JP7355007B2 - ゲストホスト型液晶調光素子用の液晶配向剤 - Google Patents
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Description
特に、フィルム基材を用いた液晶調光素子は、ガラス基材の液晶調光素子と比較して軽量性や形状自由性に優れ、また、既に設置されている窓ガラス等に後から貼りつけることができるなどの利点が知られている。
液晶素子の方式は種々知られているが、その一つに二色性色素をホスト液晶に混入したゲストホスト型液晶を用いる方式があり、フィルム基材にゲストホスト型液晶を適用した調光フィルムも提案されている。(例えば、特許文献1参照)
また、二色性色素を用いたゲストホスト型液晶は、二色性色素の影響でホスト液晶材料の有する電圧保持率特性が大きく損なわれるという課題があった。(例えば、特許文献2参照)
更には、前記のように二色性色素を用いたゲストホスト型液晶素子では良好な電圧保持率が得られない問題があった。
前記基板が透明フィルム材であり、前記基板が液晶層と接する面には液晶配向膜を有し、前記液晶配向膜が下記(A)成分及び(B)成分を含有する液晶配向剤から得られた液晶配向膜であることを特徴とする、ゲストホスト型液晶調光素子にある。
(A)成分:ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分から得られるポリアミック酸のイミド化重合体であって、上記ジアミン成分は下記式(N-1)で表される基を有するジアミンの少なくとも1種を含む。
(B)成分:エポキシ基を2個以上有する化合物。
また、本発明により、上記効果に加えて、該液晶配向膜を形成する液晶配向剤、及び該液晶配向膜を備えるゲストホスト型液晶調光素子を提供することができる。
更に、本発明により、上記効果に加えて、又は上記効果の他に、上記液晶配向膜の製造方法を提供することができる。
本願発明に用いる液晶配向剤は、(A)成分;及び(B)成分を含有する。
<<(A)成分>>
(A)成分は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分から得られるポリアミック酸のイミド化重合体であって、上記ジアミン成分は下記式(N-1)で表される基を有するジアミンの少なくとも1種を含む。
[ポリアミック酸]
本発明に係るポリアミック酸は、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。
本発明で用いられるジアミンA1は、下記式(N-1)で表される基を有するジアミンである。
前記部分構造(p)として、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、及び炭素数1~12の炭化水素基で置換された置換ビニル基から選択される少なくとも1種がより好ましく、下記式(1-1)~(1-4)で表される構造から選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
前記式(1-2)のR3における直鎖状の炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、アルキル基がより好ましい。より好ましくは、炭素数1~3のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。
前記式(1-2)のR3における分岐状の炭化水素基としては、分岐状のアルキル基、分岐状のアルケニル基が挙げられ、分岐状のアルキル基が好ましい。より好ましくは炭素数3~4の分岐状のアルキル基であり、i-イソプロピル基、又は2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基がより好ましい。
R9の任意の-CH2-を置き換える二価の炭素環や二価の複素環としては、具体的にはシクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、4‐シクロヘキシルビフェニル、ゴナン、ピリジン、ピロール、ピリミジン、チオフェン、フラン、カルバゾール、オキサゾール、1,3,5-トリアジンなどの化合物から2つの水素原子を除いた基が挙げられるが、これらに限定されない。
R10は、前記の部分構造(p)であり、好ましい範囲も前記の通りである。
上記式(1-D1-5)~(1-D1-9)を含むジアミン成分は、モノマーの柔軟性が高いため、架橋反応が進行しやすく、液晶配向膜の架橋度をより向上させることができる。
前記式(1-D1-5)において、Rb、Rcは、水素原子である方が好ましい。
前記式(1-D1-5)において、Rdは、炭素数6以下の直鎖状の炭化水素基、又は分岐状の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数3以下の直鎖状の炭化水素基、又は分岐状の炭化水素基である。
前記式(1-D1-5)において、2つのアミノ基の好ましい位置は、N-アリル基に対して、ベンゼン環上の2,4の位置、2,5の位置又は3,5の位置である。
式(2a-32)中、アミノ基の一つに対してオルト位であるとき、R1は、それぞれ独立して、-O-、-OCH2-、-CH2O-、-COOCH2-及び-CH2OCO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示し、2つのアミノ基に対してメタ位であるとき、R1は、上記で示した結合基の他、-CONH-、-NHCO-、及び-CH2-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を示し、R2は、それぞれ独立して、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルキル基、炭素数1~22の直鎖状又は分岐状アルコキシ基を示し、Cyは、4,4’-ビフェニルジイル基、4,4’-フェニルシクロヘキシル基、及び4,4’-ジシクロヘキシル基から選ばれる基である。
