JP7354719B2 - 定着部材、定着装置、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
上記電磁誘導加熱方式の定着装置では、省エネ等の観点から、電磁誘導装置による加熱を開始してから定着部材が目的の温度に達するまでの時間(以下「暖機運転時間」ともいう)を短縮することが望まれている。
また、樹脂を含む基材層と金属層と弾性層とを有する定着部材を画像形成装置の定着装置内で長期間使用すると、定着部材に応力がかかって繰り返し屈曲することによって、金属層に割れが生じてしまうことがある。
樹脂を含む基材層と、
前記基材層の外周面上に設けられ、Cuを含む第1の金属層と、
前記第1の金属層の外周面上に前記第1の金属層と接して設けられ、Niを含む第2の金属層であって、前記第2の金属層の平均結晶粒径が0.15μm以上0.19μm以下である第2の金属層と、
前記第2の金属層の外周面上に設けられた弾性層と、
を備えた定着部材。
<2>
前記第2の金属層の平均結晶粒径が0.16μm以上0.18μm以下である<1>に記載の定着部材。
前記第1の金属層の平均結晶粒径が0.10μm以上3.10μm以下である<1>又は<2>に記載の定着部材。
<4>
前記第1の金属層の平均結晶粒径が0.10μm以上1.90μm以下である<3>に記載の定着部材。
<5>
前記第1の金属層の平均結晶粒径に対する前記第2の金属層の平均結晶粒径の比(Ni/Cu)は、0.05以上1.90以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載の定着部材。
前記第2の金属層を面方向と垂直に切断した断面において、面方向における結晶粒の平均長さは、厚み方向における結晶粒の平均長さよりも長い<1>~<5>のいずれか1つに記載の定着部材。
<7>
前記面方向における結晶粒の平均長さは、前記厚み方向における結晶粒の平均長さの1.01倍以上1.25倍以下である<6>に記載の定着部材。
<8>
前記第2の金属層の厚みが5μm以上30μm以下である<1>~<7>のいずれか1つに記載の定着部材。
<9>
前記第2の金属層の厚みが7μm以上15μm以下である<8>に記載の定着部材。
<10>
前記基材層の厚みが50μm以上90μm以下である<1>~<9>のいずれか1つに記載の定着部材。
<11>
前記第2の金属層の厚みに対する前記基材層の厚みの比は、3以上13以下である<1>~<10>のいずれか1つに記載の定着部材。
<1>~<11>のいずれか1つに記載の定着部材と、
前記定着部材の外周面を加圧する加圧部材と、
前記定着部材が備える前記第1の金属層を電磁誘導によって発熱させる電磁誘導装置と、
を有し、
未定着のトナー像が表面に形成された記録媒体を前記定着部材と前記加圧部材とで挟み込んで前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置。
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着させる<12>に記載の定着装置と、
を有する画像形成装置。
<2>に係る発明によれば、第2の金属層の平均結晶粒径が0.16μm未満又は0.18μm超えの場合に比べ、定着装置の暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立される定着部材が提供される。
<4>に係る発明によれば、第1の金属層の平均結晶粒径が0.10μm未満又は1.90μm超えの場合に比べ、定着装置の暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立される定着部材が提供される。
<5>に係る発明によれば、比(Ni/Cu)が0.05未満若しくは1.90超えの場合に比べ、定着装置の暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立される定着部材が提供される。
<7>に係る発明によれば、第2の金属層の面方向における結晶粒の平均長さが厚み方向における結晶粒の平均長さの1.01倍未満又は1.25倍超えの場合に比べ、定着装置の暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立される定着部材が提供される。
