以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下に参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
(第1実施形態)
図1は、第1の態様としての第1実施形態における車両用灯具を示す図であり、車両用灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用灯具は自動車用の前照灯とされる。自動車用の前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものであり、左右の前照灯は左右方向に概ね対称の構成とされる。従って、本実施形態では、一方の前照灯について説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、筐体10と、灯具ユニット20とを主な構成として備える。
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20が収容されている。
本実施形態の灯具ユニット20は、ヒートシンク30と、冷却ファン35と、カバー36と、光学系ユニット50とを主な構成として備え、不図示の構成により筐体10に固定されている。
ヒートシンク30は、概ね水平方向に延在する金属製のベース板31を有し、当該ベース板31の下方の面側には複数の放熱フィン32がベース板31と一体に設けられている。冷却ファン35は放熱フィン32と隙間を隔てて配置され、ヒートシンク30に固定されている。この冷却ファン35の回転による気流によりヒートシンク30は冷却される。また、ヒートシンク30におけるベース板31の上面にはカバー36が配置されている。
カバー36は、ヒートシンク30のベース板31上に固定されている。カバー36は概ね矩形の形状をしており、例えばアルミニウム等の金属から成る。カバー36の内側の空間には、光学系ユニット50が収容されている。カバー36の前部には光学系ユニット50から出射する光が透過可能な開口36Hが形成されている。なお、カバー36の内壁に光吸収性を持たせるために、これらの内壁に黒アルマイト加工等が施されることが好ましい。カバー36の内壁が光吸収性を持つことで、意図しない反射や屈折等によりこれらの内壁に光が照射された場合であっても、照射光が反射して開口36Hから意図しない方向に出射することが抑制され得る。
図2は、図1に示す光学系ユニットの拡大図である。なお、図2では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー36等の記載が省略されている。図2に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、第1発光光学系51Rと、第2発光光学系51Gと、第3発光光学系51Bと、導光光学系155と、複数の位相変調素子がユニット化されてなる位相変調素子集合体54とを備える。
第1発光光学系51Rは、第1光源52Rと、第1コリメートレンズ53Rとを備える。第1光源52Rは、所定の波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子とされ、本実施形態では、パワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光を出射する半導体レーザとされる。なお、光学系ユニット50は、不図示の回路基板を有しており、第1光源52Rは当該回路基板に実装されている。
第1コリメートレンズ53Rは、第1光源52Rから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。第1コリメートレンズ53Rから出射する赤色の光LRが第1発光光学系51Rから出射される。この第1コリメートレンズ53Rに替わって、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズとスロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとが個別に設けられていても良い。
第2発光光学系51Gは、第2光源52Gと、第2コリメートレンズ53Gとを備え、第3発光光学系51Bは、第3光源52Bと、第3コリメートレンズ53Bとを備える。光源52G,52Bは、それぞれ所定の波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子とされる。本実施形態では、第2光源52Gはパワーのピーク波長が例えば515nmの緑色のレーザ光を出射する半導体レーザとされ、第3光源52Bはパワーのピーク波長が例えば445nmの青色のレーザ光を出射する半導体レーザとされる。このため、本実施形態では、3つの光源52R,52G,52Bは、互いに異なる所定の波長帯域のレーザ光を出射する。光源52G,52Bは、上記の第1光源52Rと同様に、それぞれ上記の回路基板に実装されている。
第2コリメートレンズ53Gは、第2光源52Gから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズであり、第3コリメートレンズ53Bは、第3光源52Bから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向をコリメートするレンズである。第2コリメートレンズ53Gから出射する緑色の光LGが第2発光光学系51Gから出射され、第3コリメートレンズ53Bから出射する青色の光LBが第3発光光学系51Bから出射される。これらコリメートレンズ53G,53Bに替わって、レーザ光のファスト軸方向をコリメートするコリメートレンズとスロー軸方向をコリメートするコリメートレンズとがそれぞれ個別に設けられていても良い。
導光光学系155は、第1発光光学系51Rから出射する光LRと、第2発光光学系51Gから出射する光LGと、第3発光光学系51Bから出射する光LBとを位相変調素子集合体54に導光する。本実施形態の導光光学系155は、反射ミラー155mと、第1光学素子155fと、第2光学素子155sとを有する。反射ミラー155mは、第1発光光学系51Rから出射する光LRを反射する。第1光学素子155fは、反射ミラー155mで反射された光LRを透過するとともに、第2発光光学系51Gから出射する光LGを反射する。第2光学素子155sは、第1光学素子155fを透過した光LR及び第1光学素子155fで反射された光LGを透過するとともに、第3発光光学系51Bから出射する光LBを反射する。このような第1光学素子155f、第2光学素子155sとして、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタを挙げることができる。この酸化膜の種類や厚みをコントロールすることで、所定の波長よりも長い波長の光と透過し、この波長よりも短い波長の光を反射する構成とすることができる。
本実施形態の導光光学系155は、これら光LR,LG,LBを合波することなく、左右方向に並列させて出射し、これら光LR,LG,LBを位相変調素子集合体54に入射させる。本実施形態では、これら光LR,LG,LBは、図2の紙面に対して垂直方向に並列している。なお、図2では、光LRは実線で示され、光LGは破線で示され、光LBは一点鎖線で示され、これら光LR,LG,LBはずらして示されている。
位相変調素子集合体54は、入射する光を回折することによりこの光を所定の配光パターンとするようにされている。本実施形態の位相変調素子集合体54は、光が入射される入射面EFが鉛直方向に対して概ね45度傾くように配置され、導光光学系155から出射する光LR,LG,LBが入射面EFに入射される。なお、入射面EFは水平方向と非平行であれば良く、例えば、入射面EFが鉛直方向と概ね平行となるように位相変調素子集合体54が配置されても良い。本実施形態では、この位相変調素子集合体54から第1発光光学系51Rの第1光源52Rまでの光路長は、位相変調素子集合体54から第2発光光学系51Gの第2光源52Gまでの光路長よりも長い。また、位相変調素子集合体54から第2発光光学系51Gの第2光源52Gまでの光路長は、位相変調素子集合体54から第3発光光学系51Bの第3光源52Bまでの光路長よりも長い。
上述のように、位相変調素子集合体54は、複数の位相変調素子を含んでいる。具体的に、位相変調素子集合体54は、第1発光光学系51Rからの光LRを回折して当該光LRを所定の配光パターンとする位相変調素子と、第2発光光学系51Gからの光LGを回折して当該光LGを所定の配光パターンとする位相変調素子と、第3発光光学系51Bからの光LBを回折して当該光LBを所定の配光パターンとする位相変調素子とを含んでいる。これら3つの位相変調素子は一方向に並べらており、位相変調素子集合体54の入射面EFは、これら位相変調素子における光の入射面によって構成されている。
本実施形態では、これら3つの位相変調素子のそれぞれは、入射する光を反射しつつ回折して出射する反射型の位相変調素子とされ、具体的には、反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)とされる。このため、位相変調素子集合体54は、入射面EFに入射する光LR,LG,LBを対応する位相変調素子によって回折し、赤色の光LRが回折された第1の光DLRと緑色の光LGが回折された第2の光DLGと青色の光LBが回折された第3の光DLBとを入射面EFから出射する。このように位相変調素子集合体54から出射する光DLR,DLG,DLBが光学系ユニット50から出射する。なお、図1、図2では、第1の光DLRは実線で示され、第2の光DLGは破線で示され、第3の光DLBは一点鎖線で示され、これら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
次に、本実施形態の位相変調素子集合体54の構成について詳細に説明する。
図3は、図2に示す位相変調素子集合体の正面図である。なお、図3は、光が入射する入射面EF側から見る位相変調素子集合体54の正面図であり、図3では、位相変調素子集合体54は概略的に示されている。本実施形態の位相変調素子集合体54は、正面視において水平方向に長尺な概ね長方形に形成され、正面視における全領域が入射面EFとされている。このため、位相変調素子集合体54の入射面EFは水平方向に長尺な概ね長方形に形成されていると理解できる。なお、以下本明細書では、位相変調素子集合体54の正面視において、水平方向と平行な方向を横方向とし、この横方向と垂直な方向を縦方向とする。このため、横方向は水平方向と平行な方向であり、縦方向は鉛直方向が入射面EFに投影された方向と平行な方向であり、この正面視において鉛直方向と平行な方向である。
本実施形態の位相変調素子集合体54は、第1発光光学系51Rに対応する第1位相変調素子54Rと、第2発光光学系51Gに対応する第2位相変調素子54Gと、第3発光光学系51Bに対応する第3位相変調素子54Bとを有する。この第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bとは、横方向に隣接して並列され、第2位相変調素子54Gに第1位相変調素子54Rと第3位相変調素子54Bとが接続されている。つまり、位相変調素子集合体は、これら位相変調素子54R,54G,54Bが一体に形成された構成とされている。この位相変調素子集合体54には、駆動回路60Rが電気的に接続されている。この駆動回路60Rは、位相変調素子集合体54の横側に接続される走査線駆動回路と、位相変調素子集合体54の縦方向の一方側に接続されるデータ線駆動回路とを有する。この駆動回路60Rを介して、位相変調素子集合体54を構成する位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれに電力が供給される。
第1位相変調素子54Rの縦方向の幅、第2位相変調素子54Gの縦方向の幅、及び第3位相変調素子54Bの縦方向の幅は、位相変調素子集合体54の縦方向の幅H54と同じとされる。第1位相変調素子54Rの横方向の幅WR、第2位相変調素子54Gの横方向の幅WG、及び第3位相変調素子54Bの横方向の幅WBは、位相変調素子集合体54の縦方向の幅H54よりも小とされる。つまり、これら位相変調素子54R,54G,54Bは、鉛直方向である縦方向に長尺な概ね長方形に形成されている。上記のように、正面視における位相変調素子集合体54の全領域が入射面EFとされ、位相変調素子集合体54の入射面EFはこれら位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射面によって構成されているため、位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射面のそれぞれも鉛直方向である縦方向に長尺な概ね長方形に形成されている。このため、第1位相変調素子54Rの入射面の縦方向の幅H54は第1位相変調素子54Rの入射面の横方向の幅WRよりも大とされ、第2位相変調素子54Gの入射面の縦方向の幅H54は第2位相変調素子54Gの入射面の横方向の幅WGよりも大とされ、第3位相変調素子54Bの入射面の縦方向の幅H54は第3位相変調素子54Bの入射面の横方向の幅WBよりも大とされる。本実施形態では、第2位相変調素子54Gの横方向の幅WGと第3位相変調素子54Bの縦方向の幅WBとは概ね同じとされ、第1位相変調素子54Rの横方向の幅WRはこれらの幅WG,WBよりも大とされる。このため、位相変調素子54G,54Bの入射面の横方向の幅WG,WBは概ね同じとされ、第1位相変調素子54Rの入射面の横方向の幅WRはこれらの幅WG,WBよりも大とされる。
第1位相変調素子54Rは、マトリックス状に区分けされた複数の変調部MPRから構成されている。第2位相変調素子54Gはマトリックス状に区分けされた複数の変調部MPGから構成され、第3位相変調素子54Bはマトリックス状に区分けされた複数の変調部MPBから構成されている。本実施形態では、これら変調部MPR,MPG,MPBは、同じ大きさの正方形とされる。このため、縦方向に並列される変調部MPRの数は、横方向に並列される変調部MPRの数よりも多い。また、縦方向に並列される変調部MPGの数は、横方向に並列される変調部MPGの数よりも多く、縦方向に並列される変調部MPBの数は、横方向に並列される変調部MPBの数よりも多い。それぞれの変調部MPR,MPG,MPBは、マトリックス状に配置された複数のドットを含み、当該変調部MPR,MPG,MPBに入射する光を回折して出射する。
第1位相変調素子54Rには導光光学系155から出射する赤色の光LRが入射し、第1位相変調素子54Rはこの光LRが回折された第1の光DLRを出射する。第2位相変調素子54Gには導光光学系155から出射する緑色の光LGが入射し、第2位相変調素子54Gはこの光LGが回折された第2の光DLGを出射する。第3位相変調素子54Bには導光光学系155から出射する青色の光LBが入射し、第3位相変調素子54Bはこの光LBが回折された第3の光DLBを出射する。
図3には、赤色の光LRが照射される領域である入射スポットSRと、緑色の光LGが照射される領域である入射スポットSGと、青色の光LBが照射される領域である入射スポットSBと、が示されている。本実施形態では、上記のように、光源52R,52G,52Bは半導体レーザとされるため、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光は概ね楕円形状に広がりながら伝搬する。また、これら光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向はコリメートレンズ53R,53G,53Bでそれぞれコリメートされるものの、これらレーザ光の形状は調整されない。このように形状が調整されていない光LR,LG、LBが発光光学系51R,51G,51Bから出射し、導光光学系155を介して、位相変調素子集合体54にそれぞれ入射する。本実施形態では、導光光学系155においてもこれら光LR,LG、LBの形状は調整されないため、入射スポットSR,SG,SBの形状はそれぞれ概ね楕円形状とされる。
また、本実施形態では、概ね楕円形状の入射スポットSRの大きさは少なくとも1つの変調部MPRを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSRの長軸LARは横方向と概ね平行とされる。言い換えると、入射スポットSRは、横方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSRの長手方向と縦方向とは非平行である。また、概ね楕円形状の入射スポットSGの大きさは少なくとも1つの変調部MPGを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSGの長軸LAGは縦方向と概ね平行とされる。言い換えると、入射スポットSGは、縦方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSGの長手方向と横方向とは非平行である。また、概ね楕円形状の入射スポットSBの大きさは少なくとも1つの変調部MPBを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSBの長軸LABは縦方向と概ね平行とされる。言い換えると、入射スポットSBは、縦方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSBの長手方向と横方向とは非平行である。
また、本実施形態では、第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRの縦方向の幅SHRは、第2位相変調素子54Gにおける入射スポットSGの縦方向の幅SHGよりも小さくされる。また、入射スポットSGの縦方向における幅SHGは、第3位相変調素子54Bにおける入射スポットSBの縦方向における幅SHBと概ね同じとされる。なお、幅SHGと幅SHBとは互いに異なっていても良い。
図4は、図3に示す位相変調素子集合体の厚さ方向における断面の一部を概略的に示す図である。図4に示すように、本実施形態の位相変調素子集合体54は、シリコン基板62と、駆動回路層63と、複数の電極64と、反射膜65と、液晶層66と、透明電極67と、透光性基板68と、を主な構成として備える。
複数の電極64は、シリコン基板62の一方の面側に、上記各ドットに対して1対1対応でマトリックス状に配置されている。駆動回路層63は、図3に示す駆動回路60Rの走査線駆動回路及びデータ線駆動回路に接続される回路が配置される層であり、シリコン基板62と複数の電極64との間に配置される。透光性基板68は、シリコン基板62の一方の側で当該シリコン基板62と対向するように配置され、例えばガラス基板とされる。透明電極67は、透光性基板68のシリコン基板62側の面上に配置される。液晶層66は、液晶分子66aを有し、複数の電極64と透明電極67との間に配置される。反射膜65は、複数の電極64と液晶層66との間に配置され、例えば誘電体多層膜とされる。導光光学系155から出射する光LRは、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の入射面EFから入射する。
図4に示すように、透光性基板68におけるシリコン基板62側と反対側の入射面EFから入射する光LRは、透明電極67及び液晶層66を透過し、反射膜65で反射され、液晶層66及び透明電極67を透過して透光性基板68から出射される。特定の電極64と透明電極67との間に電圧が印加されると、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の液晶分子66aの配向が変化する。この液晶分子66aの配向の変化により、当該電極64と透明電極67との間に位置する液晶層66の屈折率が変化し、液晶層66を透過する光LRの光路長が変化する。したがって、光LRが液晶層66を透過して液晶層66から出射することで、液晶層66から出射する光LRの位相が液晶層66に入射する光LRの位相から変化し得る。上記のように、複数の電極64は、各変調部MPR,MPG,MPBにおけるドットDTごとに配置されているため、各ドットDTに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧が制御されることで、液晶分子66aの配向が変化し、各ドットDTから出射する光の位相の変化量が各ドットDTに応じて調整され得る。位相の異なる光は互いに干渉しあって回折されるため、ドットDTから出射する光が干渉しあって回折し、この回折された光が位相変調素子集合体54から出射する。このため、位相変調素子集合体54は、各ドットにおける液晶層66の屈折率を調整することで、入射する光を回折して出射するとともに出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。また、位相変調素子集合体54は、各ドットにおける液晶層66の屈折率を変化させることで、出射する光の配光パターンを変化させたり、出射する光の向きを変えてこの光が照射される領域を変化させたりできる。
本実施形態では、位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rにおけるそれぞれの変調部MPRに同じ位相変調パターンを形成する。また、第2位相変調素子54Gにおけるそれぞれの変調部MPGに同じ位相変調パターンを形成し、第3位相変調素子54Bにおけるそれぞれの変調部MPBに同じ位相変調パターンを形成する。なお、本明細書では、位相変調パターンは、入射する光の位相を変調するパターンを示すものとされる。本実施形態では、位相変調パターンは、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率のパターンであり、各ドットDTに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧のパターンでもあると理解できる。この位相変調パターンを調整することで、出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。本実施形態では、変調部MPR,MPG,MPBにおけるそれぞれの位相変調パターンは、互いに異なる位相変調パターンとされている。
具体的には、本実施形態では、変調部MPR,MPG,MPBにおけるそれぞれの位相変調パターンは、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRと第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGと第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBとが合成された光がロービームの配光パターンとなるように、光LR,LG,LBをそれぞれ回折させる位相変調パターンとされる。言い換えると、位相変調素子集合体54の位相変調素子54R,54G,54Bは、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれから出射する光DLR,DLG,DLBが合成された光がロービームの配光パターンとなるように、入射する光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。この配光パターンには光の強度分布も含まれる。このため、本実施形態では、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRは、ロービームの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの光の強度分布に基づいた光の強度分布とされる。第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGは、ロービームの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの光の強度分布に基づいた光の強度分布とされる。第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBは、ロービームの配光パターンと重なると共にロービームの配光パターンの光の強度分布に基づいた光の強度分布とされる。上述したようにこれら位相変調素子54R,54G,54Bは、それぞれ同じ位相変調パターンを形成する複数の変調部MPR,MPG,MPBを有しており、それぞれの変調部MPR,MPG,MPBがこのような配光パターンとなるように光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。なお、これら位相変調素子54R,54G,54Bは、当該位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBの配光パターンの外形がロービームの配光パターンの外形に一致するように、入射する光LR,LG,LBをそれぞれ回折することが好ましい。こうして、第1位相変調素子54Rはロービームの配光パターンの赤色成分の光DLRを出射し、第2位相変調素子54Gはロービームの配光パターンの緑色成分の光DLGを出射し、第3位相変調素子54Bはロービームの配光パターンの青色成分の光DLBを出射する。
