JP7357391B2 - ジアミン化合物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジアミン化合物およびその製造方法に関し、より詳細には、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの高分子材料を構成し得るモノマーまたは硬化剤、あるいは当該高分子材料と共存して使用され得る添加剤として有用なジアミン化合物およびその製造方法に関する。
高分子で構成される樹脂材料は、塗料、建築用材料、床材、土木材、電子部材などの幅広い用途に利用されている。これらの用途に応じて、要求される特性が異なることから、その特性を満たす樹脂材料の種類も多岐に亘っている。
中でも特に、主鎖が芳香環で構成された高分子であるエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの樹脂材料は、機械特性および電気特性などに優れる反面、硬くて脆いという性質を有し、一般に耐衝撃性や靭性に乏しいことが指摘されている。したがって、用途によっては脆さを緩和する必要があり、これまでに様々な手段が提案されている。
このような手段の一つとして、高分子の主鎖中に柔軟鎖を導入することにより可撓性を付与して当該高分子を改質する方法が知られている。このような柔軟鎖の導入する方法として、例えば熱硬化性樹脂を製造する場合には、柔軟鎖(例えばエーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基などの極性基)を有する化合物を主剤または硬化剤として使用することが知られている。あるいは、熱可塑性樹脂を製造する場合には、このような柔軟鎖を有する化合物を原料のモノマーとして使用することが知られている。
しかし、これらの方法では、相溶性や粘度が低下する、硬化性が低下する、得られる硬化物に対して可撓性以外の諸特性が変化する、などの所望でない他の特性が変化または低減することがある。これらは、柔軟鎖として導入する上記極性基を介在させるために生じていると考えられる。
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、エポキシ樹脂などの樹脂の構成分子中に極性基を導入することなく、かつ当該樹脂に対して可撓性を付与することができ、かつ他の特性には影響をほとんど及ぼすことのない樹脂添加剤として使用され得るジアミン化合物およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、以下の式(I):
Figure 0007357391000001
式(I)中、
は、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基またはアルケニレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基またはアルケニレン基である、
で表される、ジアミン化合物である。
1つの実施形態では、式(I)において、Rを構成するアルキレン基またはアルケニレン基の主鎖部分がC2n個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有する。
1つの実施形態では、式(I)において、Rを構成する前記C14~C28の直鎖アルキレン基または直鎖アルケニレン基が、エチル基で構成される分岐鎖を有する。
1つの実施形態では、本発明のジアミン化合物は、7-エチルヘキサデカンジアミン、7,12-ジメチルオクタデカンジアミン-7,11-エン、または8,13-ジメチルオクタデカンジアミン-8,12-エンである。
本発明はまた、上記式(I)で表されるジアミン化合物の製造方法であって、
以下の式(II):
Figure 0007357391000002
で表される二塩基酸エステル類とヒドラジンとを反応させてジヒドラジド化合物を得る工程、
該ジヒドラジド化合物を亜硝酸化合物と反応させてアジ化物を得る工程、および
該アジ化物を加熱転位かつ加水分解する工程、
を包含し、
式(II)中、
は、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基またはアルケニレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基またはアルケニレン基であり、
は、C~Cの直鎖アルキル基である、
方法である。
1つの実施形態では、式(II)において、Rを構成するアルキレン基またはアルケニレン基の主鎖部分がC2n個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有する。
本発明はまた、上記式(I)で表されるジアミン化合物の製造方法であって、
以下の式(III):
Figure 0007357391000003
で表される二塩基酸とアンモニアとを反応させてジアミド化合物を得る工程、および
該ジアミド化合物をニトリル化しかつ水素還元する工程、
を包含し、
式(III)中、
は、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基またはアルケニレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基またはアルケニレン基である、
方法である。
1つの実施形態では、式(III)において、Rを構成するアルキレン基またはアルケニレン基の主鎖部分がC2n個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有する。
本発明はまた、上記ジアミン化合物を含有する、樹脂添加剤である。
本発明はまた、樹脂と、上記樹脂添加剤とを含有する、樹脂組成物である。
本発明はまた、1つまたはそれ以上のモノマー化合物および上記樹脂添加剤から構成される樹脂を含有する、樹脂組成物である。
本発明はまた、上記ジアミン化合物を含有する、金属製品用潤滑防錆剤である。
本発明によれば、例えば、エポキシ樹脂のような樹脂に対して可撓性を提供することができる。その一方で、当該樹脂のその他の特性を大きく変化させることは回避される。本発明のジアミン化合物は、このような樹脂添加剤の他、カチオン界面活性剤としての柔軟剤、防錆剤などの有効成分としても応用することができる。
以下、本発明について詳述する。
(ジアミン化合物)
本発明のジアミン化合物は、以下の式(I):
Figure 0007357391000004
で表される化合物である。ここで、式(I)中、Rは、全炭素数がC14~C28、好ましくはC16~C24、より好ましくはC18~C22であるアルキレン基またはアルケニレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基またはアルケニレン基である。
本明細書中で用いられる用語「全炭素数がC14~C28であるアルキレン基またはアルケニレン基」とは、炭素数14~28を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基および炭素数14~28を有する直鎖状または分岐鎖状のアルケニレン基を包含していう。
炭素数14~28を有するアルキレン基またはアルケニレン基の例としては、全炭素数がC14~C28でありかつ直鎖状であるアルキレン基;全炭素数がC14~C28でありかつ1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基;全炭素数がC14~C28でありかつ直鎖状であるアルケニレン基;全炭素数がC14~C28でありかつ1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルケニレン基;が挙げられる。
全炭素数がC14~C28でありかつ直鎖状であるアルキレン基としては、例えば、n-テトラデカニレン基、n-ペンタデカニレン基、n-ヘキサデカニレン基、n-ヘプタデカニレン基、n-オクタデカニレン基、n-ノナデカニレン基、n-イコサニレン基、n-ヘンイコサニレン基、n-ドコサニレン基、n-トリコサニレン基、n-テトラコサニレン基、n-ペンタコサニレン基、n-ヘキサコサニレン基、n-ヘプタコサニレン基、およびn-オクタコサニレン基が挙げられる。全炭素数がC14~C28でありかつ直鎖状であるアルケニレン基としては、例えば、テトラデケニレン基、ペンタデケニレン基、ヘキサデケニレン基、ヘプタデケニレン基、オクタデケニレン基、ノナデケニレン基、イコセニレン基、ヘンイコセニレン基、ドコセニレン基、トリコセニレン基、テトラコセニレン基、ペンタコセニレン基、ヘキサコセニレン基、ヘプタコセニレン基、およびオクタコセニレン基が挙げられる。
