JP6832058B2 - 抗菌性部材 - Google Patents
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Description
また近年、MARS、SARS(重症急性呼吸器症候群)、ノロウイルス、鳥インフルエンザ等ウイルス感染による死者が報告されており、現在、交通の発達やウイルスの突然変異によって、世界中にウイルス感染が短時間のうちに広がるパンデミックの危険が叫ばれている。
そのため、公共施設のみならず一般家庭においても、様々な部材に抗菌性や抗ウイルス性を付与することが望まれている。
特に、無機系抗菌剤については、従来、銀イオン(Ag+)、亜鉛イオン(Zn2+)、及び二価銅イオン(Cu2+)等の金属イオンが微生物の増殖を抑制し、又は微生物に対して殺菌的に作用することが知られている。この知見に基づいて、これらの金属イオンをゼオライトやシリカゲル等の物質に担持させた抗微生物材料や、上記金属と光触媒作用を有する酸化チタンと組み合わせた抗微生物材料等も多数開発されている。
かかる材料としては、例えば、カルシウムやマグネシウムの酸化物又は水酸化物を含む抗ウイルス成分を含有する塗料(特許文献1)や、無機酸化物に金属イオンを担持した微粒子を含有する塗料(特許文献2)が例示される。
また、無機酸化物に金属イオンを担持した微粒子を含有する塗料の場合、金属イオンを他の物質と混合することによって安定化させることが必要であるため、その組成物に含まれる銅イオンの割合が制限されてしまい、そして、金属イオンの安定剤を含むことが必須となるため、組成物の設計自由度が小さくなってしまう。また、この場合、所望の効果を発現するためには多量の微粒子を添加する必要があるため、塗膜の安定性が犠牲になる場合がある。
本発明の抗菌性部材は、基材と、該基材表面に配置された平均一次粒径が15nm以下である酸化第一銅ナノ粒子とからなり、前記基材がセルロース系樹脂であることを特徴とする。
ここで、前記基材は、繊維状であることが好ましい。更に、前記基材は、前記酸化第一銅ナノ粒子に対して水素結合可能な官能基を、その表面に有することが好ましい。
ここで、前記コロイド分散液を準備する工程において分散媒として多価アルコールを用いることが好ましい。
特に、酸化第一銅ナノ粒子の含有量を保持する観点から、酸化第一銅ナノ粒子と基材が有する水酸基との間での水素結合による付着(後述)が好ましい。
平均一次粒径が100nmを超えると、樹脂との密着性が低下し、抗菌性が早期に劣化する傾向がある。
特に、平均一次粒径が20nm以下であると、樹脂への密着性が顕著に向上する。密着性が向上する理由は、必ずしも明らかではないが、酸化第一銅ナノ粒子表面に生じ得る水酸基と基材との間で水素結合が形成され得るためと推察される。
なお、平均二次粒径とは、画像解析により複数の二次粒子について求めた二次粒径の平均値をいう。ここで、二次粒径とは、ジエチレングリコール中に分散させた酸化第一銅ナノ粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したときに、取得される画像データから求められる二次粒子の粒子径をいい、通常、画像の任意の箇所を切り取り、この箇所に含まれる100個以上の粒子について、その二次粒径の平均値を求めて、平均二次粒径を算出する。
樹脂としては、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられ、側鎖に水素結合可能な官能基を備えるセルロース系樹脂が好ましい。
なお、酸化第一銅ナノ粒子に対して水素結合可能な官能基は、基材(好適には、樹脂)の分子構造中に内在していてもよいし、基材表面に表面反応等により導入されたものであってもよい。
基材の分子構造中に内在している水素結合可能な官能基としては、セルロース系樹脂中の水酸基、ポリエステル樹脂中のエステル基、ポリアミド樹脂中のアミド基、ポリイミド樹脂のイミド基、ポリウレタン樹脂中のウレタン基等が挙げられる。中でも好ましいのは、密着性等の観点で、セルロース系樹脂中の水酸基である。
基材表面に水素結合可能な官能基を導入する手法としては、酸やアルカリ等の化学薬品を用いるエッチング処理、コロナ処理、大気プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられる。
本実施形態の抗菌性部材の製造方法は、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液を準備する工程と、コロイド分散液を基材に塗布・乾燥する工程と、を含むことを特徴とする。
一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が例示され、また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が例示される。これらは、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
また、本実施形態では、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド性を損なわない範囲で、アルコールに代えて又はアルコールに加えて、アルコールとは別の分散媒を用いてもよい。
かかるアルコールとは別の分散剤としては、エーテル、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、n−ヘプタン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサン、ジイソプロピルケトン、イソブチルクロリド、シクロヘキサン、エチルアミルケトン、酢酸イソブチル、ベンゾニトリル、酢酸イソプロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸アミル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、ジエチルカルボネート、ジエチルケトン、エチルベンゼン、キシレン、ブチルカルビトール、トルエン、酢酸エチル、ダイアセトンアルコール、ベンゼン、クロロホルム、メチルエチルケトン、スチレン、エチルカルビトール、酢酸メチル、アニソール、セロソルブ、ジエチルアセトアミド、ジエチルカルボネート、ジオキサン、アセトン、メチルイソブチルカルビノール、ニトロベンゼン、アクリロニトリル、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ブタノール、シクロヘキサノール、アセトニトリル、プロピルアルコール、ベンジルアルコール、ブチレンカルボネート、ジメチルホルムアミド、エチレンカルボネート、メチルホルムアミド等が挙げられる。
