JP7358619B2 - 眼鏡レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、眼鏡レンズに関する。
近視等の屈折異常の進行を抑制する眼鏡レンズとして、物体側の面である凸面に、当該凸面とは異なる曲面を有して当該凸面から突出する複数の凸状領域が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この構成の眼鏡レンズによれば、物体側の面から入射し眼球側の面から出射する光束が、原則的には装用者の網膜上に焦点を結ぶが、凸状領域の部分を通過した光束は網膜上よりも物体側寄りの位置で焦点を結ぶようになっており、これにより近視の進行が抑制されることになる。
米国出願公開第2017/0131567号
特許文献1に記載の発明は、第2の屈折領域である複数の凸状領域を通過した光束が網膜の手前に集光することにより近視進行を抑制する、というものである。特許文献1に記載の発明が近視進行抑制効果を発揮する際のメカニズムに関し、本発明者は再度検討した。
近視進行抑制効果のメカニズムを理解するためには、近視進行のメカニズムを理解するのが近道である。
近視進行のメカニズムとして、調節ラグ説がある。近方視の際、本来だと眼球が所定の調節力を発揮すべきところ実際に眼球が発揮する調節力が不足する場合がある。この調節力の不足分が、調節ラグである。
調節ラグが存在する場合、眼球(詳しく言うと瞳孔)を通過する光束が収束してなる像が網膜の奥に存在する状態が発生する。この状態だと、眼軸長の伸び(眼球成長)が促され、近視が進む。この仮説を調節ラグ説という。
該像が網膜の奥に存在するか手前に存在するかを直接検知するセンサーは眼には無いと考えられている。その一方、調節ラグ説に則ると、網膜上の像の変化を検知する何らかの仕組みが人間に存在するはずである。
その仕組みの一つの可能性として、調節微動による該像の変化を検知することが考えられる。
例えば、該像が網膜の奥に存在する場合、物体からの光束が網膜において収束光束として入射している。眼球内の水晶体の調節力が緩められる(毛様体が緩められて水晶体が薄くなる)と像が更に奥に移動し、網膜の光斑のサイズが大きくなる。逆に調節が強まる(毛様体が緊張して水晶体が厚くなる)と網膜の光斑のサイズが小さくなる。調節微動による光斑の大きさの変化が視神経やその後の皮質による情報処理により検知され、眼球成長を促す信号が出され、近視が進む仕組みがあると考えられる。
本明細書の「光斑」とは、物体点の光が眼鏡レンズの一部と眼球光学系を通して網膜にできた像のことで、ピントが合っている場合は一点になり、ピントが合わない場合(デフォーカスの場合)は大きさを持つ光の分布となる。
網膜上の像の変化を検知する仕組みのもう一つの可能性として、光斑の光量密度の検知が挙げられる。
照射する光量が一定の場合、光斑の面積が小さいほど、光量密度が大きい。眼球内の水晶体の調節力が緩められると像が更に奥に移動し、網膜の光斑の光量密度が低くなる。逆に調節が強まると網膜の光斑の光量密度が高くなる。調節微動による光斑光量密度の変化が視神経やその後の皮質による情報処理により検知され、眼球成長を促す信号が出され、近視が進む仕組みがあると考えられる。
いずれの仕組みにしても、特許文献1に記載の発明のメカニズムとしては、眼球調節微動による物体点の網膜上の光斑のサイズの変化(又は光量密度変化)の知覚を利用して近視進行を抑制している。つまり、所定の眼球調節量当たりの光斑のサイズの変化量又は光量密度変化量が大きいほど、近視進行抑制効果が高いと考えられる(観点1)。
上記調節微動で例示したように、該像が網膜の奥に存在する場合、物体からの光束が網膜において収束光束として入射している。収束光束が形成する光の波面を収束波面という。つまり、上記調節ラグ説に則れば、網膜に入射する波面が収束波面の時に近視が進行する。
もしそうならば、逆に発散波面が網膜に入射する状況を作れば、近視進行を抑制することができる(観点2)。実際に特許文献1では、眼鏡レンズに第2の屈折領域を設け、第1の屈折領域を通過する光束が収束する焦点とは別に、第2の屈折領域を通過する光束を網膜の手前にて収束させている。第2の屈折領域を通過する光束が網膜の手前にて収束するということは、網膜に対しては発散波面が入射されることを意味する。
上記観点1及び観点2に基づけば、網膜に発散光束を入射させつつ、所定の眼球調節量当たりの光斑の大きさ(又は光量密度)の変化を大きくすべく、該発散光束の発散度を大きくすることが、近視進行抑制効果の向上につながる。
発散光束の発散度を大きくするには、特許文献1でいうところの凸状領域のサイズ(例:直径)又は屈折力(パワー)を大きくすればよい。
その一方、凸状領域のサイズを大きくすると、その分、特許文献1でいうところの第1の屈折領域(処方度数を実現するベース領域)が占める面積が小さくなる。これは、眼鏡レンズの装用感の低下につながる。
本発明の一実施例は、眼鏡レンズの装用感は維持しつつ近視進行抑制効果を向上させる技術を提供することを目的とする。
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、凸状領域を包含する概念としてデフォーカス領域という表現を採用したうえで、デフォーカス領域を構成する部分として第1部分と第2部分を設定するという態様を想到した。第1部分ではベース領域に相当する屈折力を備えさせることにより装用感の維持に寄与させ、第2部分では光束を位置Aに発散光として入射させるという態様を想到した。
上記知見を基に、以下の各態様を想到した。
本発明の第1の態様は、
物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上の位置Aに収束させるベース領域と、
前記ベース領域と接する複数のデフォーカス領域と、
を備え、
前記デフォーカス領域は、第1部分と第2部分を含み、第1部分の屈折力は、前記ベース領域の屈折力の±0.12Dの範囲内の値であり、
前記デフォーカス領域のうち第2部分を通過する光束が前記位置Aに発散光として入射する、眼鏡レンズである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記第2部分は球面形状である。
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記第2部分は非球面の曲面形状である。
本発明の第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記デフォーカス領域は凸状領域であり、前記眼鏡レンズは近視進行抑制レンズである。
本発明の第5の態様は、第1~第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
デフォーカス領域の第1部分は、ベース領域に対し追加プリズム作用を持たない。
本発明の第6の態様は、第1~第5のいずれかの態様に記載の態様であって、
視角[分]をX軸、光量密度をY軸としたときのプロットにおいて、視角ゼロでの光量密度のピークの外側において光量密度がゼロとなり、更にその光量密度がゼロとなる視角から外側において光量密度がゼロより高い。
上記の態様に対して組み合わせ可能な本発明の他の態様は以下の通りである。
デフォーカス領域は凸状領域である。
第1部分は中央部、第2部分は周辺部である。
第2部分は回転対称非球面(断面円弧状)の曲面形状である。
凸状領域の平面視での配置の一例としては、各凸部領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各凸状領域の中心が配置)する例が挙げられる。