「全炭素数がC14~C28でありかつ1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基」は、C~Cアルキル基およびC~Cアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1つの基を分岐鎖として含む、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基を指して言う。「全炭素数がC14~C28でありかつ1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルケニレン基」は、C~Cアルキル基およびC~Cアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1つの基を分岐鎖として含む、全炭素数がC14~C28であるアルケニレン基を指して言う。C~Cのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、およびtert-ブチル基が挙げられる。C~Cのアルケニル基の例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、および3-ブテニル基が挙げられる。
本発明のジアミン化合物は、例えば、後述する樹脂添加剤の構成成分として使用する場合、得られる樹脂組成物に適切な可撓性を付与することができるという点から、式(I)のRは、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることが好ましく、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、1つのC~Cのアルキル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることがより好ましく、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、1つのエチル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることがさらにより好ましい。
あるいは、本発明のジアミン化合物は、後述するように市販の二塩基酸またはその誘導体を用いて簡便に製造することができるという点から、上記式(I)において、Rを構成するアルキレン基またはアルケニレン基の主鎖部分(すなわち、分岐鎖を除いた鎖式炭化水素部分)がC2n個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有することが好ましい。
このようなジアミン化合物のより具体例としては、
テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、オクタデカンジアミン、エイコサジアミン、ドコサジアミン、テトラコサジアミン、オクタコサジアミンなどの直鎖飽和ジアミン;
テトラデカンジアミン-7-エン、ヘキサデカンジアミン-6-エン、ヘキサデカンジアミン-8-エン、オクタデカンジアミン-8-エン、オクタデカンジアミン-10-エン、エイコサジアミン-6-エン、エイコサジアミン-8-エン、エイコサジアミン-12-エン、エイコサジアミン-8,12-ジエン、エイコサジアミン-10,14-ジエン、ドコサジアミン-7,11,15-トリエン、ドコサジアミン-8,12,16-トリエン、1,24-テトラコサジアミン-8,12,16-トリエン、テトラコサジアミン-10,14,18-トリエンなどの直鎖不飽和ジアミン;
6,8-ジメチルテトラデカンジアミン、7-エチルテトラデカンジアミン、7-プロピルテトラデカンジアミン、7-エチルヘキサデカンジアミン、7-ブチルヘキサデカンジアミン、7-イソプロピル-10-メチルヘキサデカンジアミン、8-エチルオクタデカンジアミン、8-イソプロピル-11-メチルオクタデカンジアミン、8,13-ジエチルオクタデカンジアミン、8,13-ジメチルエイコサジアミン、9,12-ジメチルエイコサジアミン、9,12-ジエチルエイコサジアミンなどの分岐飽和ジアミン;
7-ビニルテトラデカンジアミン、7-ビニルヘキサデカンジアミン-8-エン、7-イソプロぺニル-10-メチルヘキサデカンジアミン-9-エン、8-ビニル-オクタデカンジアミン-9-エン、7,12-ジメチルオクタデカンジアミン-7,11-ジエン、7,12-ジエチルオクタデカンジアミン-7,11-ジエン、8-イソプロぺニル-11-メチルオクタデカンジアミン-10-エン、8-エチル-11-イソプロぺニルオクタデカンジアミン-10-エン、8,13-ジメチルエイコサジアミン-8,12-ジエン、9,12-ジメチルエイコサジアミン-8,12-ジエン、などの分岐不飽和ジアミン;
などが挙げられる。
(ジアミン化合物の製造方法)
上記式(I)で表されるジアミン化合物は、例えば以下の第1の方法または第2の方法によって製造することができる。
式(I)で表されるジアミン化合物の第1の製造方法について説明する。
本発明の第1の方法では、まず以下の式(II):
Figure 0007357391000005
で表される二塩基酸エステル類とヒドラジンとを反応させて、ジヒドラジド化合物が合成される。
式(II)中、Rは、全炭素数がC14~C28、好ましくはC16~C24、より好ましくはC18~C22であるアルキレン基またはアルケニレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基またはアルケニレン基であり、Rは、C~Cの直鎖アルキル基である。
式(II)において、Rは上記式(I)において定義したものと同様である。
式(II)において、ジアミン化合物が、例えば、後述する樹脂添加剤の構成成分として使用される場合、得られる樹脂組成物に適切な可撓性を付与することができるという点から、Rは、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることが好ましく、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、1つのC~Cのアルキル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることがより好ましく、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、1つのエチル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることがさらにより好ましい。あるいは、式(II)で表される化合物は、後述するように市販により入手が容易であるとの理由から、上記式(II)において、Rを構成するアルキレン基またはアルケニレン基の主鎖部分(すなわち、分岐鎖を除いた鎖式炭化水素部分)がC2n個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有することが好ましい。
一方、式(II)において、Rを構成し得るC~Cの直鎖アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびn-ブチル基が挙げられる。
上記式(II)で表される二塩基酸エステル類は公知であり、例えば岡村製油株式会社により市販されている。
式(II)で表される二塩基酸エステル類とヒドラジンとの反応は、適切な有機溶媒中で例えば加熱還流することにより行われる。使用可能な有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどのアルコール類が挙げられる。加熱還流に要する時間は、使用する二塩基酸エステル類および量に応じて当業者により適宜選択され得る。
このようにして、式(II)の二塩基酸エステル類がヒドラジド化され、ジヒドラジド化合物(カルボン酸ヒドラジド)を得ることができる。
次いで、このジヒドラジド化合物は亜硝酸化合物を反応させてアジ化物が生成される。
本発明において、亜硝酸化合物は、上記ジヒドラジド化合物(カルボン酸ヒドラジド)からアジ化物(カルボン酸アジド)を生成可能な化合物である。亜硝酸化合物の例としては、亜硝酸塩および亜硝酸エステルが挙げられる。
このアジ化物の生成において、反応条件は当業者によって適宜選択され得る。
