JP6531889B2 - 放射性セシウム吸着カートリッジ及び放射性セシウムのモニタリング装置 - Google Patents

放射性セシウム吸着カートリッジ及び放射性セシウムのモニタリング装置 Download PDF

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Description

本発明は、放射性セシウム吸着カートリッジ及び放射性セシウムのモニタリング装置に関する。
例えば134Cs及び137Csなどの放射性物質を吸着可能な放射性物質吸着剤として、例えば、プルシアンブルーなどの鉄シアノ錯体がある。この放射性物質吸着剤は、例えば大気中の気体、及び、例えば、海水、河川、湖沼、ため池、水路または湧き水などに存在する水などの液体といった環境中、並びに、土砂及び焼却灰などの懸濁液中に含まれている放射性物質を除染するため、または、環境中及び懸濁液中から採取したサンプル液に含まれている放射性物質を濃縮し、濃縮した放射性物質の濃度及び核種を測定する(モニタリングする)ために利用されている。
そして、放射性物質を吸着した鉄シアノ錯体を環境中及び懸濁液中から回収し易くするために、例えば特許文献1に開示されているように、不織布などの多孔質基材にバインダによって鉄シアノ錯体粒子を担持した放射性物質吸着材が検討されている。なお、特許文献1は、多孔質基材に鉄シアノ錯体粒子を担持するために好適なバインダとして、塩化ビニル成分を含むバインダを開示している。
特開2013−53389号公報
本発明者らは特許文献1を参照し、バインダによって多孔質基材に鉄シアノ錯体粒子が担持されてなる放射性物質吸着材について検討した。しかし、検討した放射性物質吸着材には、鉄シアノ錯体による放射性物質の吸着性能が低下するものがあり、このような放射性物質吸着材では、環境中及び懸濁液中から放射性物質を十分に除染できないことがあった。また、検討した放射性物質吸着材には、鉄シアノ錯体粒子が脱落し易いものがあり、このような放射性物質吸着材では、環境中及び懸濁液中に使用済みの鉄シアノ錯体が残留して十分に回収できないことがあった。
このように、環境中及び懸濁液中から放射性物質を吸着した鉄シアノ錯体を十分に回収できないことは、環境中及び懸濁液中に含まれる放射性物質を十分に除染できないことを意味する。また、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性物質のモニタリングに要する時間を増大させる原因にもなっていた。
そのため、環境中及び懸濁液中に含まれる放射性物質の除染効率を向上でき、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性物質のモニタリングに要する時間を短縮できる、放射性物質吸着材、放射性物質吸着カートリッジ及び放射性物質のモニタリング装置が求められている。
本発明の一側面に係る放射性セシウム吸着材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されている多孔質基材を備える。
本発明の別の側面に係る放射性セシウム吸着カートリッジは、上記の放射性セシウム吸着材を備える。
本発明のさらに別の側面に係る放射性セシウムのモニタリング装置は、上記のカートリッジを備える。
本発明者らは、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって多孔質基材に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されている放射性セシウム吸着材では、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が脱落し難いことを見出した。そのため、上記の放射性セシウム吸着材、放射性セシウム吸着カートリッジ及び放射性セシウムのモニタリング装置によって、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性セシウムの除染効率を向上でき、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性セシウムのモニタリングに要する時間を短縮できる。
本発明によれば、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性セシウムの除染効率を向上でき、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性セシウムのモニタリングに要する時間を短縮できる。
本実施形態に係る放射性物質吸着材の構成を概略的に示す斜視図である。 図1の放射性物質吸着材を備える放射性物質吸着カートリッジの構成を概略的に示す斜視図である。 図2の収容部の構成を概略的に示す斜視図である。 本実施形態に係るモニタリング装置を概略的に示す図である。 図4のモニタリング装置の変形例を概略的に示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
図1は、本実施形態に係る放射性物質吸着材の構成を概略的に示す斜視図である。図1に示されるように、放射性物質吸着材3は、放射性物質を吸着するためのフィルタであり、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されている多孔質基材31を備える。本実施形態では、ロールフィルタ装置用のロールフィルタとして使用される放射性物質吸着材3が一例として挙げられているので、放射性物質吸着材3は、捲回するように加工された形状を呈している。
なお、放射性物質吸着材3の形状は、放射性物質吸着材3の使用に適した外形となるように適宜調整され得るものであり、限定されるものではない。放射性物質吸着材3は平板状のシートとして使用されることもできる。また、放射性物質吸着材3の形状は、例えば、丸形形状、長円形形状、正方形形状などの長方形形状などに打ち抜きまたは切抜きを施して加工された形状でもよい。また、放射性物質吸着材3の形状は、例えば、プリーツ折り加工された形状でもよく、放射性物質吸着材3の敷設対象表面の形状に沿うように加工された形状でもよい。