<8>に係る発明によれば、第2の金属層の厚みが5μm以上30μm以下であっても、第2の金属層の平均結晶粒径が0.15μm未満又は0.19μm超えの場合に比べ、定着装置の暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立される定着部材が提供される。
<9>に係る発明によれば、第2の金属層の厚みが7μm以上15μm以下であっても、第2の金属層の平均結晶粒径が0.15μm未満又は0.19μm超えの場合に比べ、繰り返し屈曲による第2の金属層の割れが抑制される定着部材が提供される。
<10>に係る発明によれば、基材層の厚みが50μm未満又は90μm超えの場合に比べ、繰り返し屈曲による第2の金属層の割れが抑制される定着部材が提供される。
<11>に係る発明によれば、第2の金属層の厚みに対する基材層の厚みの比が3未満又は13超えの場合に比べ、繰り返し屈曲による第2の金属層の割れが抑制される定着部材が提供される。
<13>に係る発明によれば、基材層と第1の金属層と第2の金属層と弾性層とを有し、第2の金属層の平均結晶粒径が0.15μm未満又は0.19μm超えである定着部材を適用した場合に比べ、暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立される定着装置を有する画像形成装置が提供される。
本実施形態に係る定着部材は、樹脂を含む基材層と、前記基材層の外周面上に設けられ、Cuを含む第1の金属層と、前記第1の金属層の外周面上に前記第1の金属層と接して設けられ、Niを含む第2の金属層であって、前記第2の金属層の平均結晶粒径が0.15μm以上0.19μm以下である第2の金属層と、前記第2の金属層の外周面上に設けられた弾性層と、を備える。
上記電磁誘導加熱方式の定着装置では、電磁誘導装置による加熱を開始してから定着部材が目的の温度に達するまでに時間がかかり、省エネ等の観点から、この暖機運転時間を短縮することが望まれている。
その理由は定かではないが、平均結晶粒径が前記範囲であることにより、前記範囲よりも大きい場合に比べ、局所的に結晶粒界に沿った割れが発生しても、割れの進行を妨げる障壁が多く割れが進みにくいため、結果として金属層のクラックが抑制されると推測される。また、平均結晶粒径が前記範囲であることにより、前記範囲よりも小さい場合に比べ、単結晶の大きさが大きくなることで、理想的な単結晶に近い状態となり、金属としての特性が優位となり、熱伝導性及び導電性が高くなるため、暖機運転時間が短縮されると推測される。したがって、本実施形態では、暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による第2の金属層の割れの抑制とが両立されると推測される。
まず、測定対象の金属層を、外周面に垂直な方向に切断して断面を得る。得られた断面を、走査型電子顕微鏡(GeminiSEM 450 Zeiss製)により観察し、断面画像を得る。得られた断面画像を画像処理ソフトウェア(ImageJ)により解析して結晶粒を抽出し、抽出された結晶すべてに対してそれぞれ最大径を測定し、それらの個数平均値を「平均結晶粒径」とする。
以下、本実施形態に係る定着部材の一例として、無端ベルトの構成について、図を用いて説明する。
図1に示すベルト10は、樹脂を含む基材層である基材10Aの外周面上に、金属層10Bと、接着剤層10Cと、弾性層10Dと、離型層10Eと、が順に積層された層構成を有する無端ベルトである。接着剤層10C及び離型層10Eは、必要に応じて設けられる層である。
また、金属層10Bは、下地金属層102、Cuを含む第1の金属層である電磁誘導金属層104、及びNiを含む第2の金属層である金属保護層106がこの順に積層されている。下地金属層102は必要に応じて設けられる層である。また、電磁誘導金属層104は、ベルト10を電磁誘導方式の定着装置に用いた場合、電磁誘導作用により自己発熱する層である。
なお、以下において、各層の符号は省略して説明する場合がある。
基材10Aは、少なくとも樹脂を含む層であれば特に限定されるものではない。
ベルト10を電磁誘導方式の定着装置に用いる場合、基材10Aは、金属層10Bが発熱した状態でも物性の変化が少なく、高強度を維持する層であることがよい。このため、基材10Aは、主として耐熱性樹脂から構成されることが好ましい(本明細書において、「主として」、「主成分」とは、質量比で50%以上であることを意味し、以下も同義である)。
また、樹脂中に断熱効果のある充填材を加えたり、樹脂を発泡させたりすることにより、断熱効果を更に向上させてもよい。