その後、アジ化物は加熱転位され加水分解される。
具体的には、アジ化物は加熱によるCurtius転位を通じてイソシアネートに変換され、その後の加水分解によって、上記式(I)で表されるジアミン化合物が生成される。なお、このCurtius転位および加水分解の各条件もまた当業者によって適宜選択され得る。
次に、式(I)で表されるジアミン化合物の第2の製造方法について説明する。
本発明の第2の方法では、まず以下の式(III):
Figure 0007357391000006
で表される二塩基酸とアンモニアとを反応させてジアミド化合物が作製される。
式(III)中、Rは、全炭素数がC14~C28、好ましくはC16~C24、より好ましくはC18~C22であるアルキレン基またはアルケニレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基および/またはアルケニル基の分岐鎖を有する、アルキレン基またはアルケニレン基である。
式(III)において、Rは上記式(I)において定義したものと同様である。
式(III)において、得られるジアミン化合物が、例えば、後述する樹脂添加剤の構成成分として使用される場合、得られる樹脂組成物に適切な可撓性を付与することができるという点から、Rは、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、直鎖状であるか、あるいは1つまたは複数のC~Cのアルキル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることが好ましく、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、1つのC~Cのアルキル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることがより好ましく、全炭素数がC14~C28であるアルキレン基であって、1つのエチル基の分岐鎖を有するアルキレン基であることがさらにより好ましい。あるいは、式(III)で表される化合物は、後述するように市販により入手が容易であるとの理由から、上記式(III)において、Rを構成するアルキレン基またはアルケニレン基の主鎖部分(すなわち、分岐鎖を除いた鎖式炭化水素部分)がC2n個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有することが好ましい。
上記式(III)で表される二塩基酸は公知であり、例えば岡村製油株式会社により市販されている。
式(III)で表される二塩基酸とアンモニアとの反応は、好ましくは加圧かつ加熱下で行われる。加圧および加熱の条件ならびにそれに要する時間は、使用する二塩基酸および量に応じて当業者により適宜選択され得る。
このようにして、式(III)の二塩基酸からジアミド化合物を得ることができる。
次いで、このジアミド化合物はニトリル化されかつ水素還元される。
ニトリル化および水素還元の条件は特に限定されず、当業者によって適切な条件が適宜選択され得る。
このようにして、本発明の上記式(I)で表されるジアミン化合物が製造される。
(樹脂添加剤および樹脂組成物)
本発明の樹脂添加剤は、上記式(I)で表されるジアミン化合物を含有する。
ここで、本明細書中に用いられる用語「樹脂添加剤」は、広義の意味で用いられ、例えば、(1)樹脂組成物を構成するにあたり、構成成分である樹脂とは独立して添加されることにより、得られる樹脂組成物の安定性の向上および/または機能性の付与に起因するもの(例えば、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定性の向上を可能にするもの、および/または可塑剤、難燃剤、核剤、透明化剤、帯電防止剤、滑剤などの所定の機能を付与し得るもの);(2)樹脂組成物を構成するにあたり、構成成分である樹脂に対して物理的または化学的に連結または反応させるもの(例えば架橋剤、硬化剤);ならびに(3)反応を通じて樹脂自体を構成することができるもの(例えば原料モノマー);を包含して言う。
本発明の樹脂添加剤では、上記式(I)で表されるジアミン化合物以外に、通常の樹脂組成物において添加され得る他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、および/またはリン系酸化防止剤などの酸化防止剤;アニオン系活性剤、カチオン系活性剤、非イオン系活性剤、両性活性剤などの帯電防止剤;炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、金属石ケン系滑剤、エステル系滑剤などの滑剤;有機系難燃剤、無機系難燃剤などの難燃剤;ならびにそれらの組み合わせ;が挙げられる。本発明の樹脂添加剤において含有され得る上記他の成分の含有量は、特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
1つの実施形態では、本発明の樹脂組成物は、上記樹脂添加剤および樹脂を含有する(以下、このような樹脂組成物を「第1の樹脂組成物」という)。
本発明の第1の樹脂組成物を構成し得る樹脂は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であり、例えば、アミノ基との反応により得られる各種樹脂が挙げられる。このような例としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド、マレイミド樹脂、ポリアミドなどが挙げられる。適切な可撓性を付与することができるとの理由から、上記樹脂添加剤(すなわち、式(I)で表されるジアミン化合物)は、好ましくは上記樹脂の硬化剤または樹脂構成材料、より好ましくはエポキシ樹脂の硬化剤として用いられ得る。
本発明の第1の樹脂組成物において、上記樹脂および樹脂添加剤の含有量は特に限定されず、当業者によって適切な含有量が選択され得る。
1つの実施形態では、本発明の樹脂組成物は、1つまたはそれ以上のモノマー化合物および上記樹脂添加剤から構成される樹脂を含有する(以下、このような樹脂組成物を「第2の樹脂組成物」という)。
本発明の第2の樹脂組成物を構成し得るモノマー化合物は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を構成し得る1つまたはそれ以上の化合物であって、例えば、ε-カプロラクタム;ウンデカンラムタム;ラウリルラクタム;ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との組み合わせ;ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との組み合わせ;ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との組み合わせ;ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との組み合わせ;ノナンジアミンとテレフタル酸との組み合わせ;メチルペンタンジアミンとテレフタル酸との組み合わせ;ε-カプロラクタムとラウリルラクタムとの組み合わせ;p-フェニレンジアミンとテレフタル酸との組み合わせ;m-フェニレンジアミンとイソフタル酸との組み合わせ;ピロメリット酸無水物;無水トリメリット酸とジイソシアネート類との組み合わせ;ならびに無水トリメリット酸クロライドとジアミン類との組み合わせ;が挙げられる。
本発明の第2の樹脂組成物においては、上記モノマー化合物の1つまたはそれ以上に対して、上記樹脂添加剤(または上記式(I)で表されるジアミン化合物)は樹脂を構成するためのモノマー成分として機能し得る。上記モノマー化合物と、上記樹脂添加剤(または上記式(I)で表されるジアミン化合物)とは、例えば当業者に公知のカップリング反応を利用して高分子化することができる。モノマー化合物と上記樹脂添加剤(または上記式(I)で表されるジアミン化合物)との混合割合は特に限定されず、様々な含有量の組み合わせが当業者によって適宜選択され得る。これにより、1つまたはそれ以上のモノマー化合物および上記樹脂添加剤から構成される樹脂が作製される。
本発明の第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物はまた、いずれもその他の樹脂添加剤を含有していてもよい。このようなその他の樹脂添加剤の例としては、特に限定されないが、上記本発明の樹脂添加剤に含有されていてもよい他の成分に包含されるものが挙げられる。本発明の樹脂添加剤において含有され得る上記他の樹脂添加剤の配合量は、特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
