本明細書に開示されるのは、変性高シスポリブタジエンポリマー、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセス、変性高シスポリブタジエンポリマーを含むゴム組成物から作られた成分を有するタイヤである。
第1の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセスが提供される。第1の実施形態によれば、本プロセスは、(A)(i)ランタニド化合物と、(ii)アルキル化剤と、(iii)ハロゲン源と、を含む、(a)ランタニド系触媒系であって、(iii)が、(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供されてもよい、ランタニド系触媒系と、(b)ニッケル系触媒系であって、(i)任意選択的にアルコールと組み合わせたニッケル化合物、(ii)有機アルミニウム、有機マグネシウム、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせ、及び(iii)フッ素含有化合物又はこれらの錯体と、を含むニッケル系触媒系と、又は(i)コバルト化合物、(ii)有機ハロゲン化アルミニウム、及び(iii)任意に水を含む(c)コバルト系触媒系と、含む、触媒系を提供することと、(B)(A)の触媒系を使用して、1,3-ブタジエンを重合させて、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(C)以下の式(I)を有する官能化化合物と(B)からのリビング末端ポリマー鎖を反応させることであって、
式中、Xはシアノ基であり、R1は、C1~C20のヒドロカルビレンから独立して選択され、各R’は、独立して、C1~C20のアルコキシから選択され、それによって、少なくとも92%のシス1,4-結合含有量を有する変性高シスポリブタジエンを生成する、ことと、(D)(C)からの変性高シスポリブタジエンを(1)以下の式(II)の安定化剤と反応させることであって、
R2
nSi(OR3)4-n
式中、R2は、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基からなる群から選択され、式中、R3はR2と同じであっても異なっていてもよく、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基から選択され、nは1~3の整数であり、(2)次の式(III)の急冷剤と反応させることであって、
R4COOH
式中、R4は、H及びC1~C18アルキルからなる群から選択される、ことと、(E)(D)の変性高シスポリブタジエンを単離して、20~100の100℃で初期ムーニー粘度ML1+4、及び100℃で120以下の熟成ムーニー粘度ML1+4を有する最終変性高シスポリブタジエンを生成する、こととを含む。
第2の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーが提供される。第2の実施形態によれば、以下の式(I)を有する官能化化合物の残基に結合したポリマー鎖を有する変性高シスポリブタジエンポリマーが提供される。
式中、Xはシアノ基であり、R1は、C1~C20のヒドロカルビレンから独立して選択され、各R’はC1~C20のアルコキシから独立して選択され、各ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物の残基に結合し、ポリマーは、100℃で20~100の初期ムーニー粘度ML1+4、及び100℃で120以下の熟成ムーニー粘度ML1+4を有する。
第3の実施形態では、第2の実施形態の高シス変性ポリブタジエン又は第1の実施形態のプロセスにより作製された高シス変性ポリブタジエンを含むゴム組成物を含む成分を有するタイヤが提供される。第3の実施形態によれば、タイヤの成分は、(a)(i)第2の実施形態に係る10~100phrの高シス変性ポリブタジエンポリマー、又は第1の実施形態のプロセスから得られる高シス変性ポリブタジエンポリマーと、及び(ii)未変性ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つの追加の0~90phrのポリマーとを含むエラストマー成分と、(b)補強充填剤成分であって、(i)10~200phrの補強シリカ充填剤と、(ii)0~50phrの補強カーボンブラック充填剤と、を含み、補強カーボンブラック充填剤が、補強シリカ充填剤の重量の20%以下の量で存在する補強充填剤成分と、(c)可塑化成分であって、(i)0~50phrの少なくとも1つの可塑化油、及び(ii)少なくとも30℃のTgを有する0~60phrの少なくとも1つの炭化水素樹脂と、を含む、可塑化成分と、(d)硬化パッケージと、を含むゴム組成物を含む。
定義
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
本明細書で使用するとき、用語「リビング末端」(例えば、ポリマー鎖のリビング末端)は、まだ終端されていないリビング末端を有するポリマー種を指すように用いられ、リビング末端は官能化化合物と反応することができ、したがって反応性と言うことができる。
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
本明細書で特に指示がないかぎり、用語「ムーニー粘度」とは、ムーニー粘度、ML1+4を意味する。ゴムのムーニー粘度は、加硫又は硬化に先立って測定されることを、当業者は理解するであろう。
本明細書で使用するとき、用語「天然ゴム」は、パラゴムノキ属のゴムの木及びパラゴムノキ属以外の原料(例えば、グアユールの低木及びタンポポ(例えば、TKS)など)などの原料から採取することができるものなど、天然由来のゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部あたりの部を意味する。100部のゴムは、本明細書において100部のエラストマー成分とも称され得る。
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
本明細書で使用されるとき、用語「トレッド」は、通常の膨張及び負荷下で路面と接触するタイヤの部分、並びに任意のサブトレッドの両方を指す。
変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセス
一般に、本明細書に記載される第1の実施形態のプロセスは、溶液重合プロセスであると考えることができる。この種の重合プロセスでは、重合反応は有機溶媒系溶液中で起こる。ここで、有機溶媒系溶液は、最初は、ある量の共役ジエンモノマー及び指定された触媒系の1つを含有する。一般に、第1の実施形態のプロセスによれば、有機溶媒系溶液は、溶液中のモノマー、有機溶媒、及びポリブタジエンの総重量に基づいて、20~90重量%(wt%)の有機溶媒を含む。好ましくは、有機溶媒は、溶液の主成分を構成し、すなわち、モノマー、有機溶媒、及びポリブタジエンの総重量に基づいて、50~90重量%の有機溶媒、より好ましくは70重量%~90重量%の有機溶媒を含む。本明細書に開示される溶液重合プロセスは、ガス型又はバルク型重合と対比される場合があり、ここでは、重合があらゆる有機溶媒の非存在下で行われ、又は、モノマー、有機溶媒、及びポリブタジエンの総重量に基づいて20重量%未満の有機溶媒が存在する。
本明細書に記載の第1の実施形態による溶液重合プロセスで使用するのに好適な有機溶媒は、溶媒が重合反応における反応物ではないように、重合反応に対して不活性である溶媒である。好適な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が挙げられる。好適な芳香族炭化水素溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ナフタレン、メシチレン、キシレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂肪族炭化水素溶媒の例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、石油スピリットなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂環式炭化水素溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前述の芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、及び脂環式炭化水素溶媒の混合物も使用することができる。第1の実施形態の特定の実施形態では、好ましい有機溶媒として、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセス中での使用に好適な更なる有用な有機溶媒が、当業者に既知である。
本明細書に開示される第1の実施形態による溶液重合プロセスは、好ましくは、窒素、アルゴン、又はヘリウムなどの不活性ガスで覆われた嫌気条件下で実施される。重合温度は、-50℃~150℃の範囲で広範に変化してもよく、好ましい温度範囲は、50℃~120℃である。重合圧力もまた、1気圧(atm)~30atm、好ましくは1atm~10atm(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10atm)の範囲で広範に変化し得る。
本明細書に開示される第1の実施形態による溶液重合プロセスは、連続的、半連続的、又はバッチプロセスとして実施することができる。半連続プロセスでは、モノマーを断続的に充填して、既に重合したモノマーと置き替える。本明細書に記載のプロセスに従って1,3-ブタジエンモノマーを高シスポリブタジエンに重合することは、モノマー及びランタニド系触媒系(又は本明細書に記載される他の触媒系)が全て有機溶媒系溶液中に存在するときに生じる。モノマー及び触媒を有機溶媒に添加する順序は問題ではない。
一般に、本明細書に開示される第1の実施形態の重合プロセスは、任意の好適な停止剤を添加することによって停止され得る。好適な停止剤の非限定的な例としては、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、及びこれらの混合物などのプロトン性化合物が挙げられる。他の好適な停止剤は、当業者に既知である。更に、重合が停止されると、得られた高シスポリジエンは、当業者に既知である従来の方法、例えば、蒸気脱溶媒又は蒸気蒸留、アルコールによる凝固、濾過、精製、乾燥などを用いて、溶液から回収(又は単離)することができる。第1の実施形態の好ましい実施形態では、高シスポリブタジエンポリマーは、水蒸気蒸留を使用することによって単離される。
触媒系
上述のように、第1の実施形態のプロセスによれば、触媒系は、(a)ランタニド系触媒系、(b)ニッケル系触媒系、又は(c)コバルト系触媒系のうちの1つから選択される。好ましくは、ランタニド系触媒系が使用される。第1の実施形態のプロセスにおける特定の触媒系のうちの1つの使用は、以下に更に説明されるように、官能化化合物でポリマー鎖のリビング末端を変性する上で利点を提供する。第1の実施形態のプロセスによれば、使用される触媒系は、アニオン性開始剤(例えば、n-ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物)の使用を回避する。
ランタニド系触媒系
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、(i)ランタニド化合物と、(ii)アルキル化剤と、(iii)ハロゲン源と、を含む、ランタニド系触媒系の使用することができ、(iii)は、(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供されてもよい。ランタニド系触媒系を使用して、ある量の共役ジエンモノマー(以下に詳述される)を重合し、リビング末端を有するポリマー鎖を生成する。好ましくは、第1の実施形態のプロセスによれば、ランタニド系触媒系は、共役ジエンモノマーの任意の溶液に添加される前に予備形成される。
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、ランタニド化合物を含む。第1の実施形態のプロセスにおいて有用なランタニド化合物は、少なくとも1つのランタニド元素の原子を含む化合物である。本明細書で使用するとき、「ランタニド元素」とは、周期表ランタニド系列(すなわち、元素番号57~71)に見出される元素、並びにジジムを指し、これは、モナズ砂から得られる希土類元素の混合物である。特に、本明細書に開示されるランタニド元素としては、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムが挙げられる。好ましくは、ランタニド化合物は、ネオジム、ガドリニウム、サマリウム、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つの原子を含む。最も好ましくは、ランタニド化合物は、少なくとも1つのネオジム原子を含む。
ランタニド化合物中のランタニド原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3及び+4の酸化状態であってもよい。第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ランタニド原子が+3の酸化状態にある三価ランタニド化合物が使用される。一般に、第1の実施形態のプロセスで使用するのに好適なランタニド化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィナート、ランタニドカルバミン酸、ランタニドジチオカルバミン酸、ランタニドキサントゲン酸、ランタニドβ-ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド疑似ハライド、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ランタニド化合物は、ランタニドカルボキシレート、より好ましくはネオジムカルボキシレート、最も好ましくはネオジムベルサテートである。
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ランタニド化合物は、本明細書に開示される芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、又は脂環式炭化水素溶媒などの炭化水素溶媒に可溶性であり得る。しかし、重合媒体中で懸濁させて、触媒活性種を形成することができるため、炭化水素不溶性のランタニド化合物も第1の実施形態のプロセスにおいて有用な場合がある。
