以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下に例示をする基板100は、例えば、半導体ウェーハ、インプリント用テンプレート、フォトリソグラフィ用マスク、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に用いられる板状体などとすることができる。
なお、基板100の表面には、パターンである凹凸部が形成されていてもよいし、凹凸部が形成されていなくてもよい。凹凸部が形成されていない基板は、例えば、凹凸部が形成される前の基板(例えば、いわゆるバルク基板)などとすることができる。
また、以下においては、一例として、基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合を説明する。基板100が、フォトリソグラフィ用マスクである場合には、基板100の平面形状は、略四角形とすることができる。
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、基板処理装置1には、載置部2、冷却部3、第1液体供給部4、第2液体供給部5、筐体6、送風部7、検出部8、排気部9およびコントローラ10が設けられている。
載置部2は、載置台2a、回転軸2b、および駆動部2cを有する。
載置台2aは、基板100を回転させることができる。載置台2aは、筐体6の内部に回転可能に設けられている。載置台2aは、板状を呈している。載置台2aの一方の主面には、基板100を支持する複数の支持部2a1が設けられている。基板100を複数の支持部2a1に支持させる際には、基板100の表面100b(洗浄を行う側の面)が、載置台2a側とは反対の方を向くようにする。
複数の支持部2a1には、基板100の裏面100aの縁(エッジ)が接触する。支持部2a1の、基板100の裏面100aの縁と接触する部分は、テーパ面または傾斜面とすることができる。支持部2a1の、基板100の裏面100aの縁と接触する部分が、テーパ面となっていれば、支持部2a1と、基板100の裏面100aの縁とを点接触させることができる。支持部2a1の、基板100の裏面100aの縁と接触する部分が、傾斜面となっていれば、支持部2a1と、基板100の裏面100aの縁とを線接触させることができる。支持部2a1と、基板100の裏面100aの縁とを点接触または線接触させれば、基板100に汚れや損傷などが発生するのを抑制することができる。
また、載置台2aの中央部分には、載置台2aの厚み方向を貫通する孔2aaが設けられている。
回転軸2bの一方の端部は、載置台2aの孔2aaに嵌合されている。回転軸2bの他方の端部は、筐体6の外部に設けられている。回転軸2bは、筐体6の外部において駆動部2cと接続されている。
回転軸2bは、筒状を呈している。回転軸2bの載置台2a側の端部には、吹き出し部2b1が設けられている。吹き出し部2b1は、載置台2aの、複数の支持部2a1が設けられる面に開口している。吹き出し部2b1の開口側の端部は、孔2aaの内壁に接続されている。吹き出し部2b1の開口は、載置台2aに載置された基板100の裏面100aに対向している。
吹き出し部2b1は、載置台2a側(開口側)になるに従い断面積が大きくなる形状を有している。そのため、吹き出し部2b1の内部の孔は、載置台2a側(開口側)になるに従い断面積が大きくなる。なお、回転軸2bの先端に吹き出し部2b1を設ける場合を例示したが、吹き出し部2b1は、後述の冷却ノズル3dの先端に設けることもできる。また、載置台2aの孔2aaを吹き出し部2b1とすることもできる。
吹き出し部2b1を設ければ、放出された冷却ガス3a1を、基板100の裏面100aのより広い領域に供給することができる。また、冷却ガス3a1の放出速度を低下させることができる。そのため、基板100が部分的に冷却されたり、基板100の冷却速度が速くなりすぎたりするのを抑制することができる。その結果、後述する液体101の過冷却状態を生じさせることが容易となる。また、基板100の表面100bのより広い領域において、液体101の過冷却状態を生じさせることができる。そのため、汚染物の除去率を向上させることができる。
回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部には、冷却ノズル3dが取り付けられている。回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部と、冷却ノズル3dとの間には、図示しない回転軸シールが設けられている。そのため、回転軸2bの、載置台2a側とは反対側の端部は、気密となるように封止されている。
駆動部2cは、筐体6の外部に設けられている。駆動部2cは、回転軸2bと接続されている。駆動部2cは、モータなどの回転機器を有する。駆動部2cの回転力は、回転軸2bを介して載置台2aに伝達される。そのため、駆動部2cにより載置台2a、ひいては載置台2aに載置された基板100を回転させることができる。
また、駆動部2cは、回転の開始と回転の停止のみならず、回転数(回転速度)を変化させることができる。この場合、駆動部2cは、例えば、サーボモータなどの制御モータを備えたものとすることができる。
冷却部3は、載置台2aと、基板100の裏面100aと、の間の空間に、冷却ガス3a1を供給する。冷却部3は、例えば、冷却液部3a、フィルタ3b、流量制御部3c、および冷却ノズル3dを有する。冷却液部3a、フィルタ3b、および流量制御部3cは、筐体6の外部に設けられている。
冷却液部3aは、冷却液の収納、および冷却ガス3a1の生成を行う。冷却液は、冷却ガス3a1を液化したものである。冷却ガス3a1は、基板100の材料と反応し難いガスであれば特に限定はない。冷却ガス3a1は、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスとすることができる。
この場合、比熱の高いガスを用いれば基板100の冷却時間を短縮することができる。例えば、ヘリウムガスを用いれば基板100の冷却時間を短縮することができる。また、窒素ガスを用いれば基板100の処理費用を低減させることができる。
冷却液部3aは、冷却液を収納するタンクと、タンクに収納された冷却液を気化させる気化部とを有する。タンクには、冷却液の温度を維持するための冷却装置が設けられている。気化部は、冷却液の温度を上昇させて、冷却液から冷却ガス3a1を生成する。気化部は、例えば、外気温度を利用したり、熱媒体による加熱を用いたりすることができる。冷却ガス3a1の温度は、液体101の凝固点以下の温度であればよく、例えば、-170℃とすることができる。
フィルタ3bは、配管を介して、冷却液部3aに接続されている。フィルタ3bは、冷却液に含まれていたパーティクルなどの汚染物が、基板100側に流出するのを抑制する。
