JP7338222B2 - ポリオレフィン樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Description
《ポリオレフィン樹脂組成物》
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)と塩基性基を有する分散剤(C)とを含む。また、再生炭素繊維(A)の平均繊維長は0.05~15.0mmであり、ポリオレフィン樹脂組成物100質量%中、再生炭素繊維(A)の配合量は1~50質量%である。
再生炭素繊維とは、廃材CFRPを焼却処理や加熱水蒸気処理することで得られる炭素繊維である。通常、CFRPに用いられる炭素繊維はサイジング剤により処理されており、炭素繊維同士の素線化を抑制し、樹脂に分散させる際に炭素繊維が飛散することを防止する手段がとられている。また、サイジング剤により樹脂との相溶性が向上するためCFRPの衝撃強度は未処理炭素繊維を使用する場合よりも高い。
しかし、再生炭素繊維は焼却処理や加熱水蒸気処理の工程で、サイジング剤が消失し、再生炭素繊維表面が無垢の状態で存在するため、樹脂への分散性や相溶性が悪く、押出加工時に樹脂に練り込むことができなかった再生炭素繊維が押出機先端に堆積し、ストランドが安定しない等CFRPの生産性に問題がある、また、衝撃強度が十分なCFRP成形体を得るのが難しい。
尚、再生炭素繊維(A)の繊維長は、光学顕微鏡「デジタル顕微鏡VHX‐100」(キーエンス社製)等を用いて倍率100倍の視野で観察し、視野の中に観察される50本の炭素繊維の繊維長の平均値をとることで算出することが出来る。
続いてポリオレフィン樹脂(B)について説明する。
本発明におけるポリオレフィン樹脂(B)は、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、ブロック、ランダムコポリマーまたはターポリマーであっても構わない。具体的には、ポリオレフィンワックス、ポリオレフィンエラストマー、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)のようなα-オレフィン類の重合体である。r-CFRPの強度が高まることからポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい。
本発明における塩基性基を有する分散剤(C)は、再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)との相溶性を高める役割を担っている。再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)の相溶性が向上することで得られるCFRPの衝撃強度が向上する。本発明における塩基性基を有する分散剤(C)は、塩基性を示す部位を有しているものであれば特に制限されるものではなく、塩基性を示す部位としては例えば、アミン部位、イミン部位、アンモニウム部位、アミド部位、イミド部位、ウレタン結合部位等が挙げられる。これらの塩基性基を有する分散剤(C)は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)両方との相溶性が高いことから、CFRPの衝撃強度をより向上させることが可能となるため、塩基性基を有する分散剤(C)は、アミン部位、アンモニウム部位、またはアミド部位を有することが好ましく、アミン部位を有することが更に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(B)が溶融する温度で再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)と塩基性基を有する分散剤(C)とを混練することで得られる。具体的には、例えば再生炭素繊維(A)と、ポリオレフィン樹脂(B)と、塩基性基を有する分散剤(C)と、更に必要に応じて各種添加剤や着色剤を加え、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター、バンバリーミキサーのような回分式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ローター型二軸混練機等で混合や溶融混練し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状の樹脂組成物とすることが出来る。混練力が強く、その後の成形加工が容易なことから、二軸押出機にてペレット状とすることが好ましい。
また、成形する時の成形樹脂は、上述したポリオレフィン樹脂(B)に例示したものを用いることができ、相溶性に優れることから再生炭素繊維(A)の分散に用いたポリオレフィン樹脂(B)と同じポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、再生炭素繊維(A)の分散性に優れるため、マスターバッチのような高濃度の樹脂組成物とした場合も、成形体を安定して成形することが出来る。
成形体は、本発明のポリオレフィン樹脂組成物より成形されてなり、成形方法は特に制限されるものではなく、例えば押出成形、射出成形、ブロー成形等によって得ることが出来る。本発明のポリオレフィン樹脂組成物は強度と成形性に優れるため、複雑な形状を有する自動車部品等の射出成形体の成形に適している。
なお、表中に数値が記載されていない項目は、含有していないことを表す。
<再生炭素繊維(A)>
A-1:CARBISO MF(ELG Carbon Fibre社製、平均繊維長0.1mm、以下「MF」と称することがある)
A-2:CARBISO C(ELG Carbon Fibre社製、平均繊維長3mm、以下「C」と称することがある)
A-3:CARBISO CT(ELG Carbon Fibre社製、平均繊維長12mm、以下「CT」と称することがあるELG社製)
B-1:プライムPP J108(プライムポリマー社製、PP、MFR 45g/10分、以下「J108」と称することがある)
B-2:ノバテックLL UJ790(日本ポリエチレン社製、LLDPE、MFR 45g/10分、以下「UJ790」と称することがある)
B-3:サンテックLD M2270(旭化成社製、LDPE、MFR 7g/10分、以下「M2270」と称することがある)