本発明の第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物はいずれも、例えば含有される樹脂添加剤(すなわち、式(I)で表されるジアミン化合物)によって構成成分の樹脂に対して適切な可撓性を付与することができる。その際、本発明の第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、上述したような樹脂の構成分子に極性基の柔軟鎖を導入する場合と比較して、好ましくは可撓性以外の他の特性には大きな変動がない。また、このような樹脂添加剤によって付与される可撓性は、例えば樹脂添加剤の配合量によって容易に調製可能である。なお、本発明の第2の樹脂組成物に含有される樹脂が、主鎖が芳香環で構成された高分子であるエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等の樹脂である場合、このような樹脂は、例えば、低誘電率、低誘電正接、低伝送損失等の点で優れた物性を有し得る。このため、本発明の第2の樹脂組成物は、例えば電子材料分野における有用性が期待される。
(その他の用途)
式(I)で表されるジアミン化合物は、上記のような樹脂添加剤以外のその他の用途にも応用可能である。このような他の用途の例としては、柔軟剤、帯電防止剤、および金属製品(例えば、鉄鋼、ステンレススチール、アルミニウムの各製品)の腐食を防止し得る潤滑防錆剤などの界面活性剤(例えばカチオン系界面活性剤)が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:C18飽和分岐ジアミン化合物の合成)
温度計および撹拌機を備えた5Lの四つ口フラスコに、長鎖二塩基酸ジエステル(岡村製油株式会社製SB-20MM/主成分:イソエイコサ二酸ジメチル、分子量370)1500gおよびヒドラジン1水和物804g(16.1mol)と、溶媒として2-プロパノール1500mLを仕込み、5時間還流させた。反応終了後、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、イソエイコサ二酸ジメチルのエステル結合に対応するピーク(1731cm-1)の消失ならびにヒドラジド結合に対応するピーク(1627cm-1および1533cm-1)の生成を確認した。併せて、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS-20:株式会社島津製作所製)により、原料であるイソエイコサ二酸ジメチル(分子量370)のピークの消失と、イソエイコサ二酸ジヒドラジド(分子量370)に対応する新たなピークの出現を確認した。このようにしてイソエイコサ二酸ジヒドラジドに対応するジヒドラジド1aを得た。
温度計、撹拌機および滴下ロートを備える5Lの四つ口フラスコに、上記で得られたジヒドラジド1a(450g)、水2100mL、35%塩酸759gを添加し、撹拌しながら温度を10℃以下にまで冷却した。次いで、水300mLに溶解させた亜硝酸ナトリウム170g(2.5mol)水溶液を、10℃以下を維持しながら滴下し、この溶液中でアジ化物を生成した。その後、得られた溶液を還流下で加熱して、この生成したアジ化物をCurtius転位し、窒素および二酸化炭素の発生を目視により確認した。さらに続けて、3時間還流した後、49%水酸化ナトリウム水溶液714g(8.7 mol)を加えて加水分解し、トルエンでジアミンを抽出し、水洗した。さらに減圧下にてトルエンを留去し、JIS K 7237に準じてアミン価を測定したところ、アミン価321のC18飽和分岐ジアミン1bを221.3g得た。
得られたジアミン1bについて、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、上記ジヒドラジド1aで観察されたヒドラジド結合に対応するピーク(1627cm-1および1533cm-1)の消失を確認し、かつアミノ基に対応するピーク(1722cm-1および1571cm-1)の新たな出現を確認した。また、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS-20:株式会社島津製作所製)により、ジヒドラジド1a(分子量370)で確認されたピークの消失を確認した。さらに、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSQP-2010:株式会社島津製作所製)により、ジアミン1b中には、主成分であるC18飽和分岐ジアミンとして、7-エチルヘキサデカンジアミン、およびC16飽和分岐ジアミンとして7―エチルテトラデカンジアミン(分子量256)が含まれていることを確認した。それらの特徴的なフラグメントは以下の通りであった。
(7-エチルヘキサデカンジアミン)
m/z 284(分子イオンピーク)、m/z 100(基準ピーク)
(7-エチルテトラデカンジアミン)
m/z 256(分子イオンピーク)、m/z 100(基準ピーク)
次いで、上記で得られたジアミン1bをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=3/1(容量比))にて精製し、主成分として7-エチルヘキサデカンジアミン(91%)および7―エチルテトラデカンジアミン(3%)をそれぞれ単離した。単離した各々のジアミンについて、H NMR分析(Mercury-300:Varian社製)を行った。δ値を表1に示す(CDCl)。
Figure 0007357391000007
(実施例2:C20不飽和分岐ジアミン化合物の合成)
長鎖二塩基酸ジエステル(岡村製油株式会社製IPU-22MM/主成分:イソドコサジエン二酸ジメチル、分子量394)1000g、ヒドラジン1水和物527g(10.5mol)、および溶媒として2-プロパノール1000mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてジヒドラジド2a(イソドコサジエン二酸ジヒドラジド)999gを得た。
得られたジヒドラジド2aについて、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、イソドコサジエン二酸ジメチルのエステル結合に対応するピーク(1731cm-1)の消失ならびにヒドラジド結合に対応するピーク(1627cm-1および1533cm-1)の生成を確認した。併せて、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS-20:株式会社島津製作所製)により、原料であるイソエイコサ二酸ジメチル(分子量394)のピークの消失と、イソドコサジエン二酸ジヒドラジド(分子量394)に対応する新たなピークの出現を確認した。
ジヒドラジド1aの代わりに400g(1.0mol)の上記で得られたジヒドラジド2aを用い、塩酸の代わりに582g(6.1mol)のメタンスルホン酸を用い、亜硝酸ナトリウムの量を167g(2.4mol)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アミン価339のC20不飽和分岐ジアミン2bを100.7g得た。
得られたジアミン2bについて、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、上記ジヒドラジド2aで観察されたヒドラジド結合に対応するピーク(1627cm-1および1533cm-1)の消失を確認し、かつアミノ基に対応するピーク(1722cm-1および1572cm-1)の新たな出現を確認した。また、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS-20:株式会社島津製作所製)により、ジヒドラジド2a(分子量394)で確認されたピークの消失を確認した。さらに、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSQP-2010:株式会社島津製作所製)により、ジアミン2b中には、主成分であるC20不飽和分岐ジアミンとして、7,12ジメチルオクタデカンジアミン-7,11-ジエンおよび7-イソプロぺニル-10-メチルヘキサデカンジアミン-9-エン(分子量308)が含まれていることを確認した。それらの特徴的なフラグメントは以下の通りであった。
