JP7361909B2 - 硬化シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、硬化シート及びその製造方法に関する。
パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、CPU等の電子部品においては、使用時に発生する熱を効率的に放熱することが課題となっている。この課題に対して、熱伝導率が高いセラミックス粉末を含有する放熱部材が用いられる。
セラミックス粉末としては、高熱伝導率、高絶縁性、低比誘電率等の特性を有している窒化ホウ素粉末が注目されている。窒化ホウ素粉末は、一般的に、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる凝集粒子(塊状粒子)で構成されている。例えば、特許文献1には、凝集粒子の形状を一層球状化して充填性を高めると共に、粉末強度の向上を図り、さらには高純度化により、当該粉末を充填した伝熱シート等の絶縁性の向上および耐電圧の安定化を達成したとされる六方晶窒化ホウ素粉末が開示されている。
特開2011-98882号公報
塊状窒化ホウ素粒子を伝熱シート等のシートに用いる場合、当該シートの熱伝導率の向上と耐電圧の向上とを同時に達成することが求められることがある。熱伝導率を向上させる方法の一つとして、強度が高い塊状窒化ホウ素粒子をできる限り多く用いることにより、シートの製造過程において塊状窒化ホウ素粒子を崩れにくくし、得られるシート内の熱の伝導経路を多く確保することが考えられる。しかし、強度が高い塊状窒化ホウ素粒子を多く用いると、得られるシートの熱伝導率は向上するものの、シート中にボイドが発生しやすくなるため、耐電圧が低下しやすい。つまり、シートの熱伝導率及び耐電圧を両立することは、必ずしも容易でない。
そこで、本発明は、一側面において、熱伝導率及び耐電圧を両立できるシートを製造することを目的とする。
本発明者らの検討によれば、強度が高い塊状窒化ホウ素粒子を多く含むシートの製造において、塊状窒化ホウ素粒子を敢えて適度に崩すことにより、熱伝導率の向上に加えて、最終的に得られるシート中のボイドを減らすことができ、結果として、耐電圧の向上も可能になることが判明した。
本発明の一側面は、樹脂を含む樹脂組成物と、圧壊強度が6MPa以上の塊状窒化ホウ素粒子とを混合して混合物を得る第1の工程と、混合物をシート状に成形すると共に、混合物中の樹脂を半硬化させて半硬化シートを得る第2の工程と、半硬化シートに対して7MPa以上で加圧すると共に、半硬化シート中の樹脂を更に硬化させて硬化シートを得る第3の工程と、を備え、塊状窒化ホウ素粒子の配合量が、前記塊状窒化ホウ素粒子及び前記樹脂組成物中の不揮発分の配合量の合計100体積部に対して40体積部以上である、硬化シートの製造方法である。
第1の工程は、樹脂組成物と塊状窒化ホウ素粒子とを混練して第1の組成物を得る第1の混練工程と、第1の組成物を脱気する脱気工程と、脱気後の第1の組成物を混練して第2の組成物を得る第2の混練工程と、を含んでよい。
半硬化シートにおいて、半硬化させた樹脂は、塊状窒化ホウ素粒子の内部に充填されていてよく、塊状窒化ホウ素粒子同士の間に空隙が形成されていてよい。
本発明の他の一側面は、樹脂の硬化物と、塊状窒化ホウ素粒子と、を含有する硬化シートであって、硬化シートの断面において、厚み100μmあたりの塊状窒化ホウ素粒子の粒界の数が2以上5以下であり、硬化シートの耐電圧が30kV/mm以上である、硬化シートである。
硬化シートの任意の5個の断面について、SEMにより倍率300倍で100μm×100μmの範囲を観察したときに、塊状窒化ホウ素粒子間にボイドが発生している断面が0個であってよい。
本発明の一側面によれば、優れた熱伝導率及び耐電圧を両立できるシートを製造することができる。
ボイドが発生している硬化シートの断面のSEM像の一例である。 実施例1の半硬化シートの断面を観察したSEM像である。 実施例1の硬化シートの断面を観察したSEM像である。 比較例1の硬化シートの断面を観察したSEM像である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、樹脂組成物と塊状窒化ホウ素粒子とを混合して混合物を得る第1の工程と、混合物をシート状に成形すると共に、混合物中の樹脂を半硬化させて半硬化シートを得る第2の工程と、半硬化シートに対して加圧すると共に、半硬化シート中の樹脂を更に硬化させて硬化シートを得る第3の工程と、を備える、硬化シートの製造方法である。