B-4:ノバテックHD HJ590N(日本ポリエチレン社製、HDPE、MFR40g/10分、以下「HJ590N」と称することがある)
C-1:キマソーブ944FDL(BASF社製、ヒンダードアミン部位を有する分散剤、分子量2,000~3,100、融点100~135℃、以下「944FDL」と称することがある)
C-2:アルフローH-50T(日油社製、アミド部位を有する分散剤、分子量593、融点140~145℃、以下「H-50T」と称することがある)
C-3:アルフローS-10(日油社製、アミン部位を有する分散剤、分子量283、融点100~105℃、以下「S-10」と称することがある。)
<その他分散剤(C’)>
C’-1:ダイワックスMソ(大日化学工業社製、ステアリン酸マグネシウム、分子量591、融点133~141℃、以下「Mソ」と称することがある)
(実施例1)
(熱可塑性樹脂組成物の製造)
再生炭素繊維(A)として(A-1)30質量部、ポリオレフィン樹脂(B)として(B-1)69質量部、塩基性基を有する分散剤(C)として(C-1)1質量部をスーパーミキサー(カワタ社製)にて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出し、造粒してポリオレフィン樹脂組成物(D-1)を得た。
表1に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂組成物をそれぞれ得た。
ただし、実施例7および8は参考例である。
再生炭素繊維(A)として(A-1)30質量部、ポリオレフィン樹脂(B)として(B-1)70質量部をスーパーミキサー(カワタ社製)にて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出し、造粒してポリオレフィン樹脂組成物(E-1)を得た。
再生炭素繊維(A)として(A-1)40質量部、ポリオレフィン樹脂(B)として(B-1)60質量部をスーパーミキサー(カワタ社製)にて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出したが、造粒することが出来ずポリオレフィン樹脂組成物(E-2)を得ることが出来なかった。
再生炭素繊維(A)として(A-1)60質量部、ポリオレフィン樹脂(B)として(B-1)37質量部、分散剤として(C-1)3質量部をスーパーミキサー(カワタ社製)にて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出し、造粒してポリオレフィン樹脂組成物(E-3)を得た。
再生炭素繊維(A)として(A-1)30質量部、ポリオレフィン樹脂(B)として(B-1)69質量部、分散剤として(C’-1)1質量部をスーパーミキサー(カワタ社製)にて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出し、造粒してポリオレフィン樹脂組成物(E-4)を得た。
再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)の混合物を押出加工する際の押出機先端のダイスへの堆積物の有無について評価した。
堆積物が観測されなければ生産性が特に良好として「〇」、押出加工に影響はないが堆積物が観測されれば生産性が良好として「△」、押出加工に影響が出るほどの堆積物が観測されれば生産性が不良として「×」とした。
(実施例10)
ポリオレフィン樹脂組成物(D-1)100質量部を射出成形機(東芝機械社製)にて成形し、縦80mm×横10mm×厚み4mmの多目的試験片を得た。
表2に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例10と同様の方法で、射出成形により多目的試験片をそれぞれ得た。
ただし、実施例16および17は参考例である。
ポリオレフィン樹脂組成物(D-9)75質量部と、ポリオレフィン樹脂(B-1)15質量部とを混合した後、射出成形機(東芝機械社製)にて成形し縦80mm×横10mm×厚み4mmの多目的試験片を得た。
ポリオレフィン樹脂組成物(E-1)100質量部を射出成形機(日精樹脂工業社製)にて成形し、縦80mm×横10mm×厚み4mmの多目的試験片を得た。
ポリオレフィン樹脂組成物(E-3)50質量部と、ポリオレフィン樹脂(B-1)50質量部とを混合した後、射出成形機(東芝機械社製)にて成形し縦80mm×横10mm×厚み4mmの多目的試験片を得た。
ポリオレフィン樹脂組成物(E-4)100質量部を射出成形機(日精樹脂工業社製)にて成形し、縦80mm×横10mm×厚み4mmの多目的試験片を得た。
得られた多目的試験片を用いてJIS K7171:2016に従い、曲げ弾性率及び、ノッチ付きのシャルピー衝撃強度を測定した。測定値の値が高いほど、強度に優れている。
曲げ弾性率は、10000MPa以上が良好であり、15000MPa以上であると、更に優れているといえる。シャルピー衝撃強度は、5.0kJ/m2以上であることが良好であり、7.0kJ/m2以上であると、更に優れているといえる。
これらの範囲にあることで、自動車部品等の高い強度が求められる用途に、より好適に用いることができる。
また、表2から、本発明のポリオレフィン樹脂組成物から形成してなる成形体は、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強度測定が高く、再生炭素繊維を使用しているにも関わらず、衝撃強度に優れていることがわかる。
Claims (3)
- 再生炭素繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)と塩基性基を有する分散剤(C)とを
含み、
前記再生炭素繊維(A)の平均繊維長は0.05~15.0mmであり、
前記塩基性基を有する分散剤(C)は、ヒンダードアミン部位を有し、かつ数平均分子量が400~5,000であり、
ポリオレフィン樹脂組成物100質量%中、前記再生炭素繊維(A)の配合量は1~50質量%であることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。 - 前記ポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載されたポリオレフィン樹脂組成物より成形されてなる成形体。
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