JP7341047B2 - アンチモン吸着材並びにアンチモン含有液の処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Description
[1]チタン化合物と結着材とを含むチタン化合物の造粒体からなり、ゆるめかさ密度が380kg/m3以上650kg/m3以下であり、結着材を用いて造粒する前のチタン化合物の比表面積が200m2/g以上400m2/g以下である、アンチモン吸着材。[2]前記結着材を用いて造粒する前のチタン化合物の含水率が50g/kg以上150g/kg以下である、[1]に記載のアンチモン吸着材。
[3]粒径が300μm以上600μm以下の範囲である、[1]又は[2]のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材。
[4]チタン化合物を750g/kg以上含有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材。
[5]チタン化合物がオキシ水酸化チタンである、[1]~[4]のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材。
[6]前記結着材がポリビニルアルコールである、[1]~[5]いずれか1項に記載のアンチモン吸着材。
[7]ポリビニルアルコールの含有量が20g/kg以上100g/kg以下である、[6]に記載のアンチモン吸着材。
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材を容器に充填してなる、アンチモン含有液の処理装置。
[9][1]~[7]のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材を容器に充填してなる、放射性アンチモンの除染装置。
[10][8]に記載のアンチモン含有液の処理装置に、アンチモン含有液を通水することを含む、アンチモン含有液の処理方法。
[11][9]に記載の放射性アンチモンの除染装置に放射性アンチモン含有液を通水することを含む、放射性アンチモンの除染方法。
用時の粉砕による微粉の発生が抑制され、放射性物質を含有した微粉が充填容器から外環境へ漏洩することが抑制される。また本発明で得られるアンチモン吸着材は吸着性能が大きいため放射性廃棄物として保管する際に大きな保管スペースを必要としない。更に線量が減少した後に最終処分する際、重金属類が環境中に流出する恐れがない。
チタン化合物の含水率は、実施例の欄に記載した方法を用いて測定することができる。
チタンは、これに限定されるわけではないが、酸化チタンを硫酸に溶解させて、脱硫し、ろ過及び洗浄することにより製造することができる。チタン化合物はこのように簡便な工程で安価に製造することができる。
造粒の際に用いる結着材の種類は特に限定されず、チタン化合物同士を結着でき、かつ、使用時の通水に耐える機械的強度を造粒体に与えることができるものであればよい。例えば、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と記す)、ポリビニルブチラール、ポリオレフィン、ベントナイト等が挙げられる。これらの中では、チタン化合物の結着性に優れ、また、安価である点から、PVAは好ましい。結着材としてPVAを用いる場合のPVAの特性は制限されない。PVAには、けん化度が70~100mol%のものがあるが、いずれのPVAも用いることができる。
造粒体に使用した結着材の種類は、元素分析、炭素含有量測定、FT-IR測定、X線回折測定及び熱分析などを組み合わせることにより同定することができる。例えば、結着材としてPVAを用いていることは、簡易的には空気中で110℃で加熱すると黄色に変色することで、より詳細にはFT-IR測定、炭素含有量測定、元素分析、X線回折測定、示差走査熱量計を用いた測定結果を組み合わせることにより同定することができる。
アンチモンが本発明のアンチモン吸着材に吸着されるためには、アンチモンが吸着材中のチタン化合物の表面に接触する必要がある。吸着材のゆるめかさ密度が大きい場合は、吸着材の一つ一つの粒子の密度が大きいため、アンチモンが吸着材の内部に深く侵入することが難しい。この結果、ゆるめかさ密度が大きい吸着材の内側に位置するチタン化合物の吸着性能が十分に活かされず、吸着性能が低下することがある。一方で、ゆるめかさ密度が小さい吸着材は水中で崩壊し易いため、汚染水の処理という用途での使用に適してい
