以下、本発明の一例に係る足関節の運動支援装置について、図面を参照しつつ説明する。
まず、足関節の運動支援装置の説明に先立って、足関節の運動の種類について図1を参照しつつ説明する。なお、足関節は、足首にある関節であり、距骨と腓骨と脛骨とを含む骨で構成された関節である。
図1は足関節91の8つの運動を示す図であり、図1(a)は底屈運動、図1(b)は背屈運動、図1(c)は内転運動、図1(d)は外転運動、図1(e)は内返し運動、図1(f)は外返し運動、図1(g)は内反運動、図1(h)は外反運動を示す図である。
底屈運動は、図1(a)に示されるように、足部9を足底部94(足裏部、とも称される)側に伸展させる運動である。背屈運動は、図1(b)に示されるように、足部9を足甲部93(足背部、とも称される)側に屈曲させる運動である。
内転運動は、図1(c)に示されるように、足部9の先端を正中矢状面(人間の体の正中に沿って体を左右に等分する面)に近づけることにより足関節を中心に足部9を内側に回転させる運動である。外転運動は、図1(d)に示されるように、足部9の先端を正中矢状面から遠ざけることにより足関節を中心に足部9を外側に回転させる運動である。
内返し運動は、図1(e)に示されるように、足部9の足底部94を正中矢状面側(言い換えれば、体の内側)に向ける運動である。外返し運動は、図1(f)に示されるように、足部9の足底部94を正中矢状面とは反対側(言い換えれば、体の外側)に向ける運動である。
内反運動(図1(g)参照)は、底屈運動と内転運動と内返し運動との3つの運動を組み合わせた複合運動であり、回外運動とも呼ばれる。外反運動(図1(h)参照)は、背屈運動と外転運動と外返し運動との3つの運動を組み合わせた複合運動であり、回内運動とも呼ばれる。
これらの8つの種類の運動を足関節に行わせる運動支援が、運動支援装置100によって行われる。なお、以下において、運動支援装置100による足関節の運動支援を受ける者を「被支援者」とも称する。
次に、足関節の運動支援装置100について、図2および図3等を参照しつつ説明する。図2は、本発明の一例に係る足関節の運動支援装置100を示す斜視図であり、図3は、本発明の一例に係る足関節の運動支援装置100を示す側面図である。なお、図2においては、後述する側部用アクチュエータユニット3、背屈用アクチュエータ51および底屈用アクチュエータ52が省略されている。
運動支援装置100は、踵部92より末端側の足部の姿勢を特定の姿勢へと変位させることによって足関節の運動を支援し、足関節における拘縮等を予防または改善することが可能な装置である。運動支援装置100は、自力で身体を自由に動かすことが難しい人等の関節において拘縮等を予防または改善するための訓練(関節可動域訓練あるいはROM訓練などとも称される)を行わせる装置であることから、「足関節の可動域訓練装置」などとも称される。
運動支援装置100は、例えば、リハビリテーションの際に使用される。なお、これに限定されず、運動支援装置100は、リハビリテーション以外の種々の目的で使用することも可能である。
図3に示されるように、運動支援装置100は、動作ユニット10と土台部6とを有しており、動作ユニット10は、土台部6の上面に設置されている。
また、土台部6の上面には、マット65も配置されている。運動支援装置100を用いて被支援者の足関節に対する運動支援が行われる際には、被支援者は、座位または仰向けの姿勢(仰臥位、とも称される)で当該マット65に自身のふくらはぎを乗せつつ、動作ユニット10の内部に自身の足部を挿入する。すなわち、図3の紙面における左側から被支援者の足部が動作ユニット10内に挿入される。そして、その状態で、運動支援装置100によって、足関節に8つの運動を行わせる支援動作が実行される。
なお、被支援者は、運動支援装置100の前後方向において、当該運動支援装置100の後方側から自身の足部を当該動作ユニット10の内部に挿入する。本実施形態では、運動支援装置100の前後方向をX方向とも称し、運動支援装置100の後方側から前方側へと向かう方向を+X方向(X方向の正方向)とも称する。また、本実施形態では、運動支援装置100の幅方向(左右方向)をY方向とも称し、前方側から見て運動支援装置100の左側から右側へと向かう方向を+Y方向(Y方向の正方向)とも称する。また、本実施形態では、運動支援装置100の高さ方向(上下方向)をZ方向とも称し、前方側から見て運動支援装置100の下側から上側へと向かう方向を+Z方向(Z方向の正方向)とも称する。
図3に示されるように、動作ユニット10は、後述する回転軸部53を介して、土台部6の上面61に固定された支持部60に支持されている。そして、後述するように、足関節の背屈運動等が行われる際には、当該動作ユニット10自体が回転軸部53を中心に回転する。
また、図面には示されていないが、運動支援装置100は、コンプレッサと排気ポンプとをさらに備えている。
後述する各空気圧アクチュエータの膨張は、当該コンプレッサの動作により実現される。具体的には、コンプレッサで生成された圧縮空気がエアチューブを介して空気圧アクチュエータ(詳細には、空気圧アクチュエータの空気室)へと送られることにより、当該空気圧アクチュエータが膨張する。
また、後述する各空気圧アクチュエータの収縮は、排気ポンプの動作により実現される。具体的には、空気圧アクチュエータが膨らんだ状態でコンプレッサからの圧縮空気の供給が停止されるとともに、排気ポンプによって空気圧アクチュエータ内の空気がエアチューブを介して排出されることにより、当該空気圧アクチュエータが収縮する。
以下における各空気圧アクチュエータは、いずれも、可撓性を有する袋状の空気室により形成されている。当該空気室は、可撓性を有するエアチューブ(不図示)を介して上記のコンプレッサおよび排気ポンプに接続されている。
当該空気室(バルーンとも称する)は、密封性を保つことができる素材(アルミフィルム、塩化ビニル等)を熱圧着で接着することにより製作される。
また、以下における空気圧アクチュエータのうち、少なくとも、被支援者の皮膚に直接触れる空気圧アクチュエータの表面は、布素材でカバーされていることが好ましい。これにより、例えば表面が金属部材で形成された空気圧アクチュエータがそのまま被支援者の皮膚に触れる場合と比較して、被支援者にとってより心地よい肌触りの運動支援装置100を提供することが可能である。さらに、空気圧アクチュエータ(バルーン)の外側(表面)が、比較的伸縮し難い素材(帆布等)で覆われていることが好ましい。これにより、空気圧アクチュエータの変位が制限され、空気圧アクチュエータの過剰な膨張を防ぐことが可能である。
<動作ユニットについて>
次に、動作ユニット10の詳細構成について、図4~図6等を参照しつつ説明する。図4は、前方側から見た動作ユニット10を示す斜視図であり、図5は、後方側から見た動作ユニット10を示す斜視図である。また、図6は、動作ユニット10の内部構造を説明する図である。なお、図4および図5においては、後述する側部用空気圧アクチュエータユニット3が省略された動作ユニット10が図示されている。
