JP7349160B2 - 磁気式動力伝達構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気式動力伝達構造体の技術に関する。
従来、回転運動を並進運動に変換する機構として送りネジ機構が知られている。送りネジ機構は、対象物の駆動及び位置決めに不可欠な機械的要素であり、様々な用途で広く利用されている。一般的な送りネジ機構は、ネジとナットとを備えており、いずれか一方を回転させると他方が推進するように構成される。
工作機械では、ネジ軸とナットとの間にボールを挿入することにより、摩擦を低減し効率を高めたボールネジ機構がよく利用されており、近年では、このボールネジ機構とモータとを組み合わせたロボット用のアクチュエータも開発されている。しかしながら、一般的な送りネジ機構及びボールネジ機構は、接触力によって動力を伝達するため、振動及び騒音の発生、摩擦による発熱などの問題点を有している。
この問題点に対して、磁力を用いて動力を伝達する磁気ネジ機構が提案されている。磁気ネジ機構では、磁力を用いることにより、ネジとナットとの間で動力を非接触に伝達することができる。すなわち、動力を伝達する際に、ネジとナットとの間で摩擦が発生しないようにすることができる。そのため、磁気ネジ機構によれば、上記問題点を解決し、動力の伝達効率の向上、及び高速駆動の実現が可能となる。
また、この磁気ネジ機構は、磁気の特性により、バネのような柔軟性を外力に対して有している。そのため、磁気ネジ機構によれば、過負荷時には脱調することで、接触時の安全性を確保することができる。このことから、近年、人と共存して作業する次世代産業用ロボット及びサービスロボットの駆動源としての応用が特に期待されている。
特開2016-025700号広報 特開平11-031615号公報 国際公開第2018/092906号
特許文献1には、上記磁気ネジ機構の一例として、磁気ナットと磁気ネジとで構成される磁気ネジアクチュエータが提案されている。この磁気ネジアクチュエータでは、異なる極性の2条の螺旋状の磁極を有する磁気ネジが用いられているが、このような螺旋状に着磁された磁気ネジを作製するのは困難である。また、磁気ナットの中間回転子は、S極及びN極の磁極が交互に多数配置された環状体となっており、個々の磁極は、径方向に着磁された磁石片により形成されている。そのため、中間回転子を構成するために多数の磁石片を用いることになり、製造コストが高くなってしまう。これらの理由により、特許文献1で提案されている磁気ネジ機構は生産性に乏しいという問題点があった。
一方、特許文献2には、複数のリング状の磁石と内周面にネジ山を形成した継鉄とで磁気ナットを構成する方法が提案されている。この方法によれば、多数の磁石片を用いなくても磁気ナットを作製することができるため、磁気ネジ機構の製造コストを抑えることができる。しかしながら、特許文献2で提案される方法では、複数のリンク状の磁石を軸方向に間隔を空けて配置し、隣接する磁石の間に継鉄を配置している。そのため、磁気シールドとして、磁気ネジの径方向外側にバックヨークを配置したとすると、各磁石とバックヨークとの間で閉じた磁気回路が形成されてしまい、ネジ軸側で磁石の磁力が作用し難くなり、磁気ネジ機構の推力が落ちてしまう。また、継鉄の加工精度に比べて磁石の加工精度は低いため、隣接する継鉄との間でずれが生じてしまい、ネジ軸のネジ山と各継鉄のネジ山とを精度よく対応させるのが困難であった。これらの理由から、特許文献2で提案されている磁気ネジ機構は実用性に乏しいという問題点があった。
これらに対して、特許文献3では、軸周りに分割されて配置される複数の磁石、及び各磁石に対応して径方向内側にそれぞれ配置される複数の磁極部材により構成される筒状部材と、筒状部材の中空部に挿入されるシャフト部材と、を備える磁気式動力伝達構造体が提案されている。具体的に、当該磁気式動力伝達構造体では、複数の磁石は、径方向内側がN極となる磁石と径方向内側がS極となる磁石とを含んでおり、各磁極部材の径方向内側の面には、着磁する磁石に応じて、異なる螺旋上に沿う突出部が設けられる。シャフト部材の外周面には、それぞれの螺旋に応じた螺旋状の突条が設けられる。当該磁気式動力伝達構造体は、筒状部材及びシャフト部材のいずれか一方を回転させることにより、各突出部と各突条との位置関係を並進方向にずらして、並進方向の磁力を生じさせ、これにより、他方を並進させることができる。
当該磁気式動力伝達構造体では、軸周りに分割して配置された各磁石により各磁極部材を着磁することで、各磁極部材の突出部を磁極として利用できるようにしている。そのため、1つの磁石で複数の磁極を形成することができ、個々の磁極に応じて磁石を用意しなくてもよい。また、各磁極部材を適宜加工して突出部を形成することにより、各磁極部材に磁極を容易に設けることができる。したがって、特許文献3によれば、形成する磁極の数に対して利用する磁石の数を少なくすることができ、かつ、各磁極を容易に形成することができるため、生産性の高い磁気ネジ機構を提供することができる。加えて、当該磁気式動力伝達構造体では、各磁石と各磁極部材とを、軸方向に並べるのではなく、径方向に配置しているため、特許文献2で生じるような磁石によるネジ山のずれを生じないようにすることができる。また、筒状部材の径方向外側にバックヨークを配置しても、各磁石とバックヨークとの間で閉じた磁気回路は生じず、各磁極部材を含む磁気回路が形成されるため、磁気ネジ機構の推力は低下しない。したがって、特許文献3によれば、実用性の高い磁気ネジ機構を提供することができる。
しかしながら、本件発明者らは、特許文献3で提案される磁気ネジ機構には、次のような問題点があることを見出した。すなわち、筒状部材において、各磁極部材を着磁するために、各磁極部材の径方向外側に各磁石が配置される。この磁石の加工精度は、磁極部材の材料(例えば、電磁軟鉄、ケイ素鋼、アモルファス磁性合金等)に比べて低く、一例では、各磁石の間で凡そ0.1mm程度のずれが生じてしまう。そのため、各磁極部材を精度よく製造しても、各磁石の寸法誤差に影響を受けて、各磁極部材の軸周りの配置にずれが生じやすくなってしまう。よって、各磁極部材の各突出部とシャフト部材の各突条との間の距離の寸法精度を管理するのが困難であるという問題点がある。これに起因して、磁気ネジ機構の性能にばらつきが生じやすくなってしまう可能性がある。加えて、利用する磁石の数が比較的に増えやすい傾向にあるため、部品点数が増加しやすいという問題点がある。
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、よりシンプルな構造で寸法精度の管理しやすい磁気ネジ機構を提供することである。
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
すなわち、本発明の一側面に係る磁気式動力伝達構造体は、軸及び外周面を有し、軸方向に沿って延びるシャフト部材と、前記軸方向に貫通する中空部及び内周面を有する筒状部材であって、前記中空部に前記シャフト部材が挿入される、筒状部材と、を備え、前記シャフト部材の前記外周面には、前記軸の径方向外側に突出する突条であって、前記軸周りに螺旋状に形成された突条が設けられ、前記筒状部材の前記内周面には、前記径方向内側に突出する凸部を含む凸ユニットと、前記凸ユニットと前記軸周りに隣り合うように配置され、前記突条と対面する第1面及び前記第1面に対向する第2面を含む磁石と、が設けられ、前記磁石の前記第1面は、第1の磁極に着磁され、前記磁石の前記第2面は、前記第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される。
上記構成では、軸方向に延びるシャフト部材の外周面は、径方向外側に突出する突条であって、軸周りに螺旋状に形成された突条を備えている。一方、シャフト部材が挿入される筒状部材の内周面は、径方向内側に突出する凸部を含む凸ユニットと、凸ユニットと軸周りに隣り合うように配置され、シャフト部材の突条と対面する第1面及び第1面に対向する第2面を含む磁石とを備えている。磁石の第1面は、第1の磁極に着磁され、第2面は、第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される。つまり、第1面がN極に着磁される場合には、第2面はS極に着磁され、第1面がS極に着磁される場合には、第2面はN極に着磁される。
これにより、上記構成では、シャフト部材の突条は螺旋状に形成されているため、筒状部材及びシャフト部材のいずれか一方を回転させることにより、シャフト部材の突条を並進方向(すなわち、軸方向)にずらすことができる。また、筒状部材の凸部とシャフト部材の突条とが対面している部分で、磁石からでた磁束が、シャフト部材(突条)、凸ユニット(凸部)、及び筒状部材を通過して磁石に戻る磁気回路が形成される(磁束の向きは、各面の極性による)。すなわち、筒状部材の内周面に、凸ユニット及び磁石が隣り合うように配置されることで、凸ユニットがコンシクエントポールとなり、シャフト部材、磁石、凸ユニット、及び筒状部材において磁気回路を形成する。この磁気回路により、筒状部材の凸部とシャフト部材の突条とが互いに引き合う磁力が発生する。したがって、筒状部材及びシャフト部材のいずれか一方を回転させることで、シャフト部材の突条を筒状部材に対して並進方向にずらしたときに、筒状部材の凸部がシャフト部材の突条に対面した状態を維持するように、他方を移動させることができる。例えば、シャフト部材を回転させた場合には、シャフト部材の突条のずれに追従するように筒状部材を並進方向に移動させることができる。そのため、上記構成に係る磁気式動力伝達構造体は、磁気ネジ機構として動作することができる。
そして、上記構成に係る磁気式動力伝達構造体では、磁気回路を形成するための磁石は、凸ユニットの径方向外側には配置されず、凸ユニットと軸周りに隣り合うように配置される。そのため、磁石の寸法誤差の影響が、凸ユニット(筒状部材)の凸部とシャフト部材の突条との間の距離の寸法精度に及ぶのを避けることができる。つまり、上記構成によれば、磁石の寸法誤差を無視して、凸ユニットの凸部とシャフト部材の突条との間の距離の寸法精度を管理することができる。加えて、上記構成では、シャフト部材から見て径方向外側には、凸ユニット及び磁石の両方を配置するのではなく、凸ユニット及び磁石のいずれかが配置されればよいため、部品点数を抑えることができる。したがって、上記構成によれば、よりシンプルな構造で寸法精度の管理しやすい磁気ネジ機構を提供することができる。これにより、より安価で実用性の高い磁気ネジ機構を性能のバラツキを抑えた上で量産することができる。