次に車両用前照灯1による光の出射について説明する。具体的には、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を説明する。
不図示の電源から光源52R,52G,52Bのそれぞれに電力が供給されることで、第1光源52Rは赤色のレーザ光を出射し、第2光源52Gは緑色のレーザ光を出射し、第3光源52Bは青色のレーザ光を出射する。それぞれのレーザ光は、コリメートレンズ53R,53G,53Bでコリメートされた後、発光光学系51R,51G,51Bから出射する。発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBは、導光光学系155に入射する。
導光光学系155では、第1発光光学系51Rからの光LRは反射ミラー155mで反射され、第1光学素子155f及び第2光学素子155sを透過して導光光学系155から出射する。このように導光光学系155から出射する光LRは、位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rに入射する。つまり、光LRは導光光学系155によって位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rに導かれる。第2発光光学系51Gからの光LGは第1光学素子155fで反射され、第2光学素子155sを透過して導光光学系155から出射する。このように導光光学系155から出射する光LGは、位相変調素子集合体54の第2位相変調素子54Gに入射する。つまり、光LGは導光光学系155によって位相変調素子集合体54の第2位相変調素子54Gに導かれる。第3発光光学系51Bからの光LBは第2光学素子155sで反射されて導光光学系155から出射する。このように導光光学系155から出射する光LBは、位相変調素子集合体54の第3位相変調素子54Bに入射する。つまり、光LBは導光光学系155によって位相変調素子集合体54の第3位相変調素子54Bに導かれる。
位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rは、当該第1位相変調素子54Rに入射する光LRを回折し、ロービームの配光パターンの赤色成分の光である第1の光DLRを出射する。第2位相変調素子54Gは、当該第2位相変調素子54Gに入射する光LGを回折し、ロービームの配光パターンの緑色成分の光である第2の光DLGを出射する。第3位相変調素子54Bは、当該第3位相変調素子54Bに入射する光LBを回折し、ロービームの配光パターンの青色成分の光である第3の光DLBを出射する。こうして位相変調素子集合体54から出射するこれら光DLR,DLG,DLBは、それぞれフロントカバー12を介して車両用前照灯1の外部に照射される。このとき、これら光DLR,DLG,DLBは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの光が照射される領域が互いに重なるように照射される。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。これら光DLR,DLG,DLBが合成された光はロービームの配光パターンとなるため、照射される光はロービームとなる。なお、これら光DLR,DLG,DLBは、この焦点位置においてそれぞれの配光パターンの外形が概ね一致するように照射されることが好ましい。
図5は夜間照明用の配光パターンを示す図であり、具体的には、図5(A)はロービームの配光パターンを示す図であり、図5(B)はハイビームの配光パターンを示す図である。図5においてSは水平線を示し、配光パターンが太線で示される。図5(A)に示される夜間照明用の配光パターンであるロービームの配光パターンPLのうち、領域PLA1は最も光の強度が高い領域であり、領域PLA2、領域PLA3の順に光の強度が低くなる。つまり、位相変調素子集合体54のそれぞれの位相変調素子54R,54G,54Bは、合成された光がロービームの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するのである。なお、図5において破線で示すように、ロービームが照射される位置よりも上方にロービームよりも強度の低い光が車両用前照灯1から照射されても良い。この光は、標識視認用の光OHSとされる。この場合、位相変調素子集合体54のそれぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射される光DLR,DLG,DLBに当該標識視認用の光OHSが含まれていることが好ましい。また、この場合、ロービームと標識視認用の光OHSとで、夜間照明用の配光パターンが形成されると理解することができる。なお、夜間照明用の配光パターンは、夜間のみに用いられるものではなく、トンネル等の暗所においても使用される。
ここで、車両は路面の状況等によって振動し、車両用灯具も車両と同様に振動する。このため、前述の特許文献1に記載の車両用灯具では、車両の振動によってホログラム素子における参照光の入射スポットがホログラム素子に対して振動し、ホログラム素子の一部に参照光が照射されなくなる場合がある。このため、この車両用灯具では、車両の振動によって所定の配光パターンが形成されなくなる虞があり、振動が生じたとしても所定の配光パターンを形成し得るようにしたいという要請がある。この要請に対しては、参照光の入射スポットを大きくして振動が生じたとしてもホログラム素子の全体に参照光が照射されるようにすることが考えられる。しかし、このような場合、参照光の一部はホログラム素子に照射されないため、エネルギー効率が低下する。
そこで、第1の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、光を出射する光源52R,52G,52Bと、第1位相変調素子54Rと第2位相変調素子54Gと第3位相変調素子54Bとを有する位相変調素子集合体54とを備える。第1位相変調素子54Rは、第1光源52Rからの光LRを回折することによりこの光LRを所定の配光パターンとする複数の変調部MPRを有する。第2位相変調素子54Gは、第2光源52Gからの光LGを回折することによりこの光LGを所定の配光パターンとする複数の変調部MPGを有する。第3位相変調素子54Bは、第3光源52Bからの光LBを回折することによりこの光LBを所定の配光パターンとする複数の変調部MPBを有する。第1位相変調素子54Rの入射面の縦方向の幅H54は、当該入射面の横方向の幅WRよりも大とされる。第2位相変調素子54Gの入射面の縦方向の幅H54は、当該入射面の横方向の幅WGよりも大とされ、第3位相変調素子54Bの入射面の縦方向の幅H54は、当該入射面の横方向の幅WBよりも大とされる。第1位相変調素子54Rにおける光LRの入射スポットSRの大きさは、少なくとも1つの変調部MPRを含むことができる大きさとされ、第2位相変調素子54Gにおける光LGの入射スポットSGの大きさは、少なくとも1つの変調部MPGを含むことができる大きさとされ、第3位相変調素子54Bにおける光LBの入射スポットSBの大きさは、少なくとも1つの変調部MPBを含むことができる大きさとされる。複数の変調部MPRの少なくとも一部は縦方向に並列され、複数の変調部MPGの少なくとも一部は縦方向に並列され、複数の変調部MPBの少なくとも一部は縦方向に並列される。
車両の振動の鉛直方向の振幅は、水平方向の振幅よりも大きくなる傾向にあり、車両用前照灯1もこの車両と同様に振動する。このため、位相変調素子集合体54の各位相変調素子54R,54G,54Bにおける光LR,LG,LBの入射スポットSR,SG,SBは、それぞれ水平方向よりも鉛直方向に振動する傾向にある。つまり、入射スポットSR,SG,SBは、水平方向と平行な方向である横方向よりも鉛直方向が入射面EFに投影された方向と平行な方向である縦方向に振動する傾向にある。本実施形態の車両用前照灯1では、上記のように、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bの入射面の縦方向の幅H54は、当該入射面の横方向の幅WR,WG,WBよりも大とされている。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、車両の振動に応じて入射スポットSR,SG,SBが縦方向に振動する場合でも、この入射スポットSR,SG,SBの一部が位相変調素子54R,54G,54Bの入射面からはみ出すことを抑制でき、エネルギー効率が低下することを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、上記のように、それぞれの入射スポットSR,SG,SBの大きさは、少なくとも1つの変調部MPR,MPG,MPBを含むことができる大きさとされる。また、それぞれの変調部MPR,MPG,MPBの少なくとも一部は、縦方向に並列される。このため、本実施形態の車両用前照灯1では、車両の振動に応じて入射スポットSR,SG,SBが縦方向に移動する場合でも、いずれかの変調部MPRに光LRが入射し得、いずれかの変調部MPGに光LGが入射し得、いずれかの変調部MPGに光LBが入射し得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、このような場合でも、ロービームの配光パターンPLを形成し得る。
また、第1の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、複数の光源52R,52G,52Bを有し、位相変調素子集合体54は、第1光源52Rからの光LRが入射する第1位相変調素子54Rと、第2光源52Gからの光LGが入射する第2位相変調素子54Gと、第3光源52Bからの光LBが入射する第3位相変調素子54Bとを有する。つまり、位相変調素子集合体54のこれら位相変調素子54R,54G,54Bは光源52R,52G,52Bごとに設けられている。また、位相変調素子集合体54から第1光源52Rまでの光路長は、位相変調素子集合体54から第2光源52Gまでの光路長よりも長く、位相変調素子集合体54から第2光源52Gまでの光路長は、位相変調素子集合体54から第3光源52Bまでの光路長よりも長い。つまり、第1位相変調素子54Rから第1光源52Rまでの光路長は、第2位相変調素子54Gから第2光源52Gまでの光路長よりも長く、第2位相変調素子54Gから第2光源52Gまでの光路長は、第3位相変調素子54Bから第3光源52Bまでの光路長よりも長い。また、第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRの縦方向における幅SHRは、第2位相変調素子54Gにおける入射スポットSGの縦方向における幅SHG及び第3位相変調素子54Bにおける入射スポットSBの縦方向における幅SHBよりも小さい。つまり、対応する光源との光路長が最大である第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRの縦方向における幅SHRは、他の位相変調素子54G,54Bにおける入射スポットSG,SBの縦方向における幅SHG,SHBのうち最大の幅以下とされる。
入射スポットの位相変調素子に対する振動の振幅は、位相変調素子と光源との光路長が長くなるにつれて大きくなる傾向にある。本実施形態の車両用前照灯1では、入射スポットの位相変調素子に対する振動の振幅が大きくなりやすい第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRの縦方向の幅SHRは、他の位相変調素子54G,54Bにおける入射スポットSG,SBの縦方向の幅よりも小とされる。このため、位相変調素子54R,54G,54Bの入射面の縦方向の幅や位相変調素子54R,54G,54Bと光源52R,52G,52Bとの光路長を調節しなくても、入射スポットの位相変調素子に対する振動の振幅が大きくなりやすい第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRの一部が位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことを抑制し得る。従って、位相変調素子54R,54G,54Bの大きさや光源52R,52G,52Bに対する位相変調素子54R,54G,54Bの配置の自由度を向上し得る。
また、第1の態様としての本実施形態の車両用前照灯1では、位相変調素子集合体54は、第2位相変調素子54Gに第1位相変調素子54Rと第3位相変調素子54Bが接続されてこれら位相変調素子54R,54G,54Bが一体に形成された構成とされている。従って、本実施形態の車両用前照灯1では、これら位相変調素子54R,54G,54Bが別個に設けられる場合と比べて、部品点数を減少し得る。
また、第1の態様としての本実施形態の車両用前照灯1では、第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRは特定の方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSRの長手方向である特定の方向は鉛直方向である縦方向と非平行とされる。このため、入射スポットSRの長手方向である特定の方向と鉛直方向とが平行とされる場合と比べて、入射スポットSRの鉛直方向の幅SHRを小さくし得る。従って、入射スポットSRの長手方向である特定の方向と鉛直方向とが平行とされる場合と比べて、車両の振動に応じて入射スポットSRが鉛直方向に振動する際にこの入射スポットSRの一部が位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことを抑制し得る。なお、車両の振動に応じて入射スポットSRの一部が第1位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことを抑制する観点では、本実施形態のように、入射スポットSRの長手方向である特定の方向と水平方向である横方向とが平行とされることが好ましい。
また、第1の態様としての本実施形態の車両用前照灯1では、第2位相変調素子54Gにおける入射スポットSGは特定の方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSGの長手方向である特定の方向と水平方向である横方向とが非平行とされる。また、第3位相変調素子54Bにおける入射スポットSBは特定の方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSBの長手方向である特定の方向と水平方向である横方向とが非平行とされる。このため、入射スポットSG,SBの長手方向である特定の方向と水平方向とが平行とされる場合と比べて、位相変調素子54G,54Bの水平方向である横方向の幅を小さくすることができ、車両用前照灯1の製造コストを低減し得る。なお、位相変調素子54R,54Bの横方向の幅WG,WBを小さくする観点では、本実施形態のように、入射スポットSG,SBの長手方向である特定の方向と鉛直方向である縦方向とが平行とされることが好ましい。
また、第1の態様としての本実施形態の車両用前照灯1では、縦方向に並列される変調部MPRの数は、横方向に並列される変調部MPRの数よりも多い。また、縦方向に並列される変調部MPGの数は、横方向に並列される変調部MPGの数よりも多く、縦方向に並列される変調部MPBの数は、横方向に並列される変調部MPBの数よりも多い。
このため、縦方向に並列される変調部MPRの数が横方向に並列される変調部MPRの数よりも少ない場合と比べて、車両の振動に応じて入射スポットSRが縦方向に振動する際に第1光源52Rからの光LRをいずれかの変調部MPRに入射させ易くし得る。また、変調部MPRと同様に、車両の振動に応じて入射スポットSGが縦方向に振動する際に第2光源52Gからの光LGをいずれかの変調部MPGに入射させ易くし得る。また、変調部MPRと同様に、車両の振動に応じて入射スポットSBが縦方向に振動する際に第3光源52Bからの光LBをいずれかの変調部MPBに入射させ易くし得る。
(第2実施形態)
次に、本発明の第1の態様としての第2実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図6は、本発明の第1の態様としての第2実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。なお、図6では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー36等の記載が省略されている。図6に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、位相変調素子54R,54G,54Bが互いに離間している点、導光光学系155に替わって合成光学系55を備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。
本実施形態のそれぞれの位相変調素子54R,54G,54Bは、第1実施形態の位相変調素子54R,54G,54Bと同様に、LCOSとされる。また、位相変調素子54Rは、光が入射する入射面EFR側から見る正面視において縦方向に長尺な概ね長方形に形成されている。このため、第1位相変調素子54Rの入射面EFRの縦方向の幅は当該第1位相変調素子54Rの入射面EFRの横方向の幅よりも大とされる。第1位相変調素子54Rには、マトリックス状に配置された複数の変調部MPRが形成され、第1位相変調素子54Rにおける縦方向に並列される変調部MPRの数は、横方向に並列される変調部MPRの数よりも多い。第1位相変調素子54Rには第1光源52Rからの光LRが入射し、第1位相変調素子54Rはこの光LRが回折された第1の光DLRを出射する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、半導体レーザとされる第1光源52Rからの光LRの形状は調整されないため、第1位相変調素子54Rにおける入射スポットSRの形状は概ね楕円形状とされる。本実施形態では、第1実施形態と同様に、概ね楕円形状の入射スポットSRの大きさは少なくとも1つの変調部MPRを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSRの長軸LARは水平方向である横方向と概ね平行とされる。
本実施形態の第2位相変調素子54Gは、光が入射する入射面EFG側から見る正面視において縦方向に長尺な概ね長方形に形成されている。このため、第2位相変調素子54Gの入射面EFRの縦方向の幅は当該第2位相変調素子54Gの入射面EFRの横方向の幅よりも大とされる。第2位相変調素子54Gには、マトリックス状に配置された複数の変調部MPRが形成され、第2位相変調素子54Gにおける縦方向に並列される変調部MPGの数は、横方向に並列される変調部MPGの数よりも多い。第2位相変調素子54Gには第2光源52Gからの光LGが入射し、第2位相変調素子54Gはこの光LGが回折された第2の光DLGを出射する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、半導体レーザとされる第2光源52Gからの光LGの形状は調整されないため、第2位相変調素子54Gにおける入射スポットSGの形状は概ね楕円形状とされる。本実施形態では、第1実施形態と同様に、概ね楕円形状の入射スポットSGの大きさは少なくとも1つの変調部MPGを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSGの長軸LAGは鉛直方向である縦方向と概ね平行とされる。
本実施形態の第3位相変調素子54Bは、光が入射する入射面EFB側から見る正面視において縦方向に長尺な概ね長方形に形成されている。このため、第3位相変調素子54Bの入射面EFBの縦方向の幅は当該第3位相変調素子54Bの入射面EFBの横方向の幅よりも大とされる。第3位相変調素子54Bには、マトリックス状に配置された複数の変調部MPBが形成され、第3位相変調素子54Bにおける縦方向に並列される変調部MPBの数は、横方向に並列される変調部MPBの数よりも多い。第3位相変調素子54Bには第3光源52Bからの光LBが入射し、第3位相変調素子54Bはこの光LBが回折された第3の光DLBを出射する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、半導体レーザとされる第3光源52Bからの光LBの形状は調整されないため、第3位相変調素子54Bにおける入射スポットSBの形状は概ね楕円形状とされる。本実施形態では、第1実施形態と同様に、概ね楕円形状の入射スポットSBの大きさは少なくとも1つの変調部MPBを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSBの長軸LABは鉛直方向である縦方向と概ね平行とされる。
本実施形態の合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRと、第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGとを合成する光学素子である。本実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成する。また、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGと、第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBとを合成する光学素子である。本実施形態では、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する。このような第1光学素子55f、第2光学素子55sとして、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタを挙げることができる。この酸化膜の種類や厚みをコントロールすることで、所定の波長よりも長い波長の光と透過し、この波長よりも短い波長の光を反射する構成とすることができる。
こうして、合成光学系55において第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとが合成され、この光が合成光学系55から出射する。なお、図6では、第1の光DLRは実線で示され、第2の光DLGは破線で示され、第3の光DLBは一点鎖線で示され、これら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bは、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれから出射する光DLR,DLG,DLBが合成光学系55によって合成された光がロービームの配光パターンPLとなるように、光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。このため、第1位相変調素子54Rからはロービームの配光パターンPLの赤色成分の光である第1の光DLRが出射し、第2位相変調素子54Gからはロービームの配光パターンPLの緑色成分の光である第2の光DLGが出射し、第3位相変調素子54Bからはロービームの配光パターンPLの青色成分の光である第3の光DLBが出射する。
上記のように合成光学系55においてこれら光DLR,DLG,DLBが合成され、この合成された白色の光は、カバー36の開口36Hから出射し、この光はフロントカバー12を介して車両用前照灯1から出射する。この光はロービームの配光パターンPLを有しているため、照射される光はロービームとなる。
本実施形態の車両用前照灯1は、第1実施形態と同様にして、車両の振動に応じて入射スポットSR,SG,SBが縦方向に振動する場合でも、入射スポットSR,SG,SBの一部が位相変調素子54R,54G,54Bの入射面EFR,EFG,EFBからはみ出すことを抑制でき、エネルギー効率が低下することを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、第1実施形態と同様にして、車両の振動に応じて入射スポットSR,SG,SBが縦方向に振動する場合でも、いずれかの変調部MPRに光LRが入射し得、いずれかの変調部MPGに光LGが入射し得、いずれかの変調部MPBに光LBが入射し得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、このような場合でも、ロービームの配光パターンPLを形成し得る。
