以下では、本発明の一実施形態に係る二次電池をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観および/または寸法比などは実物と異なり得る。
本明細書で直接的または間接的に説明される「断面視」は、二次電池を構成する電極組立体または電極構成層の積層方向に沿って二次電池を切り取った仮想的な断面に基づいている。同様にして、本明細書で直接的または間接的に説明される“厚み”の方向は、二次電池を構成する電極材の積層方向に基づいている。例えばボタン型またはコイン型などの「板状に厚みを有する二次電池」でいえば、“厚み”の方向は、かかる二次電池の板厚方向に相当する。本明細書で用いる「平面視」とは、かかる厚みの方向に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。
また、本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材もしくは部位または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」に相当し、その逆向きが「上方向」に相当すると捉えることができる。
本明細書で言及する各種の数値範囲は、「未満」や「より多い/より大きい」などの特段の用語が付されない限り、下限および上限の数値そのものも含むことを意図している。つまり、例えば1~10といった数値範囲を例にとれば、下限値の“1”を含むと共に、上限値の“10”も含むものとして解釈され得る。
[二次電池の基本構成]
本明細書でいう「二次電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本発明に係る二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば蓄電デバイスなども対象に含まれ得る。
本発明に係る二次電池は、正極、負極及びセパレータを含む電極構成層が積層した電極組立体を有して成る。図1には電極組立体10を例示している。図示されるように、正極1と負極2とはセパレータ3を介して積み重なって電極構成層5を成しており、かかる電極構成層5が少なくとも1つ以上積層して電極組立体10が構成されている。二次電池ではこのような電極組立体が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。なお、電極組立体の構造は平面積層構造(図1(A)参照)に必ずしも限定されず、例えば、正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータを含む電極ユニット(電極構成層)をロール状に巻回した巻回構造(図1(B)参照)を有していてもよい。つまり、電極組立体10は、例えば図1(A)に示すように、電極構成層5が互いに積み重なるように積層した構成を有していてよい。あるいは、電極組立体10は、例えば図1(B)に示すように、帯状に比較的長く延在する電極構成層5がロール状に巻回された巻回構造を有していてもよい。また例えば、電極組立体は、正極、セパレータおよび負極を長いフィルム上に積層してから折りたたんだ、いわゆるスタック・アンド・フォールディング型構造を有していてもよい。
正極は、少なくとも正極材層および正極集電体から構成されている。正極では正極集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられており、正極材層には電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の正極は、それぞれ、正極集電体の両面に正極材層が設けられているものでよいし、あるいは、正極集電体の片面にのみ正極材層が設けられているものでもよい。
負極は、少なくとも負極材層および負極集電体から構成されている。負極では負極集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられており、負極材層には電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の負極は、それぞれ、負極集電体の両面に負極材層が設けられているものでよいし、あるいは、負極集電体の片面にのみ負極材層が設けられているものでもよい。
正極および負極に含まれる電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれる正極活物質」および「負極材層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であってよい。つまり、本発明に係る二次電池は、非水電解質を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる非水電解質二次電池となっていてよい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本発明に係る二次電池は、いわゆる“リチウムイオン電池”に相当し、正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する。
正極材層の正極活物質は例えば粒状体から構成されるところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極材層に含まれていてよい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質は例えば粒状体から構成されるところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれていてよく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層はそれぞれ“正極合材層”および“負極合材層”などと称すこともできる。