多孔質基材31は、主として放射性物質吸着材3の骨格を成す役割を担う。多孔質基材31の種類は適宜選択される。多孔質基材31としては、例えば、不織布、織物及び編物などの布帛と、多孔性フィルム及び多孔性発泡体などの素材単体と、単一の素材を複数積層したものと、複数種類の素材を積層したものとが使用され得る。
多孔質基材31を構成する素材は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、炭化水素の一部をフッ素あるいは塩素といったハロゲンまたはシアノ基で置換した構造のポリオレフィン系樹脂ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンとを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマーを用いて構成され得る。
なお、これらの有機ポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでもよい。また、有機ポリマーは、ブロック共重合体またはランダム共重合体でもよい。また、有機ポリマーの立体構造及び結晶性の有無がいかなるものでもよく、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機ポリマーを混ぜ合わせたものが用いられてもよい。特に、耐候性に優れ使用中に分解し難いことで亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が脱落し難い放射性物質吸着材3を提供し易いことから、ポリオレフィン系樹脂から多孔質基材31が構成されているのが好ましく、ポリプロピレンから多孔質基材31が構成されているのがより好ましい。
布帛の構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流とを平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009−287138号公報に開示の方法)など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法などの公知の方法により得ることができる。
布帛を構成する繊維は、一種類の有機ポリマーから構成されてなるものでも、複数種類の有機ポリマーから構成されてなるものでもよい。複数種類の有機ポリマーから構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であってもよい。
布帛は構成繊維として接着繊維を含んでいてもよい。接着繊維を含むことで、布帛の強度を向上することができる。接着繊維の種類は適宜選択されるが、例えば、芯鞘型接着繊維、サイドバイサイド型接着繊維、または、全溶融型接着繊維が採用され得る。
また、布帛は、横断面の形状が円形の繊維及び楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を構成繊維として含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、例えば、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、またはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維が挙げられる。
なお、布帛が織物または編物である場合、上述のようにして調製された繊維を、織るまたは編むことで調製される。布帛が不織布である場合、不織布として、例えば、カード装置またはエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせて不織布の態様とする乾式不織布、繊維を液体に分散させシート状に抄き不織布の態様とする湿式不織布、直接紡糸法を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集してなる不織布などが挙げられる。直接紡糸法とは、メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009−287138号公報に開示の方法)などである。
布帛を構成する繊維同士の絡合及び一体化の少なくともいずれかを行う方法として、例えば、ニードルもしくは水流によって絡合する方法、繊維同士をバインダで一体化する方法、または、熱可塑性樹脂を備える繊維を含んでいる場合には、加熱処理によって熱可塑性樹脂を溶融して、繊維同士を一体化する方法が挙げられる。なお、加熱処理する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して熱可塑性樹脂繊維を溶融させる方法などが用いられ得る。
布帛を構成する繊維の繊度が細いほど、放射性物質の吸着性能に優れる放射性物質吸着材を提供できる傾向がある。そのため、布帛を構成する繊維の繊度は、例えば、50デシテックス以下であるのが好ましく、30デシテックス以下であるのがより好ましい。また、布帛を構成する繊維の繊度の下限値は適宜調整されるが、0.1デシテックス以上であるのが現実的である。
また、布帛を構成する繊維の繊維長も特に限定されないが、0.5〜150mmであってもよく、繊維の製造方法によっては連続繊維であってもよい。なお、布帛は繊度及び繊維長の少なくともいずれかの点で異なる繊維を2種類以上含んでもよい。
なお、多孔性フィルム及び通液性を有する多孔性発泡体の調製方法は適宜選択されるものであり限定されるものではない。多孔性フィルム及び多孔性発泡体は、例えば、溶融状態の有機樹脂を型に流し込み成型し、発泡処理するなど、公知の方法で調製され得る。
多孔質基材31の諸構成(例えば、厚さ、目付及び見掛密度など)は、放射性物質の吸着性能に優れ、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が脱落し難い放射性物質吸着材を提供できるように、適宜調整される。
