JP2016207403A - 車載用前照灯 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光素子として半導体レーザを使用する場合でも安全性が保たれ、高い自由度をもって配光分布を設計することができるようにすること。【解決手段】コヒーレント光を発する発光素子と、発光素子からの光によって形成される光放射領域からの光を投影して規定形状の照明領域を形成する光投影光学系と、遠方を照明する規定の配光分布を有する射出光束に変換するための偏向パターン生成手段とを具備する車載用前照灯であって、偏向パターン生成手段は、その光入射部が多数の偏向機能領域に分割して構成されており、光入射部に入射される入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめる際には、与える偏向の方向が、その光線の光入射部における入射位置に依存するように構成され、偏向機能領域のそれぞれは、配光分布の配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明する。【選択図】図1

Description

本発明は、例えば半導体レーザなどの発光素子を用いた車載用前照灯に関する。
車載用前照灯のための光源としては、長い間ハロゲンランプ等の旧来のフィラメントランプが使われて来たが、長寿命なメタルハライドランプ等のHIDランプ、近年ではさらに長寿命・高効率なLEDも使用されるようになった。
このように、長寿命化・高効率化を目指し、光源素子自体は進化したが、前照灯光束の制御については、主として、いわゆるハイビームとロービーム(すれ違い前照灯)の切換えを行う程度であった。
しかし最近では、特に半導体レーザ等の固体レーザの発光素子を用いることにより、光利用効率を高めた前照灯の実現を目指した研究が行われ、多くの提案がなされている。
例えば、特開2013−084530号公報には、レーザ光を圧電アクチュエータを用いて偏向走査する前照灯光束を生成するものが提案されていおり、ロービームの場合の上側限界であるカットラインを実現するために、レーザ光源のオン・オフ制御より任意に生成する制御について記載されている。
しかし、この技術の場合、2次元偏向走査によって所望の配光を得るものであるため、動的な配光条件の変更などの自由度は高いかも知れないが、前照灯光束として放射される瞬間・瞬間の照明レーザ光は細いビーム状を呈しているため、歩行者等の人間の眼に対する安全性を確保するための特段の対策が必要であるが、この点が未解決である問題がある。
また、特開2013−125693号公報には、視認性を向上させるための、R,G,Bの3原色のレーザ光を混合して生成した白色レーザ光を、2次元ガルバノメータ(あるいはポリゴンミラー)を用いて偏向走査することによって所望の配光の前照灯光束を生成するものが記載されている。
これには、例えば路肩部の照明光の青みを強めたり、長時間運転の場合や、運転者が高齢の場合は色温度を下げたり、歩行者を目立つ色で照明するなどの提案が含まれる。
しかし、この技術においても同様に、前照灯光束として放射されるレーザ光が細いビーム状を呈しているため、前記した安全性を確保するための対策について未解決である問題がある。
一方、特開2012−146621号公報には、半導体レーザでホログラムを照明し、その回折光によって所望の配光の前照灯光束を生成するものが記載されている。
これには、回転停止位置に応じて異なる複数のホログラムから選択できるようにするものや、印加電圧に応じて照明光の方向を変化させる液晶プリズムを具備し電圧によってハイビームとロービームの配光を切り替えるものの提案が含まれる。
この技術の場合、先に挙げたものと相違して前照灯光束として放射されるレーザ光が細いビーム状を呈していないため、人間の眼に対する危険度は低いが、前照灯光束が人間の眼を直射した場合、距離によっては、特に至近距離の直射では危険を生じる可能性は排除されていない。
そのため、特開2012−006493号公報には、赤外線センサ・超音波センサ・ミリ波レーダ・可視光カメラ等を用いて人の存在を検知できるようにした検知部を設けた上で、人を検知した場合には、前照灯のレーザの出力を低下または停止させるよう制御することにより、人の眼への危険を避ける技術が提案されている。
しかし、このような検知部を設けることにより、システムが高コスト化するし、もし万一、検知の時間遅れや失敗があった場合には、危険状態が維持されるため、安全性が十分であるとは言えない。
特開2013−084530号 特開2013−125693号 特開2012−146621号 特開2012−006493号
本発明が解決しようとする課題は、発光素子として半導体レーザを使用する場合でも安全性が保たれ、高い自由度をもって配光分布を設計することができるようにした車載用前照灯を提供することにある。
本発明における第1の発明の車載用前照灯は、コヒーレント光を発する発光素子(Sc)と、
前記発光素子(Sc)を駆動するための給電回路(Ps)と、
前記発光素子(Sc)からの光によって形成される光放射領域(Gs)を有し、前記光放射領域(Gs)からの光を投影して規定形状の照明領域(Gu)を形成する光投影光学系(Eu)と、
前記照明領域(Gu)の近傍に設置され、それに入射される光束の入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめ、遠方を照明する規定の配光分布を有する射出光束(Bmo)に変換するための偏向パターン生成手段(Fm)とを具備する車載用前照灯であって、
前記偏向パターン生成手段(Fm)は、その光入射部(Pmi)が多数の偏向機能領域(R1,R2,…)に分割して構成されており、前記光入射部(Pmi)に入射される入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめる際には、与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存するように構成され、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれは、前記した配光分布の配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明することを特徴とするものである。
本発明における第2の発明の車載用前照灯は、人間の眼の存在が想定される最も近い位置における、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の1個によって偏向された光束が形成する照度が、眩しい光の露光に対して人が自然に行う回避行動によって眼の障害から保護され得る水準以下となるよう、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれに入射される光パワーが規定されることを特徴とするものである。
本発明における第3の発明の車載用前照灯は、射出される光の縦方向に対応する方向の、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の大きさが、前記した配光分布の縦方向のラジアン単位の角度幅 Θy と、前記発光素子(Sc)の放射光の波長 λ とによって計算される次の値
Aymin = 4λ/Θy
以上であることを特徴とするものである。
本発明における第4の発明の車載用前照灯は、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並び反復距離が、典型的な人間の眼のラジアン単位の角度分解能 Ψ と、前記発光素子(Sc)の放射光の波長 λ とによって計算される次の値
Cmin = λ/Ψ
以上であることを特徴とするものである。
本発明における第5の発明の車載用前照灯は、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並びの周期性に対して擾乱を与えるよう、並び方に変調を加えることを特徴とするものである。
本発明における第6の発明の車載用前照灯は、前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存することを実現するために、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、位置に依存して法線方向が変化する光反射面によって構成されることを特徴とするものである。