なお、「軸周り」は、軸を中心とした回転方向(周方向)を指す。また、「径方向」は、軸方向に垂直な面の方向(すなわち、軸を中心とした円の半径の方向)を指す。「螺旋状」とは、軸周りに回転させながら軸方向に並進することで描くことが可能な形状を広く含む。すなわち、「螺旋状」とは、軸周りに回転させたときに、軸と平行の接線上の点がいずれかの方向にずれる形状を指す。「磁石」は、永久磁石であってもよいし、コイルにより形成される電磁石であってもよい。磁石は、スキュー着磁されていてもよい。シャフト部材の突条は、1条であってもよいし、2条以上であってもよい。シャフト部材の突条の数は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。筒状部材の少なくとも磁束の通過する部分(凸ユニットを含む)及びシャフト部材の少なくとも磁束の通過する部分は、磁性のある材料(以下、「磁性材料」とも記載する)で構成される。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記凸ユニットの前記凸部は、複数設けられてよく、前記凸ユニットの前記複数の凸部は、前記軸方向に離間して配置されてよい。当該構成によれば、より高出力の磁気ネジ機構を提供することができる。なお、凸ユニットの各凸部は、シャフト部材の突条の軸方向の並びに対応するように配置されてもよい。つまり、軸方向における凸部の間隔は、軸方向における突条の間隔と一致させてもよい。ただし、凸ユニットにおける凸部の並びは、このような例に限定されなくてもよく、軸方向における凸部の間隔は、軸方向における突条の間隔と一致していなくてもよい。凸ユニットにおける凸部の数は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記凸ユニットは、前記軸方向に隣接する凸部の間に設けられる凹部を有してもよく、前記凸ユニットの前記凹部には、非磁性材料が充填されていてもよい。当該構成によれば、凸ユニットの凸部の破損を抑制することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記凸ユニットは、前記筒状部材の前記内周面に一体形成されていてもよい。当該構成によれば、部品点数を更に抑えることができるため、更にシンプルな構造の磁気ネジ機構を提供することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記磁石の前記第1面は、前記径方向内側に突出する凸部を含んでもよい。当該構成によれば、より高出力の磁気ネジ機構を提供することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記磁石の前記凸部は、複数設けられてよく、前記磁石の前記複数の凸部は、前記軸方向に離間して配置されてもよい。当該構成によれば、より高出力の磁気ネジ機構を提供することができる。なお、磁石の各凸部は、シャフト部材の突条の軸方向の並びに対応するように配置されてもよい。つまり、軸方向における凸部の間隔は、軸方向における突条の間隔と一致させてもよい。ただし、磁石における凸部の並びは、このような例に限定されなくてもよく、軸方向における凸部の間隔は、軸方向における突条の間隔と一致していなくてもよい。磁石における凸部の数は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記凸ユニットは、複数設けられてよく、前記磁石は、複数設けられてよく、前記各凸ユニットは、前記軸周りに離間して配置されてよく、前記筒状部材の前記内周面には、前記軸周りに隣接する一対の前記凸ユニットの間にそれぞれ配置された複数の溝部が更に設けられてよく、前記各磁石は、前記各溝部に配置されてもよい。当該構成によれば、より高出力の磁気ネジ機構を提供することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記シャフト部材の前記外周面には、前記軸方向における前記突条の間に配置される凹部が設けられてよく、前記シャフト部材の前記凹部には、非磁性材料が充填されてよい。当該構成によれば、非磁性材料を凹部に充填することで、シャフト部材の突条が破損する可能性を低減することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体は、前記筒状部材の前記内周面より径方向内側に配置され、前記筒状部材の前記凸ユニットを被覆する第1被覆部材を更に備えてもよい。当該構成によれば、シャフト部材の突条に対して凸ユニットの凸部を第1被覆部材で被覆することで、シャフト部材の突条と凸ユニットの凸部との接触を抑制することができる。そのため、凸ユニットの凸部が破損する可能性を低減することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体は、前記シャフト部材の前記外周面より径方向外側に配置され、前記シャフト部材の前記突条を被覆する第2被覆部材を更に備えてもよい。当該構成によれば、凸ユニットの凸部に対してシャフト部材の突条を第2被覆部材で被覆することで、シャフト部材の突条と凸ユニットの凸部との接触を抑制することができる。そのため、シャフト部材の突条が破損する可能性を低減することができる。
また、本発明の一側面に係る磁気式動力伝達構造体は、軸及び外周面を有し、軸方向に沿って延びるシャフト部材と、前記軸方向に貫通する中空部及び内周面を有する筒状部材であって、前記中空部に前記シャフト部材が挿入される、筒状部材と、を備え、前記シャフト部材の前記外周面には、前記軸の径方向外側に突出する突条であって、前記軸周りに螺旋状に形成された突条が設けられ、前記筒状部材の前記内周面には、前記径方向内側に突出する凸部をそれぞれ含み、前記軸周りに離間して配置される複数の凸ユニットと、前記軸周りに隣接する一対の前記凸ユニットの間にそれぞれ配置された複数の溝部と、前記各溝部にそれぞれ配置され、前記一対の凸ユニットのうちの一方と対面する第1面、及び前記第1面に対向し、前記一対の凸ユニットのうちの他方と対面する第2面をそれぞれ含む複数の磁石と、が設けられ、前記各磁石の前記第1面は、第1の磁極に着磁され、前記各磁石の前記第2面は、前記第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される。当該構成に係る磁気式動力伝達構造体では、隣接する凸ユニットの間に各磁石が配置される。これにより、各凸ユニットの凸部がシャフト部材の突条に対面している間、各磁石からでた磁束が、一方の凸ユニット(凸部)、シャフト部材(突条)、他方の凸ユニット(凸部)を通過して各磁石に戻る磁気回路が形成される(磁束の向きは、各面の極性による)。この磁気回路の構成の点を除き、当該構成に係る磁気式動力伝達構造体は、上記構成に係る磁気式動力伝達構造体と同様に動作し、かつ作用効果を得ることができる。よって、当該構成によれば、よりシンプルな構造で寸法精度の管理しやすい磁気ネジ機構を提供することができる。
上記一側面に係る磁気式動力伝達構造体において、前記各凸ユニットの前記凸部は、複数設けられてよく、前記各凸ユニットの前記複数の凸部は、前記軸方向に離間して配置されてよい。当該構成によれば、より高出力の磁気ネジ機構を提供することができる。なお、各凸ユニットの凸部の並び及び数については、上記構成と同様であってよい。
また、本発明の一側面に係るアクチュエータは、上記いずれかの形態に係る磁気式動力伝達構造体と、前記磁気式動力伝達構造体の前記筒状部材又は前記シャフト部材を回転させる回転装置と、を備える。当該構成によれば、よりシンプルな構造で寸法精度の管理しやすい磁気ネジ機構を利用したアクチュエータを提供することができる。
上記一側面に係るアクチュエータは、前記筒状部材の位置を測定可能に構成された位置センサと、制御装置と、を更に備えてもよく、前記制御装置は、前記位置センサにより得られる前記筒状部材の位置の情報に基づいて、前記筒状部材が所望の位置に移動するように前記回転装置を駆動してもよい。当該構成によれば、アクチュエータの位置制御を行うことができる。
上記一側面に係るアクチュエータは、前記筒状部材の位置を測定可能に構成された位置センサと、前記シャフト部材の傾きを測定可能に構成された回転センサと、制御装置と、を更に備えてもよく、前記制御装置は、前記位置センサにより得られる前記筒状部材の位置の情報及び前記回転センサにより得られる前記シャフト部材の傾きの情報に基づいて、前記筒状部材で所望の力が発生するように前記回転装置を駆動してもよい。当該構成によれば、アクチュエータの出力制御を行うことができる。なお、シャフト部材の傾きとは、シャフト部材の回転角度、すなわち、筒状部材に対するシャフト部材の軸周りの角度のことである。
上記一側面に係るアクチュエータは、前記筒状部材の位置を測定可能に構成された位置センサと、前記シャフト部材の傾きを測定可能に構成された回転センサと、制御装置と、を更に備えてもよく、前記制御装置は、前記位置センサにより得られる前記筒状部材の位置の情報及び前記回転センサにより得られる前記シャフト部材の傾きの情報に基づいて、所望の力が得られる状態で前記筒状部材を所望の位置に移動させるように前記回転装置を駆動してもよい。当該構成によれば、アクチュエータの出力制御を行うことができる。
本発明によれば、よりシンプルな構造で寸法精度の管理しやすい磁気ネジ機構を提供することができる。
図1は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体を模式的に例示する分解図である。 図2は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体を模式的に例示する斜視図である。 図3は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体の軸方向に沿う断面を模式的に例示する断面図である。 図4は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体を模式的に例示する一部切り欠き斜視断面図である。 図5は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体の筒状部材を軸方向に沿って見た様子を模式的に例示する。 図6は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体の動作原理を説明するための部分断面斜視図である。 図7は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体の動作原理を説明するための展開図である。 図8は、実施の形態に係る磁気式動力伝達構造体の動作原理を説明するための図であって、磁気式動力伝達構造体を軸方向に沿って見た様子を模式的に例示する図である。 図9Aは、図8のA1-A1線の部分断面図である。 図9Bは、図8のB1-B1線の部分断面図である。 図10は、実施の形態に係るアクチュエータを模式的に例示する。 図11は、実施の形態に係る制御装置のハードウェア構成を模式的に例示する。 図12Aは、シャフト部材の傾きが一定の場合における筒状部材の位置と出力との関係を例示する。 図12Bは、筒状部材の位置が一定である場合におけるシャフト部材の傾きと出力との関係を例示する。 図12Cは、実施の形態に係る対応関係データの一例を例示する。 図13は、実施の形態に係る制御装置のソフトウェア構成を模式的に例示する。 図14は、実施の形態に係る制御装置によるアクチュエータの制御の一例を例示する。 図15は、実施の形態に係る制御装置によるアクチュエータの制御の一例を例示する。 図16は、実施の形態に係る制御装置によるアクチュエータの制御の一例を例示する。 図17Aは、各磁石の着磁方向の一例を例示する。 図17Bは、各磁石の着磁方向の一例を例示する。 図18は、変形例に係る磁気式動力伝達構造体を軸方向に沿って見た様子を模式的に例示する。 図19は、変形例に係る磁気式動力伝達構造体を模式的に例示する部分断面図である。 図20は、変形例に係る磁気式動力伝達構造体を模式的に例示する部分断面図である。 図21は、変形例に係る磁気式動力伝達構造体を模式的に例示する部分断面図である。 図22Aは、凸ユニットの凹部の形状の一例を例示する。 図22Bは、凸ユニットの凹部の形状の一例を例示する。 図23は、各磁石の形状の一例を例示する。