多孔質基材31の目付は、30〜3000g/mであるのが好ましく、50〜1000g/mであるのがより好ましい。多孔質基材31の目付が30g/m未満であると多孔質基材31の強度が低くなり、取り扱い時に破断しやすくなる傾向がある。多孔質基材31の目付が3000g/mを超えると重量が大きくなり取り扱い性が低下し、また、多孔質基材31の厚さが厚くなりやすく所望厚さにするのが困難になる傾向がある。なお、「目付」は、主面における1mあたりの質量をいい、主面とは面積が広い部分の面をいう。
また、多孔質基材31の厚さは0.1〜100mmであるのが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。多孔質基材31の厚さが0.1mm未満であると多孔質基材31の見掛密度が高くなりすぎ、放射性物質との接触面積の低下が起こりやすくなる傾向がある。多孔質基材31の厚さが100mmを超えると多孔質基材31の密度が低くなりすぎ、多孔質基材31の強度が低下したり、取り扱い性が低下する傾向がある。なお、「厚さ」は、0.5g/cm荷重下で測定した値をいう。
更に、多孔質基材31の見掛密度は0.005〜0.5g/cmであるのが好ましく、0.007〜0.04g/cmがより好ましい。多孔質基材31の見掛密度が0.005g/cm未満であると多孔質基材31の強度が低下したり、取り扱い性が低下する傾向がある。多孔質基材31の見掛密度が0.5g/cmを超えると放射性物質との接触面積の低下が起こりやすくなる傾向がある。
亜鉛−鉄シアノ錯体は、放射性物質を吸着するための放射性物質吸着剤としての役割を担う。亜鉛−鉄シアノ錯体は、一般式、
Zn[Fe(CN)
(式中、Aは陽イオンに由来する原子であり、pは0〜0.8であり、xは、0.3〜0.7である)
で表される錯体化合物であり、放射性物質を吸着する能力があればその結晶構造に制限はなく、立方晶、三方晶、正方晶などであってもよい。
また、Fe(CN)はヘキサシアノ鉄イオンであり、その一部が水または水酸化物イオンなど置換されていてもよく、配位数(この場合6)の一部が2〜8に変更されていてもよい。また、Aは、例えば、カリウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、アンモニウムイオンなどのアルカリイオンであり、水を結晶中に含んでいてもよい。特に、Aとしては、ナトリウムイオンが好ましく、カリウムイオンがより好ましい。さらには、分散性の制御などの目的のために、配位子などが亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の表面に存在していてもよい。なお、塩化物(ACl)、硫酸化物(ASO)、硝酸化物(ANO)などのように、他の陰イオンの対イオンとして陽イオンAを過剰に含む場合には、他の陰イオンとの対イオンとして含有されている量についてはpに含めないものとする。
亜鉛−鉄シアノ錯体としては、例えば、特開2012−72015号公報に記載の粒子が使用され得る。亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の一次平均粒径は1000nm以下であるのが好ましく、500nm以下であるのがより好ましく、300nm以下であるのが特に好ましい。
なお、一次粒径とは一次粒子の直径をいい、直径とは粒子の円相当直径(電子顕微鏡観察により得られた超微粒子の画像から、各粒子の投影面積に相当する円の直径として算出された値)をいう。平均粒子径については、特に断らない限り、少なくとも30個の粒子の粒子径を上記のようにして測定した値の算術平均値をいう。前記測定を行うことが困難である場合には、粒子のX線回折(XRD)測定から、そのシグナルの半値幅より平均粒子径が算出され、または、動的光散乱計測から得られた値から平均粒子径が算出される。また、配位子などが粒子表面に存在している場合もあるが、その場合も一次粒径は、配位子を除いた粒径を指すものとする。
亜鉛−鉄シアノ錯体粒子として二次粒子に造粒された粒子が用いられてもよい。この場合、10μm〜10mmの平均粒子径を有する二次粒子が用いられてもよく、20μm〜5mmの平均粒子径を有する二次粒子が用いられてもよい。
亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の形状は、例えば、球状(略球状または真球状)、繊維状、針状、平板状、多角形立方体状、羽毛状などから適宜選択され得る。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、多孔質基材31と亜鉛−鉄シアノ錯体粒子とを接着するバインダの役割を担い、多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持する役割を担う。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の種類は、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の脱落が発生し難い放射性物質吸着材3を提供可能なように適宜選択される。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、エチレン−酢酸ビニルの二元共重合体樹脂以外にも三元共重合体樹脂を含む概念である。三元共重合体樹脂として、例えば、エチレン−酢酸ビニル−バーサチック酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体樹脂などが用いられ得る。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の存在によって多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されていればよい。この担持は、多孔質基材31の表面に粒子状または被膜状に存在するバインダであって、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含んだバインダによって成されている態様であってもよく、多孔質基材31を構成する成分中に含まれているエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって成されている態様であってもよい。