図4および図5に示されるように、動作ユニット10は、本体部1を有している。本体部1は、略直方体形状に形成された箱状部材である。なお、本体部1の形状は、これに限定されない。例えば、本体部1は、略円柱状に形成された筒状部材であってもよい。本体部1は、筐体あるいはハウジングなどとも称される。
本体部1は、踵部より末端側の足部を挿入可能に形成されている。具体的には、図4に示されるように、本体部1における後方側部分(-X側部分)には、開口部18が形成されている。開口部18は、当該足部を挿入可能な大きさを有しており、被支援者は、この開口部18を通じて本体部1内(ひいては動作ユニット10内)に足部を挿入する。なお、図4等においては、開口部18と本体部1の外壁部12との間が開放されているが、これに限定されず、開口部18と本体部1の外壁部12との間は開放されていなくてもよい。
<踵部用空気圧アクチュエータユニットについて>
図4に示されるように、動作ユニット10は、動作ユニット10に足部が挿入された際に踵部を保持する踵保持部7を更に有している。
踵保持部7は、踵側部96(図1(a)参照)に対して押圧力を付加することが可能な踵部用空気圧アクチュエータ71,72と、踵部を配置するための台座部73とを有している。そして、踵保持部7は、台座部73に踵部が配置された状態で踵側部に対して押圧力を付加することによって踵部を保持する。なお、以下では、踵部用空気圧アクチュエータを、単に「踵部用アクチュエータ」とも称する。
図4に示されるように、踵部用アクチュエータ71,72は、本体部1(詳細には、開口部18)の内側において、台座部73の左右方向両側に設けられている。具体的には、踵部用アクチュエータ71は、開口部18の内側において、台座部73に踵部92が配置された際に踵側部が存在すると想定される部分の右側(+Y側)に固定されており、踵部用アクチュエータ72は、開口部18の内側において、台座部73に踵部92が配置された際に踵側部が存在すると想定される部分の左側(-Y側)に固定されている。
例えば、踵部用アクチュエータ71,72に圧縮空気が送り込まれると、踵部用アクチュエータ71,72が、互いに接近する方向に膨張する。具体的には、踵部用アクチュエータ71は、-Y側(左側)に膨張し、踵部用アクチュエータ72は、+Y側(右側)に膨張する。これにより、踵部92の幅方向両側から踵側部96に対して押圧力が付加されて踵部92が固定される。逆に、踵部用アクチュエータ71,72内の空気が排気ポンプにより排出されると、踵部用アクチュエータ71,72が互いに離反する方向に収縮する。これにより、踵側部に対する幅方向両側からの押圧力が弱まり、踵部92の固定が解除される。なお、台座部73は、本体部1の内周面のうちの下面に配置されており、本実施形態では、台座部73は、当該下面において固定されている。
後述する足関節の8つの運動(底屈運動、背屈運動、内転運動、外転運動、内返し運動、外返し運動、内反運動、外反運動)は、踵保持部7によって踵部92が保持(詳細には、固定)された状態で行われる。
<セパレート型空気圧アクチュエータユニットについて>
動作ユニット10は、セパレート型空気圧アクチュエータユニット2を更に有している。足関節の内返し運動および外返し運動は、このセパレート型空気圧アクチュエータユニット2(図5参照)によって実現される。言い換えれば、セパレート型空気圧アクチュエータユニット2は、足関節の他動運動を提供する運動支援装置100において、内返し動作と外返し動作とを提供するときに使用される。なお、以下では、セパレート型空気圧アクチュエータユニット2を、単に「セパレート型アクチュエータユニット2」とも称する。以下、セパレート型アクチュエータユニット2について図6を参照しつつ説明する。
セパレート型空気圧アクチュエータユニット2は、本体部1の内部において足部(詳細には、本体部1の内部に挿入された状態の足部)の周囲(言い換えれば、足囲)を囲うように配置されており、本体部1の内部において足部の高さ方向に対して力を作用させることが可能である。
また、セパレート型アクチュエータユニット2は、複数の空気室を有するバルーン型アクチュエータである。本実施形態に係る運動支援装置100では、セパレート型アクチュエータユニット2は、袋状の空気室をそれぞれ有する複数の空気圧アクチュエータ(例えば、6個の空気圧アクチュエータ21~26)を有している。複数の空気圧アクチュエータ21~26は、互いに分離して配置されており、「セパレート型アクチュエータ」とも称される。
本実施形態に係る複数のセパレート型アクチュエータ21~26は、いずれも、X方向を長手方向とする略三角柱状に形成されている(図5参照)。これによれば、セパレート型アクチュエータユニット2の小型化を図りつつ、足の形状に沿って足関節の内返し運動および外返し運動を支援することができる。なお、複数のセパレート型アクチュエータ21~26の形状は、これに限定されず、例えば、略四角柱状あるいは略円柱状等に形成されていてもよい。
図6に示されるように、セパレート型アクチュエータ21~23は、足部の足甲側(図6において上側)に配置されており、膨張することによって足部に対して足甲側から足底側(図6において下側)への押圧力を付加することが可能である。
より詳細には、セパレート型アクチュエータ21は、足部の足甲側において足部の幅方向の一方側(図6において-Y側)に配置されており、膨張することにより、足部の幅方向の当該一方側において、略三角柱状のセパレート型アクチュエータ21の一の側面で足甲側から足底側への押圧力を足部に付加することが可能である。セパレート型アクチュエータ22は、足部の足甲側において足部の幅方向の他方側(図6において+Y側)に配置されており、膨張することにより、足部の幅方向の当該他方側において、略三角柱状のセパレート型アクチュエータ22の一の側面で足甲側から足底側への押圧力を足部に付加することが可能である。また、セパレート型アクチュエータ23は、足部の足甲側において2つのセパレート型アクチュエータ21,22の間に配置されている。
また、セパレート型アクチュエータ24~26は、足部9の足底側(図6において下側)に配置されており、膨張することによって足部9に対して足底部94側から足甲部93側(図6において上側)への押圧力を付加することが可能である。
より詳細には、セパレート型アクチュエータ24は、足部の足底側において足部の幅方向の一方側(図6において-Y側)に配置されており、膨張することにより、足部の幅方向の当該一方側において、略三角柱状のセパレート型アクチュエータ24の一の側面で足底側から足甲側への押圧力を足部に付加することが可能である。セパレート型アクチュエータ25は、足部の足底側において足部の幅方向の他方側(図6において+Y側)に配置されており、膨張することにより、足部の幅方向の当該他方側において、略三角柱状のセパレート型アクチュエータ25の一の側面で足底側から足甲側への押圧力を足部に付加することが可能である。また、セパレート型アクチュエータ26は、足部の足底側において2つのセパレート型アクチュエータ24,25の間に配置されている。