本発明における第7の発明の車載用前照灯は、前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存することを実現するために、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、位置に依存して厚さまたは屈折率が変化する光屈折媒体によって構成されることを特徴とするものである。
本発明における第8の発明の車載用前照灯は、前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存することを実現するために、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、位置に依存して位相が変化する干渉縞を有する回折格子によって構成されることを特徴とするものである。
本発明における第9の発明の車載用前照灯は、配光分布の異なる複数個の偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を具備し、何れかを選択して、その近傍に前記照明領域(Gu)が位置するよう、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を変更可能であることを特徴とするものである。
本発明における第10の発明の車載用前照灯は、配光分布の異なる複数個の前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を近接して配置するとともに、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係が、前記偏向パターン生成手段のうちの隣り合う2個の中間的な位置である場合には、それら2個の前記偏向パターン生成手段それぞれが単独で形成する配光分布を加え合わせた配光分布が形成されるように構成したことを特徴とするものである。
本発明における第11の発明の車載用前照灯は、前記給電回路(Ps)を制御して前記発光素子(Sc)への投入電力を決定する統合制御回路(Ux)をさらに有し、該統合制御回路(Ux)は前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を認識して、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係に応じて前記発光素子(Sc)への投入電力を変更するよう前記給電回路(Ps)を制御することを特徴とするものである。
発光素子として半導体レーザを使用する場合でも安全性が保たれ、高い自由度をもって配光分布を設計することができるようにした車載用前照灯および車載用前照灯を提供することができる。
本発明の車載用前照灯を簡略化して示すブロック図を表す。 本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す概念図を表す。 本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す概念図を表す。 本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図を表す。 本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図を表す。 本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図を表す。 本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図を表す。 本発明の車載用前照灯の技術に関連する概念の概略図を表す。
本発明に関する説明において、共役という用語に関しては、幾何光学分野における一般用語として、例えば、AとBとは共役である、と言うとき、少なくとも近軸理論に基づき、レンズ等の結像機能を有する光学素子の作用によってAがBに、またはBがAに結像されることを意味する。
このとき、A,Bは像であって、孤立した点像が対象として含まれることは当然として、複数の点像からなる集合や、点像が連続的に分布した拡がりのある像も対象として含める。
ここで、点像あるいは像点(すなわち像)とは、幾何光学分野における一般用語として、実際に光がその点から放射されているもの、光がその点に向かって収束して行ってスクリーンを置くと明るい点が映るもの、光がその点に向かって収束して行くように見える(が、その点は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、光がその点から放射されているように見える(が、その点は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、の何れをも含み、区別しないし、このとき、結像における収差やピント外れ等によってボケが生じ、理想的な点や回折限界像でなくなる現象は無視する。
また、光放射領域とは、光を発している、または光が照射されている空間や面で、前記した像を含む場合もあり、同様に、実際に光がその領域から放射されているもの、光がその領域に向かって収束して行ってスクリーンを置くと明るい領域が映るもの、光がその領域に向かって収束して行くように見える(が、その領域は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、光がその領域から放射されているように見える(が、その領域は光学系の内部にあってスクリーンを置けない)もの、の何れをも含み、区別しない。
さらに、放射面素とは、光放射領域を構成する像点、もしくは小さい光放射領域を指す。
発光素子(Sc)が、半導体レーザである場合において、もし半導体レーザが1個ならば、光放射領域(Gs)は、単に1個の点光源と考えればよく、通常は、それを光学系の光軸上に置き、また、半導体レーザからの発散光の発散方向分布の中心光線が光軸に一致する方向に向けて配置すればよい。
しかし、半導体レーザが複数個あったり、有限の面積内に放射面素が連続的に分布する光源の場合は、光学系の入射瞳や射出瞳、主光線について配慮した設計が必要になり、以下においては、このような状況について述べる。
一般のカメラレンズを例にとると、通常は開口絞りがレンズの内部に存在するが、光が入る側からレンズを見ときに、レンズを通して見える開口絞りの像を入射瞳、光が出る側からレンズを見ときに、レンズを通して見える開口絞りの像を射出瞳、入射瞳の中心に向かう、または射出瞳の中心から出て来る光線(通常は子午光線)を主光線と呼ぶ。
また広義には、主光線以外の光線は周辺光線と呼ばれる。
ただし、レーザのような指向性を有する光を扱う光学系では、開口絞りによって光束を切り出す必要が無いために開口絞りが存在しない場合が多く、その場合は、光学系における光の存在形態によって、それらが定義される。
通常は、放射面素からの放射光束における、光の方向分布の中心光線を主光線とし、光学系に入射する主光線またはその延長線が光軸と交わる位置に入射瞳があり、光学系から射出する主光線またはその延長線が光軸と交わる位置に射出瞳があると考える。
ただし、厳密な話をすると、このように定義した主光線と光軸とが、例えば調整誤差のために交わらず、ねじれの位置にあるに過ぎない場合も考えられる。
しかし、このような現象は本質とは無関係であり、また議論しても不毛であるため、以下においては、このような現象は生じないと見なす、あるいは、主光線と光軸とが最接近する位置において交わっていると見なすことにする。
また、光学系のなかの隣接する2個の部分光学系AとBに注目し、Aの直後にBが隣接しているとしたとき、(Aの出力像がBの入力像となるのと同様に)Aの射出瞳はBの入射瞳となるし、そもそも光学系のなかに任意に定義した部分光学系の入射瞳・射出瞳は、(開口絞りが存在すれば全てそれの像であるし、存在しなくても)全て共役のはずであるから、特に区別が必要無ければ、入射瞳・射出瞳を単に瞳と呼ぶ。
本発明の説明および図面においては、光学系の光軸をz軸と呼んでいるが、もし反射鏡によって光軸が折り曲げられた場合は、元のz軸に沿う光線が反射されて進む方向もz軸と呼び、新たな座標軸を取ることはしない。
なお、図2などの図面において、z軸に垂直な軸として、便宜上x軸およびy軸と表記している。
先ず、本発明の車載用前照灯を簡略化して示すブロック図である図1および本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す概念図である図2、図3を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
図1において、例えば発光素子(Sc)が、端面発光の半導体レーザである場合、その半導体レーザパッケージの内部に収納された、半導体チップの表面に存在する発散光の放射部は、実質的に点光源として扱うことができ、これを光放射領域(Gs)とすることができる。