第1の工程で用いられる樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含む。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、及び不飽和ポリエステルが挙げられる。
第1の工程で用いられる塊状窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素一次粒子の凝集体である。窒化ホウ素一次粒子は、例えば鱗片状の六方晶窒化ホウ素粒子であってよい。この場合、窒化ホウ素一次粒子の長手方向の長さは、例えば、1μm以上であってよく、10μm以下であってよい。このような塊状窒化ホウ素粒子は、公知の方法により製造できる。
第1の工程で用いられる塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、硬化シートの熱伝導率を向上させる観点から、50μm以上であり、当該効果が更に得られやすくなる観点から、好ましくは、60μm以上、70μm以上、又は80μm以上である。塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、例えば150μm以下であってよい。
第1の工程で用いられる塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定される。具体的な測定方法は、以下のとおりである。
まず、0.125質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液80mLに塊状窒化ホウ素粒子0.1gを分散させた分散液を用意する。続いて、当該分散液についてホモジナイザーをかけずに、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、「LS-13 320」)を用いて粒度分布を測定する。このとき、水の屈折率としては1.33、窒化ホウ素粉末の屈折率としては1.7を用いる。そして、累積粒度分布の累積値50体積%の粒径(メジアン径、d50)を算出し、当該粒径(メジアン径、d50)を塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径とする。
第1の工程で用いられる塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度は、硬化シートの熱伝導率を向上させる観点から、6MPa以上であり、当該効果が更に得られやすくなる観点から、好ましくは、7MPa以上、8MPa以上、10MPa以上、又は12MPa以上である。塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度は、例えば、15MPa以下、12MPa以下、10MPa以下、又は8MPa以下であってよい。第1の工程で用いられる塊状窒化ホウ素粒子の圧壊強度は、JIS R1639-5:2007に従って測定される圧壊強度(粒子強度、単一顆粒圧壊強さとも呼ばれる)を意味する。より具体的には、圧壊強度(σ:単位MPa)は、粒子内の位置によって変化する無次元数(α=2.48:単位なし)と圧壊試験力(P:単位N)と粒子径(d:単位μm)から、σ=α×P/(π×d)の式を用いて算出される。
樹脂組成物は、樹脂に加えて、必要に応じてその他の成分を更に含んでもよい。その他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤(硬化触媒)、カップリング剤、湿潤分散剤、表面調整剤、及び溶媒が挙げられる。なお、本明細書では、樹脂組成物中の溶媒以外の成分を「不揮発分」と呼ぶ。
硬化剤は、樹脂の種類によって適宜選択される。例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、フェノールノボラック化合物、酸無水物、アミノ化合物、及びイミダゾール化合物が挙げられる。硬化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上又は1.0質量部以上であってよく、15質量部以下又は10質量部以下であってよい。
硬化促進剤(硬化触媒)としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルフォスフェイト等のリン系硬化促進剤、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤、及び、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のアミン系硬化促進剤が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤が挙げられる。これらのカップリング剤に含まれる化学結合基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、及びメルカプト基が挙げられる。