流量制御部3cは、配管を介して、フィルタ3bに接続されている。流量制御部3cは、冷却ガス3a1の流量を制御する。流量制御部3cは、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。また、流量制御部3cは、冷却ガス3a1の供給圧力を制御することで冷却ガス3a1の流量を間接的に制御するものであってもよい。この場合、流量制御部3cは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
冷却液部3aにおいて冷却液から生成された冷却ガス3a1の温度は、ほぼ所定の温度となっている。そのため、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで基板100の温度、ひいては基板100の表面100bにある液体101の温度を制御することができる。この場合、流量制御部3cにより、冷却ガス3a1の流量を制御することで、後述する過冷却工程において液体101の過冷却状態を生じさせることができる。
冷却ノズル3dは、筒状を呈している。冷却ノズル3dの一方の端部は、流量制御部3cに接続されている。冷却ノズル3dの他方の端部は、回転軸2bの内部に設けられている。冷却ノズル3dの他方の端部は、吹き出し部2b1の、載置台2a側(開口側)とは反対の端部の近傍に位置している。
冷却ノズル3dは、流量制御部3cにより流量が制御された冷却ガス3a1を基板100に供給する。冷却ノズル3dから放出された冷却ガス3a1は、吹き出し部2b1を介して、基板100の裏面100aに直接供給される。
第1液体供給部4は、基板100の表面100bに液体101を供給する。後述する凍結工程(固液相)において、液体101が固体に変化すると体積が変化するので圧力波が生じる。この圧力波により、基板100の表面100bに付着している汚染物が分離されると考えられる。そのため、液体101は、基板100の材料と反応し難いものであれば特に限定はない。
ただし、液体101を凍結した際に体積が増える液体とすれば、体積増加に伴う物理力を利用して、基板100の表面に付着している汚染物を分離できるとも考えられる。そのため、液体101は、基板100の材料と反応し難く、且つ、凍結した際に体積が増える液体とすることが好ましい。例えば、液体101は、水(例えば、純水や超純水など)や、水を主成分とする液体などとすることができる。
水を主成分とする液体は、例えば、水とアルコールの混合液、水と酸性溶液の混合液、水とアルカリ溶液の混合液などとすることができる。
水とアルコールの混合液とすれば表面張力を低下させることができるので、基板100の表面100bに形成された微細な凹凸部の内部に液体101を供給するのが容易となる。
水と酸性溶液の混合液とすれば、基板100の表面に付着したパーティクルやレジスト残渣などの汚染物を溶解することができる。例えば、水と硫酸などの混合液とすれば、レジストや金属からなる汚染物を溶解することができる。
水とアルカリ溶液の混合液とすれば、ゼータ電位を低下させることができるので、基板100の表面100bから分離させた汚染物が基板100の表面100bに再付着するのを抑制することができる。
ただし、水以外の成分が余り多くなると、体積増加に伴う物理力を利用することが難しくなるので、汚染物の除去率が低下するおそれがある。そのため、水以外の成分の濃度は、5wt%以上、30wt%以下とすることが好ましい。
また、液体101にはガスを溶存させることができる。ガスは、例えば、炭酸ガス、オゾンガス、水素ガスなどとすることができる。液体101に炭酸ガスを溶存させれば、液体101の導電率を高めることができるので、基板100の除電や帯電防止を行うことができる。液体101にオゾンガスを溶存させれば、有機物からなる汚染物を溶解することができる。
第1液体供給部4は、例えば、液体収納部4a、供給部4b、流量制御部4c、および液体ノズル4dを有する。液体収納部4a、供給部4b、および流量制御部4cは、筐体6の外部に設けられている。
液体収納部4aは、前述した液体101を収納する。液体101は、凝固点よりも高い温度で液体収納部4aに収納される。液体101は、例えば、常温(20℃)で収納される。
供給部4bは、配管を介して、液体収納部4aに接続されている。供給部4bは、液体収納部4aに収納されている液体101を液体ノズル4dに向けて供給する。供給部4bは、例えば、液体101に対する耐性を有するポンプなどとすることができる。なお、供給部4bがポンプである場合を例示したが、供給部4bはポンプに限定されるわけではない。例えば、供給部4bは、液体収納部4aの内部にガスを供給し、液体収納部4aに収納されている液体101を圧送するものとしてもよい。
流量制御部4cは、配管を介して、供給部4bに接続されている。流量制御部4cは、供給部4bにより供給された液体101の流量を制御する。流量制御部4cは、例えば、流量制御弁とすることができる。また、流量制御部4cは、液体101の供給の開始と供給の停止をも行うことができる。
液体ノズル4dは、筐体6の内部に設けられている。液体ノズル4dは、筒状を呈している。液体ノズル4dの一方の端部は、配管を介して、流量制御部4cに接続されている。液体ノズル4dの他方の端部は、載置台2aに載置された基板100の表面100bに対向している。そのため、液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bに供給される。
また、液体ノズル4dの他方の端部(液体101の吐出口)は、基板100の表面100bの略中央に位置している。液体ノズル4dから吐出した液体101は、基板100の表面100bの略中央から拡がり、基板100の表面100bで略一定の厚みを有する液膜が形成される。なお、以下においては、基板100の表面100bに形成された液体101の膜を液膜と称する。
第2液体供給部5は、基板100の表面100bに液体102を供給する。第2液体供給部5は、例えば、液体収納部5a、供給部5b、流量制御部5c、および液体ノズル4dを有する。液体収納部5a、供給部5b、および流量制御部5cは、筐体6の外部に設けられている。
液体102は、後述する解凍工程において用いることができる。そのため、液体102は、基板100の材料と反応し難く、且つ、後述する乾燥工程において基板100の表面100bに残留し難いものであれば特に限定はない。液体102は、例えば、水(例えば、純水や超純水など)や、水とアルコールの混合液などとすることができる。
液体収納部5aは、前述した液体収納部4aと同様とすることができる。供給部5bは、前述した供給部4bと同様とすることができる。流量制御部5cは、前述した流量制御部4cと同様とすることができる。
なお、液体102と液体101が同じである場合には、第2液体供給部5を省くことができる。また、液体ノズル4dを兼用する場合を例示したが、液体101を吐出する液体ノズルと、液体102を吐出する液体ノズルを別々に設けることもできる。
