JP7349319B2 - ナノファイバシートの製造装置 - Google Patents

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Description

本発明はナノファイバシートの製造装置に関する。
肌に貼り付けて、シミや皺を隠蔽する化粧用シートとして、電界紡糸法によって、ナノサイズの直径の繊維を堆積させたナノファイバシートが知られている。かかるナノファイバシートは例えば、噴射装置を移動させながら、高電圧を印加した吐出口から原料液を吐出させて形成されたナノファイバを堆積させることで製造される(特許文献1参照)。
特許文献1に記載のナノファイバシートの製造においては、タンクからポンプを介して噴射装置に原料液が供給される。タンクとポンプとの間には両者を連通させる送液管が接続されている。同様に、ポンプと噴射装置との間にも、両者を連通させる送液管が接続されている。
特開2008-196061号公報
特許文献1に記載の技術では、原料液が貯蔵されているタンクと、該原料液を噴射する噴射装置との間を送液管で接続していることから、原料液の種類を変更して別のナノファイバシートを製造するときに、タンク内や送液管内を清掃する等の手間が生じる。また、送液管を用いている分だけ装置を小型化しづらい。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得るナノファイバシートの製造装置を提供することにある。
本発明は、原料液を収容可能な収容部、該原料液を吐出するノズル、及び該収容部から該ノズルへ該原料液を供給する供給部を有するカートリッジ部と、
前記ノズルに電圧を印加する電源、又は前記ノズルと対向するように配され且つ該ノズルとの間に電界を生じさせる対向電極及び該ノズルと該対向電極間に電圧を印加する電源と、
前記カートリッジ部の取付部と、
前記原料液を電気的に延伸させて生成したナノファイバを集積する捕集部と、を備えたナノファイバシートの製造装置であって、
前記カートリッジ部が前記取付部に着脱可能に取り付けられており、
前記カートリッジ部が前記取付部に取り付けられた状態において、該カートリッジ部における前記供給部を駆動させるための駆動源が、該取付部に備えられている、ナノファイバシートの製造装置を提供することにより前記の課題を解決したものである。
また本発明は、原料液を収容可能な収容部、該原料液を吐出するノズル、及び該収容部から該ノズルへ該原料液を供給する供給部を有するカートリッジ部と、
前記ノズルに電圧を印加する電源、又は前記ノズルと対向するように配され且つ該ノズルとの間に電界を生じさせる対向電極及び該ノズルと該対向電極間に電圧を印加する電源と、
前記カートリッジ部の取付部と、
前記原料液を電気的に延伸させて生成したナノファイバを集積する捕集部と、を備え、
前記カートリッジ部が前記取付部に取り付けられた状態において、該カートリッジ部における前記供給部を駆動させるための駆動源が、該取付部に備えられており、
前記カートリッジ部において、前記収容部が前記供給部に着脱可能に取り付けられている、ナノファイバシートの製造装置を提供することにより前記の課題を解決したものである。
本発明によれば、原料液の交換を容易に行うことができるナノファイバシートの製造装置が提供される。
図1は、本発明に用いられるカートリッジ部の斜視図である。 図2は、図1に示すカートリッジ部の分解斜視図である。 図3は、本発明のナノファイバシートの製造装置の一実施形態を示す斜視図である。 図4は、本発明のナノファイバシートの製造装置の別実施形態を示す斜視図である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明のナノファイバシートの製造装置に用いられるカートリッジ部1が示されている。本発明において、ナノファイバシートとは、文脈に応じ、ナノファイバの堆積物からなるシートを意味する場合と、ナノファイバの堆積物からなるナノファイバ層と、該層を支持する基材層とを有するシートを意味する場合とがある。図1に示すカートリッジ部1は、原料液を収容可能な収容部2、及び原料液を吐出するノズル20を備えている。カートリッジ部1は更に収容部2からノズル20へ原料液を供給する供給部3を備えている。原料液は、ナノファイバの原料樹脂の溶液又は分散液からなる。
収容部2は、合成樹脂製のパウチ等を始めとする各種の容器から構成されている。収容部2が例えばパウチから構成されている場合には、図1及び図2に示すとおり、同形で且つ同サイズの2枚の合成樹脂製フィルムを重ね合わせ、それらの周縁を液密に接合することで収容部を形成することができる。収容部2はその周縁部に、原料液の充填・送出が可能な開口部4を備えている。開口部4を通じて、収容部2の空間内に原料液を充填することができ、また収容部2内に充填された原料液を外部に送出することができる。