基材10A全体に対する樹脂の含有量としては、例えば50質量%以上が挙げられ、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、78質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
また、電磁誘導金属層104の厚みに対する基材10Aの厚み(すなわち、基材10Aの厚み/電磁誘導金属層104の厚み)は、繰り返し屈曲による電磁誘導金属層104の割れを抑制する観点から、1.7以上18以下であることが好ましく、3.0以上13以下であることがより好ましく、3.4以上12以下であることがさらに好ましい。
なお、基材の引張り強度(MPa)は、基材を幅5mmの短冊形状に切り出し、これを引張試験機Model 1605N(アイコーエンジニアリング社製)に設置し、10mm/sec等速で引っ張った際の引張破断強度(MPa)にして測定される。
下地金属層102は、基材10Aの外周面に電磁誘導金属層104を電解めっき法により形成するために予め形成される層であり、必要に応じて設けられる。電磁誘導金属層104の形成方法としては、コスト等の観点から電解めっき法が好ましいが、主に樹脂で構成される基材10Aを用いる場合は、直接電解めっきを行うことが困難である。そこで、電磁誘導金属層104形成のため、下地金属層102を設けることが好ましい。
下地金属層102としては、例えば、無電解ニッケルめっき層、無電解銅めっき層等が挙げられる。なお、「ニッケルめっき層」とは、Niを含むめっきの層(例えば、ニッケル層、ニッケル合金層等)であることを表し、「銅めっき層」とは、Cuを含むめっきの層(例えば、銅層、銅合金層等)であることを表す。
電磁誘導金属層104は、少なくともCuを含む層であれば特に限定されるものではない。ベルト10を電磁誘導方式の定着装置に用いた場合、電磁誘導金属層104は、磁界が印加された際にこの層内に発生する渦電流により発熱する機能を有する発熱層となる。
電磁誘導金属層104は、Cuに加えて、例えば、ニッケル、鉄、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛等のCu以外の電磁誘導作用を生ずる金属を含んでもよい。ただし、電磁誘導金属層104は、銅又は銅を主成分とする合金の層であることが好ましく、電磁誘導金属層104全体に対するCuの含有量としては、例えば、80質量%以上が挙げられ、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
電磁誘導金属層104を電解めっき法により形成する場合、例えば、銅イオンを含むめっき液を準備し、下地金属層102が設けられた基材10Aをこのめっき液に浸漬して電解めっきを行う。上記めっき液は、光沢剤を含んでもよい。めっき液に光沢剤を添加することで、電磁誘導金属層104の結晶構造を制御しやすくなる。
電磁誘導金属層104を形成するためのめっき液に添加する光沢剤としては、例えば、KOTAC1、KOTAC2(以上、大和特殊株式会社製)、エレカッパー25MU、エレカッパー25A、トップルチナSF(以上、奥野製薬株式会社製)等が挙げられる。
電磁誘導金属層104の平均結晶粒径が上記範囲であり、かつ、金属保護層106の平均結晶粒径が0.15μm以上0.19μm以下であると、金属保護層106に加えて電磁誘導金属層104における割れも抑制されることから、結果として、繰り返し屈曲による金属層10B全体の割れが抑制され、かつ、定着装置の暖機運転時間がさらに短縮される。
電磁誘導金属層104の平均結晶粒径は、例えば電磁誘導金属層104を電解めっき処理により形成する場合、電解めっき液に添加する光沢剤の添加量(すなわち、電解めっき液全体に対する光沢剤の含有量)、電解めっき処理時における電解めっき液の温度、及びめっき電流密度を調整することにより制御される。
金属保護層106は、電磁誘導金属層104と接して設けられ、かつ、Niを含む金属層である。金属保護層106は、金属層10Bの膜強度を向上させ、繰り返しの変形による亀裂、長時間の繰り返し加熱による酸化劣化等を抑制し、発熱特性を維持する。
金属保護層106は、少なくともNiを含み、必要に応じて他の金属を含んでもよい。ただし、金属保護層106は、ニッケル又はニッケルを主成分とする合金の層であることが好ましく、金属保護層106全体に対するNiの含有量としては、例えば、80質量%以上が挙げられ、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