また、液体102の温度は、液体101の凝固点よりも高い温度とすることができる。また、液体102の温度は、凍結した液体101を解凍できる温度とすることもできる。液体102の温度は、例えば、常温(20℃)程度とすることができる。
なお、第2液体供給部5が省かれる場合には、解凍工程において、第1液体供給部4を用いる。つまり、液体101を用いる。この場合、液体101の温度は、凍結した液体101を解凍できる温度とすることができる。液体101の温度は、例えば、常温(20℃)程度とすることができる。
筐体6は、箱状を呈している。筐体6の内部にはカバー6aが設けられている。カバー6aは、基板100に供給され、基板100が回転することで基板100の外部に排出された液体101、102を受け止める。カバー6aは、筒状を呈している。カバー6aの、載置台2a側とは反対側の端部の近傍(カバー6aの上端近傍)は、カバー6aの中心に向けて屈曲している。そのため、基板100の上方に飛び散る液体101、102の捕捉を容易とすることができる。
また、筐体6の内部には仕切り板6bが設けられている。仕切り板6bは、カバー6aの外面と、筐体6の内面との間に設けられている。
筐体6の底面側の側面には複数の排出口6cが設けられている。図1に例示をした筐体6の場合には、排出口6cが2つ設けられている。使用済みの冷却ガス3a1、空気7a、液体101、および液体102は、排出口6cから筐体6の外部に排出される。
排出口6cは基板100よりも下方に設けられている。そのため、冷却ガス3a1が排出口6cから排気されることでダウンフローの流れが作りだされる。その結果、パーティクルの舞い上がりを防ぐことができる。
平面視において、複数の排出口6cは、筐体6の中心に対して対称となるように設けられている。この様にすれば、筐体6の中心に対して、冷却ガス3a1の排気方向が対称となる。冷却ガス3a1の排気方向が対称となれば、冷却ガス3a1の排気が円滑となる。
送風部7は、筐体6の天井面に設けられている。なお、送風部7は、天井側であれば、筐体6の側面に設けることもできる。送風部7は、ファンなどの送風機とフィルタを備えることができる。フィルタは、例えば、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)などとすることができる。
送風部7は、仕切り板6bと筐体6の天井との間の空間に空気7a(外気)を供給する。そのため、仕切り板6bと筐体6の天井との間の空間の圧力が外部の圧力より高くなる。その結果、送風部7により供給された空気7aを排出口6cに導くことが容易となる。また、パーティクルなどの汚染物が、排出口6cから筐体6の内部に侵入するのを抑制することができる。
また、送風部7は、基板100の表面100bに室温の空気7aを供給する。そのため、送風部7は、空気7aの供給量を制御することによって基板100の上の液体101、102の温度を変化させることができる。例えば、送風部7は、後述する過冷却工程において液体101の過冷却状態を制御したり、解凍工程において液体101の解凍を促進させたり、乾燥工程において液体102の乾燥を促進させたりすることもできる。
検出部8は、仕切り板6bと筐体6の天井との間の空間に設けられている。検出部8は、例えば、液膜(液体101)の温度、液体101と凍結した液体101が混在する膜の温度、凍結した液体101(凍結膜)の温度を検出する。この場合、検出部8は、例えば、放射温度計、サーモビューア、熱電対、測温抵抗体とすることができる。また、検出部8は、膜の厚みや、膜の表面位置を検出するものとしてもよい。この場合、検出部8は、例えば、レーザ変位計、超音波変位計などとすることができる。また、検出部8は、膜の表面状態を検出する光学センサや画像センサなどとしてもよい。
例えば、検出された液膜の温度、厚み、表面状態は、後述する過冷却工程において液体101の過冷却状態を制御するのに用いることができる。なお、過冷却状態を制御するとは、過冷却状態にある液体101の温度変化のカーブを制御して、液体101が急激に冷却されることで凍結しないようにすること、すなわち、過冷却状態が維持されるようにすることである。
例えば、検出された液膜の温度、厚み、表面状態、または、液体101と凍結した液体101が混在する膜の温度、厚み、表面状態は、後述する凍結工程(固液相)の開始を検出するのに用いることができる。
例えば、検出された凍結膜の温度、厚み、表面状態は、後述する凍結工程(固相)において、「ひび割れの発生」を検出するのに用いることができる。
例えば、検出部8が温度を検出するものである場合には、後述する凍結工程(固相)において、凍結膜の温度から「ひび割れの発生」を間接的に検出することができる。検出部8が厚みを検出するものである場合には、後述する凍結工程(固相)において、凍結膜の表面位置の変化から「ひび割れの発生」を検出することができる。検出部8が表面状態を検出するものである場合には、後述する凍結工程(固相)において、凍結膜の表面状態から「ひび割れの発生」を検出することができる。
ここで、ひび割れについて説明する。ひび割れは、凍結膜の熱膨張係数と、基板100の熱膨張係数との差に応じた応力が大きくなると発生する。例えば、基板100がクオーツ基板の場合、凍結膜の温度が、-50℃以下になると、増大した応力に耐えきれずに凍結膜にひび割れが発生する。凍結膜には汚染物が取り込まれているので、ひび割れが発生して凍結膜が変形すると、汚染物が基板100の表面100bから分離される。そのため、汚染物の除去率を向上させることができる。
なお、ひび割れの作用効果に関する詳細は後述する。
ところが、ひび割れの発生時には、衝撃力が発生する。そのため、基板100の表面100bに凹凸部が形成されている場合には、衝撃力により、凹凸部が倒壊するおそれがある。すなわち、基板100の表面100bの状態によっては、ひび割れを発生させた方が好ましい場合もあるし、ひび割れを発生させない方が好ましい場合もある。
例えば、検出部8により、ひび割れの発生を検出することができれば、ひび割れが発生する温度あるいは、液膜の凍結開始からひび割れが発生するまでの時間を予め求めておくことができる。したがって、基板100の表面100bの状態に応じて、凍結膜を解凍する温度あるいは、液膜の凍結開始から解凍するまでの時間を選択することができるようになる。また、検出部8により、ひび割れの発生を検出したら、凹凸部の倒壊を警告したりすることができる。
排気部9は、排気管6c1を介して、排出口6cに接続されている。排気部9は、使用済みの冷却ガス3a1と空気7aを筐体6の外部に排出する。排気部9は、例えば、ポンプやブロアなどとすることができる。なお、使用済みの液体101、102は、排気管6c1に接続された排出管6c2を介して、筐体6の外部に排出される。
