JP7355253B2 - 顔料、化粧料、インキ、塗料、トナー、及び成形物 - Google Patents

Description

本発明は、顔料及びそれを含む化粧料、インキ、塗料、トナー、又は成形物に関する。

従来から化粧料、インキ、塗料の分野では、塗布したときの発色や艶が良く、キラキラ感など輝度に優れているものが求められる。特に、口紅やアイシャドウ、チーク、ネイルといったメークアップ化粧料では、皮膚に塗布して得られる仕上がり感を高めるため、均一に発色することが求められる。また、真珠や金属表面のように、光を強く反射し、より美しい仕上がりに見せるといった理由からキラキラ感を同時に求められることもある。このような背景から、化粧料、インキ、塗料、トナー、又は成形物では、顔料成分として有機系顔料やマイカ等の光輝材が単独または複合して使用される。

例えば、特許文献１には、アスペクト比１０～１２０の薄片状基質粒子からなる薄片状基質材料と、平均粒子径５μｍ以下の粒子からなる顔料及び／または染料との混合物を液体媒体を使用することなく、高速撹拌処理に付することにより、オーダードミクスチャーに基づく複合体粒子が形成されていることを特徴とする平均粒子径５～６０μｍの薄片状顔料が記載されている。

また、特許文献２には、無機粉体もしくは真珠光沢顔料の表面に赤色２２６号を強固に固着せしめた着色無機粉体または着色真珠光沢顔料の少なくとも一方を化粧料基剤中に配合することを特徴とする化粧料が記載されている。

特開平０５－２１４２５７号公報 特開昭６２－１６９７１６号公報

特許文献１や２に記載の顔料では、薄片状基質材料に着色剤を被覆するのみであり、顔料表面の状態については全く考慮されていない。このような従来の顔料は、薄片状基材への着色剤の被覆が均一ではないため、表面凹凸が大きく、例えば顔料を化粧料に使用して肌に塗布した際の滑りが低下し、色ムラの原因となるという問題がある。そのため、触り心地や伸びの良く、色ムラが起きにくい被覆顔料が求められている。

本発明は、上記被覆顔料における課題を解決し、塗布物における触り心地が良く滑らかであり、例えばファンデーション、アイシャドウなどの化粧料として使用したときに肌に乗せた際の伸びが良く、発色や艶が良い顔料を提供することにある。

本発明者らは、鋭意検討した結果、薄片状基材表面の粗粒面積率を制御することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。

即ち本発明は、
『項１． 少なくとも一種の金属あるいは金属酸化物からなる薄片状基材の表面が、着色剤により被覆されている被覆顔料であって、前記薄片状基材表面における粗粒面積率が９％以下である顔料。
項２． 前記薄片状基材が、マイカ、アルミニウム、アルミナ及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも１種以上である項１に記載の顔料。
項３． 前記着色剤として少なくとも１種以上の有機顔料を含む項１又は２に記載の顔料。
項４． 前記薄片状基材の表面が、さらに樹脂、金属及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上を成分として含む層で被覆されている項１～３のいずれか１項に記載の顔料。
項５． 前記顔料が、さらに樹脂、金属及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上を成分として含む層で被覆されている項１～４のいずれか１項に記載の顔料。
項６． 項１～５のいずれか１項に記載の顔料を含む、化粧料、インキ、塗料、トナー、又は成形物。』に関する。

本発明の顔料は、塗布物における触り心地が良く滑らかであり、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。そのため、特にファンデーション、アイシャドウなどの化粧料として使用したときに肌に乗せた際の伸びが良く、発色や艶に優れ、キラキラ感などの輝度にも優れる。

実施例における被覆顔料（１）のＳＥＭ写真である。 実施例における被覆顔料（７）のＳＥＭ写真である。 図１の白黒二値化画像である。 本発明の顔料の一例を表すＳＥＭ写真である（写真中の枠は、粗粒面積率算出エリアの例を示す）。

以下、本発明を詳細に説明する。

［顔料］
本発明の顔料は、少なくとも一種の金属あるいは金属酸化物からなる薄片状基材の表面が、着色剤により被覆されている顔料であって、基材表面における粗粒面積率が９％以下である。以下、本発明の顔料を「被覆顔料」と称することとする。本発明において「被覆」とは、薄片状基材の表面が完全に覆われていることのみを意味するのではなく、表面の一部のみが覆われている場合（例えば「付着」）も含むこととする。

