以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。その他、補足として、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。
<実施形態1>
本実施形態では、記録媒体上に形成されるドットのドット径、ノズル列方向の変位量に基づいて、非接触となるドットの組み合わせを特定し、それらのドットが接触するように組み合わせを変更する。なお、本実施形態におけるインクジェット方式の画像形成装置は、フルライン方式の画像形成装置である。即ち、本実施形態におけるインクジェット方式の画像形成装置は、記録媒体の幅方向全域をカバーする長さの複数のノズル群を備えた記録ヘッドを備え、記録媒体における画像形成領域に対して、単一の走査により印刷を行う。
(装置構成)
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1、及び画像形成装置2に接続される画像形成装置2の構成を示したブロック図である。なお、図1において、画像処理装置1及び画像形成装置2は、所定のインタフェース又は回路によって接続されている。
画像処理装置1は、例えば、一般的なパーソナルコンピュータである。また、以下に説明する画像処理装置1内の各機能は、画像処理装置1にインストールされたプリンタドライバによって実現される。
図1(b)は、画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。画像処理装置1は、CPU121、RAM122、ROM123、汎用インタフェース124、外部記憶装置125を備える。
CPU(Central Processing Unit)121は、入力されたデータ、後述のRAM122やROM123に格納されているコンピュータプログラムを用いて、画像処理装置1全体の動作を制御する。なお、ここでは、CPU121が画像処理装置1全体を制御する場合を例に説明するが、複数の演算処理装置が処理を分担することにより、画像処理装置1全体を制御するようにしてもよい。
RAM(Random Access Memory)122は、外部記憶装置125から読み取ったコンピュータプログラムやデータ、後述の汎用インタフェース124を介して外部から受信したデータを一時的に記憶する記憶領域を有する。また、RAM122は、CPU121が画像処理やそれ以外の各種処理を実行するときに、記録領域として用いられる。このように、RAM122は、各種の記憶領域を適宜提供する。
ROM(Read Only Memory)123は、画像処理装置1における各部の設定を行う設定パタメータやブートプログラム等を格納する。汎用インタフェース124は、外部装置(ここでは、画像形成装置2)と通信するためのインタフェースであり、例えば、USBインタフェース等である。外部記憶装置125は、CPU121が各種処理を実行するときに用いる各種データを記憶する記憶装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等である。
次に、図1(a)を用いて、画像処理装置1の機能構成について説明する。画像処理装置1は、印刷対象であるカラーの画像データ(以下、入力画像データと称する)を、画像データ取得手段の一例である入力端子101より受信する。本実施形態において、入力画像データは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3つの色成分により構成される。
色分解処理部102は、各色の入力画像データを、画像形成装置2が備える色材色に対応した画像データ(以下、色材色画像データと称する)に分解する。この色分解処理には、公知の手法を用いることができる。したがって、例えば、色分解用ルックアップテーブル(LUT)103を参照して、色材色画像データに分解することができる。
また、本実施形態では、RGB各色の入力画像データを、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類の色材色に対応した画像データに分解する。なお、入力端子101においてCMYKの色材色画像データを直接入力し、色分解処理部102における処理をスキップする構成であってもよい。
ドットサイズ分解処理部104は、色分解処理部102から取得される色材色画像データを各ドットサイズに対応した画像データ(以下、ドットサイズ画像データと称する)に分解する。具体的には、例えば、ドットサイズが3種類(大、中、小)である場合に、色材色画像データを、色材色とドットサイズとの組み合わせに対応した12種類(C大、C中、C小、M大、・・・、K小)のドットサイズ画像データに分解する。なお、ドットサイズ画像データの各々は、ドットサイズ分解用LUT105を参照することで取得することができる。
図2は、ドットサイズ分解用LUT105の一例を示す図である。例えば、色材色画像データの座標(x、y)における値が「254」である場合、その色材色の大ドットサイズに対応するドットサイズ画像データの座標(x、y)における値は、図2に示すLUTに従って、「150」となる。同様に、中ドットサイズに対応するドットサイズ画像データの座標(x、y)における値は「20」、小ドットサイズに対応するドットサイズ画像データの座標(x、y)における値は「0」となる。
なお、色分解処理とドットサイズ分解処理を同時に行うこともできる。その場合、入力画像データから、各色材(CMYK)の各ドットサイズに分解されたドットサイズ画像データが出力される。具体的には、例えば、各RGB値に対して12種類の値(C大、C中、C小、M大、・・・、K小)が格納された色分解及びドットサイズ分解用LUT105を保持し、それを参照することで、同時に処理を行うことができる。
HT処理部106は、各色材とドットサイズとの組み合わせに応じた多値のドットサイズ画像データを、ドット形成のオン又はオフを示す2値の画像データ(以下、2値画像データと称する)に変換する。
このHT処理部106における2値画像データへの変換処理には、公知の手法を用いることができる。したがって、例えば、HTパラメータ記憶部107に閾値マスクを予め保持しておき、その閾値マスクとドットサイズ画像データの大小を比較して、ドット形成のオン又はオフを決定する組織的ディザ法を用いることで、2値の画像データに変換することができる。或いは、ある画素の2値化で生じた誤差を、以降の2値化処理画素に拡散する誤差拡散法を用いることで、2値画像データに変換することもできる。
