本明細書に開示されるのは、変性高シスポリジエンポリマー、変性高シスポリジエンポリマーを調製するためのプロセス、及び変性高シスポリジエンポリマーを含有するタイヤゴム組成物である。
第1の実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーを調製するためのプロセスが提供される。第1の実施形態によれば、本方法は、(a)(i)ランタニド化合物と、(ii)アルキル化剤と、(iii)ハロゲン源と、を含む、ランタニド系触媒系を提供することであって、(iii)が、(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供されてもよい、ことと、(b)(a)の触媒系を使用して、ある量の共役ジエンモノマーを重合し、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(c)(b)のリビング末端ポリマー鎖を、式I又は式IIから選択される官能化化合物と反応させ、それにより、第1の官能化化合物由来の残基で末端官能化されたポリマー鎖を含む中間生成物を生成することと、(d)ハロゲン化ケイ素からなる群から選択されるカップリング剤を使用して、(c)の中間生成物をカップリングさせることにより、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量と、少なくとも40、好ましくは45~80の100℃におけるムーニー粘度ML1+4とを有する、変性高シスポリジエンポリマーを生成することと、を含む。
第2の実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーが提供される。第2の実施形態によれば、変性高シスポリジエンポリマーは、(a)ある量の共役ジエンモノマーの重合により生じ、式I又は式IIから選択される官能化化合物由来の残基を有する少なくとも1つのポリマー鎖と、(b)そこに結合されている(a)の少なくとも1つのポリマー鎖を有するカップリング剤由来の残基であって、カップリング剤がハロゲン化ケイ素から選択され、カップリング剤由来の残基が、(a)のポリマー鎖で置換された少なくとも1つのハライドを有する、カップリング剤由来の残基と、を含み、変性高シスポリジエンは、少なくとも92%、好ましくは94%のシス1,4-結合含量と、少なくとも40、好ましくは45~80の100℃におけるムーニー粘度ML1+4とを有する。
第3の実施形態では、タイヤゴム組成物が提供される。第3の実施形態によれば、タイヤゴム組成物は、(a)10~100phr、好ましくは30~80phrの第2の実施形態による変性高シスポリジエン、又は第1の実施形態によって製造されたものと、(b)0~90phr、好ましくは20~70phrの、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、(c)10~100phrの少なくとも1つのカーボンブラック充填剤及び0~100phrの少なくとも1つのシリカ充填剤と、を含む。第3の実施の形態によれば、タイヤゴム組成物は、好ましくはタイヤ構成要素、より好ましくはタイヤトレッドに含有される。
定義
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
本明細書で使用するとき、用語「リビング末端」(例えば、ポリマー鎖のリビング末端)は、まだ終端されていないリビング末端を有するポリマー種を指すように用いられ、リビング末端は官能化化合物と反応することができ、したがって反応性と言うことができる。
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
本明細書で特に指示がないかぎり、用語「ムーニー粘度」とは、ムーニー粘度、ML1+4を意味する。ゴム組成物のムーニー粘度は、加硫又は硬化に先立って測定されることを、当業者は理解するであろう。
本明細書で使用するとき、用語「天然ゴム」は、パラゴムノキ属のゴムの木及びパラゴムノキ属以外の原料(例えば、グアユールの低木及びタンポポ(例えば、TKS)など)の原料から採取することができるものなど、天然由来のゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部あたりの部を意味する。100部のゴムは、本明細書において100部のエラストマー成分とも称され得る。
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
本明細書で使用されるとき、用語「トレッド」は、通常の膨張及び負荷下で路面と接触するタイヤの部分、並びに任意のサブトレッドの両方を指す。
変性高シスポリジエンポリマーを調製するためのプロセス
一般に、本明細書に記載される第1の実施形態のプロセスは、溶液重合プロセスであると考えることができる。この種の重合プロセスでは、重合反応は有機溶媒系溶液中で起こる。ここで、有機溶媒系溶液は、最初は、ある量の共役ジエンモノマー及びランタニド系触媒系を含有する。一般に、第1の実施形態のプロセスによれば、有機溶媒系溶液は、溶液中のモノマー、有機溶媒、及びポリジエンの総重量に基づいて、20~90重量%(wt%)の有機溶媒を含む。好ましくは、有機溶媒は、溶液の主成分を構成し、すなわち、モノマー、有機溶媒、及びポリジエンの総重量に基づいて、50~90重量%の有機溶媒、より好ましくは70重量%~90重量%の有機溶媒を含む。本明細書に開示される溶液重合プロセスは、ガス型又はバルク型重合と対比される場合があり、ここでは、重合があらゆる有機溶媒の非存在下で行われ、又は、モノマー、有機溶媒、及びポリジエンの総重量に基づいて20重量%未満の有機溶媒が存在する。