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良又は変形が行われてもよい。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。なお、以下の説明では、説明の便宜のため、図面内の向きを基準として説明を行う。
§1 構成例
まず、図1~図4を用いて、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1を模式的に例示する分解図である。図2は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1を模式的に例示する斜視図である。図3は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の軸方向に沿う断面を模式的に例示する。図4は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1を模式的に例示する一部切り欠き斜視断面図である。
各図に示されるとおり、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1は、軸31を有し、軸方向(図3の左右方向)に沿って延びるシャフト部材3と、軸方向に貫通する中空部21を有し、この中空部21にシャフト部材3が挿入される、筒状部材2と、を備えている。筒状部材2は、磁気ネジ機構のナットに対応しており、シャフト部材3は、磁気ネジ機構のネジに対応している。これにより、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1は、回転運動を並進運動に変換する磁気ネジとして利用することができる。以下、各構成要素について説明する。
[シャフト部材]
まず、シャフト部材3について説明する。本実施形態では、シャフト部材3は、軸方向に沿って延び、円柱状に形成された本体部30を備えている。この本体部30は、中実に構成されており、中心を通る軸31と、外側の面である外周面32と、を備えている。これにより、本実施形態では、シャフト部材3は、軸31及び外周面32を有し、軸方向に沿って延びるように構成されている。
シャフト部材3の外周面32には、軸31の径方向外側に突出する突条33であって、軸周りに螺旋状に形成された突条33が設けられている。軸周りとは、軸31を中心とした回転方向(周方向)を指す。また、径方向は、軸方向に垂直な面の方向(すなわち、軸31を中心とした円の半径の方向)を指す。螺旋状とは、軸周りに回転させながら軸方向に並進することで描くことが可能な形状を広く含む。すなわち、螺旋状とは、軸周りに回転させたときに、軸31と平行の接線上の点がいずれかの方向にずれる形状を指す。
各図に示されるとおり、本実施形態では、シャフト部材3の突条33は1条である。また、本実施形態では、突条33は、軸方向の一端部から他端部まで連続的に延びている。この突条33の設けられる軸方向の範囲は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。図3に示されるとおり、シャフト部材3の外周面32における突条33の設けられる範囲には、軸方向における突条33の間に配置される凹部35が設けられる。突条33及び凹部35それぞれの形状及び寸法は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。本実施形態では、突条33は、断面矩形状に形成されている。
このようなシャフト部材3は、磁性材料を用いて作製することができる。シャフト部材3の材料には、磁性材料として、例えば、軟磁性材料(電磁軟鉄、ケイ素鋼、アモルファス磁性合金等)、炭素鋼等を用いることができる。作製方法の一例として、例えば、円柱状の磁性材料を用意し、用意した磁性材料の外周面を適宜切削加工等することで、突条33を有するシャフト部材3を作製することができる。このシャフト部材3には、公知のボールねじが利用されてもよい。これにより、磁気式動力伝達構造体1の製造コストを抑えることができる。
[筒状部材]
次に、図5を更に用いて、筒状部材2について説明する。図5は、本実施形態に係る筒状部材2を軸方向に沿って見た様子を模式的に例示する。
各図に示されるとおり、本実施形態に係る筒状部材2は、軸方向に沿って延びる円筒状の本体部20を備えている。この本体部20は、軸方向に貫通する中空部21及び中空部21に隣接する内側の面である内周面22を備えている。これにより、本実施形態では、筒状部材2は、中空部21及び内周面22を有するように構成されている。
本実施形態では、筒状部材2の内周面22には、複数の凸ユニット23、複数の溝部24、及び複数の磁石25が設けられる。各図により示される例では、凸ユニット23、溝部24、及び磁石25はそれぞれ、2つずつ設けられている。各凸ユニット23は、軸周りに離間して配置される。各溝部24は、軸周りに隣接する一対の凸ユニット23の間に配置される。各磁石25は、各凸ユニット23と軸周りに隣り合うように各溝部24に配置される。
(凸ユニット)
各凸ユニット23は、軸方向に沿って延び、円弧状に形成された基部を有しており、この基部の内側の面(内周面)からそれぞれ径方向内側に突出する複数の凸部231を含んでいる。凸部231の数は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
本実施形態では、各凸部231は、軸方向に離間して配置されている。図3に示されるとおり、本実施形態では、各凸部231は、シャフト部材3の突条33の軸方向の並びに対応するように配置されている。つまり、軸方向における凸部231の間隔は、軸方向における突条33の間隔と一致している。各凸ユニット23の基部の内側の面には、更に、軸方向における凸部231の間に配置される凹部232が設けられる。
各凸部231及び各凹部232の形状及び寸法は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。図3に示されるとおり、本実施形態では、各凸部231の軸方向に沿う断面は、矩形状に形成されている。一方、各溝部24の断面は、円弧状に形成されている。また、図5に示されるとおり、軸方向に沿って見た場合における各凸部231の形状は、円弧状に形成されている。
各凸部231は、シャフト部材3の突条33に対応するように、軸周りに螺旋状に形成されてもよいし、あるいは、軸周りに沿って延びるように形成されてもよい。各凸ユニット23の軸方向の寸法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよく、筒状部材2の本体部20の軸方向の寸法と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。例えば、軸方向において、各凸ユニット23は、本体部20よりも短く形成されてもよい。
各凸ユニット23は、磁性材料を用いて形成される。上記シャフト部材3と同様に、各凸ユニット23の材料には、磁性材料として、例えば、軟磁性材料、炭素鋼等を用いることができる。各凸ユニット23は、磁性材料を適宜切削加工等することで作製することができる。本実施形態では、各凸ユニット23は、筒状部材2の本体部20の内周面22に一体形成されている。
(磁石)
一方、各磁石25は、軸方向に沿って延びており、凸ユニット23の間に形成された各溝部24に配置される。図5に示されるとおり、各磁石25の軸方向に垂直な断面は、略90度の円弧状に形成されている。これに対応して、各凸ユニット23の断面が、略90度又は90度よりやや小さい角度を有する円弧状に形成されることで、各溝部24の断面は、各磁石25と同じ又は各磁石25よりもやや大きな角度を有する円弧状に形成されている。これにより、各磁石25は、各凸ユニット23に軸周りに隣り合うように各溝部24に配置可能に形成されている。各磁石25の軸方向の寸法は、実施の形態に応じて適宜決定されてよく、筒状部材2の本体部20の軸方向の寸法と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。例えば、軸方向において、各磁石25は、本体部20よりも短く形成されてよい。
各磁石25は、径方向内側を向き、シャフト部材3の突条33と対面する内側曲面251、内側曲面251に対向する外側曲面252を含んでいる。更に、各磁石25は、軸周りに隣接する一対の凸ユニット23のうちの一方と対面する第1側面255、及び第1側面255に対向し、一対の凸ユニット23のうちの他方と対面する第2側面256を含んでいる。各曲面(251、252)は滑らかであり、各側面(255、256)は平らである。つまり、本実施形態では、内側曲面251には、各凸ユニット23と異なり、凸部は設けられていない。
本実施形態では、内側曲面251は、第1の磁極に着磁され、外側曲面252は、第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される。つまり、内側曲面251がN極に着磁される場合には、外側曲面252はS極に着磁され、内側曲面251がS極に着磁される場合には、外側曲面252はN極に着磁される。どちらの場合でも、磁気式動力伝達構造体1の動作原理は同じである。そのため、以下では、説明の便宜のため、内側曲面251がS極に着磁されており、外側曲面252がN極に着磁されていると想定し、他方の場合の説明を適宜省略する。内側曲面251は、本発明の「第1面」の一例であり、外側曲面252は、本発明の「第2面」の一例である。各磁石25は、永久磁石であってもよいし、コイルにより形成される電磁石であってもよい。また、各磁石25は、スキュー着磁されていてもよい。
(作製方法)
このような筒状部材2は、例えば、次のようにして作製することができる。すなわち、本体部20を構成するための円柱状の磁性材料を用意する。用意する磁性材料は、上記シャフト部材3と同様に、軟磁性材料、炭素鋼等であってよい。次に、用意した磁性材料を適宜加工することで、中空部21と共に各凸ユニット23及び各溝部24を本体部20に形成する。各凸ユニット23の部分の面には、切削加工等により、各凸部231を構成する歯を刻む。そして、各磁石25を用意し、用意した各磁石25を各溝部24に配置する。これにより、上記筒状部材2を作製することができる。
本実施形態では、各凸ユニット23及び各磁石25を含む筒状部材2の中空部21の内径は、突条33を含むシャフト部材3の外径よりもやや大きくなるように設定される。これにより、筒状部材2の各凸部231及び各磁石25にシャフト部材3の突条33が干渉することなく、シャフト部材3を中空部21に挿入し、各凸ユニット23及び各磁石25の径方向内側に突条33を配置することができる。
また、本実施形態では、筒状部材2の軸方向の長さは、シャフト部材3の軸方向の長さよりも短くなるように設定される。そのため、本実施形態では、図1~図4に例示されるとおり、シャフト部材3を筒状部材2に挿入したときに、シャフト部材3は、筒状部材2の開口部両側からシャフト部材3の両端部が突出するように配置される。
なお、図5により示される例では、各溝部24が各磁石25よりやや大きくなっており、これにより、各磁石25の各側面(255、256)と各凸ユニット23との間には隙間が設けられている。ただし、各溝部24の寸法は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。例えば、各溝部24と各磁石25とをほぼ同じ寸法で形成することで、各側面(255、256)と各凸ユニット23との間に隙間がほぼ生じないようにしてもよい。
§2 動作例
