JP7341610B2 - 鋳型造型用硬化剤組成物 - Google Patents
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Description
本実施形態の鋳型造型用硬化剤組成物(以下、硬化剤組成物ともいう)は、水溶性フェノール樹脂を硬化させる硬化剤と分子内にポリオキシアルキレン基及び2以上の1級アミノ基を有するアミン化合物を含有する。当該硬化剤組成物によれば、長期間保存した場合の粘度の増加を抑制でき、得られる鋳型の強度の低下を抑制することができる。このような効果を発現する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
前記アミン化合物は、分子内にポリオキシアルキレン基及び2以上の1級アミノ基を有する化合物である。前記ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位の数は、鋳型強度を向上させる観点から、2以上が好ましい。前記ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位の数は、同様の観点から、30以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。また、前記ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位の数は、鋳型強度を向上させる観点から、2~30が好ましく、2~15がより好ましく、2~10が更に好ましい。
前記硬化剤組成物は、水溶性フェノール樹脂を硬化させる硬化剤を含有する。当該硬化剤は、水溶性フェノール樹脂を硬化させるものであれば特に限定なく用いることができるが、鋳型強度を向上させる観点からエステル化合物が好ましい。当該エステル化合物としては、ラクトン類或いは炭素数1~10の一価又は多価アルコールと炭素数1~10の有機カルボン酸より導かれる有機エステル化合物、炭酸エステル、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的には、ラクトン類としては、γ-ブチロラクトン、プロピオンラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。有機エステル化合物としては、ギ酸エチル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、アセト酢酸エチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、トリアセチン等、炭酸エステルとしては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。
前記硬化剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでよい。例えば、前記硬化剤組成物は、鋳物砂に均一に添加し、樹脂組成物と均一に混合させる目的で、水、アルコール類、エーテルアルコール類等の溶剤を含有させることができる。前記硬化剤組成物が溶剤を含有する場合、前記硬化剤組成物中の前記溶剤の含有量は、鋳型強度を向上させる観点と硬化剤組成物に対する溶解性の観点から、47質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
本発明では、前記アミン化合物以外の含窒素化合物アミンを含むことを排除するものではない。その場合のその他のアミンの含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、アミン全体の5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、実質的に含まないことが好ましい。ここで実質的に含まないとは、故意に含有させないことを意味し、例えば、前記硬化剤組成物の原料等に含まれており、意図せずに含まれることを意味する。
本実施形態の鋳型の製造方法は、耐火性粒子、水溶性フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物(以下、粘結剤組成物ともいう)、及び前記硬化剤組成物を混合して鋳型組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する。
本実施形態の鋳型の製造方法で使用可能な耐火性粒子としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、アルミナ砂、ムライト砂、合成ムライト砂等の従来公知のものを使用でき、また、使用済みの耐火性粒子を回収して再生処理した再生砂も使用できる。なお、耐火性粒子は、単独で使用又は2種以上を併用することができる。
[水溶性フェノール樹脂]
前記粘結剤組成物に含有される前記水溶性フェノール樹脂は、特に限定されないが、鋳型強度を向上させる観点から、エステル化合物で硬化可能な樹脂が好ましい。このような水溶性フェノール樹脂は、一般にはアルカリ条件下でフェノール化合物とアルデヒド化合物とを重縮合させることによって得られるものである。このうちフェノール化合物としては、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、クレゾール、3,5-キシレノール、レゾルシン、カテコール、ノニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール、その他の置換フェノールを含めたフェノール類や、カシューナット殻液のような各種のフェノール化合物の混合物等を1種又は2種以上混合して使用することができる。また、アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、フルフラール、グリオキザール等を1種又は2種以上混合して使用することができる。これらの化合物は必要に応じて水溶液として用いることができる。また、これらに、尿素、メラミン、シクロヘキサノン等のアルデヒド化合物と縮合が可能なモノマーや、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価の脂肪族アルコール化合物や、水溶性高分子のポリアクリル酸塩や、セルロース誘導体高分子、ポリビニルアルコール、リグニン誘導体などを混合しても差し支えない。