凸状領域の直径は、0.6~2.0mm程度が好適である。凸状領域の突出高さ(突出量)は、0.1~10μm程度、好ましくは0.5~2.0μm程度が好適である。
本発明の一実施例によれば、眼鏡レンズの装用感は維持しつつ近視進行抑制効果を向上させる技術を提供できる。
図1は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、眼鏡レンズの1つの凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。 図2は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例1の眼鏡レンズの1つの凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。 図3は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例1の眼鏡レンズの複数の凸状領域の各々を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。 図4(a)は、実施例1の眼鏡レンズの凸状領域がハニカム構造で離散配置され且つ互いに離間した様子を示す概略平面図であり、図4(b)は、そのうち3個の凸状領域を拡大した概略平面図であり、図4(c)は、1個の凸状領域の概略側面図である。 図5(a)は、実施例1の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図5(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図6は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例1のプロットである。 図7は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例1のプロットである。 図8は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例1のプロットである。 図9(a)は、実施例2にて瞳孔径内に凸状領域がハニカム構造で離散配置され且つ互いに接触した様子を示す概略平面図であり、図9(b)は、そのうち3個の凸状領域を拡大した概略平面図である。 図10は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例2のプロットである。 図11は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例2のプロットである。 図12は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例2のプロットである。 図13(a)は、実施例3にて眼鏡レンズの凸状領域がハニカム構造で離散配置され且つ互いに重複した様子を示す概略平面図であり、図13(b)は、そのうち3個の凸状領域を拡大した概略平面図である。隣り合う円形凸状領域は重複する部分があるが、共通の弦を持って境界線とする。凸状領域が拡大し、隣り合う凸状領域の間のベース領域が完全になくなる場合、凸状領域と周囲6個の凸状領域の境界線が正六角形となり、各凸状領域の形状は六角形になる。 図14(a)は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例3の眼鏡レンズの複数の凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図であり、図14(b)は、図14(a)により得られる像の概略図である。 図15(a)は、実施例3の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図15(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図16は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例3のプロットである。 図17は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例3のプロットである。 図18は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例3のプロットである。 図19(a)は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例4の眼鏡レンズの複数の凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図であり、図19(b)は、図19(a)により得られる像の概略図であり、図19(c)は、1個の凸状領域の概略側面図である。 図20(a)は、実施例4の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図20(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図21は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例4のプロットである。 図22は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例4のプロットである。 図23は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例4のプロットである。 図24(a)は、実施例5の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図24(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図25は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例5のプロットである。 図26は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例5のプロットである。 図27は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例5のプロットである。 図28(a)は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例6の眼鏡レンズの複数の凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図であり、図28(b)は、図28(a)により得られる像の概略図である。 図29(a)は、実施例6の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図29(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図30は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例6のプロットである。 図31は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例6のプロットである。 図32は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例6のプロットである。 