以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<プリンタ1の機械的構成>
図1において、プリンタ1は、キャリッジ2、ヘッドユニット3、用紙搬送ローラ4などを備える。また、プリンタ1は、制御装置50によって制御される。
キャリッジ2は、プリンタ1の筐体に固定された2本のガイドレール5により案内され、図1に示す矢印の主走査方向に往復移動する。搬送ローラ4は、インクが吸収される用紙等の印刷媒体Pの下面の側に配置され、両端においてプリンタ1の筐体に回転可能に支持される。図示しない別の搬送ローラが、印刷媒体Pの上面の側に配置され、プリンタ1の筐体に回転可能に支持される。印刷媒体Pは、上面、及び下面の両側に配置される両搬送ローラにより挟まれ、搬送ローラの回転に応じて主走査方向に直交する副走査方向に搬送される。なお、図1に矢印で示す4つの方向は、以降の動作における主走査方向の右側及び左側の方向、並びに、副走査方向の上流側及び下流側の方向として、説明される。
ヘッドユニット3はキャリッジ2に搭載される。図2は図1に示すヘッドユニット3を拡大した図である。ヘッドユニット3は3つのブラックノズルユニット11a~11cと、3つのカラーノズルユニット12a~12cとを備える。
3つのブラックノズルユニット11a~11cは、主走査方向に沿って3つの列で配列され、それぞれのノズルユニットは、副走査方向に間隔Wで配列された複数のブラックノズル15を備える。また、ブラックノズルユニット11bは、ブラックノズルユニット11aから副走査方向の下流側に間隔Wa=W/3(Wの3分の1)だけずれて配置され、ブラックノズルユニット11cは、ブラックノズルユニット11bから副走査方向の下流側に間隔Waだけずれて配置される。この間隔Waだけずれて配置されることにより、ヘッドユニット3におけるブラックノズル15の副走査方向の間隔は、間隔Waとなる。
3つのカラーノズルユニット12a~12cは、主走査方向に沿って3つの列で配列され、それぞれのノズルユニットは、副走査方向に間隔Wで配列された複数のカラーノズル16を備える。また、3つのカラーノズルユニット12a~12cにおけるカラーノズル16は、副走査方向に揃って配置され、ブラックノズルユニット11aにおけるブラックノズル15とも副走査方向に揃って配置される。
本実施形態では、3つのブラックノズルユニット11a~11cのブラックノズル15の総数は、3つのカラーノズルユニット12a~12cの各カラーノズルユニットのカラーノズル16の数の3倍の数である。
図1に示す4つのインクカートリッジ14は、4本のチューブ13によりヘッドユニット3に接続される。4つのインクカートリッジ14には、4色の異なるインクがそれぞれ充填される。主走査方向の右側から順に、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタの色のインクカートリッジ14が配置される。これら4色のインクは4本のチューブ13を介してヘッドユニット3に供給される。
ヘッドユニット3は、4つのインクカートリッジ14から供給された4色のインクを吐出する。具体的には、ブラックノズルユニット11a~11cのブラックノズル15は、ブラックのインクを吐出し、カラーノズルユニット12a~12cのカラーノズル16は、順にマゼンタ、シアン、及びイエローのインクをそれぞれ吐出する。
<プリンタ1の電気的構成>
図4に示すブロック図は、プリンタ1に搭載される制御装置50と、その制御装置50と電気的に接続される各種の装置とを示す。制御装置50は、CPU51と、ROM52と、RAM53とを構成要素の一部として備えるコンピュータであり、構成要素はそれぞれ電気的に接続される。制御装置50を構成する制御機器は、制御装置50の外部にある通信装置60と、メモリコントローラ62と、操作パネル64と、ドライバIC65と、キャリッジドライバ66と、搬送ドライバ68とに接続される。
CPU51は、プリンタ1の制御を行うメインプログラムを含む各種プログラムを実行処理する装置であり、印刷制御処理を実行する装置である。プリンタ1の制御を行うメインプログラムを含む各種プログラムに関しての詳細な説明は省略する。印刷制御処理に関しての詳細な説明は後述する。ROM52は、プリンタ1の制御を行うメインプログラムを含む各種プログラムと、印刷制御処理を実行するプログラムとを記憶する。RAM53は、外部装置61より取得したデータを一時的に記憶する。
外部装置61は、プリンタ1に通信装置60を介して接続される装置であり、PC、ノートパソコン、スマホ、タブレットなどの情報処理機器である。外部装置61は、CPU61a、HDD61b、図示しない操作パネルなどのハードウェア装置で構成されたコンピュータを含み、ネットワークケーブルまたは無線通信手段を介して通信装置60とデータの送受信可能に接続される。通信装置60は、制御装置50と電気的に接続され、外部装置61より取得したデータをCPU51に送る。
CPU61aはインストールされたプリンタドライバプログラム及び情報処理プログラムにより印刷準備処理と吐出演算処理とを実行する。印刷準備処理と吐出演算処理とに関しての詳細な説明は後述する。HDD61bは、プリンタドライバプログラムと情報処理プログラムとを含むプログラムを記憶する。また、HDD61bは、図5~図7に示す重ね吐出位置を決定するためのテーブルTa1~Ta3と、図8に示す吐出量割合を決定するためのテーブルTa4~Ta8と、総吐出量割合演算式とを記憶する。テーブルの各データと演算式との詳細な説明は後述する。
外部メモリ63は、メモリーカード、携帯型のストレージ、デジタルカメラなどのメモリ機能を有する機器である。制御装置50は、外部メモリ63にメモリコントローラ62を介して接続される。制御装置50は、外部メモリ63からのデータの読込みと、外部メモリ63へのデータの書込みとを行うことが可能である。
操作パネル64は、ディスプレイと、各種の操作ボタンとを備える。ディスプレイは、プリンタ1における現在の状態の表示、及び、設定されるデータの選択肢の表示を実行する。各種の操作ボタンは、ディスプレイ表示の切替え、選択肢の切替え、選択した項目の決定などを実行するために、ユーザにより操作される手段である。各種の操作ボタンは、ユーザが印刷媒体の種類などの印刷に必要なデータを選択するための操作ボタンを含む。
ドライバIC65は、ヘッドユニット3の吐出を制御する。ドライバIC65は、CPU51から送られた吐出データを基にヘッドユニット3を駆動し、ブラックノズル15、またはカラーノズル16からインクを吐出させる。
キャリッジモータドライバ66は、キャリッジモータ67の駆動を制御する。キャリッジモータドライバ66は、CPU51から送られた吐出データを基にキャリッジモータ67を駆動する。キャリッジモータ67は、図示しないプーリーとベルトとによりキャリッジ2に連結され、キャリッジ2は図1に示す矢印の主走査方向に往復移動する。
搬送ドライバ68は、搬送モータ69の駆動を制御する。搬送ドライバ68は、CPU51から送られた搬送量データを基に搬送モータ69を駆動する。搬送モータ69は、ギア機構により用紙搬送ローラ4と連結され、用紙搬送ローラ4は、搬送モータ69の駆動に応じて回転し、印刷媒体Pを図1に示す矢印の副走査方向における下流側へ移動させる。
<各種データ>
図3に示す表は、ブラックノズル15、及び、カラーノズル16より吐出されるインクのドットサイズに対応する吐出量割合を示し、該表のデータはROM52に記憶される。本実施形態では、ノズルユニット3が吐出することができるインクのドットサイズが、4種類のドットサイズL、M、S、Zにて表現される。ドットサイズが最も大きいサイズをドットサイズLとする。ドットサイズLは、1つのノズルが一度の吐出動作にて、1箇所のドット位置に吐出できる最大のインク量を示す。この最大のインク量が、本実施形態における最大吐出量である。吐出量割合は、最大吐出量に対して、1つのノズルから吐出されるインク量の割合を示す。ドットサイズLの吐出量割合は、100%に設定される。ドットサイズMの吐出量割合は30%に設定され、ドットサイズSの吐出量割合は5%に設定される。ドットサイズZの吐出量割合は、0%に設定され、インクを吐出しないことを意味する。
図5に示すマスクパターンテーブルTa1は、印刷媒体の種類に応じたマスクパターンを決定する表であり、マスクパターンテーブルTa1のデータはROM52に記憶される。吐出面積割合Rcが、印刷媒体である光沢紙、インクジェット紙、普通紙、はがきの4種類にそれぞれ応じて設定される。マスクパターンテーブルTa1は、吐出面積割合Rcに応じたマスクパターンMa1~Ma4を設定する。マスクパターンは、図5に示す縦列12個×横列10個からなる120個のマスを有し、どのマスの位置に重ね吐出をするかを決定する。120個のマスの各マスは、1つのドット位置を示す。ここで説明する120個のマスを有すマスクパターンは、説明の便宜上、画像全体にマスク処理を施すマスクパターンの一部である。マスク処理はマスクパターンに応じて重ね吐出をするドット位置と、重ね吐出をしないドット位置とを決定する処理である。吐出面積割合Rcは、120個のマスを総面積とした場合に、総面積に対し、重ね吐出をするドット位置として指定されるすべてのマスの合計面積の割合を示す。120個のマスのうち、黒丸で示すマスが重ね吐出をするドット位置(以降、重ね吐出位置と記す。)を示し、空白で示すマスが重ね吐出をしないドット位置を示す。
光沢紙の吐出面積割合Rcは100%である。その理由は、光沢紙について、インクの吸収性が高く、隣り合うインクと混ざり合う可能性が低いため、重ね吐出される面積割合を大きくすることができるからである。光沢紙に対応したマスクパターンMa1においては、120個のマスのうちすべてのマスに黒丸が配置される。はがきの吐出面積割合Rcは50%である。その理由は、はがきについて、インクの吸収性が低く、隣り合うインクと混ざり合う可能性が高いため、重ね吐出される面積割合を小さくしなければならないからである。はがきに対応したマスクパターンMa4においては、120個のマスのうち60個のマスに黒丸が配置される。吐出面積割合Rcが100%を下回るマスクパターンにおいては、隣り合う重ね吐出されるドットの数が可能な限り少なくなるよう、重ね吐出されるドット位置の配置形態が決められる。
本実施形態におけるノズルユニット3において、重ね吐出動作はブラックインクのドット位置のみついて実行される。ブラックインクはブラックノズルユニット11a~11cに配置されるブラックノズル15から吐出される。カラーインクであるマゼンタインク、シアンインク、及びイエローインクは、カラーノズルユニット12a~12cにそれぞれ配置されるカラーノズル16から吐出される。ブラックノズル15の総数は、各カラーインクのノズル数に対して3倍の数であり、ブラックインクは一度の吐出動作で、カラーインクの3倍の数のドット位置にインクを吐出することが可能である。例えば、図2に示すノズルユニット3において、ブラックノズル15の総数が21個である場合に、ノズルユニット3は一度の吐出動作でブラックインクを21ドット吐出し、カラーインクであるイエローインク、シアンインク、及びマゼンタインクをそれぞれ7ドット吐出することができる。ブラックインクとカラーインクとのどちらのインクでも同じ解像度で印刷する場合には、ブラックインクの場合には7ドット分のノズルだけが吐出動作を実行すればよく、残りの14ドット分のノズルは吐出しなくてもよい。よって、この残りの14ドット分のノズルが、7ドット分のノズルが吐出したドット位置に重ね吐出をすることが可能となる。
