JP7351460B2 - イミノビピリジンコバルト錯体、及びイミノビピリジンコバルト錯体を利用したヒドロシリル化反応による有機ケイ素化合物の製造方法 - Google Patents

イミノビピリジンコバルト錯体、及びイミノビピリジンコバルト錯体を利用したヒドロシリル化反応による有機ケイ素化合物の製造方法 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 公開日:平成30年9月4日、第65回有機金属化学討論会予稿集p.106 公開日:平成30年9月20日、第65回有機金属化学討論会ポスター発表 公開日:平成30年9月26日、第8回CSJ化学フェスタ2018予稿集 (web)https://festa.csj.jp/program_list.php?enty=2018 公開日:平成30年10月25日、第8回CSJ化学フェスタ2018ポスター発表 公開日:平成31年3月1日、日本化学会第99春季年会2019講演予稿集(講演番号1D1-54) https://nenkai.csj.jp/Proceeding/index/year/2019 公開日:平成31年3月16日、日本化学会第99春季年会口頭発表(講演番号1D1-54) 公開日:平成31年3月1日、日本化学会第99春季年会2019講演予稿集(講演番号3C3-39) https://nenkai.csj.jp/Proceeding/index/year/2019 公開日:平成31年3月18日、日本化学会第99春季年会口頭発表(講演番号3C3-39)
本発明は、イミノビピリジンコバルト錯体、及びイミノビピリジンコバルト錯体を利用したヒドロシリル化反応による有機ケイ素化合物の製造方法に関する。
ヒドロシリル化反応は、有機シラン類を合成する有用な反応であり、白金触媒をはじめとする様々な金属触媒が報告されている。近年では、希少な白金触媒の代替触媒として、鉄触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒等の遷移金属触媒の開発が進められている。このような遷移金属触媒を用いた場合は、オレフィンのヒドロシリル化だけでなく、ケトンのヒドロシリル化反応が進行する可能性が高い。しかしながら、有機合成分野では、オレフィン基及びケト基の両方を有する化合物のヒドロシリル化において、どちらかの基だけを選択的にヒドロシリル化することが求められる場合がある。そのため、オレフィン選択的なヒドロシリル化触媒及びケトン選択的なヒドロシリル化触媒の開発が進められている。
オレフィン選択的なヒドロシリル化触媒としては、例えば特許文献1、非特許文献1及び2に鉄錯体、非特許文献3にコバルト錯体、並びに非特許文献4にニッケル錯体が記載されている。
また、ケトン選択的なヒドロシリル化触媒としては、例えば特許文献2、非特許文献5及び6に鉄触媒が記載されている。
国際公開第2016/208554号 特開2018-118925
D. Peng, et.al., J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 19154-19166 Mark D. Greenhalgh, et.al., Adv. Synth. Catal. 2014, 356, 584-590 Abdulrahman D. Ibrahim, et.al., ACS Catal. 2016, 6, 6, 3589-3593 Buslov I, et.al., Angew. Chem., Int. Ed. 2015, 54, 14523-14526 Dr. Jian Yang, et.al., Angew. Chem., Int. Ed. 2010, 49, 10186-10188 Aaron M. Tondreau, et.al., Org. Lett. 2008, 10, 13, 2789-2792
上述の通り、これまでに報告された触媒は、それぞれ、オレフィン及びケトンの何れかにのみ特異的に触媒活性を示す触媒であったため、ヒドロシリル化の対象に応じて別個の触媒を調製する必要がある。
そのため、触媒の種類ではなく、例えば反応条件を変えることにより、ケトン選択的なヒドロシリル化触媒及びケトン選択的なヒドロシリル化触媒の何れにもなり得る金属錯体の開発が望まれている。
従って、本発明の目的は、オレフィン化合物及びカルボニル化合物のヒドロシリル化反応の触媒として利用することのできる金属錯体を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記金属錯体を利用したヒドロシリル化反応により、種々の有機ケイ素化合物を製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、イミノビピリジン化合物を配位子とするコバルト錯体が、オレフィン化合物及びカルボニル化合物のヒドロシリル化反応において、触媒活性を示すことを見出した。また、ヒドロシリル化反応系内における塩基性有機溶媒の有無により、反応選択性をコントロールし得ることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]
式(A)で表される、イミノビピリジンコバルト錯体。
Figure 0007351460000001
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
[2]
ヒドロシラン化合物とオレフィン化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、
前記ヒドロシリル化工程が、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行われる、アルキルシラン化合物の製造方法。
Figure 0007351460000002
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族
炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
[3]
前記ヒドロシリル化工程が、式(I)で表されるヒドロシラン化合物と式(II)で表されるオレフィン化合物とを反応させて式(III)で表されるアルキルシラン化合物を得る工程である、[2]に記載のアルキルシランの製造方法。
Figure 0007351460000003
(式(I)~(III)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;nは、0~3の整数を表し;Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。)
[4]
前記ヒドロシリル化工程が、塩基性有機溶媒の非存在下で行われる、[2]又は[3]に記載のアルキルシラン化合物の製造方法。
[5]
ヒドロシラン化合物とカルボニル化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、
前記ヒドロシリル化工程が、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行われる、アルコキシシラン化合物の製造方法。
Figure 0007351460000004
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
[6]
前記ヒドロシリル化工程が、式(IV)で表されるヒドロシラン化合物と式(V)で表されるカルボニル化合物とを反応させて式(VI)で表されるアルコキシシラン化合物を得る工程である、[5]に記載のアルキルシランの製造方法。
Figure 0007351460000005
(式(IV)~(VI)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;mは、0~3の整数を表し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。)
[7]
前記ヒドロシリル化工程が塩基性有機溶媒の存在下で行われる、[5]又は[6]に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
[8]
前記塩基性有機溶媒がアミン溶媒である、[5]~[7]の何れかに記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
[9]
ヒドロシラン化合物とオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、
前記ヒドロシリル化工程が、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行わる、有機シラン化合物の製造方法。
Figure 0007351460000006
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
[10]
前記ヒドロシリル化工程が、塩基性有機溶媒の非存在下で行われ、式(VII)で表されるヒドロシラン化合物と式(VIII)で表されるオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させて式(IX)で表される有機シラン化合物を得る工程である、[9]に記載の有機シラン化合物の製造方法。
Figure 0007351460000007
(式(VII)~(IX)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;pは、0~3の整数を表し;R10は、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Yは、炭素数1~20の置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基を表す。)
[11]
及び/又はRが、電子供与基である、[10]に記載の有機シラン化合物の製造方法。
[12]
前記ヒドロシリル化工程が、塩基性有機溶媒の存在下で行われ、式(VII)で表されるヒドロシラン化合物と式(VIII)で表されるオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させて式(X)で表される有機シラン化合物を得る工程である、[9]に記載の有機シラン化合物の製造方法。
Figure 0007351460000008
(式(VII)、(VIII)、(X)中、R、p、R10及びYは、それぞれ、式(VII)~(IX)中のR、p、R10及びYと同一である。)
[13]
前記塩基性有機溶媒がアミン溶媒である、[12]に記載の有機シラン化合物の製造方法。
[14]
及び/又はRが、電子吸引基である、請求項[12]又は[13]に記載の有機シラン化合物の製造方法。
本発明によれば、オレフィン化合物及びカルボニル化合物のヒドロシリル化反応の触媒として利用することのできるコバルト錯体を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるコバルト錯体を利用したヒドロシリル化反応により、種々の有機ケイ素化合物を製造する方法を提供することができる。
本発明の詳細を説明するにあたり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
<1-1.イミノビピリジンコバルト錯体>
本発明の第1の実施態様に係るイミノビピリジンコバルト錯体は、式(A)で表される。
Figure 0007351460000009
(R、R
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
、Rで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
、Rで表される炭素数1~6の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
、Rで表される炭素数6~10の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
、Rで表される炭素数1~6の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;等が挙げられる。
なお、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
1分子中に4つあるRは、それぞれ独立に存在して環状構造を形成していなくてもよいが、隣接する2つのRが互いに連結して環状構造を形成してもよい。
1分子中に3つあるRは、それぞれ独立に存在して環状構造を形成していなくてもよいが、隣接する2つのRが互いに連結して環状構造を形成してもよい。
また、隣接するRとRとは、それぞれ独立に存在して環状構造を形成していなくてもよいが、互いに連結して環状構造を形成してもよい。
即ち、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体(以下、「イミノビピリジンコバルト錯体(A)」ということがある)は、例えば式(a1)~(a12)で表される態様を含む。
Figure 0007351460000010
(R
は、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素
数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
で表される炭素数1~10の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル、n-デシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
で表される炭素数6~10の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~10の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル等の炭素数1~4のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数3~4のシクロアルキル基;等が挙げられる。