このように、本実施形態に係る運動支援装置100においては、6個のセパレート型アクチュエータ21~26によってセパレート型アクチュエータユニット2が構成されている。
後述するように、これらのセパレート型アクチュエータ21~26の膨張および収縮を制御することにより、足部に対して種々の動作を行わせることができる。例えば、複数のセパレート型アクチュエータ21~26のうち、足甲側(本体部1の上面側)のセパレート型アクチュエータ21~23のみを膨張させる(図14(A)参照)ことにより、足部を上方から圧迫することができる。また、複数のセパレート型アクチュエータ21~26のうち、足底側(本体部1の下面側)のセパレート型アクチュエータ24~26のみを膨張させる(図14(B)参照)ことにより、足部を下方から圧迫することができる。また、複数のセパレート型アクチュエータ21~26のうち、足甲側(本体部1の上面側)における幅方向一方側のセパレート型アクチュエータを膨張させるとともに、足底側(本体部1の下面側)における幅方向他方側のセパレート型アクチュエータを膨張させる(図9参照)ことにより、足部にひねりを加えることができる。
なお、セパレート型アクチュエータユニット2を構成する複数のセパレート型アクチュエータの個数は、6個に限らず、6個より少なくてもよく、あるいは6個より多くてもよい。具体的には、少なくとも、足部の足甲側と足底側との双方且つ足部の幅方向の両側にセパレート型アクチュエータがそれぞれ配置されていればよく、すなわち、少なくとも4個のセパレート型アクチュエータが設けられていればよい。また、足甲側と足底側とで足部9に均等な押圧力が付加されることが好ましく、足甲側と足底側とにおいて同一個数のセパレート型アクチュエータが設けられていることが好ましい。
本実施形態では、足甲側の3つのセパレート型アクチュエータ21~23は、縫合等によって互いに結合されているとともに、足底側の3つのセパレート型アクチュエータ24~26も、縫合等によって互いに結合されている。これにより、セパレート型アクチュエータ21~23,24~26が膨張または収縮する際に各セパレート型アクチュエータのズレが抑制され、適切な位置で足部に対して押圧力を付加することが可能である。
また、本実施形態では、足甲側のセパレート型アクチュエータ群における幅方向端部と足底側のセパレート型アクチュエータ群における幅方向端部とが、例えば表面を覆う素材(帆布等)同士の縫合等によって互いに結合されて、セパレート型アクチュエータユニット2が製作されている。具体的には、足甲側のセパレート型アクチュエータ21と足底側のセパレート型アクチュエータ24とが縫合等によって互いに結合されているとともに、足甲側のセパレート型アクチュエータ22と足底側のセパレート型アクチュエータ25とが縫合等によって互いに結合されている。これにより、セパレート型アクチュエータユニット2に足部が挿入された状態で足関節91に対する運動支援が行われる際に当該足部が幅方向にズレることを防止でき、セパレート型アクチュエータユニット2の作用(力)を足部により的確に伝えることができる。
なお、これに限定されず、足甲側のセパレート型アクチュエータ群と足底側のセパレート型アクチュエータ群とが、互いに結合されていなくてもよい。
以上のような構成を有するセパレート型アクチュエータユニット2において、複数のセパレート型アクチュエータ21~26のそれぞれの空気室は、踵保持部7によって踵部92が保持された状態で膨張および収縮可能に制御される。これにより、足部を内返し姿勢および外返し姿勢へと変位させることができ、足関節の内返し運動および外返し運動が支援される。なお、内返し運動/外返し運動の実施時におけるセパレート型アクチュエータユニット2の詳細動作については、後述する。
<側部用空気圧アクチュエータユニットおよびスライド機構について>
動作ユニット10は、側部用空気圧アクチュエータユニット3(図6参照)およびスライド機構4(図4参照)を更に有している。足関節の内転運動および外転運動は、側部用空気圧アクチュエータユニット3およびスライド機構4によって実現される。
側部用空気圧アクチュエータユニット3は、本体部1の内部において、足部9の幅方向(図6においてY方向)に対して力を作用させることが可能な駆動機構として設けられている。側部用空気圧アクチュエータユニット3は、単に「側部用アクチュエータユニット3」とも称される。
側部用アクチュエータユニット3は、セパレート型アクチュエータユニット2に対して左側(図6において-Y側)から押圧力を付加することが可能な空気圧アクチュエータ31と、セパレート型アクチュエータユニット2に対して右側(図6において+Y側)から押圧力を付加することが可能な空気圧アクチュエータ32とを有している。空気圧アクチュエータ31は、「左側部用アクチュエータ31」とも称され、空気圧アクチュエータ32は、「右側部用アクチュエータ32」とも称される。
各空気圧アクチュエータ31,32は、エアチューブを介してコンプレッサおよび排気ポンプに接続されており、各空気圧アクチュエータ31,32の膨張および収縮は、次のようにして制御される。
具体的には、左側部用アクチュエータ31は、本体部1の内部における左側壁に固定されており、コンプレッサから左側部用アクチュエータ31の空気室に圧縮空気が送り込まれると、左側部用アクチュエータ31が右側(+Y側)に膨張する。これにより、セパレート型アクチュエータユニット2が左側(-Y側)から右側(+Y側)に向けて押圧される。この際、右側部用アクチュエータ32の空気室には圧縮空気は送られず、当該右側部用アクチュエータ32は収縮した状態である。
逆に、右側部用アクチュエータ32は、本体部1の内部における右側壁に固定されており、コンプレッサから右側部用アクチュエータ32の空気室に圧縮空気が送り込まれると、右側部用アクチュエータ32が左側(-Y側)に膨張する。これにより、セパレート型アクチュエータユニット2が右側(+Y側)から左側(-Y側)に向けて押圧される。この際、左側部用アクチュエータ31の空気室には圧縮空気は送られず、当該左側部用アクチュエータ31は収縮した状態である。
スライド機構4(図4および図5参照)は、セパレート型アクチュエータユニット2を足部9の内転方向と外転方向とにスライドさせることが可能に構成されている。スライド機構4は、本体部1の上面と下面との双方に設けられている。また、本実施形態では、スライド機構4は、本体部1の上面と下面との双方において、本体部1の前方側と後方側とにそれぞれ設けられている。以下では、本体部1の上面における前方側に設けられたスライド機構4について説明する。なお、その他の部分に設けられたスライド機構4も、以下と同様の構成を有している。
図4に示されるように、スライド機構4は、ガイド溝41とガイド部材42とを有している。
