプリプレグを温度200℃で、90分で加熱硬化した硬化物を示す。
さらに、本発明のプリプレグは、下記の測定条件2で測定される、当該プリプレグの硬化物の収縮量差Y-X%が、-0.010%以上0%以下であることが好ましく、-0.007%以上0%以下であることがより好ましく、-0.004%以上0%以下であることが特に好ましい。
(測定条件2)
・室温における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の室温における収縮率をX%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の室温における収縮率をY%とする。これにより算出されるY-X%を室温における収縮率差Y-X%として評価する。
・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、ホットプレスを用いて、室温から昇温速度温度10℃/minで昇温し、200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧し、室温まで10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
収縮率X%、及び、収縮率Y%は、それぞれ、上記した熱処理サイクルを特定の回数繰り返した後の30℃におけるプリプレグの硬化物の試験片における平面方向(XY方向)の寸法が、加熱を開始する前の30℃におけるプリプレグの硬化物の試験片における平面方向(XY方向)の寸法を基準とし、どの程度収縮したかを表すものである。収縮率差Y-X%は、-0.010%以上0%以下であることが好ましく、-0.007%以上0%以下であることがより好ましく、-0.004%以上0%以下であることが特に好ましい。
収縮率差、Y-X%を上記した値の範囲内とすることにより、プリプレグの寸法を工程の初期に安定させ、2回目以降の熱処理における収縮量の変動を抑えることができ、導通不良を低減することができると考えらえる。
なお、プリプレグの硬化物とは、例えば、本実施形態に係るプリプレグを温度200℃で、90分で加熱硬化した硬化物を示す。
ここで、上記収縮率差を、それぞれ、上述した特定の数値範囲とするためには、プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂組成物の材料、及び、特性を適切に選択することが重要である。
プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂組成物は、当該温度熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分熱処理した時の硬化物のガラス転移温度が240℃以下、または280℃以上であることが好ましい。
ガラス転移温度を特定の温度以下とすることで、一度のリフローで、プリプレグ及び各基材間の残留歪を解放することができ、また、2回目以降のリフロー後の寸法を安定させることができ、導通不良を低減することができ、好ましい。ガラス転移温度を特定の温度以下とする場合、ガラス転移温度は、240℃以下とすることが好ましく、230℃以下とすることがより好ましく、220℃以下とすることが特に好ましい。
また、ガラス転移温度を特定の温度以上とすることで、リフローを繰り返しても、リフロー温度においては残留歪が解放されることなく、寸法変化が少ないので、導通不良を低減させることができ、より好ましい。ガラス転移温度を特定の温度以上とする場合、ガラス転移温度は、280℃以上とすることが好ましい。
上記ガラス転移温度は、動的粘弾性分析装置(DMA)を用いて測定することができる。また、上記ガラス転移温度は、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる曲線において、損失正接tanδが最大値を示す温度である。
本実施形態において、ガラス転移温度は、200℃、90分熱処理して得られるプリプレグの硬化物に対して、たとえば動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性試験を行うことにより得られる測定結果から算出することができる。動的粘弾性測定装置としては、とくに限定されないが、たとえばDMA装置(TAインスツルメント社製、Q800)を用いることができる。
本実施形態に係るプリプレグを温度200℃で、90分で加熱した硬化物は、30℃における貯蔵弾性率をE′30、としたとき、E′30が、10GPa以上35GPa以下であることが好ましく、15GPa以上30GPa以下であることがより好ましい。
また、当該熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分で加熱した硬化物は、260℃における貯蔵弾性率をE′260、としたとき、E′260が、1GPa以上20GPa以下であることが好ましく、5GPa以上15GPa以下であることがより好ましい。
さらに、当該熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分で加熱した硬化物は、E'30/E'260が、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。上限は、例えば、5.0以下とすることできる。
熱硬化性樹脂組成物の硬化物の貯蔵弾性率の値を上記の範囲内とすることで、少ない回数のリフローで応力を解放することができ、反りを低減することができると推測される。
本実施形態に係るプリプレグを温度200℃で、90分で加熱した硬化物の、50℃から100℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数α1は、プリプレグの硬化物が、上記した収縮率差B-A%を特定の数値範囲とすることができれば、特に限定されないが、例えば、60ppm/℃以下であり、好ましくは55ppm/℃以下であり、より好ましくは50pppm/℃以下である。一方、上記平均線膨張係数の下限値は、特に限定されないが、例えば、1ppm/℃以上であってもよい。また、本発明に係るプリプレグは、例えば、線膨張係数α1が、5ppm/℃以上、特には10ppm/℃以上であっても、上記した収縮率差B-A%を特定の数値範囲とすることで、プリント配線基板等における反りを抑制することも可能である。
プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグの硬化物が、上記した収縮率差B-A%を特定の数値範囲とすることができれば、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、及び無機充填材を含むことが好ましい。また、前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、無機充填材、及び硬化剤を含むこともできる。
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂としては、プリプレグの硬化物が、上記した収縮率差B-A%を特定の数値範囲とすることができれば、特に限定されないが、具体的には、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化性樹脂としては、上記具体例のうち、例えば、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物を少なくとも用いることが好ましく、ベンゾオキサジン化合物と、マレイミド化合物とを共に含む態様がより好ましい。
熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、1質量部以上、50質量部以下が好ましく、5質量部以上、40質量部以下がより好ましく、10質量部以上、35質量部以下がさらに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量を上記数値範囲内とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の分散性及び、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の機械特性等の物性のバランスに優れた熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
また、本実施形態の熱硬化性樹脂は、25℃室温において、液状であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物における各成分の分散性を向上させることができる。また、無機充填材の充填量を高めることが可能になる。
本実施形態に係る熱硬化性樹脂の、25℃における粘度の下限値は、例えば、0.1Pa・s以上であり、より好ましくは0.5Pa・s以上であり、さらに好ましくは1Pa・s以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の成膜性を向上させることができる。一方、上記25℃における粘度の上限値は、例えば、200Pa・s以下であり、好ましくは100Pa・s以下であり、より好ましくは50Pa・s以下である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の分散性を向上させることができる。
本実施形態に係るエポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、例えば、300g/eq以上であり、好ましくは330g/eq以上であり、より好ましくは350g/eq以上である。これにより、架橋点分子量を適切に制御できるので、最適な架橋密度の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を実現することができる。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の破断伸びを向上させることができる。一方、上記エポキシ当量の上限値は、特に限定されないが、例えば、700g/eq以下としてもよく、600g/eq以下としてもよく、500g/eq以下としてもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる。
