JP6213978B2 - セシウム吸着材及びこれを用いてセシウムを除去する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、放射性セシウムの吸着材に関する。
原子力発電の結果として排出される放射性廃液から特定の放射性元素を分離・除去する方法として、イオン交換の利用が研究されている。対象となるイオンとしては、例えば、セシウムやストロンチウム、アメリシウムなどに含まれる放射性元素の分離が挙げられる。
原子力発電所の事故の際には、大量の放射性物質が環境に飛散することがある。中でも、放射性であるセシウム134とセシウム137は遠距離まで飛散することが知られており、その対策が大きな課題となる。実際、先の原子力発電所の事故で、ある程度距離が離れた地域で時間が経った後に問題となったのは、この二つの放射性物質である。
特に、農地や校庭・空き地などの土壌に落下した放射性セシウムの土壌処理や、河川や海水処理など、その処理の形態は多岐にわたる。そして、その処理量は膨大なものとなる。上記イオン交換材料を利用するにしても、大量処理・大量生産に好適に対応できることが必要となる。
放射性廃棄物からのセシウムの除去についてみると、ゼオライトやクラウンエーテルの利用検討が進んでいる。特許文献1は、ゼオライト等の多孔性無機物担体の細孔内にリンモリブデン酸アンモニウムを担持したセシウムの分離・回収材を開示する。これによりハンドリング性及び吸着性能に優れ、微量のセシウムを含む海水等からのセシウムの選択分離・回収が可能になるとされる。
また、金属錯体であるプルシアンブルーは、既に体内のセシウム除去剤として市販されているものに適用されている。この性質を利用した陽イオンの吸着材料として、特許文献2は、プルシアンブルーの鉄原子の一部を銅に置換して得られる銅プルシアンブルー類似体(Cu−PBA)を官能基をもたない多孔性樹脂孔内に担持したものを開示する。これにより、放射性廃液等からのセシウム除去への利用において、再生処理を効率化することができるとされる。
これまでに放射性セシウム吸着材は、主として原子力発電所から正規に排出される廃液の処理が目的であった。また、これまでの大きな主たる原子力発電所の事故としては、チェルノブイリ発電所と、スリーマイル発電所の事故が挙げられるが、前者は水蒸気爆発のため、様々な放射性物質が飛散した。この中でもセシウムは特に大量に飛散した物質ではあるが、他の放射性物質の飛散も同時に発生した。一方で後者の事故においては、環境への放射性物質の大量飛散は認められていない。これらと比べ、2011年に発生した福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故は、水素爆発により揮発性の放射性物質のみが体量に飛散し、放射性ヨウ素は半減期が短く、中長期的な問題にはならず、唯一放射性セシウムの除染のみが課題となっている。よって、この場合には他の放射性物質吸着能力は問題にならず、放射性セシウムのみを選択的に吸着できる吸着材が特に必要とされている。
放射性セシウム除染に関し、一つの大きな課題が焼却灰の問題である。放射性セシウムが付着した植物体については、焼却処分が主たる減容方法としてあげられる。しかしながら、植物体を焼却した際に生じる飛灰については水との接触により放射性セシウムが水中に溶出する結果、放射性セシウム溶解水が生じることが知られており、結果として、放射性セシウム溶解水からの放射性セシウム回収が課題となる。
本発明者らは、プルシアンブルーは共存イオンがあっても、放射性セシウムを効率的に吸着することができることを見出し、焼却灰と接触した水からの放射性セシウムの効率的な除去法として、プルシアンブルー型錯体ナノ粒子を使用する方法を提案している(特許文献3)。
特開2000−84418号公報 特開平9−173832号公報 特願2012−023723号
しかしながら、焼却灰と接触した結果生じる放射性セシウム溶解水には、カリウム、ナトリウムなど多様な共存イオンも存在すると共に、焼却灰自体がアルカリ性のためにそれに接触した水もアルカリ性となる。これに対し、プルシアンブルーはアルカリ環境下で分解するため、液を中和してから吸着の作業を行うことが吸着材の安定性の観点からは望ましい。そのため、中和作業を放射性セシウム吸着の作業の前に実施する必要がある。さらには、中和を行う際に、何らかの沈殿が生じる場合があり、その場合には濾過などの沈殿物除去の作業をさらに実施する必要が生じる。