図33(a)は、実施例7の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図33(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図34は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例7のプロットである。 図35は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例7のプロットである。 図36は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例7のプロットである。 図37(a)は、実施例8の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図37(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。 図38は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例8のプロットである。 図39は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例8のプロットである。 図40は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例8のプロットである。 図41は、PSF計算の説明図である。
以下、本発明の実施形態について述べる。以下における図面に基づく説明は例示であって、本発明は例示された態様に限定されるものではない。本明細書に記載の無い内容は、特許文献1、特許文献1に記載の無い内容(特に製造方法に関する内容)はWO2020/004551号公報の記載が全て記載されているものとする。特許文献1の記載内容と該公報の記載内容に齟齬がある場合は該公報の記載を優先する。
本明細書で挙げる眼鏡レンズは、少なくとも物体側の面と眼球側の面とを有する。「物体側の面」とは、眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側の面」とは、その反対、すなわち眼鏡レンズを備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。物体側の面と眼球側の面の間に、屈折率が1.0以上の眼鏡レンズの基材がある。また、物体側の面と眼球側の面の間に少なくとも一つ中間面があり、中間面の前後に異なる屈折率の透明基材を有する眼鏡レンズも考えられる。
<眼鏡レンズ>
本発明の一態様に係る眼鏡レンズは、以下の通りである。
「物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上の位置Aに収束させるベース領域と、
前記ベース領域と接する複数のデフォーカス領域と、
を備え、
前記デフォーカス領域は、第1部分と第2部分を含み、第1部分の屈折力は、前記ベース領域の屈折力の±0.12Dの範囲内の値であり、
前記デフォーカス領域のうち第2部分を通過する光束が前記位置Aに発散光として入射する、眼鏡レンズである。」
ベース領域とは、装用者の処方度数を実現可能な形状の部分であり、特許文献1の第1の屈折領域に対応する部分である。
デフォーカス領域とは、その領域の中の少なくとも一部がベース領域による集光位置には集光させない領域である。本発明の一態様における凸状領域は、デフォーカス領域に包含される。
デフォーカス領域が発揮するデフォーカスパワーは、各デフォーカス領域の屈折力と、各デフォーカス領域以外の部分の屈折力との差を指す。別の言い方をすると、『デフォーカスパワー』とは、デフォーカス領域の所定箇所の最小屈折力と最大屈折力の平均値からベース部分の屈折力を差し引いた差分である。
凸状領域とは、特許文献1の微小凸部に該当する部分である。本発明の一態様に係る眼鏡レンズは、特許文献1に記載の眼鏡レンズと同様、近視進行抑制レンズである。特許文献1の微小凸部と同様、本発明の一態様に係る複数の凸状領域は、眼鏡レンズの物体側の面、眼球側の面、中間面の少なくともいずれかに形成されればよい。本明細書においては、眼鏡レンズの物体側の面のみに複数の凸状領域を設けた場合を主に例示する。
本発明の一態様における凸状領域は、凸状領域の少なくとも一部を通過する光束が発散光として網膜上の位置Aに入射する性質を持つ。「発散光」とは、本発明の課題の欄で述べた発散光束(発散波面を有する光束)のことである。凸状領域のどの部分を光束が通過しても光束が発散光として網膜上の位置Aに入射してもよいし、凸状領域の一部を光束が通過した場合に光束が発散光として網膜上の位置Aに入射してもよい。
そのうえで、凸状領域を構成する部分として第1部分と第2部分を設定し、第1部分ではベース領域に相当する屈折力を備えさせることにより装用感の維持に寄与させ、第2部分では光束を位置Aに発散光として入射させるというのが本発明の一態様である。
本明細書における「屈折力」は、屈折力が最小となる方向aの屈折力と、屈折力が最大となる方向b(方向aに対して垂直方向)の屈折力との平均値である平均屈折力を指す。中央部の屈折力とは、例えば、本発明の一態様のように凸状領域が小玉状のセグメントである場合、平面視の中心における頂点屈折力のことを指す。
本発明の一態様において、第1部分は中央部である。中央部とは、凸状領域の平面視の中心(若しくは重心。以降、重心の記載は省略。)又はその近傍の部分を指す。以降、凸状領域において「平面視」の記載は省略し、特記しない場合は平面視形状を意味する。
そして、中央部はベース領域に相当する屈折力を備える。「ベース領域に相当する屈折力」とは、ベース領域の屈折力の±0.12D(好適には±0.10D、更に好適には±0.05D)の範囲内の値を意味する。
なお、中央部は一つの屈折力を有する場合もあるし、中央部の形状が細かく変化して局所的に屈折力が変動する場合もある。後者の場合、屈折力は第1領域内表面形状をゼルニケ分解し、2次項係数を用いて決めてもよい。
本発明の一態様において、第2部分は周辺部である。周辺部とは、凸状領域におけるベース領域との境界(凸状領域の根元)の近傍の部分であって、中央部から見て外側にある領域を指す。本発明の一態様においては、凸状領域が中央部と周辺部とで構成される場合を例示する。中央部から見て外側方向のことを、中央部から周辺部に向かう方向ともいい、凸状領域の平面視の中心から根元に向かう方向すなわち径方向のことを指す。
以上の各構成を採用することにより、眼鏡レンズの装用感は維持しつつ近視進行抑制効果を向上させられる。
<眼鏡レンズの好適例及び変形例>
本発明の一態様における眼鏡レンズの好適例及び変形例について、以下に述べる。
凸状領域の平面視形状としては円形領域を挙げたが、本発明はそれに限定されず、楕円領域でも構わない。その他の形状の領域(例えば矩形)でも構わないが、該形状に起因して意図しない収差が生じたり迷光が生じたりする可能性もあるため、円形領域又は楕円領域が好ましい。
同様に、中央部の平面視形状にも限定は無いが、同じ理由で円形領域又は楕円領域が好ましい。また、周辺部の平面視形状にも限定は無いが、同じ理由で円環状領域又は楕円環状領域が好ましい。
本発明の一態様の中央部はベース領域に相当する屈折力を備える。近視進行抑制レンズの場合、眼鏡レンズ自体は単焦点レンズである場合が多いため、ベース領域とデフォーカス領域の中央部とは球面形状である場合を本発明の一態様として例示する。なお、中央部を球面形状とする場合、中央部を凸状領域の凹み部分とし、球面形状であるベース領域の面形状を延長したのと等しい形状としても構わない。