また、本実施形態に係るエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されないが、Mw300以上としてもよく、好ましくはMw800以上としてもよい。Mwが上記下限値以上であると、樹脂膜の硬化物にタック性が生じるのを抑制することができる。Mwの上限は、特に限定されないが、Mw20,000以下としてもよく、好ましくはMw15,000以下としてもよい。Mwが上記上限値以下であると、ハンドリング性が向上し、樹脂膜を形成するのが容易となる。エポキシ樹脂のMwは、例えばGPCで測定することができる。
本実施形態に係るエポキシ樹脂は、25℃室温において液状であり、そのエポキシ当量が上記範囲内である第1エポキシ樹脂を少なくとも一種以上含むことが好ましい。
第1エポキシ樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ポリエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。第1エポキシ樹脂としては、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1エポキシ樹脂の中でも、粘度の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、2官能ナフタレン型エポキシ樹脂、およびポリエーテル型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上を用いることができる。
また、本実施形態のエポキシ樹脂としては、上記第1エポキシ樹脂の他に、他の第2エポキシ樹脂を併用してもよい。この第2エポキシ樹脂としては、第1エポキシ樹脂として挙げられたエポキシ樹脂の種類から選択することができる。
エポキシ樹脂の中でも、得られるプリント配線基板の耐熱性および絶縁信頼性をより一層向上できる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が好ましく、アラルキル型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上がより好ましい。
エポキシ樹脂の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物全体(溶媒を除く全固形分)100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記下限値以上であると、ハンドリング性が向上し、樹脂膜を形成するのが容易となる。一方、エポキシ樹脂の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、特に限定されないが、例えば、60質量部以下がよく、45質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。エポキシ樹脂の含有量が上記上限値以下であると、得られるプリント配線基板の強度や難燃性が向上したり、プリント配線基板の線膨張係数が低下し、反りの低減効果が向上したりする場合がある。
なお、熱硬化性樹脂組成物の全固形分とは、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる溶剤を除く成分全体を指す。以下、本明細書において同様である。
(マレイミド化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことができる。
本実施形態において、マレイミド化合物のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことにより、得られる絶縁層の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
上記マレイミド化合物としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
イミド拡張型ビスマレイミドとしては、例えば、以下の式(a1)により示されるマレイミド化合物、以下の式(a2)により示されるマレイミド化合物、以下の式(a3)により示されるマレイミド化合物等が挙げられる。式(a1)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-1500(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1500)等が挙げられる。式(a2)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-1700(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1700)、BMI-1400(デジグナーモレキュールズ社製、分子量 1400)等が挙げられる。式(a3)により示されるマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-3000(デジグナーモレキュールズ社製、分子量3000)等が挙げられる。
Figure 0007363041000001
上記式(a1)において、nは1以上10以下の整数を示す。
Figure 0007363041000002
上記式(a2)において、nは1以上10以下の整数を示す。
Figure 0007363041000003
上記式(a3)において、nは1以上10以下の整数を示す。
上記マレイミド化合物の重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されないが、Mw400以上が好ましく、特にMw800以上が好ましい。Mwが上記下限値以上であると、絶縁層にタック性が生じるのを抑制することができる。Mwの上限は、特に限定されないが、Mw4000以下が好ましく、Mw2500以下がより好ましい。Mwが上記上限値以下であると、絶縁層作製時、ハンドリング性が向上し、絶縁層を形成するのが容易となる。マレイミド化合物のMwは、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
また、両末端にマレイミドを有する上記イミド拡張型ビスマレイミドのMwは、架橋点間分子量と見なすことができる。
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物中に含まれるマレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量部としたとき、1.0質量部以上25.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以上20.0質量部以下がより好ましい。マレイミド化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる絶縁層の低熱収縮性および耐薬品性のバランスをより一層向上させることができる。
(ベンゾオキサジン化合物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、ベンゾオキサジン化合物を含有してもよい。
ベンゾオキサジン化合物はベンゾオキサジン環を有する化合物である。ベンゾオキサジン化合物としては、例えば、下記式(2)により示される化合物、下記式(3)により示される化合物から選択される一種または二種以上が挙げられる。
Figure 0007363041000004
(上記式(2)において、Xはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(1a)で表される基、式「-SO-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、cはそれぞれ独立に0以上4以下の整数である)
Figure 0007363041000005
(上記式(3)において、Xはそれぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基、下記式(1a)で表される基、式「-SO-」で表される基、「-CO-」で表される基、酸素原子または単結合であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、dはそれぞれ独立に0以上4以下の整数である)
Figure 0007363041000006
(上記式(1a)において、Yは芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基であり、nは0以上の整数である)
上記式(1a)において、芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基は、芳香族環のみからなるものでもよいし、芳香族環以外の炭化水素基を有していてもよい。Yが有する芳香族環は、1つでもよいし、2つ以上でもよく、2つ以上の場合、これら芳香族環は、同一でも異なっていてもよい。また、上記芳香族環は、単環構造および多環構造のいずれでもよい。
具体的には、芳香族環を有する炭素数6以上30以下の炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレイン、インダセン、ターフェニル、アセナフチレン、フェナレン等の芳香族性を有する化合物の核から水素原子を2つ除いた2価の基が挙げられる。
また、これら芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。ここで芳香族炭化水素基が置換基を有するとは、芳香族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部が置換基により置換されたことをいう。置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
