JP7359037B2 - カーボンナノチューブ分散液の製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1においては、所定濃度の硝酸を用いて、精製前CNT含有組成物を加熱還流する液相酸化を行うことで、触媒が残っておらず、耐熱性が高く、且つ、炭素副生成物の少ないCNT含有組成物が高収率で得られることが報告されている。
また、特許文献2においては、CNTを硫酸と硝酸との混酸で処理することで、半導体性CNTを大量および高純度で選別する方法が開示されている。
そこで、本発明は、所望の特性を有するカーボンナノチューブ分散液を精度良く製造し得るカーボンナノチューブ分散液の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のCNT分散液の製造方法は、ヒーターを用いて、酸化剤およびカーボンナノチューブを含む被処理液を加熱する酸化処理工程を含む。そして、本発明のCNT分散液の製造方法は、所定の積の値に基づいて、ヒーターをオフにする時点を決定することを特徴とする。なお、本発明のCNT分散液の製造方法は、任意で、上記酸化処理工程以外の工程を含んでいてもよい。
本発明のCNT分散液の製造方法によれば、所望の特性を有するCNT分散液を精度良く製造することができる。そして、製造されたCNT分散液を用いて形成されたCNT薄膜は、半導体素子、ディスプレイ、LED、リチウムイオンバッテリー、太陽電池等の電子デバイスの材料として好適に用いることができる。
なお、酸化処理に用いる装置および処理条件などは、意図的に変更される場合もあるが、何らかの要因によって意図せずに変更される場合もある。
そして、本発明のCNT分散液の製造方法によれば、酸化処理に用いる装置および処理条件などが、意図的に変更された場合は勿論、意図せずに変更された場合であっても、所望の特性を有するCNT分散液を精度良く製造することができる。
酸化処理工程では、ヒーターを用いて、酸化剤およびカーボンナノチューブを含む被処理液を加熱する。そして、被処理液の質量または体積の値Mと、ヒーターをオンにした時点から被処理液の温度が処理温度に達した時点までの被処理液の昇温速度ΔTと、被処理液の温度が処理温度に達した時点からヒーターをオフにする時点までの処理時間trとの積の値M・ΔT・trに基づいて、ヒーターをオフにする時点を決定する。
ここで、酸化処理工程に用いる被処理液は、酸化剤およびCNTを含む。また、被処理液は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、酸化剤およびCNT以外の成分を更に含んでいてもよい。そして、被処理液は、通常、水等の溶媒中に上記成分を混合してなる液体である。なお、溶媒としては、例えば、酸化剤としての硝酸に含まれる水等の溶媒をそのまま用いることができる。
酸化剤としては、硝酸、硫酸、過酸化水素水などを用いることができる。なお、これらの酸化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
被処理液中に含まれるCNTは、CNT分散液の原料となるCNTであり、酸化処理工程において、酸化剤と共に加熱されることにより、酸化処理を施される。
また、CNTの平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。CNTの平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、CNTの凝集を抑制して、CNTの分散性を高めることができる。
なお、CNTの平均直径(Av)および平均長さは、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ100本の直径(外径)および長さを測定して求めることができる。
そして、CNTの平均直径(Av)や平均長さは、CNTの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られたCNTを複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
更に、CNTのBET比表面積は、600m2/g以上であることが好ましく、700m2/g以上であることがより好ましく、800m2/g以上であることが更に好ましく、2000m2/g以下であることが好ましく、1800m2/g以下であることがより好ましく、1500m2/g以下であることが更に好ましい。また、CNTが主として開口したものにあっては、BET比表面積が1300m2/g以上であることが好ましい。CNTのBET比表面積が600m2/g以上であれば、得られる薄膜の表面均一性を十分に高めることができる。また、CNTのBET比表面積が2000m2/g以下であれば、CNTの凝集を抑制してCNTの分散性を高めることができる。