前記粘結剤組成物は、更に、本実施形態の効果を阻害しない程度に水、シランカップリング剤、尿素、界面活性剤、アルコール類等の添加剤が含まれていても良い。なお、前記粘結剤組成物中にシランカップリング剤が含まれていると、得られる鋳型の最終強度をより向上させることができるため好ましい。前記シランカップリング剤の例としては、γ-(2-アミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。前記粘結剤組成物中の前記シランカップリング剤の含有量は、鋳型強度を向上させる観点から、0.1~5質量%が好ましく、0.3~1質量%がより好ましい。
する。
<1> 水溶性フェノール樹脂を硬化させる硬化剤と分子内にポリオキシアルキレン基及び2以上の1級アミノ基を有するアミン化合物とを含有する鋳型造型用硬化剤組成物。
<2> 前記硬化剤がエステル化合物を含有する、前記<1>に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<3> 前記ポリオキシアルキレン基が、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、及びオキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダムに付加したポリオキシアルキレン基から選ばれる1種以上である、前記<1>又は<2>に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<4> 前記ポリオキシアルキレン基が、ポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基から選ばれる1種以上である、前記<1>又は<2>に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<5> 前記ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位の数が2以上30以下である、前記<1>乃至<4>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<6> 前記ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位の数が2以上10以下である、前記<1>乃至<4>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<7> 前記アミン化合物における1級アミノ基の数が2以上5以下である、前記<1>乃至<6>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<8> 前記アミン化合物における1級アミノ基の数が2以上3以下である、前記<1>乃至<6>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<9> 前記アミン化合物の重量平均分子量が80以上1000以下である、前記<1>乃至<8>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<10> 前記アミン化合物の重量平均分子量が120以上600以下である、前記<1>乃至<8>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<11> 前記アミン化合物の重量平均分子量が140以上500以下である、前記<1>乃至<8>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<12> 前記アミン化合物が、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記<1>乃至<11>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<13> 前記アミン化合物が、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、下式(1)で示される化合物及び下式(2)で示される化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物である、前記<1>乃至<12>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<14> 前記アミン化合物の含有量が3質量%以上50質量%以下である、前記<1>乃至<13>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<15> 前記アミン化合物の含有量が3質量%以上30質量%以下である、前記<1>乃至<13>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<16> 前記アミン化合物の含有量が3質量%以上25質量%以下である、前記<1>乃至<13>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<17> 前記アミン化合物の含有量が8質量%以上25質量%以下である、前記<1>乃至<13>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
<18> 耐火性粒子、水溶性フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物、及び前記<1>乃至<13>の何れか一つに記載の鋳型造型用硬化剤組成物を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法。
<19> 前記鋳型用組成物中の前記アミン化合物の含有量が水溶性フェノール樹脂100質量部あたり2質量部以上24質量部以下である、<18>に記載の鋳型の製造方法。
<20> 前記耐火性粒子が、再生砂である、前記<18>又は<19>に記載の鋳型の製造方法。
〔水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)〕
水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記条件で測定した。