また、発光素子(Sc)が面発光の半導体レーザの場合も、その発光面を前記光放射領域(Gs)とすることができる。
図2は、光放射領域(Gs)が、複数の、または分布する放射面素(Ks,Ks’,…)から構成されている場合の様子を示している。
前記放射面素(Ks)に注目すると、最外周の周辺光線(Lms1,Lms2)により示されているように、底面(Ci)により規定される円錐形角度領域内に前記放射面素(Ks)を形成する光束が分布していることを示しており、この放射面素からの光束に対する主光線(Lps)は、この光束分布の中心光線として定義している。
一般論としては、前記主光線(Lps,Lps’,…)は光学系の光軸であるz軸に対して角度を有し、したがって、光軸と交わる点(Qs)に瞳が存在すると考える。
また図3は、2本の光ファイバ(Ef1,Ef2)の光射出端、すなわち光射出端側のコアによって前記光放射領域(Gs)が構成されている場合の様子を示す。
当然ながら発光素子は、前記光ファイバ(Ef1,Ef2)それぞれにおける光射出端と反対側にある光入射端に存在し、発光素子からの光は、レンズ等を用いて各光入射端に注入される。
この場合、放射面素(Ks,Ks’,…)は、概ね均一に前記光ファイバ(Ef1,Ef2)の光射出端に連続的に分布していると考えてよく、前記放射面素(Ks,Ks’,…)のそれぞれからは、光ファイバの構造によって既定される、周辺光線が分布して存在する円錐形角度領域の頂角をもって光が放射される。
また、前記放射面素(Ks,Ks’,…)のそれぞれから発する光束の主光線(Lps,Lps’,…)はファイバ軸に平行であり、また前記光ファイバ(Ef1,Ef2)は束ねて光学系の光軸であるz軸に平行に配置してある。
このように、前記主光線(Lps,Lps’,…)が光学系の光軸に平行である場合は、瞳は無限遠にあると考える。
なお、この場合、前記光ファイバ(Ef1,Ef2)の光射出端自体を前記放射面素(Ks,Ks’,…)と見なしても構わない。
このように本発明においては、光放射領域(Gs)は、点光源または分布する光源である発光素子そのものであっても構わず、また発光素子からの光が導波されたり、発光素子からの光で照明されることによって光を放射するものであっても構わない。
レンズ等からなる光投影光学系(Eu)は、前記光放射領域(Gs)からの光束(Bs)の入力を受けて、後段の偏向パターン生成手段(Fm)の近傍に、照明領域(Gu)を形成するように配置される。
ただし、前記光放射領域(Gs)と前記照明領域(Gu)とが共役である必要は無い。
そして、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、その光入射部(Pmi)に前記光投影光学系(Eu)から入力された光束(Bs)の入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめ、その光射出部(Pmo)より射出光束(Bmo)が出力される。
ここで、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存するように構成されている。
したがって、前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存する際の依存性を規定することにより、前記射出光束(Bmo)の射出方向の変化の様子、すなわち遠方に対する配光分布を、高い自由度で作り込むことができる。
因みに、前記光射出部(Pmo)は前記光入射部(Pmi)とは別のものとして必ず存在するとは限らず、後述するように、前記光入射部(Pmi)が前記光射出部(Pmo)を兼ねている場合もあり得る。
本発明の車載用前照灯の特徴的な構造として、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、その光入射部(Pmi)が多数の偏向機能領域(R1,R2,…)に分割して構成されている点が挙げられる。
これについて、本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図である図4を参照して説明する。
本図における発光素子(Sc)が、実質的に点光源と見なせる活性領域で発光する半導体レーザとすると、この活性領域が光放射領域(Gs)となる。
一方、前記光投影光学系(Eu)は、本図においてはシリンドリカルレンズによって構成されており、これによって前記光放射領域(Gs)からの光束(Bs)を拡がり角の異なる、すなわちx軸方向の拡がり角は変えずに、y軸方向の拡がり角を減じた光束(Bu)に変換し、前記光放射領域(Gs)と非共役な照明領域(Gu)を、偏向パターン生成手段(Fm)の光入射部(Pmi)の近傍、ここでは該光入射部(Pmi)上に形成するように描いてある。
前記したように、前記偏向パターン生成手段(Fm)がその入射光線に対して与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存する。
遠方を照明する規定の配光分布が、前記照明領域(Gu)を形成する前記光束(Bu)の全体によって実現されるよう、前記した入射位置への依存特性を設計するのであるが、その際は、前記したように、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、その光入射部(Pmi)が多数の偏向機能領域(R1,R2,…)に分割して構成されており、かつ前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれは、前記した配光分布の配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明するように設計する。
なお、図4では、前記光投影光学系(Eu)として、1個のシリンドリカルレンズによって構成するものを例示したが、球面レンズとの組合せレンズとしたり、成型非球面レンズ、あるいは曲面ミラーによって構成してもよい。
ハロゲンランプやHIDランプ、LEDを光源とした従来の車載用前照灯においても、背面の凹面反射鏡や前面の透明カバーを複数の領域に分割し、光線の位置に依存する凹面反射鏡の反射特性や透明カバーの屈折特性(レンズ特性)を、分割領域それぞれに与えることにより、所望の配光分布を実現することは行われて来た。
しかし、いま述べた従来技術の場合は、それぞれの分割領域は、配光分布全体のうちの特定の一部分を形成するように反射特性や屈折特性が設計されていた。
例えば、右端の分割領域には遠方配光分布の右端の領域の照明を担当させる、などである。
これに対して、本発明の車載用前照灯における、分割された前記偏向機能領域(R1,R2,…)のそれぞれには、それ1個で前記した配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明する機能を付与されており、そのような前記偏向機能領域が多数集まって規定の配光分布を実現させる点が相違する。
ここで、前記偏向機能領域(R1,R2,…)のそれぞれがそれ1個で前記した配光が行われる領域全体を照明するのではなく、そのうちの広い領域を照明するとした理由の一つは、配光分布のなかに明るさの不均一を設ける必要性がある場合は、暗い箇所ほど、その箇所を照明する前記偏向機能領域の個数が少なくなるように前記偏向パターン生成手段(Fm)を設計することにより、そのような不均一な配光分布を実現する可能性を与えることにある。
レーザ光のようなコヒーレントな光束が人間の眼に危険を及ぼす恐れがある理由は、光束が眼を直射した場合に、網膜上に形成される結像による集光領域の面積が非常に小さくなる可能性があり、そうなると、光パワー密度が過大になって障害を起こす危険性ががあり得るからである。
前記した従来の車載用前照灯において、光源を例えば半導体レーザに置き換えても、前照灯を実現することは可能かも知れないが、このようにして作った前照灯(以降、従来投光器利用レーザ前照灯と呼ぶ)の場合は、前記したように、凹面反射鏡や透明カバーの1個の分割領域が配光分布全体のうちの特定の一部分を形成するように構成されているため、出力光束には遠方まで届く指向性の強いビーム的性質が保持されている。
したがって、これが人間の眼を直射した場合は、前記した危険性があり得、この危険性は、近くで直射した場合は当然高く、遠方へ行くほど低下するが、ビーム的性質があるため、低下の仕方は距離の増加に対して緩慢である。