上記式中、R3は、-O-、又はCH2O-を示し、Cy2は前記Cyと同義であり、R7は、それぞれ独立して、炭素数3~12の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、1,4-シクロヘキシレンのシス-トランス異性は、トランス異性体を示す。
式中、A1は、それぞれ独立して、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数1~22のフッ素含有アルキル基を示す。
また、垂直配向させたい場合は、前記ジアミンA1をジアミン成分全体に対して40~80モル%含み、前記ジアミンA2を20~60モル%含むことが更に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、以下の[1]~[5]の群のものなどをそれぞれ挙げることができる。
[2] 脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば下記式(X1-1)~(X1-13)(式(X1-1)~(X1-4)において、R3~R23はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基であり、同一でも異なってもよく、
前記式中、RMは水素原子、又はメチル基であり、Xa、は下記式(Xa-1)~(Xa-7)で表される4価の有機基である)などの酸二無水物;
なお、前記重合体を含む液晶配向剤とすることで、ホスト液晶及び二色性色素を含むゲストホスト型液晶を用いた場合であっても、シール密着性に優れ、所望の電圧保持率(VHR)を備え、信頼性を有する液晶配向膜を得ることができる。
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって合成できる。
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
本発明に用いられるポリイミドは、ポリイミド前駆体である、前記ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸エステル溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
(B)成分は、エポキシ基を2個以上有する化合物である。(B)成分としては、下記式(N-2)で表される化合物が好ましい。
該アルキレン基及び/又は該シクロアルキレン基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。また、該アルキレン基は、飽和又は不飽和のアルキレン基であってもよい。
R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20の直鎖又は分岐状のアルキル基を表す。
該アルキル基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。また、該アルキル基は、飽和又は不飽和のアルキル基であってもよい。
該脂肪族炭化水素基中の炭素-炭素結合の間に炭素数3~12のシクロアルカン基、炭素数5~12の芳香族炭化水素基、(チオ)エーテル、カルボニル、第3級アミンのいずれかが挿入されていてもよく、この脂肪族炭化水素基がエポキシ、ハロゲンより選択される1種の基を有してもよい。
該脂環式炭化水素基中の炭素-炭素結合の間に、(チオ)エーテル、カルボニル、第3級アミンのいずれかが挿入されていてもよく、環を構成しない単結合の一つが炭素数1~12のアルキレン基で置き換えられてもよい;
zは1~6の整数であり、好ましくは1~4である。
R15の炭素数5~12の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ビフェニル、ピリジン、ピラジン、ナフタレン、フラン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、フランのいずれかから水素原子をz-1個取り除いた基を挙げることができる。
zが2以上であり、R15が2価以上の炭素数1~24の脂肪族炭化水素基である場合、R15として、前記1価の炭素数1~24の脂肪族炭化水素基からz-1個の水素原子が除かれて結合手になったものを挙げることができる。
zが1であり、R15が1価の炭素数3~24の脂環式炭化水素基である場合、R15として、シクロアルキル基、シクロデカヒドロナフチル基、アダマンチル基などの1価の基を挙げることができる。
zが2以上であり、R15が2価以上の脂環式炭化水素基である場合、R15として、前記1価の炭素数3~24の脂環式炭化水素基から、z-1個の水素原子が除かれて結合手になったものを挙げることができる。
本願発明に用いる液晶配向剤は、上述の(A)成分及び(B)成分以外の成分を、適宜、任意に含有してもよい。
例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、1,2-ブトキシエタン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル又は乳酸イソアミルエステル、下記構造の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
(A)成分及び(B)成分以外の成分として、架橋性化合物を挙げることができる。
該架橋性化合物として、例えばエポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合を有する架橋性化合物を含挙げることができるがこれらに限定されない。なお、これら置換基や重合性不飽和結合は、架橋性化合物中に2個以上有するのがよい。
より具体的には、国際公開公報WO2011/132751号の62~66頁に掲載される、式[6-1]~式[6-48]の架橋性化合物が挙げられる。