金属保護層106を電解めっき法により形成する場合、例えば、ニッケルイオンを含むめっき液を準備し、このめっき液に、下地金属層102及び電磁誘導金属層104を有する基材10Aを浸漬して電解めっきを行い、求められる厚さの電解めっき層を形成する。上記めっき液は、光沢剤を含んでもよい。めっき液に光沢剤を添加することで、金属保護層106の結晶構造を制御しやすくなる。
金属保護層106を形成するためのめっき液に添加する光沢剤としては、例えば、トップセリーナ95X、スーパーネオライト、スーパーゼナー、モノライト、トップルナー、トップレオナNL、アクナB-30、アクナB、ターボライト(以上、奥野製薬株式会社製)、#810、#81、#83、#81-J(以上、荏原ユージライト株式会社製)等が挙げられる。
また、耐クラック性の観点からは、金属保護層106の平均結晶粒径が0.16μm超え0.19μm以下の範囲であることが好ましく、0.17μm超え0.19μm以下の範囲であることがより好ましい。
金属保護層106の平均結晶粒径は、例えば金属保護層106を電解めっき法により形成する場合、電解めっき液に添加する光沢剤の添加量(すなわち、めっき液全体に対する光沢剤の含有量)、電解めっき処理時における電解めっき液の温度、及びめっき電流密度を調整することにより制御される。
比(Ni/Cu)が上記範囲であることにより、さらに、定着装置の暖機運転時間の短縮と繰り返し屈曲による金属層の割れの抑制とが両立される。
金属層の割れをさらに抑制する観点から、金属保護層106を面方向と垂直に切断した断面において、面方向における結晶粒の平均長さは、厚み方向における結晶粒の平均長さの1.01倍以上1.25倍以下であることが好ましく、1.05倍以上1.25倍以下であることがより好ましく、1.10倍以上1.25倍以下であることがさらに好ましい。
具体的には、厚み方向における結晶粒の平均長さを求める場合、金属層の厚み方向に延びる試験線(長さ2.0μm)を、0.10μmの間隔で10本引き、それらの試験線が結晶粒を分断する分断長さの平均値を「厚み方向における結晶粒の平均長さ」とする。また、面方向における結晶粒の平均長さを求める場合は、金属層の面方向に延びる試験線(長さ2.0μm)を、0.10μmの間隔で10本引き、それらの試験線が結晶粒を分断する分断長さの平均値を「面方向における結晶粒の平均長さ」とする。
金属層10Bの外周表面を構成する層(図1では金属保護層106)と弾性層10Dとの間には、両層の接着性を向上させる観点で、必要に応じて、接着剤層10Cを介在させてもよい。
具体的には、例えば、まず、接着層形成用塗布液を金属層10B上に塗布(例えば、フローコート法(螺旋巻き塗布)による塗布)して、必要に応じて、乾燥および加熱することで接着剤皮膜を形成する。上記乾燥における乾燥温度としては、例えば、10℃以上35℃以下が挙げられ、乾燥時間としては、例えば10分以上360分以下が挙げられる。また、上記加熱における加熱温度としては、100℃以上200℃以下の範囲が挙げられ、加熱時間としては、例えば10分以上360分以下が挙げられる。なお、加熱は、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス等)雰囲気下で行ってもよい。
弾性層10Dは、弾性を有する層であればよく、特に限定されるものではない。
弾性層10Dは、定着部材への外周側からの加圧に対して弾性を付与する観点で設けられる層であり、例えば画像形成装置において定着ベルトとして用いられる場合、記録媒体上のトナー像の凹凸に追従して、定着部材の表面がトナー像に密着する役割を担う。
弾性層10Dに用いられる弾性材料としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。弾性層の材質としては、耐熱性、熱伝導性、絶縁性等の観点から、シリコーンゴム及びフッ素ゴムが好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。
シリコーンゴムの市販品としては、例えば、ダウコーニング社製の液状シリコーンゴムSE6744等が挙げられる。
フッ素ゴムの市販品としては、例えば、DuPont Dow elastmers社製のバイトンB-202等が挙げられる。