ない。吸着材のゆるめかさ密度の範囲を380kg/m3以上650kg/m3以下、より好ましくは420kg/m3以上580kg/m3以下とすることにより、吸着材が水中で崩壊しにくい一方で、吸着材の内部にアンチモンが深く侵入して吸着性能が向上するという効果が得られたと考えられる。
アンチモンを含有する液を上記の処理装置に通水することにより、液中のアンチモンを除去することができる。また、放射性アンチモンを含有する液を上記の除染装置に通水することにより、液中の放射性アンチモンを捕捉し、除染することができる。
本発明の装置及び方法で処理又は除染するアンチモン含有液又は放射性アンチモン含有液におけるアンチモン(放射性、非放射性含む)の濃度は、特に限定されない。例えば、放射性アンチモンであれば数100~1000Bq程度、例えば、900Bq程度が想定される。本発明の装置及び方法を用いることにより、液中のアンチモンの濃度を低減させることができる。
本発明の装置及び方法で処理又は除染するアンチモン含有液又は放射性アンチモン含有液には、アンチモンの他に、他の放射性又は非放射性元素が含まれていてもかまわない。また、海水等由来の塩類が含まれていてもかまわない。本発明の装置及び方法は、これに限定されないが、福島第一原子力発電所の事故により発生した放射性物質を含んだ汚染水の除染に使用することができる。
本発明の処理装置及び除染装置において、上述のアンチモン吸着材は、5cm以上300cm以下の層高、好ましくは10cm以上250cm以下の層高、さらに好ましくは10cm以上200cm以下の層高となるように吸着用容器又は塔に充填することが好ましい。上記範囲とすることで、吸着材層が均一となるように充填することができ、通水時のショートパスを引き起こさず、結果として処理水質が悪化することを防止することができる。一般には層高が高いほど処理水質が安定化し、処理水の総量も多くなるため好ましいが、層高が高すぎると通水差圧が高くなりすぎるため、層高は300cm以下とすることが好ましい。
本発明は、上記の装置にアンチモン含有液、又は放射性アンチモン含有液を通水することを含む、アンチモン含有液の処理方法ならびに放射性アンチモンの除染方法も提供する
。
通水線流速(LV)は、1m/h以上40m/h以下であることが好ましく、2m/h以上30m/h以下がさらに好ましい。通水線流速が40m/hを越えると通水差圧が大きくなり、一方、1m/h未満では処理水量が少ない。また、空間速度(SV)は、40h-1以下が好ましく、30h-1以下がさらに好ましく、20h-1以下がさらに好ましい。また、空間速度(SV)の下限は、5h-1以上が好ましく、10h-1以上がさらに好ましい。一般的な廃液処理で用いられる空間速度(SV)は20h-1以下又は10h-1程度であるが、本発明では20h-1程度の大きな空間速度(SV)でも本発明の吸着材の効果を得ることができ、吸着塔を大型化せずに通水線流速及び空間速度を大きくすることができる。
なお、通水線流速とは、吸着塔に通水する水量(m3/h)を吸着塔の断面積(m2)で除した値である。空間速度とは、吸着塔に通水する水量(m3/h)を吸着塔に充填した吸着材の体積(m3)で除した値である。
アンチモン吸着材を容器に充填したアンチモン含有液の処理装置及び放射性アンチモンの除染装置を長期間使用した後、吸着性能が小さくなったら、アンチモン吸着材を容器から取り出して廃棄し、新しいアンチモン吸着材を充填することができる。本発明のアンチモン吸着材は吸着性能が大きいため、放射性廃棄物として保管する際大きな保管スペースを必要としない。また線量が減少した後に最終処分する際、重金属類が環境中に漏洩する恐れがない。
[造粒体中のPVA含有量測定]
LECO製CS-230型炭素(C)・硫黄(S)分析装置を用いて造粒体の炭素(C)含有量を分析した。造粒体のPVA含有量を該炭素(C)測定値から算出した。