なお、バインダ中及び多孔質基材31を構成する成分中には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂以外の樹脂(以降、「非エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂」と称することがある)が存在していてもよい。非エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の種類は適宜選択される。非エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、多孔質基材31を構成する素材として挙げた有機ポリマーが用いられ得る。具体例として、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル−エチレン系多元共重合樹脂などを挙げることができる。
バインダに含まれているエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の質量割合は、脱落が発生し難い放射性物質吸着材3を提供可能な程度に適宜調整される。エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂:非エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、例えば99質量%:1質量%〜10質量%:90質量%であってもよく、90質量%:10質量%〜50質量%:50質量%であってもよい。特に、多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持する接着成分がエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のみからなるバインダは、脱落が最も発生し難い放射性物質吸着材3を提供でき好ましい。
また、バインダは、例えば、架橋剤(例えば、メラミン系樹脂、オキサゾリン系樹脂、イソシアネート系樹脂など)、界面活性剤、撥油剤、浸透剤、難燃剤などの機能性成分を含んでいてもよい。
放射性物質吸着材3の目付は特に限定されない。放射性物質吸着材3の目付は、10〜3000g/mであってもよく、20〜1000g/mであってもよい。また、放射性物質吸着材3の厚さは、適宜調整されるものであり、限定されない。放射性物質吸着材3の厚さは、例えば、0.01〜100mmであってもよく、0.1〜50mmであってもよい。
放射性物質吸着材3に担持されている亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の質量は適宜調整されるが、放射性物質吸着材3が発揮する放射性物質の吸着性能が優れるように、放射性物質吸着材1mあたり1g以上の担持質量であるのが好ましい。亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の担持質量が多い方が放射性物質の吸着性能が優れるものとなるので、放射性物質吸着材1mあたり3g以上の担持質量であるのがより好ましく、4g以上であるのが最も好ましい。他方、放射性物質吸着材3に担持されている亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の質量に上限はない。しかし、担持されている亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の質量が重過ぎると、放射性物質吸着材3から亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が剥落するおそれがあることから、放射性物質吸着材1mあたり20g以下となるように、放射性物質吸着材3は亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持するのが好ましい。
放射性物質吸着材3に含まれている、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂と亜鉛−鉄シアノ錯体粒子との質量比率は、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が脱落し難いように適宜調整されるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂の質量と亜鉛−鉄シアノ錯体粒子の質量との比率は80:20〜99:1であるのが好ましく、80:20〜97:3であるのがより好ましく、80:20〜95:5であるのが更に好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持する方法は、適宜選択される。この担持方法として、例えば、
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含むバインダの分散液または溶液に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を混合して調製した混合液中に、多孔質基材31を浸漬した後、自然乾燥または加熱乾燥して溶媒または分散媒を除去する方法、
(2)多孔質基材31に上記混合液を塗布または散布した後、自然乾燥または加熱乾燥して溶媒または分散媒を除去する方法、
(3)多孔質基材31にバインダと亜鉛−鉄シアノ錯体粒子とを付与し、加熱してバインダを融解させた後、冷却する方法、
(4)多孔質基材31へ融解したバインダを付与し、融解したバインダ上に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を付着させた後、冷却する方法、