(第3実施形態)
次に、本発明の第1の態様としての第3実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54に替わって、1つの位相変調素子54Sを備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と主に異なる。
図7は、本発明の第1の態様としての第3実施形態における位相変調素子の正面図である。なお、図7は、光が入射する入射面側から見る位相変調素子54Sの正面図であり、図7では、位相変調素子54Sは概略的に示されている。
本実施形態では、位相変調素子54Sの構成は第1実施形態の位相変調素子54Rと同様の構成とされる。本実施形態の位相変調素子54Sは、光が入射する入射面側から見る正面視において、鉛直方向である縦方向に長尺な概ね長方形に形成されている。このため、位相変調素子54Sの入射面の縦方向の幅H54は位相変調素子54Sの入射面の横方向の幅WSよりも大とされる。位相変調素子54Sには、第1実施形態の位相変調素子54Rと同様に、マトリックス状に配置された複数の変調部MPSが形成される。縦方向に並列される変調部MPSの数は、横方向に並列される変調部MPSの数よりも多い。変調部MPSは、第1実施形態の変調部MPRと同様に、マトリックス状に配置された複数のドットを含み、当該変調部MPSに入射する光を回折して出射する。
本実施形態では、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBは、上記第1実施形態と同様に、導光光学系155によって位相変調素子54Sに導光され、位相変調素子54Sに入射する。このため、以下では図2を参照して、位相変調素子54Sへのこれら光LR,LG,LBの入射について説明する。本実施形態では、光源52R,52G,52Bに供給される電力が調整されて、これら光源52R,52G,52Bごとに交互にレーザ光が出射され、発光光学系51R,51G,51Bごとに交互に光LR,LG,LBが出射される。つまり、第1発光光学系51Rが光LRを出射しているときは第2発光光学系51Gと第3発光光学系51Bは光LG,LBを非出射とし、第2発光光学系51Gが光LGを出射しているときは第1発光光学系51Rと第3発光光学系51Bは光LR,LBを非出射とし、第3発光光学系51Bが光LBを出射しているときは第1発光光学系51Rと第2発光光学系51Gは光LR,LGを非出射とする。そして、光源52R,52G,52Bごとのレーザ光の出射が順次切り換えられ、発光光学系51R,51G,51Bごとの光LR,LG,LBの出射が順次切り換えられる。このため、これら発光光学系51R,51G,51Bから出射する互いに波長帯域の異なる光LR,LG,LBが順次位相変調素子54Sに入射する。位相変調素子54Sは入射する光LR,LG,LBが回折された光DLR,DLG,DLBを順次出射する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、位相変調素子54Sから第1光源52Rまでの光路長は、位相変調素子54Sから第2光源52Gまでの光路長よりも長く、位相変調素子54Sから第2光源52Gまでの光路長は、位相変調素子54Sから第3光源52Bまでの光路長よりも長い。
図7には、赤色の光LRが照射される領域である入射スポットSRと、緑色の光LGが照射される領域である入射スポットSGと、青色の光LBが照射される領域である入射スポットSBと、が示されている。なお、図7では、入射スポットSRは実線で示され、入射スポットSGは破線で示され、入射スポットSBは一点鎖線で示されている。本実施形態では、第1実施形態と同様に、半導体レーザとされる光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBの形状は調整されないため、位相変調素子54Sにおけるこれら光LR,LG,LBの入射スポットSR,SG,SBの形状は概ね楕円形状とされる。本実施形態では、これら概ね楕円形状の入射スポットSR,SG,SBの大きさはそれぞれ少なくとも1つの変調部MPSを含むことができる大きさとされる。また、これら入射スポットSR,SG,SBは互いに重なっている。
本実施形態では、入射スポットSRは、横方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSRの長手方向と縦方向とは非平行である。また、入射スポットSGは、縦方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSGの長手方向と横方向とは非平行である。また、入射スポットSBは、縦方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSBの長手方向と横方向とは非平行である。また、本実施形態では、入射スポットSRの縦方向の幅は、入射スポットSGの縦方向の幅よりも小さくされ、入射スポットSGの縦方向における幅は、入射スポットSBの縦方向における幅と概ね同じとされる。
次に、本実施形態の位相変調素子54Sからの光の出射について説明する。具体的には、ロービームの配光パターンPLの光を車両用前照灯1が出射する場合を例に説明する。
本実施形態では、位相変調素子54Sは、上記のような光源52R,52G,52Bごとのレーザ光の出射の切り換りに同期して位相変調パターンを変更する。具体的には、位相変調素子54Sは、光源52Rからの光LRが入射する場合には、この光源52Rに対応する位相変調パターンであって、位相変調素子54Sから出射する第1の光DLRがロービームの配光パターンの赤色成分の光となる位相変調パターンにする。このため、位相変調素子54Sは、光源52Rからの光LRが入射する場合には、ロービームの配光パターンの赤色成分の光である第1の光DLRを出射する。また、位相変調素子54Sは、光源52Gからの光LGが入射する場合には、この光源52Gに対応する位相変調パターンであって、位相変調素子54Sから出射する第2の光DLGがロービームの配光パターンの緑色成分の光となる位相変調パターンにする。このため、位相変調素子54Sは、光源52Gからの光LGが入射する場合には、ロービームの配光パターンの緑色成分の光である第2の光DLGを出射する。また、位相変調素子54Sは、光源52Bからの光LBが入射する場合には、この光源52Bに対応する位相変調パターンであって、位相変調素子54Sから出射する第3の光DLBがロービームの配光パターンの青色成分の光となる位相変調パターンにする。このため、位相変調素子54Sは、光源52Bからの光LBが入射する場合には、ロービームの配光パターンの青色成分の光である第3の光DLBを出射する。
つまり、位相変調素子54Sは、このように入射する光LR,LG,LBの波長帯域に応じて位相変調パターンを変更することで、ロービームの赤色成分の光である第1の光DLRと、ロービームの緑色成分の光である第2の光DLGと、ロービームの青色成分の光である第3の光DLBとを順次出射する。これら光DLR,DLG,DLBは、それぞれカバー36の開口36Hから出射し、フロントカバー12を介して車両用前照灯1の外部に順次照射される。このとき、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの光が照射される領域が互いに重なるように照射される。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。なお、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBは、この焦点位置においてそれぞれの光DLR,DLG,DLBが照射される領域の外形が概ね一致するように照射されることが好ましい。また、本実施形態では、光源52R,52G,52Bから出射されるレーザ光のそれぞれの出射時間の長さは概ね同じとされるため、光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さも概ね同じとなる。
ところで、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で色の異なる光が繰り返し照射される場合、人は残像効果によってこの異なる色の光が合成された光が照射されていると認識し得る。本実施形態において、第1光源52Rがレーザ光を出射してから再度第1光源52Rがレーザ光を出射するまでの時間が人の視覚の時間分解能よりも短くされた場合、人の視覚の時間分解能よりも短い周期で位相変調素子54Sから出射する光DLR,DLG,DLBが繰り返し照射され、赤色の光DLRと緑色の光DLGと青色の光DLBとが残像効果によって合成される。上記のように、この光DLR,DLG,DLBのそれぞれの出射時間の長さは概ね同じであり、光源52R,52G,52Bから出射されるレーザ光の強度は、上記第1実施形態と同様の所定の強度とされる。このため、残像効果によって合成される光の色は、第1実施形態における光DLR,DLG,DLBが合成された光と同じ白色となる。また、光DLR,DLG,DLBが合成された光の配光パターンは、ロービームの配光パターンPLとなるため、光DLR,DLG,DLBが残像効果によって合成された光の配光パターンもロービームの配光パターンPLとなる。このようにして、ロービームの配光パターンPLの光が車両用前照灯1から出射する。
光源52R,52G,52Bからレーザ光を繰り返し出射する周期は、残像効果によって合成される光のちらつきを感じることを抑制する観点から、1/15s以下とされることが好ましい。人の視覚の時間分解能は概ね1/30sである。車両用灯具であれば、光の出射の周期が2倍程度であれば光のちらつきを感じることを抑制できる。この周期が1/30s以下であれば、人の視覚の時間分解能を概ね超える。従って、光のちらつきを感じることをより抑制できる。また、光のちらつきを感じることをより抑制する観点では、この周期は1/60s以下であることが好ましい。
本実施形態では、上記のように、位相変調素子54Sの入射面の縦方向の幅H54は、当該入射面の横方向の幅WSよりも大とされている。また、位相変調素子54Sにおける入射スポットSR,SG,SBの大きさは、少なくとも1つの変調部MPSを含むことができる大きさとされ、複数の変調部MPSの少なくとも一部は、縦方向に並列される。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、第1実施形態と同様にして、車両の振動に応じて入射スポットSR,SG,SBが縦方向に移動する場合でも、ロービームの配光パターンPLを形成し得る。
また、本実施形態では、上記のように、対応する光源との光路長が最大である入射スポットSRの縦方向における幅は、他の入射スポットSG,SBの縦方向における幅のうち最大の幅以下とされる。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、第1実施形態と同様にして、位相変調素子54Sの入射面の縦方向の幅H54や位相変調素子54Sと光源52R,52G,52Bとの光路長を調節しなくても、入射スポットの位相変調素子54Sに対する振動の振幅が大きくなりやすい入射スポットSRの一部が位相変調素子54Sの入射面からはみ出すことを抑制し得る。
また、本実施形態では、入射スポットSRは特定の方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSRの長手方向である特定の方向は鉛直方向である縦方向と非平行とされる。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、第1実施形態と同様にして、入射スポットSRの長手方向である特定の方向と鉛直方向とが平行とされる場合と比べて、車両の振動に応じて入射スポットSRが鉛直方向に振動する際にこの入射スポットSRの一部が位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことを抑制し得る。
また、本実施形態では、縦方向に並列される変調部MPSの数は、横方向に並列される変調部MPSの数よりも多い。このため、第1実施形態と同様にして、縦方向に並列される変調部MPSの数が横方向に並列される変調部MPSの数よりも少ない場合と比べて、車両の振動に応じて入射スポットSR,SG,SBが縦方向に振動する際に光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBをいずれかの変調部MPGに入射させ易くし得る。
また、本実施形態の車両用前照灯1は、3つの光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBを回折する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることができるため、部品点数を減少したり、小型化したりし得る。
なお、第1の態様としての車両用灯具は、光源と、この光源からの光を回折することによりこの光を所定の配光パターンとする複数の変調部を有する位相変調素子とを備え、位相変調素子における光が入射する入射面の縦方向の幅は、当該入射面の横方向の幅よりも大とされ、位相変調素子における光の入射スポットの大きさは、少なくとも1つの変調部を含むことができる大きさとされ、複数の変調部の少なくとも一部は、位相変調素子の縦方向に並列される限りにおいて、特に限定されるものではない。このような構成の車両用灯具は、車両の振動に応じて入射スポットが縦方向に振動する場合でも、この入射スポットの一部が位相変調素子の入射面からはみ出すことを抑制でき、エネルギー効率が低下することを抑制し得る。また、この車両用灯具は、車両の振動に応じて入射スポットが縦方向に振動する場合でも、いずれかの変調部に光が入射し得るため、所定の配光パターンを形成し得る。
また、第1の態様としての第1~第3実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、第1の態様としての車両用灯具が照射する光はロービームに限定されない。例えば、車両用灯具は、ハイビームを照射するものとされても良く、画像を構成する光を照射するものとされても良い。車両用灯具がハイビームを照射するものとされる場合、図5(B)に示される夜間照明用の配光パターンであるハイビームの配光パターンPHの光が照射される。なお、図5(B)のハイビームの配光パターンPHのうち、領域PHA1は最も光の強度が高い領域であり、領域PHA2は領域PHA1よりも光の強度が低い領域である。つまり、第1実施形態の位相変調素子集合体54におけるそれぞれの位相変調素子54R,54G,54Bは、合成された光がハイビームの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するものとされる。また、第1の態様としての第2実施形態のそれぞれの位相変調素子54R,54G,54Bは、合成された光がハイビームの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するものとされる。また、第3実施形態の位相変調素子54Sは、残像効果によって合成された光がハイビームの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するものとされる。また、車両用灯具が画像を構成する光を照射するものとされる場合、車両用灯具が出射する光の方向や車両用灯具が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。
また、第1の態様としての第1~第3実施形態では、位相変調素子54R,54G,54B,54Sは、反射型の位相変調素子とされた。しかし、位相変調素子として、例えば、液晶パネルであるLCD(Liquid Crystal display)、シリコン基板上に複数の反射体が形成されたGLV(Grating Light Valve)、回折格子等を用いても良い。LCDは、透過型の位相変調素子である。このLCDは、上記の反射型の液晶パネルであるLCOSと同様に、各ドットにおいて液晶層を挟み込む一対の電極の間に印加される電圧を制御することで、各ドットから出射する光の位相の変化量が調整され、出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。なお、この一対の電極は透明電極とされる。また、GLVは、反射型の位相変調素子である。このGLVは、反射体のたわみを電気的に制御することによって、入射する光を回折して出射するとともに出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。
また、第1の態様としての第1実施形態では、位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rと第2位相変調素子54Gと第3位相変調素子54Bとは横方向に隣接して並列されていた。しかし、これら位相変調素子54R,54G,54Bは縦方向に並列されていても良く、縦方向及び横方向に並列されていても良い。
また、第1の態様としての第1実施形態及び第3実施形態では、導光光学系155は、反射ミラー155m、第1光学素子155f、及び第2光学素子155sを備えていた。しかし、導光光学系155は、それぞれの発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子集合体54や位相変調素子54Sに導光すれば良く、上記第1実施形態や第3実施形態の構成に限定されない。例えば、導光光学系155は反射ミラー155mを備えていなくても良い。このような場合、第1発光光学系51Rから出射する光LRを第1光学素子155fに入射させる。また、上記第1実施形態や第3実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子155fや第2光学素子155sに用いられても良い。
また、第1の態様としての第1実施形態及び第3実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子集合体54や位相変調素子54Sに導く導光光学系155を備えていた。しかし、光学系ユニット50は、導光光学系155を備えていなくても良い。この場合、これら光LR,LG,LBが位相変調素子集合体54や位相変調素子54Sに入射するように、発光光学系51R,51G,51Bを配置する。
また、第1の態様としての第2実施形態では、第1光学素子55fは、第1の光DLRを透過すると共に第2の光DLGを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGとを合成し、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された第1の光DLR及び第2の光DLGを透過すると共に第3の光DLBを反射することで第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成した。しかし、例えば、第1光学素子55fにおいて第3の光DLBと第2の光DLGとが合成され、第2光学素子55sにおいて第1光学素子55fで合成された第3の光DLB及び第2の光DLGと第1の光DLRとが合成される構成とされても良い。この場合、上記第2実施形態において、第1光源52R、第1コリメートレンズ53R、及び第1位相変調素子54Rと、第3光源52B、第3コリメートレンズ53B、及び第3位相変調素子54Bとの位置が入れ替わる。また、上記第2実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子55fや第2光学素子55sに用いられても良い。また、第2実施形態では、合成光学系55は、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBを合成すれば良く、上記第2実施形態の構成や上記構成に限定されない。
また、第1の態様としての第2実施形態では、光学系ユニット50は、第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する合成光学系55を備えていた。しかし、光学系ユニット50は、合成光学系55を備えていなくても良い。この場合、上記第1実施形態と同様にして、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bは、それぞれの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが合成されるように、入射する光LR,LG,LBを回折する。
また、第1の態様としての第1実施形態では、光学系ユニット50は、第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する合成光学系を備えていなかった。しかし、第1実施形態の光学系ユニット50は、第2実施形態と同様に、合成光学系を備えていても良い。
また、第1の態様としての第2実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子54R,54G,54Bに導く導光光学系を備えていなかった。しかし、第2実施形態の光学系ユニット50は、第1実施形態と同様に、導光光学系を備えていても良い。
また、第1の態様としての第1~第3実施形態では、灯具ユニット20は、結像レンズを含む結像レンズ系を備えていなかった。しかし、灯具ユニット20は、結像レンズ系を備え、光学系ユニット50から出射する光をこの結像レンズ系を介して出射させても良い。このような構成にすることで、出射する光の配光パターンをより広い配光パターンにし易くし得る。なお、ここでの広いとは、車両から所定の距離離れた鉛直面上に形成される配光パターンを比べた際に広いことを表している。
また、第1の態様としての第1~第3実施形態では、入射スポットSR,SG,SBは、概ね楕円形状とされていた。しかし、入射スポットSR,SG,SBの形状は特に限定されるものではなく、例えば円形であっても良い。
また、第1の形態としての第1~第3実施形態では、それぞれの位相変調素子54R,54G,54B,54Sの形状は概ね長方形とされ、それぞれの入射面も概ね長方形とされていた。しかし、位相変調素子54R,54G,54B,54Sの入射面の形状は鉛直方向の幅が水平方向の幅よりも大とされる形状であれば良い。
また、第1の形態としての第1実施形態では、3つの位相変調素子54R,54G,54Bの全てが一体に形成されていた。しかし、部品点数を減少し得る観点では、複数の位相変調素子のうち少なくとも1つの位相変調素子が少なくとも1つの他の位相変調素子に接続されてこの他の位相変調素子と一体に形成されれば良い。
また、第1の形態としての第3実施形態では、3つの光源52R,52G,52Bが、これら光源52R,52G,52Bごとに交互に光を出射していた。しかし、部品点数の減少や小型化の観点では、少なくとも2つの光源が、当該光源ごとに交互に光を出射していれば良い。この場合、少なくとも2つの光源から出射する光が入射する位相変調素子から出射する光は残像効果によって合成され、この残像効果によって合成される光と他の位相変調素子から出射する光とが合成されて、所定の配光パターンの光が照射される。
また、第1の形態としての第1実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、3つの位相変調素子54R,54G,54Bが一体とされた1つの位相変調素子集合体54とを備える光学系ユニット50を例に説明した。また、第1の形態としての第2実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、光源52R,52G,52Bに一対一で対応する3つの位相変調素子54R,54G,54Bとを備える光学系ユニット50を例に説明した。また、第1の形態としての第3実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、1つの位相変調素子54Sとを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、光学系ユニットは、少なくとも1つの光源と、この光源に対応する位相変調素子とを備えれば良い。例えば、光学系ユニットは、白色のレーザ光を出射する光源と、この光源から出射する白色のレーザ光を回折して出射する位相変調素子とを備えていても良い。また、光学系ユニットが光源と位相変調素子を複数備える場合、それぞれの位相変調素子には、少なくともの1つの光源が対応していれば良い。例えば、複数の光源から出射する光が合成された光が1つの位相変調素子に入射されても良い。