この置換基としてのアルキル基としては、鎖状のアルキル基であることが好ましい。また、その炭素数は1以上10以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。
このような基Yは、ベンゼンまたはナフタレンから水素原子を2つ除いた基を有することが好ましく、上記式(1a)で表される基としては、下記式(1a-1)、(1a-2)のいずれかで表される基であることが好ましい。これにより、優れた耐熱性を発揮するものとなる。
Figure 0007363041000007
上記式(1a-1)、(1a-2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1以上6以下の炭化水素基である。eはそれぞれ独立に0以上4以下の整数、より好ましくは0である。
さらに、上記式(1a)で表される基において、nは、0以上の整数であればよいが、0以上5以下の整数であることが好ましく、1以上3以下の整数であることがより好ましく、1または2であることが特に好ましい。
上記式(2)および上記式(3)におけるXおよびXとしては、例えば、それぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。この直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカニレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。また、分岐鎖状のアルキレン基としては、具体的には、-C(CH-(イソプロピレン基)、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-のようなアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-のようなアルキルエチレン基等が挙げられる。
また、XおよびXにおけるアルキレン基の炭素数は、1以上10以下であればよいが、1以上7以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。具体的には、このような炭素数を有するアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。
また、上記式(2)および上記式(3)におけるRおよびRとしては、例えば、それぞれ独立して、炭素数1以上6以下の炭化水素基であるが、炭素数1または2の炭化水素基、具体的には、メチル基またはエチル基であるのが好ましい。
また、上記式(2)および上記式(3)におけるcおよびdとしては、例えば、それぞれ独立に0以上4以下の整数であり、0以上2以下の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、bは0以上3以下の整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
このようなベンゾオキサジン化合物としては、上記式(2)で表される化合物および上記式(3)で表される化合物のうち、上記式(2)で表される化合物であるのが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物から得られる絶縁層は、より優れた低熱収縮性および耐薬品性を発揮するものとなる。
また、この上記式(2)で表される化合物は、上記Xが炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基であり、Rが1または2の炭化水素基であり、cが0以上2以下の整数であることが好ましい。または、上記Xは上記式(1a-1)、(1a-2)のいずれかで表される基であり、cが0であることが好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物から得られる絶縁層は、より優れた低熱収縮性および耐薬品性を発揮するものとなる。
ベンゾオキサジン化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記式(2-1)により示される化合物、下記式(2-2)により示される化合物、下記式(2-3)により示される化合物、下記式(3-1)により示される化合物、下記式(3-2)により示される化合物および下記式(3-3)により示される化合物から選択される一種または二種以上が挙げられる。
Figure 0007363041000008
(上記式(2-3)において、Rはそれぞれ独立に炭素数1~4の炭化水素基である)
Figure 0007363041000009
Figure 0007363041000010
熱硬化性樹脂組成物中に含まれるベンゾオキサジン化合物の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量部としたとき、1.0質量部以上30.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以上25.0質量部以下がより好ましく、5.0質量部以上20.0質量部以下がさらに好ましい。ベンゾオキサジン化合物の含有量が上記範囲内であると、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物について、Tgをリフロー時の熱処理温度より低い温度とすることができ、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の収縮量を少ない熱処理回数で安定させることができる。
(硬化剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(2P4MZ)、2-フェニルイミダゾール(2PZ)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;BF錯体などのルイス酸などの触媒型の硬化剤が挙げられる。
また、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、3,3'-ジエチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などの重付加型の硬化剤;2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオンなどのフェノール系化合物も用いることができる。
さらに、第2硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などの縮合型の硬化剤も用いてもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂などの多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂;フェニレン骨格および/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものを使用してもよい。
フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量4×10~1.8×10としてもよく、好ましくは5×10~1.5×10としてもよい。重量平均分子量を上記下限値以上とすることでプリプレグにタック性が生じるなどの問題がおこりにくくなり、上記上限値以下とすることで、プリプレグ作製時、繊維基材への含浸性が向上し、より均一な製品が得ることができる。
硬化剤の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。硬化剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、硬化を促進する効果を十分に発揮することができる。一方、硬化剤の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。硬化剤の含有量が上記上限値以下であるとプリプレグの保存性をより向上できる。
<無機充填材>
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含むことができる。
無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填材としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記無機充填材の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよく、0.5μm以上としてもよい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁層作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニス中における無機充填材の沈降等の現象を抑制でき、より均一な樹脂膜を得ることができる。
本実施形態において、無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
また、無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
平均粒子径が異なる2種類以上の無機充填材を併用する場合、例えば、平均粒子径が0.50μm以上、5.0μm以下の無機充填剤と、平均粒子径が0.01μm以上、0.50μm未満の無機充填剤とを少なくとも1種以上ずつ含む態様とすることができる。
上記無機充填材はシリカ粒子を含むことが好ましい。上記シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下としてもよく、0.1μm以上4.0μm以下としてもよく、0.2μm以上2.0μm以下としてもよい。少なくとも上記の粒子径を有するシリカ粒子を含むことにより、無機充填材の充填性をさらに向上させることができる。