そして、被処理液の質量または体積の値Mは、使用する酸化処理装置のスケール等に応じて適宜設定することができる。
なお、被処理液の質量は、100g以上であることが好ましく、500g以上であることがより好ましく、1kg以上であることが更に好ましく、100kg以下であることが好ましく、20kg以下であることがより好ましく、10kg以下であることが更に好ましい。
また、被処理液の体積は、100mL以上であることが好ましく、500mL以上であることがより好ましく、1L以上であることが更に好ましく、100L以下であることが好ましく、20L以下であることがより好ましく、10L以下であることが更に好ましい。
上述した被処理液に対する加熱は、ヒーターを用いて行う。ここで、通常、酸化処理工程における被処理液に対する加熱は、ヒーターを備える酸化処理装置を用いて行う。
本発明のCNT分散液の製造方法における酸化処理工程の一例として、上述の図1に示した酸化処理装置100を用いて被処理液を加熱する場合について以下に説明する。
ここで、図2は、酸化処理装置100を用いて被処理液4を加熱する場合における被処理液4の温度およびヒーター3の出力仕事量(相対量)の経時変化の一例を示すグラフである。
また、同様に、ヒーター3をオンにする前(加熱開始前)、ヒーター3をオンにしている間(加熱中)、およびヒーター3をオフにした後(加熱終了後)のいずれにおいても、還流冷却装置2を用いて冷却を適宜行うことができる。例えば、ヒーター3をオフにした時点te以降も還流冷却装置2を稼働させて冷却を行うことで、被処理液の温度を速やかに常温まで低下させることができる。
ここで、昇温速度ΔTは、ヒーター3をオンにした時点から、被処理液4の温度が処理温度Trに達した時点tsまでの任意の時点における被処理液4の昇温速度とすることができる。そして、通常は、被処理液4の昇温速度が安定している時間帯の任意の時点における昇温速度をΔTとして設定する。例えば、被処理液4の昇温速度ΔTは、処理温度Trの1/2の温度である温度Taの時点における被処理液4の昇温速度とすることができる。
なお、昇温速度ΔTは、冷却装置の冷却条件(例えば、冷媒の流量)、断熱材(例えば、断熱材の材質、充填条件、および設置条件)、並びにヒーターの稼働条件(例えば、ヒーターの発熱量)などを調整することによって、制御することができる。
そして、被処理液4の温度が処理温度Trに達した時点tsから、ヒーター3をオフにする時点teまでの時間を処理時間trとする。
ここで、処理時間trは、0.5時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましく、5時間以上であることがより好ましく、100時間以下であることが好ましく、50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることが更に好ましい。
より具体的には、上述した積M・ΔT・trの値が予め定められた範囲内に達した時点でヒーター3をオフにすることが好ましい。
なお、積M・ΔT・trの値が「予め定められた範囲内に達した時点でヒーターをオフにする」とは、当該積の値が予め定められた範囲の下限値または上限値と一致した時点に限らず、当該積の値が予め定められた範囲内にある間にヒーターをオフにすればよいことを意味する。
上述した「予め定められた範囲」は、例えば、本発明のCNT分散液の製造方法とは別途で、積M・ΔT・trの値の参照値Q0を決定するための予備実験を行い、得られた参照値Q0に基づいて設定することができる。
(1)参考例1
参考例1を次の手順で行う。まず、ヒーターをオンにして、酸化剤およびカーボンナノチューブを含む被処理液(質量または体積の値をM´とする)の温度が処理温度Tr´に達するまで昇温を行う。ここで、ヒーターをオンにした時点から、被処理液の温度が処理温度Tr´に達した時点までの被処理液の昇温速度をΔT´とする。被処理液の温度が処理温度Tr´に達した時点以降は、被処理液の温度が可能な限り処理温度Tr´から変動しないように制御する。そして、被処理液の温度が処理温度Tr´に達した時点から処理時間tr´が経過した時点でヒーターをオフにする。その後、常温付近まで降温した被処理液をCNT分散液として取得する。
(2)参考例2以降
参考例2として、処理時間tr´を変更したこと以外は、上記参考例1と同様にして酸化処理を行い、CNT分散液を得る。
上記と同様の操作を繰り返し、参考例N(Nは2以上の整数)まで実施することで、最終的に、処理時間tr´が相互に異なる参考例1~N(Nは2以上の整数)の酸化処理により製造されたCNT分散液を得る。
(3)参考例相互間の比較