ガイド部材42は、ガイド溝41に沿ってスライド移動可能に形成されているとともに、セパレート型アクチュエータユニット2の上面に固定されて設けられている。そして、ガイド溝41に沿ってガイド部材42がスライド移動することにより、セパレート型アクチュエータユニット2がガイド溝41に沿ってスライド移動する。
本実施形態に係るガイド溝41は、本体部1の上面において台座部73(図4)を中心として円弧状に形成されている。これにより、セパレート型アクチュエータユニット2は、ガイド部材42を介して、ガイド溝41に沿って円弧状にスライド移動することが可能である(図7(A)(B)参照)。なお、図7(A)は、セパレート型アクチュエータユニット2右側にスライド移動した状態を示す図であり、図7(B)は、セパレート型アクチュエータユニット2が左側にスライド移動した状態を示す図である。
ここで、足関節の内転運動および外転運動に際して、足部は足関節を中心として内転方向および外転方向へと円弧状に変位する。そのため、ガイド溝41が図4のように円弧状に形成されていること、すなわち、セパレート型アクチュエータユニット2が台座部73を中心として円弧上にスライド移動可能に構成されていることによれば、足関節に内転運動および外転運動を行わせるにあたって、足部をより自然に変位させることが可能である。
なお、これに限定されず、例えば、ガイド溝41が、本体部1の上面においてY方向に対して平行となるように設けられていてもよい。
<回転機構について>
また、図3に示されるように、動作ユニット10は、回転機構5をも更に有している。足関節の底屈運動および背屈運動は、当該回転機構5によって実現される。
回転機構5は、背屈用空気圧アクチュエータ51と底屈用空気圧アクチュエータ52と回転軸部53と備えており、これらの要素51~53が動作することによって、本体部1が、当該本体部1に設けられた特定の部位(詳細には、回転軸部53)を回転中心として足部の底屈方向と背屈方向とに回転可能に構成されている。
具体的には、回転軸部53は、本体部1の両側壁において、足部9が当該本体部1に挿入されて台座部73に踵部が配置された状態で足関節の左右方向(幅方向)両側付近が存在すると想定される部位に設けられている。また、当該回転軸部53は、本体部1を支持する支持部60(図3参照)に対して、その回転軸を中心として回転可能に固定されている。
背屈用空気圧アクチュエータ51は、回転軸部53を中心として本体部1を背屈方向に回転させることが可能である。なお、背屈用空気圧アクチュエータ51は、単に「背屈用アクチュエータ51」とも称される。
具体的には、背屈用アクチュエータ51は、土台部6の上面61と本体部1の底面部19との間に設けられているとともに、エアチューブを介してコンプレッサおよび排気ポンプに接続されている。そして、後述するように、土台部6の上面61と本体部1の底面部19との間の背屈用アクチュエータ51が膨張することにより、本体部1の底面部19に対して上側へと向かう押圧力が付加され、本体部1自体が回転軸部53を中心として背屈方向に回転する。
底屈用空気圧アクチュエータ52は、回転軸部53を中心として本体部1を底屈方向に回転させることが可能である。なお、底屈用空気圧アクチュエータ52は、単に「底屈用アクチュエータ52」とも称される。
具体的には、底屈用アクチュエータ52は、土台部6に設けられており(図3参照)、底屈用アクチュエータ52の先端部58と本体部1の底面19とがロープ部材(不図示)によって接続されている。また、底屈用アクチュエータ52は、エアチューブを介してコンプレッサおよび排気ポンプに接続されている。そして、背屈用アクチュエータ51内の空気が排気ポンプによって排出されつつ、底屈用アクチュエータ52が膨張することにより、本体部1の底面が下側へと引っ張られ、本体部1自体が回転軸部53を中心として底屈方向に回転する。
<各空気圧アクチュエータの膨張および収縮の制御について>
運動支援装置100は、各空気圧アクチュエータの膨張および収縮を制御することが可能である。具体的には、運動支援装置100は、操作部80と制御部85とを更に備えている。
操作部80は、例えば、運動支援装置100の電源のオン、オフを指示することが可能な電源ボタン(不図示)と、底屈運動と背屈運動と内転運動と外転運動と内返し運動と外返し運動と内反運動と外反運動との8つの運動の中から任意の運動を選択することが可能な運動選択ボタン(不図示)とを備えている。電源ボタンが押下されると、例えば、運動支援装置100が後述の初期状態へと遷移する。また、運動支援装置100が初期状態に遷移した後、運動選択ボタンが押下されて上記の8つの運動の中から一の運動が選択されると、選択された運動を足部に行わせるための所定の支援動作が運動支援装置100において実行される。なお、操作部80の操作者は、被支援者の足関節の運動をサポートする人物であってもよく、被支援者自身であってもよい。
制御部(コントローラとも称される)85は、CPU、ROMおよびRAM等のメモリを有する。制御部85のROM内には、コンプレッサ、排気ポンプおよび各空気圧アクチュエータ等の制御に関する所定のプログラムが記憶されている。制御部85は、当該所定のプログラムを実行することにより、運動支援装置100の動作を制御する。図8は、本発明の一例に係る足関節の運動支援装置100の制御系を示すブロック図である。
各空気圧アクチュエータに接続されたエアチューブには、空気弁(例えば、電磁弁)が設けられており、制御部85は、コンプレッサおよび排気ポンプのみならず、各空気圧アクチュエータに対応する空気弁の開閉動作をも制御することにより、各空気圧アクチュエータの膨張および収縮を制御する。具体的には、制御部85は、各空気圧アクチュエータの膨張または収縮を同時的に実行する制御、各空気圧アクチュエータの膨張または収縮を個別のタイミングで実行する制御、または、各空気圧アクチュエータの膨張または収縮を所定の順序で実行する制御等を行う。このようにして各空気圧アクチュエータを協働的に駆動させることにより、特定の姿勢への足部の変位が実現される。
また、制御部85は、当該空気弁の開放時間等を制御することにより、各空気圧アクチュエータの空気室における空気の充填量、すなわち、各空気圧アクチュエータの膨張量を調整することが可能である。さらに、制御部85は、当該空気弁の開放度合いを制御することにより、単位時間あたりに各空気圧アクチュエータに送り込まれる圧縮空気の量、および単位時間あたりに各空気圧アクチュエータから排出される空気の量を調整することが可能である。これにより、足部等に対して押圧力を徐々に付加することができ、足部等に過大な力が加わらず、足関節の運動支援を安全に行うことが可能である。
