以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
(実施の形態1)
本実施の形態のフィラー含有樹脂の製造方法においては、押出装置を用いて、フィラーを溶融樹脂に混練する。
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどを用いることができる。これらの樹脂は、単体で用いてもよく、また、複数種類の混合物を用いてもよい。
図1は、本実施の形態における押出装置1の側面図であり、図2は、押出装置1の上面図である。図1の側面図は、図2に示される矢印7の方向から押出装置1を見たときの側面図に対応している。図3は、押出装置1のスクリュ3を示す平面図である。図4は、フィラー供給装置10を示す側面図である。図4の側面図は、図2に示される矢印8の方向からフィラー供給装置10を見たときの側面図に対応している。図5は、押出装置1のシリンダ2とフィラー供給装置10のシリンダ11との接続部近傍を示す断面図である。図5は、シリンダ2の延在方向(ここではX方向)に略垂直な断面に対応している。図6は、フィラー供給装置10のシリンダ11の一部を拡大して示す部分拡大平面図(上面図)であり、シリンダ11において、開口部15が形成されている領域の近傍が示されている。図6には、ホッパ14(図4参照)は示されていないが、図4に示されるホッパ14は、図6に示されるシリンダ11の開口部15に接続されている。また、図6においては、シリンダ11の開口部15から、シリンダ11内のスクリュ12が見えている。図7は、フィラー供給装置10のシリンダ11内のスクリュ12を示す平面図であり、図8は、フィラー供給装置10のシリンダ11内のスクリュ12を示す斜視図である。図9~図12は、フィラー供給装置10の要部断面図である。図9は、シリンダ11の延在方向(ここではY方向)に略平行な断面であり、図10~図12は、シリンダ11の延在方向(ここではY方向)に略垂直な断面であるが、図9は、図6に示されるA1-A1線の位置での断面図に対応し、図10は、図6に示されるA2-A2線の位置での断面図に対応し、図11は、図6に示されるA3-A3線の位置での断面図に対応している。図12は、シリンダ11において、排気室22が配置された位置を横切る断面図に対応している。シリンダ11における排気室22の配置位置は、図2に示されている。
なお、各平面図には、X方向、Y方向およびZ方向のうちの2方向が示されているが、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。このうち、X方向およびY方向は、水平方向であり、Z方向は、高さ方向である。
本実施の形態の押出装置1は、樹脂とフィラーとを混合(混練)して押し出す押出装置(樹脂押し出し機、混練押出装置)である。
まず、図1~図5を参照して、樹脂押し出し機である押出装置1の構成について説明する。図1および図2に示される押出装置1は、シリンダ(バレル)2と、シリンダ2に内蔵され、原料樹脂を混練するための2本のスクリュ3と、スクリュ3を回転させるための回転駆動機構4と、シリンダ2の上流側(後端側)に配置されたホッパ(樹脂投入部)5と、を有している。ホッパ5は、シリンダ2の上面に接続されており、ホッパ5を介してシリンダ2内に樹脂(原料樹脂)を供給できるようになっている。押出装置1は、更に、フィラー供給装置(サイドフィーダ)10も有している。
図2および図4に示されるフィラー供給装置10は、ホッパ5よりも下流側(先端側)で、かつ、シリンダ2の先端よりも上流側において、シリンダ2の側面に接続(連結)されている。フィラー供給装置10は、シリンダ2にフィラーを供給するための装置であり、このフィラー供給装置10を介して、シリンダ2内にフィラーを供給できるようになっている。シリンダ2は、ヒータなどの図示しない温度調整手段(温度調節機構)によって、温度制御される。
シリンダ2は、複数のシリンダブロックからなり、それら複数のシリンダブロックは、上流側から下流側に向かう方向に配列して連結されている。このため、シリンダ2は、上流側から下流側に向かう方向に延在している。シリンダ2を構成する複数のシリンダブロックのうち、ホッパ5が接続されるシリンダブロックは、その上面に開口部(樹脂供給口)を有し、その開口部に連通するようにホッパ5が接続されている。また、シリンダ2を構成する複数のシリンダブロックのうち、フィラー供給装置10が接続されるシリンダブロックは、一方の側面に開口部(フィラー供給口)6を有し、その開口部6に連通するようにフィラー供給装置10が接続されている(図2および図5参照)。これにより、ホッパ5に投入した樹脂は、シリンダブロック(ホッパ5が接続されたシリンダブロック)の上面の開口部(樹脂供給口)からシリンダブロック内に供給され、また、フィラー供給装置10から、シリンダブロック(フィラー供給装置10が接続されたシリンダブロック)の側面の開口部6を介してシリンダブロック内にフィラーが供給されるようになっている。
なお、シリンダ2に関して「下流側」および「上流側」と称する場合、「下流側」とは、シリンダ2内の樹脂の流れの下流側を意味し、「上流側」とは、シリンダ2内の樹脂の流れの上流側を意味する。このため、シリンダ2において、シリンダ2の先端に近い側が下流側であり、シリンダ2の先端から遠い側が上流側である。なお、シリンダ2の先端は、シリンダ2において、樹脂とフィラーとの混練物が押し出される側の端部に対応している。
図3および図5に示されるように、シリンダ2の内部には、2本のスクリュ3が回転可能(回転自在)に挿入されて内蔵されている。このため、押出装置1は、二軸押出装置(二軸押出機)とみなすこともできる。シリンダ2内において、2本のスクリュ3は、互いに噛み合うように配置されて回転する。シリンダ2の延在方向と、シリンダ2内のスクリュ3の延在方向とは、同じであり、ここではX方向である。本実施の形態では、スクリュ3としてフルフライトスクリュを適用している。すなわち、スクリュ3は、フルフライト形状を有している。