無機系の充填剤の材質としては、上記のほか炭化物(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ等)、酸化チタン、炭化ケイ素、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化セリウム、炭酸マグネシウム等の周知の無機フィラーが挙げられる。
これらの中でも、熱伝導性の点からは、窒化ケイ素、炭化ケイ素、黒鉛、窒化ホウ素、炭化物が好ましい。
弾性層10Dにおける無機系の充填剤の含有量は、求められる熱伝導性、機械的強度等により決定されればよく、例えば、1質量%以上20質量%以下が挙げられ、3質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
弾性層10Dの弾性材料としてシリコーンゴムを用いる場合、例えば、まず、加熱により硬化されてシリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムを含む弾性層形成用塗布液を調製する。次に、接着層形成用塗布液の塗布及び乾燥により形成された接着剤皮膜上に、弾性層形成用塗布液を塗布(例えば、フローコート法(螺旋巻き塗布)による塗布)して弾性塗膜を形成し、例えば、必要に応じて弾性塗膜を加硫させることで、接着剤層上に弾性層が形成される。なお、加硫における加硫温度としては、例えば150℃以上250℃以下が挙げられ、加硫時間としては、例えば30分以上120分以下が挙げられる。
離型層10Eは、記録媒体と接触する側の面(外周面)に、定着時に溶融状態のトナー像が固着するのを抑制する役割を担う層である。離型層は、必要に応じて設けられる。
これらの中でも、耐熱性離型材料としては、フッ素樹脂がよい。
フッ素樹脂として、具体的には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
また、離型層10Eは、チューブ状の離型層を予め準備し、例えばチューブの内面に接着剤層を形成した上で、弾性層10Dの外周上に被覆させることで、離型層10Eを形成してもよい。
ベルト10は、例えば画像形成装置において好適に用いられる。具体的には、未定着のトナー像が表面に形成された記録媒体に対して前記トナー像を定着させる電磁誘導加熱方式の定着装置に用いられる定着ベルト、加圧ベルト等として用いられる。
本実施形態に係る定着装置は、前述の本実施形態に係る定着部材と、前記定着部材の外周面を加圧し、未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体を前記定着部材と共に挟み込む加圧部材と、前記定着部材が備える金属層(具体的には、第1の金属層)を電磁誘導によって発熱させる電磁誘導装置と、を有する。
以下、本実施形態に係る定着装置の一例として、定着部材として前述の無端ベルト(すなわち、ベルト10)を適用した形態について説明するが、これに限られない。
本実施形態に係る定着装置100は上記本実施形態に係るベルト10を備える電磁誘導方式の定着装置である。図2に示すごとく、ベルト10の一部を加圧するよう加圧ロール(加圧部材)11が配置され、効率的に定着を行う観点でベルト10と加圧ロール11との間に接触領域(ニップ)が形成され、ベルト10は加圧ロール11の周面に沿った形に湾曲している。また、記録媒体の剥離性を確保する観点で前記接触領域(ニップ)の末端においてベルトが屈曲する屈曲部が形成される。
なお、電磁誘導発熱装置12の位置は図2に示す位置に限定されず、例えば、ベルト10の接触領域に対して回転方向Bの上流側に設置されていてもよいし、ベルト10の内側に設置されていてもよい。
未定着トナー像14が形成された記録媒体15は、矢印A方向に、定着装置100におけるベルト10と加圧ロール11との接触領域(ニップ)に通され、未定着トナー像14が溶融状態として圧力が加えられて記録媒体15に定着される。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる本実施形態に係る定着装置と、を有する。
本実施形態に係る画像形成装置200は、図3に示すように、感光体(像保持体の一例)202、帯電装置204、レーザ露光装置(潜像形成装置の一例)206、ミラー208、現像装置210、中間転写体212、転写ロール(転写装置の一例)214、クリーニング装置216、除電装置218、定着装置100、及び給紙装置(給紙ユニット220、給紙ローラ222、位置合わせローラ224、及び記録媒体ガイド226)を備えている。