被覆顔料は、表面における粗粒面積率が９％以下であり、好ましくは６％以下、より好ましくは５％以下、さらに好ましくは４％以下、最も好ましくは３％以下である。粗粒面積率が上記範囲であると、被覆顔料そのもの、あるいはそれを含む塗布物の表面の摩擦を小さくすることができ、触り心地が良く滑らかとなる。本発明において「粗粒」とは、薄片状基材より十分小さい粒子であって、例えば、走査型電子顕微鏡で観察される長径が約０．０１μｍ～約３μｍの粒子、あるいは薄片状基材の粒子径に対して約０．０５％～約１５％の粒子のことをいう。粗粒面積率は、走査型電子顕微鏡で１つの被覆顔料の表面を観察し、その表面に存在する粗粒の面積の割合から求めることができる。

（薄片状基材）
被覆顔料では、上記薄片状基材が少なくとも一種の金属あるいは金属酸化物からなる。金属としては、例えば、ケイ素（Ｓｉ）、鉄（Ｆｅ）、アルミニウム（Ａｌ）、ナトリウム（Ｎａ）、カルシウム（Ｃａ）、マグネシウム（Ｍｇ）、カリウム（Ｋ）、銅（Ｃｕ）、マンガン（Ｍｎ）、チタン（Ｔｉ）、銀（Ａｇ）、金（Ａｕ）、白金（Ｐｔ）、鉛（Ｐｂ）、クロム（Ｃｒ）、スズ（Ｓｎ）、モリブデン（Ｍｏ）、ガリウム（Ｇａ）、インジウム（Ｉｎ）が挙げられる。また、金属酸化物としては、これらの金属の酸化物が挙げられる。

上記薄片状基材としては、例えば、マイカ、アルミニウム、アルミナ、ガラス、二酸化チタン、ベンガラ、酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、紺青、群青、酸化クロム、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムが挙げられる。なかでも薄片状基材としては、マイカ、アルミニウム、アルミナ及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも１種以上であることが好ましい。

上記マイカ（雲母）としては、例えば、天然雲母、合成雲母、合成金雲母、雲母チタン、合成雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆合成雲母、水酸化クロム雲母が挙げられる。上記アルミニウム（Ａｌ）としては、アルミニウム単体以外に、例えば、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、窒化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムが挙げられる。上記ガラスは、一般的に二酸化けい素（ＳｉＯ_２）を主成分とするけい酸塩ガラスであり、例えば、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ソーダライムガラス、Ａガラス、Ｃガラス、Ｅガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスが挙げられる。これらの薄片状基材は、１種を単独で用いてもよく、２種以上を組み合わせて用いてもよい。

上記薄片状基材の大きさとしては、厚みが例えば０．１～５μｍ（好ましくは０．２～３μｍ）であり、長辺方向の長さが例えば３～１００μｍ（好ましくは５～５０μｍ）である。薄片状基材の平均アスペクト比（長さ／厚み 比）は、例えば１０～２００、好ましくは２０～１５０である。薄片状基材の大きさや平均アスペクト比が上記範囲であると、被覆顔料としたとき塗布物における触り心地が良く滑らかであり、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。また、薄片状基材の平均粒径は、例えば３～１００μｍ、好ましくは５～５０μｍである。

薄片状基材は、雲母粒子としてＳｕｎＭＩＣＡ（商標、ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ社製）やＩＲＩＯＤＩＮ（登録商標、Ｍｅｒｃｋ社製）、ガラス粒子としてガラスフレーク、メタシャイン、ルミグラン（以上、登録商標、日本板硝子株式会社製）、アルミニウム粒子としてハイドロラン（登録商標、エッカルト株式会社製）などの市販品が使用できる。

上記薄片状基材の含有量は、被覆顔料全量に対して、例えば２０～９８質量％、好ましくは３０～９５質量％である。また、薄片状基材の含有量は、上記着色剤１００質量部に対して、例えば３０～２０００質量部、好ましくは５０～１５００質量部、より好ましくは１００～１０００質量部である。薄片状基材の割合が上記範囲であると、被覆顔料としたとき塗布物における触り心地が良く滑らかであり、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。