無機充填材の含有量の下限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。これにより、樹脂膜の硬化物を特に低熱膨張、低吸水とすることができる。これにより、プリプレグの硬化物の反りを抑制することができる。また、本実施形態のプリプレグの硬化物は、高い伸び率を維持したまま、無機充填材の含有量を高めることができるので、応力緩和性を向上させることができる。一方で、無機充填材の含有量の上限値は、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、80質量部以下としてもよく、78質量部以下としてもよく、76質量部以下としてもよく、73質量部以下とすることもでき、70質量部以下とすることもできる。本実施形態にかかるプリプレグによれば、無機充填剤の量を、例えば上記上限以下としても、プリプレグの硬化物の反りを十分少なくすることができ、また、加工性を向上させることができる。
(硬化促進剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、硬化促進剤を含んでもよい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂の硬化反応を促進させるものを用いることができ、その種類は特に限定されない。本実施形態においては、硬化促進剤として、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-エチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、およびオニウム塩化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性をより効果的に向上させる観点からは、オニウム塩化合物を含むことがより好ましい。
硬化促進剤として用いられるオニウム塩化合物は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0007363041000011
(式(2)中、Pはリン原子、R、R、RおよびRは、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。A-は分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、またはその錯アニオンを示す)
硬化促進剤の含有量の下限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、たとえば、0.01質量部以上としてもよく、好ましくは0.05質量部以上としてもよい。硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化性をより効果的に向上させることができる。一方、硬化促進剤の含有量の上限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、2.5質量部以下としてもよく、好ましくは1質量部以下としてもよい。硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の保存性を向上させることができる。
(カップリング剤)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は熱硬化性樹脂組成物の調製時に直接添加してもよいし、無機充填材にあらかじめ添加しておいてもよい。カップリング剤の使用により無機充填材と各樹脂との界面の濡れ性を向上させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、プリプレグの硬化物の耐熱性を改良することができる。また、後述のように、本発明のプリプレグ上に、金属箔を接着する場合、カップリング剤を用いることにより、金属箔との密着性を向上させることができる。さらに、吸湿耐性を向上できるので、湿度環境下後においても、銅箔との密着性を維持することができる。
カップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。本実施形態において、カップリング剤はシランカップリング剤を含有してもよい。
これにより、無機充填材と各樹脂との界面の濡れ性を高くすることができ、プリプレグの硬化物の耐熱性をより向上させることができる。
シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン等が挙げられる。
具体的な化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合せて用いることができる。これらのうちエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシランが好ましく、アミノシランとしては、1級アミノシラン又はアニリノシランがより好ましい。
カップリング剤の添加量は、無機充填材の比表面積に対して適切に調整することができる。このようなカップリング剤の添加量の下限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、0.01質量部以上としてもよく、好ましくは0.05質量部以上としてもよい。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材を十分に被覆することができ、樹脂膜の硬化物の耐熱性を向上させることができる。一方、カップリング剤の添加量の上限値は、例えば、熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、3質量部以下としてもよく、好ましくは1.5質量部以下としてもよい。カップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、プリプレグの硬化物の曲げ強度等の低下を抑制することができる。
(添加剤)
なお、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、緑、赤、青、黄、および黒等の染料、黒色顔料等の顔料、色素からなる群から選択される一種以上を含む着色剤、低応力剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤、ゴム粒子等の上記の成分以外の添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料としては、カオリン、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青等の無機顔料、フタロシアニン等の多環顔料、アゾ顔料等が挙げられる。
染料としては、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、キサンテン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ペリノン、アントラキノン、インジゴイド、オキサジン、キナクリドン、ベンツイミダゾロン、ビオランスロン、フタロシアニン、アゾメチン等が挙げられる。
ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。
(プリプレグの製造方法)
本実施形態に係るプリプレグは、繊維基材を内部に含む、熱硬化性樹脂組成物を当該繊維基材に含浸してなるプリプレグである。本実施形態に係るプリプレグは、例えば、繊維基材に一または二以上の熱硬化性樹脂および充填材を含む樹脂組成物を含浸させ、その後、半硬化させて得られる。
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、とくに限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、などが挙げられる。
本実施形態において、ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
上記溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト ン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物がワニス状である場合において、熱硬化性樹脂組成物の固形分含有量は、たとえば30質量部以上80質量部以下としてもよく、より好ましくは40質量部以上70質量部以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られる。
ワニス状の熱硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を、たとえば、超音波分散方式、高圧衝突突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて、溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、熱硬化性樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
(繊維基材)
上記繊維基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材を用いると、プリント配線基板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは15μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性が向上し、得られるプリプレグの硬化物の熱膨張、熱収縮を制御することが容易となる。
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の熱硬化性樹脂組成物の含浸性が向上し、ボイドの低下の発生を抑制することができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、得られるプリプレグの硬化物の反りを抑制できたりする。