本実施形態では、ノズルが一度に吐出することができる最大吐出量であるドットサイズLのドット位置のみについて、重ね吐出動作が実行される。ドットサイズLは最も色を濃く表現したい位置に吐出されるドットサイズであるため、黒をより濃く表現するために重ね吐出動作が実行される。
図6に示す濃淡処理パターンテーブルTa2は、印刷媒体の種類に応じた濃淡処理パターンを決定する表であり、濃淡処理パターンテーブルTa2のデータはROM52に記憶される。濃淡処理パターンテーブルTa2は、4種類の印刷媒体に対応した濃淡処理パターンNa1~Na4を設定する。濃淡処理パターンNa1~Na4の各濃淡処理パターンは、縦列12個×横列10個からなる120個のマスで構成される範囲を有する。120個のマスは、図6に示すように、一点鎖線で区切られる。濃淡処理パターンの120個のマスうちの各マスが1つのドット位置を意味する。一点鎖線で区切られた2個または4個のマスが、太い実線で囲われ、その実線で囲われた範囲が濃淡処理範囲である。ここで説明する120個のマスを有する濃淡処理パターンは、説明の便宜上、画像全体の濃淡を処理する濃淡処理パターンの一部である。濃淡処理範囲内の複数のマスのうちどれか1つのマスが、ブラックインクの濃度の薄いドットであるドットサイズM、S、Zのインクが吐出されるドット位置に相当するマスであった場合に、濃淡処理範囲内のすべてのマスでブラックインクの重ね吐出が禁止される。濃淡処理範囲において重ね吐出を禁止する処理が、濃淡処理である。
濃淡処理の対象となるインクは、ブラックインクのみである。濃淡処理パターンについて、印刷媒体のインクの吸収性が高いほど、濃淡処理範囲が狭く設定される。インクの吸収性が高い印刷媒体では、隣り合うインク同士の混ざり合いが起きる可能性が低いため、濃淡処理範囲は狭く設定される。インクの吸収性が低い印刷媒体では、隣り合うインク同士の混ざり合いが起きる可能性が高いため、濃淡処理範囲は広く設定される。図6に示す光沢紙の濃淡処理パターンNa1については、120個のマスのうちで、左右隣り合う2つのマス(記号Aが記入されたマス)で、濃淡処理範囲が定められる。これら2つのマスのうちどちらか一方のマスにブラックインクのドットサイズM、S、Zのドット位置があった場合には、他方のマスのドット位置では重ね吐出が禁止される。図6に示すはがきの濃淡処理パターンNa4については、120個のマスのうち、上下左右隣り合う4つのマス(記号Dが記入されたマス)で、濃淡処理範囲が定められる。これら4つのマスのうち、いずれか1つのマスでもブラックインクのドットサイズM、S、Zのドット位置に相当するマスがあった場合には、残りのマスのすべてのドット位置にて重ね吐出が禁止される。濃淡処理パターンNa2について、濃淡処理範囲は、左右隣り合う2つのマス(記号Bが記入されたマス)であり、濃淡処理パターンNa3について、濃淡処理範囲は、上下左右隣り合う4つのマス(記号Cが記入されたマス)である。
図7に示す色境界処理パターンテーブルTa3は、印刷媒体の種類に応じた色境界処理パターンを決定する表であり、色境界処理パターンテーブルTa3のデータはROM52に記憶される。色境界処理パターンテーブルTa3は、4種類の印刷媒体に対応した色境界処理パターンCa1~Ca4を設定する。色境界処理パターンCa1~Ca4の各色境界処理パターンは、縦列12個×横列10個からなる120個のマスで構成される範囲を有する。120個のマスは、図7に示すように、一点鎖線で区切られる。色境界処理パターンの120個のマスうちの各マスが1つのドット位置を意味する。一点鎖線で区切られた2個または4個のマスが、太い実線で囲われ、その実線で囲われた範囲が色境界処理範囲である。ここで説明する120個のマスを有する色境界処理パターンは、説明の便宜上、画像全体の色境界を処理する色境界処理パターンの一部である。色境界処理範囲内のマスのうちどれか1つのマスでも重ね吐出をしないインクであるカラーインクが吐出されるドット位置に相当するマスであった場合に、色境界処理範囲内のすべてのマスでブラックインクの重ね吐出が禁止される。色境界処理範囲において重ね吐出を禁止する処理が、色境界処理である。
色境界処理パターンについては、印刷媒体のインクの吸収性が高いほど、色境界処理範囲が狭く設定される。インクの吸収性が高い印刷媒体では、隣り合うインク同士の混ざり合いが起きる可能性が低いため、色境界処理範囲は狭く設定される。インクの吸収性が低い印刷媒体では、隣り合うインク同士の混ざり合いが起きる可能性が高いため、色境界処理範囲は広く設定される。図7に示す光沢紙の色境界処理パターンCa1については、120個のマスのうち、左右隣り合う2つのマス(記号Eが記入されたマス)で、色境界処理範囲が定められる。これら2つのマスのうちどちらか一方のマスでもカラーインクが吐出されるドット位置に相当するマスであった場合には、他方のマスのドット位置にて重ね吐出が禁止される。図7に示すはがきの色境界処理パターンCa4については、120個のマスのうちで、上下左右隣り合う4つのマス(記号Hが記入されたマス)で、色境界処理範囲が定められる。これら4つのマスのうち、いずれか1つでもカラーインクが吐出されるドット位置に相当するマスであった場合には、他の残りのマスのすべてのドット位置にて重ね吐出が禁止される。色境界処理において、カラーインクが吐出されるドット位置のドットサイズは、カラーインクのドットサイズL、M、S、Zであるが、インクが吐出されないドットサイズZは色境界処理におけるカラーインクからは除外される。色境界処理パターンCa2について、色境界処理範囲は、左右隣り合う2つのマス(記号Fが記入されたマス)であり、色境界処理パターンCa3について、色境界処理範囲は、上下左右隣り合う4つのマス(記号Gが記入されたマス)である。
図8に示す吐出量割合テーブルTa4は、印刷媒体の種類に応じた吐出量割合Raを設定し、吐出量割合テーブルTa4のデータはROM52に記憶される。吐出量割合Raは、最大吐出量に対する吐出量の割合を示す。以降に記載の吐出量割合に関しても同様とする。吐出量割合Raは、印刷媒体がインクを吸収する吸収性が高いほど大きくなるよう設定される。インクの吸収性が高い光沢紙では40%が設定され、インクの吸収性が悪いはがきでは0%が設定される。1つのドット位置における重ね吐出量として計算される総吐出量割合演算式はRz=100+Rd×(Ra+Rb)/Rcとなる。吐出量割合Raが大きい光沢紙の総吐出量割合Rzは、はがきに比べて大きくなり、インクの吸収性が高い印刷媒体ほど総吐出量割合Rzが大きくなるよう演算される。
図8に示す吐出量割合テーブルTa5は、印刷画質の種類に応じた吐出量割合Rbを設定し、吐出量割合テーブルTa5のデータはROM52に記憶される。本実施形態では、印刷画質の種類を、最高画質、高画質、普通画質、及び高速画質の4種類とし、後者になるほど解像度が低くなり、印刷速度は速くなるものとする。吐出量割合Rbは、印刷画質の解像度が高いほど小さくなるよう設定される。解像度が高いということは隣り合うインクドット同士の間隔が狭いということであり、間隔が狭いインクドットに重ね吐出が実行されれば、隣り合うインクドット同士が混ざり合い、望む画像の形成が妨げられるおそれがある。よって、印刷画質の解像度が高い最高画質における吐出量割合Rbは0%に設定される。印刷画質の解像度が低い場合は隣り合うインクドット同士の間隔が広い。インクドット同士の間隔が広い場合には、画質よりも印刷速度を優先させることができ、重ね吐出量を増やすことにより印刷速度を落とすことなく、より濃い色を表現することができる。印刷画質の解像度が低い高速画質における吐出量割合Rbは40%に設定される。解像度が高い最高画質の総吐出量割合Rzは、解像度が低い高速画質に比べて小さくなるよう演算される。
図8に示す吐出面積割合テーブルTa6は、印刷媒体の種類に応じた吐出面積割合Rcを設定し、吐出面積割合テーブルTa6のデータはROM52に記憶される。このテーブルTa6で設定される吐出面積割合Rcは、図5に示す吐出面積割合Rcと同じ割合である。吐出面積割合Rcの説明は前述の通りである。光沢紙については、吐出面積割合Rcが100%であるマスクパターンMa1が使用される。対して、はがきについては、吐出面積割合Rcが50%であるマスクパターンMa4が使用され、重ね吐出をする際の色味が薄くなる。この色味の差を解消するために、総吐出量割合演算式Rz=100+Rd×(Ra+Rb)/Rcでは、他の変数Ra、Rb、Rdを吐出面積割合Rcで割ることから、吐出面積割合Rcが小さいほど総吐出量割合Rzが大きくなるよう演算される。
図8に示す吐出量割合テーブルTa7は、インクの種類に応じた吐出量割合Rdを設定し、吐出量割合テーブルTa7のデータはROM52に記憶される。本実施形態では、インクの種類は、染料インク1、染料インク2、及び顔料インクの3種類である。これらインクで印刷媒体に印刷される場合の濃度が薄いほど吐出量割合Rdが大きくなるよう設定される。インクの濃度が薄い染料インク1では吐出量割合Rbは100%に設定され、インクの濃度が濃い顔料インクでは吐出量割合Rbは70%に設定される。総吐出量割合演算式はRz=100+Rd×(Ra+Rb)/Rcであることから、濃度が薄いインクである染料インク1の総吐出量割合Rzは、濃度が濃いインクである顔料インクに比べて大きくなるよう演算される。
図8に示す総吐出量割合演算式は、重ね吐出位置における吐出量割合を算出する演算式であり、該演算式はROM52に記憶される。総吐出量割合演算式はRz=100+Rd×(Ra+Rb)/Rcで示される。例えば、印刷媒体がはがき、印刷画質が普通画質、インクの種類が染料インク1の場合には、前述のテーブルTa4~Ta7により、印刷媒体の種類における吐出量割合Ra(0%)、印刷画質の種類における吐出量割合Rb(20%)、印刷媒体の種類における吐出面積割合Rc(50%)、インクの種類における吐出量割合Rd(100%)が求められ、総吐出量割合Rzは140%と演算される。例えば、印刷媒体が光沢紙、印刷画質が普通画質、インクの種類が染料インク1の場合には、総吐出量割合Rzは160%と演算される。
図8に示す吐出量割合テーブルTa8は、印刷媒体の種類に応じた各タイミングにおける吐出量割合を表す第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3を導く演算式を設定する。吐出量割合テーブルTa8のデータはROM52に記憶される。本実施形態で重ね吐出が実行される場合には、ブラックインクによって形成される1つのドットは、ブラックノズル15からインクが最大2回重ねて吐出されることによって形成される。最大2回の重ね吐出を実行するために、ブラックノズル15からのインクの吐出タイミングとしては、第1の吐出タイミングから第3の吐出タイミングまでの3つの吐出タイミングが存在する。第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3の演算式は、各吐出タイミングにおけるインクの吐出量割合を導くための演算式であり、該演算式により、第1の吐出タイミングにおける第1の吐出量割合Az1、第2の吐出タイミングにおける第2の吐出量割合Az2、及び第3の吐出タイミングにおける第3の吐出量割合Az3が演算される。