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。これらの具体例は、国際公開公報WO2016/047771の段落[0117]に記載の界面活性剤が挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R-30(以上、大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(以上、旭硝子社製)などが挙げられる。
界面活性剤の使用量は、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させる塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10質量%以下とすることが好ましい。
また本発明の更に別の態様によれば、本発明の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜が液晶層と接触していない状態で又は液晶層と接触した状態で前記塗膜に光照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法が提供される。
更に、本発明の別の態様によれば、本発明による液晶配向膜、又は本発明の前記製造方法により得られた液晶配向膜を具備する、液晶調光素子が提供される。以下に詳細を示す。
上記液晶配向剤を用いることにより、液晶配向膜を製造することができる。また、本発明に係る液晶調光素子は、上記液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を具備する。本発明に係る液晶調光素子の動作モードは、例えばTN(Twisted Nematic)型、STN型、垂直配向型(VA-MVA型、VA-PVA型などを含む。)など種々の動作モードに適用することができる。
[工程(1-1):塗膜の形成]
先ず、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
例えばTN型、STN型又はVA型の液晶調光素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、上記で調製した液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム-酸化スズ(In2O3-SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。
TN型、STN型の液晶調光素子を製造する場合、上記工程(1-1)で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向能付与処理としては、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜を一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶調光素子を製造する場合には、上記工程(1-1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用できるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用できる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは10~5,000mJ/cm2であり、より好ましくは30~2,000mJ/cm2である。
また、150~800nmの波長の光を含む紫外線を使用する場合には、上記工程で得られた光照射膜をそのまま液晶配向膜をとして使用することができるが、該光照射膜を焼成してもよい。このときの焼成温度は、好ましくは80~300℃であり、より好ましくは120~250℃である。焼成時間は、好ましくは5~200分であり、より好ましくは10~100分である。ここでの光配向処理が、液晶層と接触していない状態での光照射の処理に相当する。
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、更に、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
液晶としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶などを挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。例えば、シッフベース系、アゾキシ系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、エステル系、ターフェニル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、ビシクロオクタン系、キュバン系などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えば、コレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;「C-15」、「CB-15」(メルク社商品名製)として販売されているカイラル剤;p-デシロキシベンジリデン-p-アミノ-2-メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
(テトラカルボン酸二無水物)
CA-1:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
CA-2:ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物
(ジアミン化合物)
DA-1:3-アミノベンジルアミン
DA-2:N,N-ジアリル-2,4-ジアミノアニリン
DA-3:下記式DA-3で表されるジアミン