その一方、周辺部の立体形状としては、球面形状又は非球面の曲面形状が挙げられる。
周辺部が球面形状の場合(後掲の実施例1~3)、発散光束が網膜上の位置Aに入射されれば球面の曲率(屈折力)に限定は無いが、例えばベース領域の屈折力の+1.0~+30Dが好ましい。
周辺部が非球面形状の場合、発散光束が網膜上の位置Aに入射されれば限定は無く、例えば様々な断面曲線がベース球面の法線を軸に回転して形成される回転対称非球面(一具体例としては断面円弧状)であってもよいし(後掲の実施例4~8)、中央部から周辺部に向かう方向に曲率が変化する非球面であってもよいし、トーリック面であってもよい。
周辺部が非球面形状の場合、周辺部の平均屈折力(最小屈折力と最大屈折力の平均値)が、ベース領域の屈折力の+1.0~+50Dであっても構わない。
いずれの場合にせよ、ベース領域に対し追加プリズム作用を持たないのが好ましい。中央部により装用感の維持が担保されているうえ、周辺部での追加プリズム作用を持たなければ、複像になることがなく、装用感は更に維持されるため好ましい。
中央部と周辺部との境界は、中央部の面積と周辺部の面積の比の設定に応じて決定すればよい。該比は、凸状領域以外のベース領域の面積も考慮に入れ、近視進行抑制効果の発揮度合いと装用感との兼ね合いで任意に決定できる。例えばある範囲の眼鏡レンズ領域(例えば瞳孔範囲内)において、(ベース領域の面積+範囲内すべての凸状領域中央部の面積):(範囲内すべての凸状領域周辺部の面積)が、20:80と80:20の間、好ましくは40:60~60:40の間の値になるように、該比を決めるとよい。
但し、本発明は上記各形状には限定されない。その理由について、以下、説明する。
発散波面を網膜に入射する状況を発生させるのは、周辺部の立体形状として挙げた球面の凸状領域に限らず、様々な面形状の周辺部があり得る。近視抑制効果が最適になる面形状を設計すればよい。但し、そのためには、適切な近視進行抑制効果の評価方法が必要になる。
近視進行抑制効果の評価方法として、調節量の変化に対する網膜上の光斑の面積又は半径の変化率、及び又は調節量の変化に対する網膜上の光斑の(平均又は最大)光量密度の変化率とすることが考えられる。
図1は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、眼鏡レンズの1つの凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。
仮に処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせた光学系の屈折力[単位:D]をPeyeとすると、その焦点距離はfeye=1/Peyeである。そのうえで、仮に凸状領域が平面視で円形領域且つ軸回転対称の形状とし、円形領域の中心からhだけ離れた点Bでのプリズム偏角[単位:ラジアン](以降、単に「偏角」とも称する。)をδとすると、凸状領域上の点Bを通過して網膜に入射する光束の像面上の高さhは、収差を考慮しない近軸計算(近軸近似)で以下の[数1]の通りとなる。
上記[数1]から、網膜上の光斑の直径RPSF、光斑の面積SPSFは以下のように求まる。
なお、PSFは、点拡がり関数(Point Spread Function)のことであり、光線追跡法を採用することにより得られるパラメータである。PSFは点光源から発射した多数の光線を追跡し、任意の面上の光斑の光量密度を計算することで得られる。そして、複数の任意の面のPSFを比較して、複数の任意の面の内、最も光線が集光する位置(面)を特定する。なお、光線の直径は瞳孔径に基づいて設定すればよく、例えば4mmφとしてもよい。
物体を見るとき人間の眼の屈折力は一定ではなく、絶えず調節微動して最適なピント位置を探している。凸状領域の光斑も調節微動によってサイズが変化する。例えば眼球が調節して、眼鏡レンズと眼球を合わせた光学系の屈折力が、Peyeに調節の分の屈折力Aを足し合わせた値になったとすると、[数2][数3]は以下の[数4][数5]のように表される。
光斑の半径の変化率は、[数4]の導関数を求め、A=0を代入すると、以下の式として得られる。
光斑の面積の変化率は、[数5]の導関数を求め、A=0を代入すると、以下の式として得られる。
上記面積に関する式は、凸状領域による光斑が円形の場合の式である。凸状領域の形状によって、光斑がリング状や他の形状に分布することもあり得るが、その場合の式は光斑の形状に応じて設定すればよい。光量密度の式も、凸状領域の形状設計に応じ、個別に設定すればよい。
個々の形状設計によって、最大偏角δ0maxが異なるし、網膜上光斑の大きさ、光量分布も異なる。光量密度も様々な考え方がある。特許文献1の場合、微小凸部の形状が球面で、収差を考えない場合、網膜上光斑は円形で光量は均等分布するため、光量密度を算出しやすい。他の表面形状の凸状領域だと、特許文献1の場合に比べ、網膜上の光斑形状が変わるし、光量が均等分布でなくなることもあり得る。その一方、光斑面積の調節に対する変化率はそのまま求められる。そして、光量密度に関しては、例えば光斑全体の平均光量密度、又は光斑内の最大光量密度などを求め、その調節に対する変化率を近視進行抑制効果の評価指数としてもよい。
[数6]または[数7]によれば、調節による光斑サイズの減少率は、最大偏角δ0maxにまたはδ0maxの二乗に比例する。微小凸部の最大偏角が大きいほど、近視進行抑制効果が大きいといえる。特許文献1の場合、凸状領域が球面で、最大偏角は凸状領域の半径に比例する。凸状領域を大きくすれば、最大偏角を大きくできるが、凸状領域の間隔が決まっている場合、ベース部分の面積が小さくなるので、装用感が低下すると考えられる。この矛盾を解決するために、この発明の一実施形態では、凸状領域を中央部と周辺部に分け、中央部はベース領域とほぼ同じ屈折力を持ち、周辺部は網膜上に発散光を入射させるように構成している。
上記の近視進行抑制効果の評価方法を採用すれば、近視抑制効果が最適になる表面を設計できる。これは、様々な面形状の凸状領域を採用したうえで、そのときの近視進行抑制効果を適切に評価できることを意味する。その結果、凸状領域の面形状の限定は無くなる。
また、発散波面が網膜に入射する状況を発生させる際、瞳孔径の範囲内に配置される凸状領域の数や配置には限定は無い。その理由について、以下、後掲の実施例1の眼鏡レンズの構造を用いて説明する。
図2は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例1の眼鏡レンズの1つの凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。
図3は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例1の眼鏡レンズの複数の凸状領域の各々を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図である。
図3に示すように、瞳孔径の範囲内に凸状領域が複数配置される場合、それぞれ網膜上に有限サイズの光斑を形成する。個々の凸状領域が眼鏡レンズの表面に沿って配置する場合、全体的にプリズムが生じることなく、配置位置を通過する主光線は凸領域がない場合の眼鏡レンズの該当位置の光線に一致し、網膜上の像に集まる。
従って、この場合は全ての凸状領域の光斑の中心位置が一致し、複像が見えることはない。また、全ての凸状領域の表面形状が同一であれば、光斑が網膜上完全に一致して重なる。調節のための屈折力Aを加えた場合、各光斑の中心が各主光線に沿ってずれて重なる。ずれ量は凸領域の間隔に比例する。