湿潤分散剤としては、例えば、リン酸エステル塩、カルボン酸エステル、ポリエステル、アクリル共重合物、及びブロック共重合物が挙げられる。
表面調整剤としては、例えば、アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、ビニル系調整剤、及びフッ素系表面調整剤が挙げられる。
溶媒は、例えば樹脂を溶解させる溶媒であってよい。溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、芳香族系溶剤、及びケトン系溶剤が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール及びジアセトンアルコールが挙げられる。グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチルセロソルブ及びブチルセロソルブが挙げられる。芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン及びキシレンが挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが挙げられる。
塊状窒化ホウ素粒子の配合量は、塊状窒化ホウ素粒子及び樹脂組成物中の不揮発分の配合量の合計100体積部に対して、硬化シートの熱伝導率を向上させる観点から、40体積部以上であり、当該効果が更に得られやすくなる観点から、好ましくは、45体積部以上、50体積部以上、55体積部以上、又は60体積部以上であり、例えば、80体積部以下であってもよい。
第1の工程では、得られる混合物に含まれる塊状窒化ホウ素粒子内の隙間(複数の窒化ホウ素一次粒子により形成されている隙間)の全体積(言い換えれば、第1の工程で使用される塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の全体積)に対する樹脂組成物中の不揮発分の体積を適切に設定することが好ましい。これにより、硬化シートの耐電圧を向上させることができる。樹脂組成物中の不揮発分の体積は、混合物に含まれる塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の全体積に対して、0.9~1.1倍であり、硬化シートの耐電圧を更に向上させる観点から、好ましくは0.92倍以上、より好ましくは0.95倍以上、更に好ましくは0.98倍以上の体積であり、好ましくは1.08倍以下、より好ましくは1.05倍以下、更に好ましくは1.02倍以下の体積である。
塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の体積は、細孔分布測定装置(例えば、島津製作所-マイクロメリティックス社製「オートポア V9620」)により測定される。具体的には、塊状窒化ホウ素粒子(体積V=約0.088cm)を粉体用セル(例えば5cm)に採取し、初期圧7kPa(1.0psia、細孔直径180μm相当)の条件で測定する。水銀パラメータは、装置デフォルトの水銀接触角130degrees、水銀表面張力485dynes/cmに設定する。得られる細孔分布において、5μm未満の細孔は塊状窒化ホウ素粒子内の空隙に相当(5μm以上の細孔は塊状窒化ホウ素粒子間の空隙に相当)するものとして、5μm未満の細孔体積を、塊状窒化ホウ素粒子体積Vあたりの粒子内の隙間の体積と定義する。
また、樹脂組成物の30℃における粘度は、得られる半硬化シートにおいて、樹脂の半硬化物が塊状窒化ホウ素粒子の内部に更に好適に充填されると共に、塊状窒化ホウ素粒子同士の間に空隙が更に好適に形成される観点から、好ましくは10Pa・s以下、より好ましくは5Pa・s以下、更に好ましくは1Pa・s以下である。当該粘度は、回転式粘度計を用いて、せん断速度10(1/秒)の条件で測定される。
第1の工程は、好ましくは、樹脂組成物と塊状窒化ホウ素粒子とを混練して第1の組成物を得る第1の混練工程と、第1の組成物を脱気する脱気工程と、脱気後の第1の組成物を混練して第2の組成物を得る第2の混練工程と、を含んでいる。第1の工程がこれらの工程を含むことにより、得られる硬化シートにおけるボイドの発生を特に抑制できる。