ノズル20は細径の吐出孔(図示せず)を備えている。ノズル20は非導電性の材料、例えば合成樹脂等から構成されている。吐出孔内には導電性を有する針状の電極(図示せず)が、該吐出孔の長手方向に沿って配置されている。電極は、ノズル20を通じて吐出される原料液を帯電させるために用いられるものである。電極は、後述する電源に接続されている。その結果、ノズル20には正又は負の電圧が印加されるようになっている。ノズル20は、その吐出孔の一端が、カートリッジ部1における供給部3と直接に連結している。直接に連結しているとは、ノズル20と供給部3との間に、これらの部材とは別部材の供給管が介在していない状態で両者が連結していることを意味する。吐出孔の他端は外部に向けて開口している。
ノズル20における吐出孔の横断面形状は特に制限されず、例えば円形等の任意の形状とすることができる。ナノファイバの堆積を効率的に行う観点から、吐出孔はその直径が0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、0.1mm以上15mm以下であることが更に好ましい。
供給部3は、収容部2内に収容された原料液をノズル20へ供給する機能を有する。この目的のために、供給部3は原料液の送液機構(図示せず)を備えている。送液機構としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。例えばギアポンプを送液機構として用いることができる。ギアポンプは小型であり、且つ原料液を高い精度で定量的に送液することが可能であることから、本発明において好適に用いられる。供給部3には、送液機構を駆動させるための駆動源(これについては後述する。)と接続するための係合接続部5を有している。係合接続部5は、駆動源に備えられた被係合接続部(図示せず)と係合することによって、駆動源で発生した駆動力が送液機構に伝達されるようになっている。
供給部3は、図2に示すとおり、原料液の受け入れ部6を有している。受け入れ部6は円筒状の基部6aを有している。受け入れ部6は更に、基部6aの上端に連設し且つ基部6aよりも細径の円筒状をした受液管6bを有している。受液管6bの先端は、同図中、上方に向けて開口している。カートリッジ部1の使用状態においては、受け入れ部6が、収容部2に設けられた開口部4内に挿入されて、該収容部2が供給部3に着脱可能に取り付けられるようになっている。詳細には、受け入れ部6が開口部4内に挿入された状態においては、受液管6bの先端が収容部2における原料液の収容空間にまで到達して、該原料液を供給部3に供給できるようになっている。また基部6aが開口部4と液密に嵌合し、収容部2と供給部3との結合状態が維持されるようになっている。このように、収容部2が供給部3に取り付けられた状態においては、収容部2と供給部3とが直接に連結している。直接に連結しているとは、収容部2と供給部3との間に、これらの部材とは別部材の供給管が介在していな状態で両者が連結していることを意味する。
カートリッジ部1が上述の構成を有することで、本実施形態においては、原料液の種類を変更して別のナノファイバシートを製造するときに、収容部2を取り外して、別の原料液を収容した収容部2を取り付けるだけの簡単な操作を行うだけで済むという利点がある。しかも、比較的高価な部材であるノズル20の再使用が可能となるので経済的でもある。その上、収容部2と供給部3とが直接に連結しており、且つ供給部3とノズル20とも直接に連結しているので、カートリッジ部1を交換して別の原料液を用いるときに、該カートリッジ部1内における原料液の流路の洗浄を簡便に行えるという利点もある。
図3には、図1及び図2に示すカートリッジ部1を備えたナノファイバシートの製造装置の一実施形態が模式的に示されている。図3に示す製造装置は電界紡糸装置100Aから構成されている。電界紡糸装置100Aは、ノズル20を備えたカートリッジ部1と、該ノズル20に電圧を印加する電源である電圧印加部32と、原料液を電気的に延伸させて生成したナノファイバFを集積する捕集部40と、ノズル20を含むカートリッジ部1全体を移動させるノズル移動機構50と、ナノファイバシートを所定形状の輪郭に切断する切断部7とを具備している。
捕集部40は、ナノファイバFを集積する部材である。捕集部40は、後述する捕集部移動機構80に取り付けられている。捕集部40は、金属等の導電性材料から構成される。捕集部40は、ノズル20と対向するように配されている。捕集部40は接地されている。したがって、ノズル20に正又は負の電圧が印加されることで、ノズル20と捕集部40との間に電界が生じるようになっている。
ノズル20と捕集部40との間に加わる電位差は、原料液の帯電性を向上させる観点から、絶対値で1kV以上、特に10kV以上とすることが好ましく、放電を防止する観点から、絶対値で100kV以下、特に50kV以下とすることが好ましい。
