JP7339064B2 - 透明導電性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、乾燥工程における風の強さや向きについては検討されておらず、従来公知の乾燥方法を特に制限なく採用できることのみが開示されている。むろん、送風でナノワイヤの向きを変える再配向工程についても開示されておらず、その効果は満足できるものではなかった。
しかしながら幅方向の風は速度を大きくしすぎると、金属ナノワイヤの多くが、フィルム幅方向に向いてしまい、フィルム長さ方向の表面抵抗値(RMD)が、フィルム幅方向の抵抗値(RTD)よりも大きくなるという問題があった。例えば特許文献3の実施例9では、異方性(特許文献3における「RTD/RMD」に相当)が0.86となっている。該異方性の値は1が最も好ましく、1よりも大きすぎても、小さすぎても、透明導電性フィルムに異方性があることを示す。
尚、特許文献4の実施例では、銀ナノワイヤーインクが「ワイヤーバーコート法」により、基材フィルム上に形成されている。当該「ワイヤーバーコート法」により形成されるウエット膜において、銀ナノワイヤが特定の方向に配向するといった課題は、未だ報告されていない。
(1)溶媒に金属ナノワイヤを分散させた塗工液を、基材フィルム上に塗工し、ウエット膜を形成する塗工工程と、塗工された金属ナノワイヤに送風を行い、その向きを変える再配向工程と、を備える透明導電性フィルムの製造方法において、前記送風が、基材フィルムの幅方向に延在する送風ダクトにより、基材フィルムに対し上方から行われていることを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法
(2)前記塗工工程において、塗工液はスロットダイコーターにより塗工されており、基材フィルム長さ方向の抵抗値(RMD)に対する基材フィルム幅方向の抵抗値(RTD)の値(RTD/RMD)が、再配向工程前は1.2を超え、再配向工程後は0.8~1.2であることを特徴とする(1)記載の透明導電性フィルムの製造方法
(3)前記基材フィルムの直上における、前記送風の最大値が10m/sを超えることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法
(4)前記送風が、膜厚が塗工直後の3/4以下になったウエット膜に対し、行われていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法、が提供される。
(5)前記送風ダクトの送風口の幅が1~100mmであり、送風口の長さがフィルム幅を超えることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法
(6)前記送風ダクトと前記ウエット膜との距離が1~100mmであることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法
(7)前記基材フィルムが複数の搬送ロールにより搬送されており、前記送風ダクトが、平面視において、二つの搬送ロールの間に取り付けられていることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法、が提供される。
またスロットダイコーターにより塗工された透明導電性フィルムは、異方性の値が1.2を超えるが、本発明の再配向工程を採用すると、0.8~1.2程度まで減少する。
更に、再配向工程における送風が、基材フィルム直上において10m/sを超えていると、異方性の値を1に近づけることができる。
更にまた、少なくとも膜厚が塗工直後の3/4以下になった後に、再配向の為の送風が行われていると、効率よく金属ナノワイヤの向きを変えることができる。
また、本発明の製造方法は、送風により基材フィルムがバタついたり蛇行したりすることが抑制されているため、搬送ロール等により支持されていないフィルムに対して送風することができる。よって設備設計の自由度が高い。
また、本明細書においては、基材フィルムの長さ方向(=長手方向)をMD、幅方向(=短手方向)をTDと略称することがある。更に、基材フィルムが搬送されている場合、フィルムの搬送方向が基材フィルムの長さ方向、MDとなり、搬送方向と垂直な方向が基材フィルムの幅方向、TDとなる。
本発明の塗工工程(図1(A))は、予め用意された塗工液(溶媒32に金属ナノワイヤ31が分散された分散液)を、従来公知の塗工方法にて、基材2上に塗布する工程である。従来公知の塗工方法として、スロットダイコーター、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、ファンテンコーター、キスコーター等を例示するが、ウエット膜3の膜厚を均一にするためには、スロットダイコーターが好適に使用される。スロットダイコーターにおける塗工液の塗布量は、例えば5~40g/m2に設定される。
