JP7340657B2 - 抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材 - Google Patents

抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材に関する。
ポリ塩化ビニルは、非常に加工性に優れ、高い耐水性、耐熱性、耐薬性を持つ上、硬軟両方の加工が可能なことから、幅広い用途を持つ熱可塑性樹脂である。ダイオキシン問題のため、生産量は減少気味ではあるが、それでもポリエチレン、ポリプロピレンなどに続く三大樹脂となっている。
近年、新たなウイルス感染が脅威となってきている。例えば、SARS(重症急性呼吸器症候群)やノロウイルス、鳥インフルエンザなどのウイルスによる感染症が流行している。また、2013年には西アフリカでエボラ出血熱が流行し、2015年までにおける世界保健機関(WHO)の発表によると、感染疑い例も含め27,550名が感染し、11,235名の死亡が報告されている。
このような背景から、ウイルスや細菌に対する不活性化機能を付与できる製品の開発が求められている。例えば、特許文献1では、ドロマイトの焼成物を練りこんだ抗菌性塩化ビニル樹脂製シートが開発されている。特許文献1では、塩化ビニル樹脂の分子鎖の切断に伴う変色に着目して、塩化ビニル樹脂ペースト用組成物に架橋剤を添加している。
特開2009-114324号公報
そこで本発明は、変色を抑制できる新規な抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材を提供することを課題とする。
ポリ塩化ビニルは汎用性が高いため、本発明者等はポリ塩化ビニルに一価の銅化合物を担持させ、抗菌・抗ウイルス性を持たせることを着想した。そして、ポリ塩化ビニルに一価の銅化合物及び可塑剤を添加して抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材を製造したところ、変色したことに気づいた。本発明者等は鋭意研究の結果、所定の可塑剤を用いることで変色が抑えられることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち第1の発明は、ポリ塩化ビニルで形成された基材と、少なくとも前記基材の表面に形成され、一価の銅化合物を含む層と、基材に含有されており、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤から選ばれる少なくとも一種である可塑剤とを有することを特徴とする抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材である。
さらに第2の発明は、第1の発明において、前記一価の銅化合物が、塩化物、酢酸化合物、硫化物、臭化物、過酸化物、酸化物、シアン化物、水酸化物、およびチオシアン酸化物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材である。
本発明によれば、変色を抑制できる抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材を提供することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材について詳述する。
まず、本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材は、主成分となるポリ塩化ビニルで形成された基材と、少なくとも基材の表面に存在する抗菌・抗ウイルス成分である一価の銅化合物と、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤から選ばれる少なくとも一種である可塑剤とから構成されている。なお、本発明において、「一価の銅化合物が基材の表面に存在する」こととは、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の表面に一価の銅化合物の少なくとも一部が露出している場合や、ポリ塩化ビニルで形成された基材の表面が一価の銅化合物を含む層で覆われている場合を含む意味である。ここで、一価の銅化合物は、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の内部や、基材(ポリ塩化ビニル)の表面に形成された層の内部に存在していてもよい。
通常、ポリ塩化ビニルには、柔軟性を付与するために可塑剤を添加している。この可塑剤の添加によって、ポリ塩化ビニルを硬質、軟質さまざまな状態にすることができる。本実施形態で用いる可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤が挙げられ、さらに具体的には、フタル酸エステル系可塑剤ではフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)が好ましく、リン酸エステル系可塑剤ではリン酸トリフェニルが好ましく、トリメリット酸系可塑剤ではトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)が好ましい。上記可塑剤を一価の銅化合物とともにポリ塩化ビニルに添加することにより、上記可塑剤以外の可塑剤を一価の銅化合物とともにポリ塩化ビニルに添加した場合と比較して、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の変色を抑制することができる。可塑剤の添加量については使用者が目的にあわせて適宜決定することができる。
次に、本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材は、抗菌・抗ウイルス性の有効成分として一価の銅化合物を含有している。一価の銅化合物は、非常に高い抗菌・抗ウイルス性があることが知られており、そのメカニズムについては明確ではないが、一価の銅化合物が空気中あるいは飛沫中の水分と接触すると、一価の銅イオンが溶出し、溶出した一価の銅イオンは細菌やウイルスと接触することで電子を放出し、その際に、発生した活性種により何らかのダメージを細菌やウイルスに与えると考えられる。一価の銅化合物としては、例えば、酢酸銅(I)、硫化銅(I)、酸化銅(I)、シアン化銅(I)、水酸化銅(I)、チオシアン酸銅(I)、ハロゲン化銅(I)が挙げられる。中でも、酸化銅(I)やハロゲン化銅(I)が好ましい。ハロゲン化銅としては、具体的には、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)が挙げられる。一価の銅化合物の形状なども特に限定されないが、例えば粉末状、ペースト状、液状、微粒子状などとすることができる。