本実施の形態では、シリンダ2内のスクリュ3の数が2本の場合について説明するが、他の形態として、シリンダ2内のスクリュ3の数を1本とすることもできる。しかしながら、シリンダ2内のスクリュ3の数を2本とした場合には、2本のスクリュ3が互いのスクリュ表面付近を通過することにより、セルフクリーニング効果によってスクリュ表面付近での樹脂およびフィラーの滞留を抑制できるという利点を得られる。
次に、図1および図2に示される押出装置1の動作の概略について説明する。
ホッパ5からシリンダ2内に原料樹脂(熱可塑性樹脂)が供給され、フィラー供給装置10からシリンダ2内にフィラーが供給される。ホッパ5からシリンダ2内に供給された原料樹脂は、シリンダ2内でスクリュ3の回転により前方へ送られながら溶融される。そして、フィラー供給装置10からシリンダ2内にフィラーが供給されるため、樹脂(溶融樹脂)とフィラーとが、スクリュ3の回転により混練されながらシリンダ2内を更に前方に送られる。樹脂(溶融樹脂)とフィラーとの混練物(フィラー含有樹脂)は、シリンダ2の先端に取り付けられた金型などから押し出される。
なお、本実施の形態では、フィラー供給装置10を押出装置1の構成要素として説明しているが、フィラー供給装置10を押出装置1とは別要素(別装置)とみなし、フィラー供給装置10を押出装置(樹脂押し出し機)1にフィラーを供給する装置とみなすこともできる。
次に、押出装置1を構成するフィラー供給装置10について、図2および図4~図12を参照して更に説明する。
フィラー供給装置10は、スクリュ式のフィラー供給装置である。図2および図4~図12に示されるように、フィラー供給装置10は、シリンダ(バレル)11と、シリンダ11に内蔵され、フィラー(綿状のフィラー原料)をシリンダ2に供給するための2本のスクリュ12と、スクリュ12を回転させるための回転駆動機構13と、シリンダ11の上流側(後端側)に配置されたホッパ(フィラー投入部)14と、を有している。ホッパ14は、シリンダ11の上面に接続されている。シリンダ11は、シリンダ11の上面に開口部(フィラー供給口)15を有し、その開口部15に連通するようにホッパ14が接続されている。これにより、ホッパ14に投入したフィラーは、シリンダ11の上面の開口部15からシリンダ11内に供給されるようになっている。平面視において、開口部15は、ホッパ14に内包されているため、図2に示されるシリンダ11において、開口部15が形成されている位置は、ホッパ14が配置されている位置と、実質的に同じである。
シリンダ11の先端(下流側先端)は、シリンダ2に接続されており、より特定的には、シリンダ2の側面に接続されている。シリンダ11は、先端に開口部(フィラー吐出口)を有しており、そのシリンダ11の先端の開口部と、シリンダ2の側面に設けられた開口部6とが連通するように(空間的につながるように)、シリンダ11の先端がシリンダ2の側面に接続されている。すなわち、シリンダ11の先端の開口部が、シリンダ2の側面の開口部6に接続されている。このため、シリンダ11の内部(内部空洞)とシリンダ2の内部(内部空洞)とは、シリンダ2の側面の開口部6を介して連通している(空間的につながっている)。これにより、シリンダ11の先端の開口部から、シリンダ2の側面の開口部6を介してシリンダ2内にフィラーが供給されるようになっている。シリンダ2の延在方向(ここではX方向)とシリンダ11の延在方向(ここではY方向)とは、互いに交差する方向であり、好ましくは、互いに直交する方向である。
シリンダ11を接続するためのシリンダ2の開口部6は、シリンダ2において、側面以外の面(上面または下面)に設けることも可能である。但し、シリンダ2の側面に開口部6を設けことが好ましく、これにより、フィラー供給装置10のシリンダ11から押出装置1のシリンダ2へのフィラーの供給を行いやすくなる。
なお、フィラー供給装置10またはフィラー供給装置10を構成するシリンダ11に関して「下流側」および「上流側」と称する場合、「下流側」とは、シリンダ11内のフィラーの流れの下流側を意味し、「上流側」とは、シリンダ11内のフィラーの流れの上流側を意味する。このため、シリンダ11において、シリンダ2の開口部6に近い側(すなわちシリンダ11の先端に近い側)が下流側であり、シリンダ2の開口部6から遠い側(すなわちシリンダ11の先端から遠い側)が上流側である。
図5~図12に示されるように、フィラー供給装置10を構成するシリンダ11の内部(内部空洞)には、2本のスクリュ12が回転可能(回転自在)に挿入されて内蔵されている。シリンダ11内において、2本のスクリュ12は、互いに噛み合うように配置されて回転する。シリンダ11の延在方向(ここではY方向)と、シリンダ11内のスクリュ12の延在方向(ここではY方向)とは、同じである。
本実施の形態では、フィラー供給装置10用のスクリュ12として、角フライトスクリュが用いられており、一条角フライトスクリュであればより好ましい。すなわち、スクリュ12は、角フライト形状を有しており、スクリュ12の条数(フライト数)は、一条であることがより好ましい。図6~図12には、スクリュ12が一条角フライトスクリュである場合が示されている。
なお、角フライトスクリュとは、角フライト形状を有するスクリュのことであり、スクリュの外周側面に角フライトが形成されているスクリュに対応している。角フライトとは、フライトの両側面(すなわち上流側の側面と下流側の側面)が、スクリュの外周側面に対して略垂直な面(垂直面形状)となるように形成されたフライトに対応している。このため、角フライトの延在方向に略垂直な断面において、角フライトの断面形状は、長方形状となる。
また、フルフライトスクリュとは、フルフライト形状を有するスクリュのことであり、スクリュの外周側面にフルフライトが形成されているスクリュに対応している。上記図3に示されるスクリュ3や、後述の図14~図17に示されるスクリュ112は、フルフライトスクリュに対応している。フルフライトとは、フライトの両側面(すなわち上流側の側面と下流側の側面)が、曲面(湾曲面)形状に形成されたフライトである。