なお、運動支援装置100において、各空気圧アクチュエータ内の圧力を検知可能な圧力センサが設けられていてもよい。そして、当該圧力センサの出力値が所定の閾値を上回ると、コンプレッサの動作を自動的に停止させる制御(あるいは、空気弁を開放状態から閉鎖状態に切り替える制御)が制御部85によって行われてもよい。また、各空気圧アクチュエータ内の圧力を検知する圧力センサのみならず、足部にかかる圧力を検知可能な圧力センサが、足部と接する空気圧アクチュエータの表面に設けられていてもよい。そして、当該圧力センサの出力値が所定の閾値を上回ると、コンプレッサの動作を自動的に停止させる制御(あるいは、空気弁を開放状態から閉鎖状態に切り替える制御)が制御部85によって行われてもよい。
<足関節の運動支援について>
以上のような構成を備える運動支援装置100において、次のようにして、足関節に8つの運動(底屈運動、背屈運動、内転運動、外転運動、内返し運動、外返し運動、内反運動および外反運動)を行わせる支援動作が実行される。
まず、被支援者は、座位または仰臥位(仰向けの姿勢)で運動支援装置100の動作ユニット10の内部に足部を挿入し、踵部を台座部73(図4参照)に配置する。なお、このとき、動作ユニット10における本体部1は、その底面部19が土台部6側に向いた姿勢、すなわち被支援者が足部9を挿入し易い姿勢となっていることが好ましい。
そして、操作者が、運動支援装置100の電源ボタンをオン(起動状態)にすると、運動支援装置100が、足関節の運動支援動作における初期状態へと遷移する。運動支援装置100の初期状態は、図3に示されるように、動作ユニット10の本体部1の底面部19が土台部6の上面に対して略垂直となっている状態である。
具体的には、まず、コンプレッサにおいて生成された圧縮空気が背屈用アクチュエータ51に送り込まれ、当該背屈用アクチュエータ51が、本体部1の底面部19が土台部6の上面に対して略垂直となるまで膨張する(図3参照)。そして、圧縮空気が踵部用アクチュエータ71,72に送り込まれて当該踵部用アクチュエータ71,72が膨張し、踵部92が固定される。
これにより、運動支援装置100が初期状態となり、初期状態の運動支援装置100において、以下のようにして8つの運動の支援動作が行われる。以下においては、被支援者の右足の足関節に8つの運動を行わせることを想定する。
なお、以下では、内返し運動、外返し運動、内転運動、外転運動、背屈運動、底屈運動、内反運動、外反運動の順に説明するが、必ずしもこの順序で8つの運動の支援動作が行われるのではなく、8つの運動の支援動作がいずれの順で行われてもよい。また、各支援動作の間においては、その都度、運動支援装置100が初期状態に戻るものとする。
<内返し運動および外返し運動について>
足関節の内返し運動(図1(e))および外返し運動(図1(f))の支援動作は、次述するように、セパレート型アクチュエータユニット2によって実現される。
まず、足関節の内返し運動について図9(A)を参照しつつ説明する。図9(A)は、足関節に内返し運動を行わせる際のセパレート型アクチュエータユニット2の動作を説明する図である。
操作者が、内返し運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、次述のようにしてセパレート型アクチュエータユニット2を制御して、足関節の内返し運動を支援する支援動作を実行する。
具体的には、制御部85は、セパレート型アクチュエータユニット2を構成する複数のセパレート型アクチュエータ21~26のうち、セパレート型アクチュエータ22,24を膨張させず、その一方で、セパレート型アクチュエータ21,23,25,26を膨張させる(図9(A)参照)。これにより、足部9の足甲部93における外側部分(-Y側部分、右足の場合は小指側部分)に対して足甲部93側から足底部94側への押圧力がセパレート型アクチュエータ21によって付加されるとともに、足部9の足底部94における内側部分(+Y側部分、右足の場合は親指側部分)に対して足底部94側から足甲部93側への押圧力がセパレート型アクチュエータ25によって付加される。言い換えれば、足底部94を身体の内側へと向ける回転力が足部9に対して付加される。
そして、押圧力を付加するセパレート型アクチュエータ21,25に対向するセパレート型アクチュエータ22,24は膨張せずに収縮していることにより、足部9が足関節を中心として内返し方向へと回転して内返し姿勢へと変位し、足関節の内返し運動が行われる。
次に、足関節の外返し運動について図9(B)を参照しつつ説明する。図9(B)は、足関節に外返し運動を行わせる際のセパレート型アクチュエータユニット2の動作を説明する図である。
操作者が、外返し運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、次述のようにしてセパレート型アクチュエータユニット2を制御して、足関節の外返し運動を支援する支援動作を実行する。
具体的には、制御部85は、セパレート型アクチュエータユニット2を構成する複数のセパレート型アクチュエータ21~26のうち、セパレート型アクチュエータ21,25を膨張させず、その一方で、セパレート型アクチュエータ22,23,24,26を膨張させる(図9(B)参照)。これにより、足部9の足甲部93における内側部分(+Y側部分、右足の場合は親指側部分)に対して足甲部93側から足底部94側への押圧力がセパレート型アクチュエータ22によって付加されるとともに、足部9の足底部94における外側部分(-Y側部分、右足の場合は小指側部分)に対して足底部94側から足甲部93側への押圧力がセパレート型アクチュエータ24によって付加される。言い換えれば、足底部94を身体の外側へと向ける回転力が足部9に対して付加される。
そして、押圧力を付加するセパレート型アクチュエータ22,24に対向するセパレート型アクチュエータ25,21は膨張せずに収縮していることにより、足部9が足関節を中心として外返し方向へと回転して外返し姿勢へと変位し、足関節の外返し運動が行われる。
なお、左足の場合も、運動支援装置100における支援動作自体は同様であり、右足の足関節に内返し運動を行わせる支援動作は、左足の足関節に外返し運動を行わせる支援動作となり、逆に、右足の足関節に外返し運動を行わせる支援動作は、左足の足関節に内返し運動を行わせる支援動作となる。
このように、本実施形態に係る運動支援装置100では、本体部1に足部9が挿入されて踵部用アクチュエータ71,72によって踵部が保持された状態で、上記のセパレート型アクチュエータ21,22,24,25のそれぞれの収縮および膨張が制御される(図9参照)。これにより、足部9を内返し方向および外返し方向へとより大きく変位させることができ、足関節に内返し運動および外返し運動をより効果的に行わせることができる。したがって、足関節の動きの多様性をより向上させることが可能である。
ここで、空気圧アクチュエータ(空気圧バルーン)を用いた足関節の運動支援装置(例えばリハビリ装置)として、足部の上下に単一のバルーンをそれぞれ配置して足部の上下それぞれのバルーン単体で足部を上下方向から圧迫すること、が考えられる。ただし、このようなバルーン単体では、上下の圧迫以外の動作を行うことができない。