本発明は、こうした問題を解決するものであって、焼却灰と接触した結果生じる放射性セシウム溶解水がアルカリ性であっても、放射性セシウムを効率よく除去しうるセシウム吸着材を提供することを目的とするものである。
上記の問題を解決するには、アルカリ性の液からもセシウムを吸着できると共に、長期間アルカリ性液中に存在しても分解等の問題が起こらない吸着材が必要となる。このような吸着材があれば、焼却灰と接触した放射性セシウム溶解水から放射性セシウムを回収する際に、中和処理や濾過処理などを事前に実施する必要が無くなる。本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セシウム吸着材として亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子を使用することにより、放射性セシウムを含有する焼却灰を水に溶出させた/もしくは溶出したセシウム溶解水の放射性セシウムを効率的に除去しうるという知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰と接触した結果生じた、アルカリ性の放射性セシウム溶解水から、放射性セシウムを除去するため吸着材であって、主たる組成が、一般式
pZn[Fe(CN)6]x
(式中、Aは陽イオンに由来する原子であり、pは0〜0.8であり、xは0.3〜0.7である。)
で示される亜鉛−鉄シアノ錯体からなるナノ粒子を有効成分とするセシウム吸着材。
[2]前記式中のAが、カリウムである[1]に記載のセシウム吸着材。
[3]前記アルカリ性の放射性セシウム溶解水のpHが8〜12である、[1]又は[2]に記載のセシウム吸着材。
[4][1]〜[3]のいずれかのセシウム吸着材と有機材料とを複合化させたことを特徴とするセシウム吸着材。
本発明によれば、アルカリ性の放射性セシウム溶解水からもセシウムを吸着できると共に、長期間アルカリ性液中に存在しても分解等の問題が起こらない吸着材が得られ、また、焼却灰と接触した放射性セシウム溶解水から放射性セシウムを回収する際に、中和処理や濾過処理などを事前に実施する必要がなくなる。
実施例3で得られたP2の電子顕微鏡による観察結果を示す図 実施例1、3で得られたP1及びP2を用いた場合の分配係数を示す図 実施例6で得られたP4及びP5並びに比較として製造されたP6を用いた場合の分配係数を示す図
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の対象となる焼却灰は、放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰であって、水との接触により、放射性セシウムが溶出するものであればその種類を問わない。また、放射性セシウムの溶出が一部であっても、処理後の水との接触により、再溶出の可能性が低減できる効果が期待できる。また、より高温で処理した溶融スラグや、焼却灰に固化などの処理を加えたものでも、同様に放射性セシウムが水により溶出するものであれば同様の処理が可能であり、本発明においてはこれらも焼却灰と呼ぶ。具体的には、都市ゴミを焼却した際に生じる主灰、飛灰、もしくはそれらの処理物、また、下水汚泥焼却灰や、除染に際し生じる植物体や、マスク、手袋等の放射性セシウムを含む廃棄物の焼却によって生じる焼却灰も含まれる。
本発明において、放射性セシウム溶解水とは、放射性セシウムを含有する焼却灰と接触し、放射性セシウムが溶解することによって、放射性セシウムを含有するに至った水のことを言う。接触の形態は、意図的に焼却灰を水と接触させ、放射性セシウムを溶解させてもよいし、意図的でなくとも、結果として焼却灰と水が接触することで、放射性セシウムを含有した水が発生した場合も含む。
意図的に放射性セシウムと水を接触させる場合、その方法は、焼却灰と水が接触すればよいが、効率的に放射性セシウムを水に溶解させることが好ましい。例えば、攪拌槽において焼却灰と水を混合攪拌する方法、カラム状のものに焼却灰を充填し、通水する方法などが挙げられる。使用する水量/焼却灰重量を洗浄固液比と定義した場合、その洗浄固液比についても、効率的な溶解が達成されれば特に制限はないが、0.2以上が好ましく、1以上が特に好ましく、3以上がより好ましい。上限に特に制限はないが、1000以下が実際的である。