吐出割合テーブルTa8の第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3を求める演算式は、印刷媒体のインクの吸収性によって定められる。インクの吸収性が高い光沢紙に短い間隔で多くのインクを吐出した場合でも、光沢紙はインクを速やかに吸収でき、印刷媒体表面に吸収されずに残るインク量は少ない。例えば、光沢紙の総吐出量割合Rzが140%だった場合では、第1の吐出における第1の吐出量割合Az1は100%、第2の吐出における第2の吐出量割合Az2は40%、第3の吐出における第3の吐出量割合Az3は0%となる。対して、インクの吸収性が低いはがきでは、短い間隔で多くのインクを吐出すると、はがきがインクを吸収できず、印刷媒体表面に吸収されずに残ったインクが隣り合うインクと混ざり合うこととなる。この混ざり合いを防止するため、一度に吐出されるインクの量を減らし、間隔をあけて少量のインクを吐出する必要がある。例えば、はがきの総吐出量割合Rzが140%だった場合では、第1の吐出量割合Az1は100%、第2の吐出量割合Az2は20%〔(Rz-100)/2〕、第3の吐出量割合Az3は20%〔(Rz-100)/2〕となる。
<実施形態の動作>
次に、外部装置61とプリンタ1との動作を説明する。外部装置61の動作として、図9の(A)に示す印刷準備処理と、図9の(B)に示す吐出演算処理と、印刷準備処理の中の印刷データ生成処理とが主に存在する。プリンタ1の動作として、図11に示す印刷制御処理が主に存在する。図9の(A)、(B)に示す処理S01~S08と、処理S20~S31とは、外部装置61のCPU61aにより実行される処理である。図11に示す処理S40~S53は、プリンタ1のCPU51により実行される処理である。以下、処理S01などは、S01などと記載する。
ユーザは、プリンタドライバプログラム及び情報処理プログラムがインストールされた外部装置61の操作パネルを操作し、プリンタドライバプログラムなどのプログラムの実行を開始させる。CPU61aは、HDD61bに記憶されたプリンタドライバプログラムなどのプログラムを読出し、動作させる。ここではプリンタドライバの詳細な動作処理の説明は省略する。ユーザは、操作パネルによる所定の操作を行うことにより、HDD61bに記憶された画像データを選択し、プリンタ1にセットされた印刷媒体の種類を選択し、ユーザ自身が望む印刷画質を選択し、印刷動作の開始を指示する。ユーザが選択した印刷媒体の種類と、印刷画質とを特定する情報は、HDD61bに記憶される。インクの種類はプリンタ1の機種ごとに決まっており、インクの種類を特定する情報は、プリンタドライバプログラムをインストールした時にプリンタドライバプログラム内に組み込まれる。このため、インクの種類を特定する情報は、プリンタドライバプログラムとともに、HDD61bに記憶される。
≪印刷準備処理≫
印刷準備処理について、図9の(A)を参照して説明する。図9の(A)に示す印刷準備処理は、印刷動作の開始指示によりスタートする(S01)。プリンタドライバプログラム及び情報処理プログラムを実行するCPU61aにより、S02にてユーザが選択した画像データがHDD61bよりCPU61aに読み出される。画像データはRGBカラーモデルなどの画像データである。S03にてユーザが選択した印刷情報がCPU61aによりHDD61bから読み出されることにより取得される。印刷情報とは、印刷媒体の種類、印刷画質、インクの種類などを特定する情報である。
S04にて、色変換処理及びパターン変換処理を含むドットパターンデータ生成処理が実行される。RGBカラーモデルなどの画像データはディスプレイまたはテレビなどに表示される輝度データである。S04における色変換処理により、RGBカラーモデルなどの画像データが、プリンタ1による印刷動作のためのCMYKカラーモデルの画像データに変換される。その後、S04におけるパターン変換処理により、CMYKカラーモデルの画像データが各色のドットパターンデータに変換される。ドットパターンデータは、各色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色)ごとにインクを吐出するためのドット位置と、ドット位置にて吐出するインクのドットサイズとを定める。ドットパターンデータ生成処理の過程にてハーフトーン処理などの各種処理が実行されるが、公知の技術であるために詳細な説明は省略する。
S05にて、吐出演算処理は、ブラックのドットパターンデータを対象として実行される。吐出演算処理の詳細な説明は後述する。S06にて、印刷データ生成処理が実行される。印刷データは、頭出しの搬送量データと、吐出データと、搬送量データと、総吐出動作数データと、総ページ数データとを含む。印刷データ生成処理の詳細な説明は後述する。
S07にて、S06で生成された印刷データがプリンタ1に送信される。S07の実行後に、S08にて印刷準備処理が終了する。
≪吐出演算処理≫
吐出演算処理について、図5~図8と、図9の(B)と、図10とを参照して説明する。S21~S23にて、図5~図7に示すテーブルTa1~Ta3に従い重ね吐出位置が決定される。S21にてマスク処理がドットパターンデータに施される。マスク処理には図5に示すマスクパターンが用いられる。図10を参照してドットパターンデータDp1にマスクパターンに従うマスク処理を施す動作について詳細に説明する。図10に示すドットパターンデータDp1はS04にて生成されたドットパターンデータDp1である。ドットパターンデータDp1は縦列12個×横列10個からなる120個のマスで構成されたデータである。各マスが1つのドット位置を示す。マス内に記入された記号LはブラックインクのドットサイズLを表す。マス内に記入された記号MはブラックインクのドットサイズMを表す。マス内に記入された記号SはブラックインクのドットサイズSを表す。マス内に記入された記号Zはインクを吐出しない位置を表す。マス内に記入された記号YはイエローインクのドットパターンデータにおけるドットサイズLのドット位置を表す。
図10に示すマスクパターンMa4は、図5に示す印刷媒体の種類のうちはがきに対応したマスクパターンMa4を表す。マスクパターンMa4の記号黒丸のマスは重ね吐出位置を示し、空白マスは重ね吐出をしない位置を示す。ドットパターンデータDp1、及びマスクパターンMa4において、番号「1」の縦列と、番号「1」の横列とが交差するマスを、マス(縦列1,横列1)と記載する。ドットパターンデータDp1のマス(縦列1,横列1)は、マスクパターンMa4のマス(縦列1,横列1)に対応し、対応する2つのマスが重なるように画像が合成される。重ね吐出位置は、ブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのドット位置のみにおいて決定される。よって、ドットパターンデータDp1の記号Lが記入されたマスに、マスクパターンMa4の記号黒丸が記入されたマスが重なる場合、ドットパターンデータDp1の記号Lが記号黒丸に書換えられ、記号Lが記入されたマスは重ね吐出位置に相当するマスに変更される。すなわち、ドットサイズLのブラックインクで形成されるドット位置を表すデータが、重ね吐出が実行されるドット位置を表すデータに変更される。
記号黒丸の重ね吐出位置に相当するマスについて具体的に説明する。マスに示す記号黒丸は重ね吐出位置を表すデータであり、インクの色はブラックである。記号黒丸のマスにおけるドットサイズは、重ね吐出位置における各吐出タイミングでのドットサイズを含む。具体的には、記号黒丸のマスにおけるドットサイズは、第1の吐出タイミング、第2の吐出タイミング、及び第3の吐出タイミングの各々におけるドットサイズである。吐出演算処理S21~S30により、重ね吐出位置と、第1~第3の吐出タイミングにおけるドットサイズとが決定される。
マスク処理について具体的に説明する。図10に示すドットパターンデータDp2はマスク処理が施されたドットパターンデータである。マスクパターンMa4のマス(縦列1,横列1)は、ドットパターンデータDp1のマス(縦列1,横列1)に重ねられ、ドットパターンデータDp2のマス(縦列1,横列1)となる。マスクパターンMa4のマス(縦列1,横列1)は、重ね吐出をしない空白マスであるため、ドットパターンデータDp1のマス(縦列1,横列1)はブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのまま変更されず、ドットパターンデータDp2のマス(縦列1,横列1)は記号Lのマスとなる。すなわち、ドットパターンデータDp2のマス(縦列1,横列1)に設定されるデータは、ドットパターンデータDp1のマス(縦列1,横列1)に設定されるデータと同様に、ブラックインクのドットサイズLのドット位置を表すデータである。
マスクパターンMa4のマス(縦列2,横列1)は、ドットパターンデータDp1のマス(縦列2,横列1)に重ねられ、ドットパターンデータDp2のマス(縦列2,横列1)となる。マスクパターンMa4のマス(縦列2,横列1)は、重ね吐出位置である記号黒丸のマスであるため、ドットパターンデータDp1のマス(縦列2,横列1)は記号Lから記号黒丸のマスに書換えられ、ドットパターンデータDp2のマス(縦列2,横列1)は記号黒丸のマスとなる。すなわち、ドットパターンデータDp2のマス(縦列2,横列1)に設定されるデータは、重ね吐出が実行されるドット位置を表すデータに変更される。ドットパターンデータDp1の記号M、記号S、記号Z、及び記号YのマスはブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスではないため、マスクパターンMa4の記号黒丸のマスが重なったとしても重ね吐出位置に相当するマスに変更されない。
S22にて濃淡処理がドットパターンデータに施される。濃淡処理には図6に示す濃淡処理パターンが用いられる。図10に示すドットパターンデータDp2に濃淡処理パターンに従う濃淡処理を施す動作について詳細に説明する。ドットパターンデータDp2はS21にて生成されたマスク処理後のドットパターンデータである。図10に示す濃淡処理パターンNa4は、図6に示す印刷媒体の種類のうち、はがきに対応した濃淡処理パターンNa4である。濃淡処理パターンNa4のマス120個のうち、太枠で囲われた2個または4個のマスを囲む範囲が濃淡処理範囲である。濃淡処理パターンNa4においても、マスクパターンと同様に、ドットパターンデータDp2のマス(縦列1,横列1)に、濃淡処理パターンNa4のマス(縦列1,横列1)が対応しており、対応する2つのマスが重なるように画像が合成される。濃淡処理は、ブラックインクについて、ドットサイズL以外のドットサイズであるドットサイズM、S、Zが濃淡処理範囲内にあった場合に、重ね吐出が禁止される処理である。重ね吐出が禁止される処理とは、記号黒丸のマスが書換え前のブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスに戻る処理である。すなわち、重ね吐出が実行されるドット位置を表すデータが、ドットサイズLのブラックインクで形成されるドット位置を表すデータに戻される。