なお、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
(R
は、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
で表される炭素数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル、n-デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
で表される炭素数6~20の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6のシクロアルキル基;等が挙げられる。
なお、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
(X)
Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表す。
Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
Xで表される炭素数2~8のアシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、sec-ブタノイルオキシ基、イソブタノイルオキシ基、tert-ブタノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、イソペンタノイルオキシ基、ネオペンタノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、2-エチルヘキサノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
イミノビピリジンコバルト錯体(A)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
なお、式中、i-Prはイソプロピル基を表し、OAcはアセチルオキシ基を表し、OPivはピバロイルオキシ基を表す。
Figure 0007351460000011
<1-2.イミノビピリジンコバルト錯体の製造方法>
第1の実施態様に係るイミノビピリジンコバルト錯体の製造方法は、特に限定されず、公知の有機合成方法を適宜組み合わせて製造することができる。
(配位子合成工程)
イミノビピリジンコバルト錯体の配位子であるイミノビピリジン化合物(以下、「イミ
ノビピリジン配位子」ということがある)は、例えば、下記合成スキームによって合成することができる。これらの合成スキームにおいて、原料化合物は、公知であるか、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
Figure 0007351460000012
Figure 0007351460000013
なお、かかる合成スキームの具体的な反応条件等は、Robin G. Hicks, et al., Org. Lett. 2004, 6, 12, 1887-1890;Guido Verniest, et al., J. Org. Chem. 2010, 75, 2, 424-433; Ulrich S. Schubert, et al., Org. Lett. 2000, 2, 21, 3373-3376; Yohan D. M. Champouret, et al., New J. Chem. 2007, 31, 75-85; M.B. Diaz-Valenzuela, et al., Chem. Eur. J. 2009, 15, 1227-1232; Claudine Rangheard et al., Dalton Trans. 2009, 770-772; Dai X, et al., Adv. Synth. Catal. 2014, 356 ,1317-1328; 国際公開第2016/208554号;を参考にすることができる。
(イミノビピリジンコバルト錯体の合成)
イミノビピリジン配位子からイミノビピリジンコバルト錯体を合成する方法は、特に限定されないが、通常、イミノビピリジン配位子とCoX(Xは、式(A)におけるXと同一である)で表されるコバルト塩を反応させる方法が採用される。CoXは、無水物であってよく、水和物であってもよいが、無水和物であることが好ましい。
なお、このような錯形成反応において、CoXは、公知であるか、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
具体的操作としては、例えば、以下の操作を挙げることができる。
まず、イミノビピリジン配位とコバルト塩とを反応溶媒中で反応させる。錯体合成反応
後の反応液には、生成したイミノビピリジンコバルト錯体が析出する。続いて、この反応液を固液分離し、必要に応じて得られた固形分を順次洗浄、乾燥することにより、イミノビピリジンコバルト錯体を製造することができる。
錯体合成反応におけるイミノビピリジン配位子及びコバルト塩の量は、特に限定されないが、イミノビピリジン配位子に対するコバルト塩の量は、通常1.0モル当量以上、好ましくは1.5モル当量以上であり、また、通常3.0モル当量以下であり、好ましくは2.0モル当量以下である。
錯体合成反応の反応溶媒としては、不活性溶媒を使用することができる。不活性溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;等が挙げられる。
錯体合成反応の反応温度は、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。
また、錯体合成反応の反応時間は、反応温度にもよるが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは8時間以上、また、通常48時間以下、好ましくは36時間以下、より好ましくは24時間以下である。
反応液の固液分離の手法としては、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の公知の手法を適宜採用することができる。
反応液の固液分離により得た固形分、即ちイミノビピリジンコバルト錯体は、必要に応じてさらに洗浄、乾燥等により精製を行ってもよい。また、洗浄、乾燥等の工程は、各複数回行ってもよい。
洗浄は、例えば、ろ過等により固液分離して得た固形分に洗浄液をかけ流すことで行うことができる。また、固形分を洗浄液とともに攪拌した後、固液分離することで行うことができ、これら二種以上の操作を組み合わせて行ってもよい。
洗浄液としては、イミノビピリジンコバルト錯体の溶解度が低いか、又はイミノビピリジンコバルト錯体を溶解しない溶媒が好ましく、不純物の溶解度の高い溶媒がなお好ましい。具体的な洗浄液としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素;等が挙げられる。これらの洗浄液は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
乾燥は、イミノビピリジンコバルト錯体を分解させることなく溶媒等の揮発性不純物を除去できる限り特に限定されず、減圧乾燥のような公知の方法により行うことができる。
<2-1.アルキルシシラン化合物の製造方法>
本発明の第2の実施態様に係るアルキルシラン化合物の製造方法は、ヒドロシラン化合物とオレフィン化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、前記ヒドロシリル化工程は、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行われる。
Figure 0007351460000014
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
<2-2.イミノビピリジンコバルト錯体>
オレフィン化合物のヒドロシリル化工程は、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体の存在下で行われる。
Figure 0007351460000015
本実施態様において、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体は、第1の実施態様に係るイミノビピリジンコバルト錯体(A)と同一の錯体であり、R~R及びXがとり得る態様も同様である。
オレフィン化合物のヒドロシリル化工程において、イミノビピリジンコバルト錯体(A)は、触媒として機能する。
以下、本実施態様おけるイミノビピリジンコバルト錯体(A)の好ましい態様について説明する。
及びRとしては、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
としては、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が好ましい。これらの中でも、反応速度及び収率が向上する点で、電子供与基が好ましい。電子供与性の炭素数1~10の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基又はtert-ブチル基が好ましく、メチル基又はブチル基が
より好ましく、メチル基がさらに好ましい。
としては、反応速度及び収率が向上する点で、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が好ましい。これらの中でも、電子供与基が好ましい。電子供与性の炭素数1~20の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。電子供与性の炭素数6~20の置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基又は2,6-ジイソプロピルフェニル基が好ましく、2,4,6-トリメチルフェニル基又は2,6-ジイソプロピルフェニル基がより好ましく、2,4,6-トリメチルフェニル基がさらに好ましい。
このように、R及び/又はRは、電子供与基であることが好ましい。これは、R及び/又はRが電子供与基の場合、<2-8.反応機構>の項目で説明するように、オ
レフィン化合物のヒドロシリル化反応の触媒サイクルにおいて、コバルト錯体の中心金属の電子密度が増加し、触媒サイクル中の反応中間体が安定化することで、触媒反応が促進されると考えられるからである。
Xとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アセチルオキシ基又はピバロイルオキシ基が好ましく塩素原子、臭素原子、アセチルオキシ基又はピバロイルオキシ基がより好ましく、臭素原子がさらに好ましい。また、一分子中に2つ存在するXは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
<2-3.還元剤>
オレフィン化合物のヒドロシリル化工程は、イミノビピリジンコバルト錯体(A)に加え、還元剤の存在下で行われる。還元剤は、イミノビピリジンコバルト錯体(A)に作用し、反応系内でオレフィン化合物のヒドロシリル化反応における触媒活性種である0価のコバルト錯体を発生させることができる限り、特に限定されない。
還元剤としては、ヒドリド還元剤が好ましい。ヒドリド還元剤としては、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBHEt)、水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaBHEt)、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec-Bu))、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素ナトリウム(NaBH(sec-Bu))、水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム(KBH(sec-Bu))等の水素化ホウ素化合物;水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(NaAlH(OCOCH)等の水素化アルミニウム化合物;等が挙げられる。これらの中でも、水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaBHEt)が好ましい。
他の還元剤として、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム等のアルキルリチウム試薬なども使用可能である。
<2-4.ヒドロシラン化合物>
本実施態様に係るアルキルシラン化合物の製造方法において、オレフィン化合物のヒドロシリル化に用いるヒドロシラン化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的であるアルキルシラン化合物に応じて適宜選択することができる。また、ヒドロシラン化合物は、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
本実施態様において、ヒドロシラン化合物は、式(I)で表されるヒドロシラン化合物(以下、「ヒドロシラン化合物(I)」ということがある)であることが好ましい。
Figure 0007351460000016
(R
は、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
で表される炭素数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル、n-デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