次に、図6~図8、図9A及び図9Bを用いて、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の動作例について説明する。図6は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の動作原理を説明するための部分断面斜視図である。図7は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の動作原理を説明するための展開図である。図8は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1を軸方向に沿って見た様子を模式的に例示する。図9Aは、図8のA1-A1線の部分断面図である。図9Bは、図8のB1-B1線の部分断面図である。本動作例では、説明の便宜上、筒状部材2は、軸周りに回転不能でかつ軸方向に並進可能に固定されているとし、シャフト部材3は、軸周りに回転可能でかつ軸方向に並進不能に固定されていると想定する。
各図により示される場面では、筒状部材2の各凸ユニット23に形成された各凸部231は、シャフト部材3の突条33と対面している。この状態では、N極に着磁されている各磁石25の外側曲面252から出た磁束は、本体部20を経由して各凸ユニット23の各凸部231に進入する。本体部20は、磁性材料で形成されることで、バックヨーク(磁気シールド)として機能することができる。各凸部231に進入した磁束は、各凸ユニット23から放出され、シャフト部材3の突条33に進入する。突条33に進入した磁束は、突条33内又は/及び軸体を経由して、各磁石25と対面する部分まで到達し、この部分から、S極に着磁された各磁石25の内側曲面251に向けて放出される。
つまり、本実施形態では、筒状部材2の内周面22において、各凸ユニット25及び各磁石25が隣り合うように配置されることで、各凸ユニット25がコンシクエントポールとなる。各磁石25から放出された磁束が、筒状部材2(本体部20)、各凸ユニット23(凸部231)、及びシャフト部材3(突条33)の順で通過し、再び各磁石25に戻る磁気回路が形成される。図7に示されるとおり、この磁気回路により、各凸部231の表面がN極として作用するのに対して、突条33の各凸部231と対面する部分がS極として作用する。また、突条33の各磁石25と対面する部分がN極として作用する。内側曲面251がN極に着磁され、外側曲面252がS極に着磁されている場合にも、磁束の向きが反対であるものの、上記と同じように磁気回路が形成される。これにより、本実施形態では、筒状部材2の各凸部231とシャフト部材3の突条33との間で磁気による引力が作用する。こうして、筒状部材2及びシャフト部材3により、磁気ネジ機構が構成される。
この状態で、シャフト部材3を反時計回りに回転させると、シャフト部材3の突条33は、螺旋状に形成されているため、筒状部材2に対して軸方向(図9Aの左右方向)に並進する。本実施形態では、突条33は、右螺旋に形成されている。そのため、図9Aの例では、突条33は、右方向に並進する。これにより、シャフト部材3の突条33は、筒状部材2の各凸部231に対して軸方向にずれるように移動する。この移動に対して、各磁石25による上記引力は、突条33と各凸部231との位置関係を維持するように作用する。そのため、この磁力の作用を超えた負荷がかからない限りは、筒状部材2は、突条33の並進した分だけ軸方向に並進する。つまり、図9Aの例では、突条33の右方向の並進に追従するように、筒状部材2は、右方向に並進する。
以上の作用により、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1は、シャフト部材3を回転させることで、筒状部材2を軸方向に並進させることができる。なお、シャフト部材3の回転方向は反時計回りに限定されなくてもよい。シャフト部材3は時計回りに回転させてもよい。シャフト部材3を時計回りに回転させた場合、図9Aの例では、突条33は左方向に並進し、筒状部材2は、この突条33の並進に追従して左方向に並進する。つまり、シャフト部材3の回転方向により、筒状部材2の移動方向を決定することができる。
また、上記動作例では、筒状部材2は軸周りに回転不能に固定されており、シャフト部材3は軸割に回転可能に固定されていると仮定した。しかしながら、筒状部材2及びシャフト部材3の固定状態はこのような例に限定されなくてもよい。筒状部材2が、軸周りに回転可能に固定され、シャフト部材3が軸周りに回転不能に固定されてもよい。この場合、筒状部材2を軸周りに回転させることで、筒状部材2及びシャフト部材3の位置関係を並進方向(軸方向)にずらすことができる。
§3 使用例
次に、図10を用いて、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の使用例として、上記の磁気式動力伝達構造体1を用いたアクチュエータについて説明する。図10は、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1を用いたアクチュエータ100の構成の一例を模式的に例示する。
本実施形態では、アクチュエータ100は、平板状のベースプレート101を備えており、このベースプレート101には、矩形状の3つの固定部材102~104が軸方向に並んで配置されている。シャフト部材3の一端部は、軸受け105を介して固定部材102に回転可能に固定されている。また、シャフト部材3は、他端部側に配置された各固定部材(103、104)にも回転可能に固定されている。シャフト部材3の他端部には回転モータ111が取り付けられており、かつこの回転モータ111と固定部材104を挟むようにカップリング106が取り付けられている。これにより、シャフト部材3は、回転可能にかつ並進不能に固定されている。
一方、筒状部材2は、一対の固定部材(102、103)の間に配置されている。ベースプレート101の面には、軸方向に沿って延びるリニアガイド107が設けられており、筒状部材2の底面は、このリニアガイド107に取り付けられている。これにより、筒状部材2は、回転不能にかつ並進可能に固定されている。また、筒状部材2の一端部側の面には、固定部材102よりも先に延びる4つの出力用シャフト112が取り付けられており、出力用シャフト112の先端にはロッドエンド113が取り付けられている。出力用シャフト112及びロッドエンド113により出力軸が構成されている。
回転モータ111は、「回転装置」の一例であり、シャフト部材3を時計回り又は反時計回りに回転させる。回転モータ111には、市販の回転型モータが用いられてよい。この回転モータ111の回転軸には、シャフト部材3の傾きを特定可能なように、回転モータ111の回転量を測定する回転センサ117が取り付けられている。回転センサ117の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。回転センサ117には、例えば、公知のロータリエンコーダが用いられてよい。なお、シャフト部材3の傾きとは、シャフト部材3の回転角度、すなわち、筒状部材2に対するシャフト部材3の軸周りの角度のことである。図10の例では、回転センサ117は、シャフト部材3の他端部に取り付けられている。ただし、回転センサ117の配置は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。回転センサ117は、例えば、シャフト部材3の一端部の近傍に配置されるように、軸受け105に取り付けられてもよい。回転センサ117を回転モータ111の後端に取り付けた場合、回転モータ111に付属する減速機(不図示)の分だけ計測誤差が生じる可能性がある。これに対して、回転センサ117を軸受け105に取り付けた場合には、シャフト部材3の回転を直接的に計測することができる。そのため、回転モータ111によるシャフト部材3の回転量を正確に計測することができる。
また、ベースプレート101には、シャフト部材3に対する筒状部材2の位置を特定可能なように、位置センサ116が取り付けられている。ただし、位置センサ116の配置は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。位置センサ116は、例えば、筒状部材2に取り付けられてもよい。この位置センサ116には、例えば、公知のリニアエンコーダが用いられてよい。位置センサ116の種類は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
このアクチュエータ100は、次のように動作することができる。すなわち、回転モータ111を駆動することにより、シャフト部材3を時計回り又は反時計回りに回転させることができる。そして、このシャフト部材3の回転に応じて、上記のとおり、筒状部材2を軸方向に並進させることができる。したがって、本実施形態に係るアクチュエータ100では、回転モータ111を駆動することによって、出力用シャフト112及びロッドエンド113で構成された出力軸を並進させることができる。
[制御装置]
(ハードウェア構成)
次に、図11を用いて、上記のようなアクチュエータ100の動作を制御するための制御装置の一例について説明する。図11は、本実施形態に係る制御装置9のハードウェア構成を模式的に例示する。
図11に例示されるように、本実施形態に係る制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む制御部91、制御部91で実行されるプログラム921等を記憶する記憶部92、及び外部装置と接続するための外部インタフェース93が電気的に接続されたコンピュータである。ただし、図11では、外部インタフェースを「外部I/F」と記載している。
上記磁気式動力伝達構造体1では、シャフト部材3に対する筒状部材2の位置とシャフト部材3の傾きとが定まれば、シャフト部材3の突条33と筒状部材2の各凸ユニット23における各凸部231との位置関係が定まるため、筒状部材2に作用する推進方向の力(以下、「出力」とも記載する)が定まる。そこで、本実施形態に係る制御装置9は、筒状部材2の位置z及びシャフト部材3の傾きθと筒状部材2に作用する出力Fとの関係を示す対応関係データ922を記憶部92に保持している。
ここで、図12A~図12Cを用いて、対応関係データ922について説明する。図12Aは、シャフト部材3の傾きθが一定である場合における筒状部材2の位置zと出力Fとの関係を示している。また、図12Bは、筒状部材2の位置zが一定である場合におけるシャフト部材3の傾きθと出力Fとの関係を示している。更に、図12Cは、対応関係データ922の一例を示す。
例えば、アクチュエータ100を作製した後に、シャフト部材3を傾きθに傾けて、筒状部材2を位置zaに配置する。そして、シャフト部材3の傾きθを一定に保持したまま、この筒状部材2を所定間隔毎に移動させて、筒状部材2に作用する力を出力Fとして測定する。これにより、図12Aに例示されるような筒状部材2の位置zと出力Fとの関係を示すデータを得ることができる。なお、図12Aの例では、位置zaは、シャフト部材3が傾きθに傾いているときに、筒状部材2の各凸部231とシャフト部材3の突条33とが対面状態にあるような筒状部材2の位置を示している。また、Lは、突条33の軸方向に隣接する山の間隔を示している。