上記薄片状基材の表面は、さらに樹脂、金属及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上を成分として含む層で被覆されていても良い。例えば、樹脂としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、エーテル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられ、金属としてはケイ素（Ｓｉ）、鉄（Ｆｅ）、アルミニウム（Ａｌ）、ナトリウム（Ｎａ）、カルシウム（Ｃａ）、マグネシウム（Ｍｇ）、カリウム（Ｋ）、銅（Ｃｕ）、マンガン（Ｍｎ）、チタン（Ｔｉ）、銀（Ａｇ）、金（Ａｕ）、白金（Ｐｔ）、鉛（Ｐｂ）、クロム（Ｃｒ）、スズ（Ｓｎ）、モリブデン（Ｍｏ）、ガリウム（Ｇａ）、インジウム（Ｉｎ）が挙げられ、金属酸化物としては、これらの金属の酸化物が挙げられる。

上記薄片状基材としては、市販品を用いてもよく、例えば、「C８０－１６０８ ＳｕｎＰＵＲＯ Ｐｅａｒｌ Ｓｉｌｖｅｒ」（ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ社製）や「Ｂｅｎｄａ-Ｌｕｔｚ ＭＡＸＡＬ７６０４４ＥＣ」（ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ社製）を用いることができる。

（着色剤）
被覆顔料は、上記着色剤として少なくとも１種以上の有機顔料を含むことが好ましい。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられ、例えば、赤色３号、赤色１０４号、赤色１０６号、赤色２０１号、赤色２０２号、赤色２０４号、赤色２０５号、赤色２２０号、赤色２２３号、赤色２２６号、赤色２２７号、赤色２２８号、赤色２３０号、赤色４０１号、赤色４０５号、赤色５０５号、橙色２０３号、橙色２０４号、橙色２０５号、黄色４号、黄色５号、黄色４０１号、青色１号、青色４０４号、Ｃ．Ｉ．Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｒｅｄ １、２、３、４、５、６、７、８、９、１２、１４、１５、１６、１７、２１、２２、２３、３１、３２、３７、３８、４１、４７、４８、４８：１、４８：２、４８：３、４８：４、４９、４９：１、４９：２、５０：１、５２：１、５２：２、５３、５３：１、５３：２、５３：３、５７、５７：１、５７：２、５８：４ 、６０、６３、６３：１、６３：２、６４、６４：１、６８、６９、８１、８１：１、８１：２、８１：３、８１：４、８３、８８、９０：１、１０１、１０１：１、１０４、１０８、１０８：１、１０９、１１２、１１３、１１４ 、１２２、１２３、１４４、１４６、１４７、１４９、１５１、１６６、１６８、１６９、１７０、１７２、１７３、１７４、１７５、１７６、１７７、１７８、１７９、１８１、１８４、１８５、１８７、１８８、１９０、１９３、１９４、２００、２０２、２０６、２０７、２０８、２０９、２１０、２１４、２１６、２２０、２２１、２２４、２３０、２３１、２３２、２３３、２３５、２３６、２３７、２３８、２３９、２４２、２４３、２４５、２４７、２４９、２５０、２５１、２５３、２５４、２５５、２５６、２５７、２５８、２５９、２６０、２６２、２６３、２６４、２６５、２６６、２６７、２６８、２６９、２７０、２７１、２７２、２７３、２７４、２７５、２７６、２７７、２７８、２７９、２８０、２８１、２８２、２８３、２８４ 、２８５、２８６、２８７、２９１、２９５、２９６、Ｃ．Ｉ．Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｂｌｕｅ １、１：２、９、１４、１５、１５：１、１５：２、１５：３、１５：４、１５：６、１６、１７、１９、２５、２７、２８、２９、３３、３５、３６、５６、５６：１、６０、６１、６１：１、６２、６３、６６、６７、６８、７１、７２、７３、７４、７５、７６、７８、７９、Ｃ．Ｉ．Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｙｅｌｌｏｗ １、２、３、４、５、１０、１２、１３、１４、１５、１６、１７、１８、２４、３１、３２、３４、３５、３５：１、３６、３６：１、３７、３７：１、４０、４２、４３、５３、５５、６０、６１、６２、６３、６５、７３、７４、７７、８１、８３、９３、９４、９５、９７、９８、１００、１０１、１０４、１０６、１０８、１０９、１１０、１１３、１１４、１１５、１１６、１１７、１１８、１１９、１２０、１２３、１２６、１２７、１２８、１２９、１３９、１４７、１５０、１５１、１５２、１５３、１５４、１５５、１５６、１６１、１６２、１６４、１６６、１６７、１６８、１６９、１７０、１７１、１７２、１７３、１７４、１７５、１７６、１７７、１７９、１８０、１８１、１８２、１８５、１８７、１８８、１９２、１９３、１９４、１９６、１９８、１９９、２１３、２１４、Ｃ．Ｉ． Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｖｉｏｌｅｔ １、１：１、２、２：２、３、３：１、３：３、５、５：１、１４、１５、１６、１９、２３、２５、２７、２９、３１、３２、３７、３９、４２、４４、４７、４９、５０、Ｃ．Ｉ．Ｐｉｇｍｅｎｔ Ｇｒｅｅｎ １、２、４、７、８、１０、１３、１４、１５、１７、１８、１９、２６、３６、３７、４５、４８、５０、５１、５４、５５、５８、５９が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いてもよく、求められる色相に応じて適宜２種以上を組合わせて用いてもよい。