また、一条角フライトスクリュとは、条数(フライト数)が1つである角フライトスクリュであり、二条角フライトスクリュとは、条数(フライト数)が2つである角フライトスクリュである。一条角フライトスクリュにおいては、スクリュの外周側面には、連続的に(らせん状に)繋がった角フライトが1つ形成されている。また、二条角フライトスクリュにおいては、スクリュの外周側面には、連続的に(らせん状に)繋がった角フライトが2つ形成されている。すなわち、二条角フライトスクリュでは、スクリュの外周側面において、それぞれらせん状に延在する2つの角フライトが並走している。
また、一条フルフライトスクリュとは、条数(フライト数)が1つであるフルフライトスクリュであり、二条フルフライトスクリュとは、条数(フライト数)が2つであるフルフライトスクリュである。一条フルフライトスクリュにおいては、スクリュの外周側面には、連続的に(らせん状に)繋がったフルフライトが1つ形成されている。また、二条フルフライトスクリュにおいては、スクリュの外周側面には、連続的に(らせん状に)繋がったフルフライトが2つ形成されている。すなわち、二条フルフライトスクリュでは、スクリュの外周側面において、それぞれらせん状に延在する2つのフルフライトが並走している。
また、本実施の形態では、シリンダ11内のスクリュ12の数が2本の場合について説明したが、他の形態として、シリンダ11内のスクリュ12の数を1本とすることもできる。しかしながら、シリンダ11内のスクリュ12の数を2本とした場合には、空間容積を大きくとれるため、同一スクリュ口径の場合、単軸(スクリュ12が1本)よりも二軸(スクリュ12が2本)の方が原料の供給能力を高くすることができる。
また、シリンダ11内にスクリュ12が配置されているが、図5に示されるように、スクリュ12の一部(先端部)は、シリンダ11の先端の開口部から突出することもでき、そのスクリュ12の突出部(シリンダ11から突出する部分)は、シリンダ2の開口部6内に位置することができる。これにより、回転するスクリュ12によってシリンダ11からシリンダ2へ、フィラーをより的確に移動させることができる。
フィラー供給装置10は、シリンダ11を強制的に排気する排気機構を有している。この排気機構は、シリンダ11に設けられたベント用の開口部21から、シリンダ11内を強制的に排気することができる。フィラー供給装置10の排気機構について、図2および図12を参照して以下に具体的に説明する。
図2および図12に示されるように、シリンダ11の開口部15(ホッパ14)よりも下流側で、シリンダ11の先端よりも上流側において、シリンダ11の両側面に、ベント用の開口部21が形成されており、そのベント用の開口部21に連通するように、排気室(強制排気室、排気部)22が接続されている。すなわち、シリンダ11の両側面の開口部21に、それぞれ排気室22が接続されている。ベント用の開口部21は、シリンダ11の延在方向(ここではY方向)において、フィラー供給用の開口部15とシリンダ2との間に位置している。
排気室22には、バルブなどを介して排気用ダクト23が接続されており、排気用ダクト23から排気室22を強制的に排気することができるようになっている。排気用ダクト23の他端側(排気室22に接続された側とは反対側)は、排気用ポンプ(図示せず)などの排気手段(強制排気手段)に接続されている。シリンダ11の内部と排気室22とは開口部21を介して連通している(空間的につながっている)ため、排気用ダクト23から排気室22を強制的に排気することで、ベント用の開口部21からシリンダ11内を強制的に排気することができる。言い換えると、排気用ダクト23から排気室22を強制的に排気することで、排気室22を減圧し、それによって、開口部21からシリンダ11内を強制的に排気することができる。
また、図12に示されるように、シリンダ11において、ベント用の開口部21内には、フィラーの通過を防ぐためのフィルタ部24が取り付けられている(装着されている)。フィルタ部24は、例えば、網目状のフィルタ(スクリーン)部材を含んでいる。フィルタ部24は、ガスの通過は可能(自在)であるが、フィラーの通過は防止する。このため、シリンダ11内のガス(気体、空気)は、開口部21内に装着されたフィルタ部24を通って排気室22に排気され、更に排気用ダクト23から排気されることができるが、シリンダ11内のフィラーは、開口部21内に装着されたフィルタ部24で遮蔽されることにより、排気室22へは移動せずにすむ。これにより、シリンダ11の開口部21からシリンダ11内を強制的に排気することができるとともに、フィラーが開口部21からシリンダ11の外部に出てしまうことを防止することができる。
次に、フィラー供給装置10の動作の概略について説明する。
フィラー供給装置10において、ホッパ14に投入されたフィラーは、シリンダ11の上面の開口部15からシリンダ11内に供給される。ホッパ14に投入されるフィラーは、綿状のフィラー(綿状のフィラー原料)であり、従って、シリンダ11の開口部21からシリンダ11内に供給されるフィラーも、綿状のフィラー(綿状のフィラー原料)である。この際、シリンダ11の開口部21からシリンダ11内を強制的に排気しながら、シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に綿状のフィラーを供給することが好ましい。開口部15からシリンダ11内に供給されたフィラーは、シリンダ11内でスクリュ12の回転により前方へ送られる。シリンダ11の先端に到達したフィラーは、シリンダ11の先端の開口部から、シリンダ2の側面の開口部6を介してシリンダ2内に供給される。開口部6からシリンダ2内に供給されたフィラーは、上述したように、シリンダ2内で樹脂と混練される。