切断部7は、捕集部40上に形成されたナノファイバシート10を所定形状の輪郭に切断するものである。切断部7は、後述する切断部移動機構70に取り付けられている。切断部7としては、レーザー光の照射によって溶断するレーザー加工機、超音波振動による摩擦熱によって溶断する超音波カッター等が挙げられる。コンパクトでありながら細かな形状にカットできる観点から、レーザー加工機が好ましく用いられる。
切断部7としてレーザー加工機を用いる場合、照射するレーザー光としては、例えばCOレーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー等が挙げられる。ナノファイバシートを効率よく切断する観点から、COレーザーが好ましく用いられる。レーザー光の出力は、1.5W以上であることが好ましく、5W以上であることが更に好ましく、そして150W以下であることが好ましく、50W以下であることが更に好ましい。レーザー光の照射時間は、1mm/秒以上であることが好ましく、20mm/秒以上であることが更に好ましく、そして1200mm/秒以下であることが好ましく、300mm/秒以下であることが更に好ましい。
レーザー光を照射してナノファイバシート10を切断するときに、ナノファイバ層における基材層対向面の焦げを防止する観点から、捕集部40は、通気性を有する部材で形成されていることが好ましい。
電界紡糸装置100Aは台座90を具備している。台座90は、非導電性材料又は導電性材料から構成され得る。台座90は、平面視してX軸方向である縦方向と、X軸方向に直交するY軸方向である横方向とを有している。X軸方向及びY軸方向からなる台座90の主面は、ノズル20に対向している。図3に示すとおり、台座90の主面の中央部には捕集部移動機構80が載置されている。また台座90の周縁部に、ノズル移動機構50と切断部移動機構70とが互いに干渉しないような位置に配置されている。
捕集部移動機構80は、X軸方向に延びるX軸レール84とY軸方向に延びるY軸レール86と有している。X軸レール84には凹状の案内溝83がX軸方向に沿って形成されている。Y軸レール86には凹状の案内溝85がY軸方向に沿って形成されている。捕集部40は電気的に絶縁された状態でX軸レール84に取り付けられている。捕集部40は案内溝83に沿ってX軸方向に摺動自在となっている。X軸レール84は電気的に絶縁された状態でY軸レール86に取り付けられている。X軸レール84は案内溝85に沿ってY軸方向に摺動自在となっている。Y軸レール86は、台座90のX軸方向中心位置を通るように台座90の主面に載置され且つ固定されている。捕集部40の捕集面と、台座90の主面とは平行になっている。以上の構成を有する捕集部移動機構80によれば、捕集部40が、X軸方向及びY軸方向の捕集面内に沿って自在に移動可能となる。
ノズル移動機構50は、少なくとも捕集部40が移動する範囲内において、ノズル20を含むカートリッジ部1が移動可能なように構成されている。ノズル移動機構50は、カートリッジ部1を着脱可能に取り付けるスライダ51と、X軸方向及びY軸方向それぞれに沿うレール53,55と、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向であるZ軸方向に延びるZ軸レール52とを備えている。Z軸レール52は、凹状に形成されたZ軸方向に沿う案内溝57を有している。スライダ51は、案内溝57に嵌め込まれており、案内溝57に沿ってZ軸方向に摺動自在となっている。レール55は、Y軸方向に延びるY軸案内溝56を有している。レール53は、X軸方向に延びるX軸案内溝54を有している。Z軸レール52は電気的に絶縁された状態でY軸レール55に取り付けられている。Z軸レール52はY軸案内溝56に沿ってY軸方向に摺動自在となっている。Y軸レール55は電気的に絶縁された状態でX軸レール53に取り付けられている。Y軸レール55はX軸案内溝54に沿ってX軸方向に摺動自在となっている。X軸レール53は、その一端が台座90の主面に立設された支柱59に固定されている。以上の構成を有するノズル移動機構50によれば、ノズル20を含むカートリッジ部1が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に自在に移動可能となっている。
ノズル移動機構50においては、上述のとおり、カートリッジ部1がスライダ51に着脱可能に取り付けられている。つまりスライダ51は、カートリッジ部1の昇降手段として用いられているだけでなく、カートリッジ部1の取付部としても用いられている。カートリッジ部1の取付部であるスライダ51には、該カートリッジ部1における供給部3(図1及び図2参照)を駆動させるための駆動源8が備えられている。駆動源8には、供給部3に備えられた係合接続部5(図1及び図2参照)と係合する被係合接続部(図示せず)が備えられている。カートリッジ部1が、その取付部としてのスライダ51に取り付けられた状態においては、供給部3の係合接続部5と、駆動源8の被係合接続部(図示せず)とが係合して、駆動源8によって発生した駆動力が供給部3に伝達されるようになっている。