参考例1~Nにて得られたCNT分散液の特性(例えば、CNT凝集率、CNTの炭素不純物含有率、および有効CNT歩留りなど)を比較して、参考例1~Nの中から、最も所望とする特性を有するCNT分散液が得られた参考例を1つ選択して、参考例Xとする。
(4)参照値Q0の決定
最も所望とする特性を有するCNT分散液が得られた参考例Xにおける被処理液の質量または体積の値M´をM0とし、昇温速度ΔT´をΔT0とし、被処理液が処理温度Tr´に達した時点からヒーターをオフにする時点までの処理時間tr´をtr0としたときの積M0・ΔT0・tr0の値を参照値Q0とする。
また、予備実験に用いる被処理液と、本発明のCNT分散液の製造方法で用いる被処理液とでは、層数、平均長さ、平均直径、アスペクト比等が同じCNTを使用する。
なお、予備実験と、本発明のCNT分散液の製造方法とでは、被処理液中のCNT濃度は同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、本発明のCNT分散液の製造方法により所望の特性を有するCNT分散液を更に精度良く製造する観点から、予備実験と、本発明のCNT分散液の製造方法とで、被処理液中のCNT濃度が同じであることが好ましい。
また、予備実験で用いる被処理液の質量または体積の値M´と、本発明のCNT分散液の製造方法で用いる被処理液の質量または体積の値Mとは同じであってもよいし、異なっていてもよいものとする。
なお、予備実験においてヒーターを備える酸化処理装置を用いる場合は、本発明のCNT分散液の製造方法で用いる酸化処理装置と同じ装置を用いてもよいし、異なる装置を用いてもよい。例えば、予備実験で用いる酸化処理装置と、本発明のCNT分散液の製造方法で用いる酸化処理装置とで、被処理液を入れる容器、ヒーター、冷却装置、断熱材等の規模、材質、性能、設置条件などが異なっていてもよい。
さらに、予備実験と、本発明のCNT分散液の製造方法とで、酸化処理中のヒーターの稼働条件(例えば、発熱量)、および冷却装置の冷却条件(例えば、冷媒の流量)などは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、予備実験における被処理液の昇温速度ΔT´と、本発明のCNT分散液の製造方法における昇温速度ΔTとは、同じであってもよいし、異なっていてもよいものとする。
ただし、予備実験における被処理液の昇温速度ΔT´と、本発明のCNT分散液の製造方法における昇温速度ΔTとは、いずれも同じ温度の時点における被処理液の昇温速度として設定する必要がある。例えば、本発明のCNTの分散液の製造方法において、処理温度Trの1/2の温度Taにおける被処理液の昇温速度をΔTとして設定する場合、予備実験においても、処理温度Tr´(=Tr)の1/2の温度Taにおける被処理液の昇温速度をΔT´として設定する。
例えば、予め定められた範囲は、参照値Q0、並びに、関係式:0<k1≦1≦k2を満たすk1およびk2の値を用いて、「k1Q0以上」で表される下限値のみを有する範囲であってもよいし、「k2Q0以下」で表される上限値のみを有する範囲であってもよいし、「k1Q0以上k2Q0以下」ので表される下限値および上限値の両方を有する範囲であってもよい。
なお、上記一例では、予め定められた範囲は「参照値Q0以上」に設定されているが、本発明の所望の効果が得られる限り、特に限定されず、例えば、上述した参照値Q0の値に基づいて任意に設定することができる。
本発明について以下に考察する。
図4に示すように、ヒーターによる熱エネルギーは、放熱および冷却によってその一部が失われ、残りのエネルギーが反応エネルギーとして、CNTの酸化反応に消費される。これらの放熱量および冷却熱量は断熱材や冷却条件によって変動するため、結果として実質的に利用できる反応エネルギー量が変動することになる。被処理液の昇温速度ΔTは、放熱および冷却によって失われる熱量を差し引いて、単位時間当たりに被処理液に加えられる熱エネルギーを表す。したがって、昇温速度ΔTと、被処理液の質量または体積の値Mと、処理時間trとの積M・ΔT・trは、実質的に酸化処理に利用される実効エネルギーを表す良いパラメーターとなる。厳密に言えば、昇温中(ヒーターをオンにした時点から被処理液が処理温度に達する時点まで)のヒーターによる熱エネルギーと、酸化処理中(被処理液が処理温度に達した時点からヒーターをオフにする時点まで)のヒーターによる熱エネルギーとは異なるが、放熱および冷却による損失エネルギーに対する実効エネルギーの相対値は、昇温中と酸化処理中とでそれほど変わらない。したがって、例えば、CNT分散液の製造方法の酸化処理工程において、積M・ΔT・trの値が上述した予め定められた範囲内に達した時点でヒーターをオフにすれば、CNTの酸化反応に利用される実効エネルギーを、所望の特性のCNT分散液が得られることが実証された予備実験の参考例XのCNTの酸化反応に利用された実効エネルギーと同程度にすることができるため、所望の特性を有するCNT分散液を精度良く製造することができる。