また、着色剤として、天然色素を使用しても良い。天然色素としては、例えば、カロテノイド系、アントシアニン系、フラボノイド系、キノン系、ポルフィリン系、ジケトン系、ベタシアニン系およびアザフィロン系があり、例えば、β-カロテン、ノルビキシン、ビキシン、カプサンチン、ルテイン、リコピン、クロシン、クロセチン、アスタキサンチン、シアニジンアシルグルコシド、シアニジン、ペオニジンのアグリコン、アニジングルコシド、デルフィニジングルコシド、アントシアニン、シソニン、マロニルシソニン、ペラルゴニジンアシルグルコシド、カカオポリフェノール、アピゲニニジン、ルテオリニジン、重合プロアントシアニジン、サフロミン、カルタミン、カルミン酸、ラッカイン酸、クロロフィル、フィコシアニン、クルクミン、ベタニン、イソベタニン、アンカフラビン、モナスコルブリン、イリドイド配糖体、イリドイド配糖体のエステル加水分解物およびユーメラニンを用いても良い。これらの天然色素は、単独で用いてもよく、求められる色相に応じて適宜２種以上を組合せて用いてもよい。

被覆顔料における上記着色剤の一次粒子径は、好ましくは１．０μｍ以下、より好ましくは０．００１～０．８μｍ、さらに好ましくは０．００５～０．６μｍである。一次粒子径が上記範囲であると、被覆顔料としたとき塗布物における触り心地が良く滑らかであり、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。

被覆顔料における上記着色剤が凝集して二次粒子を形成している場合、その粒子径は、好ましくは０．００５～２．０μｍ、より好ましくは０．０１～１．０μｍである。二次粒子径が上記範囲であると、被覆顔料としたとき塗布物における触り心地が良く滑らかであり、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。

被覆顔料における着色剤は、薄片状基材より柔らかいことが好ましい。柔らかさの度合いはモース硬度により測定することができる。例えば、薄片状基材のモース硬度は、５．０以上であることが好ましく、着色剤のモース硬度は、５．０以下が好ましい。着色剤のモース硬度が、薄片状基材のモース硬度よりも小さいことで、より平滑な被覆顔料を得ることができ、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。

被覆顔料における上記着色剤の含有量は、被覆顔料全量に対して、例えば０．５～５０質量％、好ましくは１．０～４０質量％、より好ましくは１．０～３０質量％である。また、着色剤の含有量は、薄片状基材１００質量部に対して、例えば５～３３３質量部、好ましくは７～２００質量部、より好ましくは１０～１００質量部である。薄片状基材の割合が上記範囲であると、被覆顔料としたとき塗布物における触り心地が良く滑らかであり、塗布時の伸びが良く、さらに発色や艶も良い。

上記被覆顔料は、樹脂、金属及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上を成分として含む層でさらに被覆されていても良い。例えば、樹脂としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、エーテル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられ、金属としてはケイ素（Ｓｉ）、鉄（Ｆｅ）、アルミニウム（Ａｌ）、ナトリウム（Ｎａ）、カルシウム（Ｃａ）、マグネシウム（Ｍｇ）、カリウム（Ｋ）、銅（Ｃｕ）、マンガン（Ｍｎ）、チタン（Ｔｉ）、銀（Ａｇ）、金（Ａｕ）、白金（Ｐｔ）、鉛（Ｐｂ）、クロム（Ｃｒ）、スズ（Ｓｎ）、モリブデン（Ｍｏ）、ガリウム（Ｇａ）、インジウム（Ｉｎ）が挙げられ、金属酸化物としては、これらの金属の酸化物が挙げられる。