第1の混練工程及び第2の混練工程では、常法により、樹脂組成物と塊状窒化ホウ素粒子との混練、又は脱気後の第1の組成物の混練が行われる。
脱気工程では、例えば、第1の組成物を真空(例えば500Pa以下の圧力)下に置くことにより、第1の組成物中の空気を除去することができる。
第2の工程では、例えば、まず、第1の工程で用意した組成物(第2の組成物)をシート状に成形する。具体的には、例えば、フィルムアプリケーターを用いて、当該組成物を基材上に塗工することにより、シート(未硬化シート)を得ることができる。続いて、未硬化シート中の樹脂を半硬化させることで、半硬化シートが得られる。樹脂を半硬化させる方法は、樹脂(及び必要に応じて用いられる硬化剤)の種類に応じて常法から適宜選択される。例えば、樹脂がエポキシ樹脂であり、上述した硬化剤が共に用いられる場合、第2の工程では、加熱により樹脂を硬化させることができる。この場合、加熱温度及び加熱時間を調整することにより、樹脂を半硬化させることができる。樹脂組成物が溶媒を含む場合は、第2の工程において、樹脂を半硬化させると共に、当該溶媒を揮発させてもよい。
樹脂が半硬化した状態(Bステージともいう)とは、その後の硬化処理によって、更に硬化させることができる状態を意味する。言い換えれば、半硬化させた樹脂(以下「樹脂の半硬化物」ともいう)は、硬化した樹脂と未硬化の樹脂との両方を含んでいる。樹脂が半硬化した状態であることは、例えば、示差走査熱量測定にて発熱ピークが観察されることにより確認することができる。樹脂の半硬化物は、更に硬化処理をすることで完全硬化(Cステージともいう)の状態になり得る。
この半硬化シートにおいて、樹脂の半硬化物は、塊状窒化ホウ素粒子のそれぞれの内部に充填されている。樹脂の半硬化物が塊状窒化ホウ素粒子の内部に充填されていることは、半硬化シートの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで確認できる。半硬化シートは、塊状窒化ホウ素粒子の内部に充填されている樹脂の半硬化物に加えて、複数の塊状窒化ホウ素粒子同士を結着させるように、複数の塊状窒化ホウ素粒子間に配置された樹脂の半硬化物が更に含有してよい。
樹脂の半硬化物は、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間(複数の窒化ホウ素一次粒子により形成されている隙間)のできる限り多くに充填されていることが好ましい。半硬化シートの断面をSEMにより観察したときに、塊状窒化ホウ素粒子内の樹脂の半硬化物が充填されている面積に対する、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の面積の割合は、好ましくは10面積%以下、より好ましくは5面積%以下、更に好ましくは3面積%以下である。当該割合は、半硬化シートの任意の5個の断面をSEMにより200倍で観察し、各断面における5粒の窒化ホウ素粒子について上記割合を算出し、算出された割合の平均値(計25粒の窒化ホウ素粒子における割合の平均値)として求められる。
半硬化シートにおいて、複数の塊状窒化ホウ素粒子同士の間には空隙が形成されている。複数の塊状窒化ホウ素粒子同士の間には空隙が形成されていることは、半硬化シートの断面をSEMにより観察することで確認できる。
半硬化シートの断面をSEMにより観察したときに、樹脂の半硬化物及び塊状窒化ホウ素粒子の面積A1と塊状窒化ホウ素粒子間の空隙の面積A2との合計に対する、樹脂の半硬化物及び塊状窒化ホウ素粒子の面積A1の比(A1/(A1+A2))は、例えば、0.4以上、0.55以上、又は0.6以上であってよく、0.85以下、0.8以下、又は0.7以下であってよい。
当該比は、以下の手順により測定される。
まず、渦電流式膜厚計(DeFelsko社、PosiTestor 6000)を用いて、半硬化シートにおける5点の膜厚を測定し、それらの平均値を半硬化シートの膜厚とする。続いて、半硬化シートの任意の5個の断面をSEMにより倍率:200倍で観察し、SEM像を取得する。得られた各断面のSEM像において、半硬化シートの膜厚方向の両端のそれぞれから、上記で測定された半硬化シートの膜厚の5%の位置に、仮想線(半硬化シートの膜厚方向と垂直な線)を2本引く。これにより、当該2本の仮想線で挟まれた仮想的なシート(上記で測定された半硬化シートの膜厚の90%の厚さを有する仮想的なシート)を規定する。そして、(当該仮想的なシートの膜厚に相当する長さ)×300μmの範囲で、上記のA1/(A1+A2)を算出し、5個の断面において算出されたA1/(A1+A2)の平均値として上記比が定義される。