なお、積M・ΔT・trの値を制御する手法としては、処理時間trの調整、被処理液の質量または体積の値Mの調整、並びに、ヒーターのワット数(発熱量)、断熱材、および冷却装置の冷却条件(例えば冷媒の流量)などの変更による昇温速度ΔTの調整などが挙げられるが、処理時間trの調整が最も容易である。
得られたCNT分散液または未処理液を水で100倍に希釈した後、アンモニアを少量添加してpH7.0に調整し、得られた液の光の透過度(A)を測定した。さらに、この液を200nmの空孔径のシリンジフィルターを通して得られた液の光の透過度(B)を測定した。ここで、CNTの凝集率は、式:{1-(B/A)}×100[%]により算出した。なお、CNT分散液中でCNTが完全に分散していれば、BとAとは同一の値となり、CNTの凝集率は0%となる。
得られたCNT分散液または未処理液を水で100倍に希釈した後、アンモニアを少量添加してpH7.0に調整し、得られた液の光の透過度(A)を測定した。さらに、この溶に塩を加えて、炭素不純物であるアモルファスカーボンだけを塩析させて、上澄み液の光透過度(C)を測定した。CNTの炭素不純物含有率(相対値)は、式:{1-(C/A)}×100[%]により算出した。なお、CNTが炭素不純物を含有しない場合は、CとAとは同一の値となり、炭素不純物含有率(相対値)は0%となる。
上記で得られたCNTの凝集率および炭素不純物含有率を用いて、有効CNT歩留りを、下記の式により算出した。CNT分散液における有効CNT歩留りが高いほど、CNTは良好に分散し、且つ、炭素不純物の含有率も小さいため、均一性および再現性に優れた電子デバイスの製造に良好に使用し得ることを示す。
有効CNT歩留り={1-(CNTの凝集率/100)}×{1-(CNTの炭素不純物含有率/100)}×100[%]
予備実験として、以下の参考例1~5の酸化処理を行い、得られたCNT分散液を比較し、最も所望とする特性を有するCNT分散液が得られた参考例に基づいて、参照値Q0の値を決定した。
カーボンナノチューブ100gを50%硝酸水溶液20Lに添加して、被処理液を調製した。なお、被処理液の質量の値はM´(=20.1kg)であり、被処理液中のCNT濃度は0.5%であった。なお、酸化処理を行う前の被処理液(未処理液)を用いて、上述した方法により、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率および有効CNT歩留りを測定した。結果を図5~7に示す。
次いで、上記で調製した被処理液を、図1に示した酸化処理装置100の容器8に入れた。
ヒーター3をオンにして被処理液の加熱を開始し、処理温度115℃まで昇温させた。
被処理液が処理温度115℃に達した時点以降は、被処理液の温度が可能な限り115℃から変動しないようにヒーター3のパワーを制御した。具体的には、被処理液の温度が115℃以上120℃以下に維持されるようにした。
そして、被処理液が処理温度115℃に達した時点から11時間が経過した時点(即ち、処理時間tr´が480分となった時点)でヒーター3をオフにして加熱を停止し、被処理液が常温(25℃)になるまで静置し、酸化処理後の被処理液をCNT分散液として回収した。
なお、上述した操作は、還流冷却装置2を稼働させ、冷却を行いながら実施した。
得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率および有効CNT歩留りを測定した。結果を図5~7に示す。
処理時間tr´を480分から、540分、600分、660分、720分にそれぞれ変更したこと以外は、上記と同様の操作にて酸化処理を行い、得られたCNT分散液を用いて各種の測定を行った。結果を図5~7に示す。
そして、最も所望とする特性を有するCNT分散液が得られた参考例4について、被処理液の質量の値M´(=20.1kg)をM0とし、処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔT´をΔT0とし、処理時間tr´(=11[時間])をtr0としたときの積の値M0・ΔT0・tr0を参照値Q0として求めた。
上述した予備実験の参考例4で得られたCNT分散液の有する特性が所望の特性であるものとして、以下の実施例1-1~1-2、および比較例1-1~1-2の酸化処理を行った。
容器8の上面部を覆う断熱材9(上部断熱材)の量を10%削減したこと以外は、上述した予備実験の参考例4で使用した酸化処理装置100と同じ酸化処理装置を準備した。
次いで、参考例4と同様にして調製した被処理液(質量の値M=M0、CNT濃度0.5%)を容器8に入れた。