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
(プリプレグ)
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
(プリント配線基板)
本実施形態に係るプリント配線基板は、上記のプリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えるプリント配線基板である。
本実施形態において、プリプレグの硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のコア層やビルドアップ層やソルダーレジスト層、コア層を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層やソルダーレジスト層、PLPに用いられるコアレス基板の層間絶縁層やソルダーレジスト層、MIS基板の層間絶縁層やソルダーレジスト層等に用いることができる。本実施形態に係るプリプレグは、多層基板やPoPを構成するプリント配線基板に係るプリプレグとして特に好適に用いることができる。
次に、本実施形態のプリント配線基板300の一例を、図2(a)(b)を用いて説明する。
本実施形態のプリント配線基板300は、上述のプレプリグ10の硬化物で構成された絶縁層を備えるものである。上記プリント配線基板300は、図2(a)に示すように、絶縁層301(コア層)と絶縁層401(ソルダーレジスト層)とを備える構造を有していてもよい。また、上記プリント配線基板300は、図2(b)に示すように、絶縁層301(コア層)、絶縁層305(ビルドアップ層)および絶縁層401(ソルダーレジスト層)を備える構造を有していてもよい。これらのコア層、ビルドアップ層、ソルダーレジスト層のそれぞれは、本実施形態のプリプレグの硬化物で構成することができる。
また、本実施形態に係るプリント配線基板300は、片面プリント配線基板であってもよいし、両面プリント配線基板または多層プリント配線基板であってもよい。両面プリント配線基板とは、絶縁層301の両面に金属層303を積層したプリント配線基板である。また、多層プリント配線基板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により、コア層である絶縁層301に、ビルドアップ層(例えば、絶縁層305)を2層以上積層したプリント配線基板である。
なお、本実施形態において、ビアホール307は、層間を電気的に接続するための孔であればよく、貫通孔および非貫通孔いずれでもよい。ビアホール307は金属を埋設して形成されてもよい。この埋設した金属は、無電解金属めっき膜308で覆われた構造を有していてもよい。
また、本実施形態において、上記金属層303は、例えば、回路パターンであってもよいし、電極パットであってもよい。この金属層303は、例えば、金属箔105および電解金属めっき層309の金属積層構造を有していてもよい。
金属層303は、例えば、薬液処理またはプラズマ処理された金属箔105または、本実施形態の樹脂膜の硬化物からなる絶縁層(例えば、絶縁層301や絶縁層305)の面上に、SAP(セミアディティブプロセス)法により形成される。例えば、金属箔105または絶縁層301,305上に無電解金属めっき膜308を施した後、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより電解金属めっき層309付けを行い、めっきレジストの除去とフラッシュエッチングによる電解金属めっき層309をパターニングすることにより、金属層303を形成する。
(半導体パッケージ)
本実施形態に係る半導体装置は、本実施形態に係るプリント配線基板と、
上記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または、前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える半導体装置とすることができる。
次に、本実施形態の半導体装置400について説明する。図3(a)(b)は、半導体装置400の構成の一例を示す断面図である。
本実施形態の半導体装置400は、プリント配線基板300と、プリント配線基板300の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板300に内蔵された半導体素子と、を備えることができる。
例えば、図3(a)に示される半導体装置400は、図2(a)に示されるプリント配線基板300の回路層(金属層303)の上に、半導体素子407が搭載された構造を有する。一方、図3(b)に示される半導体装置400は、図2(b)に示されるプリント配線基板300の回路層(金属層303)の上に、半導体素子407が搭載された構造を有する。半導体素子407は、封止材層413に覆われている。このような半導体パッケージは、半田バンプ410および金属層303を介して、半導体素子407が、プリント配線基板300と電気的に接続するフリップチップ構造であってもよい。
本実施形態において、半導体パッケージの構造としては、上記フリップチップ接続構造に限定されずに、各種の構造を有してもよいが、例えば、ファンアウト構造を用いることができる。本実施形態のプリプレグの硬化物からなる絶縁層は、例えば、ファンアウト構造を有する半導体パッケージの製造プロセスにおいて、基板反りや反り等に起因する導通不良を抑制することができる。
次に、本実施形態のプリント配線基板の変形例を説明する。図4は、プリント配線基板500の製造プロセス一例の工程断面図である。図4(c)は、コア層を有しないプリント配線基板500を示す。
本実施形態のプリント配線基板500は、繊維基材を有するコア層を備えないものであり、例えば、ビルドアップ層やソルダーレジスト層で構成されているコアレス樹脂基板とすることができる。これらのビルドアップ層やソルダーレジスト層は、本実施形態のプリプレグの硬化物からなる絶縁層で構成されていることが好ましい。例えば、図4(c)に示すプリント配線基板500は、2層のビルドアップ層(絶縁層540,550)とソルダーレジスト層(絶縁層560)を備えるものである。なお、プリント配線基板500のビルドアップ層は、単層でもよく、2以上の複数層を有していてもよい。
本実施形態に係るプリント配線基板500は、本実施形態に係るプレプリグを用いることによって、複数回の加熱加圧・冷却過程を経ても、製造工程中の加熱・冷却過程で反り・変形が発生し、あるいは、これらの間に内部応力が蓄積することにより、各材料間の接続が破壊され、導通不良が発生することを抑制することができるプリント配線基板500となる。また、従来よりも高い歩留まりで、信頼性の高いプリント配線基板を得ることができる。
図4(c)に示される金属層542,552,562は、回路パターンであってもよいし、電極パットであってもよく、前述のように、SAP法で形成されていてもよい。これらの金属層542,552,562は、単層でも複数の金属層であってもよい。
プリント配線基板500は、平面上に複数の半導体素子を搭載することができる大面積を有していてもよい。これにより、プリント配線基板500に搭載された複数の半導体素子を一括封止した後、これらを個片化することにより、複数の半導体パッケージを得ることができる。なお、プリント配線基板500は、略円形形状や矩形形状等のパネル基板とすることができる。
上記プリント配線基板500の製造方法は、特に限定されないが、例えば、支持基板510上に、ビルドアップ層、ソルダーレジスト層を形成した後、この支持基板510を剥離することにより得ることができる。具体的には、図4(a)に示すように、大面積の支持基板510(例えば、SUSで構成される板部材)上に、キャリア箔520、金属箔530(例えば、銅箔)を配置する。このとき、支持基板510とキャリア箔520の間に不図示の接着樹脂を配置することができる。続いて、金属箔530上に金属層542を形成する。この金属層542を、たとえば、SAP方法等の通常の手法によりパターニングする。続いて、加熱加圧成形法等により、上記キャリア膜付樹脂膜を積層した後、キャリア膜付樹脂膜からキャリア基材を剥離する。そして、樹脂膜を硬化する。これらを3回繰り返して、2層のビルドアップ層と1層のソルダーレジスト層を形成する。
その後、図4(b)に示すように支持基板510を剥離する。そして、金属箔530をエッチング等により除去する。
以上により、図4(c)に示すプリント配線基板500が得られる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる、
熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグであって、
熱機械分析装置TMAを用いて、下記測定条件1で測定した、当該プリプレグの硬化物の温度30℃における収縮率差B-A%が、-0.005%以上、0%以下である、プリプレグ。
(測定条件1)
・温度30℃における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をA%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をB%とする。これにより算出されるB-A%を30℃における収縮率差B-A%として評価する。
・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、熱機械分析(TMA)を用い、荷重10g、圧縮モードの条件で、温度30℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、温度260℃から30℃まで降温速度10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
2.