ドット配置変更部108は、ノズル特性記憶部110に記憶されたノズル特性に基づいて、HT処理部106から出力された2値画像データを変更する。なお、ドット配置変更部108における処理に関して、詳細は後述するが、具体的には、互いに接触するように形成されるべきドットのペア(組み合わせ)であって、空隙を形成するドットのペアを、少なくとも接触するように変更するパターン変更処理を行う。また、特性取得部109における処理に関して、図6を用いて後述する。
ドット配置変更処理が実行されると、変更された2値画像データは、画像形成装置2に出力される。画像形成装置2は、記録媒体202を記録ヘッド(ノズル群)201に対して相対的に移動させつつ、画像処理装置1から受信した変更された2値画像データに基づいて各色材を吐出することにより、記録媒体202上に画像を形成する。
本実施形態においては、上述のように、画像形成装置2は、フルライン方式のインクジェット記録装置であるものとする。即ち、画像形成装置2は、図3に示すような記録媒体202の幅方向全域をカバーする記録ヘッドを各色材色(CMYK)について備える。また、CMYK各色の記録ヘッドは、主走査方向(記録媒体202の搬送方向)に対して一定距離で設置されており、さらに、CMYK各色の記録ヘッドには、同一色で同一濃度のインクを複数のサイズ(大、中、小)で吐出可能なノズルが集積配列されている。このような構成において、それぞれの記録ヘッドにより形成される画像を重ね合わせることで、最終的な画像を形成する。
ヘッド制御部203は、この画像を形成させる過程で、変更された2値画像データに基づいて、記録ヘッド201を制御するための駆動信号を生成する。記録ヘッド201は、各ノズル群に対応する駆動信号に基づいて、記録媒体202上に各色材を各ドットサイズで吐出することで画像を形成する。搬送部204は、ヘッド制御部203の制御下で、記録媒体202を一定の速度で主走査方向に搬送する。
また、本実施形態において、図3に示されるように、画像形成装置2は、記録媒体の幅方向全域をカバーするライン状のセンサ205を備え、記録ヘッドにより記録(印刷)された画像の濃度情報を適宜、取得する。さらに、特性取得部109は、センサ205で取得した濃度情報に基づいて、記録ヘッド201に備えられた各ノズルの吐出特性を取得する。
補足として、この各ノズルの特性を取得(記憶)するまでの具体的な手順について触れる。先ず、画像形成装置2は、特性取得部109によりテストパターンとなる2値画像データを生成し、記録媒体202上にその生成した2値画像データを形成する。次に、画像形成装置2は、センサ205より形成されたテストパターンの濃度情報を取得し、特性取得部109に送信する。そして、その後において、画像形成装置2は、特性取得部109により濃度情報から各ノズルの吐出特性を算出し、その算出した濃度情報をノズル特性記憶部110に記憶する。
なお、テストパターンとノズル特性に関して、図面(各々、図5、図6等)を用いて後述する。また、上述では、画像形成装置2がセンサ205を備える構成として説明したが、別途、センサ、スキャナ、マイクロデンシトメータ等を用いて濃度情報を取得し、画像処理装置1に入力する構成とすることもできる。
次に、図4のフローチャートを用いて、本実施形態に係る画像処理装置1における印刷処理の手順について説明する。なお、フローチャートの説明における記号「S」は、ステップを表すものとする。この点、以降のフローチャートの説明においても同様とする。
S401において、画像処理装置1は、印刷ジョブを取得する。具体的には、1枚以上の入力画像データと各画像の印刷枚数を取得する。S402において、画像処理装置1は、特性取得部109によりテストパターンとなる2値画像データを生成し、さらに、その生成したテストパターンを画像形成装置2の記録ヘッド201より出力するように制御する。
ここで、テストパターンの一例を図5に示す。画像形成装置2は、図5に示されるようなテストパターンを印刷することで、記録媒体上に、異なるサイズのドットを他のドットと十分に離間するように形成する。
S403において、特性取得部109は、センサ205より各ノズルの吐出特性を取得する。即ち、テストパターンとして記録媒体上に形成されたドットをセンサにより計測することで、各ノズルに関して、他のノズルからの干渉を受けない特性を取得する。
ここで、ノズル特性の一例を図6に示す。ノズル特性として、図6(a)に示されるように、ノズル毎に、各ドットのドット径(ドットの幅)と、記録媒体202の搬送方向と直交する方向への変位量(ずれ量)を取得し、ノズル番号とドットサイズを紐付けて、ノズル特性記憶部110に記憶する。
例えば、図6(a)に示すテーブルにおいて、ノズル番号「1」のノズルでは、大ドットを吐出した場合、記録媒体202上に60μmのドットが形成され、そのドットの重心は目標位置に対して、-3μmずれることが示されている。
なお、図6(a)において、図5の記録媒体202の搬送方向をxの正方向に、紙幅方向下向きをyの正方向に設定している。また、記録媒体202上のドット径と重心は、センサ205により取得される濃度情報から算出される。ここで、センサ205をラインセンサとした場合に、位置yにおいて取得された濃度情報D(y)の一例を図6(b)に示す。
図6(b)に示されるように、閾値tを用いることで、インクの付着している幅w(w1、w2、w3)を推定する。また、濃度の二次微分値から極大値y(y1、y2、y3)を特定する。具体的には、x方向の所定の間隔毎に(記録媒体202を所定距離、搬送する毎に)インクの付着している幅w、極大値yを取得し、インクの付着している幅wの最大値を対応するノズル番号のドット径として保持する。また、そのインクの付着している幅wが最大となるときの極大値yを変位量として保持する。例えば、ノズル番号「1」のノズルの場合、インクの付着している幅w1、極大値y1を取得し、インクの付着している幅w1の最大値をドット径として保持し、また、そのインクが付着している幅w1が最大となるときの極大値y1を変位量として保持する。
なお、本実施形態においては、ノズル列方向の変位量に対して、搬送方向の変位量はスジ状の濃度ムラに対する寄与が低いため、搬送方向と直行する方向の変位量のみを保持している。しかしながら、スジ状の濃度ムラをより精確に低減するには、メモリ量は増大するものの、搬送方向の変位量も保持するようにしてもよい。
また、ドットの打ち始めの状態とインクを十分に吐出している状態とでは、変位量やドット径が変わる場合がある。そのような場合には、吐出状態に対する関数(入力画像が一定の場合には、搬送方向の位置xで代用可能な関数)として、変位量とドット径を保持してもよい。