説明を簡単にするために、第1の実施形態のプロセスにおいて有用なランタニド化合物についての更なる説明では、ネオジム化合物に焦点を合わせるが、当業者であれば、本明細書に開示される他のランタニド金属ベースの同様の化合物を選択することができるであろう。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムカルボキシレートの例として、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(すなわち、ネオジムベルサテート又はNdV3)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエート、及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスフェートの例として、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスホネートの例として、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、及びネオジム(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスフィナートの例として、ネオジムブチルホスフィナート、ネオジムペンチルホスフィナート、ネオジムヘキシルホスフィナート、ネオジムヘプチルホスフィナート、ネオジムオクチルホスフィナート、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィナート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジムデシルホスフィナート、ネオジムドデシルホスフィナート、ネオジムオクタデシルホスフィナート、ネオジムオレイルホスフィナート、ネオジムフェニルホスフィナート、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスフィナート、ネオジムジブチルホスフィナート、ネオジムジペンチルホスフィナート、ネオジムジヘキシルホスフィナート、ネオジムジヘプチルホスフィナート、ネオジムジオクチルホスフィナート、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフィナート、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジムジデシルホスフィナート、ネオジムジドデシルホスフィナート、ネオジムジオクタデシルホスフィナート、ネオジムジオレイルホスフィナート、ネオジムジフェニルホスフィナート、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフィナート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィナートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムカルバミン酸の例として、ネオジムジメチルカルバミン酸、ネオジムジエチルカルバミン酸、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸、ネオジムジブチルカルバミン酸、及びネオジムジベンジルカルバミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムジチオカルバミン酸の例として、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸、ネオジムジブチルジチオカルバミン酸、及びネオジムジベンジルジチオカルバミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムキサントゲン酸の例として、ネオジムメチルキサントゲン酸、ネオジムエチルキサントゲン酸、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸、ネオジムブチルキサントゲン酸、及びネオジムベンジルキサントゲン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムβ-ジケトネートの例として、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネート、ネオジム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムアルコキシド又はアリールオキシドの例として、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2-エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムハライドの例としては、ネオジムフルオリド、ネオジムクロリド、ネオジムブロミド、及びネオジムヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジム疑似ハライドには、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアニドが含まれるが、これらに限定されない。好適なネオジムオキシハライドには、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、及びネオジムオキシブロミドが含まれるが、これらに限定されない。ルイス塩基(例えばテトラヒドロフラン(「THF」))を、このクラスのネオジム化合物を不活性有機溶媒中に可溶化しやすくするために用いてもよい。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライド、又はハロゲン原子を含有する他のランタニド化合物を用いる場合、ランタニド化合物は任意に、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を提供してもよい。
本明細書で使用するとき、「有機ランタニド化合物」という用語は、少なくとも1つのランタニド-炭素結合を含有する任意のランタニド化合物を指す。これらの化合物は主に、排他的ではないが、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、「Cp」)、置換シクロペンタジエニル、アリル、及び置換アリル配位子を含有する化合物である。第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適な有機ランタニド化合物としては、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、及びLn(アリル)2Cl(Lnは、ランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表す)が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、第1の実施形態のプロセスにおいて有用なヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子などを含有していてもよい。
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、アルキル化剤を含む。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、アルキル化剤(ヒドロカルビル化剤と称されることもある)には、1つ以上のヒドロカルビル基を別の金属に移すことができる有機金属化合物が含まれる。概して、これらの薬剤には、陽性金属、例えば第1族、第2族、及び第3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)の有機金属化合物が含まれる。第1の実施形態のプロセスで有用なアルキル化剤としては、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「有機アルミニウム化合物」という用語は、少なくとも1つのアルミニウム-炭素結合を有する任意のアルミニウム含有化合物を指す。1つ以上の実施形態では、炭化水素溶媒に可溶性である有機アルミニウム化合物を用いることができる。本明細書で使用するとき、「有機マグネシウム化合物」という用語は、少なくとも1つのマグネシウム-炭素結合を有する任意のマグネシウム含有化合物を指す。1つ以上の実施形態では、炭化水素に可溶性である有機マグネシウム化合物を用いることができる。後に詳細に説明するように、特定の好適なアルキル化剤をハライド化合物の形態とすることができる。ここで、アルキル化剤はハロゲン原子を含み、アルキル化剤は、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を任意に提供することもできる。
第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態では、利用される有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRa
nX3-nで表されるものが挙げられ、式中、各Raは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合した一価の有機基であり、各Xは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、nは1~3の範囲の整数である。1つ以上の実施形態では、各Raは、独立して、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基は、任意に、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。
一般式AlRa
nX3-nによって表される、第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤として使用するための有機アルミニウム化合物の種類の例として、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド、及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1-メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリス(2,6-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ-p-トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物の例として、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
プロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドの例として、エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn-オクチルアルミニウムジヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物の例として、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ-n-プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ-n-ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ-n-オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ-p-トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムクロリド、p-トリルエチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムクロリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムクロリド、p-トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物の例として、エチルアルミニウムジクロリド、n-プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n-ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn-オクチルアルミニウムジクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
一般式AlRa
nX3-nによって表される、第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適な他の有機アルミニウム化合物の例として、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2-エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2-エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機アルミニウム化合物は、アルミノキサンである。好適なアルミノキサンとしては、以下の一般式によって表すことができるオリゴマー直線状アルミノキサンと、
以下の一般式によって表すことができるオリゴマー環式アルミノキサンとが挙げられ、
式中、xは、1~100(例えば、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100)、又は10~50(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50)の範囲の整数であり、yは、2~100(例えば、2、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100)、又は3~20(例えば、3、5、10、15、又は20)の範囲の整数であり、各Rは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合している一価の有機基である。第1の実施形態のプロセスの一実施形態では、各Rは、独立して、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、好ましくは、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。本明細書で使用するとき、アルミノキサンのモル数は、オリゴマーアルミノキサン分子のモル数ではなく、アルミニウム原子のモル数を指す。この慣習は、アルミノキサンを用いる触媒系の技術分野において広く用いられている。
アルミノキサンの調製は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって行うことができる。この反応は、例えば、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解した後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含有される結晶体の水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させる方法、又は(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合するモノマー又はモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法などの既知の方法により行うことができる。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤として使用するのに好適なアルミノキサン化合物の例として、メチルアルミノキサン(「MAO」)、変性メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及び2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤はMAOを含む。変性メチルアルミノキサンは、20~80パーセントのメチルアルミノキサンのメチル基を、C2~C12ヒドロカルビル基(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11又はC12)、好ましくはイソブチル基で、当業者に既知の手法を用いて置換することによって形成され得る。
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、アルミノキサンは、単独で、又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。第1の実施形態の一実施形態では、メチルアルミノキサン及びアルミノキサン以外の少なくとも1つの有機アルミニウム化合物、例えば、AlRa
nX3-nによって表される有機アルミニウム化合物は、アルキル化剤として組み合わせて使用される。この及び他の実施形態によれば、アルキル化剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、アルミノキサン、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、一実施形態によれば、アルキル化剤は、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミノキサン、又はこれらの組み合わせを含む。米国特許第8,017,695号には、アルミノキサン及び有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いることができる他の例が示されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
上述のように、第1の実施形態のプロセスで使用される好適なアルキル化剤としては、有機マグネシウム化合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、好適な有機マグネシウム化合物としては、一般式MgRb
2で表されるものが挙げられ、式中、各Rbは、独立して、炭素原子を介してマグネシウム原子に結合する一価の有機基である。1つ以上の実施形態では、各Rbは、独立して、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、好ましくは、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を任意に含有してもよい。
一般式MgRb
2によって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤として使用するのに好適な有機マグネシウム化合物の例として、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、及びジベンジルマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスの実施形態によるアルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機マグネシウム化合物は、一般式RcMgXcで表され、式中、Rcは、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基である。1つ以上の実施形態では、Rcは、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。一実施形態では、Xcは、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、各基は、1個の炭素原子から最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。