(7,12-ジメチルオクタデカンジアミン-7,11-ジエン)
m/z 308(分子イオンピーク)、m/z 181(基準ピーク)
(7-イソプロぺニル-10-メチルヘキサデカンジアミン-9-エン)
m/z 308(分子イオンピーク)、m/z 100(基準ピーク)
次いで、上記で得られたジアミン2bをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=3/1(容量比))にて精製し、主成分として7,12ジメチル-7,11-エイコサジアミン-7,11-ジエン(49%)および7-イソブテニル-10-メチルヘキサデカンジアミン-9-エン(30%)をそれぞれ単離した。単離した各々のジアミンについて、H NMR分析(Mercury-300:Varian社製)を行った。δ値を表2に示す(CDCl)。
Figure 0007357391000008
(実施例3:C22不飽和分岐ジアミン化合物の合成)
温度計および撹拌機を備える5Lのオートクレーブに長鎖二塩基酸(岡村製油株式会社製IPU-22/主成分:イソドコサジエン二酸、分子量366)1661g、およびシリカゲル50gを仕込み、加圧条件下にて300℃で2時間、アンモニアガス300g(17.6mol)と反応させた。次いで、メタノール650mL、および活性炭担持ニッケル70gを投入し、加圧条件下でさらにアンモニアガス130g(7.6mol)および水素ガス420g(210mol)と180℃で2時間反応させた。冷却後、得られた反応液を濾過し、希硫酸を添加して下層を除去した。有機層を水洗し、減圧下水分を除去することによりアミン価290のジアミン3を1495g得た。
得られたジアミン3について、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、原料のイソドコサジエン二酸に由来するカルボキシル基に対応するピーク(1711cm-1)の消失を確認し、かつアミノ基に対応するピーク(1722cm-1および1572cm-1)の新たな出現を確認した。さらに、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSQP-2010:株式会社島津製作所製)により、原料のイソドコサジエン二酸(分子量366)に対応するピークの消失を確認した。加えて、ジアミン2b中には、主成分であるC20不飽和分岐ジアミンとして、8,13-ジメチル-8,12-ドコサジエンジアミンおよび8-イソプロぺニル-11-メチル-10-オクタデカエンジアミン(分子量336)が含まれていることを確認した。それらの特徴的なフラグメントは以下の通りであった。
(8,13-ジメチルエイコサジアミン-8,12-ジエン)
m/z 336(分子イオンピーク)、m/z 195(基準ピーク)
(8-イソプロぺニル-11-メチルオクタデカンジアミン-10-エン)
m/z 336(分子イオンピーク)、m/z 114(基準ピーク)
次いで、上記で得られたジアミン3をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n-ヘキサン=3/1(容量比))にて精製し、主成分として8,13-ジメチルエイコサジアミン-8,12-ジエン(50%)および8-イソプロぺニル-11-メチルオクタデカンジアミン-10-エン(28%)をそれぞれ単離した。単離した各々のジアミンについて、H NMR分析(Mercury-300:Varian社製)を行った。δ値を表3に示す(CDCl)。
Figure 0007357391000009
(実施例4:エポキシ樹脂硬化物(E1)の作製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学株式会社製EPOMIC、エポキシ当量(以下WPE)188)10.0gと、硬化剤として実施例1で得られたジアミン1b4.4g(WPEに対し0.95当量)、および硬化促進剤としてN,N-ジメチルベンジルアミン0.1g(1phr)とを混合し、エポキシ樹脂組成物を作製した。次いで、この樹脂組成物10gを耐熱性容器に量りとり、70℃で15時間加熱し、加えて120℃で1時間加熱硬化させることによりエポキシ樹脂硬化物(E1)を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物(E1)について、示差走査熱量計(DSC)(株式会社島津製作所製DSC-60)を用い、サンプルを-50℃で10分間保持した後、1分当たり10℃の昇温速度で200℃まで加熱することにより、昇温に対する熱量変化からガラス転移点(Tg)を測定した。また、エポキシ樹脂硬化物(E1)のゲル化率を測定するため、5gのサンプルをアセトンにて5時間ソックスレー抽出した。抽出前の原料質量と抽出物の質量との比により樹脂のゲル化率を測定した。得られた結果を表4に示す。
(実施例5:エポキシ樹脂硬化物(E2)の作製)
硬化剤としてジアミン1bの代わりに実施例2で作製したジアミン2b(4.2g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(E2)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(E2)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
(実施例6:エポキシ樹脂硬化物(E3)の作製)
硬化剤としてジアミン1bの代わりに実施例3で作製したジアミン3(4.9g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(E3)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(E3)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
(比較例1:エポキシ樹脂硬化物(CE1)の作製)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにテトラエチレンペンタミン(1.4g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(CE1)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(CE1)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
(比較例2:エポキシ樹脂硬化物(CE2)の作製)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにトリエチレンテトラミン(1.2g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(CE2)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(CE2)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
(比較例3:エポキシ樹脂硬化物(CE3)の作製)
硬化剤として、ジアミン1bの代わりにヘキサメチレンジアミン(1.5g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(CE3)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(CE3)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
(比較例4:エポキシ樹脂硬化物(CE4)の作製)
硬化剤としてジアミン1bの代わりに1,10-デカンジアミン(2.1g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(CE4)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(CE4)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