基材フィルム2は、従来、透明導電性フィルムの基材フィルムに用いられていたものを特に限定なく採用することができる。例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シクロオレフィン(COP)、シクロオレフィン共重合体(COC)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)等の樹脂の1種以上からなるフィルムを用いることができる。基材フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、強度や柔軟性等を考慮すると、10~200μm、特に20~150μmが好ましい。尚、基材フィルムが薄いと、従来のフィルム幅方向の風を用いる製造方法では、フィルムの蛇行やバタつきが著しい。よって本発明の製造方法は、基材フィルムが50μm未満、特に30μm未満である場合に、極めて顕著な効果を奏する。
金属ナノワイヤ31は金属から構成されたものであって、構成元素としては、Ag、Cu、Au、Rh、Ir、Co、Zn、Ni、In、Fe、Pd、Pt、Sn、Ti等から選択される1種以上のものを例示することができる。またこれらの合金、酸化物、メッキされたものであってもよい。
金属ナノワイヤ31は微細なワイヤ状の形状を呈する。平均短軸径は、透明性の観点から、200nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。平均長さは、導電性及び成形性の観点から、1~100μmであることが好ましく、1~50μmであることがより好ましく、特に3~50μmであることが好ましい。
金属ナノワイヤ31を分散させる溶媒32は、従来公知のものを定義採用することができる。例えば、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、芳香族溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)及びこれらを組み合わせたものが用いられるが、水系のものが好ましい。尚、塗工液における溶媒の量は、塗工性の観点から80.00~99.95重量%であることが好ましく、特に95.00~99.90重量%であることが好ましい。
溶媒32における金属ナノワイヤ31の分散性や、金属ナノワイヤ31同士の結合性を高めるために、塗工液に添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、トリプロピレングリコール(TPG)、およびキサンタンゴム(XG)、およびエトキシレート、アルコキシレート、エチレンオキシド、および酸化プロピレンなどの界面活性剤、およびそれらの共重合体、スルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、およびふっ素系界面活性剤が挙げられる。
本発明の再配向工程(図1(B))は、基材上に塗工された金属ナノワイヤ31に送風を行い、金属ナノワイヤ31の向きを変える工程である。本発明の再配向工程は、TDに延在する送風ダクト4により、基材フィルム2に対し上方より送風Xを行うことを最大の特徴とする。当該送風方法を採用することにより、基材フィルム2に、幅方向に均一な上から下への力をかけて、基材フィルム2のバタつきや蛇行を防止しながら、金属ナノワイヤ31の向きを変える。
再配向工程における送風Xの大きさは特に限定されないが、小さすぎると、金属ナノワイヤ31の向きを変えることが難しい。よって、基材フィルム2の直上Yにおいて観測される当該送風Xの最大値は、10m/sを超えることが望ましい。特に、13m/sを超えることが望ましく、更には15m/sを超えることが望ましい。送風Xの最大値が10m/S未満であると、金属ナノワイヤ31の向きを変える効果に乏しい。また当該送風は上方からのものである為、多少大きくても基材フィルム2をバタつかせたり、蛇行させたりすることなく、異方性の値(RTD/RMD)が1に近づけることができる。また当該送風Xの最大値は50m/s以下であることが好ましく、45m/s、更には40m/s以下であることが好ましい。送風Xの最大値が50m/sを超えると、基材フィルム2が撓む可能性が生じる。
