JP7339022B2 - ポリゴジアール及びイソチオシアネート類を含有する香料組成物 - Google Patents

ポリゴジアール及びイソチオシアネート類を含有する香料組成物 Download PDF

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本発明は、ポリゴジアール及びイソチオシアネート類、場合によりさらにスピラントールを含有することを特徴とするアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物用の香料組成物に関する。
詳しくは、ワサビ風味飲食品組成物やカラシ風味飲食品組成物の辛味増強用香料組成物、並びに、これら飲食品組成物の劣化臭のマスキング用香料組成物に関する。
ワサビ、カラシ、ダイコンやカラシナ等に例示されるアブラナ科植物に含まれるアリルイソチオシアネートに代表されるイソチオシアネート類は、特有の辛味を有する成分として知られており、アブラナ科植物の風味を表現する上で重要な役割を担っている。
しかし、イソチオシアネート類は揮発性が高く食品中で徐々に減少してしまい、特有の風味が減衰していくという課題がある。
また、化学構造上加水分解を受けやすいため、水性の飲食品中で特に風味の低下が問題となる。
イソチオシアネート類が加水分解されると、風味の低下に加え、分解によって生じる劣化臭によって風味が損なわれてしまうという課題も生じる。
そこで、辛味の増強や維持を目的として、種々の対策が提案されている。
アブラナ科植物又はアリルイソチオシアネートの辛味を増強または維持する方法として、ワサビ類にビタミンEを添加することで、ワサビ類に含まれる辛味及び風味成分を安定化する方法(特許文献1)、メントールを含有する乳化香料組成物を添加することで、ワサビ含有食品の辛味を増強する方法(特許文献2)が提案されている。
また、マルトール、イソマルトール、アニスアルデヒド、アネトール、ソトロン、エチルマルトール、メープルシロップフレーバー、フェネグリークオレオレジン、ロベッジオレオレジン、カンゾウオレオレジン及びグリチルリチンからなる群から選ばれる少なくとも1種の香気成分と、イソチオシアネート類とを含有してなる辛味調合品(特許文献3)なども提案されている。
しかし、上記技術では、飲食品組成物を製造後、流通段階や保存段階(倉庫保管中や店頭陳列)においてもアリルイソチオシアネート減少による風味低下が進み、自然な辛味と風味を長期間維持することが難しい。
そこで、保存中に減少することを見越してアリルイソチオシアネートを多めに添加しておくことが提案されている。しかし、この方法では、初発の風味バランスが悪くなったり、またアリルイソチオシアネートの分解によって生じる劣化臭が強くなってしまい、かえって商品価値を損なうという問題が生じる。
そうした状況で、消費者のグルメ志向や、より高品質で安全な飲食品の追求に伴い、さらなる技術開発が要求されている。
特開平8-89208号公報 特開2011-19457号公報 特開平10-155451号公報
本発明が解決しようとする課題は、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物、例えば、ワサビ風味飲食品組成物やカラシ風味飲食品組成物に添加し、製造直後のみならず長期保管した後においても良好な辛味及び辛味増強作用を奏する香料組成物を提供することである。
また、アブラナ科植物風味飲食品組成物に添加し、製造直後のみならず長期保管した後においても劣化臭の弱い風味とすることが可能なマスキング作用に優れる香料組成物を提供することである。
さらに、辛味の発現性が自然なアブラナ科植物風味飲食品組成物用の香料組成物の提供である。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリゴジアール及びイソチオシアネート類、場合によりさらにスピラントールを含有することを特徴とするアブラナ科植物の風味を有する香料組成物が、アブラナ科植物風味飲食品組成物における良好な辛味を長期間持続させること、イソチオシアネート類の劣化臭を効率的にマスキングできること、並びにアブラナ科植物風味飲食品組成物において自然な辛味の発現ができることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下に示すとおりのものである。
〔1〕ポリゴジアール及びイソチオシアネート類を含有することを特徴とするアブラナ科植物の風味を有する香料組成物。
〔2〕イソチオシアネート類が下記式[1]で表されるω-アルケニルイソチオシアネート類、下記式[2]で表されるω-メチルチオアルキルイソチオシアネート類、及び下記式[3]で表されるω-アルキルイソチオシアネート類からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアネート類である上記の香料組成物。
Figure 0007339022000001
〔3〕イソチオシアネート類1000質量部に対してのポリゴジアールの比率が0.0001~10であることを特徴とする上記の香料組成物。
〔4〕ポリゴジアールの濃度が100ppb~1%、イソチオシアネート類の濃度が100ppm~99%であることを特徴とする上記の香料組成物。
〔5〕ポリゴジアールが、ポリゴジアールを含有する植物抽出物又は精油に含まれるポリゴジアールであることを特徴とする上記の香料組成物。
〔6〕アブラナ科植物がワサビ又はカラシであることを特徴とする上記の香料組成物。
〔7〕スピラントールと併用することを特徴とする上記の香料組成物。
〔8〕ポリゴジアール1質量部に対して、スピラントールを0.01~100質量部の割合で併用することを特徴とする上記の香料組成物。
〔9〕香料組成物が、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の辛味増強用香料組成物であることを特徴とする上記の香料組成物。
〔10〕香料組成物が、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の劣化臭マスキング用香料組成物であることを特徴とする上記の香料組成物。