一方、本発明の車載用前照灯の場合は、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれは、前記した配光分布の配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明するものであるため、それぞれの出力光束は、従来投光器利用レーザ前照灯に比して発散的性質が強く、指向性ビーム的性質が弱いため、パワー密度は遠方へ行くほど急激に低下する。
本車載用前照灯の出力光束が人間の眼を直射した場合は、前記偏向機能領域個々からのパワーは下がるが、瞳孔(虹彩絞り)に光が入る前記偏向機能領域の個数は、逆に増加する。
そのため、ある程度以上の遠方になれば、従来投光器利用レーザ前照灯であっても本発明の前照灯であっても、同じ遠方配光分布を実現するものならば、瞳孔に入る全パワーは同じであり、これは当然である(実現する遠方配光分布が同じだから)。
しかし、本発明の前照灯の場合は、網膜上に形成される集光領域は、必ず複数個のスポットの集合体として形成され、光パワーが1点に集中することは、回折光学理論的にあり得ず、安全性が高い。
逆に、眼の距離が前照灯に近づけば、従来投光器利用レーザ前照灯であっても本発明の前照灯であっても、瞳孔に入る光パワーは増加するが、従来投光器利用レーザ前照灯の場合は網膜上に形成される1個の集光領域に集中する光パワーが単純に増加する。
これに対し本発明の前照灯の場合は、網膜上に形成される集光領域を構成する複数個のスポットの、個々の光パワーが増加するとともに、スポット相互間の距離が、眼と前照灯との距離の近さに相反して離れて行くため、やはり安全性が高い。
安全性の向上の観点から、個々のスポットの光パワーを小さくする方が有利になることは明らかであり、そのためには、前記偏向パターン生成手段(Fm)の前記偏向機能領域(R1,R2,…)への分割個数は、可能な限り多くするとよいことは直ちに理解できる。
例えば本発明の車載用前照灯の灯具の前方から見た大きさが、横方向300mm×縦方向100mmであると想定して、前記偏向パターン生成手段(Fm)の大きさが、灯具の寸法の半分の150mm×50mmであると想定し、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の寸法を10mm×5mmとする場合を考えると、前記偏向パターン生成手段(Fm)の分割数は150個となる。
さらに、いま述べた安全性の観点からは、前記した、前記偏向機能領域(R1,R2,…)のそれぞれが前記した配光分布の配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明するように設計する際の広さについては、前記した不均一な配光分布を実現する可能性を与えるために、配光が行われる領域全体から割り引く分を除き、可能な限り広いことが有利となるから、配光が行われる領域全体に対して、少なくとも40%、できれば60%以上、望ましくは70%以上になるよう設計するとよい。
また、形成する配光分布のなかの最も照度の高い箇所には、実質的に前記偏向機能領域(R1,R2,…)の全てから光を届けるように設計することが望ましい。
ここまで述べたことから容易に理解できるように、本発明の車載用前照灯と従来投光器利用レーザ前照灯とが、設計思想上および形態上の相違を有することは明らかであるし、その相違によって付与される安全性の高さには際立ったものがある。
ここで、本発明の車載用前照灯と、車幅灯(ポジションランプ)や尾灯(テールランプ)、ブレーキランプ(ストップランプ)などの、従来の非前照灯の車載用灯火(以降、従来車載用非前照灯灯火と呼ぶ)との関係について補足しておく。
これら従来車載用非前照灯灯火においても、ランプカバーを多数のレンズの集合体として構成し、各レンズが、光源光束を類似の発散的光束に変換するよう機能しているが、これらのレンズに分割することと、本発明における前記偏向機能領域(R1,R2,…)とは、作用や目的が全く異なる。
前記した従来車載用非前照灯灯火は、情報表示を目的とするものであり、発散的性質は、広い角度範囲から視認可能とするために付与しており照明のためではないし、拡散板ではなくレンズの集合体とするのは、特有のギラツキを伴わせることにより、視認性を向上させるためである。
一方、本発明の車載用前照灯の場合は、前記したように発散的性質が強く、指向性ビーム的性質が弱いといえども、それは従来投光器利用レーザ前照灯に比してのことであって、前照灯として要求される配光分布を実現可能な指向性を当然保持している。
換言すれば、本発明は、本発明の車載用前照灯としての指向性を有したまま、危険性のあるコヒーレンシーを低下させる技術であると言うことができ、前記した従来車載用非前照灯灯火とは設計思想が異なるものである。
前照灯の前記射出光束(Bmo)が人間の眼を直射した場合の危険性は、前照灯と眼との距離が近いほど高くなるが、本発明の前照灯の場合は、前記したように、網膜上に形成される集光領域を構成する複数個のスポットの、個々の光パワーが増加するとともに、スポット相互間の距離が、眼と前照灯との距離の近さに相反して離れて行くため、安全性に関する配慮は、1個のスポットの網膜上での光パワーについて検討すればよいことが判る。
そのためには、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれのうちで、その領域における前記光束(Bu)によって照射される光パワー密度の面積積分が最大となる前記偏向機能領域が、前照灯から出力する光束に注目すればよい。
そして、いま注目した光束が、人間の眼の存在が想定される最も近い位置において形成する照度が、人間の眼にとっての危険水準を超えないようにすればよい。
この危険水準の設定については、例えば、前記した人間の眼の存在が想定される最も近い位置で前照灯を継続的に覗き込むような極端な状況に配慮する必要は無く、眩しい光の露光に対して人が自然に行う回避行動によって眼の障害から保護され得る水準によって設定すればよい。
なお、いま述べた人間の回避行動による保護に関しては、JIS C 6802に記載がある。
前記偏向機能領域(R1,R2,…)の1個によって偏向された光束が形成する照度は、前記光束(Bu)によって照射される光パワー密度の前記偏向機能領域における面積積分と相関するから、ここでは考察を簡単にするために、前記照明領域(Gu)の大きさが既定であるとし、前記した照度を規制するために、前記偏向機能領域の面積を規定する場合について述べる。
前記した危険水準を超えないように本発明の前照灯を設計する具体的な仕方の先ず第1は、前記光射出部(Pmo)から人間の眼の存在が想定される最も近い位置までの距離を規制する構造が既定であるとして、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の面積を、前記した危険水準を超えないように規定するものである。
この場合、前記照明領域(Gu)のなかの照度が最も高い箇所に位置する前記偏向機能領域に注目してその面積を決定し、それ以外の前記照明領域(Gu)についても、同じ面積とするようにしてもよく、或いは、前記照明領域(Gu)のなかの照度が高い箇所に位置する前記照明領域(Gu)の面積は小さく、逆に前記照明領域(Gu)のなかの照度が低い箇所に位置する前記照明領域(Gu)の面積は大きくなるようにしても構わない。
設計の仕方の第2は、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれの面積は既定であるとして、前記光射出部(Pmo)から人間の眼の存在が想定される最も近い位置までの距離を規制する構造を前記した危険水準を超えないように規定するものである。
この場合、前記した前記光束(Bu)によって照射される光パワー密度の面積積分が最大となる前記偏向機能領域に注目して、それからの出力光束についての、前記光射出部(Pmo)から人間の眼の存在が想定される最も近い位置までの距離を決定し、それ以外の前記偏向機能領域についても同じ距離となるように、前記した規制構造を規定してもよく、或いは、前記した光パワー密度の面積積分が大きい前記偏向機能領域については距離が大きく、逆に光パワー密度の面積積分が小さい前記偏向機能領域については距離が小さくなるようにしても構わない。
ここで、前記光射出部(Pmo)から人間の眼の存在が想定される最も近い位置までの距離を規制する構造とは、例えば前記光射出部(Pmo)を囲む透明のガラスやプラスチック製の保護カバーであり、前記した光パワー密度の面積積分が大きい前記偏向機能領域については距離が大きく、光パワー密度の面積積分が小さい前記偏向機能領域については距離が小さくなるようにする場合には、前記保護カバーを曲面で形成することで実現することができる。
ここまで述べた本発明の前照灯の設計においては、前記偏向機能領域の1個が形成する照度に相関する、前記偏向機能領域の1個に入射される光パワーに注目して、人間の眼に対する安全を確保する方法について説明した。