半硬化シートでは、上述したとおり、塊状窒化ホウ素粒子間の空隙が意図的に形成されている一方で、意図せずに混入した気泡はほぼ含まれていない。つまり、複数の塊状窒化ホウ素粒子同士の間に形成された空隙は、気泡(樹脂の半硬化物のマトリックス中に存在する(樹脂の半硬化物のマトリックスに囲まれた)気泡)を含まない。
半硬化シート中に含まれる気泡がきわめて少ないことは、半硬化シートの断面をSEMにより観察することで確認できる。具体的には、半硬化シートに気泡が含まれる場合、当該気泡は、上記の空隙よりも広範囲にわたって(より多くの塊状窒化ホウ素粒子にまたがって)存在するため、半硬化シートの断面に占める樹脂の半硬化物及び塊状窒化ホウ素粒子の面積が小さくなる(例えば30面積%以下になる)。この半硬化シートでは、半硬化シートの任意の5個の断面を観察したときに、1個の断面に占める樹脂の半硬化物及び複数の塊状窒化ホウ素粒子の面積が30面積%以下となる断面が0個である。このような半硬化シートを用いると、絶縁性及び熱伝導性の点で更に優れる硬化シートを得ることができる。
半硬化シートの厚みは、例えば、50μm以上、80μm以上、又は100μm以上であってよく、1000μm以下、800μm以下、600μm以下、400μm以下、300μm以下、又は200μm以下であってよい。
第3の工程では、半硬化シートに対して加圧する。このときの圧力は、半硬化シート中の塊状窒化ホウ素粒子を敢えて適度に崩す程度の圧力である。これにより、加圧に伴って、樹脂(特に半硬化シートにおいて塊状窒化ホウ素粒子の内部に充填されている樹脂)がシート全体にいきわたり、結果として、得られる硬化シートの耐電圧が向上する。具体的な圧力は、7MPa以上であり、好ましくは、8MPa以上、10MPa以上、又は12MPa以上であってよく、16MPa以下、12MPa以下、又は10MPa以下であってよい。
第3の工程では、加圧に加えて、半硬化シート中の樹脂を更に硬化させることで、硬化シートが得られる。硬化シート中の樹脂は、完全に硬化した状態であってもよく、一部未硬化の樹脂を含んでいてもよい。樹脂を更に硬化させる方法は、樹脂(及び必要に応じて用いられる硬化剤)の種類に応じて常法から適宜選択される。例えば、樹脂がエポキシ樹脂であり、上述した硬化剤が共に用いられる場合、第3の工程では、加熱により樹脂を硬化させることができる。この場合の加熱温度は、例えば、100℃以上であってよく、250℃以下であってよい。
硬化シートの厚みは、例えば、50μm以上、80μm以上、又は100μm以上であってよく、1000μm以下、800μm以下、600μm以下、400μm以下、300μm以下、又は200μm以下であってよい。
以上の製造方法により得られる硬化シートは、一実施形態において、樹脂の硬化物と、塊状窒化ホウ素粒子と、を含有する。
樹脂の硬化物は、例えば、上述した樹脂組成物の不揮発分を硬化させた硬化物であってよい。樹脂の硬化物は、完全に硬化した状態であってもよく、未硬化の樹脂を含んでいてもよい。
硬化シート中の樹脂の硬化物の含有量は、硬化シートの全体積を基準として、例えば、40体積%以上又は45体積%以上であってよく、60体積%以下又は55体積%以下であってよい。
硬化シート中の塊状窒化ホウ素粒子の含有量は、硬化シートの全体積を基準として、例えば、40体積%以上又は45体積%以上であってよく、60体積%以下又は55体積%以下であってよい。
硬化シート中の塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、硬化シートの熱伝導率を向上させる観点から、45μm以上であり、当該効果が更に得られやすくなる観点から、好ましくは、50μm以上、55μm以上、又は60μm以上である。硬化シート中の塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、例えば150μm以下又は120μm以下であってよい。
硬化シート中の平均粒子径は、以下の手順により求められる。すなわち、硬化シートの断面のSEM像において、5個の塊状窒化ホウ素粒子について最大長さをそれぞれ測定する。この最大長さの測定を硬化シートの異なる断面のSEM像5枚について行い、測定されたすべての塊状窒化ホウ素粒子(計25粒)の最大長さの平均値として、硬化シート中の平均粒子径が求められる。