コントローラ10は、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部を有する。コントローラ10は、例えば、コンピュータである。記憶部には、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。演算部は、記憶部に格納されている制御プログラム、操作者により入力されたデータ、検出部8からのデータなどを用いて、基板処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
例えば、液体101の冷却速度は、液膜の厚みと相関関係がある。例えば、液膜の厚みが薄くなる程、液体101の冷却速度が速くなる。逆に、液膜の厚みが厚くなる程、液体101の冷却速度が遅くなる。そのため、コントローラ10は、例えば、検出部8により検出された液体101の厚み(液膜の厚み)に基づいて、冷却ガス3a1の流量、ひいては液体101の冷却速度を制御することができる。なお、液体101の温度や冷却速度の制御は、後述する過冷却工程において液体101の過冷却状態を制御する際に行われる。 そのため、例えば、コントローラ10は、基板100の回転、冷却ガス3a1の流量、および、液体101の供給量の少なくともいずれかを制御して、基板100の表面100bの上にある液体101が過冷却状態となるようにする。
例えば、コントローラ10は、検出部8からの信号に基づいて、過冷却状態となった液体101の凍結が開始されたか否かを判定することができる。また、例えば、コントローラ10は、液体101の凍結の開始から所定の時間の経過後に、凍結した液体101の解凍を開始させることができる。
なお、過冷却状態となった液体101の凍結の開始、および凍結した液体101の解凍の開始に関する詳細は後述する。
次に、基板処理装置1の作用について例示をする。
図2は、基板処理装置1の作用を例示するためのタイミングチャートである。
図3は、基板100に供給された液体101の温度変化を例示するためのグラフである。
なお、図2および図3は、基板100が6025クオーツ(Qz)基板(152mm×152mm×6.35mm)、液体101が純水の場合である。
まず、筐体6の図示しない搬入搬出口を介して、基板100が筐体6の内部に搬入される。搬入された基板100は、載置台2aの複数の支持部2a1の上に載置、支持される。
基板100が載置台2aに支持された後に、図2に示すように予備工程、液膜の形成工程、冷却工程、解凍工程、乾燥工程を含む凍結洗浄工程が行われる。
まず、図2および図3に示すように予備工程が実行される。予備工程においては、コントローラ10が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体101を供給する。また、コントローラ10が、流量制御部3cを制御して、基板100の裏面100aに、所定の流量の冷却ガス3a1を供給する。また、コントローラ10が、駆動部2cを制御して、基板100を第3の回転数で回転させる。
ここで、冷却部3による冷却ガス3a1の供給により筐体6内の雰囲気が冷やされると、雰囲気中のダストを含んだ霜が基板100に付着し、汚染の原因となる可能性がある。予備工程においては、基板100の表面100bに液体101を供給し続けているので、基板100を均一に冷却しつつ、基板100の表面100bへの霜の付着を防止することができる。
図2に例示をしたものの場合には、基板100の第3の回転数は、例えば、50rpm~500rpm程度である。また、液体101の流量は、例えば、0.1L/min~1.0L/min程度である。また、冷却ガス3a1の流量は、例えば、40NL/min~200NL/min程度である。また、予備工程の工程時間は、例えば、1800秒程度である。なお、予備工程の工程時間は、基板100の面内温度が略均一となる時間であればよく、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
予備工程における液膜の温度は、液体101がかけ流し状態であるため、供給される液体101の温度とほぼ同じとなる。例えば、供給される液体101の温度が常温(20℃)程度である場合、液膜の温度は常温(20℃)程度となる。
次に、図2および図3に示すように液膜の形成工程が実行される。液膜の形成工程においては、コントローラ10が、駆動部2cを制御して、基板100を第2の回転数で回転させる。第2の回転数は、液膜の厚みが、高い除去率を得られる厚みとなる回転数である。第2の回転数は、例えば、50rpm~100rpmである。つまり、コントローラ10は、予備工程時の回転数と同じ、あるいは予備工程時の回転数よりも少ない回転数で基板100を回転させる。
そして、図2に示すように、予備工程において供給されていた液体101の供給を停止し、所定の厚みとなるまで基板100を第2の回転数で回転させる。所定の厚みとなったかどうかは、検出部8によって液膜の厚みを測定して確認してもよい。検出部8によって液膜の厚みを測定し、測定された厚みから所定の厚みとなる時間を予め算出しておき、所定の厚みとなる時間の間、第2の回転数を維持するようにしてもよい。
その後、基板100の回転数を、第1の回転数とする。第1の回転数は、基板100の上に供給された液体101の液膜が、均一な厚みに維持される程度の回転数である。第1の回転数は、遠心力により液膜の厚みがばらつくのを抑制することができる回転数であればよく、例えば、0rpm~50rpm程度とすればよい。
なお、液膜の形成工程における冷却ガス3a1の流量は、予備工程における冷却ガス3a1の流量と同じにされている。前述の通り、予備工程においては、基板100の面内温度を略均一としている。液膜の形成工程において、冷却ガス3a1の流量を予備工程と同じに維持することで、基板100の面内温度が略均一となった状態を維持することができる。
また、液膜の厚みを厚くしたい場合には、第3の回転数から第2の回転数とすることなく第1の回転数とすることもできる。この場合、第1の回転数は、0rpmに近い回転数とすることが好ましい。特に、基板100の回転を停止させれば、遠心力により液膜の厚みがばらつくのをより抑制することができる。
なお、予備工程、および液膜の形成工程における回転数を、第1の回転数としてもよい。また、第3の回転数が第1の回転数よりも遅い回転数であってもよい。
また、予備工程から液膜の形成工程に移行する際に、予備工程において供給された液体101を、基板100を高速で回転させることで排出してもよい。この場合、液体101を排出後、基板100の回転数を均一な厚みの液膜が維持される程度の回転数(50rpm)以下、あるいは基板100の回転を停止させた後に、所定の量の液体101を基板100に供給すればよい。この様にすれば、所定の厚みを有する液膜を容易に形成することができる。