本実施の形態では、シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に供給されるフィラーは、綿状のフィラー(綿状のフィラー原料)である。綿状とは、複数の細い繊維が(複雑に、不規則に)絡み合って塊の状態になっていること対応している。綿状のフィラーを構成する繊維の太さ(直径)は、例えば7μm~10μm程度であり、綿状のフィラーを構成する繊維の長さは、例えば10mm~70mm程度である。また、綿状のフィラーの個々の塊の大きさ(直径)は、例えば10mm~70mm程度である。
シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に供給される綿状のフィラーの例としては、再生炭素繊維が挙げられる。再生炭素繊維とは、廃棄後または使用済みの炭素繊維強化樹脂(CFRP)などから炭素繊維を取り出して(回収して)、再利用可能な状態に再生したものに対応している。また、シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に供給される綿状のフィラーの他の例としては、セルロースナノファイバーが挙げられる。
図13は、本実施の形態の押出装置1を用いた製造装置(製造システム)31の構成例を示す図である。
図13に示される製造装置31は、押出装置1と、押出装置1から押し出されたフィラー含有樹脂を搬送(移送)する搬送装置(移送装置)32と、搬送装置32によって搬送されたフィラー含有樹脂を成形する成形装置(成形機)33と、を備えている。
押出装置1は、シリンダ2内で樹脂とフィラーとを混合(混練)し、シリンダ2の先端に取り付けられた金型などから、樹脂とフィラーとの混練物(フィラー含有樹脂)を押し出す。押出装置1から押し出されたフィラー含有樹脂は、搬送装置32によって成形装置33に搬送され、成形装置33でそのフィラー含有樹脂を所定の形状に成形する。搬送装置32は、例えば、ロータリバルブと射出プランジャ装置とを含んでおり、ロータリバルブと射出プランジャ装置とを用いて、押出装置1から成形装置33にフィラー含有樹脂を搬送することができる。また、搬送装置32は、ロボットアームを用いてフィラー含有樹脂を搬送(移送)する構成であってもよい。成形装置33は、例えばプレス式の成形装置である。これにより、フィラー含有樹脂からなる成形体が製造される。
なお、図13は、押出装置1を用いた製造装置(製造システム)の構成例であり、押出装置1以外の構成については、これに限定されるものではない。
<検討の経緯>
本発明者は、樹脂とフィラーとを混練する押出装置について検討している。このため、押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)に樹脂とフィラーとを供給する必要がある。押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)にフィラーを供給するフィラー供給装置(サイドフィーダ)について検討したところ、次のような知見が得られた。
図14は、本発明者が検討した検討例のフィラー供給装置110を示す要部平面図であり、上記図6に対応するものである。すなわち、図14には、検討例のフィラー供給装置110のシリンダ111において、開口部115が形成されている領域の近傍が示されている。図14においては、シリンダ111の開口部115から、シリンダ111内のスクリュ112が見えている。図15は、検討例のフィラー供給装置110のシリンダ111内のスクリュ112を示す斜視図である。図16および図17は、検討例のフィラー供給装置110の要部断面図である。図16は、図14に示されるB1-B1線の位置での断面図に対応し、図17は、図14に示されるB2-B2線の位置での断面図に対応している。
検討例のフィラー供給装置110は、図14~図17に示されるように、上記シリンダ11に相当するシリンダ111と、シリンダ111内に回転可能(回転自在)に配置された2本のスクリュ112とを有しており、シリンダ111の上面には、上記開口部15に相当する開口部115が形成されている。図14には図示しないが、シリンダ111の開口部115には、ホッパ(上記ホッパ14に相当)が接続されている。図14~図15からも分かるように、検討例のフィラー供給装置110では、シリンダ111内のスクリュ112として、二条フルフライトスクリュを用いている。
本発明者は、フィラー供給装置110を用いて押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)に供給するフィラーについて検討した。フィラーがチョップド繊維(チョップドガラス繊維)である場合には、検討例のフィラー供給装置110を用いても、特に問題は生じなかった。また、フィラーが、紛体である場合およびペレット状である場合に、検討例のフィラー供給装置110を用いても、特に問題は生じなかった。しなしながら、綿状のフィラーを適用する場合には、検討例のフィラー供給装置110を用いると、以下に説明するような課題が生じることが分かった。
検討例のフィラー供給装置110のシリンダ111内には2本のスクリュ112が回転可能に配置されているので、開口部115に接続されたホッパに投入されたフィラーが、シリンダ111の開口部115からシリンダ111内に入るためには、シリンダ111の内壁(内部空洞の内壁)とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に、そのフィラーが入り込む必要がある。シリンダ111の内壁とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に入り込んだフィラーは、2本のスクリュ12の回転によりシリンダ111内を前方へ送られ、シリンダ111の先端の開口部から、押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)の側面の開口部を介して押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)内に供給される。