同様に、アクチュエータ100を作製した後に、筒状部材2を位置zに配置して、シャフト部材3を傾きθaに傾ける。そして、筒状部材2の位置zを一定に保持したまま、シャフト部材3を所定角度毎に傾けて、筒状部材2に作用する力を出力Fとして測定する。これにより、図12Bに例示されるようなシャフト部材3の傾きθと出力Fとの関係を示すデータを得ることができる。なお、図12Bの例では、傾きθaは、筒状部材2が位置zにあるときに、筒状部材2の各凸部231とシャフト部材3の突条33とが対面状態にあるようなシャフト部材3の傾きを示している。
そして、図12A及び図12Bに示されるようなデータを得ることにより、図12Cに例示される筒状部材2の位置z及びシャフト部材3の傾きθと出力Fとの関係を示す対応関係データ922を得ることができる。なお、このような対応関係データ922は、近似関数で与えられてもよいし、テーブル形式のデータで与えられてもよい。
また、本実施形態に係る制御装置9は、各外部インタフェース93を介して、回転モータ111、位置センサ116、及び回転センサ117に接続している。そのため、制御装置9は、位置センサ116及び回転センサ117の出力により、筒状部材2の位置z及びシャフト部材3の傾きθの値を取得することができる。そして、制御装置9は、対応関係データ922を参照し、筒状部材2の位置z及びシャフト部材3の傾きθの値に基づいて、駆動するアクチュエータ100の出力Fを特定し、この出力Fに応じた回転方向及び速度(PWM入力)で回転モータ111を駆動する。これにより、制御装置9は、アクチュエータ100の動作を制御することができる。具体的な制御方法に関しては、後述する制御例で詳細に説明する。
なお、制御装置9の具体的なハードウェア構成に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が可能である。また、制御装置9は、提供されるサービス専用に設計された情報処理装置の他、デスクトップ型PC(Personal Computer)、タブレットPC等の汎用の情報処理装置であってもよい。更に、制御装置9は、1又は複数台の情報処理装置により構成されてよい。
(ソフトウェア構成)
次に、図13を用いて、本実施形態に係る制御装置9のソフトウェア構成の一例について説明する。図13は、本実施形態に係る制御装置9のソフトウェア構成の一例を模式的に例示する。本実施形態では、制御装置9の制御部91が、記憶部92に記憶されたプログラム921をRAMに展開する。そして、制御部91は、RAMに展開されたプログラム921をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これにより、制御装置9は、ソフトウェアモジュールとして位置制御部911及び力制御部912を備えるコンピュータとして動作する。
位置制御部911は、筒状部材2を所望の位置ztargetに移動させるようにアクチュエータ100の動作を制御する。一方、力制御部912は、筒状部材2から所望の出力Ftargetが得られるようにアクチュエータ100の動作を制御する。なお、本実施形態では、これらのソフトウェアモジュールがいずれも汎用のCPUによって実現される例を説明している。しかしながら、これらのソフトウェアモジュールの一部又は全部が、1又は複数の専用のプロセッサにより実現されてもよい。また、制御装置9のソフトウェア構成に関して、実施形態に応じて、適宜、ソフトウェアモジュールの省略、置換、及び追加が行われてもよい。各ソフトウェアモジュールに関しては後述する動作例で詳細に説明する。
(制御例)
次に、本実施形態に係る制御装置9によるアクチュエータ100の動作制御の一例について説明する。制御装置9は、以下の3つの方法で、アクチュエータ100の動作を制御する。
(1)位置制御
まず、図14を用いて、制御装置9による筒状部材2(出力軸)の位置制御の一例について説明する。図14は、制御装置9による筒状部材2の位置制御の方法の一例を例示する。図14の例では、制御装置9は、位置センサ116により得られる筒状部材2の位置zの情報のみで、アクチュエータ100の動作を制御する。
具体的には、制御装置9の制御部91は、位置制御部911として動作して、位置センサ116の出力に基づいて、筒状部材2の位置zの値を取得する。また、制御部91は、筒状部材2の所望の位置ztargetの値を受け付ける。所望の位置ztargetの値は、適宜取得されてよい。例えば、所望の位置ztargetの値は、他のコンピュータからの入力により得られてもよいし、所望の動作アルゴリズム(例えば、出力軸に外力が作用したときに、筒状部材2の位置を一定に保つ)に従って算出することにより得られてもよい。
続いて、制御部91は、所望の位置ztargetの値と位置センサ116から取得した位置zの値との差分に基づいて、筒状部材2を所望の位置ztargetに移動させるための回転モータ111の回転方向を特定する。そして、制御部91は、特定した回転方向に所定の速度で駆動する指令を回転モータ111に与える。
回転モータ111を駆動する所定の速度は、任意であってよい。例えば、制御部91は、所望の位置ztargetの値と位置センサ116から取得した位置zの値との差分の大きさに応じた速度で駆動する指令を回転モータ111に与えてもよい。また、例えば、制御部91は、所望の位置ztargetの値と位置センサ116から取得した位置zの値との差分の大きさとは無関係に、一定の速度で駆動する指令を回転モータ111に与えてもよい。
これにより、アクチュエータ100は、筒状部材2が所望の位置ztargetに移動するように制御される。なお、本制御を行う場合、制御装置9は、回転センサ117の出力を利用しない。そのため、この制御方法を採用する場合には、回転センサ117は省略されてもよい。
(2)力制御
次に、図15を用いて、制御装置9によるアクチュエータ100の力制御の一例について説明する。図15は、制御装置9によるアクチュエータ100の力制御の方法の一例を例示する。図15の例では、制御装置9は、筒状部材2の位置zの情報を位置センサ116から取得し、シャフト部材3の傾きθの情報を回転センサ117から取得する。そして、制御装置9は、これらの情報(出力)に基づいて、アクチュエータ100の筒状部材2(出力軸)に発生する力Fが所望の値になるように、アクチュエータ100の動作を制御する。
具体的には、制御装置9の制御部91は、力制御部912として動作して、位置センサ116の出力に基づいて、筒状部材2の位置zの値を取得する。また、制御部91は、回転センサ117の出力に基づいて、シャフト部材3の傾きθの値を取得する。更に、制御部91は、筒状部材2(出力軸)で発生させる所望の力Ftargetの値を受け付ける。所望の力Ftargetの値は、適宜取得されてよい。例えば、所望の力Ftargetの値は、他のコンピュータからの入力により得られてもよいし、所望の動作アルゴリズム(例えば、筒状部材2をバネのように動作させる。すなわち、出力軸に外力が作用し、筒状部材2が変位したときに、元の位置の方向に変位量に応じた力を筒状部材2に発生させる。)に従って算出することにより得られてもよい。
続いて、制御部91は、対応関係データ922を参照することで、位置センサ116から取得した筒状部材2の位置zの値及びシャフト部材3の傾きθの値に応じて、筒状部材2(出力軸)で発生している力Fの値を特定する。更に、制御部91は、筒状部材2(出力軸)で発生している力Fの値と所望の力Ftargetの値との差分に基づいて、筒状部材2(出力軸)で所望の力Ftargetを発生させるように、回転モータ111の回転方向と速度とを決定する。そして、制御部91は、決定した回転方向及び速度で駆動する指令を回転モータ111に与える。これにより、アクチュエータ100は、出力軸を介して所望の力Ftargetが得られるように制御される。
(3)位置及び力制御
次に、図16を用いて、制御装置9による筒状部材2(出力軸)の位置及び力制御の一例について説明する。図16は、制御装置9による筒状部材2の位置及び力制御の方法の一例を例示する。図16の例では、制御装置9は、筒状部材2の位置zの情報を位置センサ116から取得し、シャフト部材3の傾きθの情報を回転センサ117から取得する。そして、制御装置9は、これらの情報(出力)に基づいて、所望の力Ftargetが得られる状態で筒状部材2(出力軸)を所望の位置ztargetに移動させるように、アクチュエータ100の動作を制御する。
具体的には、制御装置9の制御部91は、位置センサ116の出力に基づいて、筒状部材2の位置zの値を取得する。また、制御部91は、回転センサ117の出力に基づいて、シャフト部材3の傾きθの値を取得する。
次に、制御部91は、位置制御部911として動作して、筒状部材2の所望の位置ztargetの値を受け付ける。所望の位置ztargetの値は、上記のとおり、適宜取得されてよい。そして、制御部91は、所望の位置ztargetの値と位置センサ116から取得した位置zの値との差分に基づいて、筒状部材2(出力軸)で発生させる所望の力Ftargetの値を決定する。
所望の力Ftargetの値の決定方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、制御部91は、筒状部材2(出力軸)をバネのように動作させるように、所望の力Ftargetの値を決定してもよい。換言すると、制御部91は、出力軸に外力が作用し、筒状部材2が変位したときに、元の位置(所望の位置ztarget)の方向に上記位置の値の差分に応じた力を発生させるように、所望の力Ftargetの値を決定してもよい。また、例えば、制御部91は、所望の力Ftargetの値を一定の値に固定してもよい。
続いて、制御部91は、力制御部912として動作し、対応関係データ922を参照することで、位置センサ116から取得した筒状部材2の位置zの値及びシャフト部材3の傾きθの値に応じて、筒状部材2(出力軸)で発生している力Fの値を特定する。更に、制御部91は、筒状部材2(出力軸)で発生している力Fの値と所望の力Ftargetの値との差分に基づいて、筒状部材2(出力軸)で所望の力Ftargetを発生させるように、回転モータ111の回転方向と速度とを決定する。そして、制御部91は、決定した回転方向及び速度で駆動する指令を回転モータ111に与える。これにより、アクチュエータ100は、所望の力Ftargetが得られる状態で筒状部材2(出力軸)を所望の位置ztargetに移動させるように制御される。なお、説明の便宜上、上記図15及び図16では、回転センサ117は、シャフト部材3に取り付けられている。しかしながら、回転センサ117の位置は、このような例に限定されなくてもよく、図10と同様に回転モータ111の後端部に取り付けられてもよいし、軸受け105に取り付けられてもよい。
§4 特徴
以上のとおり、本実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1では、磁気回路を形成するための各磁石25は、各凸ユニット23の径方向外側には配置されず、各凸ユニット23と軸周りに隣り合うように配置される。そのため、各磁石25の寸法誤差の影響が、各凸ユニット23の各凸部231とシャフト部材3の突条33との間の距離の寸法精度に及ぶのを避けることができる。つまり、各磁石25の寸法誤差の影響を考慮することなく、各凸ユニット23の各凸部231とシャフト部材3の突条33との間の距離の寸法誤差を管理することができる。加えて、本実施形態では、シャフト部材3から見て径方向外側に、凸ユニット23及び磁石25の両方を配置するのではなく、凸ユニット23及び磁石25のいずれかが配置されればよいため、部品点数を抑えることができる。本実施形態では、各凸ユニット23を筒状部材2の内周面22に一体形成することで、更に部品点数を抑えることができる。具体的には、内周面22に2つの凸ユニット23の形成された筒状部材2、2つの磁石25、及びシャフト部材3の4つの部品で磁気式動力伝達構造体1を構成することができる。したがって、本実施形態によれば、よりシンプルな構造で寸法精度の管理しやすい磁気ネジ機構を提供することができる。これにより、より安価で実用性に富んだ磁気ネジ機構を性能のバラツキを抑えた上で量産することができる。