全ての凸領域の光斑がずれながら足し合わせて形成した光斑のサイズ、面積の調節による変化率、及び又は光量密度の平均値又は最大値などの調節による変化率を計算して、近視抑制効果の評価をすればよい。
<眼鏡レンズの一具体例>
複数の凸状領域の配置の態様は、特に限定されるものではなく、例えば、凸状領域の外部からの視認性、凸状領域によるデザイン性付与、凸状領域による屈折力調整等の観点から決定できる。
レンズ中心の周囲に周方向及び径方向に等間隔に、略円形状の凸状領域が島状に(すなわち、互いに隣接することなく離間した状態で)配置されてもよい(実施例1等)。凸状領域の平面視での配置の一例としては、各凸部領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各凸状領域の中心が配置)する例が挙げられる。
但し、本発明の一態様は特許文献1に記載の内容に限定されない。つまり、凸状領域が互いに隣接することなく離間した状態であることに限定されず、互いに接触しても構わないし(実施例2等)、平面視にて互いに重複するように配置しても構わないし(実施例3等)、数珠つなぎのように非独立での配置を採用してもよい。
各々の凸状領域は、例えば、以下のように構成される。凸状領域の直径は、0.6~2.0mm程度が好適である。凸状領域の突出高さ(突出量)は、0.1~10μm程度、好ましくは0.4~1.0μm程度、或いは0.5~2.0μmが好適である。凸状領域の周辺部の最も屈折力の大きい部分は、凸状領域が形成されていない領域の屈折力よりも2.50~30ディオプター程度大きくなるように設定されることが好適である。
レンズ基材は、例えば、チオウレタン、アリル、アクリル、エピチオ等の熱硬化性樹脂材料によって形成されている。なお、レンズ基材を構成する樹脂材料としては、所望の屈折度が得られる他の樹脂材料を選択してもよい。また、樹脂材料ではなく、無機ガラス製のレンズ基材としてもよい。
ハードコート膜は、例えば、熱可塑性樹脂又はUV硬化性樹脂を用いて形成されている。ハードコート膜は、ハードコート液にレンズ基材を浸漬させる方法や、スピンコート等を使用することにより、形成することができる。このようなハードコート膜の被覆によって、眼鏡レンズの耐久性向上が図れるようになる。
反射防止膜は、例えば、ZrO、MgF、Al等の反射防止剤を真空蒸着により成膜することにより、形成されている。このような反射防止膜の被覆によって、眼鏡レンズを透した像の視認性向上が図れるようになる。
上述したように、レンズ基材の物体側の面には、複数の凸状領域が形成されている。従って、その面をハードコート膜及び反射防止膜によって被覆すると、レンズ基材における凸状領域に倣って、ハードコート膜及び反射防止膜によっても複数の凸状領域が形成されることになる。
眼鏡レンズの製造にあたっては、まず、レンズ基材を、注型重合等の公知の成形法により成形する。例えば、複数の凹部が備わった成形面を有する成形型を用い、注型重合による成形を行うことにより、少なくとも一方の表面に凸状領域を有するレンズ基材が得られる。
そして、レンズ基材を得たら、次いで、そのレンズ基材の表面に、ハードコート膜を成膜する。ハードコート膜は、ハードコート液にレンズ基材を浸漬させる方法や、スピンコート等を使用することにより、形成することができる。
ハードコート膜を成膜したら、更に、そのハードコート膜の表面に、反射防止膜を成膜する。ハードコート膜は、反射防止剤を真空蒸着により成膜することにより、形成することができる。
このような手順の製造方法により、物体側に向けて突出する複数の凸状領域を物体側の面に有する眼鏡レンズが得られる。
以上の工程を経て形成される被膜の膜厚は、例えば0.1~100μm(好ましくは0.5~5.0μm、更に好ましくは1.0~3.0μm)の範囲としてもよい。ただし、被膜の膜厚は、被膜に求められる機能に応じて決定されるものであり、の例示した範囲に限定されるものではない。
被膜の上には、更に一層以上の被膜を形成することもできる。そのような被膜の一例としては、反射防止膜、撥水性又は親水性の防汚膜、防曇膜等の各種被膜が挙げられる。これら被膜の形成方法については、公知技術を適用できる。
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本項目にて記載する各実施例を種類分けすると以下の表1の記載の通りである。
<実施例1>
以下の眼鏡レンズを作製した。なお、眼鏡レンズはレンズ基材のみからなり、レンズ基材に対する他物質による積層は行っていない。処方度数としてS(球面度数)は0.00Dとし、C(乱視度数)は0.00Dとした。実施例1では、平面視にて凸状領域同士を離間させた。
・レンズ基材の平面視での直径:100mm
・レンズ基材の種類:PC(ポリカーボネート)
・レンズ基材の屈折率:1.589
・レンズ基材のベース領域の屈折力:0.00D
・凸状領域の形成面:物体側の面
・凸状領域が形成された範囲:レンズ中心から半径20mmの円内(但しレンズ中心から半径3.8mmの円を内接円とする正六角形状の領域は除く)
・凸状領域の平面視での形状:正円(直径1.2mm)
・凸状領域の中央部の直径:0.60mm
・凸状領域の中心での屈折力:ベース領域の屈折力と同じ
・凸状領域の周辺部の形状:球面
・凸状領域の根元(ベース領域との境界近傍)での偏角:7.22分(凸状領域が球面の場合屈折力3.5D相当)。
なお、この偏角に対応する屈折力Pは、P=dδ/dr[δの単位はラジアン(但し以降は単位を省略することもある。図中は分で表示。)]で求めることができる。
・凸状領域の平面視での配置:各凸状領域の中心が正三角形の頂点となるよう各々独立して離散配置(ハニカム構造の頂点に各凸状領域の中心が配置)
・各凸状領域間のピッチ(凸状領域の中心間の距離):1.4mm
・瞳孔径内の凸状領域の数:7個
なお、ここでのPSFでは近軸近似を採用しているため眼球モデルは使用しなかった。
図4(a)は、実施例1の眼鏡レンズの凸状領域がハニカム構造で離散配置され且つ互いに離間した様子を示す概略平面図であり、図4(b)は、そのうち3個の凸状領域を拡大した概略平面図であり、図4(c)は、1個の凸状領域の概略側面図である。
図5(a)は、実施例1の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図5(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。この設計では、図5(b)にある三角形内に、(ベース領域+凸状領域中央部の面積):凸状領域周辺部面積が50:50になる。つまりレンズ上の処方度数領域面積:近視進行抑制機能領域面積を50:50に保つ設計である。
図6は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例1のプロットである。偏角関数の式は、以下の[数8]で表される。
図7は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例1のプロットである。断面パワー関数の式は、以下の[数9]で表される。
図8は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例1のプロットである。
視角は、注視線以外の物体点と眼球入射瞳をつなぐ直線と注視線との角度である。その物体点の網膜上の像と網膜上中心窩からの距離は、視角に比例する。従って、PSFの横軸は、網膜上位置の代わりに視角とすることがよくある。