1.に記載のプリプレグであって、
下記の測定条件2で測定される、当該プリプレグの収縮率差Y-X%が-0.010%以上0%以下である、プリプレグ。
(測定条件2)
・室温における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の室温における収縮率をX%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の室温における収縮率をY%とする。これにより算出されるY-X%を室温における収縮率差Y-X%として評価する。
・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、ホットプレスを用いて、室温から昇温速度温度10℃/minで昇温し、200℃、圧力8kgf/mm の条件で2時間加熱加圧し、室温まで10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
3.
1.または2.に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分で加熱した硬化物のガラス転移温度が240℃以下、または280℃以上である、プリプレグ。
4.
1.から3.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分で加熱した硬化物の、
30℃における貯蔵弾性率E'30GPaと、
260℃における貯蔵弾性率E'260GPaの比であるE'30/E'260が、1.0以上である、プリプレグ。
5.
1.から4.のいずれか1つに記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、及び、無機充填材を含む、プリプレグ。
6.
5.に記載のプリプレグであって、
前記熱硬化性樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、40質量部以上80質量部以下である、プリプレグ。
7.
1.から6.のいずれか1つに記載のプリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えるプリント配線基板。
8.
7.に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または、前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える半導体装置。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(1)樹脂ワニスの調製
まず、表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70質量%となるように調製し、高速撹拌装置を用い撹拌して樹脂ワニスPを調製した。
なお、表1における各成分の配合割合を示す数値は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体100質量部に対する各成分の配合割合(質量部)を示している。
表1における各成分の詳細は下記のとおりである。
実施例および比較例では、以下の原料を用いた。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂1:ベンゾオキサジン樹脂 四国化成社製 品番P-d型ベンゾオキサジン
熱硬化性樹脂2:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂 日本化薬社製 品番NC-3000
熱硬化性樹脂3:シアネート樹脂 ロンザ社製 品番PT-30
熱硬化性樹脂4:ナフタレン型エポキシ樹脂 DIC社製 品番HP-6000
熱硬化性樹脂5:ビスマレイミド樹脂 大和化成社製 品番BMI-2300
(硬化剤)
硬化剤1:イミダゾール 四国化成 品番TBZ
(無機充填材)
無機充填材1:シリカ粒子(アドマテックス社製、SC4050、平均粒径1.1μm)
無機充填材2:シリカナノ粒子(アドマテックス社製、アドマナノ、平均粒径55nm)
(プリプレグの製造)
実施例および比較例において、得られた樹脂ワニスを厚み30μmのガラス繊維に含浸させ、樹脂ワニスを繊維基材に塗布した後、170℃、1分間の条件で溶剤を除去して、厚さ50μmのプリプレグを形成した。
(ガラス繊維)
ガラスクロス1:日東紡 WTX1035
(積層基板の製造)
実施例及び比較例において得られたプリプレグを用いて、2層のコアレス積層基板を製造した。
まず、犠牲基板として、プリプレグの両面にピーラブル銅箔(三井金属鉱業社製、MT-Ex-5μm)を備えるコア材(住友ベークライト製、LAZ-4785GH-G、厚さ0.1mm)を準備した。
次いで、犠牲基板の両面に第1の熱硬化性樹脂層として、実施例1において得られたプリプレグを配置した。次いで、第1の熱硬化性樹脂層の上に銅箔を更に積層し、温度200℃で加熱して90分間真空ラミネートすることによって、第1の熱硬化性樹脂層を硬化した。
これにより、銅箔、硬化した第1の熱硬化性樹脂層、犠牲基板、硬化した第1の熱硬化性樹脂層、銅箔をこの順で積層した第1の積層体を作製した。
次いで、第1の積層体の両面をエッチングすることによりパターニングして、導体回路パターンを形成した。これにより、両面に導体回路パターンが設けられた第1の積層体を作製した。
次いで、第1の積層体が両面に備える導体回路パターンを覆うように第2の熱硬化性樹脂層として、実施例1において得られたプリプレグを配置した。次いで、第2の熱硬化性樹脂層の上に銅箔を更に積層し、温度200に加熱して90分間真空ラミネートすることによって、第2の熱硬化性樹脂層を硬化した。
これにより、銅箔、硬化した第2の熱硬化性樹脂層、導体回路パターン、硬化した第1の熱硬化性樹脂層、犠牲基板、硬化した第1の熱硬化性樹脂層、導体回路パターン、硬化した第2の熱硬化性樹脂層、銅箔をこの順で積層した第2の積層体を作製した。次いで、ピーラブル銅箔を剥離することで、犠牲基板と、第1のビルドアップ層とを剥離し、実施例1に係るコアレス積層基板を作製した。
(実施例2~実施例5)
樹脂ワニスの配合を表1に示す通りとした以外は実施例1と同様の方法で、プリプレグ及び積層基板を作成した。
Figure 0007363041000012
得られたプリプレグ及び積層基板の反りを以下の方法で評価した。
(1)収縮率差B-A%
各実施例、比較例のプリプレグを銅箔ではさみこみ、200℃、90分で加熱加圧して硬化させた銅張積層基板から、4mm×15mmのテストピースを切り出し、両面の金属箔をエッチング液(第二塩化鉄溶液、35℃)で除去し、得られた試験片に対し、熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度30℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、温度260℃から30℃まで降温速度10℃/minで降温した。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行った。