一般式RcMgXcによって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤としての使用に好適な種類の有機マグネシウム化合物の例としては、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
一般式RcMgXcによって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤としての使用に好適な有機マグネシウム化合物の例として、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、ハロゲン源を含む。本明細書で使用するとき、「ハロゲン源」という用語は、少なくとも1つのハロゲン原子を含む任意の物質を指す。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、ハロゲン源の全て又は一部は、ランタニド化合物、アルキル化剤、又はランタニド化合物及びアルキル化剤の両方によって任意に提供されてもよい。言い換えれば、ランタニド化合物は、ランタニド化合物とハロゲン源の全て又は少なくとも一部との両方として機能することができる。同様に、アルキル化剤は、アルキル化剤とハロゲン源の全て又は少なくとも一部との両方として機能することができる。
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ハロゲン源の少なくとも一部は、触媒系において、別個で異なるハロゲン含有化合物の形態で存在することができる。1つ以上のハロゲン原子を含有する種々の化合物(又はそれらの混合物)をハロゲン源として用いることができる。ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上のハロゲン原子の組み合わせを用いることもできる。本明細書に開示される芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素溶媒などの有機溶媒に可溶性であるハロゲン含有化合物は、第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適である。更に、触媒活性種を形成するために重合系中に懸濁され得る炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物も、第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態において有用である。
第1の実施形態のプロセスにおける使用に好適な種類のハロゲン含有化合物の例としては、元素ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハライド、無機ハライド、金属ハライド、及び有機金属ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、ハロゲン含有化合物は有機金属ハライドを含む。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な元素ハロゲンの例としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。好適な混合ハロゲンのいくつかの具体例として、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。
開示されるプロセスにおいてハロゲン源としての使用に好適なハロゲン化水素の例としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な有機ハライドの例として、t-ブチルクロリド、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、及びメチルブロモホルメートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な無機ハライドの例として、リントリクロリド、リントリブロミド、リンペンタクロリド、リンオキシクロリド、リンオキシブロミド、ボロントリフルオリド、ボロントリクロリド、ボロントリブロミド、シリコンテトラフルオリド、シリコンテトラクロリド、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラヨージド、ヒ素トリクロリド、ヒ素トリブロミド、ヒ素トリヨージド、セレンテトラクロリド、セレンテトラブロミド、テルルテトラクロリド、テルルテトラブロミド、及びテルルテトラヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な金属ハライドの例として、スズテトラクロリド、スズテトラブロミド、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムトリブロミド、アンチモントリクロリド、アンチモンペンタクロリド、アンチモントリブロミド、アルミニウムトリヨージド、アルミニウムトリフルオリド、ガリウムトリクロリド、ガリウムトリブロミド、ガリウムトリヨージド、ガリウムトリフルオリド、インジウムトリクロリド、インジウムトリブロミド、インジウムトリヨージド、インジウムトリフルオリド、チタンテトラクロリド、チタンテトラブロミド、チタンテトラヨージド、亜鉛ジクロリド、亜鉛ジブロミド、亜鉛ジヨージド、及び亜鉛ジフルオリドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な有機金属ハライドの例として、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、トリブチルスズクロリド、及びトリブチルスズブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、ハロゲン源は有機金属ハライドを含む。例えば、特定の実施形態によれば、ハロゲン源はジエチルアルミニウムクロリドを含み、これは上記のように、ランタニド系触媒系中のアルキル化剤としても機能することができる。したがって、第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ハロゲン源は、本明細書に開示される触媒系中のアルキル化剤によって全て又は部分的に提供されてもよい。
第1の実施形態のプロセスにおいて用いられるランタニド系触媒系は、前述の触媒成分を組み合わせるか又は混合することによって形成され得る。用語「触媒組成物」及び「触媒系」は、本明細書で言及されるとき、成分の単純な混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる様々な成分の合成物、成分の化学反応生成物、又は前述したものの組み合わせを包含する。用語「触媒組成物」及び「触媒系」は、本明細書において互換的に使用され得る。
ニッケル系触媒系
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、(i)任意選択的にアルコールと組み合わせたニッケル化合物、(ii)有機アルミニウム、有機マグネシウム、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせ、及び(iii)フッ素含有化合物又はこれらの錯体を含むニッケル系触媒系を利用してもよい。(i)、(ii)及び(iii)のそれぞれに使用される特定の化合物は、様々であってもよい。
第1の実施形態のプロセスによれば、ニッケル系触媒系で使用されるニッケル化合物は、変化してもよい。ニッケル含有化合物のニッケル原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3、及び+4の酸化状態であってもよい。第1の実施形態のプロセスによるニッケル系触媒系での使用に好適なニッケル含有化合物としては、限定するものではないが、カルボン酸ニッケル、カルボン酸ニッケルホウ酸、有機リン酸ニッケル、ニッケル有機ホスホン酸ニッケル、有機ホスホン酸ニッケル、カルバミン酸ニッケル、ジチオカルバミン酸ニッケル、キサンタン酸ニッケル、ニッケルβ-ジケトネート、ニッケルアルコキシド又はアリールオキシド、ニッケルハロゲン化物、ニッケル疑似ハライド、オキシハロゲン化ニッケル、及び有機ニッケル化合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセスの好ましい実施形態では、ニッケル系触媒系が使用されるとき、ニッケル化合物は、カルボン酸ニッケルである。
好適なカルボン酸ニッケルとしては、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、アクリル酸ニッケル、メタクリル酸ニッケル、吉草酸ニッケル、グルコン酸ニッケル、クエン酸ニッケル、フマル酸ニッケル、乳酸ニッケル、マレイン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、ニッケル2-エチルヘキサノエート、ネオデカン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、オレイン酸ニッケル、安息香酸ニッケル、及びニッケルピコリン酸ニッケルを挙げることができる。
好適なカルボン酸ニッケルホウ酸としては、式(RCOONiO)3B又は(RCOONiO)2B(OR)によって定義される化合物を挙げることができ、式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、水素原子又は一価有機基である。一実施形態では、各Rは、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基であってもよく、各基は、好ましくは、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基には、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子などの、しかしこれらに限定されないヘテロ原子が含有されてよい。カルボン酸ニッケルホウ酸は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,522,988号に開示されているものを含み得る。カルボン酸ニッケルホウ酸の具体例としては、ネオデカン酸ニッケル(II)ホウ酸、ヘキサン酸ニッケル(II)ホウ酸、ナフテン酸ニッケル(II)ホウ酸、ステアリン酸ニッケル(II)ホウ酸、オクトエートニッケル(II)ホウ酸、2-エチルヘキサノエートニッケル(II)ホウ酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
好適なニッケル有機ホスフェートには、ニッケルジブチルホスフェート、ニッケルジペンチルホスフェート、ニッケルジヘキシルホスフェート、ニッケルジヘプチルホスフェート、ニッケルジオクチルホスフェート、ニッケルビス(1-メチルヘプチル)ホスフェート、ニッケルビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ニッケルジデシルホスフェート、ニッケルジドデシルホスフェート、ニッケルジオクタデシルホスフェート、ニッケルジオレイルホスフェート、ニッケルジフェニルホスフェート、ニッケルビス(p-ノニルフェニル)ホスフェート、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフェートが含まれ得る。
好適なニッケル有機ホスホネートには、ニッケルブチルホスホネート、ニッケルペンチルホスホネート、ニッケルヘキシルホスホネート、ニッケルヘプチルホスホネート、ニッケルオクチルホスホネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケルデシルホスホネート、ニッケルドデシルホスホネート、ニッケルオクタデシルホスホネート、ニッケルオレイルホスホネート、ニッケルフェニルホスホネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ニッケルブチルブチルホスホネート、ニッケルペンチルペンチルホスホネート、ニッケルヘキシルヘキシルホスホネート、ニッケルヘプチルヘプチルホスホネート、ニッケルオクチルオクチルホスホネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケルデシルデシルホスホネート、ニッケルドデシルドデシルホスホネート、ニッケルオクタデシルオクタデシルホスホネート、ニッケルオレイルオレイルホスホネート、ニッケルフェニルフェニルホスホネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、及びニッケル(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホネートが含まれ得る。
好適なニッケル有機ホスフィネートとしては、ブチルホスフィン酸ニッケル、ペンチルホスフィン酸ニッケル、ヘキシルホスフィン酸ニッケル、ヘプチルホスフィン酸ニッケル、ニッケルオクチルホスフィネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)ホスフィネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、デシルホスフィン酸ニッケル、ドデシルホスフィン酸ニッケル、オクタデシルホスフィン酸ニッケル、オレフィンホスフィン酸ニッケル、フェニルホスフィネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)ホスフィネート、ニッケルジブチルホスフィン酸ニッケル、ジペンチルホスフィン酸ニッケル、ジヘキシルホスフィン酸ニッケル、ニッケルジヘプチルホスフィネート、ニッケルジオクチルホスフィネート、ニッケルビス(1-メチルヘプチル)ホスフィネート、ニッケルビス(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、ジデシルホスフィン酸ニッケル、ジドデシルホスフィン酸ニッケル、ジオクタデシルホスフィン酸ニッケル、ジノイルホスフィン酸ニッケル、ジフェニルホスフィネートニッケル、ニッケルビス(p-ノニルフェニル)ホスフィネート、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、及びニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられ得る。
好適なカルバミン酸ニッケルとしては、ジメチルカルバミン酸ニッケル、ジエチルカルバミン酸ニッケル、ジイソプロピルカルバミン酸ニッケル、ジブチルカルバミン酸ニッケル、及びジベンジルカルバミン酸ニッケルを挙げることができる。
好適なジチオカルバミン酸ニッケルとしては、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジイソプロピルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、及びジベンジルジチオカルバミン酸ニッケルを挙げることができる。
好適なキサントゲン酸ニッケルとしては、メチルメチルキサントゲン酸、ニッケルエチルキサントゲン酸、ニッケルイソプロピルキサントゲン酸、ニッケルブチルキサントゲン酸、及びベンジルキサントゲン酸ニッケルが挙げられる。
好適なニッケルβ-ジケトネートとしては、ニッケルアセチルアセトネート、ニッケルトリフルオロアセチルアセトネート、ニッケルヘキサフルオロアセチルアセトネート、ニッケルベンゾイルアセトネート、及びニッケル2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネートを挙げることができる。
好適なニッケルアルコキシド又はアリールオキシドとしては、ニッケルメトキシド、ニッケルエトキシド、ニッケルイソプロポキシド、ニッケル2-エチルヘキオキシド、ニッケルフェノキシド、ニッケルノニルフェノキシド、及びニッケルナフトキシドを挙げることができる。
好適なニッケルハロゲン化物としては、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、及びヨウ化ニッケルを挙げることができる。ニッケル疑似ハライドとしては、ニッケルシアン化物、シアン酸ニッケル、ニッケルチオシアネート、ニッケルアジド、及びニッケルフェロシアン化物が挙げられる。オキシハロゲン化ニッケルとしては、オキシフッ化ニッケル、オキシ塩化ニッケル、及びオキシ臭化ニッケルが挙げられる。ニッケルハロゲン化物、オキシハロゲン化ニッケル、又は他のニッケル含有化合物が、不安定なフッ素又は塩素原子を含有する場合、ニッケル含有化合物は、フッ素含有化合物又は塩素含有化合物としても機能し得る。アルコールなどのルイス塩基は、この部類の化合物の溶解助剤として使用することができる。