ヒーター3をオンにして被処理液の加熱を開始し、処理温度115℃まで昇温させた。なお、上部断熱材を10%削減したことにより、処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔTは、上述した参考例4における昇温速度ΔT0から45%低下していた(即ち、比較例1-1における昇温速度ΔTは0.55ΔT0であった)。
被処理液が処理温度115℃に達した時点以降は、被処理液の温度が可能な限り115℃から変動しないようにヒーター3のパワーを制御した。具体的には、被処理液の温度が115℃以上120℃以下に維持されるようにした。
そして、被処理液が処理温度115℃に達した時点から11時間が経過した時点(即ち、処理時間trが11時間となった時点)でヒーター3をオフにして加熱を停止し、被処理液が常温(25℃)になるまで静置し、酸化処理後の被処理液をCNT分散液として回収した。
得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率を測定し、その結果に基づいて、有効CNT歩留りを求めた。結果を表1に示す。
上部断熱材の量を10%削減したこと以外は、上述した予備実験の参考例4で使用した酸化処理装置100と同じ酸化処理装置を準備した。
次いで、参考例4と同様にして調製した被処理液(質量の値M=M0、CNT濃度0.5%)を容器8に入れた。
ヒーター3をオンにして被処理液の加熱を開始し、処理温度115℃まで昇温させた。なお、上部断熱材を10%削減したことにより、処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔTは、上述した参考例4における昇温速度ΔT0から45%低下していた(即ち、実施例1-1における昇温速度ΔTは0.55ΔT0であった)。
被処理液が処理温度115℃に達した時点以降は、被処理液の温度が115℃からなるべく変動しないようにヒーター3のパワーを制御した。具体的には、被処理液の温度が115℃以上120℃以下に維持されるようにした。
そして、被処理液の質量の値M(=M0)と、被処理液の昇温速度ΔT(=0.55ΔT0)と、処理時間trとの積の値M・ΔT・trが上述した参照値Q0の値と一致するように、処理時間trが20時間になった時点でヒーター3をオフにして加熱を停止し、被処理液が常温(25℃)になるまで静置し、酸化処理後の被処理液をCNT分散液として回収した。
得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率を測定し、その結果に基づいて、有効CNT歩留りを求めた。結果を表1に示す。
上述した予備実験の参考例4と同じ操作で、被処理液(質量の値M=M0、CNT濃度0.5%)を、酸化処理装置100の容器8に入れた。
ヒーター3をオンにして被処理液の加熱を開始し、処理温度115℃まで昇温させた。このとき、還流冷却装置2の冷媒の流量を、参考例4のときの冷媒の流量から30%増加させた。冷媒の流量の増加により、処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔTは、上述した参考例4における昇温速度ΔT0から18%低下していた(即ち、比較例1-2における昇温速度ΔTは0.82ΔT0であった)。
被処理液が処理温度115℃に達した時点以降は、被処理液の温度が可能な限り115℃から変動しないようにヒーター3のパワーを制御した。具体的には、被処理液の温度が115℃以上120℃以下に維持されるようにした。
そして、被処理液が処理温度115℃に達した時点から11時間が経過した時点(即ち、処理時間trが11時間となった時点)でヒーター3をオフにして加熱を停止し、被処理液が常温(25℃)になるまで静置し、酸化処理後の被処理液をCNT分散液として回収した。
得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率を測定し、その結果に基づいて、有効CNT歩留りを求めた。結果を表1に示す。
上述した予備実験の参考例4と同じ操作で、被処理液(質量の値M=M0、CNT濃度0.5%)を、酸化処理装置100の容器8に入れた。
ヒーター3をオンにして被処理液の加熱を開始し、処理温度115℃まで昇温させた。このとき、還流冷却装置2の冷媒の流量を、参考例4のときの冷媒の流量から30%増加させた。冷媒の流量の増加により、処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔTは、上述した参考例4における昇温速度ΔT0から18%低下していた(即ち、実施例1-2における昇温速度ΔTは0.82ΔT0であった)。
被処理液が処理温度115℃に達した時点以降は、被処理液の温度が可能な限り115℃から変動しないようにヒーター3のパワーを制御した。具体的には、被処理液の温度が115℃以上120℃以下に維持されるようにした。