よって、再配向工程では、少なくともウエット膜の膜厚が塗工直後の3/4以下になった状態において、上方から送風を行うことが望ましい。送風時間は、送風Xの大きさやウエット膜3の状態により適宜変更することができるが6~240秒、特に15~60秒程度が望ましい。尚、ウエット膜の膜厚dが3/4以下の状態において上方から送風を数秒~数十秒間行っていれば、ウエット膜の膜厚dが3/4を超える状態においては、上方からの送風を行っていてもよく、行っていなくてもよい。
送風ダクトの底面(送風口のある面)の模式図を図2に示す。本発明の再配向工程において、金属ナノワイヤ31への送風Xを行う送風ダクト4はTDに延在するが、送風口の長さαが基材フィルム2の幅よりも長いことが望ましい。送風口の長さαが基材フィルム2の幅を超えると、基材フィルム2の全幅にわたり均一な力をかけることができ、基材フィルム2のバタつき、蛇行をより確実に防止することができる。また送風ダクト4の送風口の幅βは1~100mmであることが望ましく、特に10~60mmであることが好ましい。該幅βが大きすぎると基材フィルム2に加わる力が大きくなりすぎ、フィルムが撓む恐れが生じる。また該幅が狭すぎると金属ナノワイヤ31に加わる力が小さくなりすぎ、透明導電性フィルムの抵抗値の異方性を改善する効果に乏しい恐れが生じる。
次に、図3に基づき、本発明の透明導電性フィルムを連続して製造する方法について説明する。図3に示す製造方法は、繰出装置5により長尺の基材フィルム20を繰り出す繰出工程と、塗工装置6により基材フィルム20上に塗工液30を塗工する塗工工程と、乾燥炉7により溶媒を除去する乾燥工程と、巻取装置8により透明導電性フィルム20を巻き取る巻取工程によって構成され、乾燥炉7内に送風ダクト40が取り付けられている。
図2に示す送風ダクト40は乾燥炉7内の前半部分に設けられている。乾燥炉7内は、IRヒーターや乾燥風などにより、ウエット膜中の溶媒が蒸散しやすい環境になっている。その為、基材フィルム20上に塗工された塗工液30は、送風ダクト40の直下まで移動する間に、溶媒がある程度蒸散しており、送風ダクト40からの送風で金属ナノワイヤの向きを容易に変更させることができる。
また、送風ダクト42aよりも巻取装置8側に、更に送風ダクト42bを追加してもよい。本発明の製造方法では、金属ナノワイヤの再配向に上方からの送風を用いる為、金属ナノワイヤはランダムに再配向される。よって、送風ダクト42aだけでは、金ナノワイヤの向きを十分に変えられない恐れがある場合は、更に送風ダクト42bを追加するとよい。本発明の製造方法を用いると、送風量が多くなっても抵抗値の異方性が高くなることがない。
<風速>
再配向工程における送風の大きさを確認するために、送風ダクトの下方で、基材フィルム直上(溶媒の表面から5mmの位置)に風速計(柴田科学株式会社 ISA-101)をセットして、風の速さを測定する。尚、風速はフィルムの幅方向に三点測定し、その最大値を表1~3に記す。
<バタつき等>
再配向工程におけるフィルムの状態を目視にて確認した。基材フィルムがバタついたり、蛇行したり、撓んだり(以下、「バタつき等」と略称する。)しなかったものは〇、バタつき等が見られたものは×、バタつき等により基材フィルムが周辺の機械設備に接触したものは××を、表1~3に記す。
透明導電性フィルムの幅方向が縦方向となるように、縦100mm、幅30mmの試験片を切り出す。次いで、該試験片に、銀ペーストを幅方向に平行な5mm幅の直線状に塗る。該直線から30mm離れた位置に、再度、銀ペーストを幅方向に平行な5mmの直線状に塗る。最後に、マルチテスター(三和電気計器株式会社製 PC720M)の端子を各直線状の銀ペースト部分に当てて、透明導電性フィルムの表面抵抗値(RTD)を測定する。尚、本明細書中において、特に限定がない場合、フィルム幅方向の表面抵抗値(RTD)は、フィルムの幅方向の中央部分において測定される値とする。
同様にして、繰出ロール側に向かって右手のフィルム端縁(図2における手前側)から、フィルム幅の1/6の長さだけ内側(中央より)の位置における表面抵抗値(RTDR)を測定する。また、繰出ロール側に向かって左手のフィルム端縁(図2における奥側)からフィルム幅の1/6の長さだけ内側の位置における表面抵抗値を(RTDL)も測定する。
併せて、繰出ロール側に向かって右手のフィルム端縁(図2における手前側)から、フィルム幅の1/6の長さだけ内側の位置における表面抵抗値(RMDR)、左手のフィルム端縁(図2における奥側)からフィルム幅の1/6の長さだけ内側の位置における表面抵抗値(RMDL)を測定する。
初めに、基材フィルムとして厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備し、塗工液として銀ナノワイヤ(長さ10~50μm)0.3重量%、水系溶媒(超純水100%)99.7重量%の混合物に少量の添加剤を加えたものを準備した。