濃淡処理について具体的に説明する。図10に示すドットパターンデータDp3は濃淡処理が施されたドットパターンデータである。濃淡処理パターンNa4における1つの濃淡処理範囲は、マス(縦列1,横列3)と、マス(縦列1,横列4)と、マス(縦列2,横列3)と、マス(縦列2,横列4)とを囲む太枠の範囲である。対応する位置のマスが重なるように、ドットパターンデータDp2に濃淡処理パターンNa4が重ねられる。ドットパターンデータDp2における濃淡処理範囲のうちの1つの濃淡処理範囲は、マス(縦列1,横列3)と、マス(縦列1,横列4)と、マス(縦列2,横列3)と、マス(縦列2,横列4)とを囲む範囲であり、マスの記載順に記号Lと、記号黒丸と、記号黒丸と、記号Zとが記入される範囲である。ブラックインクについて、ドットサイズL以外のドットサイズであるドットサイズZが濃淡処理範囲内にあるため、該範囲内にて重ね吐出位置に変更される処理が禁止され、マス(縦列1,横列4)と、マス(縦列2,横列3)との重ね吐出位置を表す記号黒丸のマスがブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスに書換えられる。
ドットパターンデータDp3に示す6つの太枠で囲われた範囲は、重ね吐出が禁止された6つの濃淡処理範囲を表す。6つの濃淡処理範囲の各濃淡処理範囲内の1つ以上のマスは、ブラックインクのドットサイズM、S、Zのいずれかのサイズを表す記号のマスである。6つの濃淡処理範囲において、重ね吐出位置を表す記号黒丸のマスがブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスに書換えられている。
S23にて色境界処理がドットパターンデータに施される。色境界処理には図7に示す色境界処理パターンが用いられる。図10を参照し、ドットパターンデータDp3に色境界処理パターンに従う色境界処理を施す動作について詳細に説明する。ドットパターンデータDp3はS22にて生成された色境界処理後のドットパターンデータである。図10に示す色境界処理パターンCa4は、図7に示す印刷媒体の種類のうち、はがきに対応した色境界処理パターンCa4を表す。色境界処理パターンCa4のマス120個のうち、太枠で囲われた2個または4個のマスを囲む範囲が色境界処理範囲である。図10に示す色境界処理パターンCa4において、マスクパターンと同様に、ドットパターンデータDp3のマス(縦列1,横列1)に、色境界処理パターンCa4のマス(縦列1,横列1)が対応しており、対応する2つのマスが重なるように画像が合成される。色境界処理は、色境界処理範囲内にカラーインクがあった場合に、重ね吐出が禁止される処理である。本実施形態におけるカラーインクは、イエロー、シアン、及びマゼンタであり、各色のドットサイズはドットサイズL、M、S、Zのいずれかであるが、インクが吐出されないドットサイズZは色境界処理におけるカラーインクからは除外される。色境界処理において、重ね吐出が禁止される処理とは、記号黒丸のマスが書換え前のブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスに戻る処理である。すなわち、重ね吐出が実行されるドット位置を表すデータが、ドットサイズLのブラックインクで形成されるドット位置を表すデータに戻される。
色境界処理について具体的に説明する。ドットパターンデータDp4は色境界処理が施されたドットパターンデータである。色境界処理パターンCa4における1つの色境界処理範囲は、マス(縦列3,横列1)と、マス(縦列3,横列2)と、マス(縦列4,横列1)と、マス(縦列4,横列2)とを囲む太枠の範囲である。対応する位置のマスが重なるように、ドットパターンデータDp4に色境界処理パターンCa4が重ねられる。ドットパターンデータDp4における1つの色境界処理範囲は、マス(縦列3,横列1)と、マス(縦列3,横列2)と、マス(縦列4,横列1)と、マス(縦列4,横列2)とを囲む範囲であり、マスの記載順に記号Yと、記号黒丸と、記号Yと、記号Yとが記入された範囲である。色境界処理範囲内に、カラーインクであるイエローインクのドットサイズLを表す記号Yのマスがあるため、該範囲内にて重ね吐出位置に変更される処理が禁止され、マス(縦列3,横列2)の重ね吐出位置である記号黒丸のマスがブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスに書換えられる。
ドットパターンデータDp4に示す太枠で囲われた5つの範囲は、重ね吐出が禁止された5つの色境界処理範囲を表す。5つの色境界処理範囲の各色境界処理範囲内の1つ以上のマスは、カラーインクのドットサイズL、M、Sのいずれかのサイズを表す記号のマスである。5つの色境界処理範囲において、重ね吐出位置を表す記号黒丸のマスがブラックインクのドットサイズLを表す記号Lのマスに書換えられている。
S24~S30にて、図8に示すテーブルTa4~Ta8、及び総吐出量演算式に従い重ね吐出位置における重ね吐出量割合が決定される。S24にて、印刷媒体の種類に対応した吐出量割合Raが決定される。はがきに対応した吐出量割合Raは、図8に示す吐出量割合テーブルTaにより0%に決定される。S25にて印刷画質の種類に対応した吐出量割合Rbが決定される。普通画質に対応した吐出量割合Rbは、吐出量割合テーブルTa5により20%と決定される。S26にて印刷媒体の種類に対応した吐出面積割合Rcが決定される。はがきに対応した吐出面積割合Rcは、吐出面積割合テーブルTa6により50%と決定される。S27にてインクの種類に対応した吐出量割合Rdが決定される。染料インク1に対応した吐出量割合Rdは、吐出量割合テーブルTa7により100%と決定される。
S28にて、総吐出量割合演算式により総吐出量割合Rzが演算される。図8に示す総吐出量割合演算式はRz=100+Rd×(Ra+Rb)/Rcである。演算式にS24~S27にて決められた割合Ra、Rb、Rc、Rdを代入する。(Ra+Rb)は0%と20%とを足して20%となる。20%をRc=50%で割ると2/5となる。これにRd=100%をかけると40%となり、100%を足して、RZ=140%が導き出される。
S29にて、第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3の演算式が決定される。第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3の演算式は図8に示す吐出量割合テーブルTa8により決定される。吐出量割合テーブルTa8に記載の第1の吐出量割合Az1、第2の吐出量割合Az2、及び第3の吐出量割合Az3は、1つの重ね吐出位置に3回吐出されるインクドットの1回目、2回目、及び3回目の吐出量割合である。はがきに対応した第1の吐出量割合Az1の演算式はAz1=100%であり、第2の吐出量割合Az2の演算式はAz2=(Rz-100%)/2、第3の吐出量割合Az3の演算式はAz3=(Rz-100%)/2である。次に、演算式にS28で決定された総吐出量割合Rzの140%を代入し、第1の吐出量割合Az1=100%、第2の吐出量割合Az2=20%、及び第3の吐出量割合Az3=20%が決定される。
S30にて、S29で決定された第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3がドットサイズに変換される。図3に示すドットサイズと吐出量割合とは、L=100%、M=30%、S=5%、Z=0%であり、第1の吐出量割合Az1~第3の吐出量割合Az3はこれらドットサイズのうちのいずれかに変換される。本実施形態ではそれぞれのドットサイズにおける吐出量割合の中央値を判定の基準とする。例えばドットサイズLとドットサイズMとの吐出量割合の中央値は65%である。吐出量割合が65%以上をドットサイズLとし、吐出量割合が65%未満をドットサイズMとする。ドットサイズMとドットサイズSとの吐出量割合の中央値は17.5%であり、ドットサイズSとドットサイズZとの吐出量割合の中央値は2.5%である。S29にて決定された吐出量割合は、第1の吐出量割合Az1=100%、第2の吐出量割合Az2=20%、第3の吐出量割合Az3=20%であり、それぞれの吐出量割合は、ドットサイズL、ドットサイズM、及びドットサイズMに変換される。これにより、重ね吐出位置に1回目に吐出される第1のドットサイズはドットサイズL、2回目に吐出される第2のドットサイズはドットサイズM、3回目に吐出される第3のドットサイズはドットサイズMと決定される。S31にて吐出演算処理が終了する。
≪印刷データ生成処理≫
図12、及び図13を参照して印刷データ生成処理の詳細について説明する。図12、及び図13は、印刷データ生成処理の一連の流れを示すために関連した図面である。S06にて、印刷データ生成処理が実行される。印刷データは、吐出演算処理S05にて生成されたドットパターンデータDp4から変換されたデータであって、プリンタ1が印刷を実行するためのデータである。具体的には、印刷データは、頭出しの搬送量データと、吐出データと、搬送量データと、総パス数データと、総ページ数データとを含む。頭出しの搬送量データと、吐出データと、搬送量データと、総パス数データとは、ページ毎に設定される。本実施形態では、ヘッドユニット3のノズルが画像を形成するためのインクを吐出し、キャリッジ2が主走査方向に移動を開始してから移動を終了するまでの動作、例えば図1においてキャリッジ2が主走査方向の所定の左端位置から所定の右端位置まで移動する動作をパスと言う。ヘッドユニット3のノズルが画像を形成するためのインクを吐出する動作を行わない状態において、キャリッジ2が主走査方向に移動を開始してから移動を終了するまでの動作はパスとは言わない。
頭出しの搬送量データは、印刷開始時の最初のパスで画像を形成する位置まで所定位置から印刷媒体を送る量を示すデータである。搬送量データは、キャリッジの1回のパスの終了後に、印刷媒体を副走査方向に搬送する量を示すデータである。総パス数データは、1枚の印刷媒体に画像を形成するために必要なパスの総数を示すデータである。総ページ数データは、印刷される媒体の枚数を示すデータである。
吐出データの生成について図12,及び図13を参照して詳細に説明する。図12に示すドットパターンデータDp4は、吐出演算処理S05にて生成された図10に示すドットパターンデータDp4である。図12に示すドットパターンデータDp4の120個のマスは、図10に示すドットパターンデータDp4の120個のマスと同じものであるので、その説明を省略する。ドットパターンデータDp4において、重ね吐出位置を示す記号黒丸は、ブラックインクとブラックインクとが複数回のパスにて重ねられた位置を示す。
図12、及び図13を参照して、第1の吐出データPa1~第5の吐出データPa5について説明する。図12に示すドットパターンデータDp4に従って、図13に示す印刷画像Pz5を印刷媒体に形成するために、キャリッジ2は5回のパスを実行する。キャリッジ2の5回のパスにおいて、第1の吐出データPa1~第5の吐出データPa5がヘッドユニット3に吐出動作を行わせるためのデータである。