(第4実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第4実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は同様の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の光学系ユニット50では、位相変調素子集合体54の構成が第1実施形態の位相変調素子集合体54の構成と異なる。
図8は、本発明の第2の態様としての第4実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。図8に示すように、本実施形態の位相変調素子集合体54は、光が入射される入射面EFが鉛直方向に対して概ね45度傾くように配置され、導光光学系155から出射する光LR,LG,LBが入射面EFに入射される。なお、鉛直方向に対する入射面EFの角度は特に限定されるものではなく、例えば、入射面EFが鉛直方向と概ね平行となるように位相変調素子集合体54が配置されても良い。本実施形態の導光光学系155は、光LR,LG,LBを合波することなく前後方向に並列させて出射し、これら光LR,LG,LBが位相変調素子集合体54に入射する。本実施形態では、この位相変調素子集合体54から第1発光光学系51Rの第1光源52Rまでの光路長は、位相変調素子集合体54から第2発光光学系51Gの第2光源52Gまでの光路長よりも長い。また、位相変調素子集合体54から第2発光光学系51Gの第2光源52Gまでの光路長は、位相変調素子集合体54から第3発光光学系51Bの第3光源52Bまでの光路長よりも長い。
位相変調素子集合体54は、第1実施形態の位相変調素子集合体54と同様に、第1発光光学系51Rからの光LRを回折して当該光LRを所定の配光パターンとする位相変調素子と、第2発光光学系51Gからの光LGを回折して当該光LGを所定の配光パターンとする位相変調素子と、第3発光光学系51Bからの光LBを回折して当該光LBを所定の配光パターンとする位相変調素子とを含んでいる。これら3つの位相変調素子は一方向に並べらており、位相変調素子集合体54の入射面EFは、これら位相変調素子における光の入射面によって構成されている。また、これらの位相変調素子は、第1実施形態の位相変調素子と同様に、反射型のLCOSとされる。
次に、本実施形態の位相変調素子集合体54の構成について詳細に説明する。
図9は、図8に示す位相変調素子集合体の正面図である。なお、図9は、光が入射する入射面EF側から見る位相変調素子集合体54の正面図であり、図9では、位相変調素子集合体54は概略的に示されている。本実施形態の位相変調素子集合体54は、正面視において鉛直方向に長尺な概ね長方形に形成され、正面視における全領域が入射面EFとされている。このため、位相変調素子集合体54の入射面EFは鉛直方向に長尺な概ね長方形に形成されていると理解できる。なお、以下本明細書では、位相変調素子集合体54の正面視において、水平方向と平行な方向を横方向とし、この横方向と垂直な方向を縦方向とする。このため、横方向は水平方向と平行な方向であり、縦方向は鉛直方向が入射面EFに投影された方向と平行な方向であり、この正面視において鉛直方向と平行な方向である。
本実施形態の位相変調素子集合体54は、第1発光光学系51Rに対応する第1位相変調素子54Rと、第2発光光学系51Gに対応する第2位相変調素子54Gと、第3発光光学系51Bに対応する第3位相変調素子54Bとを有する。この第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bとは、縦方向に隣接して並列され、第2位相変調素子54Gに第1位相変調素子54Rと第3位相変調素子54Bとが接続されている。つまり、位相変調素子集合体は、これら位相変調素子54R,54G,54Bが一体に形成された構成とされている。この位相変調素子集合体54には、駆動回路60Rが電気的に接続されている。この駆動回路60Rは、位相変調素子集合体54の横側に接続される走査線駆動回路と、位相変調素子集合体54の縦方向の一方側に接続されるデータ線駆動回路とを有する。この駆動回路60Rを介して、位相変調素子集合体54を構成する位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれに電力が供給される。
第1位相変調素子54Rの横方向の幅、第2位相変調素子54Gの横方向の幅、及び第3位相変調素子54Bの横方向の幅は、位相変調素子集合体54の横方向の幅W54と同じとされる。第1位相変調素子54Rの縦方向の幅、第2位相変調素子54Gの縦方向の幅、及び第3位相変調素子54Bの縦方向の幅は、位相変調素子集合体54の横方向の幅W54よりも小とされる。つまり、これら位相変調素子54R,54G,54Bは、水平方向である横方向に長尺な概ね長方形に形成される。上記のように、正面視における位相変調素子集合体54の全領域が入射面EFとされ、位相変調素子集合体54の入射面EFはこれら位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射面によって構成されているため、位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射面のそれぞれも水平方向である横方向に長尺な概ね長方形に形成されている。また、これら位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれの長手方向は、これら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向である縦方向と概ね垂直とされる。このため、位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射面のそれぞれの長手方向は、縦方向と概ね垂直とされる。本実施形態では、第1位相変調素子54Rの縦方向の幅と、第2位相変調素子54Gの縦方向の幅と、第3位相変調素子54Bの縦方向の幅とは概ね同じとされる。このため、位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射面の縦方向の幅は概ね同じとされる。
第1位相変調素子54Rにはマトリックス状に配置された複数の変調部MPRが形成されている。第2位相変調素子54Gにはマトリックス状に配置された複数の変調部MPGが形成され、第3位相変調素子54Bにはマトリックス状に配置された複数の変調部MPBが形成されている。本実施形態では、これら変調部MPR,MPG,MPBは、同じ大きさの正方形とされる。このため、第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向に並列される変調部MPRの数は、位相変調素子54Rの入射面の長手方向と垂直な方向に並列される変調部MPRの数よりも多い。また、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向に並列される変調部MPGの数は、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と垂直な方向に並列される変調部MPGの数よりも多く、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向に並列される変調部MPBの数は、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と垂直な方向に並列される変調部MPBの数よりも多い。それぞれの変調部MPR,MPG,MPBは、マトリックス状に配置された複数のドットを含み、当該変調部MPR,MPG,MPBに入射する光を回折して出射する。
第1位相変調素子54Rには導光光学系155から出射する赤色の光LRが入射し、第1位相変調素子54Rはこの光LRが回折された第1の光DLRを出射する。第2位相変調素子54Gには導光光学系155から出射する緑色の光LGが入射し、第2位相変調素子54Gはこの光LGが回折された第2の光DLGを出射する。第3位相変調素子54Bには導光光学系155から出射する青色の光LBが入射し、第3位相変調素子54Bはこの光LBが回折された第3の光DLBを出射する。
図9には、赤色の光LRが照射される領域である入射スポットSRと、緑色の光LGが照射される領域である入射スポットSGと、青色の光LBが照射される領域である入射スポットSBと、が示されている。本実施形態では、上記のように、光源52R,52G,52Bは半導体レーザとされるため、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光は概ね楕円形状に広がりながら伝搬する。また、これら光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光のファスト軸方向、スロー軸方向はコリメートレンズ53R,53G,53Bでそれぞれコリメートされるものの、これらレーザ光の形状は調整されない。このように形状が調整されていない光LR,LG、LBが発光光学系51R,51G,51Bから出射し、導光光学系155を介して、位相変調素子集合体54にそれぞれ入射する。本実施形態では、導光光学系155においてもこれら光LR,LG、LBの形状は調整されないため、入射スポットSR,SG,SBの形状はそれぞれ概ね楕円形状とされる。
また、本実施形態では、概ね楕円形状の入射スポットSRの大きさは少なくとも1つの変調部MPRを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSRの長軸LARは第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向である横方向と概ね平行とされる。言い換えると、入射スポットSRは、横方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSRの長手方向と第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向とは非垂直とされる。また、概ね楕円形状の入射スポットSGの大きさは少なくとも1つの変調部MPGを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSGの長軸LAGは第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向である横方向と概ね平行とされる。言い換えると、入射スポットSGは、横方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSGの長手方向と第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向とは非垂直とされる。また、概ね楕円形状の入射スポットSBの大きさは少なくとも1つの変調部MPBを含むことができる大きさとされ、この入射スポットSBの長軸LABは第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向である横方向と概ね平行とされる。言い換えると、入射スポットSBは、横方向に長尺な概ね楕円形状とされ、入射スポットSBの長手方向と第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向とは非垂直とされる。
また、本実施形態では、入射スポットSRの長手方向と垂直な方向である縦方向の幅と、入射スポットSGの長手方向と垂直な方向である縦方向の幅と、入射スポットSBの長手方向と垂直な方向である縦方向の幅とは概ね同じとされる。また、入射スポットSRの長手方向である横方向の幅と、入射スポットSGの長手方向である横方向の幅と、入射スポットSBの長手方向である横方向の幅とは概ね同じとされる。なお、これら入射スポットSR,SG,SBの幅は互いに異なっていても良い。
本実施形態では、位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rにおけるそれぞれの変調部MPRに同じ位相変調パターンを形成する。また、第2位相変調素子54Gにおけるそれぞれの変調部MPGに同じ位相変調パターンを形成し、第3位相変調素子54Bにおけるそれぞれの変調部MPBに同じ位相変調パターンを形成する。なお、本明細書では、位相変調パターンは、入射する光の位相を変調するパターンを示すものとされる。本実施形態では、位相変調パターンは、各ドットDTにおける液晶層66の屈折率のパターンであり、各ドットDTに対応する電極64と透明電極67との間に印加される電圧のパターンでもあると理解できる。この位相変調パターンを調整することで、出射する光の配光パターンを所望の配光パターンにし得る。本実施形態では、変調部MPR,MPG,MPBにおけるそれぞれの位相変調パターンは、互いに異なる位相変調パターンとされている。
具体的には、本実施形態では、第1実施形態と同様に、変調部MPR,MPG,MPBにおけるそれぞれの位相変調パターンは、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRと第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGと第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBとが合成された光が図5(A)に示されるロービームの配光パターンPLとなるように、光LR,LG,LBをそれぞれ回折させる位相変調パターンとされる。言い換えると、位相変調素子集合体54の位相変調素子54R,54G,54Bは、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれから出射する光DLR,DLG,DLBが合成された光がロービームの配光パターンPLとなるように、入射する光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。この配光パターンには強度分布も含まれる。このため、本実施形態では、第1位相変調素子54Rから出射する第1の光DLRは、ロービームの配光パターンPLと重なると共にロービームの配光パターンPLの強度分布に基づいた強度分布とされる。第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGは、ロービームの配光パターンPLと重なると共にロービームの配光パターンPLの強度分布に基づいた強度分布とされる。第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBは、ロービームの配光パターンPLと重なると共にロービームの配光パターンPLの強度分布に基づいた強度分布とされる。上述したようにこれら位相変調素子54R,54G,54Bは、それぞれ同じ位相変調パターンを形成する複数の変調部MPR,MPG,MPBを有しており、それぞれの変調部MPR,MPG,MPBがこのような配光パターンとなるように光LR,LG,LBをそれぞれ回折する。なお、これら位相変調素子54R,54G,54Bは、当該位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBの配光パターンの外形がロービームの配光パターンPLの外形に一致するように、入射する光LR,LG,LBをそれぞれ回折することが好ましい。こうして、第1位相変調素子54Rはロービームの配光パターンPLの赤色成分の光DLRを出射し、第2位相変調素子54Gはロービームの配光パターンPLの緑色成分の光DLGを出射し、第3位相変調素子54Bはロービームの配光パターンPLの青色成分の光DLBを出射する。
位相変調素子集合体54から出射するこれら光DLR,DLG,DLBは、それぞれフロントカバー12を介して車両用前照灯1の外部に照射される。このとき、これら光DLR,DLG,DLBは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの光が照射される領域が互いに重なるように照射される。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。これら光DLR,DLG,DLBが合成された光はロービームの配光パターンPLとなるため、照射される光はロービームとなる。なお、これら光DLR,DLG,DLBは、この焦点位置においてそれぞれの配光パターンの外形が概ね一致するように照射されることが好ましい。
ここで、前述の特許文献1では、光源として、例えば、半導体レーザが挙げられている。半導体レーザから出射するレーザ光は概ね楕円形状に広がりながら伝搬するため、このレーザ光の形状が調整されない場合、レーザ光の入射スポットは特定の方向に長尺な概ね楕円形状となる。一方、ホログラム素子は概ね長方形とされており、レーザ光の入射スポットの形状と異なっている。このため、半導体レーザから出射するレーザ光をホログラム素子の全体に入射させる場合、半導体レーザから出射するレーザ光の一部がホログラム素子に照射されずにエネルギー効率が低下するため、エネルギー効率の低下を抑制したいという要請がある。この要請に対しては、例えば、レーザ光の形状を調整して入射スポットの形状をホログラム素子の形状に対応する形状にすることが考えられる。しかし、このような場合、レーザ光の形状を調整するための光学素子が用いられるため、車両用灯具が大型化する虞がある。
そこで、第2の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、光を出射する光源52R,52G,52Bと、第1位相変調素子54Rと第2位相変調素子54Gと第3位相変調素子54Bとを有する位相変調素子集合体54とを備える。第1位相変調素子54Rは、第1光源52Rからの光LRを回折することによりこの光LRを所定の配光パターンとする複数の変調部MPRを有する。第2位相変調素子54Gは、第2光源52Gからの光LGを回折することによりこの光LGを所定の配光パターンとする複数の変調部MPGを有する。第3位相変調素子54Bは、第3光源52Bからの光LBを回折することによりこの光LBを所定の配光パターンとする複数の変調部MPBを有する。第1位相変調素子54Rの入射面、第2位相変調素子54Gの入射面、及び第3位相変調素子54Bの入射面は、それぞれ横方向に長尺な概ね長方形とされる。第1位相変調素子54Rにおける光LRの入射スポットSR、第2位相変調素子54Gにおける光LGの入射スポットSG、及び第3位相変調素子54Bにおける光LBの入射スポットSBは、それぞれ横方向に長尺な概ね楕円形状とされる。入射スポットSRの大きさは、少なくとも1つの変調部MPRを含むことができる大きさとされ、入射スポットSGの大きさは、少なくとも1つの変調部MPGを含むことができる大きさとされ、入射スポットSBの大きさは、少なくとも1つの変調部MPBを含むことができる大きさとされる。第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向と入射スポットSRの長手方向とは非垂直とされ、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と入射スポットSGの長手方向とは非垂直とされ、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と入射スポットSBの長手方向とは非垂直とされる。
第2の態様としての本実施形態の車両用前照灯1では、少なくとも1つの変調部MPRに第1光源52Rからの光LRが入射し得、少なくとも1つの変調部MPGに第2光源52Gからの光LGが入射し得、少なくとも1つの変調部MPBに第3光源52Bからの光LBが入射し得る。このため、これら変調部MPR,MPG,MPBによってロービームの配光パターンPLを形成し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、上記のように、第1位相変調素子54Rの入射面、第2位相変調素子54Gの入射面、及び第3位相変調素子54Bの入射面は、それぞれ横方向に長尺な概ね長方形とされる。入射スポットSR、入射スポットSG、及び入射スポットSGは、それぞれ横方向に長尺な概ね楕円形状とされる。第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向と入射スポットSRの長手方向とは非垂直とされ、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と入射スポットSGの長手方向とは非垂直とされ、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と入射スポットSBの長手方向とは非垂直とされる。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向と入射スポットSRの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、第1光源52Rからの光LRの形状を調整しなくても、入射スポットSRの一部が第1位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1は、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と入射スポットSGの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、第2光源52Gからの光LGの形状を調整しなくても、入射スポットSGの一部が第2位相変調素子54Gの入射面からはみ出すことを抑制し得、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と入射スポットSBの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、第3光源52Bからの光LBの形状を調整しなくても、入射スポットSBの一部が第3位相変調素子54Bの入射面からはみ出すことを抑制し得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、エネルギー効率の低下を抑制しつつ大型化を抑制し得る。
また、第2の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向と入射スポットSRの長手方向とは概ね平行とされ、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と入射スポットSGの長手方向とは概ね平行とされ、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と入射スポットSBの長手方向とは概ね平行とされる。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、入射スポットSRの一部が第1位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことをより抑制し得る。また、入射スポットSGの一部が第2位相変調素子54Gの入射面からはみ出すことをより抑制し得、入射スポットSBの一部が第3位相変調素子54Bの入射面からはみ出すことをより抑制し得る。
また、第2の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、複数の光源52R,52G,52Bを有し、位相変調素子集合体54は、第1光源52Rからの光LRが入射する第1位相変調素子54Rと、第2光源52Gからの光LGが入射する第2位相変調素子54Gと、第3光源52Bからの光LBが入射する第3位相変調素子54Bとを有する。つまり、位相変調素子集合体54のこれら位相変調素子54R,54G,54Bは光源52R,52G,52Bごとに設けられている。位相変調素子集合体54は、第2位相変調素子54Gに第1位相変調素子54Rと第3位相変調素子54Bが接続されてこれら位相変調素子54R,54G,54Bが一体に形成された構成とされている。従って、本実施形態の車両用前照灯1では、これら位相変調素子54R,54G,54Bが別個に設けられる場合と比べて、部品点数を減少し得る。
(第5実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第5実施形態について図10、図11を参照して詳細に説明する。なお、第4実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図10は、本発明の第2の態様としての第5実施形態における光学系ユニットを概略的に示す図である。なお、図10は、前方側であるカバー36の開口36H側から光学系ユニット50を見る図であり、図10では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー36、位相変調素子集合体54から出射する光DLR,DLG,DLB等の記載が省略されている。図10に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、主に導光光学系155を備えない点において、第4実施形態の光学系ユニット50と異なる。