その際、前記偏向機能領域の面積について考察したが、光パワー密度の面積積分に注目しているため、それは前記偏向機能領域(R1,R2,…)の全体の面積に対する前記偏向機能領域の1個の面積の比が重要であって、全体を相似形に保ったまま拡大・縮小しても、結論は変わらないものであった。
しかし、本前照灯は、電磁波としての光を扱う光学装置でもあるため、その設計の際は、物理的な制約にも注意を払う必要がある。
例えば、車載用前照灯の配光分布に関する規格であるECE R112では、ロービームの配光領域のZoneIの縦方向の角度幅 Θy を3度とすることが規定されており、したがって本前照灯は、少なくともこの角度幅 Θy よりも細かな角度分解能で、配光分布を設計できる自由度を有することが必要であることが判る。
いま、前記偏向機能領域(R1,R2,…)のそれぞれが例えば矩形である場合を想定し、前記光束(Bu)の照射を受けた前記偏向機能領域(R1,R2,…)の1個が遠方に配光分布を形成する状況に注目すると、これは、光束を矩形開口で切り出した場合に形成されるフラウンホーファー回折に対応していることが判る。
当然、本発明の前照灯における前記偏向機能領域(R1,R2,…)の1個のなかには位相分布を存在させることができるが、これの存在により、遠方での分布を広くすることは可能であるが、分布を小さくする限界に注目するならば、それは位相分布が存在しない単純な矩形開口の大きさによって規定される。
因みに、いま述べた「位相分布を存在させる」とは、光波動に対し、レンズによる屈折や曲面ミラーによる反射、ホログラムのような非一様な回折格子による回折などを生じせしめる操作を、上位概念的に指したものである。
矩形開口に関して考察する準備として、構造を1次元に単純化したスリットについて述べる。
x軸方向に無限に延びる、y軸方向の幅 A を有する1個のスリット、すなわち単スリットを、波長 λ のz軸方向に進む平行光束(平面波)で照明したとき、このスリットにより形成されるフラウンホーファー回折の、中央ピーク値で規格化したパワー密度分布パターン u(θ) は、以下の式(式1)
u(θ) = { sinc( πAθ/λ ) }^2
のように表される。
ここで、θ は単スリットの位置から見たパワー密度分布の観測点の方向がz軸と成す角度、記号 ^2 は2乗演算を表し、関数 sinc は、以下の式(式2)
sincφ = sinφ/φ
で定義されるシンク関数を表す。
前記 u(θ) の具体的な形状は、本発明の車載用前照灯の技術に関連する概念の概略図である図8に示すようであり、図から判るように、中央の主パターンの両側に、多数の副パターン(小さな極大)が並んでおり、分布の零値が、角度 β = λ/A 毎に出来る。
いま知りたい矩形開口のフラウンホーファー回折パターンは、前記したx軸方向に延びる単スリットの回折パターンと、これに直交するy軸方向に延びる単スリットの回折パターンとを掛け合わせたものとなる。
(参考文献:小山次郎・西原浩「光波電子工学」昭和53年5月15日初版発行,コロナ社,式(3・53))
したがって、必要な分解能を備えるために、実現したい配光分布の縦方向の角度幅 Θy に対し、必要な余裕を含めて Θy よりも小さいと見なせる回折パターン大きさの最大限度として、図8に示す限界角度幅 4β が Θy に等しくなる条件を採ることが好適である。
何故ならば、例えば回折パターン大きさの最大限度が前記した主パターンの大きさとなるよう、限界角度幅を 2β とした場合は、前記した両側の副パターンの最大のものが、そのまま Θy の外側にはみ出してしまうからである。
よって、前記した条件
4β = 4λ/Ay ≦ Θy
から導かれる以下の式(式3)
Ay ≧ 4λ/Θy
の条件を満足するよう、前記偏向機能領域の、縦方向の回折パターンを規定する寸法 Ay を決めればよい(ここで Θy はラジアン単位)。
以上においては、前記偏向機能領域(R1,R2,…)がそれぞれ矩形である場合について考えたが、矩形以外の形状、例えば3角形や6角形、円形などの場合は、それぞれの形状に特有のフラウンホーファー回折パターンが発生するが、ここでは回折パターンの正確な形状について興味がある訳ではなく、その角度的大きさを前記偏向機能領域の寸法によって概数的に規定できればよいのであるから、前記偏向機能領域の具体的形状によらず、Ay を前記偏向機能領域の、縦方向の回折パターンを規定する寸法であるとして、前記した条件を取り扱えばよい。
また、横方向に対応する方向の、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の大きさについては、これまで言及して来なかったが、この方向の大きさには無頓着で構わないということではなく、車載用前照灯の場合、実現すべき配光分布は横方向に広いため、前記偏向機能領域の大きさの制限が緩く、よって縦方向の条件を優先して配慮すべきということを表している。
なお、Ay に対する条件の具体的な値を挙げると、例えば Θy を前記したECE R112のZoneIの角度幅である3度とした場合につき、前記した式3を計算すると、
λ が640nm(R色)である場合は、Ay ≧ 49μm、
λ が524nm(G色)である場合は、Ay ≧ 40μm、
λ が465nm(B色)である場合は、Ay ≧ 36μm
となる。
さらに、本前照灯は、コヒーレントな光を扱う光学装置でもあるため、その設計の際は、光の干渉に関する制約にも注意を払う必要がある。
いま、前記偏向機能領域(R1,R2,…)のそれぞれが同じ大きさの矩形であるとして、それらのうちのx軸またはy軸の方向に並ぶ、N 個の前記偏向機能領域からの出力光束が作るフラウンホーファー回折について考える。
考察を簡単化するため、先と同様に、構造を1次元に単純化するとともに、前記偏向機能領域の代替物としての幅 A を有する N 個のスリットが、並び周期 C で並んでいる場合について考えることにする。
このスリット列を、波長 λ のz軸方向に進む平行光束(平面波)で照明したとき、このスリットにより形成されるフラウンホーファー回折の、中央ピーク値で規格化したパワー密度分布パターン p(θ) は、以下の式(式4)
p(θ) = { sinc( πAθ/λ ) }^2・F(θ)
のように表される。
ここで、 F(θ) は、以下の式(式5)
F(θ) = { sin( NπCθ/λ ) / sin( πCθ/λ ) }^2
のようであるが、この関数は、以下の式(式6)
θp = λ/C
で計算される角度周期で繰り返す、パルス列状のパターンを呈する関数であって、広義の干渉縞を表している。
そして、それが前記した式2と同じ形式のシンク関数に乗じられて p(θ) が出来ている。
したがって、前記した式4のパワー密度分布パターン p(θ) は、前記した式1の単スリットによるパワー密度分布パターン u(θ) が、多数の干渉縞の暗線によって分断されたパターンとなることが判る。
(参考文献:小山次郎・西原浩「光波電子工学」昭和53年5月15日初版発行,コロナ社,式(3・73))
ただし、いま述べたスリット列に関する考察を、本前照灯の前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並びに適用するためには、若干の理解の修正を必要とする。
前記偏向機能領域(R1,R2,…)は、図4に示したように、密に並んでおり、その大きさと並び周期が同じである場合があり、また、スリットのように光を遮るものは存在しない。
これを受けて、スリット列を構成するスリットの幅 A と並び周期 C を同じにすると、それはもはやスリット列ではなく、何も無い空間となってしまう。
したがって、前記した式4の p(θ) に現れたシンク関数は、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の個々が生み出す位相分布によって形成される、(共通の)フラウンホーファー回折パターンと理解した上で、並び周期 C が前記偏向機能領域の寸法 A と等しくなっても構わないと理解すればよい。
さらに、前記偏向機能領域(R1,R2,…)は、スリット列のような1次元的な並びではなく、2次元的に並んでいるため、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の全体からの前記射出光束(Bmo)が形成するフラウンホーファー回折パターンは、1次元的な干渉縞ではなく2次元的な干渉パターンとなる。
したがって、その干渉パターンのx軸およびy軸方向の並び周期 θpx,θpy は、前記した式6より、x軸およびy軸方向の並び周期 Cx,Cy によって以下の式