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であってよい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であってよい。つまり、本発明に係る二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として好ましくは含まれている。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
正極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体およびポリテトラフルオロエチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。
正極材層の厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上300μm以下であってよく、例えば5μm以上200μm以下である。正極材層の厚み寸法は二次電池内部での厚みであり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物、および/または、リチウム合金などであってよい。
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金であってよい。このような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていてよい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。
負極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極材層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
負極材層の厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上300μm以下であってよく、例えば、5μm以上200μm以下である。負極材層の厚み寸法は二次電池内部での厚みであり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
正極および負極に用いられる正極集電体および負極集電体は電池反応に起因して電極活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような電極集電体は、シート状の金属部材であってよい。また、このような電極集電体は多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えばアルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えば銅箔であってよい。
正極集電体および負極集電体の各厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上100μm以下であってよく、例えば10μm以上70μm以下である。正極集電体および負極集電体の厚み寸法は二次電池内部での厚みであり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
正極および負極に用いられるセパレータは、正負極の接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極と間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。例えば、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有していてよい。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ又はポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成される積層体であってもよい。セパレータの表面が無機粒子コート層および/または接着層等により覆われていてもよい。セパレータの表面が接着性を有していてもよい。なお、本発明において、セパレータは、その名称によって特に拘泥されるべきでなく、同様の機能を有する固体電解質、ゲル状電解質、および/または絶縁性の無機粒子などであってもよい。
セパレータの厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上100μm以下であってよく、例えば2μm以上20μm以下である。セパレータの厚み寸法は二次電池内部での厚み(特に正極と負極との間での厚み)であり、任意の10箇所における測定値の平均値を採用してよい。
本発明の二次電池では、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層から成る電極組立体が電解質と共に外装体に封入されていてよい。電解質は電極(正極および/または負極)から放出された金属イオンの移動を助力することができる。電解質は有機電解質および有機溶媒などの“非水系”の電解質であってよく、または水を含む“水系”の電解質であってもよい。正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する場合、電解質は有機電解質・有機溶媒などを含んで成る“非水系”の電解質であることが好ましい。すなわち、電解質が非水電解質となっていることが好ましい。電解質では電極(正極および/または負極)から放出された金属イオンが存在することになり、それゆえ、電解質は電池反応における金属イオンの移動を助力することになる。なお、電解質は液体状またはゲル状などの形態を有していてよい。
非水電解質は、溶媒と溶質とを含む電解質である。具体的な非水電解質の溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものであってよい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。あくまでも例示にすぎないが、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられてよく、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物を用いてよい。また、具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPF6および/またはLiBF4などのLi塩などが用いられてよい。