後述するように、過冷却工程を行う際の液膜の厚み(液膜形成工程において形成された液膜の厚み)は、300μm~1300μm程度とすることができる。例えば、コントローラ10は、液体101の供給量および基板100の回転数を制御して、基板100の表面100bの上にある液膜の厚みを300μm~1300μm程度にする。
なお、過冷却工程を行う際の液膜の厚みに関する詳細は後述する。
次に、図2および図3に示すように冷却工程が実行される。なお、本実施の形態では、冷却工程のうち、過冷却状態となった液体101の凍結が始まる前までの間を「過冷却工程」、過冷却状態の液体101の凍結が開始し、凍結が完全に完了する前までの間を「凍結工程(固液相)」、凍結した液体101をさらに冷却する工程を「凍結工程(固相)」と呼称する。
例えば、過冷却工程では、基板100の表面100bに液体101のみが存在する。例えば、凍結工程(固液相)では、基板100の表面100bに、液体101と、凍結した液体101とが存在する。例えば、凍結工程(固相)では、基板100の表面100bに、凍結した液体101のみが存在する。
なお、固液相とは、液体101と、凍結した液体101とが、全体的に存在している状態を意味する。また、凍結した液体101のみとなった状態を凍結膜101aと呼ぶ。
まず、過冷却工程では、基板100の裏面100aに供給され続けている冷却ガス3a1により、基板100の上の液膜の温度が、液膜の形成工程における液膜の温度よりもさらに下がり、過冷却状態となる。
ここで、液体101の冷却速度が余り速くなると液体101が過冷却状態とならず、すぐに凍結してしまう。そのため、コントローラ10は、基板100の回転数、冷却ガス3a1の流量、および、液体101の供給量の少なくともいずれかを制御することで、基板100の表面100bの液体101が過冷却状態となるようにする。
液体101が過冷却状態となる制御条件は、基板100の大きさ、液体101の粘度、冷却ガス3a1の比熱などの影響を受ける。そのため、液体101が過冷却状態となる制御条件は、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定することが好ましい。
過冷却状態においては、例えば、液膜の温度、パーティクルなどの汚染物や気泡の存在、振動などにより、液体101の凍結が開始する。例えば、パーティクルなどの汚染物が存在する場合、液体101の温度Tが、-35℃以上、-20℃以下になると液体101の凍結が開始する。また、基板100の回転を変動させるなどして液体101に振動を加えることで、液体101の凍結を開始させることもできる。
過冷却状態の液体101の凍結が開始すると、過冷却工程から凍結工程(固液相)に移行する。前述したように、過冷却状態の液体101においては、凍結開始の起点の何割かが汚染物となる。汚染物が凍結開始の起点となること、液体101が固体に変化した際の体積変化に伴い圧力波が生じること、体積増加に伴い物理力が発生することなどにより、基板100の表面100bに付着している汚染物が分離されると考えられている。そのため、液体101の一部が凍結した際に生じた圧力波や物理力などにより、基板100の表面100bに付着している汚染物を分離することができる。
凍結工程(固液相)においては、液膜は、一瞬で凍結することは無い。凍結工程(固液相)においては、液体101と、凍結した液体101が、基板100の表面100bの全体に存在する。
液体101が凍結する際に、潜熱が発生する。潜熱を放出することで、凍結した液体101の温度が凝固点まで上昇する。検出部8によって液体101の液膜の温度を検出する場合、液膜の温度が凝固点付近まで上昇する瞬間を凍結が開始するタイミングとすることができる。
凍結工程(固液相)においても、基板100の裏面100aには冷却ガス3a1が供給されている。このため、潜熱の発生速度と冷却速度とが釣り合い、凝固点より若干低い温度で温度が一定に保たれる。液膜が完全に凍結して氷膜が形成されると、潜熱の発生が無くなる。一方、基板100の裏面100aへの冷却ガス3a1の供給は、維持されている。したがって、凍結膜101aが形成されると、凍結膜101aの温度は低下し始める。
基板100の表面100bの液膜が完全に凍結すると、凍結工程(固液相)から凍結工程(固相)に移行する。前述したように、凍結工程(固相)においては、基板100の表面100bの凍結膜101aの温度がさらに低下する。
ここで、液体101には、主に、水が含まれている。そのため、基板100の表面100bの液膜が完全に凍結して凍結膜101aが形成され、凍結膜101aの温度がさらに低下すると、凍結膜101aの体積が縮小して凍結膜101aに応力が発生する。基板100がクオーツ基板の場合、例えば、凍結膜101aの温度が-50℃以下になると、凍結膜101aにひび割れが発生する。
次に、ひび割れの作用効果について説明する。
凍結膜101aにひび割れが発生すると、基板100の表面100bに付着していた汚染物103が基板100の表面100bから分離される。汚染物103が基板100の表面100bから分離されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下の様に考えることができる。
図4(a)、(b)は、汚染物103の分離メカニズムを例示するための模式図である。
図4(a)に示すように、凍結工程(固相)において、凍結膜101aの温度が低下すると、凍結膜101aの熱膨張係数と、基板100の熱膨張係数との差に応じた応力Fが発生する。
そして、図4(b)に示すように、凍結膜101aの温度がさらに低下する(例えば、-50℃以下になる)と、増大した応力Fに耐えきれずに凍結膜101aにひび割れが発生する。この場合、一般的に、水を主成分とする凍結膜101aの熱膨張係数は、基板100の熱膨張係数よりも大きいので、図4(b)に示すように、凍結膜101aが外部に向けて凸状に変形してひび割れが発生する。
凍結膜101aには汚染物103が取り込まれているので、凍結膜101aが外部に向けて凸状に変形した際(ひび割れが発生した際)に、図4(b)に示すように、汚染物103が基板100の表面100bから分離される。
ただし、前述したように、ひび割れの発生時には、衝撃力が発生する。衝撃力が発生すると、基板100の表面100bに形成された凹凸部が倒壊する場合がある。
図5は、基板100上の凍結膜101aの温度と汚染物103の除去率との関係、および、凍結膜101aの温度と凹凸部の倒壊数との関係を例示するためのグラフである。なお、図5は、基板100がクオーツ基板の場合のグラフである。
前述したように、基板100がクオーツ基板の場合、凍結膜101aの温度が-50℃以下になると、凍結膜101aにひび割れが発生し易くなる。図5から分かるように、凍結膜101aの温度が-50℃以下になると、ひび割れの発生に起因して、汚染物103の除去率が高くなる。しかしながら、凍結膜101aの温度が-50℃以下になると、ひび割れにより生じた衝撃力により凹凸部の倒壊数が多くなる。