このため、狭い隙間に入り込みやすいフィラーを用いる場合は、開口部115に接続されたホッパに投入されたフィラーは、シリンダ111の内壁とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に入り込むことができ、スクリュ112の回転によりシリンダ111内を前方へ送られ得る。
しかしながら、狭い隙間に入り込みにくいようなフィラーを用いる場合には、開口部115に接続されたホッパに投入されたフィラーは、シリンダ111の内壁とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に入り込みにくくなることから、スクリュ112が回転しても、シリンダ111内を前方に進むことができない。
フィラーがチョップド繊維(チョップドガラス繊維)である場合、紛体である場合、あるいは、ペレット状である場合には、フィラーはある程度狭い隙間にも入り込みやすい。このため、これらの場合は、開口部115に接続されたホッパに投入されたフィラーは、シリンダ111の内壁とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に入り込むことができ、スクリュ112の回転によりシリンダ111内を前方へ送られ得るため、フィラー供給装置110から押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)へのフィラーの供給を的確に行うことができる。
図18は、検討例のフィラー供給装置110において、ホッパからシリンダ111の開口部115に綿状のフィラー116が供給された状態を模式的に示す平面図であり、図14に対応する平面図が示されている。図19は、検討例のフィラー供給装置110において、ホッパからシリンダ111の開口部115に綿状のフィラー116が供給された状態を模式的に示す断面図であり、図16に対応する断面図が示されている。
フィラーが綿状である場合には、フィラーは狭い隙間には入り込みにくい。このため、フィラーが綿状である場合には、開口部115に接続されたホッパに投入された綿状のフィラー116は、シリンダ111の開口部115に供給されても、シリンダ111の内壁とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に入り込みにくくなる。例えば、シリンダ111の上面の開口部115において、スクリュ112上に綿状のフィラー116が乗った状態になってしまい、その綿状のフィラー116はシリンダ111の中に入り込めない(図18および図19参照)。スクリュ112が回転しても、綿状のフィラー116はシリンダ111の中に入り込めずに、そのスクリュ112上で綿状のフィラーが踊る(飛び跳ねる)状態になってしまう。このため、スクリュ112が回転しても、綿状のフィラー116はシリンダ111内を前方に進むことができず、フィラー供給装置110から押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)へのフィラーの供給を上手く行うことができなくなる。
このため、綿状のフィラーを適用する場合には、その綿状のフィラーをフィラー供給装置110を介して押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)へ上手く供給することができなくなることから、押出装置を用いてフィラー含有樹脂を上手く製造することが困難になる。従って、綿状のフィラーをフィラー供給装置を介して押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)へ的確に供給することができるようにし、押出装置を用いてフィラー含有樹脂を的確に製造できるようにすることが望まれる。
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、フィラー供給装置10のシリンダ11の開口部15からシリンダ11内に供給されるフィラーが、綿状のフィラーであることである。綿状のフィラーを用いる場合には、何らかの工夫をしないと、「検討の経緯」の欄で説明したように、フィラー供給装置を介して押出装置のシリンダ(上記シリンダ2に対応)へフィラーを上手く供給できなくなる。
本実施の形態の主要な特徴のうちの他の一つは、すなわち、本実施の形態の第1の工夫点は、フィラー供給装置10用のスクリュ12として、角フライトスクリュ(より好ましくは一条角フライトスクリュ)を用いていることである。すなわち、スクリュ12は、角フライト形状を有しており、スクリュ12の条数(フライト数)が一条であれば、より好ましい。
「検討の経緯」の欄で説明したように、フィラーが綿状である場合には、フィラーは狭い隙間には入り込みにくい。このため、綿状のフィラーを用いる場合には、フィラー用のホッパ(開口部115に接続されたホッパ)に投入された綿状のフィラーは、シリンダ111の内壁とスクリュ112との間の隙間や、2本のスクリュ112の間の隙間に入り込みにくくなる。
それに対して、本実施の形態では、フィラー供給装置10用のスクリュ12として、角フライトスクリュ(より好ましくは一条角フライトスクリュ)を用いている。フィラー供給装置10用のスクリュ12として、角フライトスクリュ(より好ましくは一条角フライトスクリュ)を用いた場合には、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間を、大きくすることができる。