(5)構成成分にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を含んでいる多孔質基材31に、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を付与し、加熱してエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を融解させた後、冷却する方法、
などが挙げられる。
なお、加熱する方法は適宜選択され得る。加熱する方法としては、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して熱可塑性樹脂繊維を溶融させる方法などが用いられ得る。なお、上述の方法によって加熱乾燥を行いエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を軟化または融解させることで、多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持できる。
特に、多孔質基材31が通気性または通液性を有する場合、(1)の混合液中に多孔質基材31を浸漬した後、自然乾燥または加熱乾燥して溶媒または分散媒を除去する方法を採用して、多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持するのが好ましい。この場合、多孔質基材31の内部においても亜鉛−鉄シアノ錯体粒子を担持でき、放射性物質の吸着が効率良く行うことができる。
なお、加熱乾燥する方法は特に限定されるものではないが、多孔質基材31が通気性または通液性を有する場合、その構造を維持して亜鉛−鉄シアノ錯体粒子と放射性物質との接触機会が多くなるように、熱風乾燥機により乾燥するのが好ましい。
以上のようにして調製された放射性物質吸着材3は、そのままの状態で使用されることもできる。また、強度及び濾過性能を向上するなど取り扱い及び性能が向上するように、放射性物質吸着材3は、別途用意された布帛、フィルムまたは発泡体などの支持体を積層して補強されてもよい。
次に、放射性物質吸着材を用いた放射性物質吸着カートリッジについて説明する。図2は、本実施形態に係る放射性物質吸着カートリッジの構成を概略的に示す斜視図である。図2に示されるように、放射性物質吸着カートリッジ1は、放射性物質のモニタリング装置用の放射性物質吸着カートリッジであって、収容部2と、放射性物質吸着材3と、を備えている。
図3は、収容部2の構成を概略的に示す斜視図である。収容部2は、放射性物質吸着材3を収容可能な容器である。本実施形態では、収容部2は、ロールフィルタを収容するフレームであり、筒状部材21と、第1エンドプレート22と、第2エンドプレート23と、を備えている。筒状部材21は、中空の筒状多孔部材であって、一端部21aと、他端部21bと、外周面21cと、内周面21dと、を有する。筒状部材21の一端部21aは軸X方向の一方の端部であり、軸Xを中心とした円形状の開口を有する。筒状部材21の他端部21bは軸X方向の他方の端部であり、軸Xを中心とした円形状の開口を有する。また、一端部21aの開口から他端部21bの開口まで軸Xに沿って中空部分が延びている。
筒状部材21には、外周面21cから内周面21dまで貫通している複数の通水孔21eが設けられている。通水孔21eの形状及び大きさ、並びに、通水孔21eの数及び配置は、いずれも適宜調整されるが、例えば、通水孔21eは、周方向に長尺の楕円形を呈しており、軸X方向に沿って一定の間隔で配列され、周方向に沿って一定の間隔で配列されている形状とすることができる。筒状部材21は、布帛を構成可能な有機ポリマー、金属、木材及びシリコーン樹脂などから構成されている。
第1エンドプレート22は、筒状部材21の軸Xを軸とした円板状を呈し、軸Xを中心とした円形状の開口部22aを有する。第1エンドプレート22は、筒状部材21の一端部21aに設けられている。この筒状部材21と第1エンドプレート22との接合は、例えば、筒状部材21と第1エンドプレート22との接触部分を溶着させることで接着する、または、ホットメルト樹脂を介して接着することにより行われる。また、筒状部材21の一端部21aにネジ山を設け、第1エンドプレート22の筒状部材21との接合部分にネジ受けを設けておき、ネジ嵌めすることによって、筒状部材21と第1エンドプレート22とを接合してもよい。筒状部材21の一端部21aにネジ受けを設け、第1エンドプレート22にネジ山を設けてもよい。また、筒状部材21の一端部21aに嵌合部を設け、第1エンドプレート22の筒状部材21との接合部分に嵌合部を設けておき、この嵌合部同士を嵌合させることによって、筒状部材21と第1エンドプレート22とを接合してもよい。この嵌合部は、例えば凹部または凸部である。また、第1エンドプレート22は、布帛を構成可能な有機ポリマー、金属、木材及びシリコーン樹脂などから構成されている。
第2エンドプレート23は、筒状部材21の軸Xを軸とした円板状を呈している。なお、第2エンドプレート23は、第1エンドプレート22と同様に、軸Xを中心とした円形状の開口部(図示せず)を有してもよい。第2エンドプレート23は、筒状部材21の他端部21bに設けられている。筒状部材21と第2エンドプレート23との接合は、筒状部材21と第1エンドプレート22との接合と同様にして行われる。また、第2エンドプレート23は、布帛を構成可能な有機ポリマー、金属、木材及びシリコーン樹脂などから構成されている。
収容部2では、第1エンドプレート22、筒状部材21及び第2エンドプレート23は、その順に軸X方向に同軸に配列されている。また、第1エンドプレート22の開口部22aと、筒状部材21の中空部分とが同軸に連なっている。また、第2エンドプレート23が開口部を有する場合には、第1エンドプレート22の開口部22aと、筒状部材21の中空部分と、第2エンドプレート23の開口部とが同軸に連なっている。
図2の放射性物質吸着カートリッジ1では、放射性物質吸着材3の軸X方向の長さは適宜調整されるが、環境水及びサンプル液が放射性物質吸着材3の一端部3a及び他端部3bから内周面3dに通水するのを防ぐために、放射性物質吸着材3の一端部3aは第1エンドプレート22に接触し、放射性物質吸着材3の他端部3bは第2エンドプレート23に接触可能な長さとしてもよい。