二次電池の外装体は、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層が積層した電極組立体を収納する又は包み込むことができる部材である。後述するが、本発明において、外装体は、非ラミネート構成を有する金属外装体であってよい。
[本発明の二次電池の特徴]
本発明の二次電池は、その外部出力端子の構成に特徴を有している。つまり、二次電池において外部機器との接続に供する出力端子の構成の点で特徴を有している。具体的には、外装体には、絶縁材を介して接合された金属板が具備されており、その金属板が外部出力端子となっている。
図2(A)および(B)に示すように、本発明の二次電池において、外部出力端子60は、金属板62と絶縁材64とから少なくとも構成されている。外装体50には開口部55が設けられており、その開口部55の周囲に位置する外装体表面上に絶縁材64を介して金属板62が配置されている。
好ましくは絶縁材64の接合性に起因して、金属板62は絶縁材64を介して外装体50に貼り付けられている。外装体50に設けられた開口部55の周囲領域にて金属板62が絶縁材64を介して外装体50に接合されているといえる。金属板には、電極組立体から延在するタブが接続されている。より具体的には、図3に示すように、電極組立体から延在するタブ70が、開口部55に設けられた金属板62に取り付けられている。つまり、電極組立体から延在する正極または負極のいずれか一方の導電タブ70が外装体50の金属板62の内側面に対して接続されている。特に、図3(A)に示すように金属板62が外装体50の外側に位置付けられている場合では、タブ70が外装体50の開口部55を介して金属板62に取り付けられている。
タブ70は、電極組立体の電極集電体から成るものであってよい。つまり、タブ70は、電極集電体のうち電極材が設けられていない部分から成るものであってよい。あるいは、タブ70は、電極組立体(特に、その電極)に設けられた集電リードであってよい。かかる集電リードは、導電性を有しており、例えば金属から成るところ、薄肉形態および/または長尺形態を有していてよい。このような導電性を有するタブは、可撓性を有しており、後述するベント機構に資するべく、撓んだような形態および/または曲げられた形態で設けられてよい。
絶縁材64は、外装体表面上において開口部55の周縁に沿うように設けられていてよい。より好適な絶縁に供すべく、絶縁材64は金属板62よりも外側の領域まで広がるように設けられていてよい。つまり、例えば図2(A)および図2(B)に示すように、金属板62から外側へとはみ出すように絶縁材64が外装体50に設けられていてよい。同様に、より好適な絶縁に供すべく、絶縁材64は、外装体50の開口部55の縁を超えるようにより内側にも設けられてもよい。つまり、例えば図2(A)および図2(B)に示すように、外装体50にて開口部55を形造っている縁部分55aを超えるように絶縁材64が内側に延在していてよく、それゆえ絶縁材64の一部が開口部55の領域に及んでいてもよい。
金属板62は外装体に沿う形状であってよい。例えば、金属板62は外装体50の形に沿うように図面における横方向に並行に構成されている。つまり、図示されるような断面視において、金属板62と、それが設けられている外装体50の面とが互いに並行な配置関係または形態を有していてよい。また、絶縁材も外装体に沿う形の形状で構成されていてよい。例えば、金属板62と同様、絶縁材64は外装体50の形に沿うように図面における横方向に並行に構成されている。つまり、図示されるような断面視において、絶縁材64と、それが設けられている外装体50の面とが互いに並行な配置関係または形態を有していてよい。
このように金属板を絶縁材を介して金属外装体に貼り付けた比較的シンプルな構造ゆえ、従前のリベット型の出力端子に比べ、簡易かつ安価な二次電池となり易い。また、本発明における外部出力端子は、封止に要するスペースも小さく、それゆえ電池小型化に寄与し、エネルギー密度向上にも寄与し得る。
本発明における外部出力端子は、いわゆる“カシメ”構成を含んでいない(以下では、そのようにカシメを含んでいない端子の構成を「非カシメ構成」とも称する)。つまり、絶縁材を介して金属板を外装体に貼り付けるに際しては、その金属板が変形するほどの大きな力は加えられていない。よって、所望の封止力を供しつつも絶縁材が極端に薄くなったり、切れたりする虞は減じられている。つまり、本発明における外部出力端子では、所望の絶縁が損なわれるような不都合な事象は抑制されている。
本発明における金属板は非カシメ金属板となっている。また、そのような非カシメ金属板ゆえ、例えば、断面視にて金属板が同一平面上に延在している。端的にいえば、外部出力端子の金属板は、全体として曲げ形状を有しておらず、平板状の形態を有している。図2(A)および図2(B)に示すように、外部出力端子を成す金属板62の断面視形状が例えば矩形状になっている。このような金属板は、加圧変形の履歴を受けておらず、材質の観点からより長期の安定性がもたらされ易い。つまり、二次電池の長期使用に適した外部出力端子となり易い。
金属板は、その材質に特に制限はなく、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス(SUS)および銅から成る群から選択される少なくとも1種であってよい。金属板が、異なる金属材質から成る複数の層を有していてもよい。金属板の平面視形状は特に制限はなく、例えば円形であってよく、あるいは四角形などを含む矩形であってもよい。金属板の表面に適当な表面処理がなされていてもよい。なお、本明細書における「ステンレス」は、例えば「JIS G 0203 鉄鋼用語」に規定されているステンレス鋼のことを指しており、クロムまたはクロムとニッケルとを含有させた合金鋼であってよい。