HIRANUMA製AQ-2100を用いて、窒素流量0.25L/min、95℃でチタン化合物又はアンチモン吸着材を水分が検出されなくなるまで加熱し、カールフィッシャー法で検出された水分量がチタン化合物質量又はアンチモン吸着材質量に占める割合を、チタン化合物又はアンチモン吸着材の含水率とした。
アンチモン吸着材全体の質量から、上記PVA含有量と、上記アンチモン吸着材の含水率測定と同様の操作で測定したアンチモン吸着材の水分量とを除いた質量を、アンチモン吸着材中のチタン化合物の含有量とした。
アンチモン吸着材を内径50mm、深さ50.9mm、内容積100.0mL(0.0001m3)の容器に過剰に入れて溢れさせ、垂直に立てたヘラを上縁に沿ってスライドさせ、上縁よりも高い位置の試料を除き、容器内に試料が均一に充填された状態にして充填物の重さを計量した。なお、上記の操作を行う際は、試料の撹拌、振盪及び圧縮は行わなかった。ゆるめかさ密度を以下の式で算出した:
ゆるめかさ密度(kg/m3)=x/0.0001
x:充填物の重さ(kg)。
Micromeritics社製ジェミニVII2390を用いてBET法で評価した。
塩化ナトリウムを水道水に対して3g/kg溶かした水溶液に、塩化セシウム、塩化ストロンチウム、ヨウ化カリウム及びアンチモン酸ナトリウムをそれぞれが水道水に対して0.001g/kgの濃度になるように調整した液を原液とした。原液を密閉容器に50g取り分け、アンチモン吸着材50.0mg(0.05g)を加えて容器の蓋を閉め、30秒間手で容器を上下に振った。その後24時間瓶を静置し、再度30秒間手で容器を上下に振った。シリンジで容器中から液を1mL採取し、0.2μmのフィルタでろ過したものを試験液とした。試験液を20倍に希釈し、アンチモン濃度をAgilent社製ICP-MS 7700xで測定した。分配係数Kd値及び除去率を以下の式で算出した:Kd値=(C0-C1)/C1×50/0.05
除去率(%)=(C0-C1)/C0×100
C0:原液のアンチモン濃度
C1:試験液のアンチモン濃度。
オキシ水酸化チタン(TiO(OH)2)を水中に分散し、酸化チタン換算で150g/kgのスラリーにした。水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.8に調整し、2時間撹拌した。更に希硫酸を加えてpHを6.6に調整した。得られたスラリーを常法によりろ過、水洗し、空気中、150℃でケーキの水分が100g/kg以下になるまで乾燥し、目開き0.5mmのスクリーンを通過したものをチタン化合物Aとした。
オキシ水酸化チタン(TiO(OH)2)スラリーの濃度を300g/kgとしたことを除いては、合成例1と同様の方法でチタン化合物Bを得た。
オキシ水酸化チタン(TiO(OH)2)を水中に分散し、酸化チタン換算で300g/kgのスラリーにした。スラリーを常法によりろ過し、空気中、110℃で12時間乾燥し、乾燥品をロータリーキルンを用いて300℃で0.5時間加熱することでチタン化合物Cを得た。
二酸化チタンと三酸化二チタンを、水道水で洗浄水中の硫酸成分が10g/kg以下になるまで洗浄した後、水道水を加えて二酸化チタン濃度が250g/kg、三酸化二チタン濃度が5.0g/kgのスラリーにした。スラリーに、二酸化チタンと三酸化二チタンの合計量に対して60g/kgになるように五酸化二リンを添加し、ロータリーキルンを用いて1000℃で2時間加熱した。得られた白い塊を粉砕し、チタン化合物Dを得た。
合成例1で得られたチタン化合物A100gを、内径200mm、深さ100mmの円
筒型パンに入れ、パンの底面を水平面から50°の角度に傾け、50rpmで回転しながら、キシダ化学製ポリビニルアルコール500(以下「PVA500」と記す)の100g/kg水溶液50gを霧吹きを用いてパンの底面に吹き付けた。その後パンの底面の角度及び回転数を維持しながら5分間回転した。回転を停止した後造粒体を取り出し、空気中で、ADVANTEC社製強制対流式オーブンFC-610(以下、「FC-610」と記す)を用いて110℃で12時間乾燥させた。乾燥後の造粒体は、目開き600μmの篩を通し、篩を通過した造粒体を更に目開き300μmの篩を通し、300μmの篩上に残った造粒体を回収し、アンチモン吸着材とした。