（その他の成分）
被覆顔料は、薄片状基材及び着色剤以外に、その他の成分として、無機粉体や有機粉体を含んでいてもよい。このような無機粉体としては、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、セリサイト、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ等が挙げられる。

また、有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、ナイロンパウダー（１２ナイロン、６ナイロン）、スチレンアクリル酸共重合体パウダー、ジビニルベンゼンスチレン共重合体パウダー、ビニル樹脂パウダー、尿素樹脂パウダー、フェノール樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダー、ケイ素樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、メラミン樹脂パウダー、エポキシ樹脂パウダー、ポリカーボネイト樹脂パウダー、微結晶繊維粉体パウダー、コメデンプン、ラウロイルリジン等が挙げられる。有機粉体及び無機粉体を使用する場合のその含有量は、被覆顔料全量に対して例えば０．１～１０質量％、好ましくは０．５～５質量％である。

被覆顔料は、その他の成分として、着色剤を分散安定化させる目的で油性基剤を含んでいてもよい。このような油性基剤としては、常温（２５℃）で固体のワックス類や液体の液状油性成分が挙げられる。

上記ワックス類としては、例えば、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ライスワックス、木ロウ、サンフラワーワックス等の植物系ワックス、ミツロウ等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の鉱物系ワックス、固形パラフィン等の石油系ワックス、シリコーンワックス、合成ミツロウ等の合成ワックスが挙げられる。

上記液状油性成分としては、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、カニバラ果実油、カカオ脂、ラノリン等の植物系油；馬油、タートル油、イノシシ油、ミンク油、サメ油などの動物系油；ワセリン、流動パラフィン、イソデカン、イソドデカン、オクチルドデシル、リンゴ酸ジシソステアリル、水添ポリイソブテン等の炭化水素系油；イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソトリデシル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、オクチルドデカノール、Ｎ－ラウロイル－Ｌ－グルタミン酸ジ（フィトステリル／２－オクチルドデシル）等のエステル油；ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のシリコーン油；ダイマー酸エステル、ダイマージオール誘導体、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、トリ２－エチルヘキサン酸グリセリル等が挙げられる。被覆顔料におけるワックス類や液状油性成分の含有量は、被覆顔料全量に対して例えば０．１～１０質量％、好ましくは０．５～５質量％である。

［被覆顔料の製造方法］
被覆顔料の製造方法は、薄片状基材表面へ着色剤を被覆させる方法として、例えば、湿式法、気相法、固相法を用いることができる。湿式法としては、溶剤中で化学吸着を用いた方法があり、気相法としては、昇華を用いて基材表面に直接被覆させる方法があり、固相法としては、乾式複合化装置を用いた方法がある。上記製造方法においては、吸着剤を用いても良い。

湿式法を用いた被覆顔料の製造方法として、例えば、表面にカルボン酸処理を施した薄片状基材と、着色剤、アミン化合物を有機溶剤中で混合し、ろ過することで酸－塩基の化学吸着により被覆顔料を得ることができる。このとき、使用する有機溶剤は薄片状基材が溶解しないものであればよく、着色剤は溶解しても溶解しなくてもよい。
着色剤は、通常、有機溶剤中に溶解または分散した状態で薄片状基材と接触することで均一に被覆されるものである。

気相法を用いた被覆顔料の製造方法として、例えば、薄片状基材と着色剤をエバポレーターに入れ、回転させながら昇温・減圧を行い、一定時間回転を保持した後、徐々に常圧に戻しながら冷却することで被覆顔料を得ることができる。昇温・減圧により着色剤が昇華し、気体状態となった着色剤が、薄片状基材に均一に被覆されるものである。

固相法を用いた被覆顔料の製造方法として、例えば、有機顔料などの着色剤と薄片状基材とをプレミックスして着色剤と薄片状基材が均一に存在するようにした後、乾式粒子複合化装置などを用いて着色剤と薄片状基材を攪拌することにより圧縮、せん断、衝撃を加え、着色剤を薄片状基材表面に延伸して固着させることにより被覆顔料を得ることができる。