θpx = λ/Cx , θpy = λ/Cy
のように表される。
本発明の車載用前照灯の場合、配光分布のなかに、ここで考察した干渉パターンが明瞭に重畳されるならば、これは前照灯として好ましいことではない。
しかし、干渉パターンの並び周期が、典型的な人間の眼の角度分解能 Ψ と同程度もしくはそれよりも細かくなれば、運転者から視認不可能となって、干渉パターンが存在しないことと実質的に同等になる。
すなわち、方向を区別しない(x軸およびy軸方向とを合わせた)前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並び反復距離 C について、以下の式(式7)
C ≧ λ/Ψ
の条件を満足するよう、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の構成を決めればよい(ここで Ψ はラジアン単位)。
このとき、典型的な人間の眼の角度分解能 Ψ の具体的な値としては、それを1分(60分の1度)とすることが好適である。
因みに、視力は分単位で表した角度分解能の逆数で表すことになっており、前記した1分という値は、視力1の人の角度分解能に相当する。
なお、C に対する条件の具体的な値を挙げると、例えば Ψ を前記した1分とした場合につき、前記した式7を計算すると、
λ が640nm(R色)である場合は、C ≧ 2.2mm、
λ が524nm(G色)である場合は、C ≧ 1.8mm、
λ が465nm(B色)である場合は、C ≧ 1.6mm
となる。
ここで、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並びに関する記述「並び反復距離」の意味について補足する。
これには「反復」という用語が含まれるが、これは、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並びが厳密に周期的であることを要求するものではなく、同様機能を有する前記偏向機能領域の多数個が、空間的繰り返しをもって並べられる際の空間的並び頻度、という意味である。
したがって、もし並びの反復が厳密に周期的な場合は、並び反復距離は周期と同義となる。
いま、前記偏向機能領域が矩形で、それを縦横に隙間無く並べて前記偏向パターン生成手段(Fm)が構成されている場合を想定するならば、前記偏向機能領域の寸法が並び反復距離となる。
このとき、前記偏向機能領域の寸法が一様でなく、例えば光入射部(Pmi)の中央付近では小さく、x軸またはy軸方向の外側に向かうほど大きくなっていても構わない。
なお、このような場合の並び反復距離の値としては、x軸またはy軸方向の前記偏向機能領域の寸法の平均値を採ればよい。
また、前記偏向機能領域の寸法の平均値が、x軸方向とy軸方向とで相違する場合は、値が小さい方を採ればよい。
その理由は、前記した式7から明らかなように、並び反復距離の値が小さいほど干渉パターンの並び角度が大きく(粗く)なって、視認され易く(条件が悪く)なるため、条件の悪い方の値を採ることが妥当だからである。
また、前記偏向機能領域が矩形ではなくて、また並び方向が90度離れた方向(x軸およびy軸方向)ではなく、例えば前記偏向機能領域が3角形や6角形で、並び方向が60度離れた方向であるようなものでも構わず、このような場合も、干渉パターンの並び角度が最も大きくなる方向について並び反復距離の値を採ればよい。
前記した式5に現れる N を無限大にした極限を考えると、それは回折格子となるが、例えば分光装置に使われる回折格子の場合、その周期性が良いほど、前記した式6で繰り返すパルスの幅が狭く明瞭になるため、スペクトル分解能が上がり、良い回折格子であると言われる。
前記したように、本発明の車載用前照灯の場合、配光分布のなかに、干渉パターンが明瞭に重畳されるならば、これは前照灯として好ましいことではないため、いま述べた分光装置用回折格子の条件を逆手に取って、周期性を劣化させれば、干渉パターンが不明瞭になって、本車載用前照灯としての質が向上することが判る。
すなわち、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並びの周期性に対して擾乱を与えるよう、並び方に変調を加えるとよく、例えば、ランダムな擾乱の変調とすることが好適である。
これまで述べて来た前記偏向パターン生成手段(Fm)は、その光入射部(Pmi)に入射される光束の入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめるものであり、そのために、与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存するものであり、その依存性、すなわち与えられる偏向の方向に関する前記光入射部(Pmi)における分布が、所望の分布となるよう設計できるものでなければならない。
このことを実現可能な前記偏向パターン生成手段(Fm)として、前記光入射部(Pmi)における位置に依存して法線方向が変化する光反射面を有する光学素子によって構成することが好適である。
製作に際しては、金属板のプレス成型やプラスチックの射出成型品への反射膜コーティングなど、低コストの方法を利用できる。
なお、この前記偏向パターン生成手段(Fm)の場合、前記光入射部(Pmi)が前記光射出部(Pmo)を兼ねている。
また、前記偏向パターン生成手段(Fm)として、前記光入射部(Pmi)における位置に依存して厚さまたは屈折率が変化する光屈折媒体を有する光学素子によって構成することが好適である。
この場合、厚さが変化する光屈折媒体で言えば、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、前記光入射部(Pmi)である光入射側の屈折面と、前記光射出部(Pmo)である光射出側の屈折面とを有する広義のレンズである。
そして例えば、光射出側の屈折面を平面とするならば、光入射側の屈折面は曲面であり、この曲面は、前記光入射部(Pmi)における位置に依存して法線方向が変化する曲面として構成すればよい。
製作に際しては、プラスチックの射出成型など、低コストの方法を利用できる。
さらに、前記偏向パターン生成手段(Fm)として、前記光入射部(Pmi)における位置に依存して位相が変化する干渉縞を有する回折格子、すなわちホログラムによって構成することが好適である。
このとき回折格子の形式としては、回折効率の高い位相型、すなわち屈折率変調型が望ましく、さらには体積型の回折格子が望ましい。
また、この回折格子は、回折光が光入射面の裏側から出力される透過型のものでもよく、光入射面から出力される反射型のものでもよい。
なお、回折格子の機能は光波長に敏感であるため、R,G,B(赤および緑、青)が混合された白色光を入射した際にも高い回折効率のものを製作することが難しい場合がある。
この問題を回避するためには、前記偏向パターン生成手段(Fm)をR,G,Bそれぞれ毎に分離して形成するとともに、前記照明領域(Gu)をR,G,Bそれぞれ毎に分離して形成し、色毎に別々に回折格子を照明して(以降、色分離回折格子照明方式と呼ぶ)、それを偏向させることによって射出光束(Bmo)を生成する構成とすることが好適である。
次に、本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図である図5を参照して説明する。
図においては、配光分布の異なる複数個の偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)が、光入射部(Pmi)のなかで異なる位置を占めるように、一体的に構成されたものを描いてある。
例えば、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)は、平面状の基材を基本として、前記した法線方向が変化する光反射面領域、または前記した厚さまたは屈折率が変化する光屈折媒体領域、あるいは前記した位相が変化する干渉縞を有する回折格子領域を作り込む(反射面または厚さが変化する光屈折媒体の場合は凹凸が形成される)。
そして、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)のうちから何れかの偏向パターン生成手段を選択して、その近傍に前記照明領域(Gu)が位置するよう、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を変更可能となるよう構成する。