図4に戻り、特性取得部109は、各ノズルの吐出特性を取得すると、S404において、印刷回数jを初期化する。具体的には、印刷回数jに「0」を代入する(即ち、j=0とする)。S405において、画像処理装置1は、画像形成装置2により入力画像データを記録媒体202に形成するための実印刷データを生成する。
具体的には、画像処理装置1は、入力画像データを、色分解処理部102、ドットサイズ分解処理部104、HT処理部106により処理することで、2値画像データを取得する。画像処理装置1は、さらに、ドット配置変更部108により、S403において取得されたノズル特性に基づいて、その2値画像データを修正する。
S406において、画像処理装置1は、画像形成装置2により、S405において生成した実印刷データに基づいて、記録媒体202上に印刷を行うように制御する。S407において、画像処理装置1は、S401において、取得した印刷ジョブの全てに関して印刷済みであるか否か(印刷ジョブが完了しているか否か)を判定する。
画像処理装置1は、取得した印刷ジョブの全てに関して印刷済みであると判定すると(S407 Yes)、図4に示す印刷処理を終了する。また、画像処理装置1は、取得した印刷ジョブの全てに関して印刷済みではないと判定すると(S407 No)、処理をS408に移行させる。
S408において、画像処理装置1は、印刷回数jが予め設定された所定の回数jxと等しいか否かを判定する。なお、所定の回数jxは、ノズル特性を取得する頻度を制御するパラメータである。所定の回数jxとして、例えば、予め画像形成装置2において印刷処理を連続して実行し、ノズル特性が変化していると判断されるまでの印刷回数を設定する。補足として、ノズル特性が変化しているか否かは、例えば、印刷回数が0回の場合と比較して、変位量又はドット径が10%以上変化しているか否かで判断することができる。
画像処理装置1は、印刷回数jが所定の回数jxと等しいと判定すると(S408 Yes)、処理をS402に返し、再度、テストパターンを印刷(出力)するように制御し、各ノズルの特性を取得し直す。
このように、ノズルの特性の変化が見込まれる回数、印刷処理を実行する度に、ノズル特性を取得し直すことで、ノズルの特性が動的に変化する場合に、その変化に追従するように、ドットの再配置処理(ドットの配置を変更する処理)を行うことができる。
また、S408において、画像処理装置1は、印刷回数jが所定の回数jxと等しくないと判定すると(S408 No)、S409において印刷回数jを更新した後、処理をS405に返し、実印刷データの印刷処理を続けて実行する。本実施形態では、印刷回数jの更新として、印刷回数jに「1」を加算する。
なお、同一画像を複数枚、印刷する場合には、実印刷データを再度、生成するのではなく、直前の処理ループで生成した実印刷データを保持しておくことで、S405をスキップし、S406に処理を移行させることができる。
また、例えば、記録ヘッド201として、ヒーターで加熱し、インクを発泡させることでインク滴を吐出する方式を採用している場合には、連続して印刷を行うと、記録ヘッド201内部の温度が上昇し、ノズル特性が変化する場合がある。このような場合には、印刷回数毎ではなく、連続した印刷時間を設定し、ノズル特性を取得してから一定時間、印刷が継続されると、ノズル特性を取得するようにしてもよい(即ち、印刷時間毎に、ノズル特性を取得するようにしてもよい)。
(ドット配置変更処理)
次に、図7を用いて、本実施形態に係る画像処理装置1のドット配置変更部108における処理について説明する。図7において、図7(a)は、HT処理部106により取得される吐出パターンの一例である。図7(a)に示す吐出パターンにおいて、「0」が記入された格子は、ドットを吐出しないことを示している。また、同様に、「1」が記入された格子は小ドットを、「2」が記入された格子は中ドットを、「3」が記入された格子は大ドットを吐出することを各々、示している。
なお、本実施形態において、図7(b)の左図に示されるように、小ドットに関して、少なくとも出力解像度で区切った格子の高さ又は幅よりも、その径が大きいことが望ましい。さらには、図7(b)の右図に示されるように、小ドットに関して、出力解像度で区切った格子の対角を埋めるのに十分なドットであることがより望ましい。
図7(c)は、図7(a)に示す吐出パターンに従って印刷した場合に、記録媒体202上に形成されるドットのパターン(ドットパターン)を模式的に示す図である。図7(c)に示されるように、少なくとも出力解像度で区切った格子の高さ又は幅よりも、その径が大きくなるように設計すれば、上下のドットが接触するため、ドット間においてスジが知覚されにくくなる。
しかしながら、上述のように、ノズルからインクを吐出する上で、その吐出方向の変位(即ち、物理的な変動)を皆無とすることは困難であり、インクの着弾位置が目標位置に対してずれることや吐出量が変化することは回避し難い。そのため、記録媒体202上のドットは、ノズル特性等により重心が変位したり、吐出径が小さくなったりする。このような場合、図7(d)に示されるように、ドット間に空隙が生じる可能性がある。さらに、このようなドット間の空隙が同一ノズル間に多く発生すると、印刷物上においてスジムラとして視認されることになる。
そこで、本実施形態においては、図6に示すノズル特性と図7(a)に示す吐出パターンから、図7(d)に示されるようなドット間に空隙が発生する位置を特定し、その空隙の両隣のドットの組を空隙が生じないように変更することで、スジムラを抑制する。即ち、ドット同士が接触するような組み合わせに変更することで、スジムラを抑制する。
なお、本実施形態において、CMYKの各色に関して、上述の抑制する処理を独立で行うものとする。即ち、各色単色でインクを吐出した場合のバンディングを抑制することで、重ね合わせた最終画像のバンディングも抑制することとする。
次に、図8のフローチャートを用いて、本実施形態に係る画像処理装置1のドット配置変更部108における処理の手順及び処理の内容について説明する。S801において、ドット配置変更部108は、ノズル特性記憶部110に予め格納された各ノズルの特性を取得する。即ち、各ノズルでドットを印刷した場合のドット径と変位量を特定可能な情報として取得する。本実施形態では、図6(a)に示すテーブルをノズル特性記憶部110より取得する。
S802において、ドット配置変更部108は、HT処理部106から出力されたハーフトーン処理(HT処理)後の2値データを取得する。例えば、ドット配置変更部108は、ドットサイズ毎にドットの吐出の有無が設定された2値データを取得する。即ち、ドット配置変更部108は、ドットを吐出する格子には「1」、吐出しない格子には「0」が格納(設定)された2次元データを取得する。また、図7(a)に示すような格子毎に吐出するドットのドットサイズが設定された画像データを取得するようにしてもよい。