で表される炭素数6~20の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルキルオキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~6のシクロアルキルオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等の炭素数1~6のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等の炭素数3~6のシクロアルキルチオ基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基等のアリールオキシ基;フェニルチオ基、トリルチオ基等のアリールチオ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基;ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアリールアルキルチオ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリアルキルシリル基;等が挙げられる。
なお、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
(n)
nは、0~3の整数を表す。
ヒドロシラン化合物(I)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
Figure 0007351460000017
以下、本実施態様おけるヒドロシラン化合物(I)の好ましい態様について説明する。
が、炭素数1~20の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
が、炭素数6~20の置換又は無置換の芳香族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
より具体的には、Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基又はフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
nは、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。即ち、ヒドロシラン化合物(I)は、1級ヒドロシラン又は2級ヒドロシランであることが好ましく、2級ヒドロシランであることがより好ましい。
<2-5.オレフィン化合物>
本実施態様に係るアルキルシラン化合物の製造方法において、オレフィン化合物のヒドロシリル化に用いるオレフィン化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的であるアルキルシラン化合物に応じて適宜選択することができる。また、オレフィン化合物は、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
本実施態様において、オレフィン化合物は、式(II)で表されるオレフィン化合物(以下、「オレフィン化合物(II)」ということがある)であることが好ましい。
Figure 0007351460000018
(R
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
で表される炭素数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル、n-デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
で表される炭素数6~20の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルキルオキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~6のシクロアルキルオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等の炭素数1~6のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等の炭素数3~6のシクロアルキルチオ基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基等のアリールオキシ基;フェニルチオ基、トリルチオ基等のアリールチオ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基;ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアリールアルキルチオ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリアルキルシリル基;等が挙げられる。
なお、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
オレフィン化合物(II)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
Figure 0007351460000019
以下、本実施態様おけるオレフィン化合物(II)の好ましい態様について説明する。
が、炭素数1~20の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
が、炭素数6~20の置換又は無置換の芳香族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
より具体的には、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基又はフェニル基が好ましく、水素原子又はフェニル基がより好ましい。
特に好ましいオレフィン化合物(II)としては、スチレンが挙げられる。
<2-6.アルキルシラン化合物>
本実施態様に係る製造方法において製造されるアルキルシラン化合物は、ヒドロシラン化合物のケイ素原子にオレフィン化合物由来のアルキル基が結合した化合物であれば、具体的な構造は特に限定されない。
本実施態様において製造される代表的なアルキルシラン化合物としては、下記式(III)、式(III’)、式(III’’)及び式(III’’’)で表されるような、オレフィン化合物の逆マルコフニコフ型のヒドロシリル化生成物が挙げられる。
Figure 0007351460000020
式(III)~(III’’)中、Rは式(I)におけるRと同一であり、好ましい態様も同様である。
式(III)中、nは0~3の整数を表し、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(III’)中、nは0~2の整数を表し、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(III’’)中、nは0又は1の整数を表し、1であることが好ましい。
式(III)~(III’’’)中、Rは式(II)におけるRと同一であり、好ましい態様も同様である。
式(III)~(III’’’)で表されるアルキルシラン化合物のうち、好ましい態様は、式(III)で表されるアルキルシラン化合物(以下、「アルキルシラン化合物(III)」ということがある)である。即ち、本実施態様に係る製造方法では、ヒドロシ
ラン化合物とオレフィン化合物とが1:1(モル比)で反応して得られるアルキルシラン化合物を選択的に製造することが好ましい。
<2-7.好適な反応スキーム>
以上を総合すると、第2の実施態様に係るアルキルシラン化合物の製造方法におけるヒドロシリル化の好適な反応スキームは、下記の通りである。
Figure 0007351460000021
<2-8.反応機構>
オレフィン化合物のヒドロシリル化反応の反応機構は明らかではないが、本発明者等は、Chalk-Harrod機構により触媒サイクルが進行すると推測する。
即ち、まず、イミノビピリジンコバルト錯体(A)が還元剤により還元され、触媒活性種である0価のコバルト錯体となる。続いて、ヒドロシラン化合物の酸化的付加、オレフィン化合物の配位、オレフィン化合物のコバルト-ヒドリド結合への挿入及び還元的脱離を経て0価のコバルトが再生される触媒サイクルが進行すると推測する。
さらに、触媒サイクル中、コバルト錯体にオレフィン化合物が配位したπ錯体において、中心金属であるコバルトの電子密度が高いため、コバルトはオレフィン化合物の二重結合を形成する2つの炭素とともに三員環構造を形成し、前記π錯体は、該三員環構造との共鳴により安定化すると考えられる。そのため、触媒サイクルにおけるオレフィン化合物の配位が速やかに進行し、触媒反応が促進されると考えられる。
そして、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のR及びRを電子供与基とすると、π錯体のコバルトの電子密度はより高まり、三員環構造が形成され易くなるため、π錯体が安定化して触媒反応が一層促進されると考えられる。
本実施態様におけるヒドロシリル化反応の触媒サイクルを以下に示す。なお、下記触媒サイクル中、ヒドロシラン化合物をヒドロシラン化合物(I)、オレフィン化合物をオレフィン化合物(II)とした。
Figure 0007351460000022
<2-9.オレフィン化合物のヒドロシリル化の反応条件>
(イミノビピリジンコバルト錯体(A)の量)
オレフィン化合物のヒドロシリル化に用いるイミノビピリジンコバルト錯体(A)の量は、特に限定されないが、ヒドロシラン化合物に対してコバルト元素の物質量換算で通常0.01mol%以上、好ましくは0.05mol%以上、また、通常5.0mol%以
下、好ましくは3.0mol%以下、より好ましくは1.0mol%以下、さらに好ましく
は0.5mol%以下である。
イミノビピリジンコバルト錯体(A)の量が上記範囲内であると、反応速度が向上し、副生成物の発生が抑制され、生成物の精製も容易となる。
(還元剤の量)
オレフィン化合物のヒドロシリル化に用いる還元剤の量は、イミノビピリジンコバルト錯体の種類、反応温度等の反応条件にもよるが、ヒドロシラン化合物に対して通常0.5mol%以上10mol%以下である。
また、イミノビピリジンコバルト錯体(A)に対して通常2モル当量以上、好ましくは3モル当量以上、より好ましくは5モル当量以上であり、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは12モル当量以下である。
還元剤の量が上記範囲内であると、反応速度が向上し、副生成物の発生が抑制され、生成物の精製も容易となる。
(基質のモル比)
オレフィン化合物のヒドロシリル化において、ヒドロシラン化合物及びオレフィン化合物の量は、特に限定されないが、オレフィン化合物に対して、ヒドロシラン化合物の量は、通常1.0モル当量以上、好ましくは1.5モル当量以上であり、また、通常4.0モル当量以下であり、好ましくは3.0モル当量以下であり、より好ましくは2.5モル当量以下である。
基質の量が上記範囲内であると、アルキルシラン化合物(III)を選択的に製造し易くなり、生成物の精製も容易となる。
(反応溶媒)
オレフィン化合物のヒドロシリル化は、無溶媒で行うことが好ましいが、反応溶媒中で行ってもよい。
反応溶媒としては、反応に関与せず、ヒドロシラン化合物及びオレフィン化合物が溶解し得る限り、特に限定されない。なお、「反応に関与しない」とは、例えば触媒に配位してオレフィン化合物のヒドロシリル化反応を阻害したり、イミノビピリジンコバルト錯体(A)の脱金属を引き起こしたりするなど、触媒反応を阻害する反応溶媒を除く意味である。
具体的な反応溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらの反応溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
なお、反応溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
オレフィン化合物のヒドロシリル化は、塩基性有機溶媒の非存在下で行われることが好ましい。塩基性有機溶媒が触媒反応を抑制し、反応速度の低下、副反応の進行、収率の低下等を招くからである。
塩基性有機溶媒が触媒反応を抑制する理由は、明らかではないが、発明者等は、次のように推測する。即ち、上述した触媒サイクルにおいて、塩基性有機溶媒が触媒活性種である0価のコバルト錯体に配位した錯体が形成され、コバルトに配位した塩基性有機溶媒によって、オレフィン化合物のコバルト錯体への配位が阻害されるためであると推測している。
ここで、「塩基性有機溶媒の非存在下」とは、実質的に塩基性有機溶媒が反応系内に存在していないことを意味する。具体的には、ヒドロシリル化工程における反応系内の塩基性有機溶媒の量が、0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは
0.001質量%以下の場合をいう。
塩基性有機溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、テトラメチル尿素等のアミド溶媒;トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、2-メチルピリジン、ピコリン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピペリジン、ピロール、ピロリジン、N-メチルピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン等のアミン溶媒;等が挙げられる。
(反応温度)
反応温度は、イミノビピリジンコバルト錯体の種類、反応温度等の反応条件にもよるが、基質の種類、反応溶媒の種類等に応じて適宜選択すればよく、通常-20℃以上100℃以下である。反応温度の下限は、反応速度及びアルキルシラン化合物の収率が向上する点で、-10℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましい。また、反応温度の上限は、アルキルシラン化合物(III)が選択的に得られる点で、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