前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を変更するためには、例えば、偏向パターン生成手段移動機構(図示せず)を設けて前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を矢印(A)の方向に平行移動させればよい。
あるいは、本図を角柱面または円筒面を展開図示したものと解釈し、該角柱面または円筒面は本図の左右方向に平行な中心軸を有しており、その軸回りに前記角柱面または円筒面を回転させ、基材に作り込まれた前記した光反射面領域または光屈折媒体領域、回折格子領域を選択するように構成してもよい。
さらに、平面状の基材を円板状に形成して(図示せず)、その基材面に垂直な軸の回りに回転可能とし、基材に作り込まれた前記した光反射面領域または光屈折媒体領域、回折格子領域を選択するように構成してもよい。
また、ここでは、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係の変更形態の一例として、前記偏向パターン生成手段移動機構が前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を移動させる構成について述べたが、逆に前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を固定して前記光投影光学系(Eu)とその前段の光学系を移動させたり、あるいは、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)、および前記光投影光学系(Eu)とその前段の光学系の両方を固定し、それらの間に可動ミラーを挿入して、前記偏向パターン生成手段移動機構が可動ミラーの角度や位置を変更するように構成してもよい。
以上のように配光分布の異なる複数個の前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)から選択して前記光束(Bu)を照射するように構成することにより、ハイビームの配光分布やロービームの配光分布、あるいは他の配光分布などを切り換えて実現することができる。
図5を参照して説明した本発明の車載用前照灯では、配光分布の異なる複数個の前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)から何れかを選択して働かせた。
これを更に改良して、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を、実質的に相互間の隙間が無いように近接して配置した上で、本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図である図6に示すように、前記偏向パターン生成手段のうちの隣り合う2個の中間的な位置に、前記照明領域(Gu)が位置する設定が可能なように偏向パターン生成手段移動機構を構成するとよい。
このようにすることにより、それら2個の前記偏向パターン生成手段それぞれが単独で形成する配光分布に対して中間的な配光分布を形成することを可能ならしめることができる。
いま、前記偏向パターン生成手段(Fm)と前記偏向パターン生成手段(Fm’)とに注目するとし、前記照明領域(Gu)の中央線が前記偏向パターン生成手段(Fm)の中央線(Lc)上にあるときは、前記偏向パターン生成手段(Fm)の配光分布が100%実現される第1配光状態、前記照明領域(Gu)の中央線が前記偏向パターン生成手段(Fm’)の中央線(Lc’)上にあるときは、前記偏向パターン生成手段(Fm’)の配光分布が100%実現される第2配光状態となる。
そして、前記した第1配光状態と第2配光状態との合成割合を、前記照明領域(Gu)の中央線の、前記中央線(Lc)からの距離(d)によって、連続的に調整した配光状態を設定することができる。
この機能を活用すれば、例えば、前記偏向パターン生成手段の個数を増やすことなく、ロービームの配光分布とハイビームの配光分布との中間的な配光分布を実現させたり、あるいは、ロービームの配光分布からハイビームの配光分布へ徐々に切換えることも可能となる。
先に、図5または図6を参照して説明した機能を有する本発明の車載用前照灯には、選択・設定されている配光状態に応じて、前記射出光束(Bmo)の光量をも設定可能とする機能を付与することが好適である。
これを実現するには、前記給電回路(Ps)を制御して前記発光素子(Sc)への投入電力を決定する統合制御回路(Ux)を設け、この統合制御回路(Ux)が前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を認識し、その認識情報に応じて前記発光素子(Sc)への投入電力を設定するよう前記給電回路(Ps)を制御するように構成すればよい。
このようにすることにより、例えばハイビームのような照明範囲の広い配光分布に切換えた場合に、近距離の照度が不足するなどの現象を回避することができる。
ここで、前記統合制御回路(Ux)が前記認識情報に基づいて前記偏向パターン生成手段移動機構を制御するようにしてもよいし、逆に前記偏向パターン生成手段移動機構によって設定された配光状態を、前記統合制御回路(Ux)が読取って認識するようにしてもよい。
先に参照した図4においては、簡単のため、前記発光素子(Sc)1個を光源とするものを描いたが、実用的な車載用前照灯とするためには、白色光の射出光束を実現する必要がある。
後述するようなR,G,Bの3原色のコヒーレント光源を備えて生成する白色光の他に、例えばB色のコヒーレント光を発する半導体レーザを用いて蛍光体を励起することによってR色とG色とが混合したインコヒーレント光、またはY色(黄色)のピークスペクトルを有するインコヒーレント光を発生させた際に、これらと混ざって出て来る、インコヒーレント光に変換されなかった元のB色成分と、これらインコヒーレント光との混合による白色光に対しても、本発明は適用可能である。
このような、一部の色のみがコヒーレントである場合は、前記した眼の障害からの保護の観点に基づく前記偏向機能領域(R1,R2,…)の面積の条件、あるいは、前記した典型的な人間の眼の角度分解能 Ψ と干渉パターンの並び周期との比較に基づく前記した式7の条件については、光がコヒーレントな色のみについて満足させればよい。
以下において、R,G,Bの3原色のコヒーレント光源を備えて白色光を生成するものの実施例について、本発明の車載用前照灯の一部を簡略化して示す模式図である図7を参照して説明する。
R,G,B各波長帯域に対応してそれぞれ設けられた要素光源(U1,U2,…)に内蔵されている、発光素子(Sc1,Sc1’,…,Sc2,Sc2’,…)は、給電回路(Ps)のドライバ回路(P1,P1’,…,P2,P2’,…)によって駆動されて発光する。
なお、前記発光素子(Sc1,Sc1’,…,Sc2,Sc2’,…)の個々については、ここでは、例えば半導体レーザや、半導体レーザの放射光を、高調波発生・光パラメトリック効果などのような非線形光学現象を利用して波長変換する光源などであり、そのようなコヒーレント光源の複数個を直列接続、あるいは並列接続、さらには直並列接続するなどして、1個の前記ドライバ回路(P1,P1’,…,P2,P2’,…)によって駆動できるものとしてもよい。
また、前記ドライバ回路(P1,P1’,…)については、ここでは、直流電源(図示を省略)によって給電される、例えば降圧チョッパや昇圧チョッパなど方式の回路によって構成された、DC/DCコンバータであり、前記発光素子(Sc1,Sc1’,…)に規定の電力を投入できるものとしている。
統合制御回路(Ux)は、ドライバ回路制御信号(J1,J1’,…,J2,J2’,…)を介して前記ドライバ回路(P1,P1’,…,P2,P2’,…)毎に個別にデータを送受して制御し、それぞれの前記発光素子(Sc1,Sc1’,…,Sc2,Sc2’,…)に規定の電力を投入することができるように構成されている。
さらに前記統合制御回路(Ux)は、位置指定信号(Jm)を介して前記偏向パターン生成手段移動機構(Ms)を制御し、前記偏向パターン生成手段(Fm)の位置を設定する。
前記要素光源(U1,U2,…)のR,G,B各波長帯域毎の前記発光素子(Sc1,Sc1’,…,Sc2,Sc2’,…)から発せられた光は、例えばレンズから成る集光光学系(Ec1,Ec2,…)によって光ファイバ(Ef1,Ef2,…)の入射端(Ei1,Ei2,…)に集光され、前記光ファイバ(Ef1,Ef2,…)のコアを伝播して射出端(Eo1,Eo2,…)から放射されるように構成する。
前記光ファイバ(Ef1,Ef2,…)の前記射出端(Eo1,Eo2,…)が同一平面上に位置するように揃えて、前記光ファイバ(Ef1,Ef2,…)の射出端部を束ねる事により光放射領域(Gs)を実現することができる。