図6に示すプロットは偏角曲線ともいい、偏角曲線の勾配は屈折力に相当する。実施例1では凸状領域の中央部はベース領域の屈折力と同じ0.00Dとしており、中央部である半径0.3mmの領域内では偏角曲線の勾配はゼロである。その一方、周辺部だと偏角δの絶対値は直線的に増加する。直線の延長が原点を通過する。これは、中央部と周辺部との境界から周辺部とベース領域との境界にかけて、球面形状で屈折力が一定であることを示している。
図7に示すように、凸部領域の軸を含む断面曲線のパワー((屈折率-1)×曲率)は、中央部において0.0D、周辺部において3.5Dで一定である。
図8に示すように、視角間14.44分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高くなっている。視角ゼロでの光量密度は、直径0.3mmの凸状領域の中央部における光束により形成される。この領域は、凸部領域以外のベース領域と共に、処方度数を実現し、網膜上の位置Aに像を形成している。
それと共に、図8に示すように、視角の絶対値が大きい部分でも光量密度が増加している。これは、発散光に起因する光量密度である。視角ゼロ以外の視角にて光量密度を確保することにより、近視進行抑制効果がもたらされる。しかも、好ましいことに、図8だと、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロとなっている。つまり、視角ゼロでの光量密度のピークの外側(視角ゼロからプラス側及びマイナス側)において光量密度がゼロとなる視角が存在するのが好ましい。そして、更にその光量密度がゼロとなる視角から外側(視角ゼロから更にプラス側及び更にマイナス側)において光量密度をゼロより高くするのが好ましい。PSFの視角ゼロの近傍、即ち視角ゼロでの光量密度のピークの外側(光量密度がゼロの視角から更にプラス側及び更にマイナス側)の光量密度は網膜像のコントラスト低下をもたらすので、この凸状領域の設計は特許文献1の設計よりコントラスト低下の少ない網膜像が得られるといえる。
<実施例2>
以下の点で実施例1とは異なる眼鏡レンズを作製した。実施例2では、平面視にて凸状領域同士を接触させた。以下の点以外は実施例1と同様とした。その他の条件は実施例1及び表1に記載の通りとした。
・凸状領域の平面視での形状:正円(直径0.8mm)
・凸状領域の中央部の直径:0.54mm
・凸状領域の根元(ベース領域との境界近傍)での偏角:7.22分(凸状領域が球面の場合屈折力5.25D相当)。
・各凸状領域間のピッチ(凸状領域の中心間の距離):0.8mm
・瞳孔径内の凸状領域の数:19個
図9(a)は、実施例2にて瞳孔径内に凸状領域がハニカム構造で離散配置され且つ互いに接触した様子を示す概略平面図であり、瞳孔サイズの直径4mm円内に19個の凸状領域が入ることが示されている。図9(b)は、そのうち3個の凸状領域を拡大した概略平面図で、個々のサイズや間隔が示されている。この設計では、図9(b)にある三角形内に、(ベース領域+凸状領域中央部の面積):凸状領域周辺部面積が50:50になる。つまりレンズ上処方度数領域面積:近視進行抑制機能領域面積が50:50に保つ設計である。
図10は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例2のプロットである。偏角関数の式は、以下の[数10]で表される。
図11は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例2のプロットである。断面パワー関数の式は、以下の[数11]で表される。
図12は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例2のプロットである。
図12に示すように、視角間14.44分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高く、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロとなっている。実施例1と同様、実施例2の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。
<実施例3>
図13(a)は、実施例3にて眼鏡レンズの凸状領域がハニカム構造で離散配置され且つ互いに重複した様子を示す概略平面図であり、図13(b)は、そのうち3個の凸状領域を拡大した概略平面図である。隣り合う円形凸状領域は重複する部分があるが、共通の弦を持って境界線とする。凸状領域が拡大し、隣り合う凸状領域の間のベース領域が完全になくなる場合、凸状領域と周囲6個の凸状領域の境界線が正六角形となり、各凸状領域の形状は六角形になる。
図14(a)は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例3の眼鏡レンズの複数の凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図であり、図14(b)は、図14(a)により得られる像の概略図である。各凸状領域の周辺部外側は六角形、中央部と周辺部の境界は円なので、網膜に形成する光斑も外側六角形、内側円の形になる。
図15(a)は、実施例3の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図15(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。
以下の点で実施例1とは異なる眼鏡レンズを作製した。実施例3では、平面視にて凸状領域同士を重複させた。その他の条件は実施例1及び表1に記載の通りとした。
なお、実施例3では、図15(b)の逆正三角形の部分において中央部の面積と周辺部の面積とが1:1になるよう、中央部のサイズを決定している。
以下の点以外は実施例1と同様とした。
・凸状領域の平面視での形状:正六角形(直径1.512mm)
・凸状領域の中央部の直径:0.972mm
・凸状領域の最大半径位置(ベース領域との境界六角形の角部分)での偏角:9.095分(凸状領域が球面の場合屈折力3.5D相当)。
・各凸状領域間のピッチ(凸状領域の中心間の距離):1.309mm
図16は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例3のプロットである。偏角関数の式は、以下の[数12]で表される。
図17は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例3のプロットである。断面パワー関数の式は、以下の[数13]で表される。
図18は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例3のプロットである。
図18に示すように、視角間18.19分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高く、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロとなっている。実施例2同様、実施例3の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。
<実施例4>
以下の点で実施例1とは異なる眼鏡レンズを作製した。実施例4では、周辺部を回転対称非球面形状とし、その断面曲線が曲率一定の円弧とした。なお、該円弧の回転軸は円弧が形成する円の中心から外れているため回転対称非球面形状が形成される。以降に記載する「回転対称非球面」の構造は上記の通りとする。平面視にて凸状領域同士を離間させた。以下の点以外は実施例1と同様とした。その他の条件は実施例1及び表1に記載の通りとした。