(比較例5:エポキシ樹脂硬化物(CE5)の作製)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにポリエーテルジアミン(三井化学イファイン株式会社製Baxxodure EC302;平均分子量400)(5.6g)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化物(CE5)を作製した。得られたエポキシ樹脂硬化物(CE5)について、実施例1と同様にして硬化物のDSC分析とゲル化率の測定とを行った。得られた結果を表4に示す。
Figure 0007357391000010
表4に示すように、実施例4~6で作製されたエポキシ樹脂硬化物(E1)~(E3)は、比較例1および2の汎用アミン系硬化剤を用いたエポキシ樹脂硬化物(CE1)および(CE2)よりもTgが低く、さらに比較例3のCジアミンを用いたエポキシ樹脂硬化物(CE3)および比較例4のC10ジアミンを用いたエポキシ樹脂硬化物(CE4)よりもTgが低く、可撓性付与効果に優れていた。すなわち、1分子中、2つのアミノ基の間に配置される炭素鎖が長いものほど、エポキシ樹脂に対して高い可撓性を付与することができ、かつアミノ基と炭素鎖のみで構成されるジアミン1b、2bまたは3を用いた実施例1~3のエポキシ樹脂硬化物(E1)~(E3)は、ポリエーテル鎖を含む硬化剤を用いた比較例5のエポキシ樹脂硬化物(CE5)と略同等のTgおよびゲル化率を有していたことがわかる。
(実施例7:エポキシ樹脂組成物(EC1)の硬化性の評価)
硬化剤として実施例1で得られたジアミン1bを用い、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(EC1)50gを作製し、これをガラス製のサンプル管に仕込んだ。これを70℃のオイルバスに浸漬し、発熱硬化の様子として樹脂の温度を時間毎(20秒毎)にプロットした。得られた発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。なお、ポットライフはゲル化時間の0.8倍(×0.8)の値を算出した。得られた結果を表5に示す。
(実施例8:エポキシ樹脂組成物(EC2)の硬化性の評価)
硬化剤としてジアミン1bの代わりに実施例2で作製されたジアミン2b(21.0g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(EC2)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
(実施例9:エポキシ樹脂組成物(EC3)の硬化性の評価)
硬化剤としてジアミン1bの代わりに実施例3で作製されたジアミン3(24.5g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(EC3)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
(比較例6:エポキシ樹脂組成物(CC1)の硬化性の評価)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにテトラエチレンペンタミン(7.0g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(CC1)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
(比較例7:エポキシ樹脂組成物(CC2)の硬化性の評価)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにトリエチレンテトラミン(6.0g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(CC2)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
(比較例8:エポキシ樹脂組成物(CC3)の硬化性の評価)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにヘキサメチエレンジアミン(7.5g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(CC3)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
(比較例9:エポキシ樹脂組成物(CC4)の硬化性の評価)
硬化剤としてジアミン1bの代わりに1,10-デカンジアミン(10.5g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(CC4)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
(比較例10:エポキシ樹脂組成物(CC5)の硬化性の評価1)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにポリエーテルジアミン(28.0g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(CC5)を作製し、かつ実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線の作製を試みた。しかし、樹脂温度がオイルバス温度と同温となる70℃に達した後、30分を経過しても発熱を伴わず、この組成物(CC5)は硬化性が著しく低いことがわかった。
(比較例11:エポキシ樹脂組成物(CC5)の硬化性の評価2)
硬化剤としてジアミン1bの代わりにポリエーテルジアミン(28.0g)を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物(CC5)を作製し、かつオイルバス温度を120℃に設定したこと以外は実施例4と同様にして当該樹脂組成物の発熱硬化曲線から、ゲル化点、ゲル化時間、最高発熱点、最小硬化時間、およびポットライフを求めた。得られた結果を表5に示す。
Figure 0007357391000011
表5に示すように、実施例7~9で作製されたエポキシ樹脂組成物(EC1)~(EC3)は、ゲル化時間および最小硬化時間が長いため、比較例6~11のエポキシ樹脂組成物(CC1)~(CC6)のものよりもゆっくりと硬化する特徴を有していた。硬化時のポットライフは、実施例7~9で作製されたエポキシ樹脂組成物(EC1)~(EC3)が、比較例6~11のエポキシ樹脂組成物(CC1)~(CC6)に対して、約2~3倍の長さとなった。また、ゲル化温度および最高発熱点に注目すると、実施例7~9で作製されたエポキシ樹脂組成物(EC1)~(EC3)の発熱は、比較例6~11のエポキシ樹脂組成物(CC1)~(CC6)のものと同程度であり、高い反応性を示した可撓性付与剤であるポリエーテルジアミンは、比較例10ならびに11の結果から反応性が低いことが考察され、したがって低温での硬化性に劣るものであった。すなわち、実施例7~9で作製されたエポキシ樹脂組成物(EC1)~(EC3)に使用したジアミン1b、2bおよび3は、市販のアミン系硬化剤としても知られている比較例6~11のエポキシ樹脂組成物(CC1)~(CC6)の硬化剤よりもポットライフが長く、また他の可撓性付与剤よりも低温硬化性に優れたものであるとわかる。
(実施例10:エポキシ樹脂硬化物(E1)の耐水性)
実施例4で作製したエポキシ樹脂硬化物(E1)(硬化剤としてジアミン1bを含有)を、煮沸した水中に投入し、1時間煮沸した。投入前の樹脂と1時間煮沸後の樹脂(なお、表面に付着した水分は取り除いた)の質量を測定し、以下の式:
吸水率(%)=(煮沸後の樹脂質量-投入前の樹脂質量)/(投入前の樹脂質量)×100
からエポキシ樹脂硬化物(E1)の吸水率(%)を算出し、これをエポキシ樹脂硬化物(E1)の耐水性として評価した。得られた結果を表6に示す。
(実施例11:エポキシ樹脂硬化物(E2)の耐水性)
エポキシ樹脂硬化物(E1)の代わりに実施例5で作製したエポキシ樹脂硬化物(E2)(硬化剤としてジアミン2bを含有)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、硬化物の煮沸を行い、エポキシ樹脂硬化物(E2)の吸水率(%)を算出した。得られた結果を表6に示す。
(実施例12:エポキシ樹脂硬化物(E3)の耐水性)
エポキシ樹脂硬化物(E1)の代わりに実施例6で作製したエポキシ樹脂硬化物(E3)(硬化剤としてジアミン3を含有)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、硬化物の煮沸を行い、エポキシ樹脂硬化物(E3)の吸水率(%)を算出した。得られた結果を表6に示す。