上述したとおり、本実施形態においてはカートリッジ部1がスライダ51に着脱可能に取り付けられているので、原料液の種類を変更して別のナノファイバシートを製造するときに、カートリッジ部1をスライダ51から取り外して、別の原料液を収容したカートリッジ部1を取り付けるだけの簡単な操作を行うだけで、新たなナノファイバシートを製造できる利点がある。この利点は、カートリッジ部1において、収容部2が供給部3から着脱不能になっている場合に特に顕著なものとなる。
カートリッジ部1は、その取付部であるスライダ51に着脱可能に電気的に絶縁した状態で取り付けられている。こうすることで、カートリッジ部1に備えられたノズル20に高電圧を印加した場合であっても、意図しない放電を効果的に抑制することができる。
切断部移動機構70は、少なくとも捕集部40が移動する範囲内において、切断部7が移動可能なように構成されている。切断部移動機構70は、切断部7を保持するスライダ71と、Y軸方向及びX軸方向それぞれに沿うレール73,75と、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向であるZ軸方向に延びるZ軸レール72とを備えている。Z軸レール72は、凹状に形成されたZ軸方向に沿う案内溝77を有している。スライダ71は案内溝77に嵌め込まれており、案内溝77に沿ってZ軸方向に摺動自在となっている。Y軸レール73は、Y軸方向に延びるY軸案内溝74を有している。X軸レール75は、X軸方向に延びるX軸案内溝76を有している。Z軸レール72は電気的に絶縁された状態でY軸レール73に取り付けられている。Z軸レール72はY軸案内溝74に沿ってY軸方向に摺動自在となっている。Y軸レール73は電気的に絶縁された状態でX軸レール75に取り付けられている。Y軸レール73はX軸案内溝76に沿ってX軸方向に摺動自在となっている。X軸レール75は、その一端が台座90の主面に立設された支柱79に固定されている。以上の構成を有する切断部移動機構70によれば、切断部7が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に自在に移動可能となっている。
捕集部移動機構80、ノズル移動機構50及び切断部移動機構70は、制御部(不図示)と電気的に接続されており、制御部に入力された移動軌道のデータや、操作者がコントローラーを介して制御部に入力した操作信号に基づき、捕集部40、カートリッジ部1及び切断部7を移動させることが可能になされている。制御部には、移動軌道のデータが入力されているか、又は入力可能になされている。制御部への移動軌道のデータの入力は、USBメモリ等の記録媒体を介して入力可能であってもよいし、インターネットやイントラネット等のネットワークを介して入力可能であってもよい。
電界紡糸装置100Aにおいては、ノズル移動機構50の支柱59と切断部移動機構70の支柱79とが共通の支持部材である台座90によって支持されている。つまり、ノズル移動機構50と切断部7とが共通の支持部材によって支持されている。その結果、電界紡糸装置100Aは、ノズル移動機構50によってノズル20を三軸方向に自在に移動させながら捕集部40上にナノファイバFを堆積させてナノファイバシート10を製造する製造部と、切断部移動機構70によって切断部7を三軸方向に自在に移動させながらナノファイバシート10を所定形状の輪郭に切断する切断部とを単一の装置内に備えていることになる。したがって本実施形態の電界紡糸装置100Aは、装置全体がコンパクトなものとなる。コンパクトである利点を活かして、本実施形態の電界紡糸装置100Aを、例えばナノファイバシートを販売する店頭等に気軽に設置することができ、顧客の要望に応じ、その場で所望形状の輪郭を有するナノファイバシートを提供することができる。
ノズル移動機構50と切断部7とが共通の支持部材によって支持されているとは、該支持部材を移動させることで、ノズル移動機構50及び切断部7も同時に移動するように、ノズル移動機構50及び切断部7が支持部材に取り付けられていることをいう。したがって、支持部材を移動させたときにノズル移動機構50及び切断部7のいずれか一方のみが移動し、他方は移動しないような場合には、ノズル移動機構50及び切断部7は共通の支持部材に支持されていない。