〔11〕飲食品組成物中のポリゴジアールの濃度が0.5ppb~1000ppb、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppmとなるように添加することを特徴とする、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の辛味増強方法。
〔12〕アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物が、ワサビ風味飲食品組成物又はカラシ風味飲食品組成物である上記の辛味増強方法。
〔13〕上記の方法で辛味が増強されたアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物。
〔14〕飲食品組成物中のポリゴジアールの濃度が0.5ppb~1000ppb、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppmとなるように添加することを特徴とする、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の劣化臭をマスキングする方法。
〔15〕アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物が、ワサビ風味の飲食品組成物又はカラシ風味の飲食品組成物である上記の劣化臭をマスキングする方法。
〔16〕上記の方法でマスキングされたアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物。
〔17〕ポリゴジアール及びイソチオシアネート類を含有することを特徴とするアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物。
〔18〕イソチオシアネート類1000質量部に対してのポリゴジアールの比率が0.0001~10であることを特徴とする上記のアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物。
〔19〕飲食品中のポリゴジアールの濃度が0.5ppb~1000ppb、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppmであることを特徴とする上記のアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物。
〔20〕アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物が、ワサビ風味の飲食品組成物またはカラシ風味の飲食品組成物である上記のアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物。〔21〕スピラントールと併用することを特徴とする上記の飲食品組成物。
〔22〕ポリゴジアール1質量部に対して、スピラントールを0.01~100質量部の割合で併用することを特徴とする上記の飲食品組成物。
〔23〕上記に記載の辛味増強用香料組成物を添加してなるアブラナ科植物の風味を有する辛味増強用飲食品組成物。
〔24〕上記に記載のマスキング用香料組成物を添加してなるアブラナ科植物の風味を有する劣化臭のマスキング用飲食品組成物。
〔25〕ポリゴジアールの濃度が0.5ppb~1000ppb、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppmとなるようにアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物に添加することを特徴とする、アブラナ科植物風味飲食品組成物の製造方法。
〔26〕辛味を増強するために、上記の辛味増強用香料組成物を添加することを特徴とするアブラナ科植物風味飲食品組成物の製造方法。
〔27〕劣化臭をマスキングするために、上記の劣化臭マスキング用香料組成物を添加することを特徴とするアブラナ科植物風味飲食品組成物の製造方法。
〔28〕ポリゴジアールが、ヤナギタデの有機溶剤抽出液を150℃以下の温度で蒸留して得られる蒸留物に含まれるポリゴジアールであることを特徴とする、上記に記載のアブラナ科植物風味飲食品組成物の製造方法。
〔29〕アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物が、ワサビ風味の飲食品組成物又はカラシ風味の飲食品組成物である、アブラナ科植物風味飲食品組成物の製造方法。
本発明の香料組成物は、イソチオシアネート類とポリゴジアールを併用することで、経時的な変化によりイソチオシアネート類が減少した状態においても辛味を有し、かつ良好な風味のアブラナ科植物(例えば、ワサビやカラシ等)風味飲食品組成物を提供できる。特に、辛味の減退が顕著な水性のワサビ風味飲食品に好適である。
(辛味増強効果)
イソチオシアネート類とポリゴジアールを併用することで辛味増強効果が得られる。この増強作用は、イソチオシアネート類のみで評価した場合には辛味の感じられない低濃度においても発揮される。増強によって生じた辛味の質は、アブラナ科風味飲食品組成物に適しており違和感はない。よって、経時的な変化によりイソチオシアネート類が低減した状態でも自然な辛味を有する風味とすることが可能となる。
(劣化臭効果)
イソチオシアネート類は、分解によって劣化臭を生じる。分解によって生じる劣化臭は化合物によって異なり、例えば、アリルイソチオシアネートの場合はにんにく臭、3-ブテニルイソチオシアネートの場合は溶剤臭である。ポリゴジアールを併用することで、にんにく臭や溶剤臭などに代表されるイソチオシアネート類の劣化臭がマスキングされるため、保管後においても良好な風味を維持することができる。風味に違和感を生じる点で特に問題となる劣化臭は、アリルイソチオシアネートの分解によって生じるにんにく臭である。
(スピラントール併用の効果)
イソチオシアネート類、ポリゴジアール及びスピラントールの三成分を併用することで、辛味の発現性がより自然に感じられる。
アブラナ科植物風味飲食品組成物の辛味は、初発から中盤にかけて辛味を強く感じることが1つの特徴である。イソチオシアネート類とポリゴジアールの併用だけでは、中盤の辛味は強く感じるが、初発の辛味にやや物足りなさがある。