・凸状領域の周辺部の形状:回転対称非球面(ベース領域寄りである外側偏角10.0分、中央部寄りである内側偏角2.5分)
・各凸状領域間の間隔(凸状領域の中心間の距離):1.4mm
図19(a)は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例4の眼鏡レンズの複数の凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図であり、図19(b)は、図19(a)により得られる像の概略図であり、図19(c)は、1個の凸状領域の概略側面図である。
図20(a)は、実施例4の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図20(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。
図21は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例4のプロットである。偏角関数の式は、以下の[数14]で表される。
である。
図22は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例4のプロットである。断面パワー関数の式は、以下の[数15]で表される。
図23は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例4のプロットである。
図23に示すように、視角間20.0分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高くなっており、実施例4の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。なお、これまでに記載の実施例に比べ、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロ近傍となる際の視角幅が狭くなっているものの、視角ゼロ以外の視角にて光量密度を確保できており、近視進行抑制効果がもたらされる。実施例1に比べると、PSFの分布半径のδ0maxは7.22分より10.0分に拡大していて、より高い近視進行抑制効果が期待できる。
<実施例5>
以下の点で実施例4とは異なる眼鏡レンズを作製した。実施例5では、平面視にて凸状領域同士を離間させた。以下の点以外は実施例4と同様とした。その他の条件は実施例4及び表1に記載の通りとした。
図24(a)は、実施例5の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図24(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。
図25は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例のプロットである。偏角関数の式は、以下の[数16]で表される。
Figure 0007358619000017
図26は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例のプロットである。断面パワー関数の式は、以下の[数17]で表される。
Figure 0007358619000018
図27は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例5のプロットである。
図27に示すように、視角間20.0分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高くなっており、実施例5の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。なお、これまでに記載の実施例に比べ、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロ近傍となる際の視角幅が狭くなっているものの、視角ゼロ以外の視角にて光量密度を確保できており、近視進行抑制効果がもたらされる。実施例4に比べると、PSFの分布半径のδ0maxは10.0分で同じだが、周辺の分布が高く全体的に平坦になっている。これにより、網膜上光量分布の大きさの変化が感知しやすくなり、近視進行抑制効果向上が期待できる。
<実施例6>
実施例6では、以下の点で実施例4とは異なる眼鏡レンズを作製した。
・平面視にて凸状領域同士を重複させた。
・個々の凸状領域のサイズを拡大しながら、4mm直径円内に凸状領域7個入ることを維持した。
図28(a)は、処方度数の眼鏡レンズと眼球を合わせて一つの光学系と考えた場合において、無限遠方物体からの入射光束が、実施例6の眼鏡レンズの複数の凸状領域を通過して網膜上に入射する様子を示す概略側面図であり、図28(b)は、図28(a)により得られる像の概略図である。
図29(a)は、実施例6の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図29(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。
なお、実施例6では、実施例3の図1(b)の逆正三角形(以降、逆正三角形については同様。)の部分において中央部の面積と周辺部の面積とが1:1になるよう、中央部のサイズを決定している。
以下の点以外は実施例4と同様とした。
・凸状領域の平面視での形状:正六角形(最大径1.512mm)
・凸状領域の中央部の直径:0.972mm
・凸状領域の周辺部の形状:断面パワー12.936Dの円弧形状の回転対称非球面
(ベース領域寄りである外側偏角15.0分、中央部寄りである内側偏角3.0分)
・各凸状領域間のピッチ(凸状領域の中心間の距離):1.309mm
図30は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例6のプロットである。偏角曲線の式は、以下の[数18]で表される。
図31は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例6のプロットである。断面パワー曲線の式は、以下の[数19]で表される。
図32は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例6のプロットである。
図32に示すように、視角間30.0分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高くなっており、実施例6の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。なお、これまでに記載の実施例に比べ、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロ近傍となる際の視角幅が狭くなっているものの、視角ゼロ以外の視角にて光量密度を確保できており、近視進行抑制効果がもたらされる。
<実施例7>
実施例7は、以下の点で実施例6とは異なる。
・凸状領域の周辺部の形状:曲率が変化する断面曲線の回転対称非球面(ベース領域寄りである外側偏角15.0分、中央部寄りである内側偏角3.0分)
その他の条件は実施例6及び表1に記載の通りとした。
図33(a)は、実施例7の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図33(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。