そして、被処理液の質量の値M(=M0)と、被処理液の昇温速度ΔT(=0.82ΔT0)と、処理時間trとの積の値M・ΔT・trが上述した参照値Q0の値と一致するように、処理時間trが13.4時間になった時点でヒーター3をオフにして加熱を停止し、被処理液が常温(25℃)になるまで静置し、酸化処理後の被処理液をCNT分散液として回収した。
得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率を測定し、その結果に基づいて、有効CNT歩留りを求めた。結果を表1に示す。
<比較例2(ロット101~106)>
上述した予備実験の参考例4と同じ操作(即ち、被処理液が処理温度115℃に達した時点からヒーター3をオフにする時点までの処理時間tr=11[時間])での酸化処理を、ロット101~106の合計6回繰り返して行い、CNT分散液を製造した。
なお、上述した予備実験の参考例4と同じ操作を行ったものの、各ロット101~106の処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔTの値と、参考例4における昇温速度ΔT0の値とは一致していなかった。また、各ロット101~106における昇温速度ΔT同士の値も一致しておらず、相互に異なっていた。
各ロット101~106で得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率を測定し、その結果に基づいて、有効CNT歩留りを求めた。結果を図8に示す。
被処理液が処理温度115℃に達した時点からヒーター3をオフにする時点までの処理時間trが11時間になるようにヒーター3をオフにするのではなく、被処理液の質量の値Mと、処理温度115℃の1/2である温度57.5℃の時点における被処理液の昇温速度ΔTと、処理時間trとの積の値M・ΔT・trが上述した参照値Q0の値と一致するように、ヒーター3をオフにする時点を決定して、処理時間trを調整したこと以外は、上述した予備実験の参考例4と同じ操作での酸化処理を、ロット201~208の合計8回繰り返して行い、CNT分散液を製造した。
なお、上述した予備実験の参考例4と同じ操作を行ったものの、各ロット201~208における昇温速度ΔTの値と、参考例4における昇温速度ΔT0の値とは一致していなかった。また、各ロット201~208における昇温速度ΔTの値同士も一致しておらず、相互に異なっていた。よって、積の値M・ΔT・trを参照値Q0と一致させるため、各ロット201~208における処理時間trの値同士も一致しておらず、相互に異なっていた。
各ロット201~208で得られたCNT分散液を用いて、CNTの凝集率、CNTの炭素不純物含有率を測定し、その結果に基づいて、有効CNT歩留りを求めた。結果を図8に示す。
2 還流冷却装置
3 ヒーター
4 被処理液
5 攪拌装置
6,10,11 温度計
7 電源
8 容器
12 流量計
100 酸化処理装置
Claims (6)
- ヒーターを用いて、酸化剤およびカーボンナノチューブを含む被処理液を加熱する酸化処理工程を含むカーボンナノチューブ分散液の製造方法であって、
前記被処理液の質量または体積の値をMとし、
前記ヒーターをオンにした時点から、前記被処理液の温度が処理温度に達した時点までの前記被処理液の昇温速度をΔTとし、
前記被処理液の温度が処理温度に達した時点から、前記ヒーターをオフにする時点までの処理時間をtrとしたときの積M・ΔT・trの値に基づいて、前記ヒーターをオフにする時点を決定する、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。 - 前記積M・ΔT・trの値が予め定められた範囲内に達した時点で前記ヒーターをオフにする、請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
- 前記被処理液中のカーボンナノチューブ濃度が5質量%以下である、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
- 前記酸化処理工程において冷却装置を使用し、前記冷却装置の冷却条件を調整する、請求項1~3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
- 前記酸化処理工程において断熱材を使用し、前記断熱材を調整する、請求項1~4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
- 前記ヒーターの発熱量を調整する、請求項1~5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
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