酸化第一銅ナノ粒子の含有量が60質量%を超えると、分散液の粘度が上がる傾向があり、樹脂等の基材への塗布が困難になる場合があり、また、0.1質量%よりも小さいと、一度の塗布で塗布できる酸化第一銅ナノ粒子の量が少なくなり、塗布工程を何度も繰り返す必要が生じ、コスト上昇のおそれがある。
添加剤としては、可塑剤、乾燥剤、硬化剤、皮張り防止剤、平坦化剤、たれ防止剤、防カビ剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、粘性調整剤、安定剤、乾燥調整剤等が挙げられ、さらに、別種の抗ウイルス組成物、抗菌組成物、防かび組成物、抗アレルゲン組成物、触媒、反射防止材料、遮熱特性を備える材料等も挙げられる。
塗布方法としては、例えば、ディップコート法、浸漬法、スプレー法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法が挙げられる。
乾燥方法としては、加熱乾燥や自然乾燥等が挙げられ、必要に応じて、乾燥時に、紫外線、赤外線、電子線、γ線等の照射を行ってもよい。
<酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の調整>
SUS製反応器に、無水酢酸銅(日本化学産業製)80gを加え、ここに、精製水700mLを加えた。反応器の温度を40℃に上げて撹拌しながら、酢酸銅を溶解させた。その後、この溶液を−15℃に冷却した。次に、反応器内の酢酸銅に対するヒドラジンの割合(モル)が1.2になるように、40重量%ヒドラジン溶液を調整し、これを、15分かけて上記反応器に加えた。添加完了後、反応器の温度を25℃に上げて、反応器内の撹拌を1時間継続した。
得られた反応液について、遠心分離機を用いた固液分離を行うことによって、酸化第一銅ナノ粒子を得た。
次に、得られた酸化第一銅ナノ粒子を、SUS製タンクに投入し、ここに、ジエチレングリコール100mLを加え、混合物に超音波分散することによって、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液(コロイド分散液に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:10質量%)を得た。この分散液における酸化第一銅ナノ粒子の平均一次粒径は15nm、平均二次粒径は80nmであった。
セルロース繊維からなる不織布として、旭化成せんい(株)製ベンリーゼを用いた。ベンリーゼを10cm×10cmサイズに切り出し、これを、得られた酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液に浸漬させた。
酸化第一銅を付着させた後の不織布を、コロイド分散液中から引き上げ、エタノールで余剰の分散液を洗い流した。
洗浄後の不織布を真空乾燥機にて100℃まで加温して乾燥させ、エタノールを除去した。
こうして、抗菌シート(セルロース繊維に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:3質量%)を得た。
得られた抗菌シートの抗菌性を、JIS L 1902:2008「菌液吸収法」により、評価した。試験菌種には、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus、NBRC番号:12732)を用いた。
評価基準を下記に示す。
A:18時間培養後の生菌数の常用対数値が1.3未満
B:18時間培養後の生菌数の常用対数値が1.3以上、接種直後の値未満
C:18時間培養後の生菌数の常用対数値が接種直後の値以上のもの
実施例1の抗菌シート存在時には、接種直後の生菌数の常用対数値は3.7であったのに対し、18時間培養後の常用対数値は感度以下の<1.3にまで顕著に減少した。この結果から、実施例1の抗菌シートは高い抗菌性を備えることが見出された。結果を表1に示す。
得られた抗菌シートの抗かび性を、JIS Z 2911:2010「7.繊維製品の試験」を準用して、評価した。
試験菌種には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger、NBRC番号:105649)、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum、NBRC番号:6352)、ケトミウム・グラボサム(Chaetomium globosum、NBRC番号:6347)、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria、NBRC番号:6113)の4種を用いた。
評価基準を下記に示す。
A:試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。
B:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3を超えない。
C:試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積が、全面積の1/3を超える。
湿式法2週間後のかび抵抗性、乾式法4週間後のかび抵抗性を併せて確認したが、いずれも、実施例1の抗菌シートの接種部分には菌糸の発育は認められなかった。この結果から、実施例1の抗菌シートは高い抗カビ性を備えることが確認された。結果を表1に示す。
得られた抗菌シートの安定性を、得られた抗菌シートの表面にスコッチテープを貼り付け、その後、テープを剥離したときの、テープへの酸化第一銅の付着の程度によって、評価した。
評価基準を下記に示す。
A:酸化第一銅の転写なし
B:酸化第一銅の一部が転写
C:酸化第一銅の全部が転写
実施例1の抗菌シートでは、テープに酸化第一銅の転写は確認されなかった。結果を表1に示す。
<酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の調整>