図2に示すヘッドユニット3においては、ブラックノズル15は、3列のブラクノズルユニット11a~11cに分かれて図示されるが、図12、及び図13に示すヘッドユニット3においては、説明の便宜上、ブラクノズルユニット11a~11cのブラックノズル15が1列にまとめて配列されたと想定して、記号Kで表されるブラックノズル15が図示される。ヘッドユニット3のカラーノズル16は、ブラックノズル15に対して3倍大きなピッチで配置されるので、カラーインクのドット位置に対応したマスの横列の数は、ブラックインクドット位置に対応したマスの横列の数の1/3となる。また、説明の便宜上、図12、及び図13に示すブラックノズル15の数及びカラーノズル16の数は、図2に示すブラックノズル15の数及びカラーノズル16の数より少なく図示されている。ヘッドユニット3のマスに示す記号Kはブラックノズル15の位置を示す。また記号Y、記号C、及び記号Mはカラーノズル16の位置を示し、その記号の記載順にイエローノズル、シアンノズル、及びマゼンタノズルの位置を示す。図2に示すノズルと同様、カラーノズル16は間隔Wで副走査方向に配列され、ブラックノズル15は間隔Wa(W/3)で副走査方向に配列される。マスの左に示す数字が横列を示し、マスの下に示す数字が縦列を示す。
第1の吐出データPa1について詳細に説明をする。第1の吐出データPa1は横列1~横列3と、縦列1~縦列12とからなる36個のマスで構成されたドットパターンデータである。第1の吐出データPa1の横列1~横列3は、ドットパターンデータDp4の横列1~横列3に対応して生成された1回目のドットパターンデータである。この1回目に生成されたドットパターンデータの一部を1回目の部分ドットパターンデータと呼ぶ。
第1の吐出データPa1の横列1~横列3は、1回目の部分ドットパターンデータである。第1の吐出データPa1の横列1~横列3のマスは、ドットパターンデータDp4の横列1~横列3のマスにそれぞれ対応する。例えば、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列1)は、第1の吐出データPa1のマス(横列1,縦列1)に対応する。ドットパターンデータDp4のマスのうちで、記号Lが記入されたマスと対応する第1の吐出データPa1のマスには、記号Lが記入される。記号Lが記入されたマスは、ブラックインクのドットサイズLのドット位置を表す。
重ね吐出位置の配置について説明する。ドットパターンデータDp4の重ね吐出位置は記号黒丸で表されるのに対し、第1の吐出データPa1の重ね吐出位置は記号丸1で表される。本実施形態では、ブラックインクが同じ個所に3回吐出されることにより、重ね吐出が実行される。記号丸1は、重ね吐出のために1回目に吐出されるブラックインクのドット位置である第1のドット位置を表す。第1のドットサイズは、第1のドット位置に吐出されるドットのサイズである。2回目の部分ドットパターンデータにおける重ね吐出位置は、記号丸2で表される。記号丸2は、重ね吐出のために2回目に吐出されるブラックインクのドット位置である第2のドット位置を表す。第2のドットサイズは、第2のドット位置に吐出されるドットのサイズである。3回目の部分ドットパターンデータにおける重ね吐出位置は、記号丸3で表される。記号丸3は、重ね吐出のために3回目に吐出されるブラックインクのドット位置である第3のドット位置を表す。第3のドットサイズは、第3のドット位置に吐出されるドットのサイズである。具体的には、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列2)に設定される記号黒丸は、第1の吐出データPa1のマス(横列1,縦列2)に記号丸1として設定される。第1のドットサイズ、第2のドットサイズ、及び第3のドットサイズは、図9の(B)に示すS30において第1の吐出量割合Az1、第2の吐出量割合Az2、及び第3の吐出量割合Az3から変換されて決定される。
カラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置対応したマスである。第1の吐出データPa1の横列1~横列3において、ブラックインクのドットは横列1~横列3のすべてに配置され得るのに対し、カラーインクのドットは横列3のみに配置される。具体的には、ドットパターンデータDp4のマス(横列3,縦列5)に設定されるイエローインクのドットサイズLを表す記号Yは、第1の吐出データPa1のマス(横列3,縦列5)に設定される。対して、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列3)に設定される記号Yは、第1の吐出データPa1のマス(横列1,縦列3)には設定されない。第1の吐出データPa1~第5の吐出データPa5におけるカラーインクのドット位置とヘッドユニット3のノズルの配置位置との対応に関しての詳細な説明は後述する。
第2の吐出データPa2について詳細に説明をする。第2の吐出データPa2は横列1~横列7と、縦列1~縦列12とからなる84個のマスで構成されたドットパターンデータである。第2の吐出データPa2の横列4~横列7は、ドットパターンデータDp4の横列4~横列7に対応して生成された1回目の部分ドットパターンデータである。第2の吐出データPa2の横列1~横列3は、ドットパターンデータDp4の横列1~横列3に対応して生成された2回目のドットパターンデータである。この2回目に生成されたドットパターンデータの一部を2回目の部分ドットパターンデータと呼ぶ。
第2の吐出データPa2の横列4~横列7は、1回目の部分ドットパターンデータである。第2の吐出データPa2の横列4~横列7のマスは、ドットパターンデータDp4の横列4~横列7のマスにそれぞれ対応する。例えば、ドットパターンデータDp4のマス(横列4,縦列1)は、第2の吐出データPa2のマス(横列4,縦列1)に対応する。ドットパターンデータDp4のマスのうちで、記号L及び記号Sが記入されたマスと対応する第2の吐出データPa2のマスには、記号L及び記号Sが記入される。記号Lが記入されたマスは、ブラックインクのドットサイズLのドット位置を表し、記号Sが記入されたマスは、ブラックインクのドットサイズSのドット位置を表す。カラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16に対応した位置にのみ配置される。例えば、第2の吐出データPa2の横列4~横列7のうちで、記号Yで表されるカラーインクのドット位置に対応する横列4及び横列7のマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16が配列される横列9及び横列12のマスにそれぞれ対応する。
第2の吐出データPa2の横列1~横列3は2回目の部分ドットパターンデータである。ブラックインクの重ね吐出位置を表す記号丸2が、第2の吐出データPa2の横列1及び横列2のマスに設定される。対して、第1の吐出データPa1である1回目の部分ドットパターンデータにおいてブラックインクのドットサイズを表す記号L、記号M、及び記号Sのいずれかの記号であって、重ね吐出位置を表さない記号は、第2の吐出データPa2の横列1~横列3のマスには配置されない。具体的には、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列2)に設定される記号黒丸は、第2の吐出データPa2のマス(横列1,縦列2)に記号丸2として設定される。対して、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列1)に設定される記号Lは、第2の吐出データPa2のマス(横列1,縦列1)には設定されない。カラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ配置される。
第3の吐出データPa3について詳細に説明をする。第3の吐出データPa3は横列1~横列10と、縦列1~縦列12とからなる120個のマスで構成されたドットパターンデータである。第3の吐出データPa3の横列8~横列10は、ドットパターンデータDp4の横列8~横列10に対応して生成された1回目の部分ドットパターンデータである。第3の吐出データPa3の横列4~横列7は、ドットパターンデータDp4の横列4~横列7に対応して生成された2回目の部分ドットパターンデータである。第3の吐出データPa3の横列1~横列3は、ドットパターンデータDp4の横列1~横列3に対応して生成された3回目のドットパターンデータである。この3回目に生成されたドットパターンデータの一部を3回目の部分ドットパターンデータと呼ぶ。
第3の吐出データPa3の横列8~横列10は1回目の部分ドットパターンデータであるので、ブラックインクのドット位置に対応した重ね吐出位置を表す記号丸1が、第3の吐出データPa3の横列8~横列10のマスに設定される。カラーインクのドットカラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ配置される。
第3の吐出データPa3の横列4~横列7は2回目の部分ドットパターンデータであるので、ブラックインクのドット位置に対応した重ね吐出位置を表す記号丸2が第3の吐出データPa3の横列4~横列7のいずれかのマスに設定される。対して、第1の吐出データPa1である1回目の部分ドットパターンデータにおいてブラックインクのドットサイズを表す記号L、記号M、及び記号Sのいずれかの記号であって、重ね吐出位置を表さない記号は、第3の吐出データPa3の横列1~横列3のマスには配置されない。カラーインクのドットカラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ配置される。
第3の吐出データPa3の横列1~横列3は3回目の部分ドットパターンデータであるので、ブラックインクのドット位置に対応した重ね吐出位置を表す記号丸3が、第3の吐出データPa3の横列1~横列3のいずれかのマスに設定される。対して、第1の吐出データPa1である1回目の部分ドットパターンデータにおいてブラックインクのドットサイズを表す記号L、記号M、及び記号Sのいずれかの記号であって、重ね吐出位置を表さない記号は、第3の吐出データPa3の横列1~横列3のマスには設定されない。具体的には、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列2)に設定される記号黒丸は、第3の吐出データPa3のマス(横列1,縦列2)に記号丸3として設定される。また、ドットパターンデータDp4のマス(横列1,縦列1)に設定される記号Lは、第3の吐出データPa3のマス(横列1,縦列1)には設定されない。カラーインクのドットカラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ設定される。
第4の吐出データPa4について詳細に説明をする。第4の吐出データPa4は横列4~横列10と、縦列1~縦列12とからなる84個のマスで構成されたドットパターンデータである。第4の吐出データPa4の横列8~横列10は、ドットパターンデータDp4の横列8~横列10に対応して生成された2回目の部分ドットパターンデータである。第4の吐出データPa4の横列4~横列7は、ドットパターンデータDp4の横列4~横列7に対応して生成された3回目の部分ドットパターンデータである。