(反応時間)
反応時間は、イミノビピリジンコバルト錯体の種類、反応温度等の反応条件にもよるが、通常1時間以上48時間以下である。アルキルシラン化合物の収率向上及び副反応抑制の観点から、反応時間の下限は、好ましくは3時間以上、より好ましくは10時間以上、さらに好ましくは20時間以上である。また、生成物の精製が容易となる点で、反応時間の上限は、好ましくは40時間以下、より好ましくは30時間以下である。
(雰囲気ガス等)
オレフィン化合物のヒドロシリル化工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。また、オレフィン化合物のヒドロシリル化工程は、厳密な禁水条件は必要としないが、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
<2-10.その他工程>
本実施態様に係るアルキルシラン化合物の製造方法においては、上記ヒドロシリル化工程に他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、アルキルシラン化合物の純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程においては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
<3-1.アルコキシシラン化合物の製造方法>
本発明の第3の実施態様に係るアルコキシシラン化合物の製造方法は、ヒドロシラン化合物とカルボニル化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、前記ヒドロシリル化工程は、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行われる。
Figure 0007351460000023
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
<3-2.イミノビピリジンコバルト錯体>
カルボニル化合物のヒドロシリル化工程は、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体の存在下で行われる。
Figure 0007351460000024
本実施態様において、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体は、第1の実施態様に係るイミノビピリジンコバルト錯体(A)と同一の錯体であり、R~R及びXがとり得る態様も同様である。
カルボニル化合物のヒドロシリル化工程において、イミノビピリジンコバルト錯体(A)は、触媒として機能する。
以下、本実施態様おけるイミノビピリジンコバルト錯体(A)の好ましい態様について説明する。
及びRとしては、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
としては、水素原子又は炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基が好ましい。これらの中でも、反応速度及び収率が向上する点で、水素原子又は電子吸引基が好ましい。電子吸引性の炭素数1~10の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~10のハロゲン置換脂肪族炭化水素基、具体的にはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基又はノナフルオロ-n-ブ
チル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
としては、水素原子又は炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、反応速度及び収率が向上する点で、炭素数1~20のハロゲン置換脂肪族炭化水素基のような電子吸引基が好ましい。炭素数1~20のハロゲン置換された脂肪族炭化水素基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ-n-プロピル基又はノナフルオロ-n-ブチル基が好ましい。
このように、R及び/又はRは、電子吸引基であることが好ましい。とりわけ、Rが電子吸引基であることが好ましい。これは、R及び/又はRが電子吸引基の場合、<3-8.反応機構>の項目で説明する触媒サイクルにおいて、律速段階である生成物
の還元的脱離が促進される結果、ヒドロシリル化反応が促進されると考えられるからである。
Xとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アセチルオキシ基又はピバロイルオキシ基が好ましく、塩素原子、臭素原子、アセチルオキシ基又はピバロイルオキシ基がより好ましく、臭素原子がさらに好ましい。また、一分子中に2つ存在するXは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
<3-3.還元剤>
カルボニル化合物のヒドロシリル化工程は、イミノビピリジンコバルト錯体(A)に加え、還元剤の存在下で行われる。還元剤は、2価のイミノビピリジンコバルト錯体(A)に作用し、反応系内でカルボニル化合物のヒドロシリル化反応における触媒活性種である0価のコバルト錯体を発生させることができる限り、特に限定されない。
還元剤としては、第2の実施態様におけるヒドロシリル化工程で使用される還元剤と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
<3-4.ヒドロシラン化合物>
本実施態様に係るアルコキシシラン化合物の製造方法において、カルボニル化合物のヒドロシリル化に用いるヒドロシラン化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的であるアルコキシシラン化合物に応じて適宜選択することができる。また、ヒドロシラン化合物は、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
本実施態様において、ヒドロシラン化合物は、式(IV)で表される化合物(以下、「ヒドロシラン化合物(IV)」ということがある)であることが好ましい。
Figure 0007351460000025
ヒドロシラン化合物(IV)としては、第2の実施態様におけるヒドロシラン化合物(I)と同一の化合物が挙げられる。即ち、ヒドロシラン化合物(IV)のRとしては、ヒドロシラン化合物(I)のRと同一の基が挙げられ、ヒドロシラン化合物(IV)のmとしては、ヒドロシラン化合物(I)のnと同一の整数が挙げられる。
以下、本実施態様おけるヒドロシラン化合物(IV)の好ましい態様について説明する。
が、炭素数1~20の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
が、炭素数6~20の置換又は無置換の芳香族炭化水素基である場合の炭素数は、
好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
より具体的には、Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基又はフェニル基が好ましく、水素原子又はフェニル基がより好ましい。
mは、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。即ち、ヒドロシラン化合物(IV)は、1級ヒドロシラン又は2級ヒドロシランであることが好ましく、2級ヒドロシランであることがより好ましい。
<3-5.カルボニル化合物>
本実施態様に係るアルコキシシラン化合物の製造方法において、カルボニル化合物のヒドロシリル化に用いるカルボニル化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的であるアルコキシシラン化合物に応じて適宜選択することができる。また、カルボニル化合物は、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
本実施態様において、カルボニル化合物は、式(V)で表される化合物(以下、「カルボニル化合物(V)」ということがある)であることが好ましい。
Figure 0007351460000026
(R
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
で表される炭素数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル、n-デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等のシクロアルキル基;等が挙げられる。
で表される炭素数6~20の無置換の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、重水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~6のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、iso-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルキルオキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3~6のシクロアルキルオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、イソブチルチオ
基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等の炭素数1~6のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等の炭素数3~6のシクロアルキルチオ基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基等のアリールオキシ基;フェニルチオ基、トリルチオ基等のアリールチオ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアリールアルキルオキシ基;ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアリールアルキルチオ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリアルキルシリル基;等が挙げられる。
なお、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
カルボニル化合物(V)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
Figure 0007351460000027
以下、本実施態様おけるカルボニル化合物(V)の好ましい態様について説明する。
が、炭素数1~20の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
が、炭素数6~20の置換又は無置換の芳香族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
より具体的には、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基又はフェニル基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。また、一分子中に2つ存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。
特に好ましいカルボニル化合物(V)としては、アセトフェノンが挙げられる。
<3-6.アルコキシシラン化合物>
本実施態様に係る製造方法において製造されるアルコキシシラン化合物は、ヒドロシラン化合物のケイ素原子にカルボニル化合物由来のアルコキシ基が結合した化合物であれば、具体的な構造は特に限定されない。
アルコキシシラン化合物としては、下記式(VI)、式(VI’)、式(VI’’)及び式(VI’’’)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007351460000028
式(VI)~(VI’’’)中、Rは式(IV)におけるRと同一の基を表し、好ましい態様も同様である。
式(VI)中、mは0~3の整数を表し、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(VI’)中、mは0~2の整数を表し、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(VI’’)中、mは0又は1の整数を表し、1であることが好ましい。
式(VI)~(VI’’’)中、Rは式(V)におけるRと同一の基を表し、好ましい態様も同様である。
式(VI)~(VI’’’)で表されるアルコキシシラン化合物のうち、好ましい態様は、式(VI)で表されるアルコキシ化合物(以下、「アルコキシシラン化合物(VI)」ということがある)である。即ち、本実施態様に係る製造方法では、ヒドロシラン化合物とカルボニル化合物とが1:1(モル比)で反応して得られるアルコキシシラン化合物を選択的に製造することが好ましい。
<3-7.好適な反応スキーム>
以上を総合すると、第3の実施態様に係るアルコキシシラン化合物の製造方法におけるヒドロシリル化の好適な反応スキームは、下記の通りである。
Figure 0007351460000029
<3-8.反応機構>
カルボニル化合物のヒドロシリル化の反応機構は明らかではないが、本発明者等は、下記の触媒サイクルが進行すると推測する。
即ち、まず、イミノビピリジンコバルト錯体(A)が還元剤により還元され、触媒活性種である0価のコバルト錯体となる。続いて、ヒドロシラン化合物の酸化的付加、カルボ