乾式粒子複合化装置としては、製品名「ノビルタ（登録商標）ＮＯＢ」（ホソカワミクロン株式会社製）を好ましく使用することができる。乾式粒子複合化装置における攪拌周速は、例えば５～２０ｍ／秒、好ましくは１０～２０ｍ／秒（例えば１０００～５０００ｒｐｍ、好ましくは２０００～４０００ｒｐｍ）。攪拌処理時間は、例えば１～１０分、好ましくは２～５分である。
本発明者らが検討した結果、従来技術（例えば上記特許文献１）では攪拌周速を３０ｍ／秒以上としているが、撹拌周速を３０ｍ／秒以上にするとプレミックスした複合材料へかかる力が大きくなり過ぎてしまい、薄片状基材の端から割れ、表面状態が滑らかにならないことがあることが分かった。本発明では、適度な条件とすることでこれまでに無い表面の滑らかさをもった被覆顔料を得ることができる。

［化粧料、インキ、塗料、トナー、又は成形物］
本発明における化粧料、インキ、塗料、トナー、又は成形物は、被覆顔料を含む限り特に制限されない。被覆顔料以外は、適宜それぞれの用途・目的に適した一般的な成分を配合することができる。

上記化粧料としては、例えば、ファンデーション（フェイスカラー、コンシーラーなど）、化粧下地（メークアップベース、プレメークアップなど）、おしろい（フェイスパウダー）、口紅（リップスティック、リップルージュ、リップカラー、リップペンシル、練紅、リップグロス、リップライナーなど）、アイメークアップ（アイシャドウ、アイカラー 、アイライナー、眉墨、アイブローペンシル、アイブローブラッシュ、マスカラ、まつげ化粧料など）、頬化粧料（頬紅、チークカラー、チークルージュなど）、爪化粧料（ネイルエナメル、マニキュア、ネイルカラー、ネイルポリッシュ、ペディキュア、ネイルラッカー、トップコート、ベースコートなど）、毛髪着色料（染毛料、ヘアカラースプレー、ヘアカラースティック、カラーリンス、ヘアマニキュアなど）が挙げられる。

上記インキは、特に印刷インキとしては、例えば、平版（オフセット）インキ、凸版インキ、凹版（グラビア）インキ、孔版（スクリーン）インキ、フレキソインキ、ＵＶ硬化インキ、水性インキ、油性インキ、植物油インキ、新聞インキ、インクジェット用インキが挙げられる。

上記塗料としては、例えば、粉体塗料、水性（水系）塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、メラミン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等の合成樹脂塗料が挙げられる。

上記トナーは、レーザープリンター及び複写機で使用される、帯電性を持ったプラスチック粒子に色粒子を付着させたミクロサイズの粉であり、被覆顔料は、色粒子として使用できる。

上記成形物は、被覆顔料をプラスチック着色剤として含む樹脂を用いて成形されたものである。プラスチック着色剤としては、マスターバッチ（ＭＢ）、着色ペレット・着色コンパウンド、ドライカラー、ペーストカラー・リキッドマスターバッチなどの形態があるがいずれであってもよい。

以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本実施例の記載で「部」とは「質量部」を意味する。以下の方法で実施例１－６及び比較例１－４の被覆顔料及び被覆顔料を用いた塗料展色紙（サンプル）を作製し、さらに以下の方法で評価をした。評価結果を表１に示す。

［実施例１］
市販の赤色１０４号（Ｃ１４６６２３、ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ製）４．０部と酸化チタンで被覆した雲母粒子Ａ（ピンク味の雲母粒子）３６．０部をプレミックスする。続いて、乾式粒子複合化装置（製品名「ノビルタ（登録商標）ＮＯＢ」、ホソカワミクロン株式会社製、Φ＝８６ｍｍブレードを使用）を用いて、３０００ｒｐｍで３分間処理後、取り出して被覆顔料（１）を得た。被覆顔料（１）のＳＥＭ画像は図１である。

上記で得た被覆顔料（１）０．８７部、アクリディックＡ－８０１－Ｐ（ＤＩＣ株式会社製）１２．６部、デスモジュールＮ－７５（住化コベストロウレタン株式会社製）３．９部、キシレン１．６部、酢酸エチル１．０部の割合で配合し、遊星ミルで３分間分散させることで塗料組成物（１）を調整した。得られた塗料組成物（１）を１０ｍｉｌのアプリケーターで黒地の紙に展色し、塗料展色紙（１）を得た。