S803において、ドット配置変更部108は、ドット再配置処理の対象となる注目画像位置(x、y)を決定する。S804において、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)の両方にドットを吐出するか否かを判定する。
ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)の両方にドットが吐出(配置)されると判定すると(S804 Yes)、処理をS805に移行させる。他方、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)のいずれかにドットが吐出されないと判定すると(S804 No)、処理をS808に移行させる。
S805において、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x,y)と(x,y+1)に吐出されるドットが接触するか否かを判定する。そして、ドット配置変更部108は、ドットが接触すると判定すると(S805 Yes)、処理をS806に移行させ、ドットが接触しないと判定すると(S805 No)、処理をS808に移行させる。
ここで、図9を用いて、ドットが接触するか否かを判定する処理について説明を補足する。図9(a)において、符号901は、ノズル番号「X」のノズルの吐出目標位置である。同様に、図9(a)において、符号903は、ノズル番号「X」のノズルに隣接するノズル(ノズル番号「X+1」)の吐出目標位置である。そして、このとき、ノズル列方向の印字解像度が600dpiであれば、吐出目標位置901と903との間の距離Δyは25.4/600=0.042[mm]と算出することができる。
なお、符号902は、ノズル番号「X」のノズルによって、吐出目標位置901に平均的なドット径の小ドットを吐出した場合に、インクが付着することが予測される範囲を示している。同様に、符号904は、ノズル番号「X+1」のノズルによって、吐出目標位置903に平均的なドット径の小ドットを吐出した場合に、インクが付着することが予測される範囲を示している。
図9(b)において、符号901´は上述の図8のS801で取得したノズル番号「X」のノズルのy方向の変位量Δy1を考慮した場合のインクの着弾位置である。同様に、符号903´は、ノズル番号「X+1」のノズルのy方向の変位量Δy2を考慮した場合のインクの着弾位置である。
また、図9(b)において符号902´は、ノズル番号「X」のノズルによって、平均的なドット径の小ドットを吐出した場合のドット径を考慮してインクの付着が予測される範囲を点線で示している。同様に、符号904´は、ノズル番号「X+1」のノズルによって、平均的なドット径の小ドットを吐出した場合のドット径を考慮してインクの付着が予測される範囲を点線で示している。
このとき、図9(c)に示されるように、ノズル番号「X」のノズルが吐出するドットとノズル番号「X+1」のノズルが吐出するドットが接触するか否かは、r1+r2≧Δy-Δy1+Δy2を満たすか否かで判定することができる。即ち、ノズル番号「X」のノズルが吐出するドットとノズル番号「X+1」のノズルが吐出するドットの重心間の距離Δy-Δy1+Δy2よりも、ドットの半径r1と半径r2の和が同じか大きい場合に、ドットが接触すると判定することができる。
なお、図9では、ドットを真円で近似して判定する例を示したが、搬送速度が大きい場合には、ドットの形状が搬送方向に長く歪む場合があり、このような場合には、ドットを楕円や卵形等、別の形状に近似してもよい。
図8に戻り、S806において、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)に吐出されるドットのドットサイズをより大きなサイズに変更できるか否かを判定する。具体的には、各ノズルが大中小の3種類のドットを吐出可能な場合には、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)とに吐出されるドットのドットサイズがいずれも大ドットであるか否かを判定する。
ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)に吐出されるドットのいずれもが大ドットである(即ち、ドットのドットサイズをより大きなサイズに変更できない)と判定すると(S806 No)、処理をS808に移行させる。他方、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)に吐出されるドットのいずれかが大ドットでない(即ち、ドットのドットサイズをより大きなサイズに変更できる)と判定すると(S806 Yes)、処理をS807に移行させる。
S807において、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)又は(x、y+1)に吐出されるドットのドットサイズを、より大きなドットサイズになるように段階的に変更する。具体的には、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)に吐出されるドットのドットサイズが異なる場合には、その吐出されるドットのうち、小さいドットを優先的に選択し、一段大きいドットに変更する。例えば、注目画像位置(x、y)に中ドット、(x、y+1)に小ドットが吐出される場合には、(x、y+1)に吐出されるドットを中ドットに変更する。
また、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)に吐出されるドットのドットサイズが同じである場合、注目画像位置(x、y)に吐出されるドットを一段大きいドットに変更する。例えば、注目画像位置(x,y)に中ドット、(x,y+1)に中ドットが吐出される場合には、注目画像位置(x,y)に吐出されるドットを大ドットに変更する。
ドット配置変更部108は、S807において、ドットサイズを変更すると、処理をS805に返し、S807でドットサイズを変更したドットの組み合わせにおいて、ドットが接触するか否かを判定する。また、ドット配置変更部108は、S808に処理を移行させると、全画像位置を注目画像位置として処理を実行したか否かを判定する。ドット配置変更部108は、処理を実行していない画像位置があると判定すると(S808 No)、処理をS809に移行させ、画像位置(x、y)を更新し、処理を実行していない画像位置に設定する。