なお、収容部2は、放射性物質吸着材3を収容可能な各種フレーム及び容器であってもよく、例えば、シリンジ容器、マリネリ容器またはU8容器を含む管状容器、額縁状のフレーム、デプスフィルタ用のフレームなどであってもよい。シリンジ容器は、両端部に流入口あるいは流出口を設けた、一対のコマ状プラスチック成形物の間にディスク状の放射性物質吸着材を挟み収めることのできる容器であってもよい。また、管状容器は、片端部または両端部に流入口あるいは流出口を設けた管の内部に、ディスク状の放射性物質吸着材の積層体、または、巻回した巻物状の放射性物質吸着材3を収容可能な容器であってもよい。
収容部2がデプスフィルタ用のフレームである場合、収容される放射性物質吸着材3の態様は、コア材の周囲に放射性物質吸着材3を多層巻回したデプス型、及び、コア材の周囲にジグザグ状にプリーツ加工した放射性物質吸着材3を巻回したプリーツ型であってもよい。また、デプスフィルタ用のフレームに収容した放射性物質吸着材3が使用中に変形するのを防止するために、巻回した放射性物質吸着材3の外部主面を包囲するように、コア材の端部にエンドプレート及び複数の多孔を有するカバー材の少なくともいずれかを設けてもよい。なお、エンドプレート及びカバー材は、コア材と同様の成分から構成することができ、コア材、エンドプレート及びカバー材は分別可能であっても、各部材が接着一体化した状態であってもよい。
なお、収容部2がデプスフィルタ用のフレームである場合、放射性物質吸着カートリッジ1は、一般的に濾過対象物が放射性物質吸着材3の外部主面側からコア材側に放射性物質吸着材3を通過する態様となるように使用されてもよく、濾過対象物がコア材側から放射性物質吸着材の外部主面側に放射性物質吸着材3を通過する態様となるように使用されてもよい。濾過対象物がコア材側から放射性物質吸着材の外部主面側に放射性物質吸着材3を通過する態様で放射性物質吸着カートリッジ1が使用されることにより、放射性物質吸着材3に捕集された放射性物質の付着した砂などの非溶解分(以降、「SS分」と称する)が、放射性物質吸着材3から脱落した場合でも放射性物質吸着カートリッジ1の外部に出るのを防止できる。
次に、放射性物質吸着カートリッジを用いたモニタリング装置について説明する。図4は、本実施形態に係るモニタリング装置を概略的に示す図である。
図4に示されるように、モニタリング装置10は、環境中に含まれる水(例えば、海水、河川、湖沼、ため池、水路または湧き水などに存在する水など)または懸濁液である環境水W1中の放射性物質を、放射性物質吸着カートリッジ1が備える放射性物質吸着材3に吸着させて濃縮するための装置であり、環境水W1中に含まれる放射性物質の除染及びモニタリングを可能とする。モニタリング装置10は、放射性物質吸着カートリッジ1と、流量計11と、ポンプ12と、通液管13と、を備えている。
流量計11は、モニタリング装置10に通水している環境水の量を計測する装置である。ポンプ12は、環境水W1をモニタリング装置10に通水するための装置である。通液管13は、環境水W1を通水する管であって、通液管13a、通液管13b、通液管13c及び通液管13dを含む。通液管13aは環境水W1と放射性物質吸着カートリッジ1との間を連結し、通液管13bは放射性物質吸着カートリッジ1と流量計11との間を連結し、通液管13cは流量計11とポンプ12との間を連結し、通液管13dはポンプ12と環境水W1との間を連結する。
モニタリング装置10の使用方法について説明する。まず、環境水W1中に通液管13aの一端を設置する。これに代えて、通液管13aを用いることなく、環境水W1中に放射性物質吸着カートリッジ1を設置してもよい。そして、ポンプ12を作動させて環境水W1を通液管13aを介して放射性物質吸着カートリッジ1に供給し、環境水W1を放射性物質吸着カートリッジ1が備えている放射性物質吸着材3に通水させる。このとき、環境水W1中に溶解している放射性物質を放射性物質吸着材3に担持されている亜鉛−鉄シアノ錯体粒子に選択的に吸着させることにより、放射性物質吸着材3に吸着させて濃縮する。
次に、放射性物質吸着材3を通水した環境水W1を、通液管13bを介して流量計11を通過させる。さらに、流量計11を通過した環境水W1を、通液管13cを介してポンプ12を通過させる。そして、ポンプ12を通過した環境水W1を通液管13dを介してモニタリング装置10から排出する。
特定量の環境水W1をモニタリング装置10に供した後、モニタリング装置10から放射性物質吸着カートリッジ1を取り外し、使用済みの放射性物質吸着材3を回収することで、環境水W1に含まれる放射性物質の除染が行われる。
回収した放射性物質吸着材3を検出器に供することにより、環境水W1中の放射性物質をモニタリングしてもよい。その方法は適宜選択されるが、例えば、
(1)SS分及び環境水W1中に溶解している放射性物質の濃度及び核種を測定する場合には、回収した放射性物質吸着材3をそのまま検出器に供する方法、
(2)環境水W1中に溶解している放射性物質の濃度及び核種のみを測定する場合には、回収した放射性物質吸着材3を水洗浄または超音波洗浄することにより、回収した放射性物質吸着材3からSS分を除去した上で検出器に供する方法、
(3)放射性物質吸着材3の外周面に、補強材層及びプレフィルタ層の少なくともいずれかとして別途用意した布帛が設けられており、環境水W1中に溶解している放射性物質の濃度及び核種のみを測定する場合には、回収した放射性物質吸着材3から別途用意した布帛を除去することにより、回収した放射性物質吸着材3からSS分を除去した上で検出器に供する方法、
のいずれかの方法によって、放射性物質吸着材3は分析される。
また、環境水W1中に溶解している放射性物質の濃度は、放射性物質吸着材3に吸着された放射性物質における放射線の量(Bq)を、放射性物質吸着カートリッジ1に供した環境水W1の量(L)で除して算出した濃度(Bq/L)から算定され得る。