この硬化シートでは、硬化シートの断面において、厚み100μmあたりの塊状窒化ホウ素粒子の粒界の数が2以上5以下である。これは、塊状窒化ホウ素粒子が製造過程において崩れつつも元の形状をある程度保持していること、及び、硬化シート中に一定以上の量の塊状窒化ホウ素粒子が含まれていることを意味する。当該粒界の数は、以下の手順により求められる。すなわち、硬化シートの断面のSEM像において、硬化シートの厚み方向に任意の直線を5本引き、各直線の長さ(すなわち硬化シートの厚み)と、各直線に交わる粒界の数を測定し、厚み100μmあたりの粒界の数を各直線について算出する。この厚み100μmあたりの粒界の数の算出を硬化シートの異なる断面のSEM像5枚について行い、測定されたすべての直線における厚み100μmあたりの粒界の数の平均値として、硬化シート中の上記粒界の数が求められる。当該粒界の数は、2以上、2.5以上、又は3以上であってもよく、5以下、4.5以下、又は4以下であってもよい。
この硬化シートでは、塊状窒化ホウ素粒子がある程度崩れているため、塊状窒化ホウ素粒子の配向度は、例えば、5.5以上、6以上、又は6.5以上となっていてよく、8以下、7.5以下、又は7以下となっていてよい。配向度は、X線回折装置(例えば、Ultima IV-N)を用いて測定されるX線回折ピークより算出される(002)面のピーク強度/(100)面のピーク強度として定義される。
この硬化シートは、上記のように圧壊強度の高い塊状窒化ホウ素粒子を所定量以上含んでいながら、高い耐電圧を達成できる。硬化シートの耐電圧は、30kV/mm以上であり、高いほど好ましくは、例えば、33kV/mm以上、35kV/mm以上、又は40kV/mm以上であってもよい。硬化シートの耐電圧は、耐電圧試験機(例えば、菊水電子工業製 TOS5101)を用いて、JIS C2110-1に従って測定される、耐電圧の最小値を意味する。
この硬化シートでは、ボイドの発生も抑制され得る。具体的には、硬化シートの任意の5個の断面について、SEMにより倍率300倍で100μm×100μmの範囲を観察したときに、塊状窒化ホウ素粒子間にボイドが発生している断面が0個である。本明細書において、ボイドとは、円相当径が10μm以上の空隙を意味する。なお、円相当径とは、硬化シートの断面のSEM像におけるボイドの面積と等しい面積を有する円を仮定したときに、当該円の直径を意味する。図1には、ボイドが発生している硬化シートの断面のSEM像の一例を示す。
以上説明した硬化シートは、熱伝導率及び耐電圧の両立が可能であるため、絶縁シート、熱伝導シート(放熱シート)等として好適に用いられる。
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
塊状窒化ホウ素粒子(平均粒子径:85μm、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の体積:50体積%、圧壊強度:7MPa)100体積部と、エポキシ樹脂(DIC社製、製品名:HP4032)41.5体積部と、硬化剤(DIC社製、製品名:VH4150)5.1体積部と、2種の硬化促進剤(硬化触媒)(北興化学社製、製品名:TPP)0.3体積部及び(四国化成工業社製、製品名:2PHZ-PW)0.5体積部と、カップリング剤(東レ・ダウコーニング社製、製品名:Z6040)1.6体積部と、湿潤分散剤(ビックケミージャパン社製、製品名:DIS-111)0.3体積部と、表面調整剤(ビックケミージャパン社製、製品名:BYK-300)0.4体積部と、を用いた。また、これらの各成分の合計100質量部に対して、揮発成分である溶媒(東京化成工業社製、ジアセトンアルコール)を20質量部用いた。上記の各成分のうち塊状窒化ホウ素粒子以外の成分と溶媒とで構成される樹脂組成物の30℃における粘度は、10Pa・sであった。全て成分を、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用いて、公転速度2000rpm、自転速度800rpmの条件で2分間混練して、第1の組成物を得た。
次に、500Paの減圧条件下で、第1の組成物を脱気した。脱気後の第1の組成物を、遊星式撹拌機(シンキー社「あわとり練太郎AR-250」)を用いて、公転速度2000rpm、自転速度800rpmの条件で2分間再度混練して、第2の組成物を得た。
続いて、フィルムアプリケーターを用いて、得られた第2の組成物を厚さ200μmのシート状に成形した後、熱風乾燥機を用いて、60℃で30分間及び100℃で70分間の条件で、樹脂を半硬化させた。これにより半硬化シートを得た。示差走査熱量計を用いて、得られた半硬化シートを25~300℃で測定したところ、発熱ピークが観察され、半硬化シート中の樹脂が半硬化した状態であることが確認された。また、得られた半硬化シートの断面をSEMにより200倍で観察した画像の一つを図2に示す。