意図せず放射性セシウムと水が接触した場合は、その放射性セシウム溶解水を集水し、一カ所で放射性セシウム吸着処理を行うことが望ましいが、集水が困難な場合には、吸着材を、焼却灰洗浄水の通路に設置し、放射性セシウムを吸着させる方法をとることも可能である。
本発明において使用する吸着材は、亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子を有効成分とするものであればよい。亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子とは、ApZn[Fe(CN)6]x(式中、Aは陽イオンに由来する原子であり、pは0〜0.8であり、xは0.3〜0.7である。)と書けるものである。放射性セシウムを水から除去する能力があれば結晶構造に制限はなく、立方晶、三方晶、正方晶などを取ることができる。また、Fe(CN)6はヘキサシアノ鉄イオンであり、その一部が水や水酸化物イオンなど置換されている、もしくは配位数(この場合6)は、その一部が2〜8に変更されていてもよい。また、Aは、カリウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオンなどのアルカリイオンであり、また、水を結晶中に含む場合があるが、放射性セシウムを水から除去する能力があれば問題はないが、その含有量を制御することにより、より高い吸着能力を発現させることも可能である。例えば、亜鉛-鉄シアノ錯体はセシウム吸着材として働くのは、セシウムイオンサイズが亜鉛−鉄シアノ錯体内の空孔サイズに合致しているからだと考えられる。吸着前のイオンの種類により、セシウム吸着時のイオン交換によるエネルギー利得が変わるため、吸着前組成は吸着特性に影響を与える。アルカリイオンとしては、カリウム、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、アンモニウムイオンなどが利用できるが、ナトリウム、カリウムイオンが好ましく、特にカリウムイオンが好ましい。さらには、分散性の制御などの目的のために、配位子などが粒子表面に吸着している場合もある。また、所望のものが得られれば、特に製造法においての制限はない。ここで、塩化物(ACl)、硫酸化物(A2SO4)、硝酸化物(ANO3)など、他の陰イオンの対イオンとして、陽イオンAを過剰に含む場合があるが、これらの場合においては、他の陰イオンとの対イオンとして含有されている量についてはpの評価に含めないものとする。
亜鉛−鉄シアノ錯体としては、例えば、特開2012−72015号公報に記載のナノ粒子を使用することができる。亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子の一次平均粒径は1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下が特に好ましい。本発明において、一次粒径とは、一次粒子の直径をいい、その円相当直径(電子顕微鏡観察により得た超微粒子の画像より、各粒子の投影面積に相当する円の直径として算出した値)をいう。平均粒子径については、特に断らない限り、少なくとも30個の超微粒子の粒子径を上記のようにして測定した、その平均値をいう。あるいは、超微粒子の粉体の粉末X線回折(XRD)測定から、そのシグナルの半値幅より算出した平均径より見積もってもよいし、動的光散乱計測から見積もってもよい。また、配位子などが粒子表面に吸着している場合もあるが、その場合も一次粒径としては、配位子を除いた粒径を指すものとする。
また、使用上の便宜から、さらに大きな二次粒子に造粒されていてもよい。この場合、特に二次粒径に制限はないが、用途に応じて適切な粒径に造粒されていることが好ましい。例えば、カラム充填で使用する場合、10μm〜10mmの間のものが利用され、特に20μm〜5mmがよく利用される。一方、液体に散布して使用する場合、1000μm以下が好ましい。また、凝集沈殿剤を合わせて使用する場合には、20μm以下の粒径のものがよく使用される。さらには、混合攪拌においては、粒子が攪拌中に想定する運動を行うことが望ましい。例えば液中で混合し、上部より上澄み液として液体を回収する場合には、ある程度の粒径が必要となる。この場合は、使用するタンクのサイズなどにより必要な粒径条件が大きく変わるが、やはり10μm以上1mm以下がよく使用される。さらに言えば、遠心分離法による固液分離を行う場合には、0.1μm以上の粒子であれば使用可能である。この場合は、固液分離という観点からは上限はないが、粒径が大きいほど吸着速度などは低下する可能性が高く、5mm以下であることが実際的である。