すなわち、フィラー供給装置において、スクリュ(112)としてフルフライトスクリュを用いた場合(図14~図17の場合)よりも、スクリュ(12)として角フライトスクリュを用いた場合(図6~図12の場合)の方が、シリンダ(11)の内壁とスクリュ(12)との間の隙間や、2本のスクリュ(12)の間の隙間を、大きくすることができる。このことは、図17と図11とを比較すると理解しやすい。また、フィラー供給装置用のスクリュ(12)として角フライトスクリュを用いた場合、その角フライトスクリュの条数(フライト数)を少なくした方が、シリンダ(11)の内壁とスクリュ(12)との間の隙間や、2本のスクリュ(12)の間の隙間を、大きくすることができる。すなわち、スクリュ12として二条角フライトスクリュを用いた場合よりも、スクリュ12として一条角フライトスクリュを用いた場合の方が、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間を、大きくすることができる。
本実施の形態では、スクリュ12として角フライトスクリュを用いたことにより、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間を、大きくすることができる。より好ましくは、スクリュ12として一条角フライトスクリュを用いたことにより、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間を、更に大きくすることができる。これにより、フィラーが綿状であっても、シリンダ11の開口部15からシリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間に綿状のフィラーが入り込みやすくなる。すなわち、フィラーが綿状であっても、ホッパ14に投入された綿状のフィラーは、シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に進入しやすくなる。シリンダ11内に入った綿状のフィラーは、スクリュ12の回転によりシリンダ11内を前方へ送られ、シリンダ11の先端の開口部から、押出装置のシリンダ2の側面の開口部6を介して押出装置のシリンダ2内に供給される。このため、フィラー供給装置10から押出装置のシリンダ2へのフィラーの供給を的確に行うことができる。従って、フィラー含有樹脂を的確に製造することができる。
図20は、フィラー供給装置10において、ホッパ14からシリンダ11の開口部15に綿状のフィラー16が供給された状態を模式的に示す平面図であり、図6に対応する平面図が示されている。図21は、フィラー供給装置10において、ホッパ14からシリンダ11の開口部15に綿状のフィラー16が供給された状態を模式的に示す断面図であり、図10に対応する断面図が示されている。
上述した検討例のフィラー供給装置110の場合は、上記図18および図19に示されるように、シリンダ111の開口部115に供給された綿状のフィラー116は、スクリュ112上に乗った状態になってしまい、その綿状のフィラー116はシリンダ111の中に入り込みにくい。それに対して、本実施の形態のフィラー供給装置10の場合は、図20および図21に示されるように、シリンダ11の開口部15に供給された綿状のフィラー16は、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間に入り込みやすく、シリンダ11の中に進入しやすい。このため、スクリュ12の回転に伴い、綿状のフィラー16はシリンダ11内を前方へ移動することができる。
本実施の形態では、これまでも説明したように、フィラー供給装置用(フィラー供給用)のスクリュ12としては、角フライトスクリュを用いており、より好ましくは一条角フライトスクリュを用いている。一方、樹脂押出用のスクリュ3としては、フルフライトスクリュを用いることが好ましい。これは、角フライトスクリュよりも、フルフライトスクリュの方が、セルフクリーニング効果が高く、樹脂押出用のスクリュ3として適しているからである。樹脂押出用のスクリュ3としてフルフライトスクリュを用いることにより、セルフクリーニング効果によってスクリュ表面付近での樹脂およびフィラーの滞留を抑制することができる。フルフライトスクリュを適用したスクリュ3の条数(フライト数)は、2つ以上であれば更に好ましい。なお、スクリュ3は、全体がフルフライトスクリュの構造を有している場合だけでなく、フルフライトスクリュの構造とフルフライトスクリュ以外の構造とが混在している場合もあり得る。例えば、スクリュ3のうち、主として樹脂の搬送に寄与する部分(搬送部)には、フルフライトスクリュの構造を適用し、スクリュ3のうち、主として樹脂の混練に寄与する部分(混練部)には、フルフライトスクリュ以外の構造(混練に適したスクリュ構造)を適用することができる。一方、フィラー供給装置10のシリンダ11内には樹脂は供給されず、シリンダ11内においてスクリュ12はフィラーを搬送するが樹脂は搬送しないため、フィラー供給装置10ではスクリュのセルフクリーニング作用は重要とはならず、スクリュ12については、角フライトスクリュを用いても問題はない。そして、シリンダ11内に配置するスクリュ12に、角フライトスクリュを適用することにより、上述したように、フィラー供給装置10のシリンダ11内に綿状のフィラーを供給しやすくし、それによって、フィラー供給装置10から押出装置のシリンダ2へのフィラーの供給を的確に行うことができる。
本実施の形態の主要な特徴のうちの更に他の一つは、すなわち、本実施の形態の第2の工夫点は、フィラー供給装置10に、シリンダ11を強制的に排気する排気機構(吸引機構)を設けたことである。
具体的には、シリンダ11の開口部21からシリンダ11内を強制的に排気(吸引)することができるようになっている。シリンダ11における排気用(吸引用)の開口部21は、フィラー供給用の開口部15よりも下流側で、かつ、シリンダ11の先端よりも上流側に設けられている。すなわち、シリンダ11の延在方向において、排気用の開口部21は、フィラー供給用の開口部15とシリンダ11の先端との間に設けられている。別の見方をすると、シリンダ11の延在方向において、排気用の開口部21は、フィラー供給用の開口部15とシリンダ2との間に位置している。シリンダ11の開口部21には、排気室(強制排気室)22が接続されており、排気用ダクト23から排気室22を強制的に排気して、排気室22を減圧することにより、開口部21からシリンダ11内を強制的に排気することができる。