そこで、スピラントールを併用することで、初発に辛味を強く感じるため、辛味の発現性がより自然なものに感じられる。
また、スピラントールを併用することで、ポリゴジアール単独で添加した際よりもイソチオシアネート類の劣化臭をよりマスキングすることが可能である。
以下に、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
<A>香料組成物
本発明の香料組成物は、以下の成分から構成される。
〔1〕イソチオシアネート類
本発明に使用するイソチオシアネート類は、ω-アルケニルイソチオシアネート類、ω-メチルチオアルキルイソチオシアネート類、及びω-アルキルイソチオシアネート類からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアネート類である。
ω-アルケニルイソチオシアネート類は、下記式[1]で表される。
式[1]:CH2=CH-(CH2m-NSC
上記式中、mは1~10の整数を表すが、1~8が好ましく、1~5が特に好ましい。
式[1]の構造を有する化合物の具体例としては、アリルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、5-ヘキセニルイソチオシアネート、6-ヘプテニルイソチオシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、アリルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、4-ペンテニルイソチオシアネート、5-ヘキセニルイソチオシアネートが好ましい。
本発明に用いるω-アルケニルイソチオシアネート類は、ワサビなどの天然原料中に含まれるもの、合成で得られるものどちらも利用可能である。
当該化合物の合成方法は、例えば特開平2-221255号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、
CH2=CH-(CH2) m-X
(式中、m は前述したものと同一の意味を有し、X は臭素、塩素、ヨウ素のようなハロゲン原子を表す)
の構造を有するω-アルケニルハライドをチオシアン酸塩と反応させ、得られたω-アルケニルチオシアナートを極性非プロトン性溶媒中で異性化することにより得られる。
ω-メチルチオアルキルイソチオシアネート類は、下記式[2]で表される。
式[2]:CH3-S-(CH2n-NCS
上記式中、nは1~10の整数を表すが、2~8が好ましく、3~7が特に好ましい。
式[2]の構造を有する化合物の具体例としては、3-(メチルチオ)プロピルイソチオシアネート、6-メチルチオヘキシルイソチオシアネート、5-メチルチオペンチルイソチオシアネート、7-メチルチオヘプチルイソチオシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、3-(メチルチオ)プロピルイソチオシアネート、6-メチルチオヘキシルイソチオシアネートが好ましい。
本発明に用いるω-メチルチオアルキルイソチオシアネート類は、ワサビなどの天然原料中に含まれるもの、合成で得られるものどちらも利用可能である。
当該化合物の合成方法は、例えば特開平7-215931号公報に開示されているが、その概略は、不活性溶媒中、
CH2=CH-(CH2) n-2-NCS
(式中、nは3~10の整数を表す)
の構造を有するω-アルケニルイソチオシアナートを、メチルメルカプタンと反応させることにより得られる。
ω-アルキルイソチオシアネート類は、下記式[3]で表される。
式[3]:R-(CH2p-NCS
上記式中、pは0~10の整数を表すが、0~8が好ましく、0~5が特に好ましい。また、Rはフェニル基又は炭素数が1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基を表す。
炭素数が1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基の好ましい例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルなどが挙げられ、メチル、イソプロピル、sec-ブチルが好ましい。
式[3]の構造を有する化合物の例としては、sec-ブチルイソチオシアネート、イソブチルイソチオシアネート、n-ブチルイソチオシアネート、ヘキシルイソチオシアネート、2-フェニエチルイソチオシアネート、イソプロピルイソチオシアネート、アミルイソチオシアネート、3-メチルブチルイソチオシアネート、ベンジルイソチオシアネートなどがある。これらの中でも、sec-ブチルイソチオシアネート、イソブチルイソチオシアネート、ブチルイソチオシアネート、ヘキシルイソチオシアネート、2-フェニエチルイソチオシアネートが好ましい。
本発明に用いるω-アルキルイソチオシアネート類は、ワサビなどの天然原料中に含まれるもの、合成で得られるものどちらも利用可能である。
合成品は市販品を入手して利用してもよい。例えば、シグマアルドリッチ、東京化成工業株式会社、和光純薬株式会社等から購入可能である。
本発明のポリゴジアール及びイソチオシアネート類、場合によってさらにスピラントールを含有することを特徴とするアブラナ科植物の風味を有する香料組成物は、飲食品組成物の辛味を増強する用途として使用する場合には、飲食品組成物中のイソチオシアネート類の濃度が10~5000ppm、好ましくは100~2500ppmとなるように添加する。
一方、飲食品組成物の劣化臭をマスキングする用途で使用する場合には、飲食品組成物中のイソチオシアネート類の濃度が10~5000ppm、好ましくは100~2500ppmとなるように添加する。
この場合、イソチオシアネート類濃度は、香料組成物に含まれるイソチオシアネート類の量とアブラナ科植物風味の飲食品組成物に含まれるイソチオシアネート類の量の合計量である。
また、イソチオシアネート類は飲食品の加工段階で適宜追加することができ、添加の時期はポリゴジアールと必ずしも同時である必要はない。
〔2〕ポリゴジアール