以上、説明したように、隣接するノズルの各々から吐出される、組み合わせとなるドットのドットサイズの変更を最小とすることで、粒状性の悪化等の弊害を抑制することを前提に、スジ状の濃度ムラとして視認されることを抑制することができる。これについて、以下、説明を補足する。組み合わせとなるドットのうち、一方のドットのドットサイズを大きくすれば、組み合わせとなるドットが接触する場合に、組み合わせとなる両方のドットのドットサイズを単一の補正処理として一律に大きくすることも検討できる。但し、組み合わせとなる両方のドットのドットサイズを単一の補正処理として一律に大きくすると、粒状性の悪化や過度の補正により黒スジが発生する可能性が高くなる。そこで、組み合わせとなるドットのドットサイズを変更する上で、その変更を最小(最低限)にしている。
なお、本実施形態では、図4のフローチャートに示されるように、テストパターンを印刷し、その印刷した結果を計測した情報に基づいて各ノズルの特性を取得し、さらに、そのノズルの特性に従って、所定数の実印刷データを印刷するものとして説明した。
しかしながら、実印刷データの隅にキャリブレーション領域を設け、そのキャリブレーション領域にテストパターンを印刷することで、実印刷データを印刷する度にノズル特性を取得するようにしてもよい。このように、実印刷データを印刷する度にノズル特性を取得することで、テストパターンを印刷する必要がなくなり、t回目の実印刷データの印刷によって取得されるノズル特性に基づいて、t+1回目の印刷におけるドットの配置変更処理を行うことができる。
また、センサ205(ラインセンサ)を用いることなく、スキャナ等を用いて、テストパターンを2次元画像化し、その2次元画像から、例えば、公知のHough変換等を適用して、ドット径と重心を用いることもできる。その他、上述において、インクの着弾位置の変位量を絶対値で算出したが、隣接ドットからの相対値で保持し、ドットが接触するか否かを判定することもできる。
<実施形態2>
上述の実施形態1では、ノズル毎に独立したドット径と変位量をノズルの特性として取得し、そのノズルの特性に基づいて、ドット間の接触状態を判定するものとして説明した。そのため、実施形態1では、ノズルとドット(大ドット、中ドット、小ドット)の全ての組み合わせに対してドット径と変位量を保持することとしており、これに関係して、格納するためのメモリ容量を大きくする必要がある。特に、ノズル列方向だけではなく、搬送方向の変位量を保持する場合や、吐出状態に対する関数としてドット径と変位量を保持する場合に、メモリ容量を確実に大きくする必要がある。
そこで、本実施形態では、予め、テストパターンとして、隣接ノズルにおける全てのドットの組み合わせを印刷する。そして、その印刷した結果から、空隙が生じるパターンを抽出、保持しておくことで、スジムラを抑制する。
以下、テストパターンと接触判定について説明する。なお、以下の説明において、実施形態1と共通の部分(構成)については、その説明を簡略化又は省略する。図10は、テストパターンの一例を示す図である。
図10(a)において、領域1001aには、ノズル番号「1」のノズルにより吐出可能なドットパターンと、ノズル番号「2」のノズルにより吐出可能なドットパターンの組み合わせが配置されている。即ち、例えば、各ノズルにおいて、大と小の2種類のドットを吐出可能であれば、合計4パターン(小ドット+小ドット、大ドット+小ドット、小ドット+大ドット、大ドット+大ドット)が領域1001aに配置される。同様に、各ノズルにおいて、大と中と小の3種類のドットを吐出可能であれば、図10(b)の領域1001bに示されるように、合計9パターンが領域1001bに配置される。なお、9パターンとは、小ドット+小ドット、小ドット+中ドット、小ドット+大ドット、中ドット+小ドット、中ドット+中ドット、中ドット+大ドット、大ドット+小ドット、大ドット+中ドット、大ドット+大ドットである。
また、図10において、領域1002a(図10(a))、領域1002b(図10(b))にはノズル番号「2」とノズル番号「3」のノズルにより吐出可能なドットパターンが、その組み合わせとして配置されている。同様に、領域1003a、領域1003bにはノズル番号「3」とノズル番号「4」、領域1004a、領域1004bにはノズル番号「5」とノズル番号「6」のノズルにより吐出可能なドットパターンが、その組み合わせとして配置されている。
なお、ドットパターンの抽出の精度を向上させるために、各ドットパターンの組み合わせは他のドットパターンの組み合わせと十分に離間するように配置することが好ましい。例えば、図10(a)では、領域1001aと領域1003aを略同一な搬送位置に配置している。但し、ノズル番号「2」と「4」のノズルで吐出したドットが接触するほど変位量が大きい、又はドット径が大きい場合には、領域1003aではなく、領域1004aを領域1001aと同じ搬送位置に配置することが好ましい。また、この場合、領域1003aは、領域1002aの後に印刷される搬送位置(図10(a)において、領域1002aより左の位置)に配置される。その他、ノズルの吐出状態を考慮する場合には、図10に示すパターンをドットの組み合わせを変更して繰り返し配置し、搬送位置毎に後述の処理を実行する。
図11は、ノズル特性の一例を示す図である。なお、図11(a)に示すノズル特性において、各ノズルは、大ドット、小ドットの2種類のドットを吐出可能であるものとする。図11(a)に示されるように、「ノズルの組み合わせ」毎に「ドットサイズの組み合わせ」に対する接触の可否を、テーブルとしてノズル特性記憶部110に保持する。
具体的には、ドットが接触する組み合わせには「○(true)」、ドットが接触しない組み合わせには「×(false)」を保持しておく。例えば、図11(a)では、ノズル番号「1」とノズル番号「2」のノズルのいずれもが小ドットを吐出する場合と、ノズル番号「1」のノズルが大ドット、ノズル番号「2」のノズルが小ドットを吐出する場合に、「×(false)」が格納されている。即ち、これらの組み合わせで記録媒体202上にドットを形成すると、両ノズルから吐出されるドットは接触せず、ドット間に空隙が生じることが示されている。
このように、本実施形態では、テーブルにおいて、データを2値(即ち、「○(true)」又は「×(false)」)で保持することが可能であり、テーブルのメモリサイズを、実施形態1の図6に示すテーブルのメモリサイズより小さくすることができる。即ち、本実施形態では、ドットの接触判定を行う上で、メモリの容量を低減することができる。
なお、ノズル毎の吐出量の変動が少なく、各ノズル間でドットサイズが略一致していると見做せる場合には、小ドット+大ドットの組み合わせと大ドット+小ドットの組み合わせを同一パターンと見做すことで、メモリ容量をさらに低減することができる。