電界紡糸装置100Aを用いたナノファイバシート10の製造方法の好ましい一実施態様を、ナノファイバ層と基材層とを有するナノファイバシートの製造を例にとり説明する。先ず、捕集部40上に基材層を配置する。制御部(図示せず)から送られる操作信号に基づき、捕集部移動機構80を作動させて、捕集部40を所定の位置に移動させる。次に、ノズル20と捕集部40との間に電界を生じさせた状態で、ノズル20に原料液を供給し、該ノズルから原料液を吐出させる。原料液を吐出させている間、制御部(図示せず)から送られる操作信号に基づきノズル移動機構50を作動させてノズル20を移動させる。吐出された原料液は、基材層に到達するまでに原料液に含まれる溶媒を蒸発しつつ、ナノファイバFを形成しながら捕集部40に引き寄せられるように紡糸される。ナノファイバFは捕集部40に配された基材層上に堆積し、ナノファイバFの堆積体を形成する。この堆積体がナノファイバ層となる。
次いで、制御部(図示せず)から送られる操作信号に基づき、切断部移動機構70を作動させて切断部7を移動させながら、切断部7からレーザー光を照射してナノファイバシート10を切断する。これにより、所望の平面視形状のナノファイバシート10が形成される。切断部7は、レーザー光の照射条件等に応じ、基材層上のナノファイバ層のみを切断するか、堆積したナノファイバ層の周縁よりも外方に位置する基材層のみを切断するか、又は基材層及びナノファイバ層を備えるナノファイバシート10全体を切断するように構成されている。
ナノファイバシート10の成形性の観点から、ノズル20、切断部7及び捕集部40の少なくとも一つは、一定速度で移動させることが好ましい。ノズル20、切断部7又は捕集部40の移動速度は、好ましくは5mm/秒以上、より好ましくは50mm/秒以上であり、また好ましくは1000mm/秒以下、より好ましくは150mm/秒以下であり、また好ましくは5mm/秒以上1000mm/秒以下であり、より好ましくは50mm/秒以上150mm/秒以下である。
ナノファイバFを捕集部40上に堆積させるときには、ノズル20を移動させる代わりに、捕集部40を移動させることができる。或いは、ノズル20及び捕集部40の双方を移動させることもできる。ノズル20及び捕集部40の双方を移動させながらナノファイバ層を形成することには、ナノファイバ層の形状を任意の形状に調整し易くなるという利点がある。
本実施形態の電界紡糸装置100Aは、店頭等に設置することを考慮して、その全体がカバーで覆われていることが好ましい。カバーには一部に透明部が設けられていることが好ましい。該透明部は、意図せず漏出するレーザー光を減衰させる観点から、レーザー光の波長の光を吸収し易い材料、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はガラス等から構成されていることが好ましい。
電界紡糸装置100Aの全体がカバーで覆われているときには、店頭等に設置することを考慮して、レーザー光を照射してナノファイバシート10を切断するときの焦げの臭いを脱臭する集塵脱臭機構を具備していることが好ましい。
次に、本発明の装置を用いて得られるナノファイバシート10について説明する。ナノファイバシート10におけるナノファイバ層は、高分子化合物のナノファイバを含む層である。本明細書においてナノファイバとは、その太さを円相当直径で表した場合、一般に10nm以上3000nm以下、特に10nm以上1000nm以下のものである。ナノファイバの太さは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって、繊維を10000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(ナノ繊維の塊、ナノ繊維の交差部分、ポリマー液滴)を除いた繊維を任意に10本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取ることで測定することができる。
原料液としては、繊維形成可能な高分子化合物を溶媒に溶解又は分散させた溶液を用いることができる。原料液には前記高分子化合物以外に、無機物粒子、有機物粒子、植物エキス、界面活性剤、油剤、イオン濃度を調整するための電解質等を適宜配合することができる。原料液の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、グリコール等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は複数混合して用いることができる。
基材層を有する場合、基材層としては、例えばポリオレフィン系の樹脂やポリエステル系の樹脂を始めとする合成樹脂製のフィルムや、不織布等の繊維シートを用いることができる。基材層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、また好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下であり、また好ましくは5μm以上20mm以下、より好ましくは10μm以上15mm以下である。