DA-4:1,3-ジアミノ-4-{4-〔トランス-4-(トランス-4-n-ペンチルシクロへキシル)シクロへキシル〕フェノキシ}ベンゼン
GBL:γ-ブチルラクトン、
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
ポリイミド前駆体及びポリイミドのMn及びMwは、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803、KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量 約900,000、150,000、100,000、30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6、0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)0.53mlを添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5から10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い、以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
ポリアミド酸溶液などの粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)にて温度25℃にて測定した。
液晶配向処理剤を、30mm×40mmITO電極付き基板のITO面にスピンコートし、ホットプレート上にて60℃で5分間、熱循環型クリーンオーブン中にて220℃で30分間加熱処理をして、膜厚100nmのポリイミド液晶配向膜付きのITO基板を得た。このITO基板の塗膜面を、ロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数1000rpm、ロール進行速度50mm/sec、及び押し込み量0.2mmの条件でラビング処理した。
得られた液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、液晶配向膜面を内側にして、スペーサー径が4μmのビーズスペーサーを挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、MLC-6608(メルク・ジャパン社製)100質量%に対して、下記の式で示される色素化合物 Sudan blueII(Aldrich社製)を0.4質量%混合した液晶を注入した後、注入口を封止して、液晶セルを得た。
上記の「液晶セルの作製」で得られた液晶セルを60℃で72時間保管後、60℃の温度下で1Vの電圧を60μm印加し、50ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率(VHR)として計算した。なお、電圧測定は、電圧保持率測定装置(東陽テクニカ社製、VHR-1)を使用し、Voltage(印加電圧):±1V、Pulse Width(印加パルス):60μs、及びFlame Period(フレーム周期):50msの設定で行った。
液晶配向処理剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、60℃のホットプレート上で1分間乾燥後、120℃で5分間焼成して膜厚100nmの塗膜を得た。このようにして得られた2枚の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜面上に直径4μmビーズスペーサー(日揮触媒化成社製、真絲球、SW-D1)を散布した後、UV(紫外線)硬化型接着剤を滴下した。
次いで、他方の基板の液晶配向膜面を内側にし、基板の重なり幅が0.5cmになるように、貼り合わせを行った。その際、貼り合わせ後のシール剤の直径が約3mmとなるようにシール剤の滴下量を調整した。貼り合わせた2枚の基板をクリップにて固定した後、波長325nm以下のカットフィルターを用いて波長365nmのUVを1.0J照射し接着性評価用のサンプルを作製した。更に120℃で1時間熱硬化させて、接着性評価用のサンプルを作製し、UVを照射したサンプルと、UV及び熱硬化の両方を行ったサンプルの比較を行った。
上記で作製したサンプルを卓上形精密万能試験機(島津製作所社製EZ-SX)にて、上下基板の端の部分を固定した後、基板短辺の両端から上下に引っ張り、剥離する際の圧力(N)を測定した。そして、計測したシール剤の直径より見積もった面積(mm2)で圧力(N)を規格化した値を用いて接着力の評価を実施した。3mm径のシール破断面を観察した。シール断面の密着形状がシール材とシール材で破断していた場合を良好、シール材と有機膜の間で破断していた場合、及びITOとシール材の間で破断していた場合を不良と判定した。
実施例及び比較例で得られた液晶配向剤を、細孔径1umのメンブランフィルタで加圧濾過した。
液晶配向剤を100×100mmのITO電極付きPETフィルム基板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:50um)上に塗布し、ホットプレート上にて120℃で5分間の加熱処理をした後に100×20mmの大きさに切り取り、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を2枚作製した。
片方の基板に、スペーサー径が30umビーズスペーサーを塗布し、更に、もう一方の基板の液晶配向膜上にシール剤(協立化学社製723K1)を印刷し、これらの基板を重なるように貼り合わせた。その際、シール剤の量は、貼り合わせ後のシール剤の面積が縦50×横10mmとなるように調整した。貼り合わせた2枚の基板をクリップにて固定した後、紫外光を3J/cm2照射、次いで120℃、1時間熱硬化させて、本評価用のテストサンプル基板を作製した。