中間転写体212の周囲には、感光体202の他に、転写ロール214が設けられている。
感光体202の表面はクリーニング装置216によって清掃された後、除電装置218によって除電される。
<基材10A(樹脂を含む基材層)>
外径30mmの円筒形ステンレス型の表面に、市販のポリイミド前駆体溶液(UワニスS、宇部興産社製)を浸漬法によって塗布することにより、塗膜を形成した。次にこの塗膜を100℃で30分間乾燥させることにより、前記塗膜中の溶媒を揮発させた後、380℃で30分焼成しイミド化させ、膜厚60μmのポリイミド皮膜を形成した。ステンレス型の表面からポリイミド皮膜を剥離することにより、内径30mm、膜厚60μm、長さ370mmの無端ベルト状の耐熱ポリイミド基材を得て、これを基材10A(樹脂を含む基材層)とした。
次にこの耐熱ポリイミド基材の外周面に膜厚0.3μmの無電解ニッケルめっき膜を形成し、これを下地金属層102とした。
この無電解ニッケルめっき膜(下地金属層102)を電極として、電解めっき法により、厚み10μmの銅層を設け、これを電磁誘導金属層104(第1の金属層)とした。
なお、銅層を設ける際に用いた電解めっき液は、光沢剤としてエレカッパー25MU(奥野製薬製)が添加されており、電解めっき液全体に対する光沢剤の含有量は2mL/Lであった。また、電解めっき処理時における電解めっき液の温度は25℃、めっき電流密度は2A/dm2であった。
次に、得られた銅層の外周面に、電解めっき法により、厚み10μmのニッケル層を設け、これを金属保護層106(第2の金属層)とした。
なお、ニッケル層を設ける際に用いた電解めっき液は、光沢剤としてトップセリーナ95X(奥野製薬製)が添加されており、電解めっき液全体に対する光沢剤の含有量は8.5mL/Lであった。また、電解めっき処理時における電解めっき液の温度は50℃、めっき電流密度は6A/dm2であった。
次に、得られたニッケル層(すなわち第2の金属層)の外周面に、JISタイプAで規定される硬度が35度となるように調整された液状シリコーンゴム(KE1940-35、液状シリコーンゴム35度品、信越化学工業社製)を膜厚200μmになるように塗布し乾燥させ弾性層10D(弾性層)を得た。
次に、得られた弾性層の外周面に、PFAディスパージョン(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体の分散液、500cL、三井デュポンフロロケミカル社製)を膜厚30μmになるように塗布し、380度で焼成することにより離型層10Eを設けた。
以上のようにして、無端ベルト状の定着部材1を得た。
電解めっき法によりニッケル層(第2の金属層)を設ける際の光沢剤の含有量を9mL/L、電解めっき液の温度を45℃、めっき電流密度を5A/dm2とした以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト状の定着部材2を得た。
電解めっき法により銅層(第1の金属層)を設ける際の光沢剤の含有量を1.5mL/L、電解めっき液の温度を30℃、めっき電流密度を1.5A/dm2とした以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト状の定着部材3を得た。
耐熱ポリイミド基材の膜厚を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト状の定着部材4を得た。
電解めっき法によりニッケル層(第2の金属層)を設ける際の光沢剤の含有量を4mL/L、電解めっき液の温度を60℃、めっき電流密度を2A/dm2とした以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト状の定着部材C1を得た。
電解めっき法によりニッケル層(第2の金属層)を設ける際の光沢剤の含有量を12mL/L、電解めっき液の温度を35℃、めっき電流密度を8A/dm2とした以外は、実施例1と同様にして、無端ベルト状の定着部材C2を得た。
得られた定着部材について、銅層(第1の金属層)における平均結晶粒径、並びにニッケル層(第2の金属層)における平均結晶粒径及び結晶粒の平均長さを前述の方法により測定した結果を表1に示す。
22度55%RH環境下で、画像形成装置(ApeosPort-VI C3371改造機)に、得られた定着部材を装着した。続いてこの画像形成装置を用いて定着部材を電磁誘導加熱した状態で、暖機運転時間(電源を入れてから設定温度180℃に到達するまでの時間)を評価した。結果を表1に示す。