以上説明したように、放射性物質吸着材3では、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって多孔質基材31に亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されているので、亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が脱落し難いことが見出された。そのため、上記の放射性物質吸着材3、放射性物質吸着カートリッジ1及び放射性物質のモニタリング装置10によって、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性物質の除染効率を向上でき、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性物質のモニタリングに要する時間を短縮できる。
また、モニタリング装置10によって、SS分を含めた放射性物質全量と区別して、環境水W1に溶解している放射性物質のモニタリングが可能となるとともに、環境水中の放射性物質のモニタリングの簡易化及び測定時間の短縮が可能となる。例えば0.3Bq/L未満の低濃度の放射性物質(例えば、放射性セシウム)であっても、測定時間を要しない。
図5は、モニタリング装置の変形例を概略的に示す図である。図5に示されるように、モニタリング装置10Aは、タンク14をさらに備える点において、上述したモニタリング装置10と相違しており、その他の構成はモニタリング装置10と同様である。すなわち、モニタリング装置10Aでは、環境中及び懸濁液から採取したサンプル液W2をタンク14に溜めておき、サンプル液W2中の放射性物質のモニタリングを行っている間に、モニタリング装置10Aから排出されたサンプル液W2をタンク14の中に戻すことによって、タンク14中のサンプル液W2を循環通水させる。
以上のモニタリング装置10Aによっても、上述したモニタリング装置10と同様の効果が奏される。また、モニタリング装置10Aはタンク14を備えている。このため、タンク14に溜められているサンプル液W2を循環通水させてモニタリング装置10Aへ供することによって、サンプル液W2中に溶解している放射性物質をより確実に放射性物質吸着材3上で濃縮できる。このため、サンプル液W2中に溶解している放射性物質のモニタリングをより正確に行うことが可能となる。
なお、本発明に係る放射性物質吸着材、放射性物質吸着カートリッジ及び放射性物質のモニタリング装置は上記実施形態に記載したものに限定されない。例えば、モニタリング装置10,10Aは、1つの放射性物質吸着カートリッジ1を備えているが、複数の放射性物質吸着カートリッジ1を備えていてもよい。
また、モニタリング装置10,10Aは、SS分を捕捉するためのプレフィルタをさらに備えていてもよい。このフィルタは、放射性物質吸着カートリッジ1の上流側(通液管13a上)に設けられている。この場合、SS分と環境水W1及びサンプル液W2中に溶解している放射性物質とを別に捕捉することができ、SS分を除去した環境水W1及びサンプル液W2を放射性物質吸着カートリッジ1に供することが可能となる。プレフィルタは、布帛であってもよく、多孔フィルムであってもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(不織布の調製)
芯鞘型複合繊維(芯部:ポリプロピレン樹脂、鞘部:ポリエチレン樹脂、繊度:0.8dtex、繊維長:5mm)を湿式抄紙した後、熱風乾燥機で140℃にて乾燥することで鞘部を融解させ熱融着により不織布(目付:50g/m)を調製した。
(バインダ液の調製)
下記の放射性物質吸着剤(A)〜(C)とバインダ(D)〜(K)とを下記表1に示された混合比率(質量%)でそれぞれ配合し、実施例1及び比較例1〜比較例6に用いられるバインダ液を調製した。
[放射性物質吸着剤]
(A)亜鉛−鉄シアノ錯体粒子分散液(粒子径:50−200nm、関東化学製、製品名:フェロシアン化亜鉛カリウム錯塩、固形分:10質量%)
(B)紺青粉末(鉄シアノ錯体粒子、粒子径:50−100nm、大日精化製、製品名:ベレンスブルー)
(C)プルシアンブルーナノ分散液(鉄シアノ錯体粒子ナノ分散液、粒子径:10−20nm、関東化学製、製品名:プルシアンブルーナノ分散液H、固形分:10質量%)
[バインダ]
(D)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(住友化学製、製品名:スミカフレックス951HQ、固形分:55質量%)
(E)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン(住友化学製、製品名:スミカフレックス752、固形分:50質量%)
(F)アクリル樹脂エマルジョン(DIC製、製品名:ボンコート3218EF、固形分:50質量%)
(G)ポリエチレン樹脂ディスパージョン(三井化学性、製品名:ケミパールW4005、固形分:40質量%)
(H)塩化ビニル−エチレン系多元共重合体樹脂エマルジョン(住友化学製、製品名:スミカフレックス850HQ、固形分:50質量%)
(I)ポリ塩化ビニル樹脂エマルジョン(CBC製、VYCAR351、固形分:57質量%)
(J)スチレン−ブタジエン共重合体樹脂エマルジョン(日本ゼオン製、NIPOLLX421、固形分:41質量%)
(K)水
Figure 0006531889
(放射性物質吸着材の調製)
[実施例1、比較例1〜比較例5]
不織布にニップロールを用いて、調製した実施例1、比較例1〜比較例5に用いられるバインダ液を付与した後、キャンドライヤーにて130℃で乾燥することで、放射性物質吸着材(目付:86g/m、放射性物質吸着剤の担持質量:4g/m、放射性物質吸着材が含有するバインダ質量(固形分):32g/m)を調製した。
[比較例6]
不織布にニップロールを用いて、調製した比較例6に用いられるバインダ液を含浸した後、キャンドライヤーにて130〜135℃で乾燥した。その後、紺青粉末の固定化を目的として、染料固定剤(ニットーボーメディカル製、製品名:ダンフィックス723、固形分:35質量%)をスプレー法により、固形分を0.06g/m付与した後、キャンドライヤーにて130℃で乾燥することで、放射性物質吸着材(目付:86.1g/m、放射性物質吸着剤の担持質量:5g/m、放射性物質吸着材が含有するバインダ質量(固形分):31g/m)を調製した。