また、本発明の一実施形態では、非カシメ構成ゆえ、例えば断面視において絶縁材も同一平面上に延在していてよい。つまり、外部出力端子における絶縁材の断面視形状が、曲げ形状となっておらず、例えば矩形状になっていてよい。図2(A)および2(B)に示すように、絶縁材64の厚みが実質的に一定となっていてよい。このような絶縁材は、外部出力端子の設置に際して加圧変形の作用がより減じられた絶縁材といえる。
絶縁材64の材質は、“絶縁性”および“接合性”を呈すのであれば特に制限はない。絶縁材64は樹脂材を含んで成るものであってよい。例えば、絶縁材64は熱可塑性樹脂を含んで成るものであってよい。あくまでも1つの具体的な例示にすぎないが、絶縁材は、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレンなどのポリオレフィンを含んで成るものであってよい。
絶縁材64はフィルム形態を有していてよい。つまり、絶縁材64は膜形態、即ち、薄い形態を有していてよい。例えば、最終形状に近い形態を有するフィルム状の絶縁材前駆体を用いて絶縁材64が設けられてもよい。
本発明の二次電池において、外装体50は好ましくは金属外装体である。例えば図4ならびに図5(A)および5(B)に示すように、外装体50として金属外装体は、カップ状部材52および蓋状部材54の2パーツ構成を有していてよい。本明細書における「カップ状部材」は、胴部に相当する側面部とそれに連続する主面部(典型的な態様では、例えば底部)を有して成り、内側に中空部が形成されるような部材を意味している。本明細書における「蓋状部材」は、そのようなカップ状部材に対して蓋をするように設けられる部材を意味している。蓋状部材は、例えば同一平面状に延在する単一部材(典型的には平板状の部材)であってよい。外装体においては、蓋状部材の外縁部分とカップ状部材の側面部の上端部分とが互いに合わさるように蓋状部材とカップ状部材とが組み合わされてよい。
本発明の二次電池において、金属外装体は、非ラミネート構成を有していることが好ましい。つまり、好ましくは外装体が全体としてラミネート構成を有していない。よって、本発明において金属外装体は、例えば金属シート/融着層/保護層のラミネート部材などとはなっていない。本発明における金属外装体が、いわゆるラミネートフィルムから成るようなパウチに相当するソフトケース型電池の外装体とは異なっているといえる。
好ましくは、金属外装体は、金属単一部材から成る構成を有している。例えば、金属外装体は、ステンレス(SUS)、アルミニウムなどの金属から成る単一部材であってよい。ここでいう「金属単一部材」とは、広義には、外装体がいわゆるラミネート構成を有さないことを意味しており、狭義には、外装体が実質的に金属のみから成る部材となっていることを意味している。したがって、実質的に金属のみから成る部材となるのであれば、金属外装体の表面に適当な表面処理がなされていてもよい。例えば、そのような金属外装体をその厚み方向に切断した切断面においては、表面処理などが為されている部分を除き、単一の金属層を確認できる。
非ラミネート構成ゆえ、金属外装体は、比較的薄い厚さを有し得る。例えば、本発明における金属外装体は、その厚さ寸法が50μm以上200μm未満であってよく、例えば、50μm以上190μm以下、50μm以上180μm以下、あるいは、50μm以上170μm以下などであってよい。このような薄い外装体は、二次電池の小型化やエネルギー密度向上に寄与するところ、本発明ではその外装体の“薄さ”に起因する不都合な事象は抑制されている。これにつき詳述しておく。従前のリベット型の外部出力端子では、上述したように、“カシメ”に伴う圧縮力に起因して外装体50’のエッジ近傍に存在する絶縁部90’の領域95’が極端に薄くなったり、切れたりする虞がある(図19参照)。特に、このような不都合な事象は、外装体50’の厚さが小さくなればなるほど顕在化しやすい。外装体50’がより薄くなれば、絶縁部90’の領域95’を局所的により薄くする応力やそれに切れをもたらす応力がより集中する傾向となるからである。この点、本発明では、非カシメ構成ゆえ、金属外装体の厚さが薄くても、そのような不都合な事象は引き起こされない。つまり、本発明における外部出力端子では、所望の封止力を損なうことなく二次電池の小型化やエネルギー密度の向上を図ることが可能となっている。
金属外装体がカップ状部材および蓋状部材から成る場合、カップ状部材と蓋状部材とが互いに接合で気密封止されていてよい。つまり、カップ状部材と蓋状部材とがカシメられておらず、それゆえ、カシメによる気密封止がなされていなくてよい。これにより、カシメ接合がなされている外装体を備えた二次電池よりも、省スペース化が図られた二次電池となり易い。つまり、カップ状部材と蓋状部材との非カシメ形態は、二次電池の小型化およびエネルギー密度向上に好適に寄与する。
ある好適な態様では、外部出力端子は正極および負極の一方であり、外装体は正極および負極の他方である。これにより、二次電池の部品点数を減らすことができ、セル厚み方向において出力に必要なスペースが上下面に端子板を設ける場合と比べ半減され得る。
例えば、二次電池の正極側が外部出力端子の金属板にのみ設けられる一方、その二次電池の負極側は外装体のいずれの領域にも設けることができる。つまり、正極側のみに金属板の外部出力端子を採用し、負極側は金属外装体のいずれの場所からも外部接続をとることが可能となっていてよい。このように端子板(すなわち、金属板)を用いて出力する方を正極とすると、金属外装体(すなわち、全体として金属“缶”を成す側)は負極となる。よって、正極に比べて負極面積を大きく設計するリチウムイオン電池として仮に電極が缶内装に接触した場合であっても大きな短絡を引き起こす虞は低減され得る。
本発明は、種々の態様で具現化できる。以下それについて説明する。
(外装体の内側に位置する外部出力端子)
かかる態様は、外部出力端子が外装体に対して内側に位置付けられた態様である。図6に示すように、かかる態様では金属板62が外装体50の内側に位置付けられている。絶縁材64が外装体50の内側に配置されているところ、金属板62がその絶縁材64を介して外装体50の内側に貼り付けられているといえる。かかる態様では、外装体の外側表面レベルよりも内側に金属板が位置付けられるので、二次電池は、その外部出力端子の箇所が凹んだ形態を有し得る。