これに対して、上記のセパレート型アクチュエータユニット2を用いることによれば、足部に対して上下からの力の作用を加えることができるだけでなく、特定のセパレート型アクチュエータを膨張させることで、足部にひねりを加えることもできる。すなわち、セパレート型アクチュエータユニット2のみで、足関節に内返し動作および外返し動作を提供することができる。
なお、上記のような複数のセパレート型アクチュエータ21~26のそれぞれの膨張および収縮は、セパレート型アクチュエータごとに独立して制御されてもよく、あるいは、複数のセパレート型アクチュエータ21~26全体で一括制御されてもよい。複数のセパレート型アクチュエータ21~26全体で一括制御される場合、例えば、内返し運動時の各セパレート型アクチュエータ21~26の膨張および収縮を規定した第1のパターン(図9(A)参照)と、外返し運動時の各セパレート型アクチュエータ21~26の膨張および収縮を規定した第2のパターン(図9(B)参照)とが予め設定されているとよい。そして、足関節に内返し運動を行わせる場合には、第1のパターンを用いて各セパレート型アクチュエータ21~26の膨張および収縮が一括制御され、足関節に外返し運動を行わせる場合には、第2のパターンを用いて各セパレート型アクチュエータ21~26の膨張および収縮が一括制御されるようにするとよい。
<内転運動および外転運動について>
足関節の内転運動(図1(c))および外転運動(図1(d))の支援動作は、次述するように、セパレート型アクチュエータユニット2、側部用アクチュエータユニット3およびスライド機構4によって実現される。
まず、足関節の内転運動について図10を参照しつつ説明する。図10は、足関節に内転運動を行わせる際の動作ユニット10の動作を説明する図である。
操作者が、内転運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、次述のように、セパレート型アクチュエータユニット2および側部用アクチュエータユニット3を制御して、足関節の内転運動を支援する支援動作を実行する。
具体的には、まず、制御部85は、セパレート型アクチュエータユニット2を構成する複数のセパレート型アクチュエータ21~26を膨張させる。これにより、当該セパレート型アクチュエータユニット2が足部9を挟み、当該足部9が本体部1内で固定される。この状態で、制御部85は、左側部用アクチュエータ31を膨張させる。その結果、足部9を固定した状態のセパレート型アクチュエータユニット2に対して、足部9の幅方向における左側から右側(+Y側、右足の場合は親指側)への押圧力、すなわち、足部9の内転方向への押圧力が左側部用アクチュエータ31によって付加される。なお、このとき、右側部用アクチュエータ32は収縮した状態である。
セパレート型アクチュエータユニット2は、内転方向(右側)への押圧力を左側部用アクチュエータ31から受けると、これに応じて、スライド機構4のガイド溝41に沿って内転方向(右側)へと円弧状にスライド移動する。これにより、セパレート型アクチュエータユニット2によって固定された足部9が足関節を中心として内転方向へと回転して内転姿勢へと変位し、足関節の内転運動が行われる。
次に、足関節の外転運動について図11を参照しつつ説明する。図11は、足関節に外転運動を行わせる際の動作ユニット10の動作を説明する図である。
操作者が、外転運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、次述のようにしてセパレート型アクチュエータユニット2および側部用アクチュエータユニット3を制御して、足関節の外転運動を支援する支援動作を実行する。
具体的には、まず、制御部85は、内転運動時と同様に、複数のセパレート型アクチュエータ21~26を膨張させ、これにより、本体部1の内部において、セパレート型アクチュエータユニット2によって足部9が固定される。この状態で、制御部85は、右側部用アクチュエータ32を膨張させる。その結果、足部9を固定した状態のセパレート型アクチュエータユニット2に対して、足部9の幅方向における右側から左側(-Y側、右足の場合は小指側)への押圧力、すなわち、足部9の外転方向への押圧力が右側部用アクチュエータ32によって付加される。なお、このとき、左側部用アクチュエータ31は収縮した状態である。
セパレート型アクチュエータユニット2は、外転方向(左側)への押圧力を右側部用アクチュエータ32から受けると、これに応じて、スライド機構4のガイド溝41に沿って外転方向(左側)へと円弧状にスライド移動する。これにより、セパレート型アクチュエータユニット2によって固定された足部9が足関節を中心として外転方向へと回転して外転姿勢へと変位し、足関節の外転運動が行われる。
なお、左足の場合も、運動支援装置100における支援動作自体は同様であり、右足の足関節に内転運動を行わせる支援動作は、左足の足関節に外転運動を行わせる支援動作となり、逆に、右足の足関節に外転運動を行わせる支援動作は、左足の足関節に内転運動を行わせる支援動作となる。
このように、本実施形態に係る運動支援装置100では、セパレート型アクチュエータユニット2を足部の内転方向と外転方向とにスライドさせるスライド機構4が設けられている。これにより、足関節を回転中心として足部を内転方向および外転方向へとより大きく変位させることができる。したがって、足関節に内転運動および外転運動をより効果的に行わせることが可能である。
また、本実施形態では、セパレート型アクチュエータユニット2が、側部用アクチュエータユニット3による力の作用に応じて内転方向あるいは外転方向へとスライド移動しているが、これに限定されない。例えば、スライド機構4が電気的に駆動可能に構成されており、セパレート型アクチュエータユニット2が、側部用アクチュエータユニット3による力の作用を受けることなく、内転方向あるいは外転方向へとスライド移動するように構成されていてもよい。
<底屈運動および背屈運動について>
足関節の底屈運動(図1(a))および背屈運動(図1(b))の支援動作は、次述するように、運動支援装置100の本体部1自体を底屈方向および背屈方向へと回転させることによって実現される。
まず、足関節の底屈運動について図12を参照しつつ説明する。図12は、足関節に底屈運動を行わせる際の動作ユニット10の動作を説明する図である。
操作者が、底屈運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、次述のようにしてセパレート型アクチュエータユニット2および底屈用アクチュエータ52等を制御して、足関節の底屈運動を支援する支援動作を実行する。