［実施例２］
実施例１で赤色１０４号を赤色２０２号（Ｃ１９－７７２０、ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ製）に、雲母粒子Ａを酸化チタンで被覆した雲母粒子Ｂ（赤味の雲母粒子）に変更した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（２）および塗料展色紙（２）を得た。

［実施例３］
実施例１で赤色１０４号４．０部を青色１号（Ｃ３９－４４３３、ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ製）５．５部に、雲母粒子Ａを酸化チタンで被覆した雲母粒子Ｃ（青味の雲母粒子）３４．５部に変更した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（３）および塗料展色紙（３）を得た。

［実施例４］
実施例１で赤色１０４号をキナクリドン顔料（ＦＡＳＴＯＧＥＮ ＳＵＰＥＲ ＭＡＧＥＮＴＡ ＲＴＳ、ＤＩＣ製）に変更した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（４）および塗料展色紙（４）を得た。

［実施例５］
実施例１で赤色１０４号を銅フタロシアニン顔料（ＦＡＳＴＯＧＥＮ ＢＬＵＥ ＴＧＲ－ＳＤ、ＤＩＣ製、平均粒子径０．０５μｍ）に、雲母粒子Ａを酸化チタンで被覆した雲母粒子Ｃに変更した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（５）および塗料展色紙（５）を得た。

［実施例６］
実施例１で赤色１０４号を銅フタロシアニン顔料（ＢＬＵＥ ＣＲＵＤＥ Ｂ－８／ＬＣ、ＤＩＣ製、平均粒子径３μｍ）に、雲母粒子Ａを酸化チタンで被覆した雲母粒子Ｃに変更した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（６）および塗料展色紙（６）を得た。

［実施例７］
実施例１で雲母粒子Ａを酸化チタンで被覆したアルミニウム粒子（ＭＡＸＡＬ ７６０４４ＥＣ、ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ製）に変更し、乾式複合化装置を用いて３０００ｒｐｍで１０分間処理した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（１１）および塗料展色紙（１１）を得た。

［実施例８］
実施例１で赤色１０４号を青色１号（Ｃ３９－４４３３、ＳｕｎＣｈｅｍｉｃａｌ製）に、雲母粒子Ａを酸化チタンで被覆したホウケイ酸ガラス粒子（Ｒｅｆｌｅｃｋｓ Ｄｉｍｅｎｓｉｏｎｓ Ｓｈｉｍｍｅｒｉｎｇ Ｗｈｉｔｅ Ｇ１３０Ｚ、カラー＆エフェクトジャパン株式会社）に変更し、乾式粒子複合化装置を用いて２０００ｒｐｍで５分間処理した以外は、実施例１と同様に行い、被覆顔料（１２）および塗料展色紙（１２）を得た。

［比較例１］
実施例１でノビルタをＡＭＳ－ＭＩＮＩに変更した以外は実施例１と同様に行い、被覆顔料（７）および塗料展色紙（７）を得た。被覆顔料（７）のＳＥＭ画像は図２のとおりである。

［比較例２］
実施例２でＮＯＢ－ＭＩＮＩをＡＭＳ－ＭＩＮＩに変更し、１５００ｒｐｍで１分間処理した以外は実施例２と同様に行い、被覆顔料（８）および塗料展色紙（８）を得た。

［比較例３］
実施例３でＮＯＢ－ＭＩＮＩをＡＭＳ－ＭＩＮＩに変更した以外は実施例３と同様に行い、被覆顔料（９）および塗料展色紙（９）を得た。

［比較例４］
実施例４でＮＯＢ－ＭＩＮＩをＡＭＳ－ＭＩＮＩに変更した以外は実施例４と同様に行い、被覆顔料（１０）および塗料展色紙（１０）を得た。

［比較例５］
実施例７で乾式粒子複合化時間を１０分間から３分間に変更した以外は実施例７と同様に行い、被覆顔料（１３）および塗料展色紙（１３）を得た。

［比較例６］
実施例８で乾式粒子複合化処理の回転数を２０００ｒｐｍから３０００ｒｐｍに、処理時間を５分間から１分間に変更した以外は、実施例８と同様に行い、被覆顔料（１４）および塗料展色紙（１４）を得た。