耐屈曲性評価は、上記実施例及び比較例の定着部材の製造において、耐熱ポリイミド基材(基材10A)に無電解ニッケルめっき膜(下地金属層102)、銅層(電磁誘導金属層104)、及びニッケル層(金属保護層106)を設けたもの(以下「めっきベルト」ともいう)を用いて行った。
2本のφ8mmのロール(応力付与ロール)に、得られためっきベルトを張架し、めっきベルトの表面(すなわちニッケル層側の表面)をヒートガンで30℃に加熱しながらめっきベルトを回転させ、10万回転ごとにめっきベルトの表面(すなわちニッケル層側の表面)を顕微鏡で100倍に拡大観察し、ニッケル層にクラックが発生しているかどうか確認することを5回繰り返した。クラック発生までの回転数(5回の平均値)を表1に示す。
10A 基材
102 下地金属層
104 電磁誘導金属層
106 金属保護層
10B 金属層
10C 接着剤層
10D 弾性層
10E 離型層
11 加圧ロール
11A 基材
11B 弾性層
11C 離型層
12 電磁誘導発熱装置
13 対向部材
13A 支持体
13B パッド
14 トナー像
15 記録媒体
100 定着装置
200 画像形成装置
202 感光体
204 帯電装置
206 露光装置
210 現像装置
212 中間転写体
214 転写ロール
Claims (12)
- 樹脂を含む基材層と、
前記基材層の外周面上に設けられ、Cuを含む第1の金属層と、
前記第1の金属層の外周面上に前記第1の金属層と接して設けられ、Niを含む第2の金属層であって、前記第2の金属層の平均結晶粒径が0.15μm以上0.19μm以下である第2の金属層と、
前記第2の金属層の外周面上に設けられた弾性層と、
を備え、
前記第1の金属層の平均結晶粒径に対する前記第2の金属層の平均結晶粒径の比(Ni/Cu)は、0.05以上1.90以下である、定着部材。 - 前記第2の金属層の平均結晶粒径が0.16μm以上0.18μm以下である請求項1に記載の定着部材。
- 前記第1の金属層の平均結晶粒径が0.10μm以上3.10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の定着部材。
- 前記第1の金属層の平均結晶粒径が0.10μm以上1.90μm以下である請求項3に記載の定着部材。
- 前記第2の金属層を面方向と垂直に切断した断面において、面方向における結晶粒の平均長さは、厚み方向における結晶粒の平均長さよりも長い請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の定着部材。
- 前記面方向における結晶粒の平均長さは、前記厚み方向における結晶粒の平均長さの1.01倍以上1.25倍以下である請求項5に記載の定着部材。
- 前記第2の金属層の厚みが5μm以上30μm以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の定着部材。
- 前記第2の金属層の厚みが7μm以上15μm以下である請求項7に記載の定着部材。
- 前記基材層の厚みが50μm以上90μm以下である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の定着部材。
- 前記第2の金属層の厚みに対する前記基材層の厚みの比は、3以上13以下である請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の定着部材。
- 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の定着部材と、
前記定着部材の外周面を加圧する加圧部材と、
前記定着部材が備える前記第1の金属層を電磁誘導によって発熱させる電磁誘導装置と、
を有し、
未定着のトナー像が表面に形成された記録媒体を前記定着部材と前記加圧部材とで挟み込んで前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置。 - 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写装置と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着させる請求項11に記載の定着装置と、
を有する画像形成装置。
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