そのため、基板100の表面100bに、微細な凹凸部や剛性の低い凹凸部が形成されている場合には、ひび割れが発生する前に解凍を開始させることが好ましい。この様にすれば、ひび割れによる衝撃力の発生がないので、凹凸部が倒壊するのを抑制することができる。この場合、1回の凍結洗浄工程における汚染物103の除去率が低くなるが、凍結洗浄工程を繰り返し行えば、凹凸部の倒壊の抑制と、汚染物103の除去率の向上とを図ることができる。
一方、基板100の表面100bに凹凸部が形成されていなかったり(例えば、バルク基板)、剛性の高い凹凸部が形成されていたりする場合には、ひび割れを発生させた後に、解凍を開始させることが好ましい。この様にすれば、汚染物103の除去率を向上させることができる。また、凍結洗浄工程を繰り返し行う際には、凍結洗浄工程の繰り返し数を低減させることができる。
例えば、コントローラ10は、液体101を過冷却状態にする工程と、過冷却状態となった液体101を凍結させる工程と、液体101の凍結の開始から所定の時間の経過後に、凍結された液体101の解凍を開始する工程と、を予め定められた回数繰り返し実行させることができる。
なお、凍結洗浄工程の実行回数は、不図示の入出力画面を介して操作者により入力される。あるいは、基板100を収納するケースに付属したバーコードやQRコード(登録商標)などのマークを基板処理装置1が読み込むようにしてもよい。
また、前述の通り、図5のグラフは、基板100がクオーツ基板の場合に得られるグラフである。ひび割れは、凍結膜の熱膨張係数と、基板100の熱膨張係数との差に応じた応力が大きくなると発生する。つまり、液体101の種類が同一であれば、基板100の材料によってひび割れが生じる温度が変化する。また、液体101の厚みによっても、凍結膜にひび割れが発生する温度が変化する。そこで、基板100の種類と液体101の厚みの組合せによってひび割れが発生する温度がどのように変化するのかを実験やシミュレーションにより予め求め、求めた温度から所定の温度を算出するようにしておくと良い。
次に、図2および図3に戻って、基板処理装置1の作用についてさらに説明する。
図2および図3に示すように、凍結工程(固相)の後に、解凍工程が実行される。
なお、図2および図3に例示をしたものは、液体101と液体102が同じ液体の場合である。そのため、図2および図3では液体101と記載している。解凍工程においては、コントローラ10が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体101を供給する。なお、液体101と液体102が異なる場合には、コントローラ10が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、基板100の表面100bに、所定の流量の液体102を供給する。
また、コントローラ10が、流量制御部3cを制御して、冷却ガス3a1の供給を停止させる。また、コントローラ10が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数を第4の回転数に増加させる。第4の回転数は、例えば、200rpm~700rpm程度とすることができる。
基板100の回転が速くなれば、液体101と、凍結した液体101とを遠心力で振り切ることができる。そのため、液体101と、凍結した液体101とを基板100の表面100bから排出することができる。この際、基板100の表面100bから分離された汚染物103も、液体101と、凍結した液体101とともに排出される。
なお、液体101または液体102の供給量は、解凍ができるのであれば特に限定はない。また、基板100の第4の回転数は、液体101、凍結した液体101、および汚染物103が排出できるのであれば特に限定はない。
次に、図2および図3に示すように乾燥工程が実行される。乾燥工程においては、コントローラ10が、供給部4bおよび流量制御部4cを制御して、液体101の供給を停止させる。なお、液体101と液体102が異なる液体の場合には、コントローラ10が、供給部5bおよび流量制御部5cを制御して、液体102の供給を停止させる。
また、コントローラ10が、駆動部2cを制御して、基板100の回転数を第4の回転数より速い第5の回転数に増加させる。基板100の回転が速くなれば、基板100の乾燥を迅速に行うことができる。なお、基板100の第5の回転数は、乾燥ができるのであれば特に限定はない。
凍結洗浄工程が終了した基板100は、筐体6の図示しない搬入搬出口を介して、筐体6の外部に搬出される。
以上の様にすることで、1回の凍結洗浄工程を行うことができる。
なお、前述したように、凍結洗浄工程は複数回行うこともできる。そのため、次の凍結洗浄工程が実施されるのであれば、解凍工程においても冷却ガス3a1の供給を維持することもできる。この様にすれば、予備工程と同じ状態を発生させることができるので、次の凍結洗浄工程における予備工程を省くことができる。また、現在実行している凍結洗浄工程(当該凍結洗浄工程)における乾燥工程を省くことができる。
例えば、凍結洗浄工程を複数回繰り返して行う場合、1回の凍結洗浄工程は、過冷却工程、凍結工程(固液相)、凍結工程(固相)、および解凍工程、を少なくとも含んでいればよい。
ここで、一般的に、解凍工程を開始するタイミングは、時間管理により行われている。例えば、基板100が載置台2aの複数の支持部2a1の上に載置されてから任意の時間が経過したタイミングを凍結洗浄工程が開始されるタイミングとする。この場合、凍結洗浄工程の開始から予め定められた時間の間に、予備工程、液膜形成工程、および冷却工程(過冷却工程、凍結工程(固液相)、凍結工程(固相))が実行されて、凍結膜101aが形成されるようにしている。そして、予め定められた時間が経過した後に、液体101(102)を供給して凍結膜101aを解凍している。この場合、解凍工程を開始するタイミングは、予め実験やシミュレーションを行うことで適宜決定している。
前述したように、液膜の厚み、液体101の成分、および冷却ガス3a1の流量などは、管理が可能であるため、例えば、基板100の大きさに応じて、実験やシミュレーションを行えば、解凍工程を開始する適切なタイミングを決めることができると考えられている。
また、前述した予備工程を行えば、基板100の面内温度が略均一となった状態で液膜を形成することができるため、凍結洗浄工程の開始から凍結膜101aが形成されるまでの時間を安定させることができると考えられている。
ところが、本発明者らは、鋭意実験と解析を重ねた結果、液体101の供給が停止されてから凍結が開始するタイミングがばらつくことが判明した。
図6は、本実施の形態に係る基板処理装置1を用いて凍結洗浄工程を繰り返し行った際の各凍結洗浄工程における基板100の表面100bの温度変化を例示するためのグラフである。