ニル化合物の配位、カルボニル化合物のコバルト-ヒドリド結合への挿入及び還元的脱離を経て0価のコバルトが再生される触媒サイクルが進行すると推測する。
そして、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のR及びRを電子吸引基とすると、律速段階である生成物の還元的脱離が促進され、ひいては触媒反応が一層促進されると考えられる。
本実施態様におけるヒドロシリル化反応の触媒サイクルを以下に示す。なお、下記触媒サイクル中、ヒドロシラン化合物をヒドロシラン化合物(IV)、カルボニル化合物をカルボニル化合物(V)とした。
Figure 0007351460000030
ここで、反応系内に塩基性有機溶媒を加えると、第2の実施態様におけるオレフィン化合物のヒドロシリル化反応と同様に、触媒サイクル中、塩基性有機溶媒が触媒活性種である0価のコバルト錯体に配位し、配位した塩基性有機溶媒が、カルボニル化合物のコバルト錯体への配位を阻害すると推測される。しかし、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応においては、塩基性有機溶媒は、カルボニル化合物の挿入により生じるコバルト錯体に
配位して、律速段階である生成物の還元的脱離を促進するため、触媒反応を促進すると考えられる。
<3-9.カルボニル化合物のヒドロシリル化の反応条件>
(イミノビピリジンコバルト錯体(A)の量)
カルボニル化合物のヒドロシリル化に用いるイミノビピリジンコバルト錯体(A)の量は、特に限定されないが、ヒドロシラン化合物(IV)に対してコバルト元素の物質量換算で通常0.01mol%以上、好ましくは0.05mol%以上、また、通常5.0m
ol%以下、好ましくは3.0mol%以下、より好ましくは1.0mol%以下、さらに好ましくは0.5mol%以下である。
イミノビピリジンコバルト錯体(A)の量が上記範囲内であると、反応速度が向上し、副生成物の発生が抑制され、生成物の精製も容易となる。
(還元剤の量)
カルボニル化合物のヒドロシリル化に用いる還元剤の量は、イミノビピリジンコバルト錯体の種類、反応温度等の反応条件にもよるが、ヒドロシラン化合物に対して通常0.5mol%以上10mol%以下である。
また、イミノビピリジンコバルト錯体(A)に対して通常2モル当量以上、好ましくは3モル当量以上、より好ましくは5モル当量以上であり、通常20モル当量以下、好ましくは15モル当量以下、より好ましくは12モル当量以下である。
還元剤の量が上記範囲内であると、反応速度が向上し、副生成物の発生が抑制され、生成物の精製も容易となる。
(基質のモル比)
カルボニル化合物のヒドロシリル化において、ヒドロシラン化合物及びカルボニル化合物の量は、特に限定されないが、カルボニル化合物に対して、ヒドロシラン化合物の量は、通常1.0モル当量以上、好ましくは1.5モル当量以上であり、また、通常4.0モル当量以下であり、好ましくは3.0モル当量以下であり、より好ましくは2.5モル当量以下である。
基質の量が上記範囲内であると、アルコキシシラン化合物(VI)を選択的に製造し易くなり、生成物の精製も容易となる。
(反応溶媒)
カルボニル化合物のヒドロシリル化は、無溶媒で行ってもよく、反応溶媒中で行ってもよい。反応溶媒としては、塩基性有機溶媒が特に好ましい。塩基性有機溶媒は、上述したように、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応の触媒サイクルにおいて、律速段階である生成物の還元的脱離を促進し、反応速度及び収率の向上を実現し得るからである。
塩基性有機溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルプロピレン尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、テトラメチル尿素等のアミド溶媒;トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピペリジン、ピロール、ピロリジン、N-メチルピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン等のアミン溶媒;等が挙げられる。
なお、塩基性有機溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
カルボニル化合物のヒドロシリル化に用いる塩基性有機溶媒の量は、特に限定されないが、ヒドロシラン化合物に対して、通常1.0モル当量以上、好ましくは1.5モル当量、より好ましくは2.0モル当量、また、通常5.0モル当量以下、好ましくは4.0モ
ル当量以下、より好ましくは3.0モル当量以下である。
塩基性有機溶媒の量を上記範囲内とすることで、反応速度及び収率を実現しつつ、生成物の精製を容易に行うことができる。
カルボニル化合物のヒドロシリル化工程は、塩基性有機溶媒とともに、又は塩基性有機溶媒に代えて、その他の溶媒を使用することもできるが、反応速度及び収率の観点からは、その他の反応溶媒を使用しないことが好ましい。
その他の反応溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらの反応溶媒は、1種類に限られず、2種類以上を組み合わせた混合溶媒であってもよい。
なお、その他の反応溶媒は、脱水脱酸素化して用いることが好ましい。
(反応温度)
反応温度は、イミノビピリジンコバルト錯体の種類、反応温度等の反応条件にもよるが、基質の種類、反応溶媒の種類等に応じて適宜選択すればよく、通常-20℃以上100℃以下である。反応温度の下限は、反応速度及びアルコキシシラン化合物の収率が向上する点で、0℃以上が好ましい。また、反応温度の上限は、アルコキシシラン化合物(VI)が選択的に得られる点で、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
(反応時間)
反応時間は、イミノビピリジンコバルト錯体の種類、反応温度等の反応条件にもよるが、通常1時間以上48時間以下である。アルコキシシラン化合物の収率向上及び副反応抑制の観点から、反応時間の下限は、好ましくは3時間以上、より好ましくは10時間以上、さらに好ましくは20時間以上である。また、生成物の精製が容易となる点で、反応時間の上限は、好ましくは40時間以下、より好ましくは30時間以下である。
(雰囲気ガス等)
カルボニル化合物のヒドロシリル化工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。また、カルボニル化合物のヒドロシリル化工程は、厳密な禁水条件は必要としないが、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
<3-10.その他工程>
本実施態様に係るアルコキシシラン化合物の製造方法においては、上記ヒドロシリル化工程に他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、アルコキシシラン化合物の純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程においては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
<4-1.有機シラン化合物の製造方法>
本発明の第4の実施態様に係る有機シラン化合物の製造方法は、ヒドロシラン化合物とオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、前記ヒドロシリル化工程は、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行われる。
Figure 0007351460000031

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
<4-2.イミノビピリジンコバルト錯体>
オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化工程は、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体の存在下で行われる。
Figure 0007351460000032
本実施態様において、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体は、第1の実施態様に係るイミノビピリジンコバルト錯体(A)と同一の錯体であり、R~R及びXがとり得る態様も同様である。
オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化工程において、イミノビピリジンコバルト錯体(A)は、触媒として機能する。
以下、本実施態様におけるイミノビピリジンコバルト錯体(A)の好ましい態様について説明する。
後述するように、本実施態様におけるヒドロシリル化は、オレフィン選択的又はカルボニル選択的なヒドロシリル化であることが好ましい。そして、R~R及びXの好ましい態様は、ヒドロシリル化の対象とする官能基によって異なる。
オレフィン選択的なヒドロシリル化を行う場合、R~R及びXの好ましい態様は、第2の実施態様におけるイミノビピリジンコバルト錯体(A)のR~R及びXの好ま
しい態様と同様である。かかる態様により、オレフィン選択性を向上させることができるからである。
また、カルボニル選択的なヒドロシリル化を行う場合、R~R及びXの好ましい態様は、第3の実施態様におけるイミノビピリジンコバルト錯体(A)のR~R及びXの好ましい態様と同様である。かかる態様により、カルボニル選択性を向上させることができるからである。
<4-3.還元剤>
オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化工程は、イミノビピリジンコバルト錯体(A)に加え、還元剤の存在下で行われる。還元剤は、2価のイミノビピリジンコバルト錯体(A)に作用し、反応系内でカルボニル化合物のヒドロシリル化反応における触媒活性種である0価のコバルト錯体を発生させることができる限り、特に限定されない。
還元剤としては、第2の実施態様におけるヒドロシリル化工程で使用される還元剤と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
<4-4.ヒドロシラン化合物>
本実施態様に係るアルコキシシラン化合物の製造方法において、カルボニル化合物のヒドロシリル化に用いるヒドロシラン化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的であるアルコキシシラン化合物に応じて適宜選択することができる。また、ヒドロシラン化合物は、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
本実施態様において、ヒドロシラン化合物は、式(VII)で表される化合物(以下、「ヒドロシラン化合物(VII)」ということがある)であることが好ましい。
Figure 0007351460000033
ヒドロシラン化合物(VII)としては、第2の実施態様におけるヒドロシラン化合物(I)と同一の化合物が挙げられる。即ち、ヒドロシラン化合物(VII)のRは、ヒドロシラン化合物(I)のRと同一の基であり、好ましい態様も同様である。また、ヒドロシラン化合物(VII)のpは、ヒドロシラン化合物(I)のnと同一の整数であり、好ましい態様も同様である。
<4-5.オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物>
本実施態様に係る有機シラン化合物の製造方法において、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化に用いるオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物の具体的種類は特に限定されず、製造目的である有機シラン化合物に応じて適宜選択することができる。また、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物は、公知の製造方法又は公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
本実施態様において、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物は、式(VIII)で表されるオレフィン化合物(以下、「化合物(VIII)」ということがある)であることが好ましい。
Figure 0007351460000034
(R10
10は、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。
10で表される炭素数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の無置換の芳香族炭化水素基としては、第3の実施態様におけるカルボニル化合物のRで表されると炭素数1~20の無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の無置換の芳香族炭化水素基と同様の基が挙げられる。
10で表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、第3の実施態様におけるカルボニル化合物のRで表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の芳香族炭化水素基の置換基と同様の置換基が挙げられる。
(Y)
Yは、炭素数1~20の置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基を表す。