外部出力端子が外装体の内側に位置付けられる場合、従前のリベット型の出力端子に比べ、外装体の外側への突出はなく、その分だけ電池のエネルギー密度の向上を図り易い。また、外部出力端子が外装体の内側に位置付けられる態様は、二次電池と接続される外部機器側の接続箇所が凸部を有する場合に好適となり、二次電池の設計自由度の向上に寄与し得る。
図7に示すように、かかる態様では金属板62の外側面に金属部材67が更に設けられてもよい。二次電池において外部機器との接続がより容易になる可能性が高くなるからである。金属部材67は金属板62に直接設けられていてよい。金属部材67に対して、電極組立体から延在するタブが接続されていてよい。かかる金属部材67は金属板62よりも厚みが大きいものであってよい。また、図示するように、金属部材67の外側表面は、外装体50の外側面と実質的に同一レベルとなっていてよい。このように金属部材67が設けられることによって、外部出力端子において外部機器との接続容易化が助力され得る。かかる金属部材67の材質は、金属板62と同じであってよく、あるいは、異なっていてもよい。
(外装体の外側に位置する外部出力端子)
かかる態様は、外部出力端子が外装体の外側に対して位置付けられた態様である。図8に示すように、かかる態様では金属板62が外装体50の外側に位置付けられている。絶縁材64が外装体50の外側に設けられているところ、金属板62がその絶縁材64を介して外装体50の外側に貼り付けられているといえる。かかる態様では、外装体の外側表面レベルよりも外側に金属板が位置付けられるので、二次電池は、その外部出力端子の箇所が凸状に隆起した形態を有することになる。
外部出力端子が外装体の外側に位置付けられる場合、従前のリベット型の出力端子に比べ、外装体の内側への突出はなく、その分だけ電極組立体を大きく設けることができる。つまり、電池エネルギー密度の向上を図り易い。また、外部出力端子が外装体の外側に位置付けられる態様は、二次電池と接続される外部機器側の接続箇所が凹部を有する場合に好適であり、二次電池の設計自由度の向上に寄与し得る。
図9に示すように、金属板62の内側面に金属部材67が更に設けられていてもよい。外部出力端子において内部の端子との接続がより容易になる可能性が高くなるからである。金属部材67は金属板62に直接設けられていてよい。金属部材67に対して、電極組立体から延在するタブが接続されていてよい。かかる金属部材67は金属板62よりも厚みが大きいものであってよい。図示するように、例えば、金属部材67の内側表面は、外装体50の内側面と実質的に同一レベルとなっていてよい。このように金属部材67が設けられることによって、外部出力端子において内部の端子との接続容易化が助力され得る。金属部材67の材質は、金属板62と同じであってよく、あるいは、異なっていてもよい。
本願発明者は、外部出力端子が外側に位置付けられた二次電池に関して、使用時の安全性を向上できる余地があるとの視点に立ち鋭意検討を重ねた。その結果、外部出力端子をベント部材として積極的に利用することを見出し、より好適なベント機構(以下では「ベント機能」とも称する)を備えた電池を得るに至った。具体的には、外装体の外側に位置する外部出力端子では、二次電池の上昇したセル内圧に起因して、外装体および/または金属板に対する絶縁材の接合箇所が剥離可能となっていてよい。かかる場合、充放電などの電池使用に伴ってセル内圧が過度に高くなった際に金属板62が開くことが可能となり(図10参照)、外部出力端子を異常時のガス抜き機構として利用できる。つまり、かかる態様は、金属板が絶縁材を介して外装体の外側に接合されているところ、セル内圧上昇時に絶縁材の接合面が最初に剥がれて内部圧を減じることが可能となっている。また、電池の異常発熱や外部からの加熱によって電池温度が上昇した際に絶縁材が溶融することで接合面が剥がれ、電池内部が過度に高圧になる前に安全に減圧することができる。よって、このような二次電池は、電池設計としてベントを別途設ける必要のない点で利点を有する。
ベント機能を効果的に発動させるためには、金属板は、絶縁材以外の部材で固定されていない状態が好ましい。また、電極組立体から金属板に接続するためのタブ70、すなわち、導電タブとしては、図10に示されるように金属板62が開くのに追従できるものが好ましい。
外部出力端子が関連するベント機構について詳述しておく。充放電などの電池使用に伴ってセル内圧が高くなると、セル内圧に起因して金属板62が受ける力も高くなる。本発明のある好適な態様では、セル内圧が必要以上に高くなった際、金属板62が受ける力は、金属板62と外装体50との接合力(つまり、絶縁材64を介した金属板62の外装体50への接合力)を超え、金属板62の少なくとも一部が外装体50から外れることができる。例えば、外装体50の開口部55に対して蓋がされるように金属板62が設けられているところ、金属板62は蓋が開くように変位できる(図10参照)。このような金属板62の開きによって、外装体内部の過剰なガスが外装体の外部へと放出され、意図しない電池爆発などのより重大な事故を未然に防止できる。
本明細書において「セル内圧」とは、広義には、二次電池の外装体の内部における圧力のことを意味している。狭義には、「セル内圧」は、電極組立体を備え、気密状態にされた外装体の内部の圧力(特に電池使用時の内部圧)のことを意味している。なお、本態様における「絶縁材」は、上述のようにベント機構に資するものであり、セル内圧の異常時に剥離できる絶縁材、すなわち、剥離可能絶縁材と称すことができる。
ベント機構において金属板62がより好適に開くように、金属板62に接続されているタブ70は“遊び”を有していてよい。つまり、金属板62に接続されているタブ70の長さに余裕がないと、タブの存在自体が金属板62の開きに対する抵抗となってしまい、異常時に金属板62がうまく開かない虞がある。この点、本発明に係るベント機構では、電極組立体10と金属板62との間のタブ70の長さが、金属板62の開きを不都合に阻害しない程度に比較的長くなっていてよい(特に、従前におけるタブ長さよりも長くなっていてよい)。つまり、金属板62と電極組立体10との間で金属板62の開きを阻害する過度な張力が働かない長さをタブ70が有していてよい。