本実施形態の光学系ユニット50では、第4実施形態と同様に、位相変調素子集合体54は、光が入射される入射面EFが鉛直方向に対して概ね45度傾くように配置され、発光光学系51R,51G,51Bは位相変調素子集合体54の下方に配置される。発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBのそれぞれは、直接位相変調素子集合体54に入射される。本実施形態では、光源52R,52G,52Bは左右方向に並列され、光源52R,52G,52Bを含む発光光学系51R,51G,51Bは左右方向に並列されている。このように並列される発光光学系51R,51G,51Bからの光LR,LG,LBは、左右方向に並列した状態で位相変調素子集合体54に入射する。
図11は、図10に示す位相変調素子集合体の正面図である。なお、図11は、光が入射する入射面EF側から見る位相変調素子集合体54の正面図であり、図11では、位相変調素子集合体54は概略的に示されている。図11に示すように、本実施形態の位相変調素子集合体54は、3つの位相変調素子54R,54G,54Bが隣接して並列される方向が異なる点で第4実施形態の位相変調素子集合体54と異なる。
具体的には、本実施形態の位相変調素子集合体54は、正面視において、左右方向である横方向に長尺な概ね長方形に形成される。3つの位相変調素子54R,54G,54Bは横方向に隣接して並列され、第2位相変調素子54Gに第1位相変調素子54Rと第3位相変調素子54Bとが接続されている。これら位相変調素子54R,54G,54Bは、第1実施形態と同様に、それぞれ横方向に長尺な概ね長方形とされ、入射スポットSR,SG,SBは、それぞれ横方向に長尺な概ね楕円形状とされる。このため、第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向と入射スポットSRの長手方向とは非垂直とされ、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と入射スポットSGの長手方向とは非垂直とされ、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と入射スポットSBの長手方向とは非垂直とされる。また、これら位相変調素子54R,54G,54Bの入射面の長手方向は、これら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向である横方向と概ね平行とされる。
第2の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、第4実施形態と同様にして、第1位相変調素子54Rの入射面の長手方向と入射スポットSRの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、第1光源52Rからの光LRの形状を調整しなくても、入射スポットSRの一部が第1位相変調素子54Rの入射面からはみ出すことを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1は、第2位相変調素子54Gの入射面の長手方向と入射スポットSGの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、第2光源52Gからの光LGの形状を調整しなくても、入射スポットSGの一部が第2位相変調素子54Gの入射面からはみ出すことを抑制し得、第3位相変調素子54Bの入射面の長手方向と入射スポットSBの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、第3光源52Bからの光LBの形状を調整しなくても、入射スポットSBの一部が第3位相変調素子54Bの入射面からはみ出すことを抑制し得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、エネルギー効率の低下を抑制しつつ大型化を抑制し得る。
また、第2の態様としての本実施形態の車両用前照灯1では、3つの位相変調素子54R,54G,54Bは左右方向である横方向に隣接して並列されている。また、光源52R,52G,52Bは、位相変調素子54R,54G,54Bに対応して左右方向に並列され、光源52R,52G,52Bからの光は、導光光学系155を介することなく位相変調素子集合体54に入射される。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、導光光学系155を備える場合と比べて、簡易な構成にすることができる。また、本実施形態の車両用前照灯1では、位相変調素子54R,54G,54Bの入射面の長手方向は、これら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向である横方向と概ね平行とされる。このため、隣接して並列される位相変調素子54R,54G,54Bの入射面のそれぞれの長手方向とこれら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向とが垂直とされる場合と比べて、第1位相変調素子54Rと第2位相変調素子54Gとの中心間の距離及び第2位相変調素子54Gと第3位相変調素子54Bとの中心間の距離が長くなる。このため、隣接して並列される位相変調素子54R,54G,54Bの入射面のそれぞれの長手方向とこれら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向とが垂直とされる場合と比べて、第1光源52Rと第2光源52G間の距離及び第2光源52Gと第3光源52B間の距離を長くし得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、隣接して並列される位相変調素子54R,54G,54Bの入射面のそれぞれの長手方向とこれら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向とが垂直とされる場合と比べて、光源52R,52G,52Bをより大きくし得る。また、本実施形態の車両用前照灯1は、隣接する第1光源52Rと第2光源52G及び第2光源52Gと第3光源52Bとが干渉し合うことを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1は、隣接する第1光源52Rと第2光源52G間及び第2光源52Gと第3光源52B間における熱干渉によってこれら光源52R,52G,52Bが過加熱されることを抑制し得る。
(第6実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第6実施形態について図12を参照して詳細に説明する。なお、第4実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図12は、本発明の第2の態様としての第6実施形態における光学系ユニットを図2と同様に示す図である。なお、図12では、理解を容易にするために、ヒートシンク30、カバー36等の記載が省略されている。図12に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54に替わって、1つの位相変調素子54Sを備える点において、第4実施形態の光学系ユニット50と主に異なる。
本実施形態では、位相変調素子54Sの構成は第4実施形態の位相変調素子54R,54G,54Bと同様の構成とされる。位相変調素子54Sは、光が入射する入射面EFS側から見る正面視において横方向に長尺な概ね長方形に形成されている。このため、位相変調素子54Sの入射面EFSの横方向の幅は当該位相変調素子54Sの入射面EFSの縦方向の幅よりも大とされる。位相変調素子54Sには、マトリックス状に配置された複数の変調部が形成され、位相変調素子54Sの入射面EFSの長手方向に並列される変調部の数は、位相変調素子54Sの入射面EFSの長手方向と垂直な方向に並列される変調部の数よりも多い。
本実施形態では、第1の態様としての第3実施形態と同様にして、光源52R,52G,52Bに供給される電力が調整されて、これら光源52R,52G,52Bごとに交互にレーザ光が出射され、発光光学系51R,51G,51Bごとに交互に光LR,LG,LBが出射される。このため、これら発光光学系51R,51G,51Bから出射する互いに波長帯域の異なる光LR,LG,LBが順次位相変調素子54Sに入射する。位相変調素子54Sは入射する光LR,LG,LBが回折された光DLR,DLG,DLBを順次出射する。なお、図12では、これら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
本実施形態では、第4実施形態と同様に、半導体レーザとされる光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBの形状は調整されないため、位相変調素子54Sにおけるこれら光LR,LG,LBの入射スポットの形状は概ね楕円形状とされる。本実施形態では、これら概ね楕円形状の入射スポットの大きさはそれぞれ少なくとも1つの変調部を含むことができる大きさとされ、これら入射スポットの長軸はそれぞれ位相変調素子54Sの入射面EFSの長手方向と概ね平行とされる。また、これら入射スポットは互いに重なっている。
本実施形態の位相変調素子54Sは、第1の態様としての第3実施形態と同様にして、このように入射する光LR,LG,LBの波長帯域に応じて位相変調パターンを変更することで、ロービームの赤色成分の光である第1の光DLRと、ロービームの緑色成分の光である第2の光DLGと、ロービームの青色成分の光である第3の光DLBとを順次出射する。これら光DLR,DLG,DLBは、それぞれカバー36の開口36Hから出射し、フロントカバー12を介して車両用前照灯1の外部に順次照射される。そして、本実施形態の車両用前照灯1は、第1の態様としての第3実施形態と同様にして、残像現象によってこれら光DLR,DLG,DLBを合成させることで、ロービームの配光パターンPLの光を出射する。
第2の態様としての本実施形態では、上記のように、位相変調素子54Sの入射面EFSの長手方向と、光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBのそれぞれの入射スポットの長手方向とは、非垂直とされる。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、第4実施形態と同様にして、光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBの形状を調整しなくても、光LR,LG,LBの入射スポットの一部がそれぞれ位相変調素子54Sの入射面EFSからはみ出すことを抑制し得る。従って、本実施形態の車両用前照灯1は、エネルギー効率の低下を抑制しつつ大型化を抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1は、3つの光源52R,52G,52Bからの光LR,LG,LBを回折する位相変調素子を共通の位相変調素子とすることができるため、部品点数を減少したり、小型化したりし得る。
なお、第2の態様としての車両用灯具は、光源と、この光源からの光を回折することによりこの光を所定の配光パターンとする少なくとも1つの変調部を有する位相変調素子と、を備え、位相変調素子における光の入射面、及び当該位相変調素子における光の入射スポットは、他の方向よりも所定の方向に長尺な形状とされ、入射スポットの大きさは、少なくとも1つの変調部を含むことができる大きさとされ、位相変調素子の入射面の長手方向と入射スポットの長手方向とが非垂直とされる限りにおいて、特に限定されるものではない。このような構成の車両用灯具は、位相変調素子の入射面の長手方向と入射スポットの長手方向とが垂直とされる場合と比べて、光源からの光の形状を調整しなくても、入射スポットの一部が位相変調素子の入射面からはみ出すことを抑制でき、エネルギー効率の低下を抑制しつつ大型化を抑制し得る。
また、第2の態様としての第4~第6実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、第1の態様としての車両用灯具が照射する光はロービームに限定されない。例えば、車両用灯具は、図5(B)に示されるハイビームの配光パターンPHの光を照射するものとされても良く、画像を構成する光を照射するものとされても良い。つまり、第4及び第5実施形態の位相変調素子集合体54におけるそれぞれの位相変調素子54R,54G,54Bは、合成された光がハイビームの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するものとされる。また、第6実施形態の位相変調素子54Sは、残像効果によって合成された光がハイビームの強度分布を含む配光パターンを形成するように光を回折するものとされる。また、車両用灯具が画像を構成する光を照射するものとされる場合、車両用灯具が出射する光の方向や車両用灯具が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。
また、第2の態様としての第4~第6実施形態では、位相変調素子54R,54G,54B,54Sは、反射型の位相変調素子とされた。しかし、位相変調素子として、例えば、LCD、GLV、回折格子等を用いても良い。
また、第2の態様としての車両用前照灯は、図6に示される第1の態様としての車両用前照灯1と同様の構成とされてもよい。つまり、光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54及び導光光学系155に替わって、互いに離間する3つの位相変調素子54R,54G,54B及び合成光学系55を備える構成としてもよい。この場合、3つの位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBが合成光学系55によって合成され、この合成された光が車両用前照灯1から出射する。
また、第2の態様としての第4実施形態では、位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rと第2位相変調素子54Gと第3位相変調素子54Bとは縦方向に隣接して並列されていた。また、第2の態様としての第5実施形態では、位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rと第2位相変調素子54Gと第3位相変調素子54Bとは横方向に隣接して並列されていた。しかし、これら位相変調素子54R,54G,54Bが並列される方向は特に限定されるものではなく、例えば、縦方向及び横方向に並列されていても良い。
また、第2の態様としての第4及び第6実施形態では、導光光学系155は、反射ミラー155m、第1光学素子155f、及び第2光学素子155sを備えていた。しかし、導光光学系155は、それぞれの発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子集合体54や位相変調素子54Sに導光すれば良く、第4実施形態や第6実施形態の構成に限定されない。例えば、導光光学系155は反射ミラー155mを備えていなくても良い。このような場合、第1発光光学系51Rから出射する光LRを第1光学素子155fに入射させる。また、第4実施形態や第6実施形態において、所定の波長帯域の光を透過し、他の波長帯域の光を反射するバンドパスフィルタが第1光学素子155fや第2光学素子155sに用いられても良い。
また、第2の態様としての第4及び第6実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子集合体54や位相変調素子54Sに導く導光光学系155を備えていた。しかし、光学系ユニット50は、導光光学系155を備えていなくても良い。この場合、これら光LR,LG,LBが位相変調素子集合体54や位相変調素子54Sに入射するように、発光光学系51R,51G,51Bを配置する。
また、第2の態様としての第4及び第5実施形態では、光学系ユニット50は、第1の光DLRと第2の光DLGと第3の光DLBとを合成する合成光学系を備えていなかった。しかし、第4及び第5実施形態の光学系ユニット50は、第1の態様としての第2実施形態と同様に、合成光学系を備えていても良い。
また、第2の態様としての第5実施形態では、光学系ユニット50は、発光光学系51R,51G,51Bから出射する光LR,LG,LBを位相変調素子集合体54に導く導光光学系を備えていなかった。しかし、第5実施形態の光学系ユニット50は、第4実施形態と同様に、導光光学系を備えていても良い。
また、第2の態様としての第4~第6実施形態では、灯具ユニット20は、結像レンズを含む結像レンズ系を備えていなかった。しかし、灯具ユニット20は、結像レンズ系を備え、光学系ユニット50から出射する光をこの結像レンズ系を介して出射させても良い。このような構成にすることで、出射する光の配光パターンをより広い配光パターンにし易くし得る。なお、ここでの広いとは、車両から所定の距離離れた鉛直面上に形成される配光パターンを比べた際に広いことを表している。
また、第2の態様としての第4~第6実施形態では、入射スポットSR,SG,SBは、概ね楕円形状とされていた。しかし、入射スポットSR,SG,SBの形状は他の方向よりも所定の方向に長尺な形状とされていれば良い。
また、第2の態様としての第4~第6実施形態では、それぞれの位相変調素子54R,54G,54B,54Sの形状は概ね長方形とされ、それぞれの入射面も概ね長方形とされていた。しかし、位相変調素子54R,54G,54B,54Sの入射面の形状は他の方向よりも所定の方向に長尺な形状とされていれば良い。
また、第2の態様としての第4~第6実施形態では、それぞれの位相変調素子54R,54G,54B,54Sの入射面の長手方向は、水平方向である横方向とされていた。しかし、位相変調素子54R,54G,54B,54Sの入射面の長手方向は、特に限定されるものではなく、鉛直方向である縦方向とされても良い。
また、第2の態様としての第4及び第5実施形態では、3つの位相変調素子54R,54G,54Bの全てが一体に形成されていた。しかし、部品点数を減少し得る観点では、複数の位相変調素子のうち少なくとも1つの位相変調素子が少なくとも1つの他の位相変調素子に接続されてこの他の位相変調素子と一体に形成されれば良い。
また、第2の態様としての第5実施形態では、3つの位相変調素子54R,54G,54Bの全てが隣接して並列されていた。しかし、少なくとも2つの位相変調素子が並列され、この並列される少なくとも2つの位相変調素子の入射面のそれぞれの長手方向とこれら位相変調素子が並列される方向とが平行とされていれば良い。例えば、第5実施形態において、位相変調素子集合体54における第3位相変調素子54Bが位相変調素子集合体54と別体に設けられていても良い。
また、第2の態様としての第6実施形態では、3つの光源52R,52G,52Bが、これら光源52R,52G,52Bごとに交互に光を出射していた。しかし、部品点数の減少や小型化の観点では、少なくとも2つの光源が、当該光源ごとに交互に光を出射していれば良い。この場合、少なくとも2つの光源から出射する光が入射する位相変調素子から出射する光は残像効果によって合成され、この残像効果によって合成される光と他の位相変調素子から出射する光とが合成されて、所定の配光パターンの光が照射される。
また、第2の態様としての第4及び第5実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、3つの位相変調素子54R,54G,54Bが一体とされた1つの位相変調素子集合体54とを備える光学系ユニット50を例に説明した。また、第6実施形態では、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、1つの位相変調素子54Sとを備える光学系ユニット50を例に説明した。しかし、光学系ユニットは、少なくとも1つの光源と、この光源に対応する位相変調素子とを備えれば良い。例えば、光学系ユニットは、白色のレーザ光を出射する光源と、この光源から出射する白色のレーザ光を回折して出射する位相変調素子とを備えていても良い。また、光学系ユニットが光源と位相変調素子を複数備える場合、それぞれの位相変調素子には、少なくともの1つの光源が対応していれば良い。例えば、複数の光源から出射する光が合成された光が1つの位相変調素子に入射されても良い。
(第7実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第7実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は同様の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図13は、本発明の第3の態様としての第7実施形態における灯具ユニット20の一部を示す図であり、灯具ユニット20の上下方向の断面の一部を示す縦断面図である。図13には、灯具ユニット20における光学系ユニット50が示されている。図13に示すように、本実施形態の光学系ユニット50では、光源52R,52G,52Bと導光光学系155との位置関係が第1実施形態の光学系ユニット50における光源52R,52G,52Bと導光光学系155との位置関係と異なる。本実施形態において、これら光源52R,52G,52Bは、第2光源52Gから上記位相変調素子集合体54までの光路長が最も長くなるように、かつ、第3光源52Bから位相変調素子集合体54までの光路長が最も短くなるように、灯室R内に配置される。第1光源52Rは、赤色レーザ光を上方に出射し、第2光源52Gは、緑色レーザ光を前方に出射し、第3光源52Bは、青色レーザ光を前方に出射する。
なお、本実施形態において、第1光源52Rから出射する赤色レーザ光の全光束数と、第2光源52Gから出射する緑色レーザ光の全光束数と、第3光源52Bから出射する青色レーザ光の全光束数とは、それぞれ同一とされる。
第1光源52Rの上方には、第1コリメートレンズ53Rが配置されている。第2光源52Gの前方には、第2コリメートレンズ53Gが配置されている。第3光源52Bの前方には、第3コリメートレンズ53Bが配置されている。
本実施形態では、導光光学系155は、第1光学素子155fと第2光学素子155sとを有する。第1光学素子155fは、第1コリメートレンズ53Rの上方かつ第2コリメートレンズ53Gの前方に配置されており、前後方向及び上下方向に対して略45°傾いている。この第1光学素子155fは、例えば、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタとされ、所定波長よりも長い波長の光を透過し、該所定波長よりも短い波長の光を反射するように上記酸化膜の種類や厚みが調整される。本実施形態において、第1光学素子155fは、第1光源52Rから出射する赤色成分の光を透過し、第2光源52Gから出射する緑色成分の光を反射するように構成される。本実施形態において、第1コリメートレンズ53Rから出射する赤色レーザ光及び第2コリメートレンズ53Gから出射する緑色レーザ光は、第1光学素子155fの出射面の異なる位置から上方に出射する。
第2光学素子155sは、第1光学素子155fの上方かつ第3コリメートレンズ53Bの前方に配置されており、前後方向及び上下方向に対して第1光学素子155fと同一方向に略45°傾いている。この第2光学素子155sは、第1光学素子155fと同様に、波長選択フィルタとされる。本実施形態において、第2光学素子155sは、第1光源52Rから出射する赤色成分の光及び第2光源52Gから出射する緑色成分の光を透過し、第3光源52Bから出射する青色成分の光を反射するように構成される。本実施形態において、第1光学素子155fから出射する赤色レーザ光、第1光学素子155fから出射する緑色レーザ光、及び第3コリメートレンズ53Bから出射する青色レーザ光は、第2光学素子155sの出射面の異なる位置から上方に出射する。
位相変調素子集合体54は、導光光学系155の上方に配置されており、前後方向及び上下方向に対して光学素子155f,155sと同一方向に略45°傾いている。位相変調素子集合体54は、第1実施形態の位相変調素子集合体54と同様に、複数の位相変調素子を含んでいる。具体的に、位相変調素子集合体54は、上記赤色レーザ光の位相を変調して当該赤色レーザ光を所定の配光パターンとする第1位相変調素子54Rと、上記緑色レーザ光の位相を変調して当該緑色レーザ光を所定の配光パターンとする第2位相変調素子54Gと、上記青色レーザ光の位相を変調して当該青色レーザ光を所定の配光パターンとする第3位相変調素子54Bとを含んでおり、これら位相変調素子54R,54G,54Bが一方向に並べられた構成とされる。