本発明で用いるポリゴジアール(Polygodial、IUPAC名(1R,4aS,8aS)-5,5,8a-Trimethyl-1,4,4a,6,7,8-hexahydronaphthalene-1,2-dicarboxaldehyde)とは、分子式C15222、分子量234.33、融点57℃であり、以下の構造を有するジテルペンアルデヒドである。
Figure 0007339022000002
ポリゴジアールは、植物のヤナギタデやマウンテンペッパーの刺激成分として知られている。
本発明で使用するポリゴジアールは、化学的な手法で合成された合成品の他、動植物から抽出されたものであってもよい。本発明ではいずれの方法により得られたポリゴジアールであっても使用でき、また、本発明の効果が得られる限り、純度が高いものである必要はない。
他の成分の味やにおいがアブラナ科植物風味飲食品の香味に影響を与えない限り、ポリゴジアールを含有する植物の抽出物や精油等を精製することなく使用してもよい。
ポリゴジアールを含む植物としては、ヤナギタデ(Persicaria hydropiper、別名:ウォーターペッパー)、マウンテンペッパー(Polygonum punctatum var.punctatum)、シダ植物であるBlechnum fluviatile、同Thelypteris hispidula、コケ植物であるPorella vernicosaの仲間に含まれることが知られている。
また、動物としては、ウミウシ類に属するDendrodoris limbata、Doriopsilla pharpaもポリゴジアールを含有することが報告されている。
飲食品組成物に使用する場合、安全性の観点からは食経験のある植物から得られる抽出物又は精油を使用することが好ましく、ヤナギタデ、マウンテンペッパーの抽出物又は精油を使用するのが特に好ましい。
ヤナギタデの抽出によるポリゴジアールの採取法を例示すると、抽出溶剤によってヤナギタデの葉(子葉も含む)、茎、および種子から抽出した液を蒸留してポリゴジアールを含む留分を得る方法が挙げられる。
ヤナギタデの抽出処理に使用する抽出溶剤は、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1~3の低級アルコール)、アセトン、酢酸エチルなどをそれぞれ単独あるいは任意の2種類以上の混液として使用することができる。
抽出溶剤の中でも、抽出率、価格、作業の安全性などから、水、エタノール、アセトン、酢酸エチルを単独あるいは任意の2種類以上の混液として使用することが好適であり、酢酸エチルやエタノールが特に好ましい。
抽出溶剤の量は特に制限はなく目的に応じ適宜調整できるが、ヤナギタデ100質量部に対し、300~3000質量部、より好ましくは500~2000質量部が用いられる。
抽出温度は、通常は0~100℃、好ましくは20~50℃、より好ましくは30~40℃で行われる。
抽出時間は、抽出する温度にも依存するが、通常は30分~5時間、好ましくは1~2時間で行われる。
得られた抽出液を、濾紙などを用いて固液分離して、ポリゴジアールを含む粗抽出液を得る。
粗抽出液は、そのまま蒸留工程を行うことができるが、抽出溶剤を留去して濃縮液とすることが好ましい。また、粗抽出液は、抽出溶剤を留去する前に液-液分配抽出により、有効成分であるポリゴジアールを低極性側の溶剤に抽出する、または高極性の夾雑成分を高極性側の溶剤に抽出することで、高極性の夾雑成分を除去することもできる。
液-液分配抽出を行う場合は、粗抽出液と混ざり合わない溶剤を粗抽出液100質量部に対し50~200質量部添加して行う。例えば、抽出溶剤が酢酸エチルであった場合には、水、または水とアルコール類の混液などを用いることができ、抽出溶剤が水、または水とアルコール類の混液であった場合には、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタンなどを用いることができる。
ヤナギタデ濃縮液を蒸留することにより、ポリゴジアールを含有する留分を得る。
蒸留工程は公知の蒸留設備を用いることができる。具体的には、単蒸留、精留、フラッシュ蒸留、短工程蒸留などが挙げられる。
蒸発温度は、150℃を超えるとポリゴジアールが分解してしまい、著しい収率の低下をきたすことから、150℃以下で留出することが必要であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは120℃以下で留出させることが望ましい。そのため油回転ポンプ、メカニカルブースターポンプ、拡散ポンプなどの公知の真空ポンプを用いて減圧下で行う必要がある。
装置が大型化すると留出に必要な熱量が増大し、有効成分の分解やエネルギー効率悪化などの問題があるため、短工程蒸留が最も好ましく、遠心薄膜式や流下薄膜式の装置を用いることができる。
蒸留時の減圧度は、150℃以下でポリゴジアールが留出する圧力であれば限定されないが、より低圧で蒸留することが望ましく、一般的には300Pa以下、好ましくは200Pa以下、より好ましくは100Pa以下、特に好ましくは50Pa以下である。
ヤナギタデ抽出物中のポリゴジアールは含有量が非常に低いため、留分を凝縮させる冷却部に付着して回収率が低下する場合があり、必要に応じて溶剤を用いて冷却部に付着した留分を回収することもできる。
使用できる溶剤に制限はなく、価格、安全性、取扱いのしやすさや用途などから適宜選択することができる。
例えば、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、中鎖脂肪酸エステル、トリアセチン、トリエチルシトレートなどが好適であり、ヤナギタデ抽出物を水溶性製剤として得る場合は、エタノールやその含水物、脂溶性製剤として得る場合には中鎖脂肪酸エステル(構成脂肪酸の炭素数5~炭素数12の中鎖脂肪酸トリグリセライド)などが特に好適である。
使用する蒸留装置によっては、冷却部に付着した留分を溶剤で回収できない、または煩雑な操作が必要で回収が困難な場合があるため、蒸留工程において、蒸留前のヤナギタデ抽出液にあらかじめ補助溶剤を添加しておくことが好ましい。
補助溶剤を含有するヤナギタデ抽出液を蒸留することで留分の量が増加し、溶剤を使った回収操作を行うことなく、効率的にポリゴジアールを含有する留分を回収することができる。