本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材によって不活性化できるウイルスについては特に限定されず、ゲノムの種類や、エンベロープの有無等に係ることなく、様々なウイルスを挙げることができる。
例えば、ライノウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、ヘパトウイルス、アストロウイルス、サポウイルス、E型肝炎ウイルス、A型、B型又はC型インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)、麻疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、B型又はC型肝炎ウイルス、東部および西部馬脳炎ウイルス、オニョンニョンウイルス、風疹ウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、サビアウイルス、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、スナバエ熱、ハンタウイルス、シンノンブレウイルス、狂犬病ウイルス、エボラウイルス、マーブルグウイルス、コウモリ・リッサウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトコロナウイルス、SARSコロナウイルス、ヒトポルボウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、水痘・帯状発疹ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、サル痘ウイルス、牛痘ウイルス、モラシポックスウイルス、パラポックスウイルス、ジカウイルスなどを挙げることができる。
また、本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材によって不活性化できる菌についても特に限定されず、グラム陽性、陰性、好気性、嫌気性などの性質に関わらず、様々な細菌等を挙げることができる。例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、百日咳菌、腸炎菌、肺炎桿菌、緑膿菌、ビブリオ菌、サルモネラ菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌などを挙げることができる。
また、本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材には、親水性化合物が分散されて含有されていてもよい。親水性化合物を主成分であるポリ塩化ビニルに混合すると、親水性化合物が集合して生じた小ドメイン(不連続相)が、疎水性のポリ塩化ビニルに微分散し、親水性化合物及びポリ塩化ビニルは、巨視的には均一であるがミクロ的には相分離している構造となる。その結果、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の全体が親水化されるため、親水基と疎水基の両方を持つ細菌やウイルスが抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の表面で拡散して吸着しやすくなり、細菌やウイルスが一価の銅化合物と接触しやすくなるため、より高い抗菌・抗ウイルス性を発揮することができ、即効性も付与できる。
親水性化合物としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン等の水溶性合成高分子、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、アルジネート、ポリスチレンスルホネート、カルボキシメチルセルロース(CMC)、多糖、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリ-N-アルキルアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ジメチルアクリルアミド-グリシジルメタアクリレート共重合体などのアクリルアミド-アクリレート共重合体などを挙げることができる。
さらに、本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材には、一価の銅化合物の凝集防止のための分散剤を添加することが好ましい。この分散剤を添加することで、一価の銅化合物がポリ塩化ビニル中で分散しやすくなる。一価の銅化合物が凝集すると、この凝集物に対して上述の親水性化合物が接触しやすくなるため、親水性化合物との接触を抑制するためには、一価の銅化合物を分散させたほうが好ましい。一価の銅化合物が親水性化合物と接触することを抑制することにより、親水性化合物によって一価の銅化合物と細菌やウイルスとの接触が阻害されることを抑制でき、抗菌・抗ウイルス効果が低下することを抑制できる。
分散剤としては、有機材料、無機材料のどちらでも良い。中でも金属石鹸を含んでいることが好ましい。金属石鹸は微粒子であり、無機物に対する分散性に優れ、かつ樹脂に対して充分な平滑性を付与することができる。金属石鹸としては、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、オクチル酸、ラウリン酸等の脂肪酸と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛等の金属が使用される。
本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材は、主成分のポリ塩化ビニルが熱可塑性樹脂であるため、溶融して成型品にできるほか、シート状、フィルム状、繊維状、布状、メッシュ状(網状構造)、ハニカム状、不織布状などの形態に形成でき、使用目的に合った様々な形態(形状、大きさ等)に形成することが可能である。シート状、フィルム状として製造する場合には、Tダイ法、インフレーション法などを採用することができる。また、繊維状(フィラメント)として製造する場合には、溶融紡糸法などを採用することができる。また、不織布状として製造する場合には、スパンボンド法などの既存の製造方法を採用することができる。