フィラー供給用の開口部15からシリンダ11内にフィラーを供給する際に、排気用の開口部21からシリンダ11内を強制的に排気(吸引)することができ、それによって、開口部15に供給された綿状のフィラーをシリンダ11内に吸い込むことができる。このため、シリンダ11の開口部15に供給された綿状のフィラーには、重力に加えて吸引力も作用することになる。シリンダ11の開口部15に供給された綿状のフィラーに対して作用する吸引力は、その綿状のフィラーがシリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間に入り込むことを促す。このため、重力に加えて吸引力も作用する分、綿状のフィラーは、シリンダ11内に進入しやすくなり、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間に入り込みやすくなる。また、綿状のフィラーに対して吸引力が作用すると、綿状のフィラーは、圧縮された状態になることで外形が小さくなるが、このことも、綿状のフィラーがシリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間に入り込みやすくなることにつながる。
シリンダ11内に入った綿状のフィラーは、スクリュ12の回転によりシリンダ11内を前方へ送られ、シリンダ11の先端の開口部から、押出装置のシリンダ2の側面の開口部6を介して押出装置のシリンダ2内に供給される。フィラー供給装置10にシリンダ11の排気機構(吸引機構)を設けたことにより、綿状のフィラーは、シリンダ11の上面の開口部15からシリンダ11内に進入しやすくなるため、フィラー供給装置10から押出装置のシリンダ2へのフィラーの供給をより的確に行うことができるようになる。従って、フィラー含有樹脂をより的確に製造することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2のフィラー供給装置10を、符号10aを付してフィラー供給装置10と称し、本実施の形態2のフィラー供給装置10におけるスクリュ12を、符号12aを付してスクリュ12aと称することとする。
図22は、本実施の形態2のフィラー供給装置10の説明図であり、シリンダ11を切断してスクリュ12を横から見た状態が示されている。従って、図22において、シリンダ11は断面視であるが、スクリュ12aは側面視である。
本実施の形態2のフィラー供給装置10aが、上記実施の形態1のフィラー供給装置10と相違しているのは、スクリュ12aの形状に関してである。スクリュ12aの形状以外については、本実施の形態2のフィラー供給装置10aも、上記実施の形態1のフィラー供給装置10とほぼ同様であるので、ここでは繰り返しの説明は省略する。
本実施の形態2では、図22に示されるように、フィラー供給装置10a用のスクリュ12aは、上流側から下流側に向かうにしたがって、スクリュ12aの外径(直径、スクリュ径)D1が徐々に大きくなっている。なお、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態2のフィラー供給装置10aの場合も、シリンダ11内には、2本のスクリュ12aが回転可能(回転自在)に配置されている。シリンダ11の内部空洞(スクリュ12aが配置される内部空洞)の直径は、スクリュ12aの延在方向の位置によらず、ほぼ一定である。すなわち、シリンダ11の内部空洞の断面(シリンダ11の延在方向に略垂直な断面)の面積は、スクリュ12aの延在方向の位置によらず、ほぼ一定である。
なお、スクリュの外径(スクリュ径)は、スクリュにおけるフライトの頂部での直径(スクリュの直径)に対応している。
上流側から下流側に向かうにしたがって、スクリュ12aの外径D1が徐々に大きくなっていることから、開口部15が形成されている位置における、シリンダ11の内壁とスクリュ12aとの間の隙間や、2本のスクリュ12aの間の隙間は、開口部15よりも下流側における、シリンダ11の内壁とスクリュ12aとの間の隙間や、2本のスクリュ12aの間の隙間よりも大きくなる。このため、開口部15の直下において、シリンダ11の内壁とスクリュ12aとの間の隙間や、2本のスクリュ12aの間の隙間を大きくすることができるので、シリンダ11の開口部15からシリンダ11の内壁とスクリュ12aとの間の隙間や、2本のスクリュ12aの間の隙間に綿状のフィラーが入り込みやすくなる。すなわち、フィラーが綿状であっても、ホッパ14に投入された綿状のフィラーは、シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に進入しやすくなる。シリンダ11内に入った綿状のフィラーは、スクリュ12aの回転によりシリンダ11内を前方へ送られ、シリンダ11の先端の開口部から、押出装置のシリンダ2の側面の開口部6を介して押出装置のシリンダ2内に供給される。このため、フィラー供給装置10aから押出装置のシリンダ2へのフィラーの供給を的確に行うことができる。従って、フィラー含有樹脂を的確に製造することができる。