具体的には、まず、制御部85は、複数のセパレート型アクチュエータ21~26を膨張させ、セパレート型アクチュエータユニット2で足部を挟むことにより、足部を本体部1内で固定する(不図示)。この状態で、制御部85は、初期状態における背屈用アクチュエータ51を収縮させつつ、底屈用アクチュエータ52を膨張させる(図12参照)。これにより、底屈用アクチュエータ52と本体部1とを接続するベルト部材(不図示)が本体部1の底面19を下方側へと引っ張り、本体部1が、回転軸部53を中心として底屈方向(下側)に回転する。その結果、本体部1に挿入された足部が足関節を中心として底屈方向へと回転して底屈姿勢へと変位し、足関節の底屈運動が行われる。
なお、底屈運動を支援する支援動作に際して、セパレート型アクチュエータユニット2が補助的に動作するように制御されると尚よい。具体的には、足関節の底屈運動に際して、6つのセパレート型アクチュエータ21~26のうち、足底側のセパレート型アクチュエータ24~26を収縮させつつ(あるいは、比較的小さな膨張量で膨張させつつ)、足甲側のセパレート型アクチュエータ21~23を膨張させる(図14(A)参照)ように制御されると尚よい。すなわち、本体部1を底屈方向へと回転させつつも、さらに、本体部1の内部において足部を足底側(下方側)に圧迫して底屈方向へと変位させる動作が行われるとよい。これによれば、足関節の底屈運動をさらに効果的に支援することが可能である。
次に、足関節の背屈運動について図13を参照しつつ説明する。図13は、足関節に背屈運動を行わせる際の動作ユニット10の動作を説明する図である。
操作者が、背屈運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、次述のようにしてセパレート型アクチュエータユニット2および背屈用アクチュエータ51等を制御して、足関節の背屈運動を支援する支援動作を実行する。
具体的には、まず、制御部85は、底屈運動時と同様に、複数のセパレート型アクチュエータ21~26を膨張させ、これにより、本体部1の内部において、セパレート型アクチュエータユニット2によって足部が固定される(不図示)。この状態で、制御部85は、初期状態における背屈用アクチュエータ51をさらに膨張させる(図13参照)。これにより、本体部1が、回転軸部53を中心として背屈方向(上側)に回転する。その結果、当該本体部1に挿入された足部が足関節を中心として底屈方向へと回転して背屈姿勢へと変位し、足関節の背屈運動が行われる。
このように、本実施形態に係る運動支援装置100では、本体部1が、回転軸部53を回転中心として足部の底屈方向および背屈方向に回転可能に構成されており、本体部1自体が底屈方向および背屈方向に回転することによって、足関節の底屈運動および背屈運動が行われる。したがって、本体部1の内部で足関節に底屈運動および背屈運動を行わせる場合と比較して、運動支援装置100における本体部1の小型化を図ることが可能である。
なお、背屈運動を支援する支援動作に際して、セパレート型アクチュエータユニット2が補助的に動作するように制御されると尚よい。具体的には、足関節の背屈運動に際して、6つのセパレート型アクチュエータ21~26のうち、足甲側のセパレート型アクチュエータ21~23を収縮させつつ(あるいは、比較的小さな膨張量で膨張させつつ)、足底側のセパレート型アクチュエータ24~26を膨張させる(図14(B)参照)ように制御されると尚よい。すなわち、本体部1を背屈方向へと回転させつつも、さらに、本体部1の内部において足部を足甲側(上方側)に圧迫して背屈方向へと変位させる動作が行われるとよい。これによれば、足関節の背屈運動をさらに効果的に支援することが可能である。
<内反運動および外反運動について>
足関節の内反運動(図1(g))および外反運動(図1(h))は、次述するように、上記の運動を支援する要素が複合的に動作することにより実現される。
まず、足関節の内反運動について説明する。上述したように、内反運動は、内返し運動と内転運動と底屈運動との複合運動である。
操作者が、内反運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、足関節に内返し運動を行わせるための支援動作と、足関節に内転運動を行わせるための支援動作と、足関節に底屈運動を行わせるための支援動作とを動作ユニット10に実行させる。なお、これらの支援動作は、順次実行されてもよく、あるいは、同時に実行されてもよい。
例えば、セパレート型アクチュエータユニット2が制御されることにより、足部9が内返し姿勢へと変位し(図9(A)参照)、この状態で、側部用アクチュエータユニット3が制御されることにより、セパレート型アクチュエータユニット2がスライド機構4のガイド溝41に沿って内転方向へとスライド移動する(図10も参照)。さらに、底屈用アクチュエータ52が制御されることにより、本体部1自体が回転軸部53を回転中心として底屈方向に回転する(図12参照)。これにより、足部が内反姿勢へと変位し、足関節の内反運動が行われる。
次に、足関節の外反運動について説明する。上述したように、外反運動は、外返し運動と外転運動と背屈運動との複合運動である。
操作者が、外反運動に対応する運動選択ボタンを押下すると、制御部85は、足関節に外返し運動を行わせるための支援動作と、足関節に外転運動を行わせるための支援動作と、足関節に背屈運動を行わせるための支援動作とを動作ユニット10に実行させる。なお、これらの支援動作は、順次実行されてもよく、あるいは、同時に実行されてもよい。
例えば、セパレート型アクチュエータユニット2が制御されることにより、足部9が外返し姿勢へと変位し(図9(B)参照)、この状態で、側部用アクチュエータユニット3が制御されることにより、セパレート型アクチュエータユニット2がスライド機構4のガイド溝41に沿って外転方向へとスライド移動する(図11も参照)。そして、背屈用アクチュエータ51が制御されることにより、本体部1自体が回転軸部53を回転中心として背屈方向に回転する(図13参照)。これにより、足部が外反姿勢へと変位し、足関節の外反運動が行われる。
上述したように、本実施形態に係る運動支援装置100では、セパレート型アクチュエータユニット2が設けられていることによって、足関節に内返し運動および外返し運動をより効果的に行わせることができる。その結果、足関節に内反運動および外反運動をもより効果的に行わせることが可能である。
ここで、上述したように、足関節には、底屈、背屈、内転、外転、内返し、外返し、内反、外反の8種類の動作があり、療法士による他動運動では、底屈、背屈、内反および外反の4種類の動作が提供されている。これらの動作のうち、内反は、底屈と内転と内返しとの3種類の動作の複合動作であり、外反は、背屈と外転と外返しとの3種類の動作の複合動作である。つまり、複合動作では、3つの方向に足関節を回転させなければならず、運動支援装置を用いて複合動作を提供する場合でも、この3種類の動作がすべて行われなければならない。
本実施形態に係る運動支援装置100では、足部の上下に設置したアクチュエータのみで足関節の内返し運動および外返し運動を実現できるシンプルな構成であるため、他の2動作を提供しやすくなり、その結果、複合動作を実現しやすくなる。また、空気圧アクチュエータ(空気圧バルーン)による圧迫は、圧迫によるマッサージおよび筋肉のストレッチを行いやすい、という効果も得られる。