「有機ニッケル化合物」という用語は、少なくとも1つのニッケル-炭素結合を含有する任意のニッケル化合物を指し得る。有機ニッケル化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(ニッケロセンとも呼ばれる)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(デカメチルニッケロセンとも呼ばれる)、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(ペンタジエニル)ニッケル、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)ニッケル、(シクロペンタジエニル)(ペンタジエニル)ニッケル、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、及びビス(クロチル)ニッケルが挙げられる。
第1の実施形態のプロセスによれば、ニッケル系触媒系の(ii)成分に使用される有機アルミニウム、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせが変化し得る。好ましい実施形態では、第1の実施形態のプロセスがニッケル系触媒系を利用する場合、成分(ii)は、有機アルミニウム又は有機マグネシウム化合物、より好ましくは有機アルミニウム化合物である。有機アルミニウム、有機マグネシウム、又は有機亜鉛化合物が、不安定なフッ素を含む場合、フッ素含有化合物としても機能し得る(別個のフッ素含有化合物を必要としない)。特定の実施形態では、有機アルミニウム、有機マグネシウム又は有機亜鉛化合物は、塩素原子又は臭素原子を含まない。
ニッケル系触媒系中の有機アルミニウム化合物又は有機マグネシウム化合物として使用するのに好適な化合物は、ランタニド系触媒系の部分で上述されている。
第1の実施形態のプロセスによれば、ニッケル系触媒系で使用されるフッ素含有化合物は、様々であってもよい。好適なフッ素含有化合物は、1つ以上の不安定なフッ素原子を含有する様々な化合物又はこれらの混合物を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、フッ素含有化合物は炭化水素溶媒に可溶であってもよい。他の実施形態では、重合媒体中に懸濁して触媒活性種を形成することができる炭化水素不溶性フッ素含有化合物が有用であり得る。
好適なタイプのフッ素含有化合物としては、元素フッ素、ハロゲンフッ化物、フッ化水素、有機フッ化物、無機フッ化物、金属フッ化物、有機金属フッ化物、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、フッ素含有化合物と、エーテル、アルコール、水、アルデヒド、ケトン、エステル、ニトリル、又はこれらの混合物などのルイス塩基との錯体を用いてもよい。これらの錯体の具体例としては、三フッ化ホウ素とフッ化水素とのルイス塩基との錯体が挙げられる。
ハロゲンフッ化物としては、一フッ化ヨウ素、三フッ化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素を挙げることができる。
有機フッ化物としては、t-ブチルフルオリド、アリルフルオリド、フッ化ベンジル、フルオロ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルフルオリド、ベンジリデンフルオリド、メチルトリフルオロシラン、フェニルトリフルオロシラン、ジメチルジフルオロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、トリメチルフルオロシラン、ベンゾイルフルオリド、プロピオニルフルオリド、及びメチルフルオロホルマートを挙げることができる。
無機フッ化物としては、三フッ化リン、五フッ化リン、オキシフッ化リン、三フッ化ホウ素、四フッ化ケイ素、三フッ化ヒ素、四フッ化セレン、及びテルルテトラフッ化物を挙げることができる。
金属フッ化物としては、四フッ化スズ、三フッ化アルミニウム、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、三フッ化ガリウム、三フッ化インジウム、四フッ化チタン、及び二フッ化亜鉛を挙げることができる。
有機金属フッ化物としては、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキフルオリド、エチルアルミニウムセスキフルオリド、イソブチルアルミニウムセスキフルオリド、フッ化メチルマグネシウム、フッ化エチルマグネシウム、フッ化ブチルマグネシウム、フッ化フェニルマグネシウム、フッ化ベンジルマグネシウム、フッ化トリメチルスズ、フッ化トリエチルスズ、ジ-t-ブチルスズジフルオリド、ジブチルスズジフルオリド、及びトリブチルスズフルオリドを挙げることができる。
上述のように、第1の実施形態のプロセスがニッケル系触媒系を利用する場合、ニッケル化合物はアルコールと組み合わせて使用されてもよい。様々なアルコール及び混合物が用いられてもよい。1つ以上の実施形態では、アルコールは、一価アルコール(すなわち、1つのヒドロキシル基を含むもの)を含み、他の実施形態では、アルコールは、グリコール又はジオールと呼ばれることがある二価アルコール、グリセリンと呼ばれることもある三価アルコール、及び多価アルコールを含む多価アルコール(すなわち、2つ以上のヒドロキシル基を含むもの)を含む。1つ以上の実施形態では、アルコールは、一級及び/又は二級アルコールを含む。一級及び二級アルコールとしては、α-炭素(すなわち、ヒドロキシル基を含む炭素に隣接する炭素)が一級又は二級であるアルコールが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、ニッケル系触媒系が使用される場合、一価アルコール、好ましくはヘキサノールが利用される。
アルコールは、直鎖又は分枝鎖アルコールを含む脂肪族アルコールを含んでもよい。他の実施形態では、アルコールは、環状アルコール、他の実施形態では芳香族アルコール、他の実施形態では複素環式アルコール、及び他の実施形態では多環式アルコールを含んでもよい。
これらの又は他の実施形態では、アルコールは飽和していてもよく、他の実施形態では、これらは不飽和であってもよい。特定の実施形態では、有用なアルコールとしては、重合が行われる反応媒体内で可溶性であるか、又は少なくとも部分的に可溶性であるアルコールが挙げられる。
1つ以上の実施形態において、有用なアルコールは、式R-OHによって定義され得、Rは一価の有機基であり、-OHはヒドロキシル基である。一価の有機基として、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アルキニル基などのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基が挙げられ得る。置換基としては、基の水素原子が一価の有機基で置換されている基が挙げられる。これらのヒドロカルビル基は、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、ケイ素、スズ、硫黄、ホウ素、及びリン原子を含有してもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ヒドロカルビル基は、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子を含まなくてもよい。特定の実施形態では、一価有機基は、それに結合した1つ以上のヒドロキシル基を含有してもよい。結果として、アルコールは、2つ以上のヒドロキシル基を含有し得る。他の実施形態では、ヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含まない。
1つ以上の実施形態では、有用なアルコールには、1から約40個の炭素原子、他の実施形態では約2~約26個の炭素原子、他の実施形態では約4~約18個の炭素原子、及び他の実施形態では約6~約12個の炭素原子が含まれる。
代表的な脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、n-ヘプタノール、オクタノール、デカノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
例示的な環状アルコールとしては、シクロヘキサノール、メタノール、t-ブチルシクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
例示的な不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
代表的な芳香族アルコールとしては、置換フェノール、フェノール、ベンジルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
代表的な複素環式アルコールとしては、フルフリルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
例示的な多環式アルコールとしては、ステロール類、及びこれらの混合物が挙げられる。
前述の触媒組成物は、共役ジエンを重合して立体特異的ポリジエンにすることを広範囲の触媒濃度及び触媒成分比に亘って行うための高い触媒活性を有する場合がある。触媒成分は、活性触媒種を形成するために相互作用し得ると考えられる。どれか1つの触媒成分の最適濃度は、他の触媒成分の濃度に依存し得るとも考えられる。
1つ以上の実施形態では、(ii)成分とニッケル含有化合物のモル比は、約1:1~約200:1、他の実施形態では、約3:1~約30:1、他の実施形態では、約5:1~約15:1で変動し得る。本明細書で使用するとき、モル比という用語は、成分の関連構成成分の当量比、例えば、アルミニウム含有化合物上のアルミニウム原子の等価物とニッケル含有化合物上のニッケル原子の等価物との比を指す。換言すれば、二官能性又は多官能性化合物(例えば、2つ以上のカルボン酸基を含む化合物)が用いられる場合、所望の当量比を達成するために、より少ないモルの化合物が必要とされる。
1つ以上の実施形態では、フッ素含有化合物とニッケル含有化合物のモル比(F/Ni)は、約7:1~約500:1、他の実施形態では、約7.5:1~約450:1、他の実施形態では、約8:1~約400:1で変動し得る。
1つ以上の実施形態では、アルコールとニッケル含有化合物のモル比(-OH/Ni)は、約0.4:1~約80:1、他の実施形態では、約0.5:1~約75:1、他の実施形態では、約0.7:1~約65:1で変動し得る。本明細書で使用するとき、モル比という用語は、成分の関連成分の当量比、例えば、塩素含有化合物の塩素原子の当量とニッケル含有化合物のニッケル原子の当量の比を指す。
一般に、ニッケル系触媒系は、触媒成分を組み合わせるか又は混合することによって形成されてもよい。活性触媒種は、この組み合わせから得られると考えられるが、種々の触媒成分又は成分間の相互作用又は反応の程度は、それほど正確には分かっていない。したがって、「触媒系」という用語は、成分の単純混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる種々の成分の合成物、成分の化学反応生成物、又は前述の組み合わせを包含するように用いている。
ニッケル系触媒系は、以下の方法のうちの1つを使用することによって形成することができる。1つ以上の実施形態では、ニッケル系触媒系をその場で形成することは、触媒成分を、モノマー及び溶媒を含有する溶液(又は単にバルクモノマー)に段階的又は同時に添加することによって行なってもよい。一実施形態では、(ii)構成成分、ニッケル含有化合物、及びアルコール(存在する場合)の混合物が形成される。この混合物は、溶媒中に形成されてもよい。次いで、この混合物及びフッ素含有化合物を、重合されるモノマーに添加してもよい。
1つ以上の実施形態では、ニッケル系触媒系の選択された触媒成分は、重合系外で適切な温度で予備混合されてもよく、これは約-20℃~約80℃であってもよく、得られた触媒系は、数秒~数日間の範囲の時間にわたって熟成され、次いでモノマーに添加されてもよい。
1つ以上の実施形態では、(ii)成分、ニッケル含有化合物、及びアルコール(存在する場合)の混合物は、少量のモノマー及び任意に溶媒の存在下で形成される。すなわち、選択された触媒成分は、約-20℃~約80℃であり得る適切な温度で少量の共役ジエンモノマーの存在下で形成されてもよい。この混合物を形成するために用いてもよい共役ジエンモノマーの量は、ニッケル含有化合物のモル当たり、約1~約500モル、他の実施形態では、約5~約250モル、他の実施形態では、約10~約100モルの範囲とすることができる。得られた組成物を数秒~数日間の範囲の期間熟成させ、次いで、フッ素含有化合物と一緒に重合される共役ジエンモノマーの残部に添加してもよい。
前述の方法において、ニッケル系触媒系の溶液又はその触媒成分のうちの1つ以上の溶液を重合系外で調製する場合、有機溶媒又は担体を使用し得る。有機溶媒は、触媒組成物又は成分を溶解するように機能してもよく、又は溶媒は、触媒組成物又は成分が懸濁され得る担体として機能し得る。有機溶媒は、触媒組成物に対して不活性であってもよい。有用な溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び/又はこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、及び石油スピリットなどが挙げられる。脂環式炭化水素溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。上記の炭化水素の商用混合物を使用することもできる。
コバルト系触媒系
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、コバルト系触媒系を利用してもよく、コバルト系触媒系は、(i)コバルト化合物、(ii)有機ハロゲン化アルミニウム、及び(iii)任意選択的に水を含む。(i)及び(ii)のそれぞれに使用される特定の化合物は、変化してもよい。
コバルト系触媒系に使用するのに好適なコバルト化合物としては、限定されないが、安息香酸コバルト、酢酸コバルト、ホウ酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ビス(α-フリルジオキシム)コバルト、ヘキサン酸コバルト、オクタン酸コバルト、シュウ酸コバルト、酒石酸コバルト、ソルビン酸コバルト、アジピン酸コバルト、パルミチン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、アセチルアセトナートコバルト、ビス(サリチルアルデヒドエチレンジイミン)コバルト、コバルトサリチルアルデヒド、ジコバルトオクタカルボニル、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態によれば、第1の実施形態のプロセスがコバルト系触媒系を使用する場合、コバルト化合物はコバルト塩である(コバルト塩は、2つの一価アニオン又は1つの二価アニオンのいずれかを含む)。コバルト塩中のアニオンは、好ましくはC6~C20の有機酸から誘導される。
コバルト系触媒系で使用するのに好適な有機ハロゲン化アルミニウム化合物としては、ランタニド系触媒系について上述したものが挙げられるが、これらに限定されない。上記の有機ハロゲン化アルミニウム化合物の好適な例としては、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド及びヒドロカルビルアルミニウムジハライドが挙げられる。
好ましくは、有機ハロゲン化アルミニウム化合物は、以下の式を有する化合物を含む。
R5
pAlXq
式中、R5はC2~C12アルキル基であり、Xはハロゲンであり、p+qは3である。
より好ましくは、有機ハロゲン化アルミニウム化合物は、ジオルガノー(好ましくはジアルキル)塩化アルミニウム化合物、アルキルアルミニウムセスキクロリド化合物、及びこれらの混合物を含む群から選択される。
更により好ましくは、有機ハロゲン化アルミニウム化合物は、(I)ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムセスキクロリド(これは、ほぼ等モル量の塩化ジエチルアルミニウムと二塩化エチルアルミニウムを含む混合物によって達成され得る)から選択される(a)アルキルアルミニウムクロリドと、(b)式R3Alの有機アルミニウム化合物(式中、RはC8~C12アルキル基(例えば、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなど)との混合物、及び及び(II)アルキル基が8~12個の炭素原子を有するアルキルアルミニウムクロリド(例えば、ジオクチル塩化アルミニウム、ジデシル塩化アルミニウムなど)から選択される。