評価は、前記ピール強度(N/10mm)の値が大きいものほど、シール剤及び下地基板との密着性が優れていることを示す)。
ピール試験の評価結果として、ピール強度(N/10mm)の値を、表5及び表6に示した。
撹拌装置付きの50mL(リットル)の四つ口フラスコを窒素雰囲気とし、DA-1を1.12g(9.20mmol)DA-2を1.87(9.20mmol)及びDA-4を2.00g(4.60mmol)を量りとり、NMPを39.5g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら、CA-2を2.88g(11.5mmol)添加し、60℃で3時間反応させた後、CA-1(2.25g,10.8mmol)とNMP(4.39g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が20.0質量%のポリアミド酸溶液(PAA-1)を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は660.1mPa・sであった。このポリアミック酸のMnは12,426、Mwは41,548であった。
下記表1に示す成分を使用し、それぞれ合成例1と同様の操作を行ってポリアミック酸(PAA-2)~(PAA-5)を得た。得られたポリアミック酸溶液の粘度及び分子量を下記表1に示す。
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(2)(50.0g)に、NMPを加えて7.50質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(6.26g)、及びピリジン(19.4g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(556ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリイミド粉末(PI-1)を得た。このポリイミドのイミド化率は51%であった。このポリイミド粉末のMnは11,201、Mwは32,594であった。
下記表2に示す成分を使用し、それぞれ合成例6と同様の操作を行ってポリイミド粉末(PI-2)~(PI-5)を得た。
合成例6で得られたポリイミド粉末(PI-1)(1.50g)に、GBL(10.0g)とPGME38.5gを加え、室温にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液にTETRAD-Cを10質量%含む混合溶液を0.45g攪拌しながら加え、次いで室温で2時間撹拌し液晶配配向剤(AL-1)を得た。
特定アミン化合物と特定アミン化合物及び特定添加剤を含まない比較例2は電圧保持率が低く、UV照射による硬化でシール材との密着は不良であり、且つUV照射後の熱硬化による硬化も不良であった。
Claims (9)
- 透明電極を有する一対の基板と、前記一対の基板に挟持される液晶層とを備え、前記液晶層はホスト液晶及び二色性色素を含み、前記基板が透明フィルム材であるゲストホスト型液晶調光素子用の液晶配向剤であって、下記(A)成分及び(B)成分を含有することを特徴とする液晶配向剤。
(A)成分:ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分から得られるポリアミック酸のイミド化重合体であって、上記ジアミン成分は、下記式(N-1)で表される基を有するジアミンの少なくとも1種を含むポリアミック酸のイミド化重合体。
(B)成分:エポキシ基を2個以上有する化合物。 - 前記(A)成分において、イミド化重合体のイミド化率が40~60%である請求項1に記載の液晶配向剤。
- 前記(A)成分において、式(N-1)で表される基を有するジアミンが下記式(1-D)で表される化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
- 前記(B)成分が、下記式(N-2)で表されるエポキシ化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
R13及びR14は、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1~20の直鎖又は分岐状のアルキル基を表し、
R15は、z価の炭素数1~24の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基、又はz価の炭素数3~24の脂環式炭化水素基を表し、
該脂肪族炭化水素基中の炭素-炭素結合の間に炭素数3~12のシクロアルカン基、炭素数5~12の芳香族炭化水素基、(チオ)エーテル、カルボニル、第3級アミンのいずれかが挿入されていてもよく、この脂肪族炭化水素基がエポキシ、ハロゲンより選択される1種の基を有してもよく、また、該脂環式炭化水素基中の炭素-炭素結合の間に、(チオ)エーテル、カルボニル、第3級アミンのいずれかが挿入されていてもよく、環を構成しない単結合の一つが炭素数1~12のアルキレン基で置き換えられてもよい。zは1~6の整数である。) - 前記(A)成分において、ポリアミック酸は芳香環に直接結合したカルボキシル基を有さない請求項1~6のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
- 前記液晶配向剤における(A)成分の含有量が、液晶配向剤の総量を100質量%とした場合、1~15質量%である請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
- 前記液晶配向剤における(B)成分の含有量が、(A)成分100質量%に対して1~30質量%である請求項1~8のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
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