SUS製反応器に、無水酢酸銅(日本化学産業製)40gを加え、ここに、精製水700mLを加えた。反応器の温度を40℃に上げて撹拌しながら、酢酸銅を溶解させた。その後、この溶液を−15℃に冷却した。次に、反応器内の酢酸銅に対するヒドラジンの割合(モル)が0.2になるように、64重量%ヒドラジン溶液を調整し、これを、15分かけて上記反応器に加えた。添加完了後、反応器の温度を25℃に上げて、反応器内の撹拌を1時間継続した。
得られた反応液について、遠心分離機を用いた固液分離を行うことによって、酸化第一銅ナノ粒子を得た。
次に、得られた酸化第一銅ナノ粒子を、SUS製タンクに投入し、ここに、ジエチレングリコール100mLを加え、混合物に超音波分散することによって、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液(コロイド分散液に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:10質量%)を得た。参考例1におけるこの分散液には沈降成分が認められた。この分散液における酸化第一銅ナノ粒子の平均一次粒径は50nm、平均二次粒径は300nmであった。
分散液中の沈降成分を遍在させるため、撹拌子を用いて分散液を撹拌させながら、実施例1で使用のセルロース繊維からなる不織布(旭化成せんい(株)製ベンリーゼ)を、10cm×10cmサイズに切り出し、これを、得られた酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液に浸漬させた。
酸化第一銅を付着させた後の不織布を、コロイド分散液中から引き上げ、エタノールで余剰の分散液を洗い流した。
洗浄後の不織布を真空乾燥機にて100℃まで加温して乾燥させ、エタノールを除去した。
こうして、抗菌シート(セルロース繊維に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:5質量%)を得た。
参考例1の抗菌シートは、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、高い抗菌性及び抗かび性を示す一方で、スコッチテープテストにおいてテープへの若干の酸化第一銅の付着が見られた。
<酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の調整>
SUS製反応器に、無水酢酸銅(日本化学産業製)10gを加え、ここに、精製水700mLを加えた。反応器の温度を40℃に上げて撹拌しながら、酢酸銅を溶解させた。その後、この溶液を−15℃に冷却した。次に、反応器内の酢酸銅に対するヒドラジンの割合(モル)が0.1になるように、20重量%ヒドラジン溶液を調整し、これを、15分かけて上記反応器に加えた。添加完了後、反応器の温度を25℃に上げて、反応器内の撹拌を1時間継続した。
得られた反応液について、遠心分離機を用いた固液分離を行うことによって、酸化第一銅ナノ粒子を得た。
次に、得られた酸化第一銅ナノ粒子を、SUS製タンクに投入し、ここに、ジエチレングリコール100mLを加え、混合物に超音波分散することによって、酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液(コロイド分散液に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:10質量%)を得た。比較例1におけるこの分散液には沈降成分が認められた。この分散液における酸化第一銅ナノ粒子の平均一次粒径は200nm、平均二次粒径は2000nmであった。
分散液中の沈降成分を遍在させるため、撹拌子を用いて分散液を撹拌させながら、実施例1で使用のセルロース繊維からなる不織布(旭化成せんい(株)製ベンリーゼ)を、10cm×10cmサイズに切り出し、これを、得られた酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液に浸漬させた。
酸化第一銅を付着させた後の不織布を、コロイド分散液中から引き上げ、エタノールで余剰の分散液を洗い流した。
洗浄後の不織布を真空乾燥機にて100℃まで加温して乾燥させ、エタノールを除去した。
こうして、抗菌シート(セルロース繊維に対する酸化第一銅ナノ粒子の含有量:5質量%)を得た。
比較例1の抗菌シートは、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、高い抗菌性及び抗かび性を示す一方で、スコッチテープテストにおいてテープへの酸化第一銅の付着が見られた。
酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液の代わりに、銀ナノ粒子(和光純薬製)(銀ナノ粒子の平均一次粒径:10nm、平均二次粒径:100nm)のコロイド分散液を用いた点以外は、実施例1の場合と同様にして、比較例2の抗菌シートを得た。
比較例2の抗菌シートについて、実施例1の抗菌シートの場合と同様に、抗菌性の評価、抗かび性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2の抗菌シートは、乾式法4週間後のかび抵抗性の評価において、菌糸の全面積の1/3を超える程度にまでの発育が認められ、抗かび性が劣ることがわかった。
また、本発明の抗菌性部材によれば、銅の皮膚活性作用を利用して、皮膚皺の改善や傷の治癒の効果も得ることが可能である。
Claims (5)
- 基材と、該基材表面に配置された平均一次粒径が15nm以下である酸化第一銅ナノ粒子とからなり、前記基材がセルロース系樹脂であることを特徴とする、抗菌性部材。
- 前記基材が、繊維状である、請求項1に記載の抗菌性部材。
- 前記基材が、前記酸化第一銅ナノ粒子に対して水素結合可能な官能基を、その表面に有する、請求項1又は2に記載の抗菌性部材。
- 酸化第一銅ナノ粒子のコロイド分散液を準備する工程と、
前記コロイド分散液を基材に塗布・乾燥する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗菌性部材の製造方法。 - 前記コロイド分散液を準備する工程において分散媒として多価アルコールを用いる、請求項4に記載の抗菌性部材の製造方法。
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