<比較例に係る運動支援装置との比較実験>
つぎに、本発明の一例に係る運動支援装置100と比較例に係る運動支援装置との比較実験を行い、その比較結果を以下に示す。なお、比較例に係る運動支援装置(以下、旧型運動支援装置、とも称する)としては、上記の特許文献1に示されている運動支援装置を例示する。
比較実験では、比較実験では、5名の被験者に双方の運動支援装置を体験させ、旧型運動支援装置による足関節の運動支援(ROM訓練動作、とも称する)に対して本発明の一例に係る運動支援装置100によるROM訓練動作の優位性を検証するために、各動作の達成度に対してウィルコクソンの順位和検定を行った。なお、検定は片側検定とし、優位水準は5%とする。また、達成度は、運動支援装置を用いずに手動で支援運動を行わせた際の足関節の可動域R1に対する、運動支援装置を用いて支援運動を行わせた際の足関節の可動域R2の比率R(=R2/R1)である。
図15(A)は、各動作のウィルコクソンの順位和検定結果を示す図であり、図15(A)においては、各動作の達成度から算出された検定統計量Uと有意差の有無とが示されている。なお、旧型運動支援装置と本発明の運動支援装置100とは、いずれもn=5であるため、検定統計量の棄却限界値は値「4」である。そのため、検定統計量Uが値「4」以下(U≦4)のとき、帰無仮説を棄却し、有意差「あり」となる。
また、各動作の達成度から算出された順位和と有意差の有無とをまとめたグラフが図14(B)に示されている。図15(B)に示されるように、実験の結果、本発明に係る運動支援装置100は、旧型運動支援装置と比較して、背屈動作、内反動作時の内返し動作、および外反動作時の外返し動作の達成度に有意差があり、旧型運動支援装置に対して改善していると言える。
以上の比較実験の結果からも、本発明の一例に係る運動支援装置100によれば足関節における支援運動をより効果的に行うことが可能であること、がわかる。
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
(1)上記の実施形態に係る運動支援装置100において、さらに、踵保持部7が、足部が当該足部の幅方向へと移動する際に当該幅方向における足部の移動方向とは反対側へと踵部を移動させることが可能に構成されていてもよい。
ここで、例えば足関節に内転運動を行わせる際には、足部を当該足部の幅方向における内側に移動させるだけでなく、踵部を外側に移動させることにより、足部を内転方向へとより大きく変位させることができ、足関節の内転運動を更に効果的に行うことができる。同様に、足関節に外転運動を行わせる際には、足部を当該足部の幅方向における外側に移動させるだけでなく、踵部を内側に移動させることにより、足部を外転方向へとより大きく変位させることができ、足関節の外転運動を更に効果的に行うことができる。本変形例は、このような点に着目したものである。
例えば、踵部92を配置するための台座部73(図4参照)が、足部9の幅方向へと移動自在に構成されていてもよい。
そして、例えば右足の足関節に内転運動を行わせる際には、制御部85は、右側の踵部用アクチュエータ71を左側の踵部用アクチュエータ72よりも大きく膨張させる。その結果、台座部73とともに踵部が左側(足部の幅方向における当該足部の移動方向とは反対側)へと移動する。すなわち、足部は幅方向の内側(+Y側)に移動しつつ、踵部は幅方向の外側(足部の幅方向における当該足部の移動方向とは反対側)(-Y側)に移動する。これにより、踵部の移動が規制されている場合と比較して、足部を内転方向へとより大きく変位させることができ、足関節の内転運動外転運動を更に効果的に行うことが可能である。
また、例えば右足の足関節に外転運動を行わせる際には、制御部85は、左側の踵部用アクチュエータ72を右側の踵部用アクチュエータ71よりも大きく膨張させる。その結果、台座部73とともに踵部が右側(足部の幅方向における当該足部の移動方向とは反対側)へと移動する。すなわち、足部は幅方向の外側(-Y側)に移動しつつ、踵部は幅方向の内側(足部の幅方向における当該足部の移動方向とは反対側)(+Y側)に移動する。これにより、踵部の移動が規制されている場合と比較して、足部を外転方向へとより大きく変位させることができ、足関節の外転運動を更に効果的に行うことが可能である。
(2)また、例えば足関節に底屈運動を行わせる際には、足部を足底側に移動させるだけでなく、踵部を足首側に移動させることにより、足部を底屈方向へとより大きく変位させることができ、足関節の底屈運動を更に効果的に行うことができる。同様に、足関節に背屈運動を行わせる際には、足部を足甲側に移動させるだけでなく、踵部を足部の末端側に移動させることにより、足部を背屈方向へとより大きく変位させることができ、足関節の背屈運動を更に効果的に行うことができる。
この点に着目して、踵保持部7が、足甲側へと足部が移動する際には踵部を足部の末端側へと移動させるとともに、足底側へと足部が移動する際には踵部を足部の足首側へと移動させることが可能に構成されていてもよい。
例えば、踵部92を配置するための台座部73(図4参照)が、前後方向(X方向)へと移動自在に構成されていてもよい。
そして、例えば足関節において底屈運動が行われる際には、本体部1自体が底屈方向へと回転して足部が足底側(本体部1の下面側)へと移動し、台座部73とともに踵部が後方側(足部の足首側)へと移動する。これにより、踵部の移動が規制されている場合と比較して、足部を底屈方向へとより大きく変位させることができ、足関節に底屈運動を更に効果的に行わせることが可能である。
また、例えば足関節において背屈運動が行われる際には、本体部1自体が背屈方向へと回転して足部が足甲側(本体部1の上面側)へと移動し、台座部73とともに踵部が前方側(足部の末端側)へと移動する。これにより、踵部の移動が規制されている場合と比較して、足部を背屈方向へとより大きく変位させることができ、足関節に背屈運動を更に効果的に行わせることが可能である。
(3)また、上記の実施形態では、空気室をそれぞれ有する複数の空気圧アクチュエータ21~26によってセパレート型アクチュエータユニット2が構成されている(図6参照)が、これに限定されない。例えば、複数の空気室を有する単一の空気圧アクチュエータ(不図示)によってセパレート型アクチュエータユニット2が構成されていてもよい。具体的には、単一の空気圧アクチュエータの内部が壁で仕切られることによって、当該単一の空気圧アクチュエータの内部に複数の空気室が形成されていてもよい。
(4)また、上記の実施形態では、本体部1自体を底屈方向および背屈方向へと回転させることによって足関節の底背屈運動の支援動作が実行されているが、これに限定されない。例えば、本体部1の内部に別途の空気圧アクチュエータを設けて、本体部1の内部で足関節の底背屈運動の支援動作が実行されてもよい。