なお、本実施形態では、各磁石25には、回転型モータ等に広く利用されている磁石を利用することができる。そのため、各磁石25は安価に入手することができる。また、各凸ユニット23において、各凸部231は、各磁石25により着磁され、磁極として機能する。この磁極を設けるための工程は、凸ユニット23の内周面に各凸部231を設ける工程に過ぎない。そのため、筒状部材2側に形成する磁極、すなわち、凸部231の数は容易に調整することができる。これにより、磁気ネジ機構により出力の大きさを適宜調節することができる。したがって、本実施形態によれば、生産性に優れ、かつ実用性の高い磁気ネジ機構を提供することができる。
§5 変形例
以上、本発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。また、上記磁気式動力伝達構造体1の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。上記磁気式動力伝達構造体1の各構成要素の形状及び寸法は、実施の形態に応じて、適宜設定されてもよい。例えば、以下の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。また、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。
<5.1>
上記実施形態では、筒状部材2には、凸ユニット23、溝部24、及び磁石25がそれぞれ2つずつ設けられている。しかしながら、筒状部材2に設けられる凸ユニット23、溝部24、及び磁石25の数は、2つに限られなくてもよく、3つ以上であってもよい。また、筒状部材2に設けられる凸ユニット23、溝部24、及び磁石25の数は、複数に限られなくてもよく、1つであってもよい。更に、上記の磁気回路を形成可能であれば、凸ユニット23及び磁石25の数は互いに一致していなくてもよい。例えば、1つの溝部24に複数の磁石25が配置されてもよい。
また、上記実施では、各凸ユニット23の内側の面には、複数の凸部231が設けられている。図9Aにより示される例では、各凸ユニット23には、5つの凸部231が設けられている。しかしながら、各凸ユニット23に設けられる凸部231の数は、このような例に限定されなくてもよく、6つ以上であってもよいし、4つ以下であってもよい。また、各凸ユニット23に設けられる凸部231の数は、複数でなくてもよく、1つであってもよい。
<5.2>
上記実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1の各構成要素の形状及び寸法は、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。
例えば、上記実施形態では、シャフト部材3の本体部30は中実に構成されている。しかしながら、本体部30の形状は、このような例に限定されなくてもよい。各磁石25の磁束は、シャフト部材3の中心部分までは殆ど到達しない。そのため、シャフト部材3の中心部分は、上記磁気の作用には殆ど影響を与えない部分である。そこで、本体部30は、中空となるように、例えば、円筒状に形成されてもよい。これにより、上記磁気の作用に殆ど影響を与えることなく、シャフト部材3を軽量化することができる。なお、強度の観点から、シャフト部材3の本体部30を中空に形成した場合、樹脂材料等の非磁性材料をその中空部に充填してもよい。
また、上記実施形態では、シャフト部材3の突条33は1条である。しかしながら、突条33の数は、1条に限られなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、シャフト部材3には、2条以上の突条33が形成されてもよい。
また、上記実施形態では、突条33は、軸方向の一端部から他端部まで連続している。しかしながら、突条33は、このような形状に限定されなくてもよく、部分的に途切れていてもよい。更に、上記実施形態では、突条33は、右螺旋に形成されている。しかしながら、突条33の形態は、このような例に限定されなくてもよい。突条33は、左螺旋に形成されてもよい。
また、上記実施形態では、各凸ユニット23は、内周面22に一体形成されている。しかしながら、各凸ユニット23の形態は、このような例に限定されなくてもよい。各凸ユニット23は、本体部20の内周面22と別体に形成されてもよい。この場合、各凸ユニット23は、本体部20の内周面22に適宜取り付けられてよい。例えば、筒状部材2は、各凸ユニット23を所定の位置に固定するための固定具を備えてもよい。
また、上記実施形態では、各凸ユニット23の各凸部231の軸方向に沿う断面形状は矩形状である。しかしながら、各凸部231の断面形状は、矩形状に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。各凸部231の軸方向に沿う断面形状は、例えば、三角形状、台形状等であってよい。なお、加工のしやすさの観点から、各凸部231の軸方向に沿う断面形状は、上記実施形態のとおり、矩形状であるのが好ましい。
また、上記実施形態では、各凸ユニット23の各凸部231は、軸方向に沿って見た場合に、円弧状に形成されている。しかしながら、各凸部231の軸方向から見た形状は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。各凸部231の軸方向から見た形状は、例えば、台形状等であってもよい。
また、上記実施形態では、軸方向における凸部231の間隔は、軸方向における突条33の間隔と一致している。しかしながら、凸ユニット23における凸部231の並びは、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。軸方向における凸部231の間隔は、軸方向における突条33の間隔と一致していなくてもよい。
また、上記実施形態では、各磁石25は、略90度の断面円弧状に形成されている。しかしながら、各磁石25の形状は、このような例に限定されなくてもよい。上記のような磁気回路を構成可能であれば、各磁石25の形状は、実施の形態に応じて適宜決定されてよい。
また、上記実施形態では、筒状部材2の外形は円形状に形成されている。しかしながら、筒状部材2の外形は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。筒状部材2の内周面22側と外周面側とで形状が相違していてもよい。更に、筒状部材2の外側には、ハウジング等を適宜設けてもよい。
<5.3>
上記実施形態では、筒状部材2及びシャフト部材3それぞれの材料の一例として磁性材料を挙げた。しかしながら、筒状部材2及びシャフト部材3それぞれの材料は磁性材料に限られなくてもよい。例えば、筒状部材2及びシャフト部材3それぞれの磁気回路の構成に影響の少ない部分には非磁性材料が用いられてよい。
非磁性材料は、例えば、樹脂材料、非磁性体の金属材料であってよい。樹脂材料として、例えば、ABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)、PLA(polylactic acid)、ナイロン、ポリアセタール、PEEK(polyetheretherketone)、PPS(polyphenylenesulfide)等を挙げることができる。非磁性体の金属材料として、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム等を挙げることができる。
<5.4>
また、上記実施形態では、各磁石25の内側曲面251は、第1の磁極に着磁され、外側曲面252は、第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される。この着磁を行う方法は、特に限定されなくてもよい。各磁石25の着磁は、実施の形態に応じて適宜行われてもよい。
図17A及び図17Bは、各磁石25の着磁方向の一例を例示する。図17Aは、各磁石25をラジアル着磁により作製した例を示す。また、図17Bは、各磁石25をパラレル着磁により作製した例を示す。各磁石25を着磁する方法は、このラジアル着磁及びパラレル着磁のいずれであってもよい。
ただし、図17Aに示されるようなラジアル着磁によって、法線方向に磁束が向くような断面円弧状の磁石を正確に作製するのは比較的に困難である。そのため、作製コストを抑える観点からは、図17Bに示されるパラレル着磁により各磁石25を作製するのが好ましい。この場合、それぞれパラレル着磁された複数の磁石を軸周りに連結して、各磁石25を構成してもよい。これにより、法線方向に磁束が向く断面円弧状の磁石を疑似的に安価で作製することができる。
<5.5>
上記実施形態に係るアクチュエータ100では、シャフト部材3を回転させるための回転装置として、回転モータ111(回転型モータ)が利用されている。しかしながら、回転装置の種類は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
また、上記実施形態では、シャフト部材3に回転モータ111が取り付けられている。そして、シャフト部材3が回転可能にかつ並進不能に固定されるのに対して、筒状部材2が回転不能にかつ並進可能に固定されている。しかしながら、筒状部材2及びシャフト部材3の固定形態は、このような例に限定されなくてもよい。筒状部材2及びシャフト部材3のいずれか一方を回転可能にかつ並進不能に固定し、他方を回転不能にかつ並進可能に固定するようにしてよい。これにより、筒状部材2及びシャフト部材3のいずれか一方を回転させることで、他方から並進方向の出力を得ることができる。
例えば、筒状部材2に回転モータ111を取り付けることで、アクチュエータ100は、筒状部材2が回転するように構成されてもよい。また、回転型モータのように、筒状部材2をハウジング内に収容し、ハウジングと筒状部材2との間にスペーサ及びコイルを配置して、ハウジング内で筒状部材2が回転するように構成されてもよい。
また、例えば、アクチュエータ100は、筒状部材2及びシャフト部材3のいずれか一方を軸方向に並進させて、他方から回転運動を取り出すように構成されてもよい。筒状部材2及びシャフト部材3のいずれか一方の並進は、例えば、手動により行われてもよいし、リニアモータ、流体圧シリンダにより行われてもよい。また、回転運動を取り出すように構成する例として、シャフト部材3に浮きを付けて、波の力でシャフト部材3を並進運動させるようにし、これによって、筒状部材2を回転させて発電を行うようにしてもよい。更に、自動車等のアクティブサスペンションとして磁気式動力伝達構造体1を利用してもよい。
<5.6>
上記実施形態では、各磁石25の内側曲面251が第1の磁極に着磁され、外側曲面252が第2の磁極に着磁されている。しかしながら、各磁石25の着磁方向は、このような例に限定されなくてもよく、第1側面255が第1の磁極に着磁され、第2側面256が第2の磁極に着磁されてもよい。