第4の吐出データPa4の横列8~横列10は2回目の部分ドットパターンデータであるので、ブラックインクのドット位置に対応した重ね吐出位置を表す記号丸2が、第4の吐出データPa4の横列8~横列10のマスに設定される。対して、第3の吐出データPa3の1回目の部分ドットパターンデータにおいてブラックインクのドットサイズを表す記号L、記号M、及び記号Sのいずれかの記号であって、重ね吐出位置を表さない記号は、第4の吐出データPa4の横列8~横列10のマスには設定されない。カラーインクのドットカラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ配置される。
第4の吐出データPa4の横列4~横列7は3回目の部分ドットパターンデータであるので、ブラックインクのドット位置に対応した重ね吐出位置を表す記号丸3が、第4の吐出データPa4の横列4~横列7のマスに設定される。対して、第2の吐出データPa2の1回目の部分ドットパターンデータにおいてブラックインクのドットサイズを表す記号L、記号M、及び記号Sのいずれかの記号であって、重ね吐出位置を表さない記号は、第4の吐出データPa4の横列4~横列7のマスには設定されない。カラーインクのドットカラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ配置される。
第5の吐出データPa5について詳細に説明をする。第5の吐出データPa5は横列8~横列10と、縦列1~縦列12とからなる36個のマスで構成されたドットパターンデータである。第5の吐出データPa5の横列8~横列10は、ドットパターンデータDp4の横列8~横列10に対応して生成された3回目の部分ドットパターンデータである。
第5の吐出データPa5の横列8~横列10は3回目の部分ドットパターンデータであるので、ブラックインクのドット位置に対応した重ね吐出位置を表す記号丸3が、第5の吐出データPa5の横列8~横列10のマスに設定される。対して、第3の吐出データPa3の1回目の部分ドットパターンデータにおいてブラックインクのドットサイズを表す記号L、記号M、及び記号Sのいずれかの記号であって、重ね吐出位置を表さない記号は、第5の吐出データPa5の横列8~横列10のマスには設定されない。カラーインクのドットカラーインクのドット位置に対応したマスは、ヘッドユニット3のカラーノズル16の配置位置に対応した位置にのみ配置される。
≪印刷制御処理≫
印刷制御処理について、図1、図4、及び図11を参照して説明する。プリンタ1が外部装置61より送信された印刷動作の開始指示を受信したことにより、図11に示す印刷制御処理は、スタートする(S40)。図4に示すCPU51は、印刷動作の開始指示を受信したことをトリガーにして、ROM52より印刷制御プログラムを読み出し実行する。CPU51は、外部装置61により生成が完了した順に送られてくる印刷データ(頭出しの搬送量データ、吐出データ、搬送量データ、総パス数データ、及び総ページ数データ)をRAM53に一時的に記憶する。RAM53に記憶された印刷データは、印刷制御処理の必要なタイミングにて読み出される。
S41にて、RAM53に記憶された総ページ数データが読み出されることにより、取得される。また現在のページ数Apに0が代入される。本実施形態では、総ページ数は1である。
S42にて、現在のページ数Apと総ページ数とが比較される。現在のページ数Apが総ページ数以上になったか否かを判定する式(Ap>=総ページ数)にて判定が実行される。Ap=0、かつ総ページ数=1であるため、NOが判定結果となる。
S43にて、現在のページ数Apに1が代入される。加算処理(Ap=Ap+1)により、現在のページ数Apは1となる。
S44にて、印刷媒体の給紙が指令される。給紙の指令により、給紙モータが駆動され、給紙トレイより、印刷媒体が搬送される。図示しないセンサ位置により印刷媒体が検出されたときに、給紙モータは停止する。
S45にて、印刷媒体の頭出しが実行される。具体的には、CPU51は、RAM53より、頭出しの搬送量データを読み出す。CPU51は、搬送ドライバ68に頭出しの搬送量データを送り、搬送モータ69を駆動させる。搬送モータ69の駆動により、図1に示す搬送ローラ4が回転し、印刷媒体である図1に示す印刷媒体Pは、頭出し位置まで搬送される。
S46にて、RAM53に記憶された総パス数データが読み出される。また現在のパス数Bpに0が代入される。本実施形態では、総パス数は5である。
S47にて、現在のパス数Bpと総パス数とが比較される。現在のパス数Bpが総パス数以上になったか否かを判定する式(Bp>=総パス数)にて判定が実行される。Bp=0、かつ総パス数=5であるため、NOが判定結果となる。
S48にて、現在のパス数Bpに1が代入される。加算処理(Bp=Bp+1)により、現在のページ数Bpは1となる。
S49にて、Bpパス目の吐出データと、搬送量データとが、RAM53より読み出される。S50にて、搬送量データによる搬送が実行される。具体的には、CPU51は、搬送ドライバ68に搬送量データを送り、搬送モータ69を駆動させる。搬送モータ69の駆動により、図1に示す搬送ローラ4が回転し、印刷媒体Pは、1パス目の印刷位置まで搬送される。
S51にて、Bpパス目の吐出データが吐出データとしてドライバIC65に送られるとともに、キャリッジドライバ66にパス開始のデータが送られる。1パス目のキャリッジの移動のために、キャリッジドライバ66はキャリッジモータ67を駆動し、図1において主走査方向の左側に待機していたキャリッジ3は主走査方向の右側に向かって移動を開始する。1パス目の吐出データは、第1の吐出データPa1である。ドライバIC65は、第1の吐出データPa1に従い、キャリッジ3の主走査方向の位置に応じた位置にてブラックノズル15、またはカラーノズル16よりインクを吐出させる。このパス動作により印刷媒体に画像が形成される。各パスにおける画像形成の詳細な説明は後述する。
S51にてキャリッジ3のパスによる画像形成が完了した後、S47が再度実行される。S47にて、現在のパス数Bpと総パス数とが比較される。現在のパス数Bpが総パス数以上になったか否かを判定する式(Bp>=総パス数)にて判定が実行される。総パス数は5であり、1パス目の吐出データである第1の吐出データPa1から5パス目の吐出データである第5の吐出データPa5までの吐出データに従い吐出動作が実行された後、実行されたパスの数は、Bp=5となり、総パス数と同じとなる。S47での判定結果がYESとなる。
S52にて、印刷媒体の排出が実行される。印刷媒体の排出は、印刷媒体Pに対する画像の形成が完了したときに実行される。
S42にて、現在のページ数Apと総ページ数とが再度比較される。判定式は(Ap>=総ページ数)である。総ページ数は1であり、Apは1であるため、S42での判定結果はYESとなる。S53にて印刷制御処理が完了する。
≪各パスにおける画像形成≫
図12、及び図13を参照して、S51にて実行される各パスにおける画像形成について詳細に説明する。
S51にて、図1に示す主走査方向の左側から右側に向かう1パス目のキャリッジ移動のために、図12に矢印で示す主走査方向のキャリッジ2の移動であるパスが開始されると、ヘッドユニット3もキャリッジ2とともに主走査方向の移動を開始する。
印刷画像Pz1は、ヘッドユニット3の1パス目の吐出データである第1の吐出データPa1により印刷媒体に形成された画像である。印刷画像Pz1~印刷画像Pz5において、図に示す記号L、記号M、及び記号Sは、印刷媒体に吐出されたブラックインクのドット位置と、そのドット位置でのドットサイズとを表し、その記号の記載順にドットサイズL、ドットサイズM、及びドットサイズSを表す。記号Yは印刷媒体に吐出されたイエローインクのドット位置と、そのドット位置でのドットサイズLとを表す。記号丸は、重ね吐出位置においてブラックインクが第1のドットサイズで吐出された位置を表す。記号二重丸は、重ね吐出位置においてブラックインクが第2のドットサイズで吐出された位置を表す。記号黒ダイヤは、重ね吐出位置においてブラックインクが第3のドットサイズで吐出された位置を表す。
ヘッドユニット3によるインクの吐出を具体的に説明する。印刷画像Pz1において記号Lのマスは、ブラックインクがドットサイズLで吐出されることにより形成される画像ドットの位置と、その画像ドットの位置でのドットサイズとを表す。印刷画像Pz1において記号Lが示されるマス(横列1、縦列1)の画像ドットは、第1の吐出データPa1において記号Lが示されるマス(横列1、縦列1)の吐出データに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるマス(横列10、縦列1)のブラックノズル15が第1のドットサイズのブラックインクを吐出することにより、形成される。印刷画像Pz1において記号丸が示されるマス(横列2、縦列1)の画像ドットは、第1の吐出データPa1において記号丸1が示されるマス(横列2、縦列1)の吐出データに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるマス(横列11、縦列1)のブラックノズル15が第1のドットサイズのブラックインクを吐出することにより、形成される。印刷画像Pz1において記号Yが示されるマス(横列3、縦列5)の画像ドットは、第1の吐出データPa1において記号Yが示されるマス(横列3、縦列5)の吐出データに基づき、ヘッドユニット3において記号Yが示されるマス(横列12、縦列3)のカラーノズル16がドットサイズLのイエローインクを吐出することにより、形成される。ヘッドユニット3において横列10と、横列11とにはカラーノズルを表す記号Y、記号C、記号M、が配置されておらず、このため、第1の吐出データPa1の横列1と、横列2とにはドットサイズLのイエローインクのドット位置を表す記号Yは設定されない。よって印刷画像Pz1の横列1と、横列2とにはイエローインクは吐出されず、画像は形成されない。
印刷画像Pz1の形成後に、印刷媒体が図12に示す副走査方向に4ドット位置分(1つのマスは1つのドット位置を示す)だけ送られるとともに、図1に示す主走査方向の右側から左側に向かってキャリッジが移動される。キャリッジが左側の位置に到達した後に、図1に示す主走査方向の左側から右側に向かう2パス目のキャリッジ移動のために、図12に矢印で示す主走査方向のキャリッジ2の移動であるパスが開始されると、ヘッドユニット3もキャリッジ2とともに主走査方向の移動を開始する。
印刷画像Pz2は、ヘッドユニット3の2パス目の吐出データである第2の吐出データPa2により印刷媒体に形成された画像である。印刷画像Pz2を形成する際に、印刷画像Pz1においてカラーの画像ドットが形成されていない位置にカラーインクを吐出することができる。印刷画像Pz2の横列1~横列3の画像は、第2の吐出データPa2の横列1~横列3のデータに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるブラックノズルのうちの横列6~横列8のブラックノズルが第2のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz1に重ねた状態で吐出することにより、形成される。印刷画像Pz2において記号二重丸が示されるマス(横列2、縦列1)の画像ドットは、第2の吐出データPa2において記号丸2が示されるマス(横列2、縦列1)の吐出データに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるマス(横列7、縦列1)のブラックノズル15が第2のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz1に重ねた状態で吐出することにより、形成される。この重ね吐出により、印刷画像Pz2のマス(横列2、縦列1)には第1のドットサイズと第2のドットサイズとのブラックインクが重ねられる。