また、形成上の都合などの理由により、他の材料との複合体であってもよい。例えば、不織布、綿布等の有機物に坦持させた形状や、高分子もしくは酸化物などをバインダとして使用した複合体であってもよい。この場合、亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子の含有量としては、0.1%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましく、0.5%以上が特に好ましい。ただし、以後記載する吸着材量としては、複合体の場合であっても、亜鉛−鉄シアノ錯体の量を用いて計算することとする。
放射性セシウム溶解水は、主成分が水であればよく、具体的には水分が50%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましく、85%以上がより好ましい。水分以外の組成物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどの塩、亜硝酸、亜硫酸などの酸、水酸化カルシウムなどの塩基、界面活性剤、アルコール等を含んでいてもよい。また、浮遊物質などについても、洗浄の妨げにならなければ含まれていてもよい。特に、焼却灰からは大量のイオンが水に溶出するため、金属イオンとしては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅など多種多様なイオンが共存する場合が一般的である。
亜鉛−鉄シアノ錯体の使用量については、処理法によって大きく変化するが、当該吸着材は放射性セシウムと非放射性セシウムの区別をして吸着することはできないため、安定セシウムを含めたセシウム全量で使用量を決めることが好ましい。例えば、亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子と、放射性セシウム溶解水を混合、攪拌することにより、水中のセシウムイオンを回収する場合、溶解水重量/吸着材重量を吸着固液比と定義すれば、吸着固液比は100以上であることが、放射性廃棄物減量の観点から好ましく、500以上であることがより好ましく、1000以上であることが特に好ましい。上限については、十分に放射性セシウムを吸着すれば特に制限はないが、100億以下が実際的である。
また、吸着材をカラムに充填し、通水する手法も使用できる。この場合、攪拌より効率的に吸着材と溶解水を接触させることができるため、より少量の吸着材で処理を行うことが可能である。具体的には、溶解水に含まれるセシウムイオン(放射性、非放射性含む)の重量の3倍以上の亜鉛−鉄シアノ錯体を使用することが好ましく、5倍以上がより好ましく、10倍以上がより好ましい。
アルカリ性の放射性セシウム溶解水のpHについては、特に制限はないが、焼却灰と接触することを考えると、7〜14であることが実際的である。
また、吸着処理前に、pHの調整を行うことも可能である。亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子はアルカリ性下でも安定であるが、非常にpHが高い場合には、一定程度の調整を行うことで、より安定的かつ効率的に吸着を行うことが可能となる。調整するpHについてとくに制限はないが、作業者の安全面などを考えると、pHが12以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、10以下であることが特に好ましい。亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子は、酸性領域においても安定かつ放射性セシウム吸着能力を持つため、特にpHの下限はないが、pHを5以上とすることが実際的である。pH調整は、工程短縮の観点から、沈殿物が生じない領域で行うことが望ましいが、仮に沈殿物が生じた場合においては、必要に応じて濾過などの分離処理を行うことも可能である。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。また、一般に放射性セシウムと非放射性セシウムの化学的挙動に違いはないと考えられているため、下記実施例は、非放射性セシウムを使用して行った。