使用する補助溶剤の種類や量は、価格、安全性、取扱いのしやすさや用途などから目的に応じて適宜選択することができるが、ポリゴジアールと同等の沸点であることが好ましく、大気圧下(1気圧)における沸点が180℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、また、700℃以下の溶剤が好ましく、600℃以下がより好ましい。
使用する補助溶剤の沸点が180℃以下であると、冷却管での補助溶剤の回収効率が悪く、700℃以上であると補助溶剤がほとんど蒸留されないため不適である。
補助溶剤の例としては、グリセリン(大気圧下(1気圧)での沸点。以下同じ:290℃)、プロピレングリコール(188℃)、ジプロピレングリコール(232℃)、中鎖脂肪酸エステル(構成脂肪酸の炭素数5~炭素数12の中鎖脂肪酸トリグリセライド)(370~670℃)、トリアセチン(260℃)、トリエチルシトレート(294℃)などが好適である。
ヤナギタデ抽出物を水溶性製剤として得る場合はグリセリン、プロピレングリコール、トリエチルシトレートまたはその混合物が特に好ましく、脂溶性製剤として得る場合には中鎖脂肪酸エステル(構成脂肪酸の炭素数5~炭素数10の中鎖脂肪酸トリグリセライド)が特に好ましい。
補助溶剤は、蒸留前であればどの工程で添加してもよいが、抽出前に添加するか、粗抽出液から抽出溶剤を留去させる前に添加することが望ましい。
補助溶剤の量に特に制限はなく目的に応じ適宜調整できるが、抽出原料として用いるヤナギタデ100質量部に対し、10~500質量部、より好ましくは50~200質量部が用いられる。
補助溶剤を抽出前又は粗抽出液から抽出溶剤を留去させる前に添加する場合には、補助溶剤が留去しない条件で抽出溶剤を留去する。
〔3〕スピラントール
ポリゴジアールに加えてスピラントールを併用することにより、辛味の発現性がより自然に感じられる辛味増強用香料組成物、増強方法、飲食品組成物を提供することができる。また、スピラントールを併用することで、ポリゴジアール単独で添加した際よりもイソチオシアネート類の劣化臭をよりマスキングするマスキング用香料組成物、マスキング方法、飲食品組成物を提供することが可能である。
本発明で用いるスピラントール(Spilanthol、IUPAC名(2E,6Z,8E)-N-Isobutyl-2,6,8-decatrienamide)とは、分子式C1423NO、分子量221.34、融点23℃であり、以下の構造を有する脂肪酸アミドである。
Figure 0007339022000003
本発明で使用するスピラントールは、化学的な手法で合成された合成品の他、動植物から抽出されたものでもよい。
本発明ではいずれの方法により得られたスピラントールであっても使用でき、また、本発明の効果が得られる限り、純度が高いものである必要はない。
他の成分の味や匂いがアブラナ科植物風味飲食品の香味に影響を与えない限り、スピラントールを含有する植物の抽出物や精油等を精製することなく使用してもよい。
飲食品組成物に使用する場合,安全性の観点からは食経験のある植物から得られる抽出物又は精油を使用することが好ましく、また、供給、価格等の実用性の観点から、スピラントール含量の多いオランダセンニチ(Spilanthes acmella)又はキバナオランダセンニチ(Spilanthes acmella var. oleracea)の抽出物又は精油を使用するのが特に好ましい。
スピラントールの抽出法を例示すると、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの花頭を乾燥・粉砕した後、有機溶媒で抽出してスピラントールを含有する抽出液を得る方法が挙げられる。
抽出に使用する有機溶媒は特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。
中でも、アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、安全性の観点から特にエタノールが好ましい。得られた抽出液から溶媒を留去し、スピラントール含有抽出物が得られる。
〔4〕各構成成分の配合割合
香料組成物におけるポリゴジアールの配合割合は、一般的にはイソチオシアネート類1000質量部に対して0.0001~10、好ましくは0.0005~5、より好ましくは0.001~2、さらに好ましくは0.001~1、特に好ましくは0.005~0.5である。
香料組成物において、ポリゴジアールの濃度が好ましくは100ppb~1%、特に好ましくは1~1500ppmであり、イソチオシアネート類の濃度が100ppm~99%、好ましくは1000ppm~75%、特に好ましくは1~50%である。
スピラントールを併用する場合は、ポリゴジアール1質量部に対して、一般にスピラントールを0.01~100質量部、好ましくは0.02~50、特に好ましくは0.1~10の割合で併用する
アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の辛味増強用香料組成物として使用する場合のポリゴジアールの配合割合は、一般的にはイソチオシアネート類1000質量部に対して0.0001~10、好ましくは0.0005~5、より好ましくは0.001~2、さらに好ましくは0.001~1、特に好ましくは0.005~0.5である。
この場合、辛味増強用香料組成物中のポリゴジアールの濃度が好ましくは100ppb~1%、特に好ましくは1~1500ppmであり、イソチオシアネート類の濃度が100ppm~99%、好ましくは1000ppm~75%、特に好ましくは1~50%である。
アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物のマスキング用香料組成物として使用する場合のポリゴジアールの配合割合は、一般的にはイソチオシアネート類1000質量部に対して0.0001~10、好ましくは0.0005~5、より好ましくは0.001~2、さらに好ましくは0.001~1、特に好ましくは0.005~0.5である。
この場合、マスキング用香料組成物中のポリゴジアールの濃度が好ましくは100ppb~1%、特に好ましくは1~1500ppmであり、イソチオシアネート類の濃度が100ppm~99%、好ましくは1000ppm~75%、特に好ましくは1~50%である。