また、ドットサイズの組み合わせにおけるドットの接触判定は、例えば、印刷された記録媒体202をユーザが目視により確認することで判定可能である。又は、ラインセンサ205からの濃度情報に基づいて、ドットの接触判定を行ってもよい。即ち、例えば、図11(b)に示されるように、濃度の変曲点を算出し、極大値と極小値との差分ΔDが所定の閾値THよりも大きい場合には非接触であると判定すればよい。若しくは、濃度Dの値が下に凸である変曲点の濃度Dminに基づいて、濃度Dminが所定の閾値TH´よりも小さい場合には非接触であると判定してもよい。
補足として、「ノズルの組み合わせ」毎にドットの接触の有無をテーブルとして保持する場合には、上述の図8のS805において、テーブルを参照し、「ture」であれば接触し、「false」であれば非接触であると判定すればよい。また、判定の結果が非接触(「false」)であれば、S807において、接触(「true」)となる組み合わせから一つを選択し、その組み合わせとなる吐出パターンに変更すればよい。
また、各ノズルが、大ドット、中ドット、小ドットの3種類のドットを吐出可能な場合のノズル特性を図11(c)に示す。図11(c)においても、図11(a)と同様に、「ノズルの組み合わせ」毎に「ドットサイズの組み合わせ」に対する接触の可否を、テーブルとしてノズル特性記憶部110に保持する。
<実施形態3>
上述の実施形態1及び2では、隣接するノズル間におけるドットの接触可否のみに基づいて、ドットの再配置を行うこととして説明した。但し、吐出されるインクの量が多い場合、ノズルの集積密度が高い場合等には、注目ノズルから吐出されるドットと、その注目ノズルに隣接するノズル以外のノズルから吐出されたドットと接触する場合がある。例えば、ノズル番号「4」のノズルから吐出されたドットと、そのノズル番号「4」のノズルから1つのノズルを介して隣接するノズル番号「2」のノズル又はノズル番号「6」のノズルから吐出されたドットが接触する場合がある。
このような場合には、注目ノズルから吐出されたドットと、その注目ノズルから1つのノズルを介して隣接するノズルから吐出されたドットを接触させるようにドットを再配置することで、スジムラを抑制することを検討することができる。例えば、ノズル番号「3」のノズルに不吐が生じた場合に、ノズル番号「4」のノズルから吐出されるドットとノズル番号「6」のノズルから吐出されるドットを接触させることで、スジムラを抑制することができる。このように、注目ノズルから吐出されるドットと、その注目ノズルに隣接するノズル以外のノズルから吐出されたドットの接触を考慮することで、スジムラを抑制できる可能性がある。
なお、この場合の接触可否も、上述の実施形態1と同様に、ドット径と変位量から算出することができる。例えば、ノズル番号「1」のノズルから吐出されるドットとノズル番号「3」のノズルから吐出されるドットとの接触可否であれば、r1+r3≧Δy-Δy1+Δy3を満たすか否かで判定できる。補足として、上式において、r1、r3は各々のノズルから吐出されるドットの半径、Δy1、Δy3は変位量を示している。また、Δyは、ノズル番号「1」のノズルの吐出目標位置とノズル番号「3」のノズルの吐出目標位置の間の距離を示しており、例えば、ノズル列方向の印字解像度が600dpiであれば、2×25.4/600=0.084[mm]となる。
また、実施形態2と同様に、予め、テストパターンとして、対象とするノズルと全てのドットの組み合わせを印刷し、その組み合わせ毎に接触又は非接触を判定しておいてもよい。例えば、図12の領域1201aに示されるように、ノズル番号「1」とノズル番号「3」のノズルの組み合わせで吐出可能な全ての吐出パターンを印刷し、それらのドット間に空隙が生じるか否かを予め目視等で確認することで接触可否を判定すればよい。
その他、注目ドット(x、y)と、その注目ドット(x、y)の斜めに配置されるドット(x±1、y+1)又はドット(x±1、y-1)との接触可否を保持しておいてもよい。即ち、具体的には、図12の領域1202aに示されるような吐出パターンを印刷(出力)し、接触可否を判定してもよい。このように、1つのノズルを介して隣接するノズル(1ノズル間隔より離れたノズル)から吐出されるドットも考慮することで、不吐ノズルのような不良ノズルがある場合にも対応することが可能となる。
<実施形態4>
上述の実施形態1乃至3において、画像形成装置2は、フルライン方式のインクジェット記録装置として説明した。即ち、上述の実施形態では、図3に示されるように、記録媒体の幅方向全域をカバーする記録ヘッドを備えた記録ヘッドを用いて、記録ヘッドと記録媒体とを相対的に走査することで画像を形成することとした。
他方、記録媒体を搬送せずに記録ヘッドをノズル列に直行する方向に走査(主走査)し、主走査の方向と略直交する副走査の方向に対して記録媒体をノズル群の長さ以下の搬送量で搬送する動作を繰り返すことで、画像を形成するマルチパス方式が知られている。
図13は、マルチパス方式のインクジェット記録装置における記録動作を説明するための図である。図13では、記録媒体202の同一ライン上で、記録ヘッド201を2回走査させることで画像を記録する2パス記録の動作を示している。
2パス記録の場合、例えば、キャリッジによる主走査で記録ヘッドの幅Lだけ画像を記録し、1ラインの記録が終了する毎に、記録媒体202を副走査方向に距離L/2ずつ搬送する。具体的には、領域Aは記録ヘッドのm回目の主走査(図13(a))とm+1回目の主走査(図13(b))により記録され、領域Bは記録ヘッドのm+1回目の主走査(図13(b))とm+2回目の主走査(図13(c))により記録される。同様に、nパス記録を行う場合は、例えば、1ラインの記録が終了する毎に、記録媒体202を副走査方向に距離L/nずつ搬送する。この場合、記録媒体202の同一ライン上で、記録ヘッド201をn回走査させることで画像を形成(記録)する。
なお、このようなマルチパス方式のインクジェット記録装置を用いると、同一領域が異なるノズルで印字されるため、ノズル毎の位置ずれやドット径の誤差によるスジムラが低減されることが知られている。但し、同一領域への走査数が少ない場合、走査毎に吐出するドット数の分配が偏っている場合、走査毎のパターンの分散性が低い場合等には、依然としてスジムラが視認されることがある。
本実施形態では、上述のように、同一領域を異なるノズルで印刷するため、ドットの接触判定を行う上で、吐出するノズルを特定し、そのノズルの特性を適用する。
<実施形態5>