例えば図5(A)および5(B)の例示態様でいえば、電極組立体10から延出するタブ70が撓みを伴って金属板62に設けられている。また、図5(A)および5(B)の例示態様で示すように、タブ70は屈曲するような曲げ形態を有していてよい(例えば、タブの端部では折れ曲がるような形態を有していてよい)。このような撓みおよび/または曲げの形態を有するタブ70によって、ベント機構としての金属板62の開きが不都合に阻害されることが抑制され得る。
ベント機構では金属板62がより好適に開くように、上昇したセル内圧に起因して外装体50が変位できるようになっていてよい。つまり、セル内圧が異常に高くなった時、外装体50がひずむ又は撓むように変形し、金属板62が外装体50から外れ易くなるようになってよい。このように外装体がひずむ又は撓むように変形することによって金属板62が開くベント機構がより好適に機能し易くなる。例えば、外装体のうち金属板が配置されている面を供する外装部分が上昇したセル内圧に起因して少なくとも部分的に変位可能となっていてよい。図5(A)および5(B)に示す例示態様でいえば、外装体50の構成面のうち金属板62が配置されている面を有する外装部分56がひずむ又は撓むように変形でき、それによって、金属板62が外装体50から外れ易くなっていてよい。なお、図5(A)では、外装体50のカップ状部材52の主面部52Aに開口部55が設けられて金属板62が配置されているところ、当該主面部52Aが上昇したセル内圧に起因して変位可能となっていてよい。一方、図5(B)では、外装体50の蓋状部材54に開口部55が設けられて金属板62が配置されているところ、上昇したセル内圧に起因して蓋状部材54が変位可能となっていてよい。蓋状部材54は、それ単独で「金属板62が配置されている面を供する外装部分56」を成すので、変位可能な部材として設けやすい。
(外装体の薄肉態様)
かかる態様は、外装体の一部が薄肉形態を有している態様である。具体的には、外装体の構成面のうち金属板が配置されている面を供する外装部分が、薄肉形態を有している。
例えば、図11に示されるように、外装体50の構成面のうち金属板62が配置されている面を備える外装部分56の厚みが、金属板62の厚みよりも小さくなっている。つまり、外部出力端子60が設けられている外装部分56の厚みが、金属板62の厚みよりも小さくなっている。このような態様では、セル内圧が過度に高くなる等の異常時に、当該外装部分56がひずむ又は撓むように変形し易くなり、金属板62が外装体50から外れるように変位できる。つまり、金属板62が開くベント機構がより好適に機能し易くなる。
金属板が配置されている面を有する外装部分が当該金属板よりも剛性が低くなっていてもよい。逆にいえば、金属板の方が、それが配置される面を有する外装部分よりも相対的に剛性が高くなっていてよい。このような剛性の違いは、より好適なベント機構の実現に資する。セル内圧が過度に高くなる等の異常時に、金属板はその高い剛性に起因して変形し難くなっている一方、金属板が配置される面を構成する外装部分は変形できるので、絶縁材の接合面が剥がれ易くなり、金属板62が開き易くなる。
あくまでも1つの例示にすぎないが、金属板が配置されている面を成す外装部分56の厚みは170μm以下であってよい。かかる外装部分の厚みが170μm以下になると、セル内圧が過度に高くなる等の異常時に外装体が変形し易くなり、ベント機構として金属板62が開き易くなる。換言すれば、当該外装部分の厚みが170μmよりも大きくなると(例えば、200μm以上の厚みなどになると)、異常時に外装体が変形し得ず、金属板62の意図した開きが生じにくくなる。このような薄い外装部分の厚みの下限値は、特に制限はないものの、例えば50μmであってよい。
なお、図5(A)のように外装体50のカップ状部材52の主面部52Aに開口部55が設けられて金属板62が配置されている場合、当該主面部52Aが金属板62の厚みよりも小さくなっていてよい。一方、図5(B)のように外装体50の蓋状部材54に開口部55が設けられて金属板62が配置されている場合、蓋状部材54の厚みが金属板62の厚みよりも小さくなっていてよい。蓋状部材54は、それ単独で「金属板62が配置されている面を供する外装部分56」を成すので、厚みの小さい部材として設けやすく、それゆえ、ひずむ又は撓むように変形し易い部材となり易い。
(特異的な絶縁材構成の態様)
かかる態様は、絶縁材が特異な構成を有している。具体的には、絶縁材は、互いに融点が異なる少なくとも2つの材質から構成されている。
絶縁材は、例えば熱可塑性樹脂であってよく、相対的に低い融点を有する低融点樹脂層と、相対的に高い融点を有する高融点樹脂層とが互いに積層した積層構造を有していてよい。このように融点の互いに異なる樹脂層が絶縁材において設けられていると、電池の製造工程がより好適になるだけでなく、電池使用時においてもより好適なものとなり得る。製造工程時では、高融点樹脂層によって絶縁材のハンドリングを担保しつつも、低融点樹脂層によってより低い温度で金属板を外装体に接合させることができる。一方、電池使用に際して、セル温度が過度に上昇する等の異常が生じた場合、かかるセル温度上昇に起因して相対的に低い融点の樹脂層が溶融できる。よって、セル異常時では、絶縁材の接合面が剥がれ易くなり、金属板62がより好適に開き易くなる。
例えば、絶縁材が、高融点樹脂層を介して2層の低融点樹脂層が積層されたような構成を有していてよい。つまり、図12に示すように、絶縁材64が、相対的に高い融点を有する高融点樹脂層65と、その高融点樹脂層を介在させた相対的に低い融点を有する低融点樹脂層66とを含む構成(即ち、例えば図示される3層構成)を有していてよい。かかる場合、金属板62と絶縁材64との接合面および外装体50と絶縁材64との接合面は、低融点樹脂層が直接関与する界面を成す。よって、セル温度が過度に上昇する等の異常時において、低融点樹脂層の溶融が当該界面に直接的にもたらされ易く、接合面の剥がれが生じやすくなって金属板62がより好適に開き易くなる。