〔5〕付加的成分
本発明の香料組成物には、さらに飲食品組成物に一般的に用いられる香料成分や、着色料、酸化防止剤、保存料等を添加することもできる。
香料成分としては、特許庁「周知慣用技術集(香料)第II部 食品用香料」(2000年1月14日発行)等に記載されている各種天然香料、合成香料を本発明の効果を損なわない範囲で、特に制限なく使用することができる。
<B>アブラナ科植物
本発明におけるアブラナ科植物とは、アブラナ科(学名:Brassicaceae)に分類され、アリルイソチオシアネート類又はその配糖体(グルコシノレート又はカラシ油配糖体)を含有するものをいう。
具体的には、ワサビ(学名Eutrema japonicum (Miq.) Koidz.)、カラシ(白辛子(学名Sinapis alba)、黒辛子(学名Brassica nigra))、西洋ワサビ(学名Armoracia rusticana)、ダイコン、カブ、キャベツ、カラシ菜などが該当する。
<C>アブラナ科植物風味飲食品組成物>
本発明の香料組成物が配合、添加される対象のアブラナ科植物風味飲食品組成物とは、上記アブラナ科植物の風味成分を含むことによって、あるいは実際にはワサビ成分を含んでいなくても合成香料等でアブラナ科植物風に味付けされた飲食品組成物や加工飲食品をいう。
すなわち、本発明の香料組成物が使用される飲食品組成物は、アブラナ科植物風味付けされた可食性のものであれば特に限定されることはなく、例えば、スープなどの飲料、スナック菓子などの菓子、タブレット状の錠菓、チューインガム、チーズなどの酪農・油脂製品、味噌、醤油、食酢、ウスターソース、トマトケチャップ、焼き肉のたれ、ドレッシング、香辛料などの調味料、食肉加工品、水産加工品、調理食品、冷凍食品、口腔製品、医薬品などが例示される。
特に、辛味の減退が顕著な水性飲食品に好適である。水性飲食品とは水を主成分とした液状の食品のことであり、例えば、つゆ、たれ、ドレッシング、出汁、スープ、ウスターソース、漬け液、ピクルス液、ぽん酢、コンソメ、清涼飲料水などが挙げられる。
<D>香料組成物の飲食品組成物に対する適用
〔1〕剤形
上記飲食品組成物の詳細及び、該飲食品組成物への香料組成物の使用の態様については、「特許庁公報『周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料』、平成12年1月14日発行、第897~901頁」に記載の方法が通常採用される。
すなわち、調製された香料組成物は、そのまま、あるいはエタノールのようなアルコール類、動植物油類、フロピレングリコール、グリセリンのような多価アルコール類に任意に溶解した溶液状、また、アラビアガム、トラガントガム等のような公知の天然ガム質類、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類等のような公知の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリン等のような公知の賦形剤を用いて被覆させた粉末状、あるいは公知のカプセル化処理して得られるマイクロカプセル等、その使用目的により任意の形状を選択して用いられる。さらに、シクロデキストリンなどの公知の包接剤で包接して、安定化かつ徐放性にしてその効果を持続させる方法も用いられる。この他に、ぺースト状や顆粒状タイプの態様であってもよい。
本発明の香料組成物は、乳化製剤あるいは乳化粉末製剤としても用いることができる。
この場合において本発明で用いられる乳化剤の例としては、エンジュサポニン、オオムギ穀皮抽出物、アラビアガム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、ポリソルベート類、キラヤ抽出物、グリセリン脂肪酸エステル類、酵素処理ダイズサポニン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、植物性ステロール類、植物レシチン、スフィンゴ脂質、ショ糖脂肪酸エステル類、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル類、ダイズサポニン、胆汁末、チャ種子サポニン、動物性ステロール類、トマト糖脂質、ビートサポニン、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、分別レシチン、ユッカフォーム抽出物、卵黄レシチンなどが例示され、好ましくはアラビアガム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、ポリソルベート類、キラヤ抽出物、グリセリン脂肪酸エステル類、酵素処理レシチン、植物レシチン、スフィンゴ脂質、ショ糖脂肪酸エステル類、ステアロイル乳酸カルシウム、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、卵黄レシチンなどが例示される。
〔2〕配合量
本発明の香料組成物は、飲食品組成物に対して、飲食品組成物中のポリゴジアールの濃度が0.5ppb~1000ppb、好ましくは1~500ppbであり、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppm、好ましくは100~2500ppmであるように配合することが好ましい。
ここで、香料組成物をアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の辛味増強剤として使用する場合は、辛味増強用香料組成物を飲食品組成物中のポリゴジアール濃度が0.5ppb~1000ppb、好ましくは1~500ppb、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppm、好ましくは100~2500ppmとなるように添加する。
また、香料組成物をアブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の劣化臭のマスキング剤として使用する場合は、マスキング用香料組成物を飲食品組成物中のポリゴジアール濃度が0.5ppb~1000ppb、好ましくは1~500ppb、イソチオシアネート類の濃度が10~5000ppm、好ましくは100~2500ppmとなるように添加する。