本実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bのそれぞれは、入射する光を反射しつつ回折して出射する反射型の位相変調素子とされ、具体的には、反射型のLCOSとされる。
次に、上記位相変調素子集合体54の構成についてより詳細に説明する。
本実施形態の位相変調素子54R,54G,54Bは、第1実施形態の位相変調素子54R,54G,54Bと同様の構成とされる。しかし、位相変調素子54R,54G,54Bの正面視の外形は、第1実施形態の位相変調素子54R,54G,54Bの外形と異なる。図14は、図13に示す位相変調素子54R,54G,54Bを概略的に示す正面図である。図14に示すように、位相変調素子集合体54は、正面視において略長方形に形成されており、最上部に位置する第1位相変調素子54Rと、第1位相変調素子54Rの下方に位置する第2位相変調素子54Gと、第2位相変調素子54Gの下方に位置する第3位相変調素子54Bとを有している。この位相変調素子集合体54には、駆動回路60Rが電気的に接続されている。
ここで、図14には、第1位相変調素子54Rに入射する赤色レーザ光の入射スポットSRが実線で、第2位相変調素子54Gに入射する緑色レーザ光の入射スポットSGが破線で、第3位相変調素子54Bに入射する青色レーザ光の入射スポットSBが一点鎖線で示されている。本実施形態では、入射スポットSR,SG,SBのうち、青色レーザ光の入射スポットSBが最も大きく、緑色レーザ光の入射スポットSGが最も小さい。つまり、光源から位相変調素子集合体54までの光路長が長い光ほど上記スポット径が小さくされる。なお、図14では、入射スポットSR,SG,SBが円で示されているが、入射スポットの外形は非円形でもよく、例えば、楕円でもよい。
本実施形態では、第1位相変調素子54Rの変調部MPRのそれぞれは、赤色レーザ光に対応した同一の位相変調パターンを有している。また、第2位相変調素子54Gの変調部MPGのそれぞれは、緑色レーザ光に対応した同一の位相変調パターンを有している。また、第3位相変調素子54Bの変調部MPBのそれぞれは、青色レーザ光に対応した同一の位相変調パターンを有している。
本実施形態において、入射スポットSRの全体が図14に示すように第1位相変調素子54Rに入射する場合、入射スポットSRには変調部MPRが少なくとも1つ含まれる。上述のように、各変調部MPRは同一の位相変調パターンを有しているため、入射スポットSRの全体が第1位相変調素子54Rに入射する場合、第1位相変調素子54Rから出射する赤色レーザ光の配光パターンは、変調部MPRの位相変調パターンに基づく所定の配光パターンとされる。本実施形態において、この所定の配光パターンは、図5(A)に示すロービームの配光パターンPLが形成され得る配光パターンとされる。以下、位相変調素子集合体54から出射する赤色レーザ光を第1の光DLRということがある。
また、入射スポットSGの全体が図14に示すように第2位相変調素子54Gに入射する場合、入射スポットSGには変調部MPGが少なくとも1つ含まれる。上述のように、各変調部MPGは同一の位相変調パターンを有しているため、入射スポットSGの全体が第2位相変調素子54Gに入射する場合、第2位相変調素子54Gから出射する緑色レーザ光の配光パターンは、変調部MPGの位相変調パターンに基づく所定の配光パターンとされる。本実施形態において、この所定の配光パターンは、ロービームの配光パターンPLが形成され得る配光パターンとされる。以下、位相変調素子集合体54から出射する緑色レーザ光を第2の光DLGということがある。
また、入射スポットSBの全体が図14に示すように第3位相変調素子54Bに入射する場合、入射スポットSBには変調部MPBが少なくとも1つ含まれる。上述のように、各変調部MPBは同一の位相変調パターンを有しているため、入射スポットSBの全体が第3位相変調素子54Bに入射する場合、第3位相変調素子54Bから出射する青色レーザ光の配光パターンは、変調部MPBの位相変調パターンに基づく所定の配光パターンとされる。本実施形態において、この所定の配光パターンは、ロービームの配光パターンPLが形成され得る配光パターンとされる。以下、位相変調素子集合体54から出射する青色レーザ光を第3の光DLBということがある。
次に、本実施形態の車両用前照灯1における光の出射について説明する。具体的には、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を説明する。
第1光源52Rに電力が供給されると、第1光源52Rによって赤色レーザ光が生成される。図13に示すように、この赤色レーザ光は上方に出射し、第1コリメートレンズ53Rでコリメートされる。また、第2光源52Gに電力が供給されると、第2光源52Gによって緑色レーザ光が生成され、この緑色レーザ光が前方に出射する。この緑色レーザ光は、第2コリメートレンズ53Gでコリメートされる。また、第3光源52Bに電力が供給されると、第3光源52Bによって青色レーザ光が生成され、この青色レーザ光が前方に出射する。この青色レーザ光は、第3コリメートレンズ53Bでコリメートされる。
第1コリメートレンズ53Rから出射する赤色レーザ光は、上述のように、第1コリメートレンズ53Rの上方に配置された第1光学素子155fを透過する。また、第2コリメートレンズ53Gから出射する緑色レーザ光は、上述のように、第2コリメートレンズ53Gの前方に配置された第1光学素子155fで反射する。つまり、この緑色レーザ光は、第1光学素子155fで90度方向転換し、前方に出射する。上述のように、これら赤色レーザ光及び緑色レーザ光は、第1光学素子155fの出射面の異なる位置から出射する。このため、第1光学素子155fから出射する赤色レーザ光及び緑色レーザ光は、概して前後方向に並んだ状態で上方に伝搬する。
上述のように、赤色レーザ光及び緑色レーザ光は、第1光学素子155fの上方に配置された第2光学素子155sを透過する。また、第3コリメートレンズ53Bから出射する青色レーザ光は、上述のように、第3コリメートレンズ53Bの前方に配置された第2光学素子155sで反射する。つまり、この青色レーザ光は、第2光学素子155sで90度方向転換し、前方に出射する。上述のように、これら赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光は、第2光学素子155sの出射面の異なる位置から出射する。このため、第2光学素子155sから出射する赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光は、概して前後方向に並んだ状態で上方に伝搬する。具体的には、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光のうち、赤色レーザ光が最も前方側に位置し、青色レーザ光が最も後方側に位置する。
上述のように、赤色レーザ光が最も前方側に位置し、青色レーザ光が最も後方側に位置した状態で、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光が上方に伝搬する結果、赤色レーザ光は、第2光学素子155sの上方に配置された位相変調素子集合体54の第1位相変調素子54Rに入射する。また、緑色レーザ光は、上記位相変調素子集合体54の第2位相変調素子54Gに入射する。また、青色レーザ光は、上記位相変調素子集合体54の第3位相変調素子54Bに入射する。
なお、本実施形態では、上述のように、各光源から位相変調素子集合体54までの光路長のうち、第2光源52Gから位相変調素子集合体54までの緑色レーザ光の光路長が最も長くなっており、第3光源52Bから位相変調素子集合体54までの青色レーザ光の光路長が最も短くなっている。
第1位相変調素子54Rに入射した赤色レーザ光は、第1位相変調素子54Rで回折されて第1の光DLRとなる。この第1の光DLRが第1位相変調素子54Rから前方に出射する。上述のように、この第1の光DLRは、ロービームの配光パターンPLとされる。また、第2位相変調素子54Gに入射した緑色レーザ光は、第2位相変調素子54Gで回折されて第2の光DLGとなる。この第2の光DLGが第2位相変調素子54Gから前方に出射する。上述のように、この第2の光DLGは、ロービームの配光パターンPLとされる。また、第3位相変調素子54Bに入射した青色レーザ光は、第3位相変調素子54Bで回折されて第3の光DLBとなる。この第3の光DLBが第3位相変調素子54Bから前方に出射する。上述のように、この第3の光DLBは、ロービームの配光パターンPLとされる。
このように、位相変調素子集合体54から出射する光DLR,DLG,DLBは、いずれもロービームの配光パターンとされる。このため、これらの光DLR,DLG,DLBがカバー36の開口36Hから出射して、所定の距離だけ前方に伝搬することで、光DLR,DLG,DLBが重なり合い、白色光であるロービームが形成され得る。
ここで、前述の特許文献1に記載されたような位相変調素子を用いる車両用灯具では、波長の異なるレーザ光を出射する複数の半導体レーザを用いて所望の色を合成することが考えられる。しかし、複数の半導体レーザを用いる場合、各半導体レーザから、所望の配光パターンを形成する位相変調素子までの距離がそれぞれ異なる場合がある。また、一般的に、複数の半導体レーザ素子から出射する波長の異なるレーザ光の径は互いに異なる傾向にある。この様な場合、レンズやシェードを用いて、位相変調素子に入射するレーザ光のスポット径を揃えることが考えられるが、これでは、部品点数の増加を招いてしまう。
そこで、第3の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、互いに波長の異なる光を出射する複数の光源52R,52G,52Bと、複数の光源52R,52G,52Bのそれぞれから出射する光を回折することにより、複数の光をそれぞれ所定の配光パターンとする位相変調素子54R,54G,54Bと、を備える。波長の異なる光の位相変調素子54R,54G,54Bにおける入射スポットSR,SG,SBの大きさが互いに異なる。このため、本実施形態の車両用前照灯1では、波長の相違する光の入射スポットSR,SG,SBの大きさを調整するための光学部品などを設けなくし得、部品点数の増加が抑制され得る。
また、車両用前照灯1を搭載する車両が振動して光源52R,52G,52Bが揺れると、光源52R,52G,52Bから出射するレーザ光も揺れるため、上記入射スポットSR,SG,SBが位相変調素子集合体54の入射面上を移動する場合がある。この場合、入射スポットが移動する距離が大きいと、入射スポットが位相変調素子集合体54の外側にはみ出したり、異なる位相変調素子にはみ出したりする場合がある。例えば、所定色のレーザ光の入射スポットが、異なる色のレーザ光に対応する位相変調素子にはみ出した場合を考える。この場合、はみ出した領域の位相変調パターンは、異なる色のレーザ光に対応した位相変調パターンであるため、当該はみ出した領域から出射する上記所定色のレーザ光の配光パターンは、ロービームとは異なる配光パターンとなり得る。そして、このようなロービームとは異なる配光パターンを有する光が車両用前照灯1の出射光に混在することで、ロービームの形成が阻害され得る。
上述のように光源が揺れると、照射位置までの光路長が長い光ほど、当該光の上記照射位置における入射スポットの揺れ幅も大きくなる傾向がある。本実施形態の車両用前照灯1によれば、上述のように、光源から位相変調素子集合体54までの光路長が長い光ほど上記スポット径が小さくされるため、図14に示すように、緑色レーザ光の入射スポットSGが入射スポットSR,SBに比べて小さくなっている。このため、車両の振動などによって緑色レーザ光の入射スポットSGが大きく移動した場合でも、入射スポットSGが第1位相変調素子54Rや第3位相変調素子54Bにはみ出してしまうことが抑制され得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、ロービームのような所望の配光パターンが崩れることが抑制され得る。
このように照射位置までの光路長に応じて各レーザ光の入射スポットの大きさが相違することによって、入射スポットの大きさを調整する光学系等を設けることなく、スポット径が位相変調素子からはみ出してしまうことが抑制され得、部品点数の増加が抑制され得る。
なお、光路長が緑色レーザ光に比べて長い赤色レーザ光及び青色レーザ光の入射スポットSR,SBを同じ大きさとし、入射スポットSGの大きさのみを小さくしてもよい。すなわち、入射スポットの大きさが互いに異なる少なくとも2つの光のうち、位相変調素子までの光路長が長い光ほど入射スポットが小さくされればよい。ただし、上述のように、光源から位相変調素子集合体54までの光路長が長いほど入射スポットを小さくすることで、光路長の長さに応じた入射スポットの大きさとなるため、所望の配光パターンがより得られ易くなり得る。
(第8実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第8実施形態について説明する。なお、第7実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
図15は、本発明の第3の態様としての第8実施形態における車両用前照灯1の灯具ユニット20の一部を図13と同様に示す図である。なお、図15では、理解を容易にするために、灯具ユニット20のヒートシンク30、カバー36等が省略されている。図15に示すように、第8実施形態における灯具ユニット20は、1つの位相変調素子54Sが設けられる点において、光源ごとに位相変調素子が設けられて位相変調素子集合体54が構成される第7実施形態における灯具ユニット20と相違する。以下、第8実施形態における灯具ユニット20の構成について説明する。
本実施形態において、第1光源52Rは赤色レーザ光を上方に出射し、第2光源52Gは緑色レーザ光を前方に出射し、第3光源52Bは青色レーザ光を前方に出射する。これら赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光は、合成光学系55を経由して位相変調素子54Sに入射する。これら光源52R,52G,52Bは、第2光源52Gから位相変調素子54Sまでの光路長が最も長くなるように、かつ、第3光源52Bから位相変調素子54Sまでの光路長が最も短くなるように、灯室R内に配置される。なお、本実施形態における赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の全光束数は、第7実施形態と同様に同一とされる。
図16は、図15に示す位相変調素子54Sを当該位相変調素子54Sに入射する光の入射スポットとともに概略的に示す正面図である。図16に示すように、本実施形態では、位相変調素子54Sまでの光路長が最も長い緑色レーザ光の入射スポットSGが最も小さくされ、位相変調素子54Sまでの光路長が最も短い青色レーザ光の入射スポットSBが最も大きくされる。なお、図16では、入射スポットSR,SG,SBが円で示されているが、入射スポットの外形は非円形でもよく、例えば、楕円でもよい。
本実施形態の光源52R,52G,52Bは、不図示の制御システムに接続されている。この制御システムは、光源52Rが赤色レーザ光を出射している間は光源52G,52Bからの光を非出射とし、光源52Gが緑色レーザ光を出射している間は光源52R,52Bからの光を非出射とし、光源52Bが青色レーザ光を出射している間は光源52R,52Gからの光を非出射とする。すなわち、本実施形態における車両用前照灯1は、上記制御システムの制御に基づいて、所定の周期で光源52R,52G,52Bからの光の出射を切り替える。
なお、第7実施形態と同様に、光源52R,52G,52Bから出射したレーザ光は、コリメートレンズ53R,53G,53Bでコリメートされる。
図15に示すように、コリメートレンズ53Rの上方かつコリメートレンズ53G,53Bの前方には、合成光学系55が設けられている。すなわち、コリメートレンズ53Rの上方かつコリメートレンズ53Gの前方に第1光学素子55fが設けられ、第1光学素子55fの上方かつコリメートレンズ53Bの前方に第2光学素子55sが設けられる。これら光学素子55f,55sは、前後方向及び上下方向において同一方向に略45°傾けて配置される。
第2光学素子55sの上方には、1つの位相変調素子54Sが設けられている。この位相変調素子54Sは、合成光学系55を通過した赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光が入射可能な位置に配置される。本実施形態における位相変調素子54Sは、例えば反射型のLCOSとされる。この位相変調素子54Sは、前後方向及び上下方向において略45°傾けて配置されており、その傾き方向は光学素子55f,55sと同一方向とされる。
次に、本実施形態の灯具ユニット20における光の出射について説明する。具体的には、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を説明する。
上述のように、本実施形態における灯具ユニット20は、上記制御システムの制御に基づいて、所定の周期で光源52R,52G,52Bからの光の出射を切り替える。例えば、まず、第1光源52Rから赤色レーザ光が所定時間にわたって出射する。この間、光源52G,52Bからのレーザ光は非出射とされる。この赤色レーザ光は、コリメートレンズ53Rでコリメートされた後、合成光学系55を経由して位相変調素子54Sに入射する。図16に示すように、この赤色レーザ光は、所定の大きさの入射スポットSRで位相変調素子54Sの入射面に入射する。
位相変調素子54Sに赤色レーザ光が入射すると、この赤色レーザ光は位相変調素子54Sで回折されるとともに反射して、ロービームの配光パターンPLを有する第1の光DLRが前方に出射する。
所定の時間が経過すると、光源52Rからの光が非出射の状態になり、光源52Rから光が出射する代わりに、光源52Gから緑色レーザ光が所定の時間にわたって出射する。この緑色レーザ光は、コリメートレンズ53Gでコリメートされた後、合成光学系55を経由して、位相変調素子54Sに入射する。上述のように、この緑色レーザ光は、赤色レーザ光の入射スポットSRよりも小さな入射スポットSGで位相変調素子54Sの入射面に入射する。
位相変調素子54Sに緑色レーザ光が入射すると、この緑色レーザ光は位相変調素子54Sで回折されるとともに反射して、ロービームの配光パターンPLを有する第2の光DLGが前方に出射する。
さらに所定の時間が経過すると、光源52Gからの光が非出射の状態になり、光源52Gから光が出射する代わりに、光源52Bから青色レーザ光が所定の時間にわたって出射する。この青色レーザ光は、コリメートレンズ53Bでコリメートされた後、合成光学系55を経由して、位相変調素子54Sに入射する。上述のように、この青色レーザ光は、赤色レーザ光の入射スポットSRよりも大きな入射スポットSBで位相変調素子54Sの入射面に入射する。
位相変調素子54Sに青色レーザ光が入射すると、この青色レーザ光は位相変調素子54Sで回折されるとともに反射して、ロービームの配光パターンPLを有する第3の光DLBが前方に出射する。
上記制御システムの上記制御により、上記光の出射サイクルが所定の周期で繰り返される。
このように、制御システムが光源52R,52G,52Bからの光の出射を所定の周期で切り替えることで、光DLR,DLG,DLBが車両用前照灯1から所定の周期で切り替えられて出射する。この周期が人の視覚の時間分解能よりも短い場合、第1の態様としての第3実施形態と同様に、残像効果が生じ、人は異なる色の光があたかも合成されて照射されていると認識し得る。したがって、本実施形態における上記周期を人の時間分解能よりも短くすることで、人は、白色光であるロービームが車両用前照灯1から出射されていると認識し得る。
前述のように、人の視覚の時間分解能は概ね1/30sであるため、上記周期を1/30s以下とすることが好ましく、1/60s以下とすることがさらに好ましい。なお、上記周期が1/30sよりも大きい場合であっても上記残像効果が生じ得る。例えば、上記周期が1/15sであっても上記残像効果が生じ得る。
以上のように、本実施形態の車両用前照灯1によれば、赤色レーザ光及び青色レーザ光に比べて位相変調素子集合体54までの光路長が長い緑色レーザ光の入射スポットSGが最も小さくされるため、第7実施形態と同様に、車両の振動などによって緑色レーザ光の入射スポットSGが大きく移動した場合でも、入射スポットSGが位相変調素子54Sからはみ出してしまうことが抑制され得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、ロービームのような所望の配光パターンが得られ易くなり得る。
このように照射位置までの光路長に応じて各レーザ光の入射スポットの大きさが相違することによって、入射スポットの大きさを調整する光学系等を設けることなく、スポット径が位相変調素子からはみ出してしまうことが抑制され得、部品点数の増加が抑制され得る。また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、光源52R,52G,52Bからのレーザ光が共通の位相変調素子54Sに入射するため、位相変調素子の数を減らして1つにすることができ、部品点数の増加がより効果的に抑制され得る。
(第9実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第9実施形態について説明する。なお、第7実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
図17は、本発明の第3の態様としての第9実施形態における車両用前照灯1の灯具ユニット20の一部を図13と同様に示す図である。図17に示すように、第9実施形態における灯具ユニット20は、位相変調素子54R,54G,54Bが互いに離間して配置されている点等において第9実施形態における灯具ユニット20と相違する。以下、第9実施形態における灯具ユニット20について説明する。
図17に示すように、本実施形態における灯具ユニット20の光学系ユニット50は、第1光源52Rと、第2光源52Gと、第3光源52Bと、第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bと、合成光学系55と、を主な構成として備える。本実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bは、入射する光を反射しつつ回折して出射する反射型の位相変調素子とされ、具体的には、反射型のLCOSとされる。
第1光源52Rは、所定の全光束数の赤色レーザ光を上方に出射する。第2光源52Gは、赤色レーザ光よりも大きな全光束数の緑色レーザ光を後方に出射する。第3光源52Bは、緑色レーザ光よりも大きな全光束数の青色レーザ光を後方に出射する。つまり、本実施形態では、赤色レーザ光の全光束数が最も小さく、青色レーザ光の全光束数が最も大きくなっている。
なお、第7実施形態と同様に、光源52R,52G,52Bから出射したレーザ光は、コリメートレンズ53R,53G,53Bでコリメートされる。
第1位相変調素子54Rは、第1コリメートレンズ53Rの上方に配置されており、前後方向及び上下方向に対して略45°傾斜している。コリメートレンズ53Rでコリメートされた赤色レーザ光は、この第1位相変調素子54Rの入射面に所定の大きさの入射スポットSRで入射する。
第2位相変調素子54Gは、第2コリメートレンズ53Gの後方に配置されており、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°傾斜して配置されている。コリメートレンズ53Gでコリメートされた緑色レーザ光は、上記入射スポットSRよりも大きな入射スポットSGで第2位相変調素子54Gの入射面に入射する。
第3位相変調素子54Bは、第3コリメートレンズ53Bの後方に配置されており、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°傾斜して配置されている。コリメートレンズ53Bでコリメートされた青色レーザ光は、上記入射スポットSGよりも大きな入射スポットSBで第3位相変調素子54Bの入射面に入射する。
以上のように、本実施形態では、全光束数が最も小さい赤色レーザ光の入射スポットSRが最も小さく、全光束数が最も大きい青色レーザ光の入射スポットSBが最も大きくなっている。
次に、車両用前照灯1における光の出射について説明する。具体的には、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を説明する。