図2から分かるように、得られた半硬化シートでは、樹脂の半硬化物が、複数の塊状窒化ホウ素粒子のそれぞれの内部に充填されており、複数の塊状窒化ホウ素粒子同士の間には空隙が形成されていた。塊状窒化ホウ素粒子内の樹脂の半硬化物が充填されている面積に対する、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の面積の割合は、1面積%であった。樹脂の半硬化物及び塊状窒化ホウ素粒子の面積A1と塊状窒化ホウ素粒子間の空隙の面積A2との合計に対する、樹脂の半硬化物及び塊状窒化ホウ素粒子の面積A1の比(A1/(A1+A2))は、0.75であった。半硬化シートの任意の5個の断面を観察したときに、1個の断面に占める樹脂の半硬化物及び複数の塊状窒化ホウ素粒子の面積が30面積%以下となる断面は0個であった。
続いて、半硬化シートに対して、圧力15MPa、温度150℃の条件で60分間の加熱及び加圧を行うことにより、樹脂を更に硬化させて、厚み100μmの硬化シートを得た。得られた硬化シートの断面をSEMにより300倍で観察した画像の一つを図3に示す。なお、図3において、塊状窒化ホウ素粒子の粒界には破線を付した。
<硬化シート中の塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径>
得られた硬化シートの断面のSEM像において、5個の塊状窒化ホウ素粒子について最大長さをそれぞれ測定した。この最大長さの測定を硬化シートの異なる断面のSEM像5枚について行い、測定されたすべての塊状窒化ホウ素粒子の最大長さの平均値を硬化シート中の平均粒子径として求めた。実施例1の硬化シート中の塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、60μmであった。
<塊状窒化ホウ素粒子の粒界の数の測定>
硬化シートの断面のSEM像において、硬化シートの厚み方向に任意の直線を5本引き、各直線の長さ(すなわち硬化シートの厚み)と、各直線に交わる粒界の数を測定し、厚み100μmあたりの粒界の数を各直線について算出した。この厚み100μmあたりの粒界の数の算出を硬化シートの異なる断面のSEM像5枚について行い、測定されたすべての直線における厚み100μmあたりの粒界の数の平均値として、硬化シート中の粒界の数を求めた。実施例1の硬化シートの厚み100μmあたりの粒界の数は、3個であった。
<塊状窒化ホウ素粒子の配向度の測定>
硬化シートについて、X線回折装置(Ultima IV-N)を用いてX線回折ピークを測定し、(002)面のピーク強度/(100)面のピーク強度を、硬化シートにおける塊状窒化ホウ素粒子の配向度として求めた。当該配向度は、6.9であった。
<耐電圧の測定>
耐電圧試験機(菊水電子工業製 TOS5101)を用いて、JIS C2110-1に従って得られた硬化シートの耐電圧を測定した。実施例1の硬化シートの耐電圧の最小値は、37kV/mmであった。
<熱伝導率の測定>
得られた硬化シートから、10mm×10mmの大きさの測定用試料を切り出し、キセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製、LFA447NanoFlash)を用いたレーザーフラッシュ法により、測定用試料の熱拡散率A(m/秒)を測定した。また、測定用試料の比重B(kg/m)をアルキメデス法により測定した。また、測定用試料の比熱容量C(J/(kg・K))を、示差走査熱量計(DSC;リガク社製、ThermoPlusEvoDSC8230)を用いて測定した。これらの測定値を用いて、熱伝導率H(W/(m・K))=A×B×Cの式から、硬化シートの熱伝導率を算出した。実施例1の硬化シートの熱伝導率は、19W/m・Kであり、15W/m・K以上の高い値であった。
(比較例1)
半硬化シートに対して加圧するときの圧力を5MPaに変更した以外は、実施例1と同様にして硬化シートを作製した。得られた硬化シートの断面をSEMにより200倍で観察した画像の一つを図4に示す。得られた比較例1の硬化シートについて、実施例1と同様に各測定を行った。結果を以下に示す。
硬化シートの厚み100μmあたりの粒界の数:2個
硬化シートの耐電圧:3kV/mm
硬化シートの熱伝導率:10W/m・K
(実施例2)