なお、実施例7では、実施例3の図1(b)の逆正三角形(以降、逆正三角形については同様。)の部分において中央部の面積と周辺部の面積とが1:1になるよう、中央部のサイズを決定している。
図34は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例7のプロットである。偏角曲線の式は、以下の[数20]で表される。
Figure 0007358619000021
図35は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例7のプロットである。断面パワー曲線の式は、以下の[数21]で表される。
Figure 0007358619000022
図36は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例7のプロットである。
図36に示すように、視角直径30.0分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高くなっており、実施例7の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。なお、これまでに記載の実施例に比べ、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロ近傍となる際の視角幅が狭くなっているものの、視角ゼロ以外の視角にて光量密度を確保できており、近視進行抑制効果がもたらされる。実施例6に比べると、PSFの分布半径のδ0maxは15.0分で同じだが、周辺の分布が高く全体的に平坦になっている。これにより、網膜上光量分布の大きさの変化が感知しやすくなり、近視進行抑制効果向上が期待できる。
<実施例8>
実施例8は、以下の点で実施例7とは異なる。
・レンズ上直径4mm円範囲に凸状領域19個。
・凸状領域の平面視での形状:正六角形(最大径0.9177mm)
・凸状領域の中央部の直径:0.5901mm
・凸状領域の周辺部の形状:曲率が変化する断面曲線の回転対称非球面(ベース領域寄りである外側偏角10.0分、中央部寄りである内側偏角2.0分)
・各凸状領域間のピッチ(凸状領域の中心間の距離):0.7947mm
その他の条件は実施例7及び表1に記載の通りとした。
図37(a)は、実施例8の眼鏡レンズの4mmサイズ円内(瞳孔サイズ想定)に配置された凸状領域の数と様子を示す概略平面図であり、図37(b)は、そのうち隣接した3個の凸状領域のサイズと間隔を示した平面図である。
なお、実施例では、実施例3の図1(b)の逆正三角形(以降、逆正三角形については同様。)の部分において中央部の面積と周辺部の面積とが1:1になるよう、中央部のサイズを決定している。
図38は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、偏角δ[分]をY軸としたときの実施例8のプロットである。偏角曲線の式は、以下の[数22]で表される。
Figure 0007358619000023
図39は、凸状領域の中心からの半径位置[mm]をX軸、断面パワーP[D]をY軸としたときの実施例8のプロットである。断面パワー曲線の式は、以下の[数23]で表される。
Figure 0007358619000024
図40は、視角[分]をX軸、PSFの値(光量密度)をY軸としたときの実施例8のプロットである。
図40に示すように、視角直径20.0分の間にて、視角ゼロだと光量密度が非常に高くなっており、実施例8の眼鏡レンズならば物体を良好に視認できる。なお、これまでに記載の実施例に比べ、視角ゼロの近傍の視角において光量密度がゼロ近傍となる際の視角幅が狭くなっているものの、視角ゼロ以外の視角にて光量密度を確保できており、近視進行抑制効果がもたらされる。実施例7と同様、PSFの分布は周辺が高く全体的に平坦になっている。これにより、網膜上光量分布の大きさの変化が感知しやすくなり、近視進行抑制効果向上が期待できる。実施例7に比べ、瞳孔サイズ内に凸状領域の数が多く、視線移動に感じる光の揺らぎが少なく、装用感が向上すると期待できる。
以上の実施例のPSF計算は、眼鏡と眼球モデルを一つの理想光学系として扱い、光線もすべて近軸近似で計算している。実際の眼球光学系は収差を持っていて、状況がより複雑になっているが、基本的な関係、例えば、網膜に発散光が入射されている場合、調節微動で大きさの変化方向など、は大きく変わらない。
図41は、PSF計算の説明図である。
詳しく言うと、図41(a)は、入射瞳の中心(すなわち眼鏡レンズ上の中心)からの半径位置rをX軸、偏角δをY軸としたときにr増加に対してδが単調増加する説明用プロットである。図41(b)と図41(c)は凸状領域に入射する光量密度と網膜上光斑の光量密度の関係を導き出すための図である。
図41(b)において、仮に入射瞳(凸状領域)の均等分布光量の光量密度がeとすると、位置rにおけるdr範囲の環状領域の面積は2πrdrとなり、その領域内の光量は2πredrとなる。
図41(c)において、位置rにおける偏角座標系で位置δにおけるdδ範囲のリングの面積は2πδdδなので、光量密度は(2πredr)/(2πδdδ)=e×r/(δ(dδ/dr))となる。
その結果、PSFは以下の式で表される。

Claims (4)

  1. 物体側の面から入射した光束を眼球側の面から出射させ、眼を介して網膜上の位置Aに収束させるベース領域と、
    前記ベース領域と接し且つ眼鏡レンズの表面から突出した複数の凸状領域と、
    を備え、
    前記凸状領域の各々は、中央部である第1部分と、周辺部である第2部分とを含み、
    前記第1部分の屈折力は、前記ベース領域の屈折力の±0.12Dの範囲内の値であり、
    前記第2部分を通過する光束が前記位置Aに発散光として入射する、近視進行抑制レンズであって、
    視角[分]をX軸、PSFの値をY軸としたときのプロットにおいて、
    視角ゼロでのPSFの値のピークの外側であって視角ゼロからX軸のプラス側においてPSFの値がゼロとなり、そのPSFの値がゼロとなる視角から更に外側であるX軸のプラス側においてPSFの値がゼロより高く、且つ、
    視角ゼロでのPSFの値のピークの外側であって視角ゼロからX軸のマイナス側においてPSFの値がゼロとなり、そのPSFの値がゼロとなる視角から更に外側であるX軸のマイナス側においてPSFの値がゼロより高い、眼鏡レンズ。
    なお、前記視角は、注視線以外の物体点と眼球入射瞳をつなぐ直線と注視線との角度である。
    また、前記PSFの値は、収差を考慮しない近軸計算において、点拡がり関数により得られる値であり、光線追跡法により得られるパラメータである。前記PSFの値は、点光源から発射した4mmφの光線を追跡し、任意の面上の光斑の光量密度を計算しつつ、複数の該任意の面のPSFを比較して最も光線が集光する面におけるPSFの値である。
  2. 前記第2部分は球面形状である、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
  3. 前記第2部分は非球面の曲面形状である、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
  4. 前記第1部分は、ベース領域に対し追加プリズム作用を持たない、請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
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