低融点樹脂層は、高融点樹脂層よりも相対的に低い融点を有している。一方、高融点樹脂層は、低融点樹脂層よりも相対的に高い融点を有している。例えば、異常時のセル温度をT℃とすると、低融点樹脂層は、その異常時のセル温度T℃よりも低い融点を有していてよく、高融点樹脂層は、異常時のセル温度T℃よりも高い融点を有していてよい。あくまでも1つの例示にすぎないが、異常時のセル温度T℃は、例えば150℃~200℃程度である。
低融点樹脂層と高融点樹脂層とは互いに異なる分子(例えば異なるモノマー単位)から構成されるものであってよい。あるいは、低融点樹脂層と高融点樹脂層とが互いに同一分子(例えば同じまたは同様のモノマー単位)に基づくものであってもよい。例えば、低融点樹脂層と高融点樹脂層との双方が同一のオレフィンをモノマー構成要素として含むものであってよい。この場合、低融点樹脂層と高融点樹脂層の物性、特に融点に差をつけるため、低融点樹脂層の材料と高融点樹脂層の材料との間でそれらの重合度、非結晶部分の割合を違うものとしてよい。同一のオレフィンとしては、例えば、エチレンまたはプロピレンなどであってよい。特定の理論に拘束されるわけではないが、重合度が相対的に高くなったり、および/または、非結晶部分の割合が相対的に少なくなったりすると(例えば結晶化度が相対的に高くなると)、樹脂層の材料が相対的に高い融点を有し易くなる。このような重合度や結晶化度の調整は常套的な手法を用いてよく、例えば重合反応における反応温度、圧力および/または触媒などを変更することによって調整できる。なお、ホモポリマーに限らず、低融点樹脂層と高融点樹脂層との双方の材料が同一のオレフィンをモノマー単位として含むコポリマーやターポリマーであってもよい。かかる場合、主モノマーとして同一のオレフィンが例えば50モル%以上(全モノマー100モル%基準)含まれていてよく、コモノマー(当該コモノマーはオレフィンであってよいし、そうでなくてもよい。また、このコモノマー自体も低融点樹脂層と高融点樹脂層との間で同じまたは同様であってもよい)の含有量が増すことにより樹脂層の材料が相対的に低い融点を有し易くなる。このようなホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーのいずれであっても、低融点樹脂層および高融点樹脂層の樹脂材としては、互いに融点が異なる市販の樹脂材を用いることもできる。
このような融点が異なる樹脂層から構成された絶縁材は、フィルム形態を有していてよい。例えば、絶縁材は、高融点樹脂層を介して2層の低融点樹脂層が積層された多層フィルムから成っていてよい。
(表面処理の態様)
かかる態様は、絶縁材との接合に供する面に表面処理が施された態様である。具体的には、絶縁材と接合される外装体の接合面および/または金属板の接合面が表面処理面となっている。
例えば図2に示すように、外装体50の面のうち絶縁材64と接合される面50A(以下、「外装体接合面」とも称する)が少なくとも表面処理された面となっていてよい。同様に、金属板62の面のうち絶縁材64と接合される面62A(以下、「金属板接合面」とも称する)が少なくとも表面処理された面となっていてよい。外装体接合面および/または金属板接合面が表面処理面になることで、外装体に対する金属板の接合状態がより好適になり得る。よって、本発明におけるベント機構がより意図した通りに機能し易くなる。つまり、セル内圧又はセル温度が過度には高くない非異常時に金属板62が開いてしまうといった不都合な事象を抑制しつつ、本来想定した異常時に金属板62が開く二次電池となり易くなる。
表面処理は接合性を向上させる処理であってよく、例えば、外装体と絶縁材との接合および/または金属板と絶縁材との接合強度を上げる処理であってよい。より具体的には、洗浄、研磨および/または薬品による化学的処理、プラズマおよび/または紫外線などによる物理的処理、金属化合物層などを付与するプライマー処理、ならびに、めっき処理が上記接合面に施されていてよい。つまり、外装体接合面および/または金属板接合面が、洗浄処理面、研磨処理面、薬品処理面、プラズマ処理面、紫外線処理面、プライマー処理面、およびめっき処理面などから成る群から選択される少なくとも1種の面となっていてよい。これにより、ベント機構がより意図した通りに機能し易くなる。
ある好適な態様では、外装体接合面および/または金属板接合面がプライマー処理面となっている。かかる場合、プライマー処理面を介して絶縁材と外装体とが互いに接合されたり、プライマー処理面を介して絶縁材と金属板とが互いに接合されたりしてよい。プライマー処理の方法としては、あくまでも1つの具体的な例示にすぎないが、クロメート処理のような金属酸化被膜を施す処理を含むものであってよい。
(絶縁材の特異的な厚み態様)
かかる態様は、絶縁材の厚みが特異的な厚み形態を有している態様である。具体的には、絶縁材が非均一な厚みを有している。
図13に示すように、絶縁材64は、例えば、金属板62と外装体50との間に挟まれた部分が相対的に肉薄形態となっていてよい。つまり、絶縁材64は、全体として一定の厚みではなく、相対的に厚みが小さい肉薄部分64aと相対的に厚みが大きい肉厚部分64bとを有する形態を有していてよい。特に、絶縁材64の肉薄部分64aにおいて金属板62が外装体50側へと沈み込むような形態となっていると共に、その肉薄部分64aの両側または片側に肉厚部分64bが存在するような形態となっていてよい。このような態様では、気密封止の点でより好適な外部出力端子がもたらされ易くなる。なお、このような絶縁材に鑑みていえば、本発明における絶縁材は、カシメはしないものの多少のエンボスや曲げがあってもよいといえる。
(平面視円形の二次電池)
かかる態様では、二次電池の平面視形状が円形となっている。つまり、二次電池が外形の点でボタン型またはコイン型となっている。
二次電池の平面視形状が円形ということは、正極および負極の積層方向に沿って電極組立体を上側または下側から捉えた際の電極組立体またはそれを内包する外装体の形状が略円形であることを意味している。