前記射出端(Eo1,Eo2,…)からの放射光は、総合されて1個の出力光束を形成し、前記光束(Bs)として出力され、例えば、図4に示した前記光投影光学系(Eu)およびそれ以降の部分から成る光学系に入射される。
ここでは、R,G,B各色の光を、3本の前記光ファイバ(Ef1,Ef2,…)によって伝送するものについて述べたが、これを、1本の光ファイバによって伝送するようにしてもよい。
ただし、前記した色分離回折格子照明方式を実現する場合は、R,G,B各色の光を、3本の前記光ファイバ(Ef1,Ef2,…)によって伝送した上で、前記光ファイバ(Ef1,Ef2,…)の射出端部を束ねない構成とする必要がある。
光学系設計に関して若干補足しておく。
レンズ設計分野において一般的に知られているように、1個のレンズからなる光学系を、それと同じ機能の、複数のレンズの組合せからなる光学系に構造変換したり、あるいは逆の構造変換をすることも可能であり、特に前者の構造変換は、対象光学系についての焦点距離は同じでも、入力側主点位置および出力側主点位置を好都合な位置に設定したり、アフォーカル系を導入したりすることにより、1個のレンズでは物理的に実現不可能な機能を実現させる、あるいは、レンズのパワーを複数のレンズに分散させることにより、収差を減少させる、などの目的で活用される。
本発明は、半導体レーザなどの発光素子を用いた車載用前照灯を設計・製造する産業において利用可能である。
A 矢印
Bmo 射出光束
Bs 光束
Bu 光束
Ci 底面
d 距離
Ec1 集光光学系
Ec2 集光光学系
Ef1 光ファイバ
Ef2 光ファイバ
Ei1 入射端
Ei2 入射端
Eo1 射出端
Eo2 射出端
Eu 光投影光学系
Fm 偏向パターン生成手段
Fm’ 偏向パターン生成手段
Gs 光放射領域
Gu 照明領域
J1 ドライバ回路制御信号
J1’ ドライバ回路制御信号
J2 ドライバ回路制御信号
J2’ ドライバ回路制御信号
Jm 位置指定信号
Ks 放射面素
Ks’ 放射面素
Lc 中央線
Lc’ 中央線
Lms1 周辺光線
Lms2 周辺光線
Lps 主光線
Lps’ 主光線
Ms 偏向パターン生成手段移動機構
P1 ドライバ回路
P1’ ドライバ回路
P2 ドライバ回路
P2’ ドライバ回路
Pmi 光入射部
Pmo 光射出部
Ps 給電回路
Qs 点
R1 偏向機能領域
R2 偏向機能領域
Sc 発光素子
Sc1 発光素子
Sc1’ 発光素子
Sc2 発光素子
Sc2’ 発光素子
U1 要素光源
U2 要素光源
Ux 統合制御回路

Claims (11)

  1. コヒーレント光を発する発光素子(Sc)と、
    前記発光素子(Sc)を駆動するための給電回路(Ps)と、
    前記発光素子(Sc)からの光によって形成される光放射領域(Gs)を有し、前記光放射領域(Gs)からの光を投影して規定形状の照明領域(Gu)を形成する光投影光学系(Eu)と、
    前記照明領域(Gu)の近傍に設置され、それに入射される光束の入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめ、遠方を照明する規定の配光分布を有する射出光束(Bmo)に変換するための偏向パターン生成手段(Fm)とを具備する車載用前照灯であって、
    前記偏向パターン生成手段(Fm)は、その光入射部(Pmi)が多数の偏向機能領域(R1,R2,…)に分割して構成されており、前記光入射部(Pmi)に入射される入射光線それぞれに対して偏向を与えて射出せしめる際には、与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存するように構成され、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれは、前記した配光分布の配光が行われる領域全体のうちの広い領域を照明することを特徴とする車載用前照灯。
  2. 人間の眼の存在が想定される最も近い位置における、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の1個によって偏向された光束が形成する照度が、眩しい光の露光に対して人が自然に行う回避行動によって眼の障害から保護され得る水準以下となるよう、前記偏向機能領域(R1,R2,…)それぞれに入射される光パワーが規定されることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  3. 射出される光の縦方向に対応する方向の、前記偏向機能領域(R1,R2,…)の大きさが、前記した配光分布の縦方向のラジアン単位の角度幅 Θy と、前記発光素子(Sc)の放射光の波長 λ とによって計算される次の値
    Aymin = 4λ/Θy
    以上であることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  4. 前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並び反復距離が、典型的な人間の眼のラジアン単位の角度分解能 Ψ と、前記発光素子(Sc)の放射光の波長 λ とによって計算される次の値
    Cmin = λ/Ψ
    以上であることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  5. 前記偏向機能領域(R1,R2,…)の並びの周期性に対して擾乱を与えるよう、並び方に変調を加えることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  6. 前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存することを実現するために、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、位置に依存して法線方向が変化する光反射面によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  7. 前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存することを実現するために、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、位置に依存して厚さまたは屈折率が変化する光屈折媒体によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  8. 前記した与える偏向の方向が、その光線の前記光入射部(Pmi)における入射位置に依存することを実現するために、前記偏向パターン生成手段(Fm)は、位置に依存して位相が変化する干渉縞を有する回折格子によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  9. 配光分布の異なる複数個の偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を具備し、何れかを選択して、その近傍に前記照明領域(Gu)が位置するよう、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の車載用前照灯。
  10. 配光分布の異なる複数個の前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)を近接して配置するとともに、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係が、前記偏向パターン生成手段のうちの隣り合う2個の中間的な位置である場合には、それら2個の前記偏向パターン生成手段それぞれが単独で形成する配光分布を加え合わせた配光分布が形成されるように構成したことを特徴とする請求項9に記載の車載用前照灯。
  11. 前記給電回路(Ps)を制御して前記発光素子(Sc)への投入電力を決定する統合制御回路(Ux)をさらに有し、該統合制御回路(Ux)は前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係を認識して、前記偏向パターン生成手段(Fm,Fm’,…)と前記照明領域(Gu)との相対的な位置関係に応じて前記発光素子(Sc)への投入電力を変更するよう前記給電回路(Ps)を制御することを特徴とする請求項9から10に記載の車載用前照灯。
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