印刷画像Pz2の形成後に、印刷媒体が図12に示す副走査方向に4ドット位置分(1つのマスは1つのドット位置を示す)だけ送られるとともに、図1に示す主走査方向の右側から左側に向かってキャリッジが移動される。キャリッジが左側の位置に到達した後に、図1に示す主走査方向の左側から右側に向かう3パス目のキャリッジ移動のために、図12に矢印で示す主走査方向のキャリッジ2の移動であるパスが開始されると、ヘッドユニット3もキャリッジ2とともに主走査方向の移動を開始する。
印刷画像Pz3は、ヘッドユニット3の3パス目の吐出データである第3の吐出データPa3により印刷媒体に形成された画像である。印刷画像Pz3を形成する際に、印刷画像Pz2においてカラーの画像ドットが形成されていない位置にカラーインクを吐出することができる。印刷画像Pz3の横列1~横列3の画像は、第3の吐出データPa3の横列1~横列3のデータに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるブラックノズルのうちの横列2~横列4のブラックノズルが第3のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz2に重ねた状態で吐出することにより、形成される。印刷画像Pz3において記号黒ダイヤが示されるマス(横列2、縦列1)の画像ドットは、第3の吐出データPa3において記号丸3が示されるマス(横列2、縦列1)の吐出データに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるマス(横列3、縦列1)のブラックノズル15が第3のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz2に重ねた状態で吐出することにより、形成される。この重ね吐出により、印刷画像Pz3のマス(横列2、縦列1)には第1のドットサイズと第2のドットサイズと第3のドットサイズとのブラックインクが重ねられる。
印刷画像Pz3の形成後に、印刷媒体が図12に示す副走査方向に4ドット位置分(1つのマスは1つのドット位置を示す)だけ送られるとともに、図1に示す主走査方向の右側から左側に向かってキャリッジが移動される。キャリッジが左側の位置に到達した後に、図1に示す主走査方向の左側から右側に向かう4パス目のキャリッジ移動のために、図12に矢印で示す主走査方向のキャリッジ2の移動であるパスが開始されると、ヘッドユニット3もキャリッジ2とともに主走査方向の移動を開始する。
印刷画像Pz4は、ヘッドユニット3の4パス目の吐出データである第4の吐出データPa4により印刷媒体に形成された画像である。印刷画像Pz4を形成する際に、印刷画像Pz3においてカラーの画像ドットが形成されていない位置にカラーインクを吐出することができる。印刷画像Pz4の横列1~横列3の画像においては、重ね吐出位置に既に3回ブラックインクが吐出されており、ヘッドユニット3のブラックノズルが4回目のブラックインクの吐出を行うことはない。印刷画像Pz4の横列4~横列7の画像は、第4の吐出データPa4の横列4~横列7のデータに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるブラックノズルのうちの横列1~横列4のブラックノズルが第3のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz3に重ねた状態で吐出することにより、形成される。印刷画像Pz4の横列8~横列10の画像は、第4の吐出データPa4の横列8~横列10のデータに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるブラックノズルのうちの横列5~横列7のブラックノズルが第2のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz3に重ねた状態で吐出することにより、形成される。
印刷画像Pz4の形成後に、印刷媒体が図12に示す副走査方向に4ドット位置分(1つのマスは1つのドット位置を示す)だけ送られるとともに、図1に示す主走査方向の右側から左側に向かってキャリッジが移動される。キャリッジが左側の位置に到達した後に、図1に示す主走査方向の左側から右側に向かう5パス目のキャリッジ移動のために、図12に矢印で示す主走査方向のキャリッジ2の移動であるパスが開始されると、ヘッドユニット3もキャリッジ2とともに主走査方向の移動を開始する。
印刷画像Pz5は、ヘッドユニット3の5パス目の吐出データである第5の吐出データPa5により印刷媒体に形成された画像である。印刷画像Pz5を形成する際に、印刷画像Pz4においてカラーの画像ドットが形成されていない位置にカラーインクを吐出することができる。印刷画像Pz5の横列1~横列7の画像においては、重ね吐出位置に既に3回ブラックインクが吐出されており、ヘッドユニット3のブラックノズルが4回目のブラックインクの吐出を行うことはない。印刷画像Pz5の横列8~横列10の画像は、第5の吐出データPa5の横列8~横列10のデータに基づき、ヘッドユニット3において記号Kが示されるブラックノズルのうちの横列1~横列3のブラックノズルが第3のドットサイズのブラックインクを印刷画像Pz4に重ねた状態で吐出することにより、形成される。
<実施形態の効果>
本実施形態では、吐出演算処理のS21~S23により、印刷媒体の種類に応じた重ね吐出位置、すなわち図10に示すドットパターンデータDp4において記号黒丸で表されるドット位置が重ね吐出位置として決定される。重ね吐出位置に吐出されるブラックインクのドットサイズとして、第1の吐出量割合Az1に従う第1のドットサイズと、第2の吐出量割合Az2に従う第2のドットサイズと、第3の吐出量割合Az3に従う第3のドットサイズとが決定される。この結果、隣り合うブラックインクの液滴の混ざり合いが低減され、画像の印刷時間を増加させることなく、ブラックインクの濃度がより濃くなるように印刷することができる。
本実施形態では、第1のドットサイズ、第2のドットサイズ、及び第3のドットサイズが、吐出演算処理のS24~S30により、印刷媒体の種類、印刷画質の種類、及びインクの種類に応じて、決定される。この結果、印刷媒体の種類、印刷画質の種類、及びインクの種類のいずれかが異なる種類に変更される場合でも、隣り合うブラックインクの液滴の混ざり合いが確実に低減され、画像の印刷時間を増加させることなく、ブラックインクの濃度がより濃くなるように印刷することができる。
本実施形態では、マスクパターンMa4に従ってS21のマスク処理が図10に示すドットパターンデータDp1に施される。このマスク処理により、ブラックインクの最も濃い濃度を表すドットサイズLのドット位置について、インクを吸収する吸収性等の性質が異なる印刷媒体の種類に応じて適した位置に重ね吐出位置が設定される。この結果、隣り合うドットサイズLのブラックインク同士の液滴の混ざり合いが低減され、ブラックインクの濃度がより濃くなるように印刷することができる。
本実施形態では、濃淡処理パターンNa4に従ってS22の濃淡処理が図10に示すドットパターンデータDp2に施される。この濃淡処理により、ブラックインクの最も濃い濃度を表すドットサイズLのブラックインクと、ドットサイズM、ドットサイズS、及びドットサイズZのいずれかのサイズのブラックインクとの境界に近いドット位置において、ドットサイズLのブラックインクによる重ね吐出が禁止される。この結果、隣り合う異なるドットサイズのブラックインクの液滴の混ざり合いが低減され、ブラックの濃淡画像を綺麗に形成することができる。
本実施形態では、色境界処理パターンCa4に従ってS23の色境界処理が図10に示すドットパターンデータDp3に施される。この色境界処理により、ブラックインクの最も濃い濃度を表すドットサイズLのブラックインクと、イエロー、シアン、及びマゼンタのいずれかのカラーインクとの境界に近いドット位置において、ドットサイズLのブラックインクによる重ね吐出が禁止される。この結果、隣り合う異なるインク色であるブラックインクの液滴とカラーインクの液滴との混ざり合いも低減することができ、カラーとブラックとの色の境界を綺麗に形成することができる。
<実施形態と発明との対応関係>
プリンタ1と外部装置61とを組み合わせた構成は本発明の画像形成装置の一例である。ブラックノズル15は本発明の第1のノズルの一例である。カラーノズル16は本発明の第2のノズルの一例である。ヘッドユニット3は本発明のヘッドユニットの一例である。キャリッジ2は本発明のキャリッジの一例である。図1、及び図12に矢印で示す主走査方向が本発明の主走査方向の一例である。図1、及び図12に矢印で示す副走査方向が本発明の副走査方向の一例である。用紙等の印刷媒体Pは本発明の印刷媒体の一例である。搬送ドライバ68、搬送モータ69、及び搬送ローラ4を含む機構が本発明の搬送装置の一例である。制御装置50、及び外部装置61は本発明の制御部の一例である。プリンタ1のCPU51は、本発明の画像形成制御部の一例であり、外部装置61のCPU61aは、本発明の情報処理制御部の一例である。図9の(A)に示す印刷準備処理における印刷情報の取得処理S03が本発明の情報取得処理の一例である。図11に示す印刷制御処理における処理S51により、印刷画像Pz1が形成される処理が本発明の第1のドット形成処理の一例である。印刷制御処理における処理S51により、印刷画像Pz2が形成される処理が本発明の第2ドットの形成処理の一例である。図12に示す印刷画像Pz1において記号丸で表される重ね吐出位置に1回目に吐出されるブラックインクの第1のドット位置が本発明の第1の位置の一例である。図12に示す印刷画像Pz2において記号二重丸で表される重ね吐出位置に2回目に吐出されるブラックインクの第2のドット位置が本発明の第2の位置の一例である。図9の(B)に示す吐出演算処理S05(S20~S31)が本発明の重ね吐出制御処理の一例である。
<変形例>
本発明は、本実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種
々の変形が可能である。以下にその変形の一例を述べる。
(1)本実施形態では、図2に示すように、3列のブラックノズルユニット11a~11cが主走査方向に沿って配列される。各ブラックノズルユニットのブラックノズル15は、副走査方向に間隔Wだけ離れて配置される。3列のブラックノズルユニット11a~11cのうちの1つの列のユニットのブラックノズル15が、別のユニットのブラックノズル15から間隔Wa(=W/3)だけ副走査方向に離れて配置される。この実施形態の構成に代えて、1列のブラックノズルユニットのみが備えられ、そのユニットのブラクノズルが副走査方向に間隔Waだけ離れて配置される構成であってもよい。