次いで、図2に示す製造設備を用いて、透明導電性フィルムを製造した。尚、搬送速度は20m/min、塗工装置としてはスロットダイコーターを使用し、塗工液の塗布量を16.5g/m2に設定した。また、乾燥炉内は、40℃に設定した。基材フィルム上のウエット膜の膜厚は、乾燥炉内を移動する間に減少し、送風ダクトの直下においては、塗工直後の3/4となっていた。
基材フィルム厚み、風速を表1に記すように変更し、その他は実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。各フィルムを製造する際の、風速、バタつき等、得られたフィルムの異方性を表1に記す。
また、フィルム右側、フィルム左側、いずれにおいても異方性の値が0.8~1.2であり、フィルムのほぼ全域において異方性に優れることが確認できた。該フィルムをタッチパネル用の電極等として使用しても、異方性に由来する問題が発生し難い。
基材フィルム厚み、風速を表2に記すように変更し、透明導電性フィルムを製造した。尚、実施例1~4では、送風ダクトへの吸気を上方から行い、送風ダクトからの送風が鉛直方向となるように調整したが、実施例5~7では、送風ダクトへの吸気を送風ダクトの側面(図2においては手前側)から行った。その為、送風ダクトから出る送風は、基材フィルムに対し上方から下方へ向かう風ではあったが、幅方向に方向性のある風となった。具体的には、図2において、上から下に向かい、尚且つ、手前から奥に向かう風(斜めの風)であった。
各フィルムを製造する際の、風速、バタつき等、得られたフィルムの異方性を表2に記す。
基材フィルム厚み、風速を表2に示すように変更し、透明導電性フィルムを製造した。但し、金属ナノワイヤを再配向させるための送風は、基材フィルム側面から行った。
各フィルムを製造する際の、風速、バタつき等、得られたフィルムの異方性を表3に記す。
再配向の為の送風は行わない以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。フィルムを製造する際の、風速、バタつき等、得られたフィルムの異方性を表3に記す。
また、再配向工程を経ないで得られた比較例4の透明導電性フィルムは異方性が1.73であった。よって、実施例1の製造方法において、再配向工程前は、基材フィルム長さ方向の抵抗値(RMD)に対する基材フィルム幅方向の抵抗値(RTD)の値(RTD/RMD)が、1.73であると推察される。
2、20 基材フィルム
3 ウエット膜
30 塗工液
31 金属ナノワイヤ
32 溶媒
4、40、41、42a、42b
送風ダクト
5 繰出装置
6 塗工装置
7 乾燥炉
8 巻取装置
Claims (5)
- 溶媒に金属ナノワイヤを分散させた塗工液を、基材フィルム上に塗工し、ウエット膜を形成する塗工工程と、
前記ウェット膜を乾燥する乾燥工程と、
塗工された金属ナノワイヤに送風を行い、その向きを変える再配向工程と、
をこの順に備える透明導電性フィルムの製造方法において、
前記再配向工程において、基材フィルム長さ方向の抵抗値(R MD )に対する基材フィルム幅方向の抵抗値(R TD )の比(R TD /R MD )が、再配向工程前は1.2を超え、再配向工程後は0.8~1.2であり、
前記送風が、基材フィルムの幅方向に延在する送風ダクトにより、基材フィルムに対し上方から行われ、
前記基材フィルムの直上における、前記送風の最大値が10m/sを超えており、
前記送風が、膜厚が塗工直後の3/4以下になったウエット膜に対し、行われていることを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。 - 前記塗工工程において、塗工液はスロットダイコーターにより塗工されていることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルムの製造方法。
- 前記送風ダクトの送風口の幅が1~100mmであり、送風口の長さがフィルム幅を超えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法。
- 前記送風ダクトと前記ウエット膜との距離が1~100mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法。
- 前記基材フィルムが複数の搬送ロールにより搬送されており、
前記送風ダクトが、平面視において、二つの搬送ロールの間に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法。
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