図18は、本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Aを軸方向に沿って見た様子を模式的に例示する。本変形例では、各磁石25Aは、第1側面255が第1の磁極に着磁され、第2側面256が第2の磁極に着磁される。つまり、第1側面255がN極に着磁される場合には、第2側面256はS極に着磁され、第1側面255がS極に着磁される場合には、第2側面256はN極に着磁される。どちらの場合でも、磁気式動力伝達構造体1Aの動作原理は同じである。そのため、以下では、説明の便宜のため、第1側面255がN極に着磁され、第2側面256がS極に着磁されていると想定し、他方の場合の説明を適宜省略する。本変形例では、第1側面255が、本発明の「第1面」の一例であり、第2側面256が、本発明の「第2面」の一例である。第1側面255と第2側面256との位置関係は入れ替わってもよい。
また、本変形例では、筒状部材2Aの本体部20Aは、非磁性材料により形成される。本体部20Aの材料には、非磁性材料として、例えば、樹脂材料、非磁性体の金属材料等が用いられてよい。上記のとおり、樹脂材料として、例えば、ABS、PLA、ナイロン、ポリアセタール、PEEK、PPS等を挙げることができる。非磁性体の金属材料として、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム等を挙げることができる。この本体部20Aの内周面に、磁性材料で形成された各凸ユニット23が適宜取り付けられる。
これらの点を除き、各磁石25Aは、上記実施形態に係る各磁石25と同様であり、本体部20Aは、上記実施形態に係る本体部20と同様である。また、本変形例に係る筒状部材2Aは、上記実施形態に係る筒状部材2と同様に構成され、本変形例に磁気式動力伝達構造体1Aは、上記実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1と同様の構成を有する。
すなわち、本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Aは、軸方向に沿って延びるシャフト部材3と、軸方向に貫通する中空部21を有する筒状部材2Aであって、中空部21にシャフト部材3が挿入される、筒状部材2Aと、を備える。シャフト部材3の外周面32には、軸周りに螺旋状に形成された突条33が設けられている。一方、筒状部材2Aの内周面22には、複数の凸ユニット23と、複数の溝部24と、複数の磁石25Aと、が設けられている。各凸ユニット23は、径方向内側に突出する凸部231を含み、軸周りに離間して配置される。各溝部24は、軸周りに隣接する一対の凸ユニット23の間に配置される。各磁石25Aは、各溝部24に配置され、一対の凸ユニット23のうちの一方と対面する第1側面255、及び第1側面255に対向し、一対の凸ユニット23のうちの他方と対面する第2側面256を含む。
図18の例では、凸ユニット23、溝部24、及び磁石25Aはそれぞれ、2つずつ設けられている。ただし、凸ユニット23、溝部24、及び磁石25Aの数は、2つに限られなくてもよく、3つ以上であってもよい。また、各凸ユニット23に設けられる凸部231の数は、複数であってもよいし、1つであってもよい。各凸ユニット23に複数の凸部231が設けられる場合、各凸部231は、軸方向に離間して配置される。
本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Aでは、筒状部材2Aの各凸ユニット23の凸部231がシャフト部材3の突条33と対面している状態で、次のような磁気回路が形成される。すなわち、図18に示されるとおり、N極に着磁されている各磁石25Aの第1側面255から放出された磁束は、一対の凸ユニット23のうちの一方に進入して、凸部231に到達する。一方の凸ユニット23の凸部231に到達した磁束は、当該一方の凸ユニット23から放出され、シャフト部材3の突条33に進入する。突条33に進入した磁束は、突条33内又は/及び軸体を経由して、他方の凸ユニット23と対面する部分まで到達し、この部分から、他方の凸ユニット23の凸部231に向けて放出される。他方の凸ユニット23の凸部231に進入した磁束は、当該他方の凸ユニット23を経由して、S極に着磁されている各磁石25Aの第2側面256に到達する。
これにより、本変形例では、各磁石25Aから放出された磁束が、一方の凸ユニット23、シャフト部材3、及び他方の凸ユニット23の順で通過し、再び各磁石25Aに戻る磁気回路が形成される。各磁石25Aの第1側面255がS極に着磁され、第2側面256がN極に着磁されている場合にも、磁束の向きが反対であるものの、上記と同じように磁気回路が形成される。この磁気回路は、上記実施形態と同様に作用する。そのため、本変形例によれば、筒状部材2A及びシャフト部材3により、上記実施形態と同様に動作する磁気ネジ機構が構成される。
なお、本変形例では、各磁石25Aの各側面(255、256)と各凸ユニット23との間を磁束が通る。そのため、各側面(255、256)と各凸ユニット23との間に隙間が形成されると、この隙間の磁気抵抗により、形成される磁気回路による磁力が弱くなってしまう。そのため、この隙間を比較的に小さくする、あるいは、各溝部24と各磁石25Aとの形状を同じにし、各側面(255、256)と各凸ユニット23との間には隙間が形成されないようにするのが好ましい。
<5.7>
上記実施形態では、筒状部材2とシャフト部材3との間には、その他の部材は配置されていない。そのため、各凸ユニット23の各凸部231とシャフト部材3の突条33とが接触してしまい、いずれか又は両方が破損してしまう可能性がある。これを防止するため、筒状部材2とシャフト部材3との間に、この接触を抑制するための部材を配置してもよい。
図19は、本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Bを模式的に例示する部分断面図である。本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Bは、筒状部材2とシャフト部材3との間に、円筒状の保護部材7が配置される点を除き、上記実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1と同様の構成を有している。この保護部材7の形状は、筒状部材2の凸部231とシャフト部材3の突条33との間に配置可能であれば、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。また、保護部材7の材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、エンジニアリングプラスチック等が用いられてもよい。
図20は、その他の変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Cを模式的に例示する部分断面図である。本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Cでは、各凸ユニット23の軸方向において隣接する凸部231の間に設けられる凹部232に非磁性材料81が充填されている。各凸ユニット23と各磁石25との間に隙間が設けられる場合、非磁性材料81は、この隙間にも充填されてよい。また、シャフト部材3の外周面32の軸方向における突条33の間に設けられる凹部35に非磁性材料82が充填されている。これらの点を除き、磁気式動力伝達構造体1Cは、上記実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1と同様の構成を有している。
各非磁性材料(81、82)は、筒状部材2とシャフト部材3との間に形成される磁気回路に悪影響を及ぼさない材料であればよく、例えば、樹脂材料、非磁性体の金属材料であってよい。樹脂材料として、例えば、ABS、PLA、ナイロン、ポリアセタール、PEEK、PPS等を挙げることができる。非磁性体の金属材料として、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム等を挙げることができる。
各凹部(232、35)に各非磁性材料(81、82)を充填する方法は、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。例えば、加熱することで軟化した各非磁性材料(81、82)を各凹部(232、35)に流し込み、流し込んだ各非磁性材料(81、82)を冷やして固化させることで、各凹部(232、35)に各非磁性材料(81、82)を充填してもよい。また、各凹部(232、35)と同形状の各非磁性材料(81、82)を形成し、形成した各非磁性材料(81、82)を各凹部(232、35)に嵌め込むことで、各凹部(232、35)に各非磁性材料(81、82)を充填してもよい。
このとき、筒状部材2の内周面22及びシャフト部材3の外周面32が面一になるように、各非磁性材料(81、82)を充填するのが好ましい。つまり、非磁性材料81の面が各凸部231の面と面一になり、非磁性材料82の面が突条33の面と面一になるように、各凹部(232、35)に各非磁性材料(81、82)を充填するのが好ましい。各凸ユニット23と各磁石25との間に隙間が設けられる場合、非磁性材料81は、筒状部材2の内周面22が面一になるように、この隙間にも充填されるのが好ましい。これにより、筒状部材2及びシャフト部材3において、各凸部231及び突条33による凹凸を十分に抑えることができる。そのため、各凸部231と突条33とが接触することによる、各凸部231及び突条33の少なくとも一方の破損を防止することができる。
また、各凸部231及び突条33が埋設されるように、各非磁性材料(81、82)を充填してもよい。これにより、筒状部材2及びシャフト部材3において、各凸部231及び突条33による凹凸を無くすことができるため、各凸部231及び突条33の少なくとも一方の破損を確実に防止することができる。
なお、非磁性材料を用いる形態は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、非磁性材料(81、82)のうちいずれか一方は省略されてもよい。周方向(軸周り)において隣接する凸ユニット23と磁石25との間に隙間が存在する場合、非磁性材料81をこの隙間に充填してもよい。更に、各磁石25の面と各凸部231の面とが面一になるように、筒状部材2の内周面22に非磁性材料81を充填してもよい。
図21は、その他の変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Dの構成を模式的に例示する部分断面図である。本変形例に係る磁気式動力伝達構造体1Dは、第1被覆部材85及び第2被覆部材86を更に備える点を除き、上記実施形態に係る磁気式動力伝達構造体1と同様の構成を有している。
第1被覆部材85及び第2被覆部材86はそれぞれ円筒状に形成されている。第1被覆部材85の外径は、筒状部材2の各凸部231を含む部分の内径とほぼ同じである。これにより、第1被覆部材85は、筒状部材2の内周面22よりも径方向内側に配置され、シャフト部材3に対して各凸ユニット23を被覆する。一方、第2被覆部材86の内径は、シャフト部材3の突条33を含む部分の外径とほぼ同じであり、第2被覆部材86の外径は、第1被覆部材85の内径よりもやや小さくなっている。これにより、第2被覆部材86は、シャフト部材3の外周面32よりも径方向外側に配置され、筒状部材2に対して突条33を被覆する。