平均粒子径:75μm、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の体積:50体積%、圧壊強度:8MPaの塊状窒化ホウ素粒子を用いた以外は、実施例1と同様に硬化シートを製造した。硬化シートの厚みは、100μmであった。硬化シートにおける塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、50μmであった。硬化シートの厚み100μmあたりの粒界の数は、5個であった。硬化シートにおける塊状窒化ホウ素粒子の配向度は、7.0であった。硬化シートの耐電圧の最小値は、40kV/mmであった。硬化シートの任意の5個の断面を実施例1と同様に観察したときに、塊状窒化ホウ素粒子間にボイドが発生している断面が0個であった。
(実施例3)
平均粒子径:110μm、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の体積:50体積%、圧壊強度:6MPaの塊状窒化ホウ素粒子を用い、半硬化シートの厚みを400μmに変更した以外は、実施例1と同様に硬化シートを製造した。硬化シートの厚みは、250μmであった。硬化シートにおける塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径は、90μmであった。硬化シートの厚み100μmあたりの粒界の数は、2個であった。硬化シートにおける塊状窒化ホウ素粒子の配向度は、6.8であった。硬化シートの耐電圧の最小値は、32kV/mmであった。硬化シートの任意の5個の断面を実施例1と同様に観察したときに、塊状窒化ホウ素粒子間にボイドが発生している断面が0個であった。
実施例2,3のとおり、平均粒子径が異なる塊状窒化ホウ素粒子を用いた場合においても、ボイドが無く良好な硬化シートが得られることを確認できた。なお、実施例2及び実施例3のいずれにおいても、半硬化シートでは、樹脂の半硬化物が、複数の塊状窒化ホウ素粒子のそれぞれの内部に充填されており、複数の塊状窒化ホウ素粒子同士の間には空隙が形成されていた。実施例2及び実施例3のいずれにおいても、半硬化シートにおける上記の比(A1/(A1+A2))が0.4以上0.7以下の範囲にあり、半硬化シートの任意の5個の断面を観察したときに、1個の断面に占める樹脂の半硬化物及び複数の塊状窒化ホウ素粒子の面積が30面積%以下となる断面は0個であり、塊状窒化ホウ素粒子内の隙間の面積の割合は10面積%以下であった。実施例2及び実施例3のいずれにおいても、硬化シートの熱伝導率は、15W/m・K以上の高い値であった。

Claims (5)

  1. 樹脂を含む樹脂組成物と、圧壊強度が6MPa以上12MPa以下の塊状窒化ホウ素粒子とを混合して混合物を得る第1の工程と、
    前記混合物をシート状に成形すると共に、前記混合物中の前記樹脂を半硬化させて半硬化シートを得る第2の工程と、
    前記半硬化シートに対して10MPa以上16MPa以下で加圧して前記塊状窒化ホウ素粒子を崩すと共に、前記半硬化シート中の前記樹脂を更に硬化させて硬化シートを得る第3の工程と、を備え、
    前記塊状窒化ホウ素粒子の配合量が、前記塊状窒化ホウ素粒子及び前記樹脂組成物中の不揮発分の配合量の合計100体積部に対して40体積部以上である、硬化シートの製造方法。
  2. 前記第1の工程が、
    前記樹脂組成物と前記塊状窒化ホウ素粒子とを混練して第1の組成物を得る第1の混練工程と、
    前記第1の組成物を脱気する脱気工程と、
    脱気後の前記第1の組成物を混練して第2の組成物を得る第2の混練工程と、を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記半硬化シートにおいて、
    半硬化させた前記樹脂が、前記塊状窒化ホウ素粒子の内部に充填されており、
    前記塊状窒化ホウ素粒子同士の間に空隙が形成されている、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 樹脂の硬化物と、塊状窒化ホウ素粒子と、を含有する硬化シートであって、
    前記硬化シート中の前記塊状窒化ホウ素粒子の平均粒子径が45μm以上であり、前記塊状窒化ホウ素粒子の配向度が6.5以上8以下であり、
    前記硬化シートの断面において、厚み100μmあたりの前記塊状窒化ホウ素粒子の粒界の数が2以上5以下であり、
    前記硬化シートの耐電圧が30kV/mm以上である、硬化シート。
  5. 前記硬化シートの任意の5個の断面について、SEMにより倍率300倍で100μm×100μmの範囲を観察したときに、前記塊状窒化ホウ素粒子間にボイドが発生している断面が0個である、請求項4に記載のシート。
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