［評価：粗粒面積率の算出法］
走査型電子顕微鏡（ＶＥ－７８００、ＫＥＹＥＮＣＥ社）で、画像が被覆顔料表面のみになるように１００００倍の倍率で撮影した。画像処理ソフト（ＩｍａｇｅＪ）を用いて画像を粗粒を認識できるように閾値を調整して二値化処理し、画像の上下左右５％を除いた領域の粗粒の占有面積率を算出した。被覆顔料１種類につき１０枚ずつ同様の処理を行い、その平均値を粗粒面積率とした。例えば、実施例１の被覆顔料（１）について白と黒の二値化処理を行うと図３のようになる。

［評価：ＭＩＵの測定］
摩擦感テスター（ＫＥＳ-ＳＥ；カトーテック株式会社）を用いて、試料台に広げたサンプルの上にセンサを置き、スライドさせることで摩擦係数ＭＩＵ値を計測した。なお、初期５ｍｍと最終５ｍｍのデータをカットして２０ｍｍ間のデータを採用した。ＭＩＵ値が小さいほど触り心地が滑らかである。

［評価：光輝強度の測定］
得られた塗料展色紙を多角度測色器（ＢＹＫ－ｍａｃｉ）を用いて３点測色し、４５°のＳｉ値（光輝強度）の平均値を得た。

着色剤が全く同じ実施例１と比較例１、実施例２と比較例２、実施例３と比較例３、実施例４と比較例４、実施例７と比較例５、実施例８と比較例６をそれぞれ比較すると粗粒面積率の低い実施例の方がＭＩＵ平均値が低く、触り心地が良いということがわかる。また、比較例と比べて実施例の方がＳｉ値が同等以上になっており、光輝強度で示されるキラキラ感を維持または向上したことがわかる。さらに、実施例１（被覆顔料（１）；図１）と比較例１（被覆顔料（７）；図２）の顔料表面を拡大ＳＥＭ画像により観察すると、図１では図２に比べて、明らかに表面が平滑であり、粗粒が少ないことが分かる。

実施例５と実施例６は、一次粒子径の粒径が異なるが、ＭＩＵ平均値が十分低く、Ｓｉ値が高いものを得ることができる。

Claims (4)

1. 少なくとも一種の金属あるいは金属酸化物からなる薄片状基材の表面が、着色剤により被覆されている被覆顔料であって、
   前記薄片状基材が、酸化チタンで被覆したマイカ、酸化チタンで被覆したアルミニウム、酸化チタンで被覆したアルミナ及び酸化チタンで被覆したガラスからなる群より選ばれる少なくとも１種以上であり、
   前記着色剤は、少なくとも１種以上の有機顔料を含み、
   前記有機顔料が、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、赤色３号、赤色１０４号、赤色１０６号、赤色２０１号、赤色２０２号、赤色２０４号、赤色２０５号、赤色２２０号、赤色２２３号、赤色２２７号、赤色２２８号、赤色２３０号、赤色４０１号、赤色４０５号、赤色５０５号、橙色２０３号、橙色２０４号、橙色２０５号、黄色４号、黄色５号及び青色１号からなる群から選ばれ、
   前記薄片状基材表面における下記で定義される粗粒の下記で定義される粗粒面積率が９％以下である顔料。
   粗粒：走査型電子顕微鏡で観察される長径が０．０１μｍまたは前記薄片状基材の粒子径に対して０．０５％のうち小さい値以上の大きさをもつ粒子であり、かつ長径が３μｍまたは前記薄片状基材の粒子径に対して１５％のうち大きい値以下の大きさをもつ粒子
   粗粒面積率：走査型電子顕微鏡で、画像が前記被覆顔料表面のみになるように１００００倍の倍率で撮影し、画像処理ソフトを用いて画像を粗粒を認識できるように閾値を調整して二値化処理し、画像の上下左右５％を除いた領域の粗粒の占有面積率を算出し、被覆顔料１種類につき１０枚ずつ同様の処理を行い、その平均値を粗粒面積率とする。
2. 前記薄片状基材の表面が、さらに樹脂、金属及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上を成分として含む層で被覆されている請求項１に記載の顔料。
3. 前記顔料が、さらに樹脂、金属及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上を成分として含む層で被覆されている請求項１又は２に記載の顔料。
4. 請求項１～３のいずれか１項に記載の顔料を含む、化粧料、インキ、塗料、トナー、又は成形物。

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