本明細書に記載の第1の実施形態による溶液重合プロセスで使用するのに好適な有機溶媒は、溶媒が重合反応における反応物ではないように、重合反応に対して不活性である溶媒である。好適な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が挙げられる。好適な芳香族炭化水素溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ナフタレン、メシチレン、キシレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂肪族炭化水素溶媒の例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、石油スピリットなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂環式炭化水素溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前述の芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、及び脂環式炭化水素溶媒の混合物も使用することができる。第1の実施形態の特定の実施形態では、好ましい有機溶媒として、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセス中での使用に好適な更なる有用な有機溶媒が、当業者に既知である。
本明細書に開示される第1の実施形態による溶液重合プロセスは、好ましくは、窒素、アルゴン、又はヘリウムなどの不活性ガスで覆われた嫌気条件下で実施される。重合温度は、-50℃~150℃の範囲で広範に変化してもよく、好ましい温度範囲は、50℃~120℃である。重合圧力もまた、1気圧(atm)~30atm、好ましくは1atm~10atmの範囲で広範に変化し得る。
本明細書に開示される第1の実施形態による溶液重合プロセスは、連続的、半連続的、又はバッチプロセスとして実施することができる。半連続プロセスでは、モノマーを断続的に充填して、すでに重合したモノマーと置き替える。本明細書に記載のプロセスに従って共役ジエンモノマーを高シスポリジエンに重合することは、モノマー及びランタニド系触媒系が全て有機溶媒系溶液中に存在するときに生じる。
一般に、本明細書に開示される第1の実施形態の重合プロセスは、任意の好適な停止剤を添加することによって停止され得る。好適な停止剤の非限定的な例としては、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、及びこれらの混合物などのプロトン性化合物が挙げられる。他の好適な停止剤は、当業者に既知である。更に、重合が停止されると、得られた高シスポリジエンは、当業者に既知である従来の方法、例えば、蒸気脱溶媒、アルコールによる凝固、濾過、精製、乾燥などを用いて、溶液から回収することができる。
ランタニド系触媒系
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、(i)ランタニド化合物と、(ii)アルキル化剤と、(iii)ハロゲン源と、を含む、ランタニド系触媒系の使用(提供すること)を含み、(iii)は、(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供されてもよい。ランタニド系触媒系を使用して、ある量の共役ジエンモノマー(以下に詳述される)を重合し、リビング末端を有するポリマー鎖を生成する。好ましくは、第1の実施形態のプロセスによれば、ランタニド系触媒系は、共役ジエンモノマーの任意の溶液に添加される前に予備形成される(ただし、特定の好ましい実施形態では、少量の1,3-ブタジエンが触媒系の形成中に触媒成分の混合物に添加され、例えば、モル比は約1:5~約1:100(例えば、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、又は1:100)、好ましくは約1:10~約1:25(例えば、1:10、1:15、1:20、又は1:25)であり、この比は、ランタニドのモル量:1,3-ブタジエンのモル量に基づく)。
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、ランタニド化合物を含む。第1の実施形態のプロセスにおいて有用なランタニド化合物は、少なくとも1つのランタニド元素原子を含む化合物である。本明細書で使用するとき、「ランタニド元素」とは、周期表ランタニド系列(すなわち、原子番号57~71)に見出される元素、並びにジジムを指し、これは、モナズ砂から得られる希土類元素の混合物である。特に、本明細書に開示されるランタニド元素としては、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムが挙げられる。好ましくは、ランタニド化合物は、ネオジム、ガドリニウム、サマリウム、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つの原子を含む。最も好ましくは、ランタニド化合物は、少なくとも1つのネオジム原子を含む。
ランタニド化合物中のランタニド原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3及び+4の酸化状態であってもよい。第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ランタニド原子が+3の酸化状態にある三価ランタニド化合物が使用される。一般に、第1の実施形態のプロセスで使用するのに好適なランタニド化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィナート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドβ-ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド疑似ハライド、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ランタニド化合物は、ランタニドカルボキシレート又はランタニド有機ホスホネート、より好ましくはネオジムカルボキシレート、最も好ましくはネオジムベルサテートである。
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ランタニド化合物は、本明細書に開示される芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、又は脂環式炭化水素溶媒などの炭化水素溶媒に可溶性であり得る。しかし、重合媒体中で懸濁させて、触媒活性種を形成することができるため、炭化水素不溶性のランタニド化合物も第1の実施形態のプロセスにおいて有用な場合がある。