(比較例12:エポキシ樹脂硬化物(CE1)の耐水性)
エポキシ樹脂硬化物(E1)の代わりに比較例1で作製したエポキシ樹脂硬化物(CE1)(硬化剤としてテトラエチレンペンタミン)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、硬化物の煮沸を行い、エポキシ樹脂硬化物(CE1)の吸水率(%)を算出した。得られた結果を表6に示す。
(比較例13:エポキシ樹脂硬化物(CE5)の耐水性)
エポキシ樹脂硬化物(E1)の代わりに比較例5で作製したエポキシ樹脂硬化物(CE5)(硬化剤としてポリエーテルジアミン)を用いたこと以外は実施例10と同様にして、硬化物の煮沸を行い、エポキシ樹脂硬化物(CE5)の吸水率(%)を算出した。得られた結果を表6に示す。
Figure 0007357391000012
表6に示すように、実施例10~12で評価したエポキシ樹脂硬化物(E1)~(E3)(硬化剤としてジアミン1b、2bまたは3を含有)、および比較例12で評価した汎用品に相当するエポキシ樹脂硬化物(CE1)(硬化剤としてテトラエチレンペンタミンを含有)では、硬化物の吸水率がいずれも0%であり、十分な耐水性を有していた。これに対し、可撓性付与剤としても知られているポリエーテルジアミン(分子量400)を硬化剤として含有する、比較例13で評価したエポキシ樹脂硬化物(CE5)では、約1%の吸水率を示していた。すなわち、ポリエーテルジアミンは可撓性の付与と引き換えに耐水性の低下を伴い、これに対しジアミン1b、2bまたは3を用いる(実施例4~6で作製された)エポキシ樹脂硬化物(E1)~(E3)は耐水性を損ねることなく、可撓性が付与されたことがわかる。
(実施例13:ビスマレイミドプレポリマー(EM1)の作製)
温度計、撹拌機および滴下ロートを備える500mLの四つ口フラスコに、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン21.5g(60.1mmol)、およびTHF200mLを仕込み、改質剤として実施例1で得られたジアミン1b(5.2g)(アミノ基として30.0mmol当量)を滴下した。撹拌しながら50℃まで昇温し、さらに1.5時間撹拌した。次いで、無水酢酸3.1g(30.1mmol)を添加し、さらに1時間撹拌し、減圧下でTHFを除去することによりビスマレイミドプレポリマー(EM1)27.6gを得た。
得られたビスマレイミドプレポリマー(EM1)について、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、α,β-不飽和結合に対応するピーク(1606cm-1)の減少とともに、イミド結合に対応するピーク(1705cm-1および1510cm-1)、アミド結合に対応するピーク(1636cm-1)を確認した。
また、このビスマレイミドプレポリマー(EM1)10gを耐熱性容器に量りとり、170℃で2時間加熱して硬化させた。得られた硬化物について、示差走査熱量計(DSC)(株式会社島津製作所製DSC-60)を用い、サンプルを0℃で10分間保持した後、1分当たり10℃の昇温速度で400℃まで加熱することにより、昇温に対する熱量変化からガラス転移点(Tg)を測定した。得られた結果を表7に示す。
(実施例14:ビスマレイミドプレポリマー(EM2)の作製)
改質剤としてジアミン1bの代わりに実施例2で作製したジアミン2b(5.0g)を用いたこと以外は、実施例13と同様にしてビスマレイミドプレポリマー(EM2)27.8gを得た。このビスマレイミドプレポリマー(EM2)について、実施例13と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表7に示す。
(実施例15:ビスマレイミドプレポリマー(EM3)の作製)
改質剤としてジアミン1bの代わりに実施例3で作製したジアミン3(5.8g)を用いたこと以外は、実施例13と同様にしてビスマレイミドプレポリマー(EM3)58.0gを得た。このビスマレイミドプレポリマー(EM3)について、実施例13と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表7に示す。
(比較例14:ビスマレイミドプレポリマー(CM1)の作製)
改質剤としてジアミン1bの代わりにヘキサメチレンジアミン(1.8g)を用いたこと以外は、実施例13と同様にしてビスマレイミドプレポリマー(CM1)22.5gを得た。このビスマレイミドプレポリマー(CM1)について、実施例13と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表7に示す。
(比較例15:4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタンのDSC分析)
比較のためにジアミン1bを添加することなく、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン10gを単独で硬化させ、実施例13と同様にしてDSC分析を行った。得られた結果を表7に示す。
Figure 0007357391000013
表7に示すように、実施例13~15で作製されたビスマレイミドプレポリマー(EM1)~(EM3)の硬化物はいずれも、比較例14で作製されたビスマレイミドプレポリマー(CM1)および比較例15の4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン(改質剤無添加)の硬化物と比較してTgが著しく低く、改質剤として使用したジアミン1b、2bおよび3を構成する2つのアミノ基の間に配置される炭素鎖が長いものほど、得られる硬化物に高い可撓性を付与することができたことがわかる。
(実施例16:ポリアミド18,6の作製)
200mlビーカーに、実施例1で得られたジアミン1b(3.8g)(アミノ基として21.8mmol当量)、トリエチルアミン(2.2g)(21.8mmol)、ヘキサン50mLを仕込み、ヘキサン50mLに溶解させた塩化アジポイル(2.0g)(10.9mmol)を撹拌しながら添加し、溶液重合させた。30分間撹拌を続けた後、ろ過し、ろ物を水およびアセトンで洗浄し、乾燥させることによりポリアミド18,6を2.3g得た。
得られたポリアミド18,6について、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、アミド結合に対応するピーク(1635cm-1、1542cm-1)を確認した。
また、このポリアミド18,6について、示差走査熱量計(DSC)(株式会社島津製作所製DSC-60)を用い、サンプルを0℃で10分間保持した後、1分当たり5℃の昇温速度で100℃まで加熱することにより、昇温に対する熱量変化からガラス転移点(Tg)を測定した。得られた結果を表8に示す。
(実施例17:ポリアミド20,6の作製)
ジアミン1bの代わりに実施例2で作製したジアミン2b(3.6g)を用いたこと以外は、実施例16と同様にしてポリアミド6.6を2.5g得た。このポリアミド20.6について、実施例16と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表8に示す。
(実施例18:ポリアミド22,6の作製)
ジアミン1bの代わりに実施例3で作製したジアミン3(3.8g)を用いたこと以外は、実施例16と同様にしてポリアミド6.6を2.3g得た。このポリアミド22.6について、実施例16と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表8に示す。
(比較例16:ポリアミド2,6の作製)
200mlのビーカーに、エチレンジアミン(0.7g)(10.9mmol)、49%水酸化ナトリウム(0.9g)(10.9mmol)、水50mLを仕込み、ヘキサン50mLに溶解させた塩化アジポイル(2.0g)(10.9mmol)を撹拌しながら添加し、界面重合させた。30分間撹拌を続けた後、ろ過し、ろ物を水およびアセトンで洗い、乾燥させることによりポリアミド2,6を0.9g得た。このポリアミド2.6について、実施例16と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表8に示す。
(比較例17:ポリアミド6,6の作製)