また、本実施形態の抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材には、添加剤として、乾燥剤、硬化剤、皮張り防止剤、平坦化剤、たれ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、潤滑剤、界面活性剤、増粘剤、粘性調整剤、安定剤、乾燥調整剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、他の抗ウイルス組成物、抗菌組成物、防黴組成物、抗アレルゲン組成物、触媒、反射防止材料、遮熱特性を持つ材料などと混合して使用してもよい。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材について詳述する。なお、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
まず、本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材は、主成分となるポリ塩化ビニルで形成された層(ポリ塩化ビニル層という)の表面(外面)に、抗菌・抗ウイルス成分である一価の銅化合物を含む層(抗菌・抗ウイルス層という)を積層した積層体から構成されていることを特徴とする。
本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材において、ポリ塩化ビニル層には、一価の銅化合物と接触しても変色しない可塑剤が添加される。この可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤が挙げられる。本実施形態では、ポリ塩化ビニル層及び抗菌・抗ウイルス層が積層されているため、ポリ塩化ビニル層及び抗菌・抗ウイルス層の接触面において、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び一価の銅化合物が存在する。このような構成において、上記可塑剤を用いた場合には、上記可塑剤以外の可塑剤を用いた場合と比較して、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の変色を抑制することができる。可塑剤の添加量についても上述した通り、使用者が目的にあわせて適宜決定することができる。また、ポリ塩化ビニル層の形状についても、様々な形状にすることができる。
本実施形態である抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材において、抗菌・抗ウイルス層は、まずポリ塩化ビニル層を所定の形状に形成した後、このポリ塩化ビニル層の表面に一価の銅化合物を含む溶液をコーティングしたり浸漬したりすることなどにより形成することができる。
抗菌・抗ウイルス層は、有効成分である一価の銅化合物と、バインダー成分である樹脂とから構成されている。バインダー成分である樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線などの照射によって硬化する放射線硬化型樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンや、塩素化ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂や、ポリスチレン樹脂や、ポリ酢酸ビニル樹脂や、ポリウレタン樹脂や、ポリエステル樹脂や、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルを主鎖とする共重合体や、アクリル・スチレン樹脂や、フッ素系樹脂や、硝化綿、エチルセルロースなどの繊維素系樹脂や、シェラック、コーパルなどの天然樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂や、エポキシ樹脂や、メラミン樹脂や、尿素樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂や、アクリルシリコン樹脂や、アルキッド樹脂や、ポリウレタン樹脂や、熱硬化性アクリル樹脂や、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。さらに、電子線や紫外線などの放射線硬化型樹脂としては、モノマー、オリゴマー、あるいはポリマーなどであり、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高めることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。また、必要に応じて光重合開始剤が添加されていてもよく、光重合開始剤としては、例えば、アントラキノン、アセトフェノン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、エチルアントラキノン、カルバゾール、キサントン、4-クロロベンゾフェノン、o-ベンゾイルメチルベンゾエート、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2,2-ジメトキシ2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、メチルベンジルホルメート、フロオレノン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、トリフェニルアミン、ミヒラーケトン、3-メチルアセトフェノン、2-メチル-1-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができ、使用者が適宜、選択することができる。
また、本実施形態の抗菌・抗ウイルス層には、第1実施形態と同様に、親水性化合物を添加してもよい。この場合も第1実施形態と同様、バインダー成分である樹脂に親水性化合物を添加することで、バインダー成分である樹脂全体が親水化され、親水基と疎水基の両方を持つ細菌やウイルスが抗菌・抗ウイルス層の表面で拡散して吸着しやすくなり、細菌やウイルスが一価の銅化合物と接触しやすくなるため、より高い抗菌・抗ウイルス性を発揮することができ、即効性も付与できる。
さらに、本実施形態の抗菌・抗ウイルス層では、一価の銅化合物の表面に無機化合物が被覆されていることが好ましい。この理由は、例えば、ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの無機化合物のゼータ電位はpH7で正の電位を有しており、また、ウイルスは一般に負の電位を持つことから、これらの無機化合物を一価の銅化合物の表面に被覆すると、ウイルスとの接触を高めることが可能となり、よって、抗ウイルス効果が発現しやすくなるからである。