(実施例1)
<x=0.5、p=0の亜鉛−鉄シアノ錯体の合成>
亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子(x=0.5)を以下の通りに調製した。塩化亜鉛18.82gを純水225mLに溶解し、塩酸を添加することでpH=2に調製した。これに、フェロシアン化アンモニウム10水和物29.7gを225mL純水に溶解したものを添加した後、30秒攪拌、超音波しんとう3分間を行った。得られた液を4000rpm15分間の遠心分離を行った。得られた沈殿物を純水洗浄後、真空乾燥することで白色粉末P1を得た。X線回折装置で評価したところ、データベース中のZn[Fe(CN)6]0.5にピーク位置が一致した。
(実施例2)
<亜鉛−鉄シアノ錯体のアルカリ耐性試験>
実施例1で得られた、亜鉛−鉄シアノ錯体(P1)をpH=8.7に制御した液に浸漬し、経時変化を確認した。pHの制御は、トリス塩酸緩衝溶液を使用した。28日後も、液への溶解などは見られなかった。
一方、同条件において、国際公開第2008/081923号の実施例1に記載の試料1−4の製造法と同様の手法を用い、鉄−鉄シアノ錯体(プルシアンブルー粉末)(P3)を合成した。このP3を同様にpH=8.7に制御した液に浸漬し、経時変化を確認したところ、1日以内に20%以上の溶解が見られた。
(実施例3)
<x=0.67、A=Na、p=0.67の亜鉛−鉄シアノ錯体の合成>
亜鉛−鉄シアノ錯体ナノ粒子を以下の通りに調製した。塩化亜鉛21.8gを水300mLに溶解した溶液に塩酸を少量加えpHを1.9に調節した水溶液と、フェロシアン化ナトリウム38.8gを水300mLに溶解した溶液を一気に混合し、3分間攪拌した。析出した亜鉛−鉄プルシアンブルー錯体様錯体の沈殿物を遠心分離で取り出し、これを水で5回洗浄した。さらに、11.62gのフェロシアン化ナトリウムを200mLに溶解させた液に、上記沈殿物を添加し、ホモジナイザーで3分間攪拌後、5000rpm10分間遠心分離し、真空乾燥することにより、白色粉末P2を得た。粉末P2の結晶構造をX線回折装置で解析したところ、データベース中のZn[Fe(CN)6]0.67にピーク位置が一致した。また、P2におけるナトリウムの含有量は原子数比で亜鉛の67%であった。
P2の電子顕微鏡による観察結果を図1に示す。粒径は100〜200nmであった。
(実施例4)
<亜鉛−鉄シアノ錯体のセシウム吸着試験(共存イオン効果)>
実施例3で得られたP2を使用し、セシウム水溶液からの吸着試験を行った。セシウム溶解水として、純水10mLに硝酸セシウムを添加したもの(W1)と、さらに共存イオンとしてナトリウムイオン濃度が7ppm、カリウムイオン濃度が1ppmとなるよう、硝酸ナトリウム及び硝酸セシウムを添加したセシウム溶解水(W2)を準備した。
W1及びW2の10mLに、粉末P2を10mg添加し、120分間600rpmの速度でしんとうした後に、溶解水中のセシウム濃度をICP−MSで測定した。結果は、W1の場合が、初期濃度62ppbが、しんとう後は0.81ppbであり、即ち98.7%のセシウムの吸着が確認できた。この場合、分配係数は約75000(mL/g)となる。
ここで分配係数とは、(吸着後の吸着材中のセシウム濃度)/(吸着後の溶解水中のセシウム濃度)=(溶解水中の初期セシウム濃度−溶解水中の吸着後セシウム濃度)/溶解水中の吸着後セシウム濃度×溶解水量(mL)/吸着材重量(g)である。即ち、分配係数が高いほど、吸着材中のセシウム濃度が溶解水中のセシウム濃度に比較して高いことを示しており、即ち吸着性能の高さを表すものである。
W2の場合は初期濃度92ppbが、しんとう後は0.89ppbであった。即ち99.0%のセシウム吸着が確認できた。この場合、分配係数は約126000であった。
このように、共存イオンが存在しても、セシウム吸着能の低下は見られなかった。
(実施例5)
<亜鉛−鉄シアノ錯体のセシウム吸着試験(pH依存性)>