Yで表される炭素数1~20の置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭化水素から水素原子を2個取り除いてできる2価基である。無置換の脂肪族炭化水素としては、メタン、エタン、n-プロパン、n-ブタン、2-メチルプロパン、n-ペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカン等のアルカン;シクロペンタン、シクロヘキサン、1-アダマンタン、2-アダマンタン等のシクロアルカン;等が挙げられる。具体的な2価の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチレン、エチレン、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、2-メチルプロパン-1,3-ジイル、ペンタン-1,5-ジイル、2-メチルブタン-1,4-ジイル、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル、ヘキサン-1,6-ジイル、ヘプタン-1,7-ジイル、オクタン-1,8-ジイル、ノナン-1,9-ジイル、デカン-1,10-ジイル、ドデカン-1,12-ジイル、テトラデカン-1,14-ジイル、ヘキサデカン-1,16-ジイル、オクタデカン-1,18-ジイル等のアルカンジイル;シクロペンタン-1,2-ジイル、シクロペンタン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,2-ジイル、シクロヘキサン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、アダマンタン-1,2-ジイル、アダマンタン-1,4-ジイル等のシクロアルカンジイル;等が挙げられる。
Yで表される炭素数6~20の置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基は、芳香族炭化水素から水素原子を2個取り除いてできる2価基である。無置換の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インデン、ピレン、フルオランテン、トリフェニレン、ペリレン等が挙げられる。具体的な2価の芳香族炭化水素基としては、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,5-ナフタレンジイル、2,6-ナフタレンジイル、9、10-アントラセンジイル、2,7-フルオレンジイル、1,3-ピレ
ンジイル、3,9-フルオランテンジイル等が挙げられる。
Yで表される炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記置換基としては、第2の実施態様におけるオレフィン化合物のRで表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくは炭素数6~20の芳香族炭化水素基の置換基、又は第3の実施態様におけるカルボニル化合物のRで表される炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくは炭素数6~20の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の置換基が挙げられる。
なお、炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、前記炭素数は、置換基の炭素数と脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素数との合計の炭素数を意味する。
化合物(VIII)としては、下記の化合物が挙げられる。
Figure 0007351460000035
以下、本実施態様おける化合物(VIII)の好ましい態様について説明する。
10が、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
10が、炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
より具体的には、R10は、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基又はフェニル基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
Yが、炭素数1~20の置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
Yが、炭素数6~20の置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
より具体的には、Yは、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン又はナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基であることが好ましく、ベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基であることがより好ましい。
特に好ましい化合物(VIII)としては、3-アセチルスチレンが挙げられる。
<4-6.有機シラン化合物>
本実施態様に係る製造方法において製造される有機シラン化合物は、ヒドロシラン化合物のケイ素原子にオレフィン基由来のアルキル基及び/又はカルボニル基由来のアルコキシ基が結合した化合物であれば、具体的な構造は特に限定されない。
本実施態様において製造される有機シラン化合物としては、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のオレフィン基のみをヒドロシリル化して得られるカルボニル基含有アルキルシラン化合物、又はオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のカルボニル
基のみをヒドロシリル化して得られるオレフィン基含有アルコキシシラン化合物が好ましい。カルボニル基含有アルキルシラン化合物としては、式(IX)で表される化合物が挙げられる。また、オレフィン基含有アルコキシシラン化合物としては、式(X)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007351460000036
式(IX)及び式(X)中、R、p、R10及びYは、それぞれ、式(VII)又は式(VIII)におけるR、p、R10及びYと同一であり、好ましい態様も同様である。
<4-7.好適な反応スキーム>
以上を総合すると、本実施態様に係る有機シラン化合物の製造方法におけるヒドロシリル化の好適な反応スキームは、下記の通りである。
Figure 0007351460000037
Figure 0007351460000038
<4-8.オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化の反応条件>
本実施態様におけるオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化の反応条件としては、目的とする有機シラン化合物に応じて適宜選択することができる。
具体的には、オレフィン選択的なヒドロシリル化を行い、カルボニル基含有アルキルシラン化合物を製造する場合、反応条件としては、第2の実施態様における<2-9.オレフィン化合物のヒドロシリル化の反応条件>を採用することができる。これにより、オレ
フィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化におけるオレフィン選択性を向上させることができる。また、塩基性有機溶媒の存在下で反応を行うことで、触媒反応が抑制されるため、オレフィン選択性の低下を防ぐためには、塩基性有機溶媒の非存在下で反応を行うことが有効である。
第2の実施態様で説明した通り、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のR及び/又はRを電子供与基とすることで、オレフィン化合物のヒドロシリル化を促進することができる。従って、反応条件に加え、触媒として、R及び/又はRが電子供与基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A)を選択することで、オレフィン選択性をさらに向上させることができる。
カルボニル選択的なヒドロシリル化を行い、オレフィン基含有アルコキシシラン化合物を製造する場合、反応条件としては、第3の実施態様における<3-9.カルボニル化合物のヒドロシリル化の反応条件>を採用することができる。これにより、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化におけるカルボニル選択性を向上させることができる。特に、塩基性有機溶媒の存在下で反応させることが、カルボニル選択性の向上に非常に有効である。
第3の実施態様において説明した通り、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のR及び/又はRを電子吸引基とすることで、カルボニル化合物のヒドロシリル化を促進することができる。従って、反応条件に加え、触媒として、R及び/又はRが電子吸引基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A)を選択することで、カルボニル選択性をさらに向上させることができる。
<5.総括>
以上説明したように、イミノビピリジンコバルト錯体(A)は、オレフィン化合物のヒドロシリル化反応の触媒としても、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応の触媒としても機能する。
そして、オレフィン化合物のヒドロシリル化反応においては、例えばイミノビピリジンコバルト錯体(A)のR及び/又はRを電子供与基とすることで、触媒反応を大幅に促進することができる。逆に、塩基性有機溶媒の存在下で反応を行うことで、触媒反応を抑制することができる。また、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応においては、例えば塩基性有機溶媒の存在下で反応を行うこと、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のR及び/又はRを電子吸引基とすること等で、触媒反応を促進することができる。
従って、イミノビピリジンコバルト錯体(A)は、ヒドロシリル化の対象に応じて置換基及び/又は反応条件を選択することにより、オレフィン選択的なヒドロシリル化触媒にも、カルボニル選択的なヒドロシリル化触媒にもなり得る。特筆すべきは、反応条件のみでも反応選択性をコントロールすることができるため、特定の1種のイミノビピリジンコバルト錯体(A)に関しても同様のことが言える点である。
加えて、イミノビピリジンコバルト錯体(A)の上記特性を応用すれば、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のオレフィン基又はカルボニル基を選択的にヒドロシリル化することができる。しかも、その際、ヒドロシリル化の対象でない官能基の保護及び脱保護を行う必要はなく、簡便に所望の官能基のヒドロシリル化を行うことができる。即ち、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物から、カルボニル基含有アルキルシラン化合物及びオレフィン基含有アルコキシシラン化合物のうち所望の化合物を一工程で選択的に製造することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、実施例におけるH-NMR、13C{H}-NMR、元素分析、質量分析(HRMS)及びガスクロマトグラフィー(GC)の測定条件は、以下の通りである。
H-NMR測定条件>
装置名:JEOL JMN-AL400(製造元:日本電子株式会社)
周波数:400MHz
測定温度:20℃
測定溶媒:CDCl
13C{H}-NMR測定条件>
装置名:JEOL JMN-AL400(製造元:日本電子株式会社)
周波数:100MHz
測定温度:20℃
測定溶媒:CDCl
<元素分析>
装置名:JM10(製造元:株式会社ジェイ・サイエンス)
分析対象:C,H,N
<質量分析>
装置名:The MStation(製造元:日本電子株式会社)
イオン化法:高速原子衝撃(FAB)法
<GC測定条件>
装置名:島津GC-2014(製造元:島津製作所)
カラム:Rtx(登録商標)-5MS(製造元:RESTEK、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)
キャリアガス:He
カラム温度条件:50℃で0分保持後、10℃/分で300℃まで昇温
<イミノビピリジンコバルト錯体の合成>
(合成例1:N-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)エタンイミン-コバルト錯体(以下、「イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)」という)の合成)
Figure 0007351460000039
置換したシュレンク管内で、国際公開第2016/208554号に記載の方法により合成したN-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)エタンイミン(0.98g,3.13mmol)、及び無水臭化コバルト(I
I)(0.69g,3.13mmol)をTHF(50mL)に溶解させ、一晩撹拌した。生じた沈殿をN雰囲気下で濾過し、THF(4mL)で3回洗浄し、さらにヘキサン(4mL)で3回洗浄した。ろ取した固形分を減圧下で乾燥させ、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)を得た(1.4g,86%)。
Anal. Calcd for C42H48Br4Co2N6O3 (2M + 3H2O): C, 44.95; H, 4.31; N, 7.49. Found:C, 45.22; H, 4.08; N, 7.17.
HRMS (FAB): calcd for C21H21BrN3Co [M - Br]+, 453.0251; found, 453.0269.