熱処理サイクルを行う前の、30℃におけるプリプレグの硬化物の試験片における寸法を基準とし、上記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の温度30℃におけるX方向の収縮率をA%とした。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の温度30℃におけるX方向の収縮率をB%とした。これにより算出されるB-A%を30℃における収縮率差B-A%として評価した。
(2)収縮率差Y-X%
収縮量差Y-Xは、パンチングされたプリプレグの硬化物の、穴の中心間の距離を測定することにより算出される(図1)。測定方法、加熱条件、及び、算出方法は以下の通りである。
[1]収縮量測定用穴あきプリプレグの硬化物
各実施例・比較例のプリプレグを銅箔ではさみこみ、200℃、90分で加熱加圧して硬化させた銅張積層基板から、250mm×250mmの試験片を切り出した。試験片の4つの角に直径1mmの穴を開けた。穴は、各試験片の板端から10mmの距離の直線の交点を中心とした、直径1mmの円であり、4カ所とした。銅張積層基板から、両面の金属箔をエッチング液(第二塩化鉄溶液、35℃)で除去し、120℃で、0.5時間で乾燥して水分を除去し、試験片とした。
[2]加熱プレス前のプリプレグの硬化物の寸法測定
4つの直径1mmの穴について、対角線を除いた、穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD0A、D0B、D0C、D0Dとし、その平均を、Dとした。
[3]1回目の加熱プレス後の寸法測定
プリプレグの硬化物を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧した。加圧は、プリプレグの硬化物が30℃に冷却されるまで、続けて行った。当該プリプレグの硬化物が30℃に冷却されてから、30℃で穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD1A、D1B、D1C、D1Dとし、その平均を、Dとした。
[4]2回目の加熱プレス後の寸法測定
1回目の加熱プレス後、30℃に冷却されたプリプレグの硬化物を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧した。加圧は、プリプレグの硬化物が30℃に冷却されるまで、続けて行った。当該プリプレグの硬化物が30℃に冷却されてから、30℃で穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD2A、D2B、D2C、D2Dとし、その平均を、Dとした。
[5]3回目の加熱プレス後の寸法測定
2回目の加熱プレス後、30℃に冷却されたプリプレグの硬化物を、ホットプレスを用いて、温度200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧した。加圧は、プリプレグの硬化物が30℃に冷却されるまで、続けて行った。当該プリプレグの硬化物が30℃に冷却されてから、30℃で穴の中心から他の穴の中心までの長さ4か所(図中A、B、C、D)を測定し、各測定値をD3A、D3B、D3C、D3Dとし、その平均を、Dとした。
[6]算出方法
2回目の加熱プレスの収縮量Xを、
X=(D―D)/D×100[%]
とした。
3回目の加熱プレスの収縮量Yを、
Y=(D―D)/D×100[%]
とした。
上記した方法により算出される2回目の加熱プレスにおける収縮量X%及び、3回目の加熱プレスにおける収縮量Y%の差であるY-X%を、収縮量差Y-X%とした。
(3)線膨張係数(α1)
各実施例、比較例のプリプレグを銅箔ではさみこみ、200℃、90分で加熱加圧して硬化させた銅張積層基板から、4mm×15mmのテストピースを切り出し、両面の金属箔をエッチング液(第二塩化鉄溶液、35℃)で除去し、得られた試験片に対し、熱機械分析装置TMA(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30~260℃、昇温速度10℃/min、荷重10g、圧縮モードの条件で熱機械分析(TMA)を測定した。50℃から100℃の範囲における平面方向(XY方向)の線膨張係数の平均値αを算出した。
なお、線膨脹係数は、2サイクル目の値を採用した。
(4)ガラス転移温度(Tg)
各実施例、比較例のプリプレグを銅箔ではさみこみ、200℃、90分で加熱加圧して硬化させた銅張積層基板から、8mm×40mmのテストピースを切り出し、両面の金属箔をエッチング液(第二塩化鉄溶液、35℃)で除去し、そのテストピースに対し、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで動的粘弾性測定をおこなった。ガラス転移温度(Tg)、損失正接tanδの測定は、動的粘弾性測定(DMA装置、TAインスツルメント社製、Q800)で行った。ここで、ガラス転移温度は、損失正接tanδが最大値を示す温度とした。また、得られた損失正接tanδのピーク値からその半値幅を算出した。
(5)弾性率
貯蔵弾性率E'の測定は、動的粘弾性測定(DMA装置、TAインスツルメント社製、Q800)で行った。
各実施例、比較例のプリプレグを銅箔ではさみこみ、200℃、90分で加熱加圧して硬化させた銅張積層基板から8mm×40mmのテストピースを切り出し、両面の金属箔をエッチング液(第二塩化鉄溶液、35℃)で除去し、そのテストピースに対し、昇温速度5℃/min、周波数1Hzで、30℃及び260℃での貯蔵弾性率測定をおこない、30℃及び260℃での貯蔵弾性率E'30、E'260、貯蔵弾性率の比であるE'30/E'260を算出した。
(6)反り
得られた積層コアレス基板の反りを温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製、形式LS220-MT100MT50)を用いて評価した。上記測定機のサンプルチャンバーに積層コアレス基板を設置し、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。
Figure 0007363041000013
実施例1及び比較例1のプリプレグの硬化物について、TMAを測定した結果得られたヒステリシスを図5及び6に示す。図5は、実施例1のプリプレグの硬化物のTMA測定時のヒステリシスを示す。また、図6は比較例1のプリプレグの硬化物のTMA測定時のヒステリシスを示す。図5及び図6の縦軸は変位量、横軸は温度を示す。
図5及び6に示されるように、実施例1、及び、比較例1のプリプレグの硬化物は、熱サイクルを5回以上繰り返した際の総変位量が、ともに3%よりも小さい。しかしながら、熱処理を3サイクル実施した後の収縮率B%と、熱処理を2サイクル実施した後の収縮率A%の差であるB-A%が、本願発明で特定する範囲内である、実施例1のプリプレグを用いた場合は、得られた積層基板の反りが少ないのに対し、B-A%が、-0.006%であり、本願発明で特定する範囲より大きい、比較例1のプリプレグを用いた場合は、得られた積層基板の反りが大きかった。
10 プレプリグ
105 金属箔
300 プリント配線基板
301 絶縁層
303 金属層