図6は、図3に示す「液膜形成工程」中の「液体101停止」から解凍工程までに対応する液体101の温度変化を示している。図6中の「T1」は、解凍を開始するタイミングを液体101の供給が停止されてから予め定められた時間とした場合の、予め定められた時間を示す。凍結洗浄工程の繰り返し数は、10回である。なお、基板100は、クオーツ基板である。また、「基板100の表面」とは、基板100の表面100bだけではなく、基板100に供給された液体101、基板100の表面100bに形成された液膜、基板100の表面100bに、液体101と、凍結した液体101とが存在する状態、および基板100の表面100bに形成された凍結膜101aを含む。また、図6の横軸の目盛り線は、一定の時間で刻まれている。
図6から分かるように、液体101の供給が停止されてから凍結が開始するタイミングには、ばらつきがある。凍結が開始するタイミングにばらつきが生じる原因は、必ずしも明らかではないが、過冷却状態の液体101の凍結が開始する条件が複数存在することが一因であると考えられる。例えば、過冷却状態の液体101においては、液膜の温度不均一による密度変化、パーティクルなどの汚染物の存在、振動などの複数の要因が凍結開始の起点となる。そのため、複数の条件の少なくともいずれかが変化することで、凍結が開始したり、凍結が開始しなかったりする。また、複数の条件により凍結が開始されるため、凍結が開始するタイミングを制御することも難しい。
この場合、液体101の供給が停止されてから予め定められた時間T1が経過した際に解凍工程を開始させると、図6から分かるように、解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつく。解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつくと、所望の除去率が得られない。あるいは、解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつくと、解凍される凍結膜101aにひび割れが発生したりしなかったりする。この場合、基板100の表面100bに、微細な凹凸部や剛性の低い凹凸部が形成されていると、凹凸部が倒壊するおそれがある。
本発明者らは、検討の結果、過冷却状態の液体101の凍結が開始してから、凍結膜101aが所定の温度にまで冷却される時間にはばらつきが少ないとの知見を得た。
図7は、凍結が開始してから、凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間を例示するためのグラフである。
なお、この場合、所定の温度は、-45℃である。また、凍結を開始してから解凍するまでの間に、基板100の表面100bは、液体101と、凍結した液体101とが存在する状態、および基板100の表面100bに凍結膜101aが形成された状態を含む。そのため、グラフの縦軸は、「基板100の表面の温度」と表記してある。また、図7の横軸の目盛り線は、一定の時間で刻まれている。そして、図6と図7で、一定の時間は、同じ時間である。つまり、図6と図7で、目盛り線同士の間隔は、同じである。
図7から分かるように、凍結が開始してから、凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間は、繰り返し凍結洗浄工程を行っていても、ばらつきが小さい。凍結が開始してから、凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間のばらつきは、図6における、液体101の供給が停止されてから凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間のばらつきと比較すると小さい。
そのため、検出部8により、凍結の開始を検出し、検出された凍結の開始時点から所定の時間の経過後に解凍工程を開始させれば、解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつくのを抑制することができる。解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつかなければ、解凍が開始される時点での凍結膜101aの状態を安定させることができる。
また、解凍工程を開始させるまでの時間を制御することで、解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度、ひいては解凍される凍結膜101aの状態を制御することが可能となる。例えば、コントローラ10は、所定の時間を第1の時間とすることで、解凍を行う凍結された液体101(凍結膜101a)にひび割れが発生するのを抑制することができる。コントローラ10は、所定の時間を第1の時間よりも長い第2の時間とすることで、解凍を行う凍結された液体101(凍結膜101a)にひび割れを発生させることができる。そのため、基板100の表面100bの状態に応じて、解凍工程を開始させるまでの時間を変えることで、凹凸部の倒壊を抑制したり、汚染物103の除去率を高めたりすることができる。
この場合、検出部8による、凍結の開始の検出は、例えば、以下の様にして行うことができる。
図8は、検出部8が温度を検出する温度センサの場合の検出値を例示するためのグラフである。
図9は、検出された温度と、その直前に検出された温度との差を例示するためのグラフである。
検出部8が温度を検出する温度センサなどの場合には、例えば、過冷却状態となった液体101の表面の温度を所定の時間間隔で検出する。
図8に示すように、過冷却状態となった液体101が凍結する際に温度が上昇する。そして、図9に示すように、検出された温度と、その直前に検出された温度との差が所定の閾値を超えた場合、および、図8に示すように、温度上昇の割合が所定の閾値を超えた場合、の少なくともいずれかの場合には、液体101の凍結が開始されたと判定することができる。判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
凍結膜101aにひび割れが発生すると、基板100の表面100bに、微細な凹凸部や剛性の低い凹凸部が形成されている場合、凹凸部が倒壊する可能性が高くなる。そのため、解凍温度は、ひび割れが発生する温度よりも高い温度とすることが好ましい。また、図5に示すように、除去率は、解凍温度が低くなるほど高くなる傾向にある。したがって、凹凸部の倒壊を抑制しつつ、高い除去率を得るためには、ひび割れが発生する温度よりも5℃~10℃高い温度で解凍することが好ましい。
ひび割れが発生する温度は、実験やシミュレーションで予め求めておけばよい。そして、ひび割れが発生する温度よりも5℃~10℃高い温度(所定の温度)をコントローラ10に記憶させる。