上述のように、ドット間の空隙が同一ノズル間で多く発生すると印刷物上においてスジムラとして視認されるが、隣接しないドット間(孤立したドット間)で空隙が生じた場合にはスジムラとして認識されにくいことがある。
そのため、スジムラの目立ちやすさに応じて、上述の図8のS807におけるドットサイズの変更処理を確率的に実行しないようにしてもよい。即ち、孤立点である可能性が高い場合に、隣接しないドット間で空隙が生じていたとしてもスジムラとして視認されにくいと判断し、ドットサイズの変更処理を低い確率で行うようにすればよい。例えば、周辺ドットの個数を算出し、その個数が多いほど、ドットサイズの変更処理の確率を低くすればよい。或いは、注目ドットの画素値が低いほど、ドットサイズの変更処理の確率を低くしてもよい。
<実施形態6>
上述の実施形態(図8)では、隣接する画像位置にドットがある場合に、そのドットの組み合わせに関わらず、非接触であって、ドットサイズの変更が可能であるときに、ドットサイズを変更する例について説明した。
本実施形態では、隣接する画像位置にドットがある場合に、着弾位置の変位に依らず、接触状態が変化しないドットの組み合わせに関して、ドットサイズを変更する処理を抑制する。換言すると、隣接する画像位置にドットがある場合に、ドットが理想状態において接触し、かつ、そのドットが着弾位置の変位により接触しなくなるときに、そのドットの組み合わせに関して、変更処理を実行する。
具体的には、上述の図9(a)の理想状態ではドット902と904は接触しているが、着弾位置が変位した場合に、図9(b)に示されるようにドット902´と904´が接触しなくなることがあり、このような場合に、ドットの組み合わせ変更処理を行う。
ここで、例えば、吐出されるインクの量が少なく、ドット径に対してドット間の距離が十分、大きくなる場合には、そもそもインクの吐出に変位(変動)がなくても、ドット間に空隙が生じる場合がある。即ち、図9(a)において、符号902により示される範囲と符号904により示される範囲がノズルに依らず接触しないことがある。このような場合には、図8のS805に示されるドットサイズの接触判定及びS807に示されるドットサイズの変更処理をスキップさせてもよい。
また、例えば、インクの吐出の変動(変位)に対して吐出されるインクの量が多く、ドット径に対してドット間距離が十分、小さくなる場合には、想定される変位(変動)の範囲内では、変位に依らずドット間に空隙が生じない場合がある。即ち、図9(b)において、符号902´により示される範囲と符号904´により示される範囲の間の距離が符号904´により示される範囲より十分、小さければ、インクの吐出に変位があっても接触することがある。このような場合には、処理をS807からS805に返すことなく、S808に移行させてもよい。
以下、図14及び図15を用いて、本実施形態に係る画像処理装置の具体的な処理について説明する。図14は、ドットの変位と接触について説明するための図である。図14(a)は、インクの吐出が変位(変動)しない場合であっても、ドットが接触しない例を模式的に示した図である。
図14(a)において、符号1402は、ノズル番号「X」のノズルによって、吐出目標位置1401に小ドットを吐出した場合に、インクが付着することが予測される範囲を示している。また、符号1404は、ノズル番号「X+1」のノズルによって、吐出目標位置1403に小ドットを吐出した場合に、インクが付着することが予測される範囲を示している。同様に、符号1405はノズル番号「X+1」のノズルによって中ドットを吐出した場合に予測される範囲、符号1406はノズル番号「X+1」のノズルによって大ドットを吐出した場合に予測される範囲を各々、示している。
ここで、図14(a)に示されるように、吐出目標位置1401と1403との間の距離Δyに対して小ドットによるインク付着の予測範囲が十分に小さいことから、小中大のいずれのドットサイズと組み合わせてもドット間に空隙が生じることになる。さらに、ドット間の空隙が不図示のノズル番号「X」のノズルのy方向の変位量Δy1及びノズル番号「X+1」のノズルのy方向の変位量Δy2よりも大きい場合、インクの吐出が変位しない場合であっても、ドットは接触しないものと見做せる。
なお、このような場合、上述のように、該当するノズルにおいて小ドットを含む組み合わせについては、図8のS805に示されるドットサイズの接触判定及びS807に示されるドットサイズの変更処理を行わないようにしてもよい。また、全てのノズルにおいて小ドットといずれのドットサイズとの間に空隙が生じると見做せる場合には、全てのノズルにおいて小ドットを含む組み合わせについては、ドットサイズの接触判定及び変更処理を行わないようにしてもよい。その他、別の理由、例えば、小ドットの吐出では主滴と副滴に大きく割れて着弾する可能性が高く、接触判定の精度が不十分であり、そのような場合にも、小ドットを含む組み合わせについては、ドットサイズの接触判定及び変更処理を行わないようにしてもよい。
次に、図14(b)を用いて、インクの吐出の変動(変位)に依らず、ドット同士が接触する場合について説明する。図14(b)は、ドットが十分に大きい場合にインクの吐出が変動(変位)した場合であっても、ドットが接触する例を模式的に示した図である。
図14(b)において、符号1407は、ノズル番号「X」のノズルによって、吐出目標位置1401´に大ドットを吐出した場合に、インクが付着することが予測される範囲を示している。また、符号1408は、ノズル番号「X+1」のノズルによって、吐出目標位置1403に中ドットを吐出した場合に、インクが付着することが予測される範囲を示している。同様に、符号1409はノズル番号「X+1」のノズルによって大ドットを吐出した場合に予測される範囲を示している。
ここで、図14(b)に示されるように、吐出目標位置1401´と1403´との間の距離Δyに対してインク付着の予測範囲が十分に大きいことから、中大のいずれのドットサイズと組み合わせてもドット間に空隙が生じないことになる。さらに、ドットの重なりが不図示のノズル番号「X」のノズルのy方向の変位量Δy1及びノズル番号「X+1」のノズルのy方向の変位量Δy2よりも大きい場合、インクの吐出が変位する場合であっても、ドットが接触するものと見做せる。
なお、このような場合、該当するノズルにおいて大ドットを含み、小ドットを含まない組み合わせについては、図8のS805に示されるドットサイズの接触判定及びS807に示されるドットサイズの変更処理を行わないようにしてもよい。また、全てのノズルについて大ドットを含み、小ドットを含まない組み合わせについて空隙が生じないと見做せる場合には、全てのノズルにおいて大ドットを含み、小ドットを含まない組み合わせに対して接触判定及び変更処理を行わないようにしてもよい。