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔調製例1〕
水92gに、食塩5g、醸造酢(酸度4.2%)3.5g、グルタミン酸ナトリウム0.5gを加えて溶解することで、pH4.5の漬けだれベースを作製した。
〔調製例2〕
調製例1の漬けだれベースに、ワサビ香料(アリルイソチオシアネート33.3%含有、小川香料株式会社製)を0.075質量%添加して、アリルイソチオシアネートを250ppm含有するワサビ風味漬けだれベースを作製した。
〔製造例1〕
ヤナギタデ(JA筑前あさくら,商品名「四季紅」)100gに対し、酢酸エチルを1000g加え40℃で1時間抽出後、固液分離し、粗抽出液900gを得た。
得られた粗抽出液にトリエチルシトレート100gを加え、減圧下(100mmHg、40℃)で酢酸エチルを除去した後、流下薄膜式短工程蒸留装置を用いて、20Pa、120℃で蒸留し、ポリゴジアール500ppmを含有するヤナギタデ抽出物90gを得た。
〔比較例1〕
調製例2のワサビ風味漬けだれベースを比較例1とした。
〔比較例2〕
調整例1の漬けだれベースにポリゴジアール(和光純薬製)を後掲の表1の濃度になるように添加し、比較例2とした。
〔比較例3、実施例1~4〕
比較例1のワサビ風味漬けだれベースにポリゴジアール(和光純薬製)を後掲の表1の濃度になるように添加し、比較例3、実施例1~4とした。
〔実施例5〕
比較例1のワサビ風味漬けだれベースに製造例1のヤナギタデ抽出物をポリゴジアールが120ppbになるように添加し、実施例5とした。
〔実施例6〕
比較例1のワサビ風味漬けだれベースにマウンテンペッパーオイル(ESSENTIAL OILS OF TASMANIA PTY LTD製、ポリゴジアール含量20%)をポリゴジアールが120ppbになるように添加し、実施例6とした。
〔試験例1〕
習熟した10名のパネルにより,調製直後の比較例1を対照として、以下の評価基準で官能評価を行った。
調製直後の評価を評価1、冷蔵庫で2週間保管した際の評価を評価2とした。点数を記録し、サンプル毎に10人の採点の平均値を求めて評価結果とした。結果を「表1」に示した。
評価基準(辛味の強度)
0: 対象と比較して、辛味がまったく感じられない
1: 対象と比較して、辛味がかすかに感じられる
2: 対象と比較して、辛味が弱い
3: 対象と比較して、辛味がやや弱い
4: 対象と比較して、辛味がわずかに弱い
5: 対象と比較して、同程度の辛味を感じる
6: 対象と比較して、辛味がわずかに強い
7: 対象と比較して、辛味がやや強い
8: 対象と比較して、辛味が強い
9: 対象と比較して、辛味がかなり強い
10: 対象と比較して、辛味が非常に強い
Figure 0007339022000004
「表1」に記載の通り、アリルイソチオシアネートを含有するワサビ風味漬けだれベースに、ポリゴジアールを2~120ppb(アリルイソチオシアネート1000質量部に対し、ポリゴジアールを0.008~0.48質量部)を添加することで辛味を増強し、さらに、冷蔵庫で2週間保管後の辛味も保持できることが分かった。
また、ヤナギタデ抽出物、マウンテンペッパー抽出物を用いてもポリゴジアール純品と同様の辛味保持効果が認められた。
ポリゴジアールを200ppb添加しても、香味に影響を与えなかった。
〔試験例2〕
市販のチューブ入り練りワサビ(イソチオシアネート類約1200ppm含有、各イソチオシアネート類の含有量は「表2」参照)にポリゴジアール(和光純薬製)、およびスピラントール(小川香料社製)を後掲の「表3」の濃度になるように添加して、比較例4および実施例7~24とし、ポリゴジアール、スピラントール無添加品を対照品とし、習熟した10名のパネルにより、以下の評価基準に従い評価を行った。
評価項目に記載の「トップ」の辛味とは、口に入れた瞬間の辛さであり、「ミドル~ラスト」の辛味はそれ以降に感じる辛味を指す。また、「風味のわさびらしさ」とは、グリーン感が強く、沢わさびに近い辛味を有する風味を指す。
評価基準
+++:非常に効果有り(対照と比較し、8名以上が効果を認識)
+ + :効果有り (対照と比較し、5名以上が効果を認識)
+ :やや効果有り (対照と比較し、3名以上が効果を認識)
・ :効果/変化なし(対照と比較し、3名未満が効果を認識)
Figure 0007339022000005
Figure 0007339022000006
「表3」から明らかなように、スピラントールはチューブ入り練りワサビ中120ppbまで添加しても、それ自体は無刺激でワサビの辛味を増強しなかったのに対し、ポリゴジアール2~400ppb(イソチオシアネート類1000質量部に対してポリゴジアール0.002~0.33)、ポリゴジアール1質量部に対してスピラントール0.03~25質量部を併用することで、トップからラストにかけての全体的な辛味を付与することができることが分かった。
〔試験例3〕
調製例2のワサビ風味の漬けだれベースにポリゴジアール(和光純薬製)、およびスピラントール(小川香料社製)を後掲の「表4」の濃度になるように加え、比較例5および実施例25~28とした。
調製直後の評価を「評価1」、冷蔵庫で2週間保管した際の評価を「評価2」とし、比較例1を対照品とし、習熟した10名のパネルにより、試験例2記載の評価基準に従い評価を行った。
Figure 0007339022000007
Figure 0007339022000008
「表4」に記載の通り、ポリゴジアールはワサビ風味の漬けだれベース中において、調製直後の辛味を付与するのみならず、保管後の風味も保持できることが分かった。また、ポリゴジアール単独ではミドル~ラストに辛味が付与されていたが、ポリゴジアール1質量部に対し、スピラントール0.5~25質量部と併用することで、全体的に辛味が付与されよりわさびらしさがより強まった。
〔試験例4〕
調製例2のワサビ風味の漬けだれベースにポリゴジアール(和光純薬製)、およびスピラントール(小川香料社製)を後掲の表5の濃度になるように加え、比較例6および実施例29、30とした。