エチレンジアミンの代わりにヘキサメチレンジアミン(1.3g)を用いたこと以外は、比較例16と同様にしてポリアミド6.6を0.7g得た。このポリアミド6.6について、実施例16と同様にして硬化物のDSC分析を行った。得られた結果を表8に示す。
Figure 0007357391000014
表8に示すように、実施例16~18で作製されたポリアミド(ポリアミド18.6、ポリアミド20.6、ポリアミド22.6)はいずれも、比較例16で作製されたポリアミド2.6および比較例17のポリアミド6.6と比較してTgが著しく低い。他の実施例と同様に、ポリアミドにおいても使用したジアミン1b、2bおよび3を構成する2つのアミノ基の間に配置される炭素鎖が長いものほど、得られる硬化物に高い可撓性を付与することができたことがわかる。
(実施例19:ポリイミド(ED1)の作製)
撹拌機、分水器、温度計および窒素ガス導入管を備えた反応器にピロメリット酸無水物(50.0g)、シクロヘキサノン(200ml)を仕込み、60℃まで加熱した。次いでトルエン(100ml)に溶解させた、実施例1で得られたジアミン1bを40.0g添加し、140℃で3時間イミドさせ、減圧下溶剤を除去し、ポリイミド(ED1)を80.1g得た。
上記得られたポリイミド(ED1)について、赤外分光分析(FT-IR:日本分光株式会社製)により、イミド結合に対応するピーク(1769cm-1)を確認した。
また、このポリイミド(ED1)について、示差走査熱量計(DSC)(株式会社島津製作所製DSC-60)を用い、サンプルを0℃で10分間保持した後、1分当たり10℃の昇温速度で400℃まで加熱することにより、昇温に対する熱量変化からガラス転移点(Tg)を測定した。得られた結果を表9に示す。
(実施例20:ポリイミド(ED2)の作製)
ジアミン1bの代わりに実施例2で作製したジアミン2b(37.9g)を用いたこと以外は、実施例19と同様にしてポリイミド(ED2)を78.9g得た。このポリイミド(ED2)について、実施例19と同様にして樹脂のDSC分析を行った。得られた結果を表9に示す。
(実施例21:ポリイミド(ED3)の作製)
ジアミン1bの代わりに実施例3で作製したジアミン3(44.3g)を用いたこと以外は、実施例19と同様にしてポリイミド(ED3)を81.3g得た。このポリイミド(ED3)について、実施例19と同様にして樹脂のDSC分析を行った。得られた結果を表9に示す。
(比較例18:ポリイミド(CD1)の作製)
ジアミン1bの代わりにp-フェニレンジアミン(24.8g)用いたこと以外は、実施例19と同様にしてポリイミド(CD1)を69.7g得た。このポリイミド(CD1)について、実施例19と同様にして樹脂のDSC分析を行った。得られた結果を表9に示す。
(比較例19:ポリイミド(CD2)の作製)
ジアミン1bの代わりにヘキサメチレンジアミン(26.6g)用いたこと以外は、実施例19と同様にしてポリイミド(CD2)を70.9g得た。このポリイミド(CD2)について、実施例19と同様にして樹脂のDSC分析を行った。得られた結果を表9に示す。
Figure 0007357391000015
表9に示すように、比較例18と19では、同じ炭素数6のジアミンでありながら脂肪族ジアミンを利用した比較例19の方がTgは低かった。これに対し実施例19~20で使用したジアミンはさらに炭素数の多い脂肪族ジアミンであり、比較例19よりもTgが低かった。したがって他の実施例と同様に、ポリイミドにおいても使用したジアミン1b、2bおよび3を構成する2つのアミノ基の間に配置される炭素鎖が長いものほど、得られるポリマーに高い可撓性を付与することができたことがわかる。
(小括)
上記までの実施例についてまとめると、2つのアミノ基の間に長い炭素鎖を有する本発明のジアミン化合物(ジアミン1b、2bおよび3)を樹脂添加剤として用いると、樹脂に対し可撓性を付与することができる(例えば表4、表7、表8、および表9を参照)。また、表2より、これらのジアミン化合物は、エポキシ樹脂硬化剤としては比較例6~11で使用したような、市販により入手可能なアミン硬化剤よりも遅い反応性であるものの、表1よりゲル化率は高く、硬化反応は十分に進行していることがわかる。このため、ポットライフの調整に最適な材料である。一方、可撓性付与効果が見られたポリエーテルジアミン(分子量400)は、分子量に対応して可撓性付与効果が得られたが(表1)、反応性は低温(70℃)では著しく悪く、120℃で硬化反応が進行する(表2)。また表3から、ポリエーテルジアミンを使用した硬化物は耐水性に劣る一方で、長鎖ジアミンを使用した硬化物は耐水性を損ねることなく、汎用のアミン硬化剤と同程度の耐水性が得られる。このことから、本発明のジアミン化合物は、現行の可撓性付与剤であるポリエーテルジアミンよりも有用である。
(実施例22:金属製品への腐食防止効果)
10%塩酸中に、腐食防止剤として実施例1で得られたジアミン1bを0.05質量%の割合で含有する水溶液50mLをガラス製サンプル管に仕込んだ。この水溶液中に、研磨およびトルエン洗浄処理を3回繰り返した標準試験板(JIS G 3141;日本テストパネル株式会社製)を浸漬させ、60℃で1時間加温し、試験板を腐食させた。腐食後の試験板を水洗および乾燥し、浸漬前後の質量差より以下の式にしたがって腐食率(%)を算出した。
腐食率(%)=(浸漬前の試験板の質量-浸漬後の試験板の質量)/(浸漬前の試験板の質量)×100
得られた結果を表10に示す。
(比較例20:金属製品への腐食防止効果)
腐食防止剤(実施例1のジアミン1b)を添加しなかったこと以外は実施例22と同様にして標準試験板の腐食率を測定した。得られた結果を表10に示す。
(比較例21:金属製品への腐食防止効果)
腐食防止剤として、ジアミン1bの代わりにドデシルアミン0.05質量%を用いたこと以外は実施例22と同様にして標準試験板の腐食率を測定した。得られた結果を表10に示す。
(比較例22:金属製品への腐食防止効果)
腐食防止剤として、ジアミン1bの代わりにヘキサメチレンジアミン0.05質量%を用いたこと以外は実施例22と同様にして標準試験板の腐食率を測定した。得られた結果を表10に示す。
Figure 0007357391000016
表10に示すように、鉄鋼板の腐食率は実施例22で使用したジアミン1b(イソオクタデカンジアミン)が最も低く、酸性水溶液に対して高い防食効果を有することがわかる。このような腐食防止剤は、金属の酸洗い、酸浸漬、エッチングなどの洗浄処理時に有用である。
本発明のジアミン化合物によれば、種々の樹脂を用いて可撓性に優れた樹脂組成物を提供することができる。当該樹脂組成物は、エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド、マレイミド、ポリアミドなどの樹脂で構成される材料として、例えば土木材、建材、床材における補修材、各種塗料、各種接着剤、電子材料における封止剤(アンダーフィル)、絶縁部材、モールド樹脂、レジスト材料、樹脂補強ハンダソルダーペースト材料、フレキシブルプリント基板材料、各種フィルム、熱可塑性樹脂におけるプラスチック成型品、ナイロン繊維などの種々の技術分野において有用である。さらに、本発明のジアミン化合物を、カチオン界面活性剤として潤滑防錆剤に利用した場合、金属製品に対して高い腐食防止効果を発揮し得る。このことから、金属加工分野、機械分野等においても有用である。

Claims (5)

  1. アミン化合物を含有する、樹脂添加剤であって、
    該ジアミン化合物が以下の式(I):
    Figure 0007357391000017
    式(I)中、
    は、
    全炭素数がC 14 ~C 28 であるアルキレン基であって、1つのメチル基またはエチル基の分岐鎖を有する、アルキレン基で表される、樹脂添加剤
  2. 式(I)において、R を構成するアルキレン基の主鎖部分がC 2n 個(ここでnは7~14である)の炭素原子を有する、請求項1に記載の樹脂添加剤
  3. 前記ジアミン化合物が、7-エチルテトラデカンジアミンまたは8-エチルオクタデカンジアミンである、請求項1に記載の樹脂添加剤。
  4. 樹脂と、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂添加剤とを含有する、樹脂組成物。
  5. 1つまたはそれ以上のモノマー化合物および請求項1から3のいずれかに記載の樹脂添加剤から構成される樹脂を含有する、樹脂組成物。
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