(合成例2:N-シクロヘキシル-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)エタンイミン-コバルト錯体(以下、「イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)」という)の合成)
Figure 0007351460000040
置換した三ツ口フラスコ内で、国際公開第2016/208554号に記載の方法により合成した1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)エタノン(2.00g,10mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(53mg,0.30mmol)、及びシクロへキシルアミン(1.8mL,15mmol)をトルエン22mLに溶解し、Dean-Stark管を用いて一晩還流した。その後、反応液に炭酸カリウム(41.2mg,0.30mmol)を加えて一時間撹拌し、液相をシュレンク管に移送した。続いて、減圧蒸留により、液相から溶媒と残留アミンを除き、残渣をヘキサン(4ml)で3回洗浄することでN-シクロヘキシル-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)エタンイミンを得た(0.76g,27%)。
1H NMR (400MHz, CDCl3, δ, ppm): 1.34-1.43 (m, 4H, CHCH2CH2CH2), 1.60 (m, 4H, CHCH2CH2), 1.86 (m, 2H, CHCH2CH2CH2), 2.48 (s, 3H, CCH3), 3.58-3.62 (m, 1H, NCH), 7.29-7.31 (m, 1H), 7.80-7.85 (m, 2H), 8.11 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 8.39 (dd, 1H, J = 1.2, 8.0 Hz), 8.52 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 8.68 (d, 1H, J = 4.8 Hz).
13C{1H} NMR (100.4 MHz, CDCl3, δ, ppm): 13.75, 24.99, 25.98, 33.62, 60.43, 121.11, 121.19, 121.21, 123.75,136.96, 137.36, 149.24, 154.50, 156.48, 157.81, 164.07.
Anal. Calcd. for C18H21N3: C, 77.38; H, 7.58; N, 15.04; Found: C, 77.08; H, 7.54; N, 14.83
置換したシュレンク管内で、N-シクロヘキシル-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)エタンイミン(0.379g,1.36mmol)、及び無水臭化コバルト(
II)(0.297g,1.36mmol)をTHF(12mL)に溶解させ、一晩撹拌した。生じた沈殿をN雰囲気下でろ過し、THF(4mL)で3回洗浄し、さらにヘキサン(4mL)で3回洗浄した。得られた固形分を減圧下で乾燥させ、イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)を得た(0.51g,76%)。
Anal. Calcd. for C40H52Br4Co2N6O2 (2M + H2O + THF): C, 44.22; H, 4.82; N, 7.74; Found: C, 44.34; H, 4.25; N, 7.77.
HRMS (FAB): calcd for C18H21BrN3Co [M - Br]+, 417.0251; found, 417.0266
(合成例3:N-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)-2,2,2-トリフルオロエタンイミン-コバルト錯体(以下、「イミノビピリジンコバルト錯体(A-3)」という)の合成)
Figure 0007351460000041
置換したシュレンク管内で、国際公開第2016/208554号に記載の方法により合成したN-(2,4,6-トリメチルフェニル)-1-(2,2’-ビピリジン-6-イル)-2,2,2-トリフルオロエタンイミン(0.507g,1.37mmol)、及び無水臭化コバルト(II)(0.316g,1.42mmol)をTHF(25mL)に溶解させ、一晩撹拌した。生じた沈殿をN雰囲気下でろ過し、THF(4mL)で3回洗浄し、さらにヘキサン(4mL)で3回洗浄した。得られた固形分を減圧下で乾燥させ、イミノビピリジンコバルト錯体(A-3)を得た(0.77g,96%)。
Anal. Calcd for C48H52Br4C2F6N6O (2M + hexane + H2O): C, 45.03; H, 4.09; N, 6.56. Found: C, 45.06; H, 3.89; N, 6.34.
HRMS (FAB): calcd for C21H18BrF3N3Co [M - Br]+, 506.9968; found, 506.9975.
<アルキルシラン化合物の製造>
(実験例1-1:塩基性有機溶媒の有無の検討)
Figure 0007351460000042
シュレンク管に、合成例1で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)1.9mg(0.0036mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)に、ジフェニルシラン0.68mL(3.6mmol)、スチレン0.42mL(3.6mmol)及びピリジン0.68mLを加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液36μL(0.036mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認した。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表1に示す。
(実験例1-2:塩基性有機溶媒の有無の検討)
反応系にピリジンを加えなかった以外は、実験例1-1と同様の方法で反応を行った。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表1に示す。
Figure 0007351460000043
表1に示した結果から、オレフィン化合物のヒドロシリル化反応は、イミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で促進されることがわかった。
また、塩基性有機溶媒の存在下では、塩基性有機溶媒の非存在下で反応を行った場合と比べると、触媒反応が抑制されることがわかった。
<アルコキシシラン化合物の製造>
(実験例2-1:塩基性有機溶媒の有無の検討)
Figure 0007351460000044
シュレンク管に、合成例1で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)2.5mg(0.0047mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)に、ジフェニルシラン0.89mL(4.7mmol)、アセトフェノン0.55mL(4.7mmol)及びピリジン0.89mLを加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液47μL(0.047mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認した。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表2に示す。
(実験例2-2:塩基性有機溶媒の有無及びイミノビピリジン配位子の検討)
反応系にピリジンを加えなかった以外は、実験例2-1と同様の方法で反応を行った。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表2に示す。
(実験例2-3:イミノビピリジン配位子の検討)
シュレンク管に、合成例3で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-3)2.0mg(0.0034mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-3)に、ジフェニルシラン0.65g(3.4mmol)及びアセトフェノン0.40g(3.4mmol)を加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液34μL(0.034mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認
した。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表2に示す。
Figure 0007351460000045
表2に示した結果から、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応は、イミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で促進されることがわかった。
また、塩基性有機溶媒の存在下で、触媒反応が大幅に促進されることがわかった。
さらに、実験例2-2及び実験例2-3の結果から、Rが電子吸引基のCF基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-3)を触媒として用いた場合、Rが電子供与基のメチル基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)を触媒として用いた場合と比べて収率が向上することがわかった。即ち、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のRを電子吸引基とすることで、カルボニル化合物のヒドロシリル化が促進されることが示された。
<反応選択性の検討>
(実験例3-1:イミノビピリジン配位子及び反応温度の検討)
Figure 0007351460000046
シュレンク管に、合成例1で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)1.9mg(0.0036mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)に、ジフェニルシラン0.68mL(3.6mmol)、アセトフェノン0.42mL(3.6mmol)及びスチレン0.42mL(3.6mmol)を加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液36μL(0.036mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認した。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表3に示す。
(実験例3-2:イミノビピリジン配位子及び反応温度の検討)
反応温度を室温(25℃)とした以外は、実験例3-1と同様の方法で反応を行った。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表3に示す。
(実験例3-3:イミノビピリジン配位子及び反応温度の検討)
シュレンク管に、合成例2で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-2)1.6mg(0.0032mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)に、ジフェニルシラン0.61g(3.2mmol)、アセトフェノン0.38g(3.2mmol)及びスチレン0.34g(3.2mmol)を加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液32μL(0.032mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は室温(25℃)とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認した。H-NMRの測定結果より算出した生成物の収率を表3に示す。
(実験例3-4:イミノビピリジン配位子及び反応温度の検討)
反応温度を50℃とした以外は、実験例3-3と同様の方法で反応を行った。H-NMRの測定結果より算出した生成物の収率を表3に示す。
(実験例3-5:イミノビピリジン配位子及び反応温度の検討)
シュレンク管に、合成例3で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-3)4.4mg(0.0075mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-3)に、ジフェニルシラン1.4g(7.5mmol)、アセトフェノン0.90g(7.5mmol)及びスチレン0.79g(7.5mmol)を加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液75μL(0.075mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認した。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表3に示す。
Figure 0007351460000047
実験例3-1~実験例3-5は、塩基性有機溶媒の非存在下における反応である。このような反応条件下では、オレフィン化合物のヒドロシリル化反応は、大幅に促進され、カルボニル化合物のヒドロシリル化に対して優先的に進行することが示された。
実験例3-1及び実験例3-2の結果から、R及びRが電子供与基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)を触媒として用いた場合、オレフィンのヒドロシリル化反応が大幅に促進されることがわかった。即ち、反応温度が0℃及び25℃の何れであっても、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応よりもオレフィンのヒドロシリル化反応が優先して進行し、高収率でアルキルシラン化合物2が得られることが示された。
また、反応温度を25℃とした実験例3-2では、ヒドロシラン化合物とオレフィン化合物とが1:2(モル比)で反応したアルキルシラン化合物(アルキルシラン化合物(I
II’)に相当;以下、「アルキルシラン化合物2’」という)が生成した。その結果、ジフェニルシランが完全に消費されたにも関わらず、アルキルシラン化合物2の収率は実験例3-1よりも低かった。一方、反応温度を0℃とした実験例3-1では、アルキルシラン化合物2’の生成が抑制され、反応温度が25℃の場合よりも選択的かつ高収率でアルキルシラン化合物2が得られることがわかった。