図4には、本発明のナノファイバシートの製造装置の別の実施形態が示されている。同図に示す実施形態については、図1ないし図3に示す実施形態と異なる点について説明し、特に説明しない点については、図1ないし図3に示す実施形態についての説明が適宜適用される。
図1ないし図3に示す電界紡糸装置100Aは、ノズル移動機構50と、該ノズル移動機構50とは別に切断部移動機構70とを備えていたが、本実施形態に係る電界紡糸装置100Bにおいては、切断部7がノズル移動機構50に取り付けられている。
図4に示す電界紡糸装置100Bにおいては、台座90の中央部に捕集部移動機構80が載置されている。また台座90の周縁部にノズル移動機構50が配置されている。電界紡糸装置100Bのノズル移動機構50は、ノズル20を含むカートリッジ部1が着脱可能に取り付けられるスライダ51と、レール53,55と、Z軸レール52とを備えている。スライダ51は、Z軸レール52に形成された案内溝57に嵌め込まれている。スライダ51は、カートリッジ部1と切断部7とを保持している。ノズル移動機構50によれば、スライダ51が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に自在に移動可能となっている。その結果、ノズル20を含むカートリッジ部1及び切断部7が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に自在に移動可能となっている。
本実施形態の電界紡糸装置100Bにおいては、ノズル20を含むカートリッジ部1及び切断部7が、ノズル移動機構50を構成するスライダ51に支持されている。つまり、ノズル移動機構50と切断部7とが共通の支持部材によって支持されている。その結果、ノズル移動機構50によってノズル20及び切断部7を三軸方向に自在に移動させることができる。電界紡糸装置100Bは、ナノファイバシート10を製造する製造部と、ナノファイバシート10を所定形状の輪郭に切断する切断部とを同じノズル移動機構50内に備えているので、装置全体が更にコンパクトなものとなる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態においては、カートリッジ部1の取付部であるスライダ51は三軸の移動機構に取り付けられていたが、これに代えて少なくとも一軸の移動機構に取り付けられていればよい。同様に、捕集部40及びスライダ71も、少なくとも一軸の移動機構に取り付けられていればよい。
また、前記の各実施形態の装置における台座90は、単一の部材で構成されていたが、これに代えて、二以上の部材が任意の連結手段ないし締結手段によって連結されて、実質的に単一部材とみなせる状態になっていてもよい。
また、前記の各実施形態の装置はノズル移動機構50を備えていたが、これに代えて、ノズル移動機構50を用いず、ノズル20を含むカートリッジ部1が装置内の別の支持部材に移動不能に固定されていてもよい。この実施形態の装置は、少なくとも捕集部移動機構80を備える必要がある。ノズル20が移動不能に固定されている装置としては、ノズル20に対向して配置された台座90と、台座90の中央部に載置された捕集部移動機構80と、台座90の周縁部に配置された切断部移動機構70とを備え、捕集部移動機構80と切断部移動機構70とが共通の支持部材である台座90によって支持されている装置が挙げられる。このような装置も装置全体が非常にコンパクトなものとなる。またノズル20が移動不能に固定されている装置としては、ノズル20に対向して配置された台座90と、台座90の中央部に載置された捕集部移動機構80と、台座90の周縁部に立設された支柱に移動不能に固体された切断部7とを備え、捕集部移動機構80と切断部7とが共通の支持部材である台座90によって支持されている装置が挙げられる。
図3に示す実施形態の電界紡糸装置100Aは、台座90の中央部に載置された捕集部移動機構80と、台座90の周縁部に互いに対向するように配置されたノズル移動機構50及び切断部移動機構70とを備えているが、これに代えて、電界紡糸装置は、ノズル移動機構50を有する一方、捕集部移動機構80を有しておらず、台座90の中央部に捕集部40が固定されている構成であってもよい。また、捕集部移動機構80を有する一方、切断部移動機構70を有しておらず、台座90の周縁部に立設する支柱に切断部7が固定されている構成であってもよい。これらの装置においても、ノズル移動機構50と切断部7とが、共通の支持部材である台座90によって支持されており、装置全体が非常にコンパクトなものとなる。