(2)本実施形態では、第1のインクとしてブラックインクが採用され、第2のインクとして、イエロー、シアン、及びマゼンタのうちの少なくとも1色のカラーインクが採用されるが、第1のインクがカラーインクであってもよく、第2のインクがブラックインクであってもよい。またインクの色の種類はこの4種類に限らなくてもよく、下地とし印刷されることもあるホワイトのインク、シルバーの金属が添加されたインク、または、透明なインクであってもよい。この実施形態での色の異なるインクに代えて、同じ色のインクであっても、濃度、粘度、及び、印刷媒体への吸収性等の性質、または、インク構成成分が異なる複数種類のインクが採用されてもよい。
(3)本実施形態では、外部装置61のCPU61aが、図9の(A)(B)に示す印刷準備処理及び吐出演算処理を実行し、プリンタ1のCPU51が、図11に示す印刷制御処理を実行する。この実施形態の構成に代えて、プリンタ1のCPU51が、印刷準備処理及び吐出演算処理の少なくとも一部の処理、例えば、処理S04~S07と、印刷制御処理とを実行する構成であってもよい。画像印刷の際にプリンタ1が外部装置61と通信することをなくすために、プリンタ1が、印刷準備処理及び吐出演算処理の全てと、印刷制御処理とを実行する構成であってもよい。この後者の変形例では、プリンタ1が本発明の画像形成装置の一例である。
(4)本実施形態では、印刷情報のうちの媒体情報により特定される印刷媒体の種類として、光沢紙、インクジェット紙、普通紙、及びはがきが採用されたが、これらの種類の用紙に限定されない。印刷媒体のインクの吸収性に影響がある2以上の異なった材質であれば、各材質の印刷媒体は、異なる種類の印刷媒体として設定されてもよい。例えば、衣類に印刷する画像形成装置であれば、布が印刷媒体として設定されてもよい。具体的には、麻、綿、絹、ポリエステル、ナイロン、及びアクリル等の繊維の種類、または、それぞれの繊維の含有量によって異なる材質の布が、異なる種類の印刷媒体として設定されてもよい。また、例えば、皮、合成皮革、金属板、プラスチック板、または木材等の布以外の素材に印刷する画像形成装置であれば、これらの素材の種類が異なる媒体が、異なる種類の印刷媒体として設定されてもよい。
(5)本実施形態では、印刷情報のうちのインク情報により特定されるインクの種類として、顔料インクと、発色の違う2種類の染料インクとが採用されたが、これらの種類のインクに限定されない。例えば、同じ顔料インクまたは染料インクでも、濃度、粘度、及び、印刷媒体への吸収性等の性質、または、インク構成成分が異なるインクが、異なる種類のインクとして設定されてもよい。また、有機溶剤が含有されるソルベントインク、または、紫外線硬化性を有するUVインクが、異なる種類のインクとして設定されてもよい。また、本実施形態では、重ね吐出のために使用されるインクはブラックインクのみで、1種類のインクあったが、重ね吐出のために使用されるインクとして複数種類のインクが設定されてもよい。例えば、ブラックインクの重ね吐出のために顔料インクが使用され、イエローインクの重ね吐出のために同様に顔料インクが使用された場合には、インクの色に応じて図8に示す吐出量割合テーブルTa7がそれぞれ設定される。
(7)本実施形態では、印刷媒体の種類を特定する媒体情報、及び印刷画質の種類を特定する画質情報は、ユーザが外部装置61の操作手段を操作することにより選択されてHDD61bに記憶される。インクの種類を特定するインク情報は、ユーザがプリンタドライバプログラムを外部装置61にインストールすることによりHDD61bに記憶される。本実施形態において、媒体情報、画質情報、及びインク情報を含む印刷情報をHDD61bに記憶させるCPU61aの処理S03は、本発明の情報取得処理の一例である。この実施形態の構成に代えて、プリンタ1のCPU51が、印刷情報の取得である情報取得処理を実行してもよい。この変形例では、プリンタ1のCPU51が図9の(A)に示す印刷準備処理の一部の処理(S02~S05)と、図9の(B)に示す吐出演算処理とを実行する。媒体情報、及び画質情報は、ユーザがプリンタ1の操作パネル64を操作することにより選択されてRAM53などの記憶手段に記憶される。インク情報は、ユーザがプリンタドライバプログラムをプリンタ1にインストールすることによりRAM53などの記憶手段に記憶される。ユーザは、メモリコントローラ62に、画像データを記憶したUSBなどの外部メモリを接続し、操作パネル64を操作することにより、印刷開始を指示することができる。変形例では、媒体情報、画質情報、及びインク情報を含む印刷情報をRAM53などの記憶手段に記憶させるCPU51の処理は、本発明の情報取得処理の一例である。
(8)本実施形態では、図12に示す印刷画像Pz1を形成するために、記号丸で表される重ね吐出位置に第1のドットサイズのブラックインクが吐出されるパスによりドットを形成する処理が第1のドット形成処理に対応し、図12に示す印刷画像Pz2を形成するために、記号二重丸で表される重ね吐出位置に第2のドットサイズのブラックインクが吐出されるパスによりによりドットを形成する処理が第2のドット形成処理に対応するが、この対応関係に限定されない。重ね吐出位置に第2のドットサイズのブラックインクが吐出されるパスによりドットを形成する処理が第1のドット形成処理に対応し、重ね吐出位置に第3のドットサイズのブラックインクが吐出されるパスによりドットを形成する処理が第2のドット形成処理に対応する関係であってもよい。
(9)本実施形態では、主走査方向の左側から右側にキャリッジ2を移動させることにより第1のドット形成処理が実行される。第1のドット形成処理の実行後に、キャリッジ2を左側に戻すとともに印刷媒体Pを副走査方向に所定距離だけ搬送し、再び主走査方向の左側から右側にキャリッジ2を移動させることにより、第2のドット形成処理が実行される構成であるが、この構成に限定されない。例えば、第1のドット形成処理がキャリッジ2を左側から右側へ移動させるパスにより実行され、キャリッジ2を左側に戻すことなく、第2のドット形成処理がキャリッジ2を左側から右側へ移動させるパスにより実行される構成、すなわち双方向印刷により画像を形成する構成であってもよい。
(10)本実施形態では、図10に示すドットパターンデータDp4において記号黒丸で表される重ね吐出位置が、マスクパターンMa4、濃淡処理パターンNa4、及び色境界処理パターンCa4に従って決定される構成であるが、この構成に限定されない。例えば、マスク処理を実行するために、マスクパターンを使用する構成に代えて、図10に示すドットパターンデータDp1について、ドットサイズLのブラックインクに関するデータの並び順が検索され、このブラックインクに関するデータの並び順において、印刷媒体の種類に応じた間隔ごとに重ね吐出位置が設定されてもよい。2つのドット位置分の間隔ごとに重ね吐出位置が設定されれば、ドットサイズLのブラックインクの重ね吐出面積割合は50%となり、4つのドット位置分の間隔ごとに重ね吐出位置が設定されれば、ドットサイズLのブラックインクの重ね吐出面積割合は25%となる。濃淡処理を実行するために、濃淡処理パターンを使用する構成に代えて、ドットサイズM、S,及びZのブラックインクに隣り合うドットサイズLのブラックインクのドット位置において重ね吐出が禁止されるように、図10に示すドットパターンデータDp2等のマスク処理後のドットパターンデータについて、印刷媒体の種類に応じた検索方法に従ってブラックインクに関するデータの並び順を検索し、重ね吐出が禁止されるドット位置を決定する構成であってもよい。色境界処理を実行するために、色境界処理パターンを使用する構成に代えて、カラーインクに隣り合うドットサイズLのブラックインクのドット位置において重ね吐出が禁止されるように、図10に示すドットパターンデータDp2等のマスク処理後のドットパターンデータについて、印刷媒体の種類に応じた検索方法に従ってブラックインク、及びカラーインクに関するデータの並び順を検索し、重ね吐出が禁止されるドット位置を決定する構成であってもよい。濃淡処理及び色境界処理において印刷媒体の種類に応じた検索方法の例として、検索対象となる隣り合うデータの数を、印刷媒体の種類に応じて2つの隣り合うデータ、または4つの隣り合うデータに切り替える方法が採用されてもよい。
(11)本実施形態では、重ね吐出位置に吐出されるブラックインクのドットサイズとして、第1の吐出量割合Az1に従う第1のドットサイズと、第2の吐出量割合Az2に従う第2のドットサイズと、第3の吐出量割合Az3に従う第3のドットサイズとが決定される。図8に示すように、第1の吐出量割合Az1は、印刷媒体の種類に関係なく、100%であり、第2の吐出量割合Az2、及び第3の吐出量割合Az3は、印刷媒体の種類に応じて、(Rz-100%)、または、[(Rz-100%)/2]に設定される構成である。この実施形態の構成に代えて、第1乃至第3の吐出量割合Az1~Az3が、全て同じ数値になるように設定される構成であってもよいし、3つの吐出量割合Az1~Az3が、それぞれ異なる数値に設定される構成であってもよい。また、第1乃至第3の吐出量割合Az1~Az3のうち、第2の吐出量割合Az2が0%に設定される構成、すなわち、第2の吐出タイミングではブラックインクが吐出されない構成であってもよい。この後者の変形例では、第1の吐出タイミングで吐出されたブラックインクを乾燥させる時間を長くすることができる。
(12)本実施形態では、S21のマスク処理、S22の濃淡処理、及びS23の色境界処理が、この記載順に順番に実行される構成であるが、この構成に限定されない。例えば、S21のマスク処理が実行された後であれば、色境界処理が、濃淡処理より先に実行されてもよい。
(13)本実施形態では、プリンタ1は、通信装置60を介して外部装置61と接続され、外部装置61から印刷データを受信する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、外部装置61を備えない変形例において、プリンタ1は、USBメモリ等の外部メモリから、メモリコントローラにより画像データを取得する。プリンタ1のCPU51が、取得した画像データについて、ROM52に記憶される情報処理プログラムに従って、図9の(A)に示す印刷準備処理の一部の処理(S03~S05)と、図9の(B)に示す吐出演算処理とを実行する。ROM52は、図5~図7に示す重ね吐出位置を決定するためのテーブルTa1~Ta3と、図8に示す吐出量割合を決定するためのテーブルTa4~Ta8と、総吐出量割合演算式とを記憶する。ユーザは、操作パネル64により、印刷媒体の種類、印刷画質の種類などの印刷に必要なデータを選択してもよい。
(14)本実施形態では、説明の便宜上、S04にて生成されるドットパターンデータDp1が、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタの4色のインクについて、インクの色、ドットサイズ、及びドット位置を表すデータとしてまとめて構成されるが、このデータの構成に限定されない。例えば、ドットパターンデータは、4色のインクについてそれぞれ生成される4つの個別のドットパターンデータとして構成されてもよい。この変形例では、4つの個別のドットパターンデータの各ドットパターンデータについて、図9の(B)に示す吐出演算処理が実行されてもよい。