実施形態(I)は、より好ましい。この好ましい実施形態では、(I)及び(II)の混合物の0~1重量%の量で存在する式R3Alの有機アルミニウム化合物を使用することが特に好ましい。式R3Alの特に好ましい有機アルミニウム化合物は、トリオクチルアルミニウムを含む。
本方法で使用するのに好ましい触媒系は、コバルトオクトエート及びナフテン酸コバルトから選択されるコバルト塩と、(i)塩化ジエチルアルミニウムと、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、及びトリドデシルアルミニウムのうちの1つ以上との混合物、並びに(ii)塩化ジオクチルアルミニウム、塩化ジデシルアルミニウム、及び塩化ジドデシルアルミニウムのうちの1つ以上から選択される有機アルミニウムハライド化合物を含む。
コバルト系触媒系が第1の実施形態のプロセスで使用される場合、構成成分(i)、(ii)及び(iii)の比は変化し得る。特定の実施形態では、コバルト化合物の有機ハロゲン化有機アルミニウム(例えば、塩化ジエチルアルミニウムとトリオクチルアルミニウム)とのモル比は、約1:15~約1:30(例えば、1:15、1:20,1:25又は1:30)、好ましくは約1:15~約1:20(例えば、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19又は1:20)であり、ハロゲン化物(例えば、塩化ジエチルアルミニウム中の塩素)と有機ハロゲン化アルミニウム中の全金属含量(例えば、塩化ジエチルアルミニウム+トリオクチルアルミニウム中のアルミニウム)とのモル比は、約0.7:1~約0.95:1(例えば、0.7:1、0.75:1、0.8:1、0.85:1、0.9:1又は0.95:1)、好ましくは約0.8:1~約0.9:1(例えば、0.82:1、0.84:1、0.86:1、0.88:1又は0.9:1)である。特定の実施形態では、水の量は、使用される有機ハロゲン化アルミニウム(例えば、アルキルアルミニウムクロリド)のミリモル当たり約0.3~約0.8(例えば、0.4:1、0.5:1、0.6、0.7又は0.8)、好ましくは約0.5~約0.65(例えば、0.5、0.55、0.6又は0.65)である。
官能性化合物
上記のように、第1の実施形態のプロセスは、リビング末端ポリマー鎖を、式(I)の官能化化合物と反応させることを含む。上述のように、第2及び第3の実施形態によれば、変性高シスポリブタジエンポリマーは、式(I)を有する官能化化合物の残基に結合している1,3-ブタジエンの重合から生じるポリマー鎖を含み、各ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物の残基に結合している。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、変性高シスポリブタジエンを調製するために使用される唯一の官能化化合物は、式(I)の官能化化合物である。特に、このような実施形態では、ジアルコキシシラン化合物又はモノアルコキシシラン化合物(例えば、シアノ-ヒドロカルビレン-アルキル-ジアルコキシシランはなく、シアノ-ヒドロカルビレン-ジアルキルモノアルコキシシランはない)は、ポリブタジエンの官能化化合物として使用されるか、あるいは変性高シスポリブタジエン上の残基として存在する。
第1~第3の実施形態によると、式(I)は以下の通りである。
式中、Xはシアノ基であり、R1は、C1~C20、好ましくはC1~C10、より好ましくはC1~C3のヒドロカルビレンから選択され、上記のそれぞれは、1つの不飽和炭素-炭素結合を任意に含有し、各R’は、C1~C20のアルコキシ、好ましくはC1~C10のアルコキシ、より好ましくはC1~C6アルコキシ、最も好ましくはC1又はC2のアルコキシから選択される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、式(I)の官能化化合物は、R1及びR’が全て、好ましいものとして記載される基から選択される構造を有する。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、式(I)の官能化化合物は、R1及びR’が全て、好ましいものとして記載される基から選択される構造を有する。式(I)の官能化化合物は、Si上に3つのアルコキシ基を有するので、化合物をトリアルコキシシランと呼ぶことができる。R1がヒドロカルビレン基であることを述べることは、それが2つの他の構成成分(すなわち、X基及びSi)に結合していることを意味する。第1~第3の実施形態の好ましい特定の実施形態では、R1は、脂肪族で不飽和である。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、R1は脂肪族であり、1つの不飽和炭素-炭素結合を含むことができる。一般に、第1~第3の実施形態によれば、R1基中の炭素は、直鎖状に配置されてもよく、又は分枝状であってもよい。
上述したように、第1~第3の実施形態によれば、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXは、シアノ基である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態による式(I)においてXとして使用され得る好適なシアノ基の非限定的な例としては、シアノ基及びSiが、1~20個の炭素、好ましくは1~10個の炭素、より好ましくは1~3個の炭素を有するヒドロカルビレン基によって分離される化合物が挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態による式(I)においてXとして使用され得る好適なシアノ基の非限定的な例としては、2-シアノエチルトリエトキシシラン(CETEOS)、2-シアノエチルトリメトキシシラン(CETMOS)、3-シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTEOS)、及び3-シアノプロピルトリメトキシシラン(CPTMOS)が挙げられる。
第1~第3の実施形態によれば、(定義された触媒系のうちの1つを使用した1,3-ブタジエンの重合から生じる)は、X基を介して官能化化合物に結合される。官能化化合物の構造は、ポリマー鎖をX基に結合するとある程度変化するため、ポリマー鎖が結合している部分は、官能化化合物の残基として記載される。一般に、1つのポリマー鎖は、官能化化合物の各分子のX基を介して官能化化合物の残基に結合する。官能化化合物の残基に結合するために、2つ以上のポリマー鎖が可能である。第1の実施形態のプロセスにより、ポリマー鎖が結合する(すなわち、定義された触媒系のうちの1つを使用する)官能化化合物上の位置は、アニオン性開始剤(例えば、n-ブチルリチウム)が1,3-ブタジエンを重合するために使用される場合、ポリマー鎖が結合する官能化化合物上の位置と対比され得る。より具体的には、アニオン性開始剤を使用した場合、ポリマー鎖は、Si上のアルコキシ基を介して官能化化合物に結合してもよく(ORアルコキシ基のORを置換し、Siに直接結合する)、X基を介してもよい。定義された触媒系のうちの1つを使用して、1,3-ブタジエンを重合し、リビング末端ポリマー鎖を生成するとき、ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物に結合する(のみ)。
第1~第3の実施形態によれば、リビング末端ポリマー鎖の反応に使用される(すなわち、第1の実施形態のプロセスによる)、又は変性高シスポリブタジエンポリマー中に残基として存在する(すなわち、第2及び第3の実施形態による)、式(I)の官能化化合物の量は様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、官能化化合物は、100:1~0.5:1(例えば、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、4:1、2:1、1:1、0.5:1)、好ましくは50:1~1:1(例えば、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、4:1、2:1、又は1:1)、より好ましくは30:1~2:1(例えば、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、8:1、6:1、4:1、又は2:1)のモル比で使用され、触媒系中の一級金属のモルに対する官能化化合物のモル(すなわち、ランタニド系触媒系のランタニドのモル、ニッケル系触媒系のニッケルのモル、又はコバルト系触媒系のコバルトのモル)に基づくモル比である。
安定化剤
上述したように、第1の実施形態のプロセスによれば、(工程Cからの)変性高シスポリブタジエンを、以下の式(II)の安定化剤と反応させ、
R2
nSi(OR3)4-n
式中、R2は、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基からなる群から選択され、好ましくは、C1~C10アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6~C14芳香族基、より好ましくはC1~C6アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6芳香族基からなる群から選択され、R3はR2と同じであっても異なっていてもよく、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基から選択され、好ましくは、C1~C10アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6~C14芳香族基、より好ましくはC1~C6アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6芳香族基から選択され、nは1~3、好ましくは2~3、より好ましくは3の整数である。第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態では、式(II)の安定化剤は、前述の好ましい基又は値から選択されるR2、R3及びnを有する。第1の実施形態のプロセスの他の実施形態では、式(II)の安定化剤は、前述のより好ましい基又は値から選択されるR2、R3及びnを有する。第1の実施形態のプロセスの特に好ましい実施形態では、安定化剤は、トリアルコキシ(アルキル)シラン(すなわち、上記のように、nは3であり、R2はアルキルである)であり、オクチルトリエトキシシランが特に好ましい。第1の実施形態のプロセスによれば、式(II)の安定化剤は、(C)後であるが(E)の前に、すなわち、変性高シスポリブタジエンを単離する前に添加される。安定化剤の使用は、変性高シスポリブタジエンポリマーを組み込んだタイヤトレッドにおいて、改善されたスノー又は氷上性能をもたらす、変性高シスポリブタジエンポリマーの製造に有益であり得る。当業者には理解されるように、タイヤトレッドへの組み込み時のゴム組成物のスノー又は氷上性能は、ゴム組成物の-20℃におけるG’の値を測定することによって予測することができ、より高い値は好ましい性能を示す。
第1の実施形態のプロセスによれば、プロセスで使用される安定化剤の量は異なる場合がある。第1の実施形態の特定の実施形態では、安定化剤は、0.01:1~10:1(例えば、0.01:1、0.05:1、0.1:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1)、好ましくは0.1:1~5:1(例えば0.1:1、0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、又は5:1)、より好ましくは0.5:1~2:1(例えば、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、又は2:1)のモル比で使用され、モル比は、安定化剤のモル、官能化化合物のモルに基づく。
急冷剤
上述したように、第1の実施形態のプロセスによれば、式(III)の急冷剤は、式(II)の安定化剤と組み合わせて使用される。第1の実施形態のプロセスによれば、急冷剤の式(III)は、以下の通りである。
R4COOH
式中、R4はHから選択され、C1~C18アルキル、好ましくはHからなる群、及びC1~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくはC2~C7アルキルからなる群から選択される。第1の実施形態の特定の好ましい実施形態では、急冷剤は、2-エチルヘキサン酸又は酢酸、より好ましくは2-エチルヘキサン酸を含み、特定のそのような実施形態では、急冷剤は、2-エチルヘキサン酸からなる。
変性高シスポリブタジエンポリマーの特性
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%、100℃で20~100、好ましくは30~80又は40~80、より好ましくは40~70の初期ムーニー粘度ML1+4、100℃で120以下(例:120、110、100、90、80、70、60、50以下)、好ましくは105以下(例えば、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、又はそれ以下)の熟成ムーニー粘度ML1+4のシス1,4-結合含量を有する変性高シスポリブタジエンポリマーをもたらす。特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、100℃で120~50、120~80、120~100、105~50、105~80又は105~100の熟成ムーニー粘度ML1+4を有する。同様に上述したように、第2の実施形態の変性高シスポリブタジエンポリマーは、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量を有する。20~100の100℃での初期ムーニー粘度ML1+4は、好ましくは30~80又は40~80、より好ましくは40~70である。第3の実施形態のタイヤは、第2の実施形態の変性高シスポリジエンポリマー又は第1の実施形態によるプロセスによって製造された変性高シスポリジエンポリマーのいずれかを含むゴム組成物を含む成分を有し、第3の実施形態の変性高シスポリジエンポリマーもまた、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%、20~100の100℃での初期ムーニー粘度ML1+4は、好ましくは30~80又は40~80、より好ましくは40~70のシス1,4-結合含量を有するように理解され得る。シス1,4-結合含量が少なくとも92%であると述べることによって、92%以上(例えば92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%以上)であることを意味し、これは、92~99%、92~98%、92~97%、92~96%、92~95%などの範囲を含むと理解されるべきである。第1から第3の実施形態の好ましい実施形態において、変性高シスポリブタジエンポリマーのシス1,4-結合含有量は、少なくとも94%である。シス1,4-結合含量が少なくとも94%であると述べることによって、94%以上(例えば、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%以上)であることを意味し、これは、94~99%、94~98%、94~97%、94~96%、94~95%などの範囲を含むと理解されるべきである。本明細書で言及されるシスの1,4-結合含有量は、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)によって決定される。具体的には、ポリマー試料をCS2に溶解し、次いでFTIRに供する。
100℃での初期ムーニー粘度ML1+4は、熱熟成前に、最終変性高シスポリブタジエンポリマー(ポリマーが、例えば、水蒸気蒸留によって単離され、乾燥された)に取られるムーニー粘度測定値を指す(以下に記載されるように)。100℃での初期ムーニー粘度ML1+4が20~100であると述べることは、20~100(例:20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100)の範囲で変化する可能性があることを意味する。好ましくは、第1~第3の実施形態によると、100℃における初期ムーニー粘度ML1+4は、30~80(例えば、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、65、68、70、72、74、75、76、78、又は80)又は40~80、又はより好ましくは40~70である。100℃での熟成ムーニー粘度ML1+4は、熱熟成された高シスポリブタジエンポリマーの試料上で得られるムーニー粘度測定値を指す。より具体的には、ポリマー試料は、100℃で少なくとも2日間(より好ましくは2日間)熟成されている。一般に、変性高シスポリブタジエンポリマーの熟成ムーニー粘度は、ポリマーの初期粘度よりも幾分高い。