また、凍結膜にひび割れが発生する温度は、液体101の厚みや基板の種類などの条件によっても変化する。条件によっては、-50℃よりも高い温度でひび割れが発生する場合もあれば、ひび割れが発生する温度が、―50℃以下となる場合もある。放射温度計は、-50℃以下の温度を検出することができない。この場合、実験やシミュレーションで過冷却状態の液体101が固液相状態となる(凍結が開始する)瞬間からひび割れが生じるまでの時間を予め求めておき、その時間から10秒~30秒短い時間をコントローラ10に記憶させて解凍を行うようにしてもよい。
このようにすることで、放射温度計で温度を検出できない範囲でひび割れが発生するとしても、ひび割れが発生する前に必ず解凍することができる。
なお、10秒~30秒短くすると、ひび割れが発生する温度よりも5℃~10℃高い温度となる。
あるいは、実験やシミュレーションで、過冷却状態の液体101が固液相状態となる(凍結が開始する)瞬間からひび割れが生じるまでの時間を予め求めておき、その時間の70%以上90%以下の時間をコントローラ10に記憶させて解凍を行うようにしてもよい。
なお、過冷却状態の液体101が固液相状態となる(凍結が開始する)瞬間からひび割れが生じるまでの時間の70%以上90%以下の時間とすると、ひび割れが発生する温度よりも5℃~10℃高い温度となる。
検出部8が膜の厚みや、膜の表面位置を検出する変位計などの場合には、例えば、過冷却状態となった液体101の表面位置を所定の時間間隔で検出する。
コントローラ10は、検出された表面位置と、その直前に検出された表面位置との差が所定の閾値を超えた場合、および、表面位置の変化の割合が所定の閾値を超えた場合、の少なくともいずれかの場合には、液体101の凍結が開始されたと判定することができる。判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
検出部8が膜の表面の反射率を検出する光学センサなどの場合には、例えば、過冷却状態となった液体101の表面の反射率を所定の時間間隔で検出する。
コントローラ10は、検出された表面の反射率と、その直前に検出された表面の反射率との差が所定の閾値を超えた場合、および、表面の反射率の変化の割合が所定の閾値を超えた場合、の少なくともいずれかの場合には、液体101の凍結が開始されたと判定することができる。判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
検出部8が膜の表面状態を検出する画像センサなどの場合には、例えば、過冷却状態となった液体101の表面状態を所定の時間間隔で撮像する。
コントローラ10は、撮像した画像を白黒の2値化処理して、凍結された液体101を判別する。コントローラ10は、凍結された液体101の面積、数、割合などが所定の閾値を超えた場合などには、凍結が開始されたと判定することができる。判定に用いる閾値は、予め実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
なお、検出部8は、例示をしたものに限定されるわけではなく、基板100の表面100bの上にある、液体101の凍結の開始を検出可能なものであればよい。
図10は、本実施の形態に係る基板処理装置を用いて予備工程を実施しない場合の凍結洗浄工程を繰り返し行った際の各凍結洗浄工程における基板100の表面100bの温度変化を例示するためのグラフである。
図10は、図6と比較して、予備工程を実施していない点で異なっている。また、図10は、図3に示す「液膜形成工程」中の「液体101停止」から解凍工程までに対応する液体101の温度変化を示している。
図10に示すように、1回目の凍結洗浄工程における、液体101の供給を停止してから凍結が開始するまでの時間が他の凍結洗浄工程と比べてとても長くなっている。また、2回目、3回目の凍結洗浄工程となっていくに従い、液体101の供給を停止してから凍結が開始するまでの時間が短くなり、6回目の凍結洗浄工程以降で、液体101の供給を停止してから凍結が開始するまでの時間がほぼ安定する。したがって、予備工程を実施しない場合、凍結洗浄工程の繰り返し初期(1~5回目まで)において、液体101の供給を停止してから凍結が開始するタイミングに大きなばらつきが発生する。
また、本発明者らが検討の結果、予備工程を実施しない場合、凍結が開始してから凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間においても、予備工程を実施する場合よりも大きなばらつきが発生するとの知見を得た。特に、凍結洗浄工程の繰り返し初期(1~5回目まで)において、大きなばらつきが発生し、6回目の凍結洗浄工程以降で、凍結が開始してから凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間は、ほぼ安定する。
この場合、検出部8により、凍結の開始を検出し、検出された凍結の開始時点から凍結膜101aが所定の温度となったら、解凍工程を開始するようにすれば、解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつくのを抑制することができる。解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度がばらつかなければ、解凍が開始される時点での凍結膜101aの温度を凍結洗浄工程ごとに一定に保つことができる。
また、検出部8により、凍結の開始を検出することで、基板100の表面100b上に過冷却状態の液体101の液膜が形成された状態で、誤って解凍工程が実施されるのを防ぐことができる。
前述の通り、凍結膜101aにひび割れが発生する温度は、液体101の厚みや基板の種類などの条件によっても変化する。
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、過冷却温度が-40℃にまで達することがあることが判明した。
例えば、-38℃で凍結膜101aにひび割れが発生してしまう条件の場合、検出部8により、凍結の開始を検出しなければ、液膜の温度が-38℃に達した瞬間に、解凍工程が開始されてしまう。この場合において、検出部8により、凍結の開始を検出することで、凍結膜101aが所定の温度となったら、解凍工程を開始することができる。
なお、前述の通り、6回目の凍結洗浄工程以降で、凍結が開始してから凍結膜101aが所定の温度となるまでの時間が安定する。したがって、1回目から5回目の凍結洗浄工程では、検出部8により、凍結の開始を検出した後、凍結膜101aが所定の温度となったら、解凍工程を開始し、6回目以降の凍結洗浄工程では、検出部8により、凍結の開始を検出した後、所定の時間が経過したら解凍するようにしてもよい。
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述した実施形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、基板処理装置1が備える各要素の形状、寸法、数、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。