合成例1で得られたチタン化合物Aを用い、乾燥までの工程は実施例1と同様の方法で実施した。乾燥後に目開き600μmの篩を通した後、篩上に残った造粒体を常法で解砕して再度目開き600μmの篩を通した。解砕後に600μmの篩を通過した造粒体のみ、更に目開き300μmの篩を通し、300μmの篩上に残った造粒体を回収し、アンチモン吸着材とした。
合成例1で得られたチタン化合物A100gを、内径220mm、深さ130mmの円筒型パンに入れ、パンの底面を水平面から60°の角度に傾け、100rpmで回転しながら、霧吹きを用いてPVA500の100g/kg水溶液50gをパンの底面に吹き付けた。その後パンの底面の角度及び回転数を維持しながら2分間回転した。回転を停止した後造粒体を取り出し、FC-610を用いて空気中、110℃で12時間乾燥させた。乾燥後の造粒体は、目開き600μmの篩を通し、篩上に残った造粒体は常法で解砕した後に再度目開き600μmの篩を通した。篩を通過した全ての造粒体を更に目開き300μmの篩に通し、篩を通過しなかった造粒体を回収し、アンチモン吸着材とした。
合成例2で得られたチタン化合物Bを用いたこと、また霧吹きで吹き付けるPVA500の水溶液の濃度を80g/kgとし、吹き付ける量を63gとしたことを除いては、実施例3と同様の方法でアンチモン吸着材を得た。
内径220mm、深さ130mmの円筒型パンを用い、回転数を100rpmとしてPVA500の水溶液を吹き付け、その後パンの底面の水平面からの角度を60°に変更して100rpmで180分間回転し、FC-610を用いて空気中、80℃で15時間乾燥したことを除いて、実施例2と同様の方法で、アンチモン吸着材を得た。
パンを水平面から45°に傾けて、70rpmでパンを回転しながら70g/kgのPVA500の水溶液を70g吹きつけ、その後100rpmで90分間回転し、FC-610を用いて空気中、80℃で15時間乾燥したことを除いて、実施例3と同様の方法で、アンチモン吸着材を得た。
内径220mm、深さ130mmの円筒型パンを用い、パンを水平面から45°に傾けて、70rpmでパンを回転しながらPVA500の70g/kg水溶液を70g吹きつけ、その後100rpmで180分間回転し、FC-610を用いて空気中、80℃で15h乾燥したことを除いて、実施例1と同様の方法で、アンチモン吸着材を得た。
合成例3で得られたチタン化合物Cを用いたこと、また霧吹きで吹き付けるPVA500の水溶液の量を40gとしたことを除いては、実施例3と同様の方法で、アンチモン吸着材を得た。
合成例4で得られたチタン化合物Dを用いたこと、また霧吹きで吹き付けるPVA500水溶液の量を26gとしたことを除いては、実施例3と同様の方法で、アンチモン吸着材を得た。
えられる。
Claims (8)
- チタン化合物と結着材とを含むチタン化合物の造粒体からなり、チタン化合物を750g/kg以上899g/kg以下の量で含有しており、ゆるめかさ密度が380kg/m3以上580kg/m3以下であり、結着材を用いて造粒する前のチタン化合物のBET比表面積が200m2/g以上400m2/g以下であり、チタン化合物がオキシ水酸化チタンであり、結着材がポリビニルアルコールである、アンチモン吸着材。
- 前記結着材を用いて造粒する前のチタン化合物の含水率が50g/kg以上150g/kg以下である、請求項1に記載のアンチモン吸着材。
- 粒径が300μm以上600μm以下の範囲である、請求項1又は2に記載のアンチモン吸着材。
- ポリビニルアルコールの含有量が20g/kg以上100g/kg以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材を容器に充填してなる、アンチモン含有液の処理装置。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載のアンチモン吸着材を容器に充填してなる、放射性アンチモンの除染装置。
- 請求項5に記載のアンチモン含有液の処理装置に、アンチモン含有液を通水することを含む、アンチモン含有液の処理方法。
- 請求項6に記載の放射性アンチモンの除染装置に放射性アンチモン含有液を通水することを含む、放射性アンチモンの除染方法。
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