ここで、図14(a)及び図14(b)の両方の状態に関して、ドットの組み合わせ変更の対象外とする。即ち、ドットの着弾位置及び紙面に形成されるドット径の変動に対して、小ドットが十分に小さく、小+中、小+大が接触する可能性がない場合、大ドットが十分に大きく、大+大、大+中がほぼ接触すると見做せる場合をドットの組み合わせ変更の対象外とする。このような場合、ドット径が中+中の組み合わせを探索し、非接触であれば、ドット径が大と中の組み合わせに置き換えればよい。
補足として、図15のフローチャートを用いて、ドット径が中+中の組み合わせを探索する処理の手順について説明する。なお、図15のフローチャートに示される処理に関して、図8のフローチャートに示される処理の手順とおおよそ同様であり、ここでは、図8のフローチャートと異なる処理について説明する。具体的には、S804がS1504、S805がS1505に変更されており、以下、これらの処理について説明する。
S1504において、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)の両方に中ドットが吐出(配置)されるか否かを判定する。ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)の両方に中ドットが吐出されると判定すると(S1504 Yes)、処理をS805に移行させる。また、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)の両方に中ドットが吐出されないと判定すると(S1504 No)、処理をS808に移行させる。
また、処理がS805に移行され、注目画像位置(x,y)と(x,y+1)に吐出されるドットが接触していないと判定すると、S1506において、注目画像位置(x、y)又は(x、y+1)に吐出されるドットのドットサイズを大ドットに変更する。
以上、説明したように、本実施形態に係る画像処理装置では、着弾位置の変位に依らず、接触状態が変化しないドットの組み合わせの変更処理を抑制する。これにより、スジ状の濃度ムラとして視認されることを抑制しつつ、さらに粒状性の悪化等の弊害を抑制することを期待することができる。
<実施形態7>
上述の実施形態1では、図8のS807の処理において、ドット配置変更部108は、ドットのドットサイズを、より大きなドットサイズになるように段階的に変更するものとして説明した。但し、空隙の幅を取得可能な場合には、ドットのドットサイズを段階的に変更するのではなく、空隙がなくなると見込まれるサイズにドットサイズを直接、変更することもできる。このように、ドットサイズを直接、変更することで、変更回数を低減し、より少ない処理時間でスジ状の濃度ムラを抑制することができる。
以下、図16のフローチャートを用いて、本実施形態に係る画像処理装置1のドット配置変更部108における処理の手順及び処理の内容について説明する。なお、ここでの説明において、上述の実施形態1と共通の部分(構成)については、同一の符号を用いることで、その説明を簡略化又は省略する。
S804において、ドット配置変更部108は、注目画像位置(x、y)と(x、y+1)の両方にドットが吐出(配置)されると判定すると、S1601において、注目画像位置(x,y)と(x,y+1)に吐出されるドットの空隙の幅を取得する。例えば、図17(a)に示されるように、ノズル番号「X」のノズルが吐出するドットとノズル番号「X+1」のノズルが吐出するドットの空隙の幅Δvを、数式Δv=Δy-Δy1+Δy2-(r1+r2)により算出する。即ち、ノズル番号「X」のノズルが吐出するドットとノズル番号「X+1」のノズルが吐出するドットの重心間の距離Δy-Δy1+Δy2と、ドットの半径r1と半径r2の和との差分からドットの空隙の幅を取得する。
S1602において、ドット配置変更部108は、取得したドットの空隙の幅Δvに基づいて、ドットの組み合わせを変更する。但し、ドットの空隙の幅Δvが0以下である場合には、ドットの組み合わせを変更せずに処理をS1603に移行させる。
ドットの空隙の幅Δvが0より大きい場合、ドット配置変更部108は、図6(a)に示されるノズル特性から、各ドットのドット径を参照し、変更前のドット径と変更後のドット径との差分がΔvを超える組み合わせに変更する。
ここで、例えば、ノズルNo.Xのノズル特性とノズルNo.X+1のノズル特性を図18に示される値とし、また、ノズル列方向の印字解像度を600dpi、吐出目標位置間の距離Δyを25.4/600=42[μm]とする。
この場合、ノズルNo.Xに小ドット、ノズルNo.X+1にも小ドットを吐出したとすると、ドット間の空隙の幅は、図17(b)より42-(-6)+2-(19+21)=10μmと算出される。この算出した結果に基づいて、ドット配置変更部108は、ノズルNo.Xのドット特性に注目し、ノズルNo.Xのドットを、小ドットよりも10μm以上大きなドットである大ドットに変更する。或いは、ノズルNo.X+1のドット特性に注目し、ノズルNo.X+1のドットを、大ドットに変更してもよい。また、ノズルNo.X及びノズルNo.X+1の両ドットを中ドットに変更することで、ドット径の増加量の和が空隙の幅である10μmを超えるように変更してもよい。
図16に戻り、S1603において、ドット配置変更部108は、変更後のドットの組み合わせにおいてドット間の空隙があるか否かを判定する。具体的には、S805と同様に、ドット径と変位量に基づいてドットの接触を判定する。ドット配置変更部108は、ドットが接触すると判定すると(S1603 Yes)、処理をS808に移行させ、ドットが接触しないと判定すると(S1603 No)、処理をS1601に移行させる。
以上、説明したように、ドット径の増加量が少なくともドットの空隙の幅Δvを超えるようにドットの組み合わせを変更することで、ドット径を段階的に大きくするよりも少ないループ回数で空隙のないドットの組み合わせに変更することができる。
なお、上述のS1602の処理では、図18に示されるノズル特性(即ち、各々のノズルの大、中、小ドットの径及び変位)を用いて、ノズルの組み合わせを変更したが、ノズル特性として平均を用いてもよい。例えば、大ドットのノズル特性として、大ドットの径の平均及び変位の平均を算出し、それらを用いるようにしてもよい。また、S1602のドットの組み合わせを変更することによりドット間の空隙がなくなることが明らかな場合は、S1603の判定を省略してもよい。
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。