さらに、実験例3-1及び実験例3-5の結果から、イミノビピリジンコバルト錯体のRに電子吸引性のCF基を導入とすると、カルボニル化合物のヒドロシリル化の進行が促進され、オレフィン選択性は低下することがわかった。
実験例3-1~実験例3-4の結果から、Rがメチル基、Rが2,4,6-トリメチルフェニル基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)は、Rがメチル基、Rがシクロヘキシル基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-2)と比較して高い触媒活性を示すことがわかった。
これは、イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)のRのコバルト活性中心周りに及ぼす立体的な効果が、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)のRよりも大きいため、全体的に反応が緩やかに進行すること、また、イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)の温度に対する安定性が向上したことが原因であると推測される。
また、イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)を触媒として用いると、反応温度が50℃であってもアルキルシラン化合物2’は生成せず、アルキルシラン化合物2が選択的に高収率で得られることが示された。
この原因もまた、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)を触媒として用いた場合と比較して、触媒反応が緩やかに進行するためであると推測される。
実験例3-1及び実験例3-5の結果から、Rが電子吸引基のCF基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-3)を触媒として用いた場合、Rが電子供与基のメチル基であるイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)を触媒として用いた場合よりも、アルコキシシラン化合物1の収率が向上することがわかった。
これは、オレフィン化合物のヒドロシリル化反応の触媒サイクルにおいて、電子吸引基が、コバルトの電子密度を低下させるためであると推測される。即ち、Rが電子供与基であることにより、オレフィン化合物のコバルトへの配位が促進されるという効果が得られにくくなるとともに、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応が促進されるためであると推測される。
(実験例4-1:塩基性有機溶媒存在下での反応の検討)
Figure 0007351460000048
シュレンク管に、合成例1で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)4.0mg(0.0075mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)に、ジフェニルシラン1.4mL(
7.5mmol)、アセトフェノン0.87mL(7.5mmol)、スチレン0.88mL(7.5mmol)及びピリジン1.4mLを加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液75μL(0.075mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、GCにより反応の進行を確認した。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表4に示す。
(実験例4-2:塩基性有機溶媒存在下での反応の検討)
イミノビピリジンコバルト錯体を、合成例2で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-2)3.7mg(0.0075mmol)とした以外は、実験例4-1と同様の方法で反応を行った。GCの測定結果より算出した生成物の収率を表4に示す。
(実験例4-3:塩基性有機溶媒存在下での反応の検討)
Figure 0007351460000049
シュレンク管に、合成例2で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-2)1.5mg(0.0030mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-2)に、ジフェニルシラン0.57mL(3.0mmol)、アセトフェノン0.35mL(3.0mmol)、スチレン0.3
5mL(3.0mmol)及びピリジン0.57mLを加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液30μL(0.030mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は25℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液をシリカゲルドライカラムに通した。溶出液からサンプルを採取し、H-NMRにより反応の進行を確認した。H-NMRの測定結果より算出した生成物の収率を表4に示す。
Figure 0007351460000050
表4に示した結果から、塩基性有機溶媒の存在下では、カルボニル化合物のヒドロシリル化反応が優先的に進行し、アルコキシシラン化合物が選択的に得られることがわかった。
(実験例5-1:塩基性有機溶媒の有無の検討)
Figure 0007351460000051
シュレンク管に、合成例1で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)0.6mg(0.0011mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)に、ジフェニルシラン0.20mL(1.1mmol)及び3-アセチルスチレン0.16g(1.1mmol)を加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液11μL(0.011mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から24時間経過した時点で、反応混合液にヘキサン10mLを加え、シリカゲルドライカラムを通すことで触媒を取り除いた。得られた溶出液の減圧蒸留により、ヘキサン及び未反応の基質を取り除き、生成物0.34gを得た。生成物の単離収率(93%)を表5に示す。
(実験例5-2:塩基性有機溶媒の有無の検討)
Figure 0007351460000052
シュレンク管に、合成例1で得たイミノビピリジンコバルト錯体(A-1)2.0mg(0.0037mmol)を入れ、減圧下で乾燥した後、シュレンク管内をN置換した。次いで、イミノビピリジンコバルト錯体(A-1)に、ジフェニルシラン0.69g(3.7mmol)、3-アセチルスチレン0.55g(3.7mmol)及びピリジン0.69mLを加え、これらの混合物を攪拌することで懸濁液を得た。続いて、得られた懸濁液に、1.0M NaBHEtトルエン溶液37μL(0.037mmol)を加え、攪拌することで反応を開始した。反応温度は0℃とした。反応開始から3時間経過した時点で、反応混合液にヘキサン10mLを加え、シリカゲルドライカラムを通すことで触媒を取り除いた。得られた溶出液の減圧蒸留により、ヘキサン及び未反応の基質を取り除き、生成物1.1gを得た。生成物の単離収率(90%)を表5に示す。
Figure 0007351460000053
表5に示した結果から、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物のヒドロシリル化反応において、塩基性有機溶媒の非存在下では、オレフィン基のヒドロシリル化反応が
優先して進行し、カルボニル基含有アルキルシラン化合物3が選択的に得られることがわかった。
一方、塩基性有機溶媒の存在下では、カルボニル基のヒドロシリル化反応が優先的に進行し、オレフィン基含有アルコキシシラン化合物4が選択的に得られることがわかった。
イミノビピリジンコバルト錯体(A)は、オレフィン化合物及びカルボニル化合物のヒドロシリル化反応の触媒として有用である。
イミノビピリジンコバルト錯体(A)を触媒として用いたヒドロシリル化においては、特に反応条件の選択により、オレフィン選択的又はカルボニル選択的にヒドロシリル化反応を進行させることができる。また、イミノビピリジンコバルト錯体(A)のかかる特性を応用することにより、オレフィン基及びカルボニル基を有する化合物から、カルボニル基含有アルキルシラン化合物又はオレフィン基含有アルコキシシラン化合物を一工程で選択的に製造する方法を提供することができる。
そして、イミノビピリジンコバルト錯体(A)を利用したヒドロシリル化により製造される有機ケイ素化合物、特にオレフィン基又はカルボニル基のような有益な官能基を有する有機ケイ素化合物は、例えば有機ケイ素化学工業における様々な原料として使用することができる。

Claims (11)

  1. ヒドロシラン化合物とオレフィン化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、
    前記ヒドロシリル化工程が、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下、かつ、塩基性有機溶媒の非存在下で行われる、アルキルシラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000054

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
  2. 前記ヒドロシリル化工程が、式(I)で表されるヒドロシラン化合物と式(II)で表されるオレフィン化合物とを反応させて式(III)で表されるアルキルシラン化合物を得る工程である、請求項1に記載のアルキルシラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000055

    (式(I)~(III)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;nは、0~3の整数を表し;Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。)
  3. ヒドロシラン化合物とカルボニル化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、
    前記ヒドロシリル化工程が、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体還元剤、及び塩基性有機溶媒の存在下で行われる、アルコキシシラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000056

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
  4. 前記ヒドロシリル化工程が、式(IV)で表されるヒドロシラン化合物と式(V)で表されるカルボニル化合物とを反応させて式(VI)で表されるアルコキシシラン化合物を得る工程である、請求項に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000057

    (式(IV)~(VI)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;mは、0~3の整数を表し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表す。)
  5. 前記塩基性有機溶媒がアミン溶媒である、請求項3又は4に記載のアルコキシシラン化合物の製造方法。
  6. ヒドロシラン化合物とオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させるヒドロシリル化工程を含み、
    前記ヒドロシリル化工程が、式(A)で表されるイミノビピリジンコバルト錯体及び還元剤の存在下で行わる、有機シラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000058

    (式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~10の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~10の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Rは、水素原子、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又は炭素数2~8のアシルオキシ基を表し;隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してよく、隣接する2つのRは互いに連結して環状構造を形成してもよく、隣接するRとRとは互いに連結して環状構造を形成してもよい。)
  7. 前記ヒドロシリル化工程が、塩基性有機溶媒の非存在下で行われ、式(VII)で表されるヒドロシラン化合物と式(VIII)で表されるオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させて式(IX)で表される有機シラン化合物を得る工程である、請求項に記載の有機シラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000059

    (式(VII)~(IX)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;pは、0~3の整数を表し;R10は、炭素数1~20の置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基を表し;Yは、炭素数1~20の置換若しくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~20の置換若しくは無置換の2価の芳香族炭化水素基を表す。)
  8. 及び/又はRが、電子供与基である、請求項に記載の有機シラン化合物の製造方法。
  9. 前記ヒドロシリル化工程が、塩基性有機溶媒の存在下で行われ、式(VII)で表されるヒドロシラン化合物と式(VIII)で表されるオレフィン基及びカルボニル基を有する化合物とを反応させて式(X)で表される有機シラン化合物を得る工程である、請求項に記載の有機シラン化合物の製造方法。
    Figure 0007351460000060

    (式(VII)、(VIII)、(X)中、R、p、R10及びYは、それぞれ、式(VII)~(IX)中のR、p、R10及びYと同一である。)
  10. 前記塩基性有機溶媒がアミン溶媒である、請求項に記載の有機シラン化合物の製造方法。
  11. 及び/又はRが、電子吸引基である、請求項又は10に記載の有機シラン化合物の製造方法。
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