実施例4と同様の吸着実験を、pHを制御した上で実施した。セシウム溶解水の準備は同様として、さらに酸性領域は硝酸水溶液を、アルカリ性領域はトリス塩酸緩衝溶液を使用することでpHを制御したセシウム溶解水を準備した。このセシウム溶解水の初期セシウム濃度は100ppbとし、10mLのセシウム溶解水に10mgの吸着材(P1及びP2)を添加したうえで、温度25℃、しんとう速度600rpmの条件で100分間しんとうした。この場合の分配係数(mL/g)を図2に示す。分配係数はP1、P2いずれの場合も10000〜100000の値をとり、アルカリ性領域においても吸着性能が劣るということは無かった。
(実施例6)
<カリウムを含有する亜鉛−鉄シアノ錯体の組成制御>
亜鉛−鉄シアノ錯体を下記の手順で合成した。塩化亜鉛68.2gを水1000gに溶解させたもの(溶液イ)とフェロシアン化カリウム三水和物106gを水1000gに溶解させたもの(溶液ロ)を作成し、次にそれらを条件(a)溶液イ:溶液ロ=3:4、及び条件(b)溶液イ:溶液ロ=3:2、の割合で連続的に混合した。混合後の液を遠心分離により固液分離を行い、水により4回洗浄を行った。その後真空乾燥を行うことにより、白色粉末P4(条件(a))及びP5(条件(b))を得た。
X線回折装置で評価したところ、P4及びP5が、それぞれデータベース中のZn[Fe(CN)6]0.67及びZn[Fe(CN)6]0.5のピーク位置と一致した。また、P4におけるカリウムの含有量は原子数比で亜鉛の67%であった。
(実施例7)
<カリウムを含有する亜鉛−鉄シアノ錯体のアルカリ性溶液からのCs吸着率>
実施例4,5と同様のCs吸着試験を水酸化ナトリウム溶液を用いて行った。超純水に水酸化ナトリウムを溶解させ、セシウム濃度が1ppmになるように調整した。セシウム溶液10mLに亜鉛・鉄シアノ錯体(P4及びP5)10mgを混合したうえで、温度25℃、しんとう速度600rpmの条件で100分しんとうした。
また、比較として、鉄−鉄シアノ錯体(プルシアンブルー)を、以下のようにして製造した。
フェロシアン化ナトリウム・10水和物を水に溶解した水溶液(濃度:0.24g/mL)[反応液1]と、硝酸鉄・9水和物を水に溶解した水溶液(濃度:0.54g/mL)[反応液2]を準備し、撹拌部を有する装置の流路内に、反応液1及び反応液2を、それぞれ3.33L/min及び1.67L/minの速度で導入して分散液を得、得られた分散液を、材料温度が70℃になるように調整して、スプレードライヤで乾燥、造粒した。
得られた鉄−鉄シアノ錯体(P6)を用い、同様の試験を行った。
試験の結果、得られた分配係数(mL/g)を図3に示す。
図3に示すように、P4とP5は、分配係数(mL/g)が10,000〜100,000と組成によって異なるものの、どちらもpH8〜12において吸着率が劣ることは無かった。一方、鉄−鉄シアノ錯体(P6)は、pH10よりアルカリ側において、吸着特性が下がった。また、P2に比べ、P4の方が分配係数が高いことから、Aとしてカリウムを用いることで吸着特性が向上することがわかる。

Claims (5)

  1. 放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰と接触した結果生じた、アルカリ性の放射性セシウム溶解水から、放射性セシウムを除去するための吸着材であって、主たる組成が、一般式
    0.67 Zn[Fe(CN)6] 0,67
    (式中、Aはカリウム、リチウム、ナトリウム、ルビジウムまたはNH ある。)
    で示される亜鉛−鉄シアノ錯体からなるナノ粒子を有効成分とするセシウム吸着材。
  2. 前記式中のAが、カリウムである請求項1に記載のセシウム吸着材。
  3. 前記アルカリ性の放射性セシウム溶解水のpHが8〜12である、請求項1に記載のセシウム吸着材。
  4. 請求項1又は2に記載のセシウム吸着材と有機材料とを複合化させたことを特徴とするセシウム吸着材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のセシウム吸着材を用いて、放射性セシウムが付着した汚染物を焼却した際に排出される焼却灰と接触した結果生じた、アルカリ性の放射性セシウム溶解水から、放射性セシウムを除去する方法。
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