第1光源52Rから上方に出射した赤色レーザ光は、コリメートレンズ53Rでコリメートされ、所定の大きさの入射スポットSRで第1位相変調素子54Rに入射する。この赤色レーザ光は、第1位相変調素子54Rで回折しつつ反射して、ロービームの配光パターンPLとされた第1の光DLRが前方に出射する。
第2光源52Gから後方に出射した緑色レーザ光は、コリメートレンズ53Gでコリメートされ、入射スポットSRよりも大きな入射スポットSGで第2位相変調素子54Gに入射する。この緑色レーザ光は、第2位相変調素子54Gで回折しつつ反射して、ロービームの配光パターンPLとされた第2の光DLGが上方に出射する。
第3光源52Bから後方に出射した青色レーザ光は、コリメートレンズ53Bでコリメートされ、入射スポットSGよりも大きな入射スポットSBで第3位相変調素子54Bに入射する。この青色レーザ光は、第3位相変調素子54Bで回折しつつ反射して、ロービームの配光パターンPLとされた第3の光DLBが上方に出射する。
第1位相変調素子54Rから出射した第1の光DLRは、第1位相変調素子54Rの前方に配置された合成光学系55の第1光学素子55fを透過する。第2位相変調素子54Gから出射した第2の光DLGは、第2位相変調素子54Gの上方に配置された第1光学素子55fで反射して、当該第1光学素子55fから前方に出射する。こうして、光DLR,DLGからなる第1合成光LS1が前方に伝搬する。
第1光学素子55fから出射した第1合成光LS1は、第1光学素子55fの前方に配置された合成光学系55の第2光学素子55sを透過する。第3位相変調素子54Bから出射した第3の光DLBは、第3位相変調素子54Bの上方に配置された第2光学素子55sで反射して、当該第2光学素子55sから前方に出射する。こうして、光DLR,DLG,DLBからなる第2合成光LS2が第2光学素子55sから前方に出射する。
第2合成光を形成する光DLR,DLG,DLBは、上述のように、いずれもロービームの配光パターンを有している。このため、開口36Hから出射する第2合成光LS2が所定の距離だけ前方に伝搬することで、光DLR,DLG,DLBが重なり合い、白色光であるロービームが形成され得る。
以上のように、本実施形態における車両用前照灯1によれば、全光束数の最も大きな青色レーザ光の入射スポットSBが最も大きくされ、全光束数の最も小さな赤色レーザ光の入射スポットSRが最も小さくされる。このため、位相変調素子54Rに入射する赤色レーザ光の単位面積当たりのエネルギーと、位相変調素子54Gに入射する緑色レーザ光の単位面積当たりのエネルギーと、位相変調素子54Bに入射する青色レーザ光の単位面積当たりのエネルギーとが均等に近くなり得る。そのため、特定の位相変調素子が他の位相変調素子よりも早く劣化してしまうことが抑制され得、長期間にわたって配光パターンの崩れが抑制され得る。したがって、車両用前照灯の耐用期限が短くなることが抑制され得る。
このように全光束数に応じて各レーザ光の入射スポットの大きさが相違することによって、入射スポットの大きさを調整する光学系を設けることなく、各レーザ光の単位面積当たりのエネルギーを均等にし得、部品点数の増加が抑制され得る。
(第10実施形態)
次に、本発明の第3の態様としての第10実施形態について説明する。なお、第7実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
本発明の第3の態様としての第10実施形態における車両用前照灯1の灯具ユニット20は、3つの第1光源52Rと、2つの第2光源52Gと、1つの第3光源52Bとを備える点において、光源52R,52G,52Bを1つずつ備える第7実施形態における灯具ユニット20と相違する。
本実施形態の光源52R,52G,52Bは、縦断面視において図13と視認し得るが、第1光源52Rが前後方向及び上下方向に垂直な奥行方向に沿って3つ配置され、3つの第1光源52Rの上方に第2光源52Gが奥行方向に沿って2つ配置され、2つの第2光源52Gの上方に1つの第3光源52Bが配置されている。なお、本実施形態では、複数の光源のそれぞれから出射する光の各全光束量は概ね同一とされる。
白色光の明るさ及びホワイトバランスを良好にするためには、例えば、赤色光、緑色光、及び青色光のうち、赤色光の全光束量を最も大きくし、青色光の全光束量を最も小さくすることが好ましい場合がある。このため、本実施形態の灯具ユニット20では、上述のように、赤色光を出射する第1光源52Rを3つ配置して赤色光の全光束量を最も大きくし、緑色光を出射する第2光源52Gを2つ配置して緑色光の全光束量を赤色光の全光束量よりも小さくし、青色光を出射する第3光源52Bを1つ配置して青色光の全光束量を最も小さくしている。
図18は、本実施形態に係る位相変調素子を当該位相変調素子に入射する光の入射スポットとともに図14と同様の視点で示す正面図である。図18に示すように、本実施形態では、第1光源52Rの数が3つで最も多く、これらの第1光源52Rから出射する赤色光の入射スポットSRのそれぞれが、2つの緑色光の入射スポットSG及び1つの青色光の入射スポットSBに比べて小さくなっている。また、2つの第2光源52Gから出射する緑色光の入射スポットSGのそれぞれが、入射スポットSRよりも小さくなっている。また、第3光源52Bの数が1つで最も少なく、この第3光源52Bから出射する青色光の入射スポットSBが最も大きくなっている。このように、本実施形態では、入射スポットが小さい光ほど、より多数の光源から出射されるようになっている。
こうすることで、第1位相変調素子54Rを他の位相変調素子54G,54Bに比べて大きくしなくても、より多数の光源52Rから出射する赤色光を漏れなく受光することが可能になり得る。
このように、入射スポットが小さい光ほど、より多数の光源から出射されることによって、入射スポットの大きさを調整する光学系等を設けることなく、位相変調素子の大型化を抑制しつつ当該位相変調素子で多数の光源から出射する光を漏れなく受光し得、部品点数の増加が抑制され得る。
なお、本実施形態では、第1光源52Rの数(3つ)が最も多く、第3光源52Bの数(1つ)が最も少ない例を説明したが、入射スポットの大きさが互いに異なる少なくとも2つの光のうち、入射スポットが小さい光ほどより多くの光源から出射されればよい。
なお、本発明の第3の態様について、第7~第10実施形態を例に説明したが、本発明の第3の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、第3の態様としての第7及び第8実施形態では、位相変調素子までの光路長が長いレーザ光ほど位相変調素子における入射スポットが小さくされる例を説明したが、これに限られない。例えば、第9実施形態と同様に、全光束数が大きいレーザ光ほど位相変調素子における入射スポットを大きくしてもよい。この場合、第9実施形態と同様に、位相変調素子54Rに入射する赤色レーザ光の単位面積当たりのエネルギーと、位相変調素子54Gに入射する緑色レーザ光の単位面積当たりのエネルギーと、位相変調素子54Bに入射する青色レーザ光の単位面積当たりのエネルギーとが、それぞれ同一に近くなり得る。このため、特定の位相変調素子が他の位相変調素子よりも早く劣化してしまうこと等が抑制され得る。
また、第3の態様としての第9実施形態では、全光束数の大きなレーザ光ほど位相変調素子における入射スポットが大きくされる例を説明したが、これに限られない。例えば、第7及び第8実施形態と同様に、位相変調素子までの光路長が長いレーザ光ほど位相変調素子における入射スポットが小さくされてもよい。この場合、第9実施形態の車両用前照灯1において、所望の配光パターンが得られ易くなり得る。
また、第3の態様としての第7~第10実施形態では、第1光源52Rから出射する赤色光の入射スポットSRと、第2光源52Gから出射する緑色光の入射スポットSGと、第3光源52Bから出射する青色光の入射スポットSBとが、すべて相違する例を説明したが、入射スポットSR,SG,SBのうち少なくとも2つの大きさが相違すればよい。ただし、入射スポットSR,SG,SBの大きさがすべて相違する場合、スポット径の大きさをより効果的に調整し得、部品点数の増加がより効果的に抑制し得る。
また、入射スポットSR,SG,SBの大きさをすべて相違させる場合、例えば、波長の長い光ほど大きく屈折する傾向があることを考慮して、波長の長い光の入射スポットほど小さくしてもよい。例えば、図19に示すように、波長の最も長い赤色光の入射スポットSR、波長が赤色光よりも短い緑色光の入射スポットSG、及び波長が最も短い青色光の入射スポットSBの順にスポットの大きさを大きくし、これら入射スポットSR,SG,SBを同心円にする。赤色光、緑色光、及び青色光は、それぞれ位相変調素子54Sで屈折した後、位相変調素子54Sで反射して位相変調素子54Sから出射する。上述のように、波長の長い光ほど大きく屈折する傾向があるため、位相変調素子54Sから出射する赤色光は位相変調素子54S内で最も大きく屈折しており、位相変調素子54Sから出射する青色光は位相変調素子54S内で最も小さく屈折している。ここで、上述のように、同心円をなす入射スポットSR,SG,SBのうち入射スポットSRが最も小さく、入射スポットSBが最も大きいため、位相変調素子54Sから出射する赤色光、緑色光、及び青色光が所定の距離だけ伝搬することで、赤色光、緑色光、及び青色光のそれぞれの外縁が重なり合い、赤色光、緑色光、及び青色光からなる合成光の外縁における色にじみが抑制され得る。
また、第3の態様としての第7~第10実施形態では、位相変調素子として反射型のLCOSを用いた例を説明したが、位相変調素子として他のタイプの位相変調素子を用いてもよい。例えば、LCDを用いてもよいし、回折格子を用いてもよいし、GLVを用いてもよい。
また、第3の態様としての第7~第10実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、第3の態様としての車両用灯具が照射する光はロービームに限定されない。例えば、他の実施形態における車両用灯具は、図5(A)示すように、ロービームと標識認識用の光OHSとを照射するように構成されてもよい。また、他の別の実施形態における車両用灯具は、図5(B)に示すようなハイビームの配光パターンPHの光を照射するように構成されてもよい。また、さらに別の実施形態では、本発明の第3の態様としての車両用灯具を、画像を構成するものとして適用してもよい。このような場合、車両用灯具から出射する光の方向や、該車両における車両用灯具の取り付け位置は特に限定されない。
(第11実施形態)
次に、本発明の第4の態様としての第10実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は同様の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図20は、本発明の第4の態様としての第11実施形態における灯具ユニット20の一部を示す図であり、灯具ユニット20の上下方向の断面の一部を示す縦断面図である。図13に示すように、本実施形態における灯具ユニット20は、カバー36に替わってケース40を備える点、で主に第1実施形態の灯具ユニット20と主に異なる。また、本実施形態における光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54に替わって複数の位相変調素子54R,54G,54Bを備える点、複数の可動部材57R,57G,57Bを更に備える点、導光光学系155に替わって合成光学系55を備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と主に異なる。
本実施形態では、ヒートシンク30におけるベース板31の上面にはケース40が配置されている。本実施形態のケース40は、例えばアルミニウム等の金属から成る基台41とカバー42とから構成され、基台41がヒートシンク30におけるベース板31の上面に固定される。基台41は、前部から上部に渡って開口が形成された箱状に形成され、上部側の開口を塞ぐようにカバー42が基台41に固定される。ケース40の前部には基台41の前端部とカバー42の前端部とよって規定される開口40Hが形成されている。ケース40の内側の空間には、光学系ユニット50が配置されている。なお、基台41とカバー42の内壁は、黒アルマイト加工等による光吸収性とされることが好ましい。基台41とカバー42の内壁が光吸収性とされることで、意図しない反射や屈折等により基台41の内壁に照射された光が反射して開口40Hから意図しない方向に出射することを抑制することができる。
図20に示すように、本実施形態における光学系ユニット50は、第1光源52Rと、第2光源52Gと、第3光源52Bと、第1位相変調素子54Rと、第2位相変調素子54Gと、第3位相変調素子54Bと、合成光学系55と、を主な構成として備える。本実施形態において、位相変調素子54R,54G,54Bは、入射する光を反射しつつ回折して出射する反射型の位相変調素子とされ、具体的には、反射型のLCOSとされる。
本実施形態では、第1光源52Rは、赤色レーザ光を上方に出射し、第2光源52Gは緑色レーザ光を後方に出射し、第3光源52Bは青色レーザ光を後方に出射する。
第1光源52Rは、基台41に固定された可動部材57Rの可動部に固定されている。この可動部材57Rの可動部は、図示しない制御部に接続されており、当該制御部の制御により、前後方向と、前後方向及び上下方向に垂直な奥行方向との2方向に定期的に移動するようになっている。第2光源52Gは、基台41に固定された可動部材57Gの可動部に固定されている。可動部材57Gの可動部は、図示しない制御部に接続されており、当該制御部の制御により、上下方向及び奥行方向に定期的に移動するようになっている。第3光源52Bは、基台41に固定された可動部材57Bの可動部に固定されている。この可動部材57Bの可動部は、図示しない制御部に接続されており、この制御部の制御により、上下方向及び奥行方向に定期的に移動するようになっている。
また、第1光源52Rは、基台41に固定された回路基板59Rに電気的に接続されており、この回路基板59Rを介して電力の供給を受ける。第2光源52Gは、基台41に固定された回路基板59Gに電気的に接続されており、この回路基板59Gを介して電力の供給を受ける。第3光源52Bは、基台41に固定された回路基板59Bに電気的に接続されており、この回路基板59Bを介して電力の供給を受ける。
回路基板59R,59G,59Bのそれぞれは、光源を移動可能に保持する弾性接続部を有している。図21は、このような回路基板59Rの一部を概略的に示す正面図である。なお、回路基板59G,59Bは回路基板59Rと同様の構成を有するため、回路基板59G,59Bの説明を省略する。
図21に示すように、回路基板59Rには円形孔90が形成されている。この円形孔90を挟んで一方側と他方側とには、導電層94が形成されている。これら導電層94は、板状の導電部材91を介して電気的に接続される。この導電部材91は、円形孔90の外側に位置する1対の平板部92と、円形孔90の内側に位置する1対の弾性接続部93とを有している。円形孔90の一方側に位置する平板部92は、円形孔90の一方側に位置する導電層94に固定されている。円形孔90の他方側に位置する平板部92は、円形孔90の他方側に位置する導電層94に固定されている。
1対の弾性接続部93は、全体として略円形に形成されており、1対の弾性接続部93によって形成される円の直径は、光源52Rの端子の直径よりも小さくされる。したがって、光源52Rの端子が、弾性接続部93がなす円の内側にはめ込まれることで、光源52Rと弾性接続部93とが電気的に接続されるととともに、光源52Rが弾性接続部93によって可動的に保持される。このような構成により、可動部材57Rの可動部の能動的な移動に伴って光源52Rも移動し得る。
図20に示すように、第1コリメートレンズ53Rは、第1光源52Rの上方に配置されており、第1光源52Rから出射するレーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向をコリメートする。第2コリメートレンズ53Gは、第2光源52Gの後方に配置されており、第2光源52Gから出射するレーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向をコリメートする。第3コリメートレンズ53Bは、第3光源52Bの後方に配置されており、第3光源52Bから出射するレーザ光のファスト軸方向及びスロー軸方向をコリメートする。これらコリメートレンズ53R,53G,53Bは、それぞれ不図示の構成によりケース40に固定されている。
第1位相変調素子54Rは、第1コリメートレンズ53Rの上方に配置されており、不図示の構成により基台41に固定されている。また、この第1位相変調素子54Rは、前後方向及び上下方向に対して略45°傾斜して配置されている。したがって、第1コリメートレンズ53Rから出射する赤色レーザ光は、この第1位相変調素子54Rに入射して回折されるとともに、略90°方向転換し、前方に位置する合成光学系55に向けて出射する。
第2位相変調素子54Gは、第2コリメートレンズ53Gの後方に配置されており、不図示の構成により基台41に固定されている。また、この第2位相変調素子54Gは、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°傾斜して配置されている。したがって、第2コリメートレンズ53Gから出射する緑色レーザ光は、この第2位相変調素子54Gに入射して回折されるとともに、略90°方向転換し、上方に位置する合成光学系55に向けて出射する。
第3位相変調素子54Bは、第3コリメートレンズ53Bの後方に配置されており、不図示の構成により基台41に固定されている。また、この第3位相変調素子54Bは、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rとは反対方向に略45°に傾斜して配置されている。したがって、第3コリメートレンズ53Bから出射する青色レーザ光は、この第3位相変調素子54Bに入射して回折されるとともに、略90°方向転換し、上方に位置する合成光学系55に向けて出射する。
合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1位相変調素子54Rの前方かつ第2位相変調素子54Gの上方に配置され、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと同一方向に略45°傾いた状態で配置される。この第1光学素子55fは、例えば、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタとされ、所定波長よりも長い波長の光を透過し、該所定波長よりも短い波長の光を反射するように上記酸化膜の種類や厚みが調整される。本実施形態において、第1光学素子55fは、第1光源52Rから出射する波長638nmの赤色光を透過し、第2光源52Gから出射する波長515nmの緑色光を反射するように構成される。
第2光学素子55sは、第1光学素子55fの前方かつ第3位相変調素子54Bの上方に配置され、前後方向及び上下方向に対して第1位相変調素子54Rと同一方向に略45°傾いた状態で配置される。この第2光学素子55sは、第1光学素子と同様に、波長選択フィルタとされる。本実施形態において、第2光学素子55sは、第1光源52Rから出射する波長638nmの赤色光及び第2光源52Gから出射する波長515nmの緑色光を透過し、第3光源52Bから出射する波長445nmの青色光を反射するように構成される。
次に、上記第1位相変調素子54R、第2位相変調素子54G、及び第3位相変調素子54Bの構成について詳細に説明する。
本実施形態では、位相変調素子54R,54G,54Bは同様の構成とされる。このため、以下では第1位相変調素子54Rについてのみ詳細に説明し、第2位相変調素子54G及び第3位相変調素子54Bについては説明を適宜省略する。
本実施形態の第1位相変調素子54Rは、第1実施形態の第1位相変調素子54Rと同様の構成とされる。しかし、第1位相変調素子54Rの正面視の外形は、第1実施形態の第1位相変調素子54Rの正面視の外形と異なる。図22は、本実施形態の第1位相変調素子54Rを概略的に示す正面図である。図22に示すように、第1位相変調素子54Rは、正面視において略長方形に形成されている。この第1位相変調素子54Rは、第1実施形態の第1位相変調素子54Rと同様に、マトリックス状に区分けされた複数の変調部MPから構成され、変調部MPのそれぞれは、マトリックス状に配置された複数のドットを含んでいる。なお、図22において実線で示した円及び破線で示した円は、第1位相変調素子54Rの入射面に入射する赤色レーザ光の入射スポットSRを示している。この入射スポットについては、後に詳細に説明する。
第1位相変調素子54Rと同様に、第2位相変調素子54G及び第3位相変調素子54Bは、それぞれマトリックス状に区分けされた複数の変調部MPから構成され、変調部MPのそれぞれは、マトリックス状に配置された複数のドットを含んでいる。
本実施形態では、第1位相変調素子54Rの変調部MPのそれぞれは、赤色レーザ光に対応した同一の位相変調パターンを有している。この位相変調パターンは出射する光の配光パターンの形状が図5(A)に示すロービームの配光パターンPLと同一の形状となるような位相変調パターンとされる。また、第2位相変調素子54Gの変調部MPのそれぞれは、緑色レーザ光に対応した同一の位相変調パターンを有している。この位相変調パターンは出射する光の配光パターンの形状がロービームの配光パターンPLと同一の形状となるような位相変調パターンとされる。また、第3位相変調素子54Bの変調部MPのそれぞれは、青色レーザ光に対応した同一の位相変調パターンを有している。この位相変調パターンは出射する光の配光パターンの形状がロービームの配光パターンPLと同一の形状となるような位相変調パターンとされる。このため、位相変調素子54R,54G,54Bから出射する光の配光パターンの形状は、ロービームの配光パターンの形状と概ね同一の形状とされる。
次に、車両用前照灯1における光の出射について説明する。本実施形態では、車両用前照灯1からロービームが出射される場合を説明する。
不図示の電源から回路基板59Rを介して第1光源52Rに電力が供給されると、第1光源52Rによって赤色レーザ光が生成され、この赤色レーザ光が上方に出射する。上述のように、この第1光源52Rは、可動部材57Rに固定されており、この可動部材57Rは定期的に前後方向及び奥行方向に移動する。このため、第1光源52Rから出射する赤色レーザ光も、定期的に前後方向及び奥行方向に移動する。このような赤色レーザ光が、上方に配置された第1コリメートレンズ53Rでコリメートされ、位相変調素子54Rに入射する。
不図示の電源から回路基板59Gを介して第2光源52Gに電力が供給されると、第2光源52Gによって緑色レーザ光が生成され、この緑色レーザ光が後方に出射する。上述のように、この第2光源52Gは、可動部材57Gに固定されており、この可動部材57Gは定期的に上下方向及び奥行方向に移動する。このため、第2光源52Gから出射する緑色レーザ光も、定期的に上下方向及び奥行方向に移動する。このような緑色レーザ光が、後方に配置された第2コリメートレンズ53Gでコリメートされ、位相変調素子54Gに入射する。
不図示の電源から回路基板59Bを介して第3光源52Bに電力が供給されると、第3光源52Bによって青色レーザ光が生成され、この青色レーザ光が後方に出射する。上述のように、この第3光源52Bは、可動部材57Bに固定されており、この可動部材57Bは定期的に上下方向及び奥行方向に移動する。このため、第3光源52Bから出射する青色レーザ光も、定期的に上下方向及び奥行方向に移動する。このような青色レーザ光が、後方に配置された第3コリメートレンズ53Bでコリメートされ、位相変調素子54Bに入射する。
位相変調素子54Rに入射した赤色レーザ光は、この位相変調素子54Rで反射して位相変調素子54Rから前方に出射する。上述のように、可動部材57Rは2方向に定期的に移動する。このため、図22に示すように、赤色レーザ光の入射スポットSRは、位相変調素子54Rの入射面上を2方向に定期的に移動する。このように、可動部材57Rは、入射スポットSRを位相変調素子54Rに対して相対移動させるスポット移動部として機能する。なお、図22における実線の円は入射スポットSRの移動前の位置を示しており、4つの破線の円は移動後の入射スポットSRの位置を示している。