第1~第3の実施形態によれば、変性高シスポリブタジエンポリマーの他の特性は変化し得る。例えば、ポリマーは、様々なMw、Mn、及びMw/Mn値を有し得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは以下のうち少なくとも1つを満たす。(a)150,000~2,000,000グラム/モル(例えば、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000、1,100,000、1,200,000、1,300,000、1,400,000、1,500,000、1,600,000、1,700,000、1,800,000、1,900,000、又は2,000,000グラム/モル)、好ましくは90,000~1,000,000グラム/モル(例えば、90,000、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、又は1,000,000グラム/モル)、より好ましくは250,000~750,000グラム/モル(例えば、250,000、275,000、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、又は750,000グラム/モル)若しくは300,000~800,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、750,000、又は800,000グラム/モル)のMwを有し、(b)80,000~800,000グラム/モル(例えば、80,000、100,000、120,000、140,000、160,000、180,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、750,000、又は800,000グラム/モル)、好ましくは90,000~500,000グラム/モル(例えば、90,000、110,000、130,000、150,000、170,000、190,000、210,000、230,000、250,000、270,000、290,000、310,000、330,000、350,000、370,000、390,000、410,000、430,000、450,000、470,000、490,000、又は500,000グラム/モル)、より好ましくは100,000~350,000グラム/モル(例えば、100,000、120,000、140,000、160,000、180,000、200,000、250,000、300,000、又は350,000グラム/モル)若しくは150,000~400,000グラム/モル(例えば、150,000、170,000、190,000、200,000、250,000、300、000、350,000又は400,000グラム/モル)のMnを有する。(c)1.5~3.5(例えば、1.5、1.7、1.9、2.1、2.3、2.5、2.7、2.9、3.1、3.3、又は3.5)、好ましくは1.8~3(例えば、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、又は3)、より好ましくは2~2.5(例えば、2、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5)のMw/Mnを有する。又は、(d)40~80(例えば、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、65、66、68、又は70)、より好ましくは40~70の100℃における初期ムーニー粘度ML1+4を有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれを満たす。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれの好ましい範囲を満たす。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれのより好ましい範囲を満たす。Mnは、グラム/モル(GPCによる)の数平均分子量を示し、Mwは、グラム/モル(GPCによる)の重量平均分子量を示し、Mw/Mnは、ポリマーの分子量分布又は多分散性を示す。一般に、これらのポリマーのMn及びMwは、ポリスチレン標準で較正されたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定できる。
第1の実施形態のプロセスは、(及び第2の実施形態のポリマーとしてでもよく及び第3の実施形態のタイヤ/タイヤ成分が利用してもよく)高分子量ポリマー材料の微量部分を含有する変性高シスポリブタジエンポリマー製品であるポリマーをもたらす。一般的に、このような高分子量材料は、必要に応じて、ポリマーの使用前(例えば、ゴム組成物中)又はポリマーの販売前に濾過されてもよい。高分子量材料の量は、一般に、約10%未満、時として約5重量%未満である。前述の段落で提供されるMw、Mn、及びMw/Mn値は、第1の実施形態のプロセスによって作製された材料の試料上で、及び/又は第2の若しくは第3の実施形態による材料の試料上のGPCを介して決定され得、濾過され得る高分子量材料のMw及びMn値を包含する。実施例に提供されるMw及びMn値は、GPCへの潜在的な損傷を回避するために、高分子量材料及びゲルを除去するために濾過された試料のGPCによって測定される。また、第1の実施形態のプロセス(及び第2の実施形態のポリマー及び第3の実施形態で使用され得るポリマー)によって製造されるポリマー製品であって、少なくとも90%重量%、好ましくは少なくとも95%重量%、又は更には少なくとも98重量%のポリマー生成物中のポリマーは、150,000~800,000グラム/モル、好ましくは250,000~600,000グラム/モル、より好ましくは300,000~500,000グラム/モルのMw、及び80,000~400,000グラム/モル、好ましくは90,000~300,000グラム/モル、より好ましくは150,000~300,000グラム/モルのMnを有することが、本明細書にも開示されている。
変性高シスポリブタジエンポリマーを含む成分を有するタイヤ
上述したように、第1の実施形態のプロセスに従って製造された変性高シスポリブタジエン及び第2の実施形態の変性高シスポリブタジエンは、タイヤ成分に使用されるゴム組成物において特に有用である。したがって、本明細書に開示される第3の実施形態は、第1の実施形態のプロセスに従って製造された変性高シスポリブタジエン又は第2の実施形態の変性高シスポリブタジエンを含むゴム組成物を含む成分を有するタイヤを対象とする。一般に、第3の実施形態によれば、タイヤ成分のゴム組成物は、(a)エラストマー成分、(b)補強充填剤成分、(c)可塑化成分、及び(d)硬化パッケージを含む。より具体的には、第3の実施形態によれば、タイヤ成分のゴム組成物は、(a)第2の実施形態に係る10~100phrの高シス変性ポリブタジエンポリマー、又は第1の実施形態のプロセスから得られる高シス変性ポリブタジエンポリマーと、及び(ii)0~90phrの未変性ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つの追加のポリマーと、を含むエラストマー成分と、(b)補強充填剤成分であって、(i)10~200phrの補強シリカ充填剤と、(ii)0~50phrの補強カーボンブラック充填剤と、を含み、補強カーボンブラック充填剤が、補強シリカ充填剤の重量の20%以下の量で存在する、補強充填剤成分と、(c)可塑化成分であって、(i)0~50phrの少なくとも1つの可塑化油、及び(ii)少なくとも30℃のTgを有する0~60phrの少なくとも1つの炭化水素樹脂と、を含む、可塑化成分と、(d)硬化パッケージと、を含む。
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物中に存在する変性高シスポリブタジエンポリマー(a)(i)の量は、10~100phr(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100phr)で変化し得る。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、ゴム組成物中に存在する変性高シスポリブタジエンポリマー(a)(i)の量は、20~80phr(例、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80phr)又はより好ましくは30~60phr(例、30、35、40、45、50、55、又は60phr)である。前述の範囲内の(a)(i)の量、例えば、40~80phr、50~80phr、40~70phr、40~60phrなどもまた、第3の実施形態のゴム組成物中で利用され得る。
他のゴム
また上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は、0~90phr(例:0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90phr)の未変性ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のポリマーを含み得る。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、追加のポリマー(b)(ii)の量は、(a)(i)及び(a)(ii)100 phr又は100部のポリマーの総量を構成するように、20~80phr(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80 phr)又は40~60phr(例えば、40、45、50、55、又は60phr)である。上記範囲内の(b)(ii)の量はまた、第3の実施形態のゴム組成物、例えば、20~60、20~50、30~60、40~60などに利用されてもよい。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、1つ以上の追加のゴム、すなわち、(a)及び(b)に加えて含む。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物用エラストマー成分の100phr全体が、(a)(i)及び(a)(ii)との組み合わせからなる。換言すれば、このような実施形態では、(a)(i)及び(a)(ii)以外に他のゴムが存在しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ポリイソプレンを含有しない(すなわち、0phrのポリイソプレン)。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、(a)(i)による変性高シスポリブタジエン以外のポリブタジエンを含有しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は天然ゴムを含有せず、ポリイソプレンを含有しない。
充填剤
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物はまた、充填剤成分として、10~200phrの補強シリカ充填剤(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、又は200phr)、及び0~50phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50phr)の補強カーボンブラック充填剤を含む。換言すれば、上記によれば、シリカ充填剤は常に存在するとみなすことができるが、カーボンブラック充填剤は任意に存在する。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、30~200phrの量の補強シリカ充填剤(例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、又は200phr)、より好ましくは50~150phr(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、又は150phr)を含む。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、1~20phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、又は20phr)、より好ましくは1~10phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)の量の補強カーボンブラック充填剤を含む。第3の実施形態の特定の実施形態では、補強シリカ充填剤の量及び補強カーボンブラック充填剤の量は、両方とも前述の好ましい量の範囲内である。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、補強カーボンブラック充填剤は、補強シリカ充填剤の重量の20%以下の量で存在し(例えば、100phrのシリカ充填剤が使用された場合、補強カーボンブラック充填剤の量は20phr以下であり)、好ましくは補強シリカ充填剤の重量の10%以下の量で存在し、補強カーボンブラック充填剤の前述の量の非限定的な例としては、補強シリカ充填剤の20~1重量%、20~5重量%、15~1重量%、15~5重量%、10~1重量%、10~5重量%、及び5~1重量%が挙げられる。
本明細書で使用するとき、「補強カーボンブラック充填剤」、「補強シリカ充填剤」、及び「補強充填剤」について使用される用語「補強」は、一般に、補強として従来説明されている充填剤、並びに半補強と従来説明される場合がある充填剤の両方の充填剤を包含すると理解されたい。従来、用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約100m2/g超、場合によっては、100m2/g超、約125m2/g超、125m2/g超、又は更に約150m2/g超、又は150m2/g超である、微粒子材料を指すために使用される。あるいは(又は加えて)、用語「補強充填剤」を伝統的に用いて、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する微粒子材料を指すためにも使用できる。伝統的に、用語「半補強充填剤」は、粒径、表面積(N2SA)のいずれか、又は両方において、非補強充填剤(以下で考察する通り)と補強充填剤との中間である充填剤を指すために使用される。本明細書において開示されている第3の実施形態の特定の実施形態では、用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約20m2/g以上(20m2/g以上を含む)、約50m2/g超(50m2/g超を含む)、約100m2/g超(100m2/g超を含む)、及び約125m2/g超(125m2/g超を含む)である、粒子材料を指すために本明細書で使用される。本明細書において開示されている第3の実施形態の特定の実施形態では、用語「補強充填剤」は、10nmから1000nm、約10nmから約50nm、及び10nmから50nmを含む、約10nmから約1000nmの粒径を有する、粒子材料を指すために使用される。
第3の実施形態によれば、使用されるカーボンブラックの特定の種類は様々であり得る。一般に、第3の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用するための好適なカーボンブラックには、少なくとも約20m2/g(少なくとも20m2/gを含む)及び、より好ましくは、少なくとも約35m2/g~約200m2/g又はそれより高い(35m2/g~200m2/gを含む)の表面積を有するものを含めた、一般に入手可能な商用製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、半補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックの2種以上の混合物を含む。好ましくは、第3の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって指定されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
第3実施形態のゴム組成物に用いられる補強シリカ充填剤の特定の種類は、様々であってもよい。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適な補強シリカ充填剤の非限定例としては、以下に限定されないが、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適な他の補強シリカ充填剤としては、以下に限定されないが、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4など)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4.3SiO4.5H2Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3.CaO2SiO2など)などが挙げられる。列挙された補強シリカ充填剤の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填剤が好ましい。このような補強シリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから凝集体へと強力に結合し、順次、集塊物へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。表面積は、BET法で測定すると、様々な補強シリカ充填剤の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、100m2/g~400m2/g(例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、又は400m2/g)、150m2/g~350m2/g、200m2/g~300m2/g、又は150m2/g~250m2/gの表面積(BET法で測定される)を有する補強シリカ充填剤を含む。