(カートリッジ部材の準備)
溶融したポリプロピレン樹脂を射出成形することにより、
(1)外周面から内周面まで貫通している複数の通水孔を備える筒状部材(内径21mm、外径28mm、高さ38mm)、
(2)円板状の第1プレート(外径62mm、高さ4.5mm)、
(3)中央部に開口を有する円板状の第2プレート(内径23mm、外径62mm、高さ4.5mm)、
(4)外周面から内周面まで貫通している複数の通水孔を備えるカバー部材(内径58mm、外径61mm、高さ38mm)
を得た。
(カートリッジの調製方法)
実施例1及び比較例1〜比較例6の放射性物質吸着材を長方形状(長辺:1520mm、短辺:38mm)に切り抜いた。これを筒状部材に巻いた後、カバー部材に挿入して収容し、第1プレート及び第2プレートを筒状部材及びカバー部材の両端に溶着することで、実施例1及び比較例1〜比較例6の放射性物質吸着材を備えた放射性物質吸着カートリッジをそれぞれ調製した。
(シアン溶出濃度の測定方法)
液体供給部、定量ポンプ、ハウジング、流量計及び液体排出部からなるモニタリング装置に、各放射性物質吸着カートリッジをセットした。この放射性物質のモニタリング装置を用い、137Csの濃度を5Bqに調整した水(pH=6〜7)を2.5L/minで20L通水した。通水直後の水100mlを液体排出部より採取した。採取した水を日本工業規格K010238.1.2及び38.3に準ずる試験方法にて、全シアンの濃度を定量した。なお、シアン溶出濃度が高いほど、放射性物質吸着カートリッジから脱落した放射性物質吸着剤の量が多いことを意味するものである。
(セシウム吸着率の測定方法)
各放射性物質吸着カートリッジを装着した放射性物質のモニタリング装置を用い、137Csの濃度を5Bqに調整した水(pH=6〜7)を2.5L/minで20L通水した。通水後の水20Lを全てポリタンクで回収し、均一に攪拌した後、2Lを採取した。採取した水を2Lマリネリ容器に入れ、137Cs濃度をゲルマニウム半導体検出器(セイコー・イージーアンド・ジー社製、GEM20−70)で測定した。そして、測定した137Cs濃度を用いて、下記の式によりセシウム吸着率を求めた。
セシウム吸着率(%)=(1−(通水後の137Cs濃度/通水前の137Cs濃度))×100
(酸、アルカリ下におけるセシウム吸着率の測定方法(PH依存性))
(セシウム吸着率の測定方法)の項目に記載の測定方法において、pH=3及びpH=10に調整した137Cs試験液を用いて測定を実施した。なお、実施例1及び比較例6の放射性物質吸着カートリッジのみを、本測定の対象とした。
(結果)
シアン溶出濃度及びセシウム吸着率の測定結果を表2にまとめた。なお、表2において、測定を行っていない結果には、−印を記載している。
Figure 0006531889
表2に示される結果によれば、比較例1、比較例2、比較例4及び比較例6の放射性物質吸着材では、実施例1の放射性物質吸着材と比較して、シアン溶出濃度が高く、セシウム吸着率が劣っていた。また、比較例3の放射性物質吸着材では、シアン溶出濃度が実施例1の放射性物質吸着材と同等であったものの、セシウム吸着率が劣っていた。また、比較例5の放射性物質吸着材では、セシウム吸着率が実施例1と同等であったものの、シアン溶出濃度が高かった。なお、比較例5の放射性物質吸着材において、シアン溶出濃度が高いにも関わらず、セシウム吸着率が実施例1と同等であった理由として、放射性物質吸着剤の粒子径が小さく、比表面積が高いことが考えられる。また、実施例1の放射性物質吸着材では、強酸性またはアルカリ性の試験液であってもセシウム吸着率の低下がなかったのに対し、比較例6の放射性物質吸着材では、強酸性またはアルカリ性の試験液においてセシウム吸着率がpH=6〜7の試験液よりも低下した。
以上のことから、実施例1の放射性物質吸着材は、比較例1〜比較例6の放射性物質吸着材と比較して、シアン溶出濃度が低く、セシウム吸着率に優れていることが判明した。つまり、実施例1の放射性物質吸着材では、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって、不織布に放射性物質吸着剤として亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されており、放射性物質吸着剤が脱落し難く、試験液の水素イオン濃度によらず放射性物質(放射性セシウム)の吸着効率が高いことが判明した。このように、実施例1では、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性物質(放射性セシウム)の除染効率を向上でき、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性物質(放射性セシウム)のモニタリングに要する時間を短縮できるといえる。
本発明の一態様に係る放射性セシウム吸着材、放射性セシウム吸着カートリッジ及び放射性セシウムのモニタリング装置によれば、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性セシウムの除染効率を向上でき、環境中及び懸濁液中に含まれている放射性セシウムのモニタリングに要する時間を短縮できる。
1…放射性物質吸着カートリッジ、2…収容部、3…放射性物質吸着材、10,10A…モニタリング装置、31…多孔質基材、W1…環境水、W2…サンプル液。

Claims (2)

  1. エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂によって亜鉛−鉄シアノ錯体粒子が担持されている多孔質基材を有する放射性セシウム吸着材を備える、放射性セシウム吸着カートリッジ。
  2. 請求項に記載の放射性セシウム吸着カートリッジを備える、放射性セシウムのモニタリング装置。
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