ここでいう「円形(略円形状)」とは、完全な円形(すなわち単に“円”または“真円”)であることに限らず、それから変更されつつも当業者の認識として“丸い形”に通常含まれ得る形状も含んでいる。例えば、円・真円のみならず、その円弧の曲率が局所的に異なるものであってよく、さらには例えば楕円などの円・真円から派生した形状であってもよい。典型的な例でいえば、このような平面視円形の電池は、いわゆるボタン型またはコイン型の電池に相当する。
本発明では、平面視形状が略円形となっている二次電池において外装体が“カシメ”られた形態を有していない。つまり、外部接続端子の端子領域および/または外装体のカップ状部材と蓋状部材との接合領域などにおいてカシメ構成が含まれていない。カシメ構成は、その分だけ体積が増すことになるところ、本発明の態様ではそれが無いので、小型化やエネルギー密度向上の点で好適な二次電池となり易い。
(端子位置のバリエーション)
かかる態様は、外部出力端子の配置にバリエーションを有する態様である。図14(A)~(C)に示すように、本発明では、外装体50における外部出力端子60の配置は、種々の形態をとることができる。具体的には、図14(A)では、外部出力端子60が外装体50の上面・頂面に配置されており、図14(B)では、外部出力端子60が外装体50の側面に配置されており、図14(C)では、外部出力端子60が外装体50の下面・底面に配置されている。図14(B)における外装体50の形状が円柱である場合、金属板62は外装体50の側面の円形状に沿うように、曲率をもって接合している。このように外部出力端子の配置にバリエーションがあることは、二次電池の設計自由度の向上に寄与し得る。
最後に、外部出力端子の形成手法について説明しておく。本発明に係る実施形態では、外部出力端子の形成手法は特に限定されず、いずれの手法であってもよい。例えば、絶縁材として熱可塑性樹脂を含んで成るものが用いられる場合、外装体に設けられた穴の周囲に絶縁材を介して金属板を配した後、加熱処理することで外部出力端子を形成できる。加熱処理では絶縁材を一旦溶融させることになり、それによって金属板を絶縁材を介して外装体に貼り付けることができる。なお、予め溶融させた絶縁材を外装体に塗布し、その塗布された絶縁材に金属板を配置することで外部出力端子を形成することもできる。
外部出力端子においては、金属板とタブとが互いに接続されているが、例えばレーザ溶接などによってそれらを接続してよい。なお、金属ブロック67が用いられ(図10参照)、金属ブロック67を介してタブ70が金属板62に溶接で接続される場合には、レーザ溶接処理がより容易に実施できる。また、金属ブロック67を介してタブ70をレーザ溶接するので、金属板62に対して直接レーザ溶接する場合よりも溶け込みを深くすることができ、より強化な接続が得られ易い。さらには、レーザ溶接に際して金属ブロックがヒートシンクとして機能し、レーザ溶接に伴う熱の影響が絶縁材には及びにくくなることも期待できる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
例えば、上記では、主としてボタン型・コイン型の二次電池について触れたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、角型の二次電池であってもよい。つまり、図15(a)~(d)に示すように、二次電池100は、その平面視形状が、円形に限らず、四角形や矩形などの形状を有していてもよい。同様にして、外部出力端子60の形状、すなわち、金属板62の形状(特に平面視形状)も必ずしも円形に限らず、四角形や矩形などの形状を有していてよい(図16(a)~(d)参照)。
また、上記では、金属板62から外側へとはみ出すように絶縁材64が外装体50に設けられた態様(図2(A)および図2(B))に触れたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。金属板62から外側へとはみ出さず絶縁材64が金属板62の下で隠れるように設けられてもよい。例えば、金属板62の外縁端と略同じか又はそれよりも内側にのみ絶縁材64が設けられてもよい。
さらに、上記では、外装体が金属単一部材から成る構成を中心に説明したが、その金属単一部材に対して付加的な層が部分的に設けられてもよい。例えば、外装体のうち、絶縁材との接合面以外の箇所に、絶縁に供する樹脂層を設けてもよい。ショートなどの不都合な事象をより抑制し易くなるからである。例えば図17に例示する形態でいえば、外装体50の開口部55が設けられた外装体部分56の内側面56'、外装体部分56の外側面56''(特に、絶縁材64が設けられていない外周側に近い面領域)、および/または、外装体開口部を成す端面55aに対して樹脂層(図示せず)が設けられてよい。なお、これらの樹脂層は、外装体に対して部分的または局所的に設けられるものであり、外装体としてラミネートフィルムを成すものとは異なる。
さらに、本願発明の説明で参酌した図面(例えば図2(A)および図2(B))では、絶縁材64の厚さが比較的大きく、金属板62の厚さと同じ程度に示されているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。図18に示すように、絶縁材64の厚さが金属板62の厚みよりも小さくなっていてよい。また、そのような絶縁材64の厚さは、「金属板62が配置されている面を供する外装部分56」の厚みと同程度かあるいは、それよりも小さくなっていてもよい。
さらに、上記の「特異的な絶縁材構成の態様」では、互いに融点が異なる樹脂層について説明したが、かかる態様でいう「融点」は、主として結晶性樹脂の場合(結晶化度合が100%になっていないものも含む)における融点を意味している。非結晶性樹脂の場合や非結晶性の割合が多くなった樹脂などで融点を有さない又ははっきりとした融点を示さない場合なども考えられ得るが、そのような場合においては「融点」を「ガラス転移点」と読み替えて本態様を捉えてよい。
さらに、図10ではベント機構が示されているが、本発明は必ずしも図示されている形態に限定されない。図10では、例えばタブ70が金属部材67を介して金属板62に取り付けられているが、金属部材67を用いずタブ70が金属板62に対して直接的に取り付けられている形態であってもよい。