本明細書に開示される第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、5.5~8(例えば、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、7.9、又は8)、6~8(例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、又は8)、6~7.5、6.5~8、6.5~7.5、又は5.5~6.8のpHを有する補強シリカ充填剤を含む。第3の実施形態の特定の実施形態で使用することができる市販の補強シリカ充填剤のいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって製造された、Hi-Sil(登録商標)EZ120G、Hi-Sil(登録商標)EZ120G-D、Hi-Sil(登録商標)134G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G-D、Hi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)190G-D、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G-D、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243LD、Hi-Sil(登録商標)255CG-D、Hi-Sil(登録商標)315-D、Hi-Sil(登録商標)315G-D、Hi-Sil(登録商標)HDP 320Gなど、が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、複数の有用な商用の異なる補強シリカ充填剤もまた、Evonik Corporation(例えば、Ultrasil(登録商標)320 GR、Ultrasil(登録商標)5000 GR、Ultrasil(登録商標)5500 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)VN2 GR、Ultrasil(登録商標)VN2、Ultrasil(登録商標)VN3、Ultrasil(登録商標)VN3 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)7005、Ultrasil(登録商標)7500 GR、Ultrasil(登録商標)7800 GR、Ultrasil(登録商標)9500 GR、Ultrasil(登録商標)9000 G、Ultrasil(登録商標)9100 GR)及びSolvay(例えば、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1200MP、Zeosil(登録商標)Premium、Zeosil(登録商標)195HR、Zeosil(登録商標)195GR、Zeosil(登録商標)185GR、Zeosil(登録商標)175GR、及びZeosil(登録商標)165 GR)から入手可能である。
第3の実施形態の特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のシリカカップリング剤もまた、(任意に)利用され得る。シリカカップリング剤は、ゴム組成物中のシリカ充填剤の凝集の防止又は低減に有用である。シリカ充填剤粒子の凝集は、ゴム組成物の粘度を上昇させると考えられ、したがって、この凝集を防止することにより、粘度が低下し、ゴム組成物の加工性及びブレンドが改善される。
概して、シラン及び構成成分、又はポリマー、特に加硫性ポリマーと反応可能な部分を有するものなどの任意の従来のシリカカップリング剤の種類が使用可能である。シリカカップリング剤は、シリカとポリマーとの間の連結架橋として作用する。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適なシリカカップリング剤としては、アルキルアルコキシ、メルカプト、ブロックされたメルカプト、硫化物含有(例えば、一硫化物をベースとするアルコキシ含有、二硫化物をベースとするアルコキシ含有、四硫化物をベースとするアルコキシ含有)、アミノ、ビニル、エポキシ、及びこれらの組み合わせなどの基を含むものが挙げられる。特定の実施形態では、シリカカップリング剤は、前処理されたシリカの形態でゴム組成物に添加されてもよい。前処理されたシリカは、ゴム組成物に添加される前にシランで前表面処理されている。前処理されたシリカを使用することにより、1つの成分に2つの成分(すなわち、シリカとシリカカップリング剤)を添加することが可能になり、これによって概してゴムの配合が容易になる傾向がある。
シリカカップリング剤が第3の実施形態によるゴム組成物中で利用される場合、使用される量は様々であり得る。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、いかなるシリカカップリング剤も含まない。第3の実施形態の他の実施形態では、シリカカップリング剤は、シリカカップリング剤の総量のシリカ充填剤に対する比が、0.1:100~1:5(すなわち、シリカ100部に対して0.1~20重量部)、1:100~1:10、1:100~1:20、及び1:100~1:25、並びに約1:100~約0:100、及び1:100~0:100となるように、十分な量で存在する。第3の実施形態による特定の実施形態では、ゴム組成物は、0.1~15phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15phr)、0.1~12phr、0.1~10phr、0.1~5phr、1~15phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15phr)、1~10phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10phr)、1~5phr、又は1~3phrの量のシリカカップリング剤を含む。
可塑剤
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は、少なくとも30℃のTgを有する少なくとも1つの可塑化油の0~50phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50phr)及び少なくとも1つの炭化水素樹脂の0~60phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60phr)を含む可塑化成分を含む。好ましくは、可塑化油又は炭化水素樹脂のうちの少なくとも1つが、ゴム組成物中に存在する。第3の実施形態の好ましい実施形態では、可塑化成分は、0~30phrの可塑化油及び5~60phrの炭化水素樹脂を含む。第3の実施形態のより好ましい実施形態では、可塑化成分は、0~15phrの可塑化油及び5~50phrの炭化水素樹脂を含む。第3の実施形態の特定の実施形態では、可塑化油は、少なくとも1phr(例えば、1~50phr、1~30phr、1~15phr、1~10phr、1~5phrなど)の量で存在する。第3の実施形態の特定の実施形態では、可塑化成分の総量は、65phr(例えば、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5又は1phr)以下、好ましくは5~65phr、より好ましくは10~55phr、又は15~50phrであり、特定のかかる実施形態では、炭化水素樹脂は、可塑化成分の総量の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%,50~100%,50~90%,60~100%,60~90%,70~100%、又は70~90%を含む。
芳香族、ナフテン系、及び低PCA油が挙げられるがこれらに限定されない、各種可塑化油を利用してよい。好ましくは、可塑化油は、25℃で液体(注入可能)である。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含有物を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,第62版に見出すことができる。好適な低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。好適なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。好適なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。好適な重ナフテン系油は、SHELLFELX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。好適な低PCA油としてはまた、野菜、木の実及び種子から採取できるものなど、様々な植物起源の油も挙げられる。非限定例としては、以下に限定されないが、ダイズ油、ヒマワリ油(少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%のオレイン酸含有量を有する高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられる。第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、10phr未満(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0phr)、5phr未満、1~5phr、又は更には0phrなどのごくわずかの量の油を含む。
可塑性樹脂を含む可塑化成分に様々な種類の炭化水素樹脂が利用されてもよい。本明細書で使用するとき、可塑性樹脂という用語は、室温(23℃)において固体である化合物を指し、通常、少なくとも5phrとなる使用される量で、ゴム組成物中で混和性である。一般に、可塑性樹脂は希釈剤として作用し、一般に、非混和性である粘着性樹脂と対比的なものとなり得、移動してゴム組成物の表面に粘性をもたらすことができる。可塑性樹脂が利用される第3の実施形態の特定の実施形態では、可塑性樹脂は、炭化水素樹脂を含み、この中に含まれているモノマーに応じて、脂肪族タイプ、芳香族タイプ、又は脂肪族/芳香族タイプとすることができる。第3の実施形態のゴム組成物において使用するのに好適な可塑性樹脂の例としては、以下に限定されないが、シクロペンタジエン(CPDと略称)又はジシクロペンタジエン(DCPDとして略称)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びC5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる。このような樹脂は、例えば、個々に、又は組み合わせて使用することができる。第3の実施形態の特定の実施形態では、30℃超(好ましくは、40℃超及び/又は120℃以下若しくは100℃以下)のTg、400~2000グラム/モル(好ましくは、500~2000グラム/モル)の数平均分子量(Mn)、及び3未満(好ましくは、2未満)の多分散度指数(PI)(PI=Mvv/Mnであり、Mvvは、樹脂の重量平均分子量である)のうちの少なくとも1つを満たす可塑性樹脂が使用される。樹脂のTgは、ASTM D3418(1999)に準拠して、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。樹脂のMw、Mn、及びPIは、THF、35℃、濃度1g/1、流速1ミリリットル/分、注入前に0.45μmの気孔率を有するフィルターを通して濾過した溶液、ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正、一連の3つの「Waters」カラムのセット(「Styragel」HR4E、HR1、及びHR0.5)、示差屈折率計(「Waters 2410」)及びその関連する操作ソフトウェア(「Waters Empower」)による検出を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定することができる。
硬化パッケージ
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は硬化パッケージを含む。一般的に、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1つの加硫剤と、少なくとも1つの加硫促進剤と、少なくとも1つの加硫活性化剤と、任意に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤と、を含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として働く。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当分野で公知であり、所望の加硫特性に基づいて、当業者により選択され得る。
第3の実施形態の特定の実施形態に使用するのに好適な加硫剤の種類の例としては、以下に限定されないが、硫黄、又は過酸化物をベースとする硬化性構成成分が挙げられる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。一般に、加硫剤は、1~7.5phrを含む、1~5phr、好ましくは1~3.5phrを含む、0.1~10phrの範囲の量で使用してもよい。
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。好適な加硫促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバミン酸加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、使用される加硫促進剤の量は、0.1~10phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10phr)、好ましくは0.5~5phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5phr)の範囲である。
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機構成成分及び有機構成成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及びこれらのそれぞれの亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般に、使用される加硫活性化剤の量は、0.1~6phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6phr)、好ましくは0.5~4phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3 3.5、又は4phr)の範囲である。
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、以下に限定されないが、Santogard製のPVI(シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。一般に、使用される加硫阻害剤の量は、0.1~3phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、又は3phr)、好ましくは0.5~2phr(例えば、0.5、1、1.5、又は2phr)の範囲である。
他の成分
本明細書に開示される第3の実施形態のゴム組成物に任意に添加され得る様々な他の成分としては、ワックス、加工助剤、粘着付与樹脂、補強樹脂、ペプタイザー、及び酸化防止剤が挙げられる。
ゴム組成物の調製方法