各被覆部材(85、86)の材料は、上記各非磁性材料(81、82)と同様、筒状部材2とシャフト部材3との間に形成される磁気回路に悪影響を及ぼさない材料であればよく、例えば、樹脂材料、非磁性体の金属材料であってよい。各被覆部材(85、86)には、上記各非磁性材料(81、82)と同様の樹脂材料又は金属材料が用いられてよい。また、各被覆部材(85、86)の寸法及び形状は、実施の形態に応じて適宜決定されてよく、例えば、シート状に形成されてもよい。
なお、被覆部材を用いる形態は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、被覆部材(85、86)のうちいずれか一方は省略されてもよい。被覆部材(85、86)のうちの省略した方には、上記非磁性材料の充填を適用してもよい。また、この被覆部材を用いる形態は、上記非磁性材料を用いる形態と共に適用されてもよい。
図20及び図21により例示される各変形例によれば、各凸部231及び突条33が破損する可能性を低減することができる。更に、各変形例によれば、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、各非磁性材料(81、82)及び各被覆部材(85、86)をそれぞれ、筒状部材2及びシャフト部材3それぞれの補強材として作用させることができる。これにより、各凹部(232、35)に応力が集中するのを緩和することができるため、軸を曲げようとする力に対する筒状部材2及びシャフト部材3の強度を高めることができる。
また、筒状部材2及びシャフト部材3において、各凸部231及び突条33による凹凸を低減することにより、筒状部材2の内周面22及びシャフト部材3の外周面32の洗浄が容易になる。そのため、上記各磁気式動力伝達構造体(1C、1D)は、食品又は医薬品の搬送等の洗浄を要する場面で利用可能である。
更に、筒状部材2及びシャフト部材3において、各凸部231及び突条33による凹凸を低減することにより、筒状部材2の内周面22及びシャフト部材3の外周面32の蒸気滅菌を行うことができるようになる。これによって、筒状部材2及びシャフト部材3の滅菌性を高めることができる。
なお、各非磁性材料(81、82)及び各被覆部材(85、86)にステンレス等の材料を用いることで、上記洗浄及び蒸気滅菌によるさびの発生を抑制することができる。また、上記磁気式動力伝達構造体1Cにおいて、各凸部231及び突条33が各非磁性材料(81、82)から露出する場合、この露出する部分にめっきを施してもよい。これにより、各凸部231及び突条33にさびが発生するのを抑制することができる。
<5.8>
上記実施形態では、円弧状に湾曲した磁性材料を、各凹部232を形成するように切削することで、各凸部231を有する各凸ユニット23を作製することができる。このとき、各凹部232の形状は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてもよい。
図22A及び図22Bは、各凹部232の形状の一例を模式的に例示する。図22Aで例示される凸ユニット23E及び図22Bで例示される凸ユニット23Fは、各凹部232の形状が相違している点を除き、上記実施形態に係る凸ユニット23と同様の構成を有している。
図22Aの例では、凸ユニット23Eの各凹部232は、底面が平らになるように形成されている。このような凸ユニット23Eの各凹部232は、ワイヤ放電加工により容易に形成することができる。一方、図22Bの例では、凸ユニット23Fの各凹部232は、凸ユニット23Fの湾曲に応じて底面が湾曲するように形成されている。このような凸ユニット23Fの各凹部232は、例えば、最大切削径に合わせた円形の切削機により形成することができる。製造コストの観点からは、各凹部232の形状は、図22Aで例示されるように平らに形成されるのが好ましい。
<5.9>
上記実施形態では、各磁石25の内側曲面251は滑らかに形成されている。しかしながら、各磁石25の内側曲面251の形状は、このような例に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。各磁石25の内側曲面251には、各凸ユニット23と同様に、径方向内側に突出する凸部が設けられてもよい。
図23は、本変形例に係る磁石25Gを模式的に例示する。磁石25Gは、内側曲面251が、径方向内側に突出する凸部258を含む点を除き、上記実施形態に係る各磁石25と同様の構成を有する。磁石25Gは、上記各磁石25の代わりとして利用することができる。
本変形例では、内側曲面251には、複数の凸部258が設けられている。これに応じて、内側曲面251には、更に、軸方向における隣接する凸部258の間に配置される凹部259が設けられている。上記変形例と同様に、この凹部259には、非磁性材料が充填されてもよい。なお、凸部258の数は、特に限定されなくてもよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。また、凸部258の数は、複数でなくてもよく、1つであってもよい。
各凸部258は、軸方向に離間して配置されている。各凸部258は、シャフト部材3の突条33の軸方向の並びに対応するように配置されてよい。つまり、軸方向における凸部258の間隔は、軸方向における突条33の間隔と一致していてもよい。ただし、軸方向における凸部258の間隔は、このような例に限定されなくてもよく、軸方向における突条33の間隔と一致していなくてもよい。
各凸部258及び各凹部259の形状及び寸法は、凸ユニット23の各凸部231及び各凹部232と同様に設定されてよい。各凸部258は、シャフト部材3の突条33に対応するように、軸周りに螺旋状に形成されてもよいし、あるいは、軸周りに沿って延びるように形成されてもよい。本変形例によれば、磁石25Gの内側曲面251に凸部258を設けることで、磁石25Gとシャフト部材3の突条33との間で磁気回路を形成しやすくし、より高出力の磁気ネジ機構を構成することができる。
1…磁気式動力伝達構造体、
2…筒状部材、20…本体部、
21…中空部、22…内周面、
23…凸ユニット、231…凸部、232…凹部、
24…溝部、
25…磁石、251…内側曲面、252…外側曲面、
255…第1側面、256…第2側面、
3…シャフト部材、
31…軸、32…外周面、
33…突条、35…凹部、
100…アクチュエータ、
101…ベースプレート、
102・103・104…固定部材、
105…軸受け、106…カップリング、
107…リニアガイド、
111…回転モータ、
112…出力用シャフト、113…ロッドエンド、
116…位置センサ、117…回転センサ、
9…制御装置、
91…制御部、911…位置制御部、912…力制御部、
92…記憶部、921…プログラム、922…対応関係データ、
93…外部インタフェース

Claims (12)

  1. 軸及び外周面を有し、軸方向に沿って延びるシャフト部材と、
    前記軸方向に貫通する中空部及び内周面を有する筒状部材であって、前記中空部に前記シャフト部材が挿入される、筒状部材と、
    を備え、
    前記シャフト部材の前記外周面には、前記軸の径方向外側に突出する突条であって、前記軸周りに螺旋状に形成された突条が設けられ、
    前記筒状部材の前記内周面には、前記径方向内側に突出する凸部を含む凸ユニットと、前記凸ユニットと前記軸周りに隣り合うように配置され、前記突条と対面する第1面及び前記第1面に対向する第2面を含む磁石と、が設けられ、
    前記磁石の前記第1面は、第1の磁極に着磁され、
    前記磁石の前記第2面は、前記第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される、
    磁気式動力伝達構造体。
  2. 前記凸ユニットの前記凸部は、複数設けられ、
    前記凸ユニットの前記複数の凸部は、前記軸方向に離間して配置される、
    請求項1に記載の磁気式動力伝達構造体。
  3. 前記凸ユニットは、前記軸方向に隣接する凸部の間に設けられる凹部を有し、
    前記凸ユニットの前記凹部には、非磁性材料が充填されている、
    請求項2に記載の磁気式動力伝達構造体。
  4. 前記凸ユニットは、前記筒状部材の前記内周面に一体形成されている、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気式動力伝達構造体。
  5. 前記磁石の前記第1面は、前記径方向内側に突出する凸部を含む、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気式動力伝達構造体。
  6. 前記磁石の前記凸部は、複数設けられ、
    前記磁石の前記複数の凸部は、前記軸方向に離間して配置される、
    請求項5に記載の磁気式動力伝達構造体。
  7. 前記凸ユニットは、複数設けられ、
    前記磁石は、複数設けられ、
    前記各凸ユニットは、前記軸周りに離間して配置され、
    前記筒状部材の前記内周面には、前記軸周りに隣接する一対の前記凸ユニットの間にそれぞれ配置された複数の溝部が更に設けられ、
    前記各磁石は、前記各溝部に配置される、
    請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気式動力伝達構造体。
  8. 前記シャフト部材の前記外周面には、前記軸方向における前記突条の間に配置される凹部が設けられ、
    前記シャフト部材の前記凹部には、非磁性材料が充填されている、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気式動力伝達構造体。
  9. 前記筒状部材の前記内周面より径方向内側に配置され、前記筒状部材の前記凸ユニットを被覆する第1被覆部材を更に備える、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の磁気式動力伝達構造体。
  10. 前記シャフト部材の前記外周面より径方向外側に配置され、前記シャフト部材の前記突条を被覆する第2被覆部材を更に備える、
    請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気式動力伝達構造体。
  11. 軸及び外周面を有し、軸方向に沿って延びるシャフト部材と、
    前記軸方向に貫通する中空部及び内周面を有する筒状部材であって、前記中空部に前記シャフト部材が挿入される、筒状部材と、
    を備え、
    前記シャフト部材の前記外周面には、前記軸の径方向外側に突出する突条であって、前記軸周りに螺旋状に形成された突条が設けられ、
    前記筒状部材の前記内周面には、前記径方向内側に突出する凸部をそれぞれ含み、前記軸周りに離間して配置される複数の凸ユニットと、前記軸周りに隣接する一対の前記凸ユニットの間にそれぞれ配置された複数の溝部と、前記各溝部にそれぞれ配置され、前記一対の凸ユニットのうちの一方と対面する第1面、及び前記第1面に対向し、前記一対の凸ユニットのうちの他方と対面する第2面をそれぞれ含む複数の磁石と、が設けられ、
    前記各磁石の前記第1面は、第1の磁極に着磁され、
    前記各磁石の前記第2面は、前記第1の磁極とは反対の第2の磁極に着磁される、
    磁気式動力伝達構造体。
  12. 前記各凸ユニットの前記凸部は、複数設けられ、
    前記各凸ユニットの前記複数の凸部は、前記軸方向に離間して配置される、
    請求項11に記載の磁気式動力伝達構造体。
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