(a)サンプル調製:試料に同重量のイオン交換水を加え、0.1質量%のH2SO4を加えて中和した。生成した沈殿を濾過分離し、水洗し、乾燥した。これをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、GPC用のサンプルを調製した。
(b)カラム:ガードカラムTSX(東ソー式会社製)HXL(6.5mmφ×4cm)1本と、TSK3000HXL(7.8mmφ×30cm)1本と、TSK2500HXL(7.8mmφ×30cm)1本を使用する。注入口側よりガードカラム-3000HXL-2500HXLの順に接続した。
(c)標準物質:重量平均分子量が既知の単分散ポリスチレン(東洋曹達工業社製)
(d)溶出液:THF(流速:1cm3/min)
(e)カラム温度:25℃
(f)検出器:紫外分光光度計(フェノールの紫外吸収の最大ピークの波長において定量)
(g)分子量計算の為の分割法:時間分割(2sec)
温度計及び撹拌機を装着した2リットルガラス容器に、フェノール773g、48.5質量%水酸化カリウム水溶液190g、水323g、50%ホルマリン溶液937gを混合後、82℃で反応を行い水溶性フェノール樹脂(レゾール樹脂)水溶液を得た。水溶性フェノール樹脂水溶液の固形分濃度は49.6質量%である。また、当該水溶性フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は1970である。
〔硬化剤組成物の調製〕
トリアセチンと含窒素化合物を表1に記載の量になるように混合して実施例1~12の硬化剤組成物を得た。比較例1~12、参考例1はトリアセチンを用いた。なお、用いた含窒素化合物は以下のものである。
前記式(1)で示される化合物:BAXXODUR EC301(BASF社製)
前記式(2)で示される化合物:BAXXODUR EC310(BASF社製)
1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン:ジェファーミン EDR148(ハンツマン社製)
ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル:アンカミン1922A(エボニック社製)
表1に記載の水溶性フェノール樹脂、水、48.5質量%水酸化カリウム水溶液、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液、アルミン酸ナトリウム、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM-403)、比較例1~12においては更に表1に記載のアミン化合物、をそれぞれ表1に記載の質量比で混合して粘結剤組成物を得た。
[再生砂の調製]
溶融法で製造された人工アルミナ砂(「エスパール#60L」山川産業株式会社製)の新砂に対し、水溶性フェノール樹脂(「カオーステップ SH-8000」花王クエーカー社製)と、エステル化合物系硬化剤としてトリアセチンを添加し、これらを混練して得られた混練砂を用いて鋳型を造型した。得られた鋳型を用いて鋳造した後、再生処理した砂を再生砂として用いた。
東機産業株式会社製のE型粘度計RE80R型を用いて、25℃での粘度測定を行なった。
耐火性粒子10000質量部に対して、前記粘結剤組成物100質量部、及び前記硬化剤組成物25質量部を均一に混練し、得られた鋳型用組成物を用いてテストピース(50mm×50mmφ)を成型した。前記テストピースを24時間静置した後、圧縮強度評価試験機(「SDW 2000SH特型」株式会社今田製作所製)を用い、圧縮強度を測定した。圧縮速度は5mm/秒とし、圧縮強度の計算は、荷重/テストピースの断面積から算出した。なお、混練時から圧縮強度評価時までの雰囲気温度及び湿度は25℃、55%RHに保ち、耐火性粒子、及び粘結剤組成物、及び硬化剤組成物も予め25℃に調整しておいたものを使用した。
Claims (11)
- 水溶性フェノール樹脂を硬化させる硬化剤と分子内にポリオキシアルキレン基及び2以上の1級アミノ基を有するアミン化合物とを含有する鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記硬化剤がエステル化合物を含有する請求項1に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記ポリオキシアルキレン基が、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、及びオキシエチレン基とオキシプロピレン基がブロック又はランダムに付加したポリオキシアルキレン基から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記ポリオキシアルキレン基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位の数が、2以上30以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記アミン化合物における1級アミノ基の数が、2以上5以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記アミン化合物の重量平均分子量が80以上1000以下である請求項の1~5のいずれか1項に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記アミン化合物が、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 前記アミン化合物の含有量が、3質量%以上50質量%以下である請求項1~7のいずれか1項に記載の鋳型造型用硬化剤組成物。
- 耐火性粒子、水溶性フェノール樹脂を含有する鋳型造型用粘結剤組成物、及び請求項1~8のいずれか1項に記載の鋳型造型用硬化剤組成物を混合して鋳型用組成物を得る混合工程、及び前記鋳型用組成物を型枠に詰め、当該鋳型用組成物を硬化させる硬化工程を有する鋳型の製造方法。
- 前記鋳型用組成物中の前記アミン化合物の含有量が水溶性フェノール樹脂100質量部あたり2質量部以上24質量部以下である、請求項9に記載の鋳型の製造方法。
- 前記耐火性粒子が、再生砂である、請求項9又は10に記載の鋳型の製造方法。
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