305 絶縁層
307 ビアホール
308 無電解金属めっき膜
309 電解金属めっき層
400 半導体装置
401 絶縁層
407 半導体素子
410 半田バンプ
413 封止材層
500 プリント配線基板
510 支持基板
520 キャリア箔
530 金属箔
540 絶縁層
542 金属層
560 絶縁層

Claims (8)

  1. プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる、
    熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグであって、
    熱機械分析装置TMAを用いて、下記測定条件1で測定した、当該プリプレグの硬化物の温度30℃における収縮率差B-A%が、-0.005%以上、0%以下であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、ベンゾオキサジン化合物と、無機充填剤と、を含み、
    前記熱硬化性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたときの、前記熱硬化性樹脂組成物中の、前記エポキシ樹脂の含有量は3質量部以上45質量部以下であり、前記ベンゾオキサジン化合物の含有量は13.9質量部以上30.0質量部以下であり、前記無機充填剤の含有量は40質量部以上80質量部以下であり、
    前記繊維基材は、ガラス繊維基材であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物を含まない、プリプレグ。
    (測定条件1)
    ・温度30℃における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をA%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をB%とする。これにより算出されるB-A%を30℃における収縮率差B-A%として評価する。
    ・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、熱機械分析(TMA)を用い、荷重10g、圧縮モードの条件で、温度30℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、温度260℃から30℃まで降温速度10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
  2. プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる、
    熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグであって、
    熱機械分析装置TMAを用いて、下記測定条件1で測定した、当該プリプレグの硬化物の温度30℃における収縮率差B-A%が、-0.005%以上、0%以下であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、ベンゾオキサジン化合物と、無機充填剤と、を含み、
    前記熱硬化性樹脂組成物の全固形分を100質量部としたときの、前記熱硬化性樹脂組成物中の、前記エポキシ樹脂の含有量は3質量部以上45質量部以下であり、前記ベンゾオキサジン化合物の含有量は13.9質量部以上30.0質量部以下であり、前記無機充填剤の含有量は73質量部以上80質量部以下であり、
    前記繊維基材は、ガラス繊維基材である、プリプレグ。
    (測定条件1)
    ・温度30℃における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をA%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の温度30℃における収縮率をB%とする。これにより算出されるB-A%を30℃における収縮率差B-A%として評価する。
    ・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、熱機械分析(TMA)を用い、荷重10g、圧縮モードの条件で、温度30℃から260℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、温度260℃から30℃まで降温速度10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
  3. 請求項1または2に記載のプリプレグであって、
    下記の測定条件2で測定される、当該プリプレグの収縮率差Y-X%が-0.010%以上0%以下である、プリプレグ。
    (測定条件2)
    ・室温における収縮率差:当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを2サイクル実施した時の室温における収縮率をX%とする。また、当該プリプレグの硬化物に対して、下記の熱処理サイクルを3サイクル実施した時の室温における収縮率をY%とする。これにより算出されるY-X%を室温における収縮率差Y-X%として評価する。
    ・熱処理サイクル:当該プリプレグの硬化物を、ホットプレスを用いて、室温から昇温速度温度10℃/minで昇温し、200℃、圧力8kgf/mmの条件で2時間加熱加圧し、室温まで10℃/minで降温する。この工程を1サイクルとして熱処理サイクルを行う。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
    前記熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分で加熱した硬化物のガラス転移温度が240℃以下、または280℃以上である、プリプレグ。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のプリプレグであって、
    前記熱硬化性樹脂組成物を温度200℃で、90分で加熱した硬化物の、
    30℃における貯蔵弾性率E'30GPaと、
    260℃における貯蔵弾性率E'260GPaの比であるE'30/E'260が、1.0以上である、プリプレグ。
  6. 請求項1からのいずれか1項に記載のプリプレグの硬化物で構成された絶縁層を備えるプリント配線基板。
  7. 請求項に記載のプリント配線基板と、
    前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または、前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える半導体装置。
  8. 請求項1に記載のプリプレグであって、
    記熱硬化性樹脂組成物中の前記無機充填材の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物の全固形分100質量部に対して73質量部以下である、プリプレグ。
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