また、本実施の形態2では、開口部15が形成されている位置では、スクリュ12aの外径D1を小さくし、開口部15が形成されている位置よりも下流側では、スクリュ12aの外径D1を大きくすることができる。このため、開口部15が形成されている位置よりも下流側では、シリンダ11の内壁とスクリュ12aとの間の隙間や、2本のスクリュ12aの間の隙間を小さくすることができる。このため、開口部15からシリンダ11内に入った綿状のフィラーを、回転するスクリュ12aによって的確に前方へ送ることができるようになる。スクリュの延在方向全体でスクリュの外径を小さくした場合に比べて、上流側から下流側に向かうにしたがってスクリュ12aの外径D1を徐々に大きくした本実施の形態の場合の方が、シリンダ11内において回転するスクリュ12aによってフィラーを前方へ送りやすくなる。本実施の形態2では、スクリュの延在方向全体でスクリュの外径を小さくするのではなく、上流側から下流側に向かうにしたがってスクリュ12aの外径D1を徐々に大きくしたことにより、シリンダ11の上面の開口部15からシリンダ11内に綿状のフィラーが進入しやすくなることと、シリンダ内11において回転するスクリュ12aにより綿状のフィラーを前方へ送りやすくすることとを、両立することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3のフィラー供給装置10を、符号10bを付してフィラー供給装置10と称し、本実施の形態2のフィラー供給装置10におけるスクリュ12を、符号12bを付してスクリュ12aと称することとする。
本実施の形態2のフィラー供給装置10bが、上記実施の形態1のフィラー供給装置10と相違しているのは、スクリュ12bに関してである。スクリュ12b以外については、本実施の形態2のフィラー供給装置10bも、上記実施の形態1のフィラー供給装置10とほぼ同様であるので、ここでは繰り返しの説明は省略する。
上記実施の形態1でも説明したように、開口部15からシリンダ11内に供給されるフィラーが綿状である場合には、フィラー供給装置10から押出装置のシリンダ2へフィラーを的確に供給できるようにするためには、フィラー供給用の開口部15が形成されている位置で、シリンダ11の内壁とスクリュ12との間の隙間や、2本のスクリュ12の間の隙間を大きくすることが有効である。これを実現するために、上記実施の形態1では、スクリュ12として角フライトスクリュ(より好ましくは一条角フライトスクリュ)を用い、また、上記実施の形態2では、上流側から下流側に向かうにしたがってスクリュ12aの外径D1が徐々に大きくなるようにしている。
本実施の形態3では、フィラー供給装置10b用のスクリュ12bとしてフルフライトスクリュを用いている。図23は、フルフライトスクリュを適用したスクリュ12bの平面図である。図24は、本実施の形態3のフィラー供給装置10bの要部断面図であり。上記図11に対応する断面が示されている。図23には、スクリュ12bとして二条フルフライトスクリュを適用した場合が示されている。図25は、図24よりも、スクリュ12bにおける溝径D3に対する外径D2の比(D2/D3)を小さくした場合の断面図が示されている。
本実施の形態3では、シリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間を大きくするために、スクリュ12bの溝の深さを深くしている。すなわち、スクリュ12bにおける溝径D3に対する外径D2の比(D2/D3)を、1.6以上にしている(すなわちD2/D3≧1.6)。
なお、スクリュの外径(スクリュ径)は、スクリュにおけるフライトの頂部での直径(スクリュの直径)に対応している。また、スクリュの溝径(谷径)は、スクリュにおける溝部の底部(最底部)での直径(スクリュの直径)に対応している。スクリュにおける溝部は、フライト間の領域に対応している。スクリュ12bの外径D2と溝径D3は、図23~図25に示されている。スクリュの外径は、断面視において、スクリュの長軸(長辺)の寸法とみなすこともでき、スクリュの溝径は、断面視において、スクリュの短軸(短辺)の寸法とみなすこともできる。
シリンダ11内のスクリュ12bにおける溝径D3に対する外径D2の比(D2/D3)を小さくするほど、スクリュ12bの溝は浅くなり、シリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間は小さくなる。シリンダ11内のスクリュ12bにおける溝径D3に対する外径D2の比(D2/D3)を大きくするほど、スクリュ12bの溝は深くなり、シリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間は大きくなる。このため、D2/D3が小さな図25の場合よりも、D2/D3が大きな図24の場合の方が、シリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間は大きくなる。
そこで、本実施の形態3では、シリンダ11内のスクリュ12bにおける溝径D3に対する外径D2の比(D2/D3)を1.6以上としている。すなわち、D2/D3≧1.6が成り立つようにしている。これにより、スクリュ12bの溝を深くして、シリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間を大きくすることができるため、シリンダ11の開口部15からシリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間に綿状のフィラーが入り込みやすくなる。すなわち、フィラーが綿状であっても、ホッパ14に投入された綿状のフィラーは、シリンダ11の開口部15からシリンダ11内に進入しやすくなる。シリンダ11内に入った綿状のフィラーは、スクリュ12bの回転によりシリンダ11内を前方へ送られ、シリンダ11の先端の開口部から、押出装置のシリンダ2の側面の開口部6を介して押出装置のシリンダ2内に供給される。このため、フィラー供給装置10bから押出装置のシリンダ2へのフィラーの供給を的確に行うことができる。従って、フィラー含有樹脂を的確に製造することができる。
また、シリンダ11内のスクリュ12bにおける溝径D3に対する外径D2の比(D2/D3)は、1.6~1.8であれば、より好ましい(すなわち1.6≦D2/D3≦1.8)。これにより、シリンダ11の開口部15からシリンダ11の内壁とスクリュ12bとの間の隙間や、2本のスクリュ12bの間の隙間に綿状のフィラーが入り込みやすくなるとともに、スクリュ12bの機械的強度も確保することができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。