本明細書に開示する第3の実施形態によるゴム組成物は、一般に、(上記で開示した)ゴム組成物の成分を、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらの成分をバンバリーミキサー又はロール機で混練するなど、共に混合することによって形成することができる。これらの方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階とを含む。非生産用マスターバッチ段階という用語は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階であると理解されている。用語、最終生産用混合段階も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。第3の実施形態の特定の実施形態では、1つの非生産用マスターバッチ混合段階が、ゴム組成物を調製する際に使用されてよい。第3の実施形態の特定の実施形態では、2つ以上の非生産用マスターバッチ混合段階が使用される。シリカ及びシリカ結合剤が用いられる第3の実施形態の特定の実施形態では、複数の非生産用マスターバッチ混合段階が使用され、シリカ充填剤の少なくとも一部は、第2の非生産用マスターバッチ混合段階(再粉砕段階としても記載される)において添加され、特定のこのような実施形態では、全てのシリカカップリング剤は、第2の非生産用マスターバッチ混合段階(シリカ充填剤の少なくとも一部分と共に)のみにおいて添加され、シリカカップリング剤は、初期の非生産用マスターバッチ混合段階では追加されない。
第3の実施形態の特定の実施形態では、マスターバッチ混合段階は、タンデム混合又は相互噛合混合のうちの少なくとも1つを含む。タンデム混合は、2つの混合チャンバを有し、各チャンバが1組の混合用ローターを有する、ミキサーを使用することを含むものとして理解することができ、一般に、2つの混合チャンバは、一次ミキサーである上部混合器と一緒に積層され、下部ミキサーは、上部又は一次ミキサーからバッチを受け入れる。特定の実施形態では、一次ミキサーは噛み合うローターを利用し、他の実施形態では、一次ミキサーは接線方向のローターを利用する。好ましくは、下部ミキサーは、噛み合うローターを利用する。噛み合い混合は、噛み合うローターを有するミキサーの使用を含むものとして理解され得る。噛み合うローターとは、ローターが互いに噛み合うように、セット内の1つのローターの大径が、セット内の対向するローターの小径と相互作用するローターのセットを指す。噛み合うローターは、ローター間の相互作用により、均一の速度で駆動されなければならない。噛み合うローターとは対照的に、接線方向ローターとは、各々のローターが、側面と称され得る空洞内で互いに独立して回転する、1組のローターを指す。一般に、接線方向のローターを有するミキサーは、ラムを含むのに対し、ラムは、噛み合うローターを有するミキサーでは必要ではない。
第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約130℃~約200℃の温度で行われる非生産用マスターバッチ混合段階(複数可)を伴うプロセスによって調製される。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の望ましくない事前硬化を回避するために加硫温度を下回る温度で行われる最終生産用混合段階を伴うプロセスによって調製される。したがって、生産用混合段階の温度は、約120℃を超えるべきでなく、典型的には約40℃~約120℃、又は約60℃~約110℃、特に、約75℃~約100℃である。
以下の実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特定の実施例に対する多くの変更が可能である。具体的には、変性高シスポリブタジエンポリマーは、異なる官能性化合物を使用して(すなわち、上述のように、式(I)に従って)、異なる安定化剤を使用して、又は安定化剤を使用せず(前述)、又は官能性化合物及び安定化の異なる組み合わせを使用/有し、並びにゴム組成物中で使用することができることを理解されたい。また、高シスポリブタジエンポリマーは、実施例で用いられる相対量、組成、又はこれらの両方において異なる(すなわち、前の段で開示したように完全に異なる)成分(例えば、更なるゴム、充填剤、硬化パッケージ成分)と共にゴム組成物中で用いられ得ることも理解するべきである。
実施例1(Nd/MAO触媒を用いるCPTEOSの使用):タービン攪拌機ブレードを備えた2ガロンの窒素パージされた反応器に、1209グラムのヘキサン及び3257グラムのヘキサン中の19.5重量%の1,3-ブタジエンを添加した。予め形成された触媒は、トルエン中の9.55ミリリットルの4.32モルメチルアルミノキサン(MAO)、ヘキサン中の2.03グラムの22.0重量%の1,3-ブタジエン、シクロヘキサン中の0.77ミリリットルの0.537モルのネオジム多用途、ヘキサン中の10.32ミリリットルの1.0モルの水素化ジイソブチルアルミニウム、及びヘキサン中の1.65ミリリットルの塩化ジエチルアルミニウムを混合することによって調製された。触媒を15分間熟成させた後、反応器(溶媒及びヘキサン中に1,3-ブタジエンを既に含有している)に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。60分の重合時間後、1.91ミリリットルの4.15モル(3-シアノプロピル)トリエトキシシラン(CPTEOS、官能化化合物のモル、触媒中のNdのモルに基づく25:1のモル比)を約20ミリリットルのヘキサンで希釈し、反応器に投入した。30分後、重合混合物を室温(約25℃)に冷却した。
得られた変性ポリマーセメント(合計約4500グラム)のおよそ400グラムを(ほぼ等しい部分で)5つのボトル(a~eとして標識)に移した。オクチルトリエトキシシラン(OTES、3.18モル(未希釈))及びエチルヘキサン酸(EHA、6.3モル(未希釈))を、以下の表1に示される量でボトルb-eに添加した。ボトルaにOTES又はEHAを添加しなかった。この例は対照であると考えられる。各ボトルを、65℃に維持された水槽内で30分間ひっくり返した。各ボトルに得られたポリマーセメントを、イソプロパノール中の3ミリリットルの12重量%2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)溶液でクエンチし、BHTを含む追加のイソプロパノールで凝固させ、ドラム乾燥した。未熟成及び熟成ムーニー粘度ML
1+4値を、以下の表1に要約する。熟成値は、100℃のオーブン内に2日間配置することによって熟成された試料上で測定される。
1 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、安定化剤のモル、官能化化合物のモル(例えば、1は1:1の比を示す)に基づくモル比である。
2 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、急冷剤のモル、安定化剤のモルに基づくモル比である。
表1のデータから分かるように、官能化化合物(すなわち、CPTEOS)と組み合わせた安定化剤及び急冷剤の使用は、80未満の未熟成ムーニー粘度ML1+4を有する変性高シスポリブタジエンを生成し、ポリマーはまた、120以下の熟成ML1+4を有する。対照的に、安定化剤を使用せず、急冷剤を使用しない対照例(1a)は、120(すなわち、123)を超える熟成ML1+4を有する変性高シスポリブタジエンをもたらす。
実施例2(COMCAT触媒を用いたCPTEOSの使用):タービン攪拌機ブレードを備えた2ガロンの窒素パージされた反応器に、1209グラムのヘキサン及び3257グラムのヘキサン中の19.5重量%の1,3-ブタジエンを添加した。次に、ヘキサン中、3.13ミリリットルの1.0モルのジイソブチルアルミニウムヒドリド、続いて2.39ミリリットルの0.452 Molar COMCAT触媒(Comar Chemical Ltd.から入手可能なNd-FC/SF触媒)を反応器に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。60分の重合時間後、6.50ミリリットルの4.15モル(3-シアノプロピル)トリエトキシシラン(CPTEOS、官能化化合物のモル、触媒中のNdのモルに基づく25:1のモル比)を約20ミリリットルのヘキサンで希釈し反応器に投入した。30分後、重合混合物を室温(約25℃)に冷却した。
得られた変性ポリマーセメントの約400グラムを(ほぼ等しい部分で)5つのボトル(a~eとして標識)に移した。オクチルトリエトキシシラン(OTES、3.18モル(未希釈))及びエチルヘキサン酸(EHA、6.3モル(未希釈))を、次いで、以下の表2に示される量でボトルb~eに添加した。ボトルaにOTES又はEHAを添加しなかった。この例は対照であると考えられる。各ボトルを、65℃に維持された水槽内で30分間ひっくり返した。各ボトルに得られたポリマーセメントを、イソプロパノール中の3ミリリットルの12重量%2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)溶液でクエンチし、BHTを含む追加のイソプロパノールで凝固させ、ドラム乾燥した。未熟成及び熟成ムーニー粘度ML
1+4値を、以下の表2に要約する。熟成値は、100℃のオーブン内に2日間配置することによって熟成された試料上で測定される。
1 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、安定化剤のモル、官能化化合物のモル特定に基づくモル比である。
2 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、急冷剤のモル、安定化剤のモルに基づくモル比である。
表2のデータから分かるように、官能化化合物(すなわち、CPTEOS)と組み合わせた安定化剤及び急冷剤の使用は、70未満の未熟成ムーニーML1+4を有する変性高シスポリブタジエンを生成し、ポリマーはまた、100未満の熟成ML1+4を有する。対照的に、安定化剤を使用せず、急冷剤を使用しない対照例(2a)は、120(すなわち、140)を超える熟成ML1+4を有する変性高シスポリブタジエンをもたらす。
実施例3(Nd/MAO触媒を有するCPTEOSの使用:タービン撹拌器ブレードを装備した2-ガロン窒素パージした反応器に、ヘキサン1209グラム及びヘキサン中の3257グラムの19.5重量%の1,3-ブタジエンを添加した。予め形成された触媒は、トルエン中の9.55ミリリットルの4.32モルメチルアルミノキサン(MAO)、ヘキサン中の2.03グラムの22.0重量%の1,3-ブタジエン、シクロヘキサン中の0.77ミリリットルの0.537モルのネオジム多用途、ヘキサン中の10.32ミリリットルの1.0モルの水素化ジイソブチルアルミニウム、及びヘキサン中の1.65ミリリットルの塩化ジエチルアルミニウムを混合することによって調製された。触媒を15分間熟成させた後、反応器(ヘキサン及びヘキサン中の1,3-ブタジエンを既に含有している)に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。60分の重合時間後、1.91ミリリットルの4.15モル(3-シアノプロピル)トリエトキシシラン(CPTEOS、官能化化合物のモル、触媒中のNdのモルに基づく25:1のモル比)を約20ミリリットルのヘキサンで希釈し反応器に投入した。30分後、2.50ミリリットルのオクチルトリエトキシシラン(OTES、3.18モル(未希釈))、安定化剤のモル、官能化化合物のモルに基づく1:1のモル比)及び0.63ミリリットルのエチルヘキサン酸(EHA、6.3モル(未希釈))、クエンチ剤のモル、安定化剤のモルに基づく0.5:1のモル比)を反応器に充填し、反応器を室温(約25℃)に冷却しながら反応させた。
得られたポリマーセメント(およそ400グラム)を、BHTを含有するイソプロパノールのバケット中で凝固させ、ドラム乾燥させた。変性高シスポリブタジエンについての未熟成及び熟成ムーニーML
1+4値を、100℃のオーブン内で2日間配置することによって熟成された試料上で測定される熟成値を表3に要約する。対照として、任意のOTES又はEHAで処理されなかったポリマーの試料もまた、同じ熟成に供され、熟成ムーニーML
1+4値は、熟成対照ムーニーとして以下に示される。
1 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、安定化剤のモル、官能化化合物のモル特定に基づくモル比である。
2 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、急冷剤のモル、安定化剤のモルに基づくモル比である。
表3のデータから分かるように、実施例3で製造された変性高シスポリブタジエンは、100未満(より具体的には80以上)の未熟成ムーニー粘度ML1+4、及び100未満(より具体的には97以上)であった熟成ムーニー粘度ML1+4を有した。
実施例4(COMCAT触媒を用いたCPTEOSの使用)タービン攪拌機ブレードを備えた2ガロンの窒素パージされた反応器に、1209グラムのヘキサン及び3257グラムのヘキサン中の19.5重量%の1,3-ブタジエンを添加した。次に、ヘキサン中の3.13ミリリットルの1.0モルの水素化ジイソブチルアルミニウム及び2.39ミリリットルの0.452モルのCOMCAT触媒(Comar Chemical Ltd.から入手可能なNd-FC/SF触媒)を反応器に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。60分の重合時間の後、約20ミリリットルのヘキサンで希釈した6.50ミリリットルの4.15モル(3-シアノプロピル)トリエトキシシラン(CPTEOS、官能化化合物のモル:触媒中のNdのモルに基づく25:1のモル比)を反応器に充填した。
30分後、8.49ミリリットルのオクチルトリエトキシシラン(OTES、3.18モル(未希釈))、安定化剤のモル、官能化化合物のモルに基づく1:1のモル比)及び2.14ミリリットルのエチルヘキサン酸(EHA、6.3モル(未希釈))、クエンチ剤のモル、安定化剤のモルに基づく0.5:1のモル比)を反応器に充填し、反応器を室温(約25℃)に冷却しながら反応させた。
得られたポリマーセメント(およそ400グラム)を、BHTを含有するイソプロパノールのバケット中で凝固させ、ドラム乾燥させた。変性高シスポリブタジエンについての未熟成及び熟成ムーニーML
1+4値を、100℃のオーブン内で2日間配置することによって熟成された試料上で測定される熟成値を表4に要約する。対照として、任意のOTES又はEHAで処理されなかったポリマーの試料もまた、同じ熟成に供され、熟成ムーニーML
1+4値は、熟成対照ムーニーとして以下に示される。
1 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、安定化剤のモル、官能化化合物のモル特定に基づくモル比である。
2 第1の数はミリリットルの量であり、第2の数は、急冷剤のモル、安定化剤のモルに基づくモル比である。
表4のデータから分かるように、実施例4で製造された変性高シスポリブタジエンは、100未満(より具体的には52以上)の未熟成ムーニー粘度ML1+4、及び100未満(より具体的には97以上)未満の熟成ムーニー粘度ML1+4を有した。
実施例5(Nd/MAO触媒を有するCETEOSの使用):実施例3を繰り返した:ただし、CPTEOSを使用する代わりに、1.76ミリリットルの4.5モル(2-シアノエチル)トリエトキシシラン(CETEOS、官能化化合物のモル、触媒中のNdのモルに基づく25:1のモル比)を使用した。結果を表5で報告する。
実施例6(COMCAT触媒を用いるCETEOSの使用):実施例4を繰り返したが、ただし、CPTEOSを使用する代わりに、6.00ミリリットルの4.5モル(2-シアノエチル)トリエトキシシラン(CETEOS、官能化化合物のモル、触媒中のNdのモルに基づく25:1のモル比)を使用したことを除く。結果を表5で報告する。
表5のデータから分かるように、生成された変性高シスポリブタジエンの両方は、100未満(より具体的には94及び83以上)未満の未熟成ムーニー粘度ML1+4、及び120未満(より具体的には112及び99以上)の熟成ムーニー粘度ML1+4を有した。
本出願は、本明細書において開示されている組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。様々な単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかしながら、かかる語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、かかる記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、少なくとも記載される番号を意味するものと解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、一般に、このような構成は、当業者がその慣例を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。特許、特許出願、及び非特許文献を含むがこれらに限定されない全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。