調製直後の評価を評価1、室温で1週間保管した後の評価を評価2とし、習熟した6名のパネルにより、比較例1を対照として、辛味および室温保管によって生じた劣化臭の強さを、以下の評価基準で官能評価を行った。点数を記録し、サンプル毎に6人の採点の平均値を求めて評価結果とした。
評価基準
1:非常に弱く感じられる
2:かなり弱く感じられる
3:弱く感じられる
4:対照品と同等
5:強く感じられる
6:かなり強く感じられる
7:非常に強く感じられる
Figure 0007339022000009
「表5」に記載の通り、ポリゴジアールはワサビ風味飲食品組成物で発生する劣化臭を抑制することが分かった。ポリゴジアールとスピラントールとを併用することでポリゴジアール単独よりも劣化臭を抑制することがわかった。
〔試験例5〕
市販のチューブ入り練りからし(アリルイソチオシアネート1000ppm含有)にポリゴジアール(和光純薬製)、およびスピラントール(小川香料社製)を後掲の「表6」の濃度になるように添加して、実施例31、32とし、ポリゴジアール、スピラントール無添加品を対照品とし、習熟した6名のパネルにより、辛味の強さを試験例4記載の評価基準に従い評価を行った。
Figure 0007339022000010
前掲の「表6」に記載の通り、チューブ入り練りからしにポリゴジアール、ポリゴジアールとスピラントールを併用することで、異味異臭なくからしの辛味を増強することが分かった。
〔試験例6〕
後掲の「表7」の組成に従い、イソチオシアネート類を計り取り、中鎖脂肪酸グリセリンエステル(花王株式会社、商品名:「ココナード」)に溶解することで、ポリゴジアール及びイソチオシアネート類を含有するアブラナ科植物の風味を有する組成物を調製し、本発明品1~17とした。
〔製造例2〕
液糖(Bx.75°)400gにキラヤニン(丸善製薬社製「キラヤニンC-100」、キラヤ抽出物20%含有)50g、水66g及び95%エタノール34gを混合溶解し水相部とした。
これにワサビオイル(イソチオシアネート類95%含有、小川香料社製)420g、製造例1のヤナギタデ抽出物30gを混合し、TK-ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて10000rpmで20分間撹拌し、ワサビ風味乳化香料1000gを得、本発明品18とした。
なお、ワサビオイルの各イソチオシアネート類の含有割合については、「表8」に記載した。
Figure 0007339022000011
Figure 0007339022000012
Figure 0007339022000013
Figure 0007339022000014
〔飲食品への適用〕
(1)ドレッシング
市販の和風ドレッシング(イソチオシアネート類の含有なし)に、本発明品1~18、アリルイソチオシアネート、「表8」のワサビオイル(イソチオシアネート類95%含有、小川香料社製)を「表9」記載の添加率で添加し良く混合して、ドレッシングのサンプルを得た。
(2)マヨネーズ
市販のマヨネーズ(イソチオシアネート類の含有なし)に、本発明品1~18、アリルイソチオシアネート、「表8」のワサビオイル(イソチオシアネート類95%含有、小川香料社製)を「表9」記載の添加率で添加し良く混合して、マヨネーズのサンプルを得た。
(3)佃煮
市販の海苔の佃煮(イソチオシアネート類の含有なし)に、本発明品1~18、アリルイソチオシアネート、「表8」のワサビオイル(イソチオシアネート類95%含有、小川香料社製)を「表9」記載の添加率で添加し良く混合して、海苔の佃煮のサンプルを得た。
(1)~(3)で作製したサンプルを、習熟した6名のパネルが製造直後と冷蔵2週間保管後で評価を行った。その結果、製造直後と冷蔵2週間保管後の評価ともに、6名全員がわさびとして良好な辛味が感じられるとのコメントだった。

Claims (9)

  1. ポリゴジアール及びイソチオシアネート類を、イソチオシアネート類1000質量部に対してのポリゴジアールの比率が0.005~10質量部となるように含有することを特徴とするアブラナ科植物の風味を有する飲食品用香料組成物。
  2. イソチオシアネート類が下記式[1]で表されるω-アルケニルイソチオシアネート類、下記式[2]で表されるω-メチルチオアルキルイソチオシアネート類、及び下記式[3]で表されるω-アルキルイソチオシアネート類からなる群より選ばれた1種又は2種以上のイソチオシアネート類である請求項1記載の香料組成物。
    Figure 0007339022000015
  3. ポリゴジアールの濃度が100ppb~1%、イソチオシアネート類の濃度が100ppm~99%であることを特徴とする請求項1または2に記載の香料組成物。
  4. ポリゴジアールが、ポリゴジアールを含有する植物抽出物又は精油に含まれるポリゴジアールであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の香料組成物。
  5. アブラナ科植物がワサビ又はカラシであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の香料組成物。
  6. スピラントールと併用することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の香料組成物。
  7. ポリゴジアール1質量部に対して、スピラントールを0.01~100質量部の割合で併用することを特徴とする請求項に記載の香料組成物。
  8. 香料組成物が、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の辛味増強用香料組成物であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の香料組成物。
  9. 香料組成物が、アブラナ科植物の風味を有する飲食品組成物の劣化臭マスキング用香料組成物であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の香料組成物。
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