図4に示す実施形態の電界紡糸装置100Bは、台座90の中央部に載置された捕集部移動機構80と、台座90の周縁部に配置されたノズル移動機構50とを備え、ノズル移動機構50にノズル20を含むカートリッジ部1及び切断部7が取り付けられているが、これに代えて、電界紡糸装置は、ノズル移動機構50を有する一方、捕集部移動機構80を有しておらず、台座90の中央部に捕集部40が固定されている構造であってもよい。このような装置においても、ノズル20と切断部7とが、共通の支持部材であるノズル移動機構50によって支持されており、装置全体が非常にコンパクトなものとなる。また、捕集部移動機構80を有する一方、切断部移動機構70を有しておらず、台座90の周縁部に立設する支柱にノズル20及び切断部7が固定されている構成であってもよい。このような装置においても、ノズル移動機構50と切断部7とが、共通の支持部材である台座90によって支持されており、装置全体が非常にコンパクトなものとなる。
更に、前記の各実施形態の電界紡糸装置は、ノズル20に電圧を印加する電源である電圧印加部32を備えているが、これに代えて、電界紡糸装置は、特開2017-31517号公報に記載されているように、ノズルを備えた原料噴射部と、ノズルに対向するように配され且つ該ノズルとの間に電界を生じさせる凹曲面の対向電極と、ノズルと対向電極との間に電圧を印加する電源である電圧発生部とを備えていてもよい。同公報に記載の装置によれば、捕集部に向かって空気流を吹き付けながら、該捕集部に配された基材層上にナノファイバを堆積させることが可能となる。
1 カートリッジ部
2 収容部
3 供給部
4 開口部
5 係合接続部
6 原料液の受け入れ部
7 切断部
10 ナノファイバシート
20 ノズル
32 電圧印加部
40 捕集部
50 ノズル移動機構
70 切断部移動機構
80 捕集部移動機構
100A,100B 電界紡糸装置
F ナノファイバ

Claims (8)

  1. 原料液を収容可能な収容部、該原料液を吐出するノズル、及び該収容部から該ノズルへ該原料液を供給する供給部を有するカートリッジ部と、
    前記ノズルに電圧を印加する電源、又は前記ノズルと対向するように配され且つ該ノズルとの間に電界を生じさせる対向電極及び該ノズルと該対向電極間に電圧を印加する電源と、
    前記カートリッジ部の取付部と、
    前記原料液を電気的に延伸させて生成したナノファイバを集積する捕集部と、を備えたナノファイバシートの製造装置であって、
    前記カートリッジ部が前記取付部に着脱可能に取り付けられており、
    前記カートリッジ部が前記取付部に取り付けられた状態において、該カートリッジ部における前記供給部を駆動させるための駆動源が、該取付部に備えられている、ナノファイバシートの製造装置。
  2. 原料液を収容可能な収容部、該原料液を吐出するノズル、及び該収容部から該ノズルへ該原料液を供給する供給部を有するカートリッジ部と、
    前記ノズルに電圧を印加する電源、又は前記ノズルと対向するように配され且つ該ノズルとの間に電界を生じさせる対向電極及び該ノズルと該対向電極間に電圧を印加する電源と、
    前記カートリッジ部の取付部と、
    前記原料液を電気的に延伸させて生成したナノファイバを集積する捕集部と、を備え、
    前記カートリッジ部が前記取付部に取り付けられた状態において、該カートリッジ部における前記供給部を駆動させるための駆動源が、該取付部に備えられており、
    前記カートリッジ部において、前記収容部が前記供給部に着脱可能に取り付けられている、ナノファイバシートの製造装置。
  3. 前記カートリッジ部において、前記収容部が前記供給部に着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の製造装置。
  4. 前記取付部が、少なくとも一軸の移動機構からなる請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造装置。
  5. 前記捕集部が少なくとも一軸の移動機構を備える請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造装置。
  6. 前記カートリッジ部は前記取付部に電気的に絶縁した状態で取り付けられている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造装置。
  7. 前記取付部と、前記捕集部と、前記電源とが、共通の支持部によって支持されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の製造装置。
  8. 前記カートリッジ部において、前記収容部と、前記供給部と、前記ノズルとが直接に連結している請求項1ないし7のいずれか一項に記載の製造装置。
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