図22に示すように、入射スポットSRには、位相変調素子54Rの入射面における入射スポットSRの位置によらず、変調部MPRが少なくとも1つ含まれる。このため、位相変調素子54Rから出射する赤色レーザ光の配光パターンは、入射スポットSRの相対移動の前後及び相対移動中に関わらず同一とされる。こうして、位相変調素子54Rからは、所定の配光パターンとされた赤色レーザ光が前方に出射する。以下、位相変調素子54Rから出射する赤色レーザ光を第1の光DLRという。上述のように、第1の光DLRの配光パターンの形状はロービームの配光パターンPLと概ね同一の形状とされる。なお、本実施形態において、位相変調素子54Rの入射面における入射スポットSRの移動距離は、入射スポットSRの直径以上とされる。なお、図22では、入射スポットが円で示されているが、入射スポットの外形は円に限定されず、例えば、楕円であってもよい。
位相変調素子54Gに入射した緑色レーザ光は、この位相変調素子54Gで反射して位相変調素子54Gから上方に出射する。上述のように、可動部材57Gは2方向に定期的に移動する。このため、緑色レーザ光の入射スポットは、位相変調素子54Gの入射面上を2方向に定期的に移動する。このように、可動部材57Gは、緑色レーザ光の入射スポットを位相変調素子54Gに対して相対移動させるスポット移動部として機能する。
赤色レーザ光の入射スポットSRと同様に、緑色レーザ光の入射スポットには変調部MPが少なくとも1つ含まれる。このため、位相変調素子54Gから出射する緑色レーザ光の配光パターンは、緑色レーザ光の入射スポットの相対移動の前後及び相対移動中に関わらず同一とされる。こうして、位相変調素子54Gからは、所定の配光パターンとされた緑色光が上方に出射する。以下、位相変調素子54Gから出射する緑色光を第2の光DLGという。上述のように、第2の光DLGの配光パターンの形状はロービームの配光パターンと同一の形状とされる。なお、本実施形態において、位相変調素子54Gの入射面における緑色レーザ光の入射スポットの移動距離は、当該入射スポットの直径以上とされる。
位相変調素子54Bに入射した青色レーザ光は、この位相変調素子54Bで反射して位相変調素子54Bから上方に出射する。上述のように、可動部材57Bは2方向に定期的に移動する。このため、青色レーザ光の入射スポットは、位相変調素子54Bの入射面上を2方向に定期的に移動する。このように、可動部材57Bは、青色レーザ光の入射スポットを位相変調素子54Gに対して相対移動させるスポット移動部として機能する。
赤色レーザ光の入射スポットSRと同様に、青色レーザ光の入射スポットには変調部MPが少なくとも1つ含まれる。このため、位相変調素子54Bから出射する青色レーザ光の配光パターンは、青色レーザ光の入射スポットの相対移動の前後及び相対移動中に関わらず同一とされる。こうして、位相変調素子54Bからは、所定の配光パターンとされた青色光が上方に出射する。以下、位相変調素子54Bから出射する青色光を第3の光DLBという。上述のように、第3の光DLBの配光パターンの形状はロービームの配光パターンと同一の形状とされる。なお、本実施形態において、位相変調素子54Bの入射面における青色レーザ光の入射スポットの移動距離は、当該入射スポットの直径以上とされる。
第1位相変調素子54Rの前方には、合成光学系55の第1光学素子55fが配置されている。上述のように、この第1光学素子55fは、赤色の光を透過するように構成されている。したがって、第1位相変調素子から出射する第1の光DLRは、第1光学素子55fを透過して前方に伝搬していく。また、第2位相変調素子54Gの上方には、第1光学素子55fが配置されている。上述のように、この第1光学素子55fは、緑色の光を反射するように構成されており、前後方向及び上下方向に対して略45°傾いているため、第2位相変調素子54Gから出射する第2の光DLGは、第1光学素子55fで反射して、前方に伝搬していく。すなわち、第1の光DLRと第2の光DLGとからなる第1合成光LS1が第2光学素子55sに向かって伝搬していく。
第1光学素子55fの前方には、合成光学系55の第2光学素子55sが配置されている。上述のように、第2光学素子55sは、赤色の光及び緑色の光を透過するように構成されている。したがって、第1合成光LS1は第2光学素子55sを透過する。また、第3位相変調素子54Bの上方には、第2光学素子55sが配置されている。上述のように、第2光学素子55sは、青色の光を反射するように構成されており、前後方向及び上下方向に対して略45°傾いているため、第3位相変調素子54Bから出射する第3の光DLBは、第2光学素子55sで反射して前方に伝搬していく。すなわち、第1の光DLR、第2の光DLG、及び第3の光DLBからなる第2合成光LS2が、ケース40の開口40Hに向かって伝搬していき、開口40Hから外部に出射する。
第2合成光を形成する光DLR,DLG,DLBは、上述のように、いずれもロービームの形状とされる配光パターンを有している。このため、開口40Hから出射する第2合成光LS2が所定の距離だけ前方に伝搬することで、光DLR,DLG,DLBが重なり合い、図5(A)に示すような白色光であるロービームの配光パターンPLが形成され得る。
ここで、前述の特許文献1に記載の車両用灯具における位相変調素子において、光が特定の領域に集中して入射すると、当該領域が高温となって位相変調素子の特性が変化し、所望の配光パターンが形成されなくなる懸念がある。
そこで、第4の態様としての本実施形態の車両用前照灯1は、光源52R,52G,52Bと、位相変調素子54R,54G,54Bと、スポット移動部としての可動部材57R,57G,57Bとを備える。光源52R,52G,52Bは、所定の波長の光を出射する。位相変調素子54R,54G,54Bは、光源52R,52G,52Bから出射する光を回折することにより、光を所定の配光パターンとする。可動部材57R,57G,57Bは、位相変調素子54R,54G,54Bにおける光の入射スポットを当該位相変調素子54R,54G,54Bに対して相対移動させる。位相変調素子54R,54G,54Bは、配光パターンを形成する変調部MPに区分けされており、入射スポット内に少なくとも1つの変調部MPが含まれる。このため、本実施形態における車両用前照灯1によれば、入射スポットが移動した場合でも、同一の配光パターンが形成され得る。また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、入射スポットが位相変調素子54R,54G,54Bに対して相対移動するため、位相変調素子54R,54G,54Bの特定の領域に光が集中して入射することが抑制され得、当該特定の領域が高温化することが抑制され得る。したがって、所定の配光パターンが形成されにくい領域が生じることが抑制され、所望の配光パターンが得られ易くなる。
また、上述のように、第4の態様としての本実施形態における車両用前照灯1によれば、赤色レーザ光の入射スポットが位相変調素子54Rの入射面を移動する距離が、当該入射スポットの直径以上とされる。同様に、緑色レーザ光の入射スポットが位相変調素子54Gの入射面を移動する距離が、当該入射スポットの直径以上とされる。また、同様に、青色レーザ光の入射スポットが位相変調素子54Bの入射面を移動する距離が、当該入射スポットの直径以上とされる。このため、図22に示すように、移動後の入射スポットと移動前の入射スポットとが重なることが抑制され得、位相変調素子54R,54G,54Bの特定の領域が高温化することが効果的に抑制され得る。
また、上述のように、第4の態様としての本実施形態における車両用前照灯1によれば、赤色レーザ光の入射スポット、緑色レーザ光の入射スポット、及び青色レーザ光の入射スポットがそれぞれ定期的に移動する。このため、位相変調素子54R,54G,54Bの特定の領域に長時間にわたって光が入射することが効果的に抑制され得、位相変調素子54R,54G,54Bの特定の領域が高温化することがより抑制され得る。なお、入射スポットを移動させる周期は、位相変調素子54R,54G,54Bの耐熱性などを考慮して適宜変更し得る。例えば、入射スポットが1秒周期で2方向に移動するようにしてもよいし、この周期を1分周期としてもよい。
また、上述のように、第4の態様としての本実施形態における車両用前照灯1によれば、スポット移動機構である可動部材57R,57G,57Bによって入射スポットが2方向に移動する。このため、入射スポットが1方向にのみ移動する場合に比べて、入射スポットが位相変調素子の入射面をより広範囲に移動し得る。このため、特定の領域が高温化することが効果的に抑制され得る。ただし、入射スポットが1方向にのみ移動してもよい。また、入射スポットが3以上の方向に移動してもよい。入射スポットが3以上の方向に移動する場合、入射スポットが2方向に移動する場合に比べて、位相変調素子の入射面をより広範囲に移動し得る。このため、特定の領域が高温化することがより効果的に抑制され得る。
また、上述のように、第4の態様としての本実施形態における車両用前照灯1によれば、光源52R,52G,52Bが回路基板59B,59G,59Bの弾性接続部93に保持されるため、光源52R,52G,52Bのみを移動させることが可能である。
また、上述のように、本実施形態における車両用前照灯1によれば、光源52R,52G,52Bごとに位相変調素子54R,54G,54Bが設けられる。すなわち、光源52R,52G,52Bと1対1対応で位相変調素子54R,54G,54Bが設けられるため、光源ごとに配光パターンを調整することが容易になり得る。
(第12実施形態)
次に、本発明の第4の態様としての第12実施形態について説明する。なお、第11実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
図23は、本発明の第4の態様としての第12実施形態における車両用前照灯1の灯具ユニット20の一部を図20と同様に示す図である。図23に示すように、本実施形態における灯具ユニット20は、光源52R,52G,52Bが弾性部材を介してケース40の基台41に取り付けられている点において、第11実施形態における灯具ユニット20と相違する。具体的には、第1光源52Rは、1対の弾性部材157Rを介して基台41に取り付けられており、第2光源52Gは、1対の弾性部材157Gを介して基台41に取り付けられており、第3光源52Bは、1対の弾性部材157Bを介して基台41に取り付けられている。なお、これらの弾性部材157R,157G,157Bは、例えばバネであってもよい。
このような構成によれば、光源52R,52G,52Bが弾性部材157R,157G,157Bを介して基台41に取り付けられているため、車両の走行中の振動に伴って光源52R,52G,52Bが受動的に振動する。このため、光源52R,52G,52Bの振動に伴って、上記入射スポットが位相変調素子54R,54G,54Bに対して相対移動する。したがって、第11実施形態と同様に、位相変調素子の特定の領域に光が集中して入射することが抑制され、所望の配光パターンが得られ易くなる。
(第13実施形態)
次に、本発明の第4の態様としての第13実施形態について説明する。なお、第11実施形態と同一又は同等の構成要素について、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明を省略する。
図24は、本発明の第4の態様としての第13実施形態における車両用前照灯1の灯具ユニット20の一部を図20と同様に示す図である。なお、図24では、理解を容易にするために、ケース40の一部が省略されて示されている。図24に示すように、第13実施形態における灯具ユニット20は、光学系ユニット50の位相変調素子の数が1つである点において、光学系ユニット50の位相変調素子の数が3つである第11及び第12実施形態における灯具ユニット20と相違する。以下、第13実施形態における灯具ユニット20の構成について説明する。
本実施形態において、第1光源52Rは赤色レーザ光を上方に出射するように配置され、第2光源52Gは緑色レーザ光を後方に出射するように配置され、第3光源52Bは青色レーザ光を後方に出射するように配置される。
第1光源52Rは、基台41に固定された可動部材57Rの可動部に固定されている。本実施形態において、この可動部材57Rの可動部は、前後方向及び奥行方向に定期的に移動する。また、第1光源52Rは、第1実施形態と同様に、回路基板59Rの弾性接続部に保持されている。このため、光源52Rは、可動部材57Rの可動部の移動に伴って前後方向及び奥行方向に移動し得る。
第2光源52Gは、基台41に固定された可動部材57Gの可動部に固定されている。本実施形態において、この可動部材57Gの可動部は、上下方向及び奥行方向に定期的に移動する。また、第2光源52Gは、第1実施形態と同様に、回路基板59Gの弾性接続部に保持されている。このため、光源52Gは、可動部材57Gの可動部の移動に伴って上下方向及び奥行方向に移動し得る。
第3光源52Bは、基台41に固定された可動部材57Bの可動部に固定されている。本実施形態において、この可動部材57Bの可動部は、上下方向及び奥行方向に定期的に移動する。また、第3光源52Bは、第1実施形態と同様に、回路基板59Bの弾性接続部に保持されている。このため、光源52Bは、可動部材57Bの可動部の移動に伴って上下方向及び奥行方向に移動し得る。
上記回路基板59R,59G,59Bは、不図示の制御部に接続されている。この制御部は、光源52Rが赤色レーザ光を出射している間は光源52G,52Bからの光を非出射とし、光源52Gが緑色レーザ光を出射している間は光源52R,52Bからの光を非出射とし、光源52Bが青色レーザ光を出射している間は光源52R,52Gからの光を非出射とする。すなわち、本実施形態において、光源52Rからの赤色レーザ光、光源52Gから緑色レーザ光、及び光源52Bからの青色レーザ光は、上記制御部の制御に基づいて、所定の周期で切り替えられて出射する。
なお、第1及び第2実施形態と同様に、光源52R,52G,52Bから出射したレーザ光は、コリメートレンズ53R,53G,53Bでコリメートされる。
コリメートレンズ53Rの上方かつコリメートレンズ53G,53Bの後方には、合成光学系55が設けられている。すなわち、コリメートレンズ53Rの上方かつコリメートレンズ53Gの後方に第1光学素子55fが設けられ、第1光学素子55fの上方かつコリメートレンズ53Bの後方に第2光学素子55sが設けられる。これら光学素子55f,55sは、前後方向及び上下方向において略45°傾いて配置される。
第2光学素子55sの上方には、1つの位相変調素子54Sが設けられている。この位相変調素子54Sは、合成光学系55を通過した赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光が入射可能な位置に配置される。本実施形態における位相変調素子54Sは、例えば反射型のLCOSとされる。この位相変調素子54Sは、前後方向及び上下方向において略45°傾いて配置されており、その傾き方向は光学素子55f,55sと反対方向とされる。
位相変調素子54Sは、第11及び第12実施形態と同様に、複数の変調部に区分けされており、各変調部から、ロービームの配光パターンと概ね同一の形状を有する配光パターンが形成され得る。本実施形態において、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光のそれぞれの入射スポット内には、少なくとも1つの変調部の全領域が含まれる。
次に、本実施形態の灯具ユニット20における光の出射について説明する。
上述のように、光源52Rからの赤色レーザ光、光源52Gから緑色レーザ光、及び光源52Bからの青色レーザ光は、所定の周期で切り替えられて出射する。例えば、まず、第1光源52Rから赤色レーザ光が所定時間にわたって出射する。なお、赤色レーザ光を出射する第1光源52Rが複数設けられている場合、複数の第1光源52Rから赤色レーザ光が所定時間にわたって出射する。この間、光源52G,52Bからのレーザ光は非出射とされる。この赤色レーザ光は、コリメートレンズ53Rでコリメートされた後、合成光学系55を透過して位相変調素子54Sに入射する。上述のように、第1光源52Rは2方向に移動するため、赤色レーザ光の入射スポットも位相変調素子54Sの入射面上を2方向に移動する。
上述のように、赤色レーザ光の入射スポット内には少なくとも1つの変調部が含まれるため、位相変調素子54Sからは、ロービームの配光パターンと概ね同一形状の配光パターンを有する第1の光DLRが前方に出射する。
所定の時間が経過すると、光源52Rからの光が非出射の状態になり、光源52Gから緑色レーザ光が所定の時間にわたって出射する。なお、緑色レーザ光を出射する第2光源52Gが複数設けられている場合、複数の第2光源52Gから緑色レーザ光が所定時間にわたって出射する。この緑色レーザ光は、コリメートレンズ53Gでコリメートされた後、合成光学系55を透過して位相変調素子54Sに入射する。上述のように、第1光源52Rは2方向に移動するため、緑色レーザ光の入射スポットも位相変調素子54Sの入射面上を2方向に移動する。
上述のように、緑色レーザ光の入射スポット内には少なくとも1つの変調部が含まれるため、位相変調素子54Sからは、ロービームの配光パターンと概ね同一形状の配光パターンを有する第2の光DLGが前方に出射する。
さらに所定の時間が経過すると、光源52Gからの赤色レーザ光が非出射の状態になり、光源52Bから青色レーザ光が所定の時間にわたって出射する。なお、青色レーザ光を出射する第3光源52Bが複数設けられている場合、複数の第3光源52Bから青色レーザ光が所定時間にわたって出射する。この青色レーザ光は、コリメートレンズ53Bでコリメートされた後、合成光学系55を透過して、位相変調素子54Sに入射する。上述のように、第3光源52Bは2方向に移動するため、青色レーザ光の入射スポットも位相変調素子54Sの入射面上を2方向に移動する。
上述のように、青色レーザ光の入射スポット内には少なくとも1つの変調部が含まれるため、位相変調素子54Sからは、ロービームの配光パターンと概ね同一形状の配光パターンを有する第3の光DLBが前方に出射する。
以上のような光の出射サイクルが所定の周期で繰り返される。前述のように、この出射サイクルの周期が人の視覚の時間分解能よりも短い場合、残像効果が生じ、人は異なる色の光があたかも合成されて照射されていると認識し得る。したがって、上記周期を人の時間分解能よりも短くすることで、人は、赤色光である光DLR、緑色光である光DLG、及び青色光であるDLBが合成された白色光が灯具ユニット20から出射されていると認識し得る。
なお、前述のように、人の視覚の時間分解能は概ね1/30sであるため、上記周期を1/30s以下とすることが好ましく、1/60s以下とすることがさらに好ましい。なお、上記周期が1/30sよりも大きい場合であっても上記残像効果が生じ得る。例えば、上記周期が1/15sであっても上記残像効果が生じ得る。
本実施形態における車両用前照灯1によれば、第11及び第12実施形態と同様に、入射スポットが位相変調素子の入射面において移動するため、位相変調素子の特定の領域に光が集中して入射することが抑制され得、ロービームのような所望の配光パターンが得られ易くなる。
また、本実施形態における車両用前照灯1によれば、位相変調素子が光源ごとに設けられる第11及び第12実施形態と異なり、光学系ユニット50を構成する位相変調素子の数を減らして1つにすることができるため、部品点数を削減し得、コストダウンを図り得る。
なお、本実施形態では、光源52R,52G,52Bが光の出射を切り替える例を説明したが、光源52R,52G,52Bのうち少なくとも2つが所定の周期で光の出射を切り替えてもよい。例えば、光源52R,52Gのみが所定の周期で光の出射を切り替えるように第13実施形態を変形してもよい。この変形例では、光源52R,52Gからの赤色レーザ光及び緑色レーザ光を受光する位相変調素子と、光源52Bからの青色レーザ光を受光する位相変調素子54Bとの2つの位相変調素子から光学系ユニット50を構成し得る。すなわち、この変形例においても、第11及び第12実施形態に比べて位相変調素子の数を削減し得る。
なお、本発明の第4の態様について、第11~第13実施形態を例に説明したが、本発明の第4の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、第4の態様としての第11~第13実施形態では、位相変調素子を基台に固定して光源を移動させることで、入射スポットを位相変調素子の入射面上で移動させる例を説明した。しかし、光源をケース40に固定して当該光源に対して位相変調素子を移動させてもよい。すなわち、位相変調素子を移動させるスポット移動部を構成してもよい。ただし、光源は位相変調素子に比べて軽い傾向があるため、第11~第13実施形態のように光源を移動させるスポット移動部を構成することで、入射スポットを位相変調素子の入射面上で移動させることがより容易になり得る。
また、第4の態様としての第11~第13実施形態では、位相変調素子としてLCOSを用いた例を説明したが、位相変調素子として回折格子を用いてもよい。ただし、LCOSは、上述のように、液晶分子の配向パターンを変化させることで液晶層に屈折率差を生じさせる位相変調素子である。このようなLCOSにおいて、特定の領域の温度が上昇すると、その領域における配向パターンの変化が大きくなるため、所望の配光パターンが得られにくくなる懸念が大きい。しかし、第11~第13実施形態によれば、LCOSの特定の領域に光が集中して入射することが抑制され、配光パターンの変化が大きくなることが効果的に抑制されるため、所望の配光パターンが得られ易くなる。また、位相変調素子としてGLVを用いてもよい。
また、第4の態様としての第11~第13実施形態では、位相変調素子が反射型である例を説明したが、位相変調素子を透過型としてもよい。
また、第4の態様としての第11~第13実施形態では、入射スポットの移動距離が当該入射スポットの直径以上である例を説明したが、入射スポットの移動距離が当該入射スポットの直径よりも小さくてもよい。例えば、入射スポットが相対移動する距離が入射スポットの半径以上であってもよい。入射スポットにおける光のパワー分布は一般的に一様でなく、例えば、入射スポットの中心領域等の所定の領域がパワーのピーク領域となる傾向がある。このピーク領域の大きさを考慮すると、入射スポットが位相変調素子に対して相対移動する距離が当該入射スポットの半径以上であれば、上記相対移動の前後において上記ピーク領域が重なり合うことが抑制され得、位相変調素子の特定の領域が高温化することが効果的に抑制され得る。ただし、入射スポットの移動距離が当該入射スポットの直径よりも小さい場合、移動前の入射スポットと移動後の入射スポットとが重なる領域が生じ得、この領域において温度上昇が大きくなるおそれがある。このため、入射スポットの移動距離は当該入射スポットの直径以上であることがより好ましい。
また、第4の態様としての第11~第13実施形態では、入射スポットが定期的に移動する例を説明したが、入射スポットが不定期に移動してもよい。ただし、入射スポットが不定期に移動する場合、入射スポットが同一の領域に留まっている期間が長くなり得、この領域において温度上昇が大きくなるおそれがある。このため、入射スポットが定期的に移動することが好ましい。
また、第4の態様としての第11~第13実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯が3つの光源52R,52G,52Bを備える例を説明したが、この車両用灯具は、光源と、この光源からの光を受光する位相変調素子とを1つずつ備えていればよい。ただし、第11~第13実施形態のように、車両用灯具が、互いに異なる波長の光を出射する光源を複数備えることで、白色光のような所望の色の光を生成し得る。
また、第4の態様としての第11~第13実施形態では、車両用灯具としての車両用前照灯1はロービームを照射するものとされたが、第4の態様としての車両用灯具が照射する光はロービームに限定されない。例えば、他の実施形態における車両用灯具は、図5(A)に示すように、ロービームと標識認識用の光OHSとを照射するように構成されてもよい。また、他の別の実施形態における車両用灯具は、図5(B)に示すようなハイビームの配光パターンPHの光を照射するように構成されてもよい。また、さらに別の実施形態では、本発明における車両用灯具を、画像を構成するものとして適用してもよい。このような場合、車両用灯具から出射する光の方向や、該車両における車両用灯具の取り付け位置は特に限定されない。
本発明の第1の態様によれば、エネルギー効率の低下を抑制しつつ所定の配光パターンを形成し得る車両用灯具が提供され、本発明の第2の態様によれば、エネルギー効率の低下を抑制しつつ大型化を抑制し得る車両用灯具が提供され、本発明の第3の態様によれば、部品点数の増加が抑制され得る車両用灯具が提供され、本発明の第3の態様によれば、所望の配光パターンが得られ易い車両用灯具を提供され、自動車等の車両用灯具の分野において利用可能である。