無機化合物としては、例えば、水酸化物や金属酸化物が挙げられる。水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化亜鉛、水酸化鉄などが挙げられる。金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化バリウム、過酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、過酸化チタン、過酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化タングステンなどが挙げられる。なお、これらの無機化合物の微粒子は2種以上混合して用いても良く、大きさも特に限定されないが、平均粒子径が1.0nm以上、300nm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径は、体積平均粒子径をいう。
無機化合物を一価の銅化合物の表面に被覆させる方法としては、一価の銅化合物をジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、ビーズミルなどによりナノオーダーの粒子に粉砕する際に、無機化合物を添加する方法が挙げられる。一価の銅化合物の粒子を粉砕する際に無機化合物を添加することで、一価の銅化合物と無機化合物が接触して砕かれ、より粒径の小さい一価の銅化合物が生じると同時に、静電的引力により一価の銅化合物の表面に無機化合物が吸着する。
また、別の方法として、無機化合物を溶解した水溶液に一価の銅化合物のナノ粒子を分散することで、一価の銅化合物(ナノ粒子)の表面に無機化合物を化学的に吸着させたり、或いは、無機化合物を分散した溶媒に一価の銅化合物のナノ粒子を分散することで、無機化合物を一価の銅化合物(ナノ粒子)の表面に沈着させたりすることでも達成できる。さらに、別の方法として、転動式ボールミル、高速回転粉砕機、高速気流衝撃法粉砕機、媒体攪拌型ミル、機械的融合装置などにより強い圧力を加えることで一価の銅化合物の表面に無機化合物を被覆させるメカノケミカル法も挙げられる。
以上、本発明の第1実施形態と第2実施形態の抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材について詳述したが、あくまでも一例であり、他の形態をとることも可能である。
また、抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材は、繊維や、パネル、建装材、内装材、筆記具、手すり、吊革、電話機、玩具、ドアノブ、クリアフォルダ、ラベルテープなどの文房具、シート、加熱した際に収縮するシュリンク材、椅子、ソファー、外壁材、サッシ、ドア、ブラインド、天井板、床板、窓などの建装材、壁紙、カーペット、樹脂タイルなどの内装材、ハウス用フィルム、トンネルハウス用フィルムなどの農業資材、植物工場用のトレーなどの成形体、電車・車両用内装材、衣類、インナーウェア、靴下、手袋、靴カバー、靴等の履物、パジャマ、マット、シーツ、枕、枕カバー、毛布、タオルケット、蒲団および蒲団カバーなどの寝装材、帽子、ハンカチ、タオル、絨毯、カーテン、空気清浄機やエアコン、換気扇、電気掃除機、扇風機などのフィルターなどへの応用が可能であるが、特に院内感染が懸念される、病院や介護施設の床材、ドアノブカバー、医療用機器のチューブなどに応用することで、感染を防ぐ部材とすることができる非常に有用な材料である。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材の作成>
(実施例1)
アクリル樹脂(固形分15%)20gにCuIの分散液(固形分10%)1.6gを加えた後、ホモジナイザーで2分間攪拌し、塗工液を得た。この塗工液を、可塑剤としてフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を混練した軟質塩化ビニルのフィルムの上にバーコーターで塗工した後、140℃で乾燥させたものを実施例1のサンプルとした。
(実施例2)
可塑剤をリン酸トリフェニルに代えた以外は実施例1と同じ方法にて実施例2のサンプルを得た。
(実施例3)
可塑剤をトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)に代えた以外は実施例1と同じ方法にて実施例3のサンプルを得た。
(比較例1)
可塑剤をアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)に代えた以外は実施例1と同じ方法にて比較例1のサンプルを得た。
(比較例2)
可塑剤をエポキシ化大豆油に代えた以外は実施例1と同じ方法にて比較例2のサンプルを得た。
<各サンプルの変色性試験方法>
実施例1~3及び比較例1、2の各サンプルを、15cm×15cmにカットした後、50℃の環境下で2週間保管した。その後、目視にて色の変化を観察した。観察結果を下記表1に示す。
Figure 0007340657000001
以上の結果より、本発明の可塑剤を用いた実施例1~3のサンプルについては、2週間保管後も変色はなく、透明なままであったが、本発明の可塑剤以外の可塑剤を用いた比較例1、2のサンプルについては、2週間後には黄色に変色していた。これらの結果から、本発明の抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材を用いると、変色もなく汎用性の高い部材を提供することができる。

Claims (2)

  1. ポリ塩化ビニルで形成された基材と、
    少なくとも前記基材の表面に形成され、一価の銅化合物を含む層と、
    前記基材に含有されており、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤から選ばれる少なくとも一種である可塑剤と、
    を有することを特徴とする抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材。
  2. 前記一価の銅化合物が、塩化物、酢酸化合物、硫化物、臭化物、過酸化物、酸化物、シアン化物、水酸化物、およびチオシアン酸化物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌・抗ウイルス性塩化ビニル部材。
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