説明を簡単にするために、第1の実施形態のプロセスにおいて有用なランタニド化合物についての更なる説明では、ネオジム化合物に焦点を合わせるが、当業者であれば、本明細書に開示される他のランタニド金属ベースの同様の化合物を選択することができるであろう。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムカルボキシレートの例として、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(すなわち、ネオジムベルサテート又はNdV3)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエート、及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスフェートの例として、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスホネートの例として、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、及びネオジム(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスフィナートの例として、ネオジムブチルホスフィナート、ネオジムペンチルホスフィナート、ネオジムヘキシルホスフィナート、ネオジムヘプチルホスフィナート、ネオジムオクチルホスフィナート、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィナート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジムデシルホスフィナート、ネオジムドデシルホスフィナート、ネオジムオクタデシルホスフィナート、ネオジムオレイルホスフィナート、ネオジムフェニルホスフィナート、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスフィナート、ネオジムジブチルホスフィナート、ネオジムジペンチルホスフィナート、ネオジムジヘキシルホスフィナート、ネオジムジヘプチルホスフィナート、ネオジムジオクチルホスフィナート、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフィナート、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジムジデシルホスフィナート、ネオジムジドデシルホスフィナート、ネオジムジオクタデシルホスフィナート、ネオジムジオレイルホスフィナート、ネオジムジフェニルホスフィナート、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフィナート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィナートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムカルバメートの例として、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソプロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメート、及びネオジムジベンジルカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムジチオカルバメートの例として、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメート、及びネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムキサンテートの例として、ネオジムメチルキサンテート、ネオジムエチルキサンテート、ネオジムイソプロピルキサンテート、ネオジムブチルキサンテート、及びネオジムベンジルキサンテートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムβ-ジケトネートの例として、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネート、ネオジム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムアルコキシド又はアリールオキシドの例として、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2-エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムハライドの例としては、ネオジムフルオリド、ネオジムクロリド、ネオジムブロミド、及びネオジムヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジム疑似ハライドには、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアニドが含まれるが、これらに限定されない。好適なネオジムオキシハライドには、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、及びネオジムオキシブロミドが含まれるが、これらに限定されない。ルイス塩基(例えばテトラヒドロフラン(「THF」))を、このクラスのネオジム化合物を不活性有機溶媒中に可溶化しやすくするために用いてもよい。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライド、又はハロゲン原子を含有する他のランタニド化合物を用いる場合、ランタニド化合物は任意に、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を提供してもよい。
本明細書で使用するとき、「有機ランタニド化合物」という用語は、少なくとも1つのランタニド-炭素結合を含有する任意のランタニド化合物を指す。これらの化合物は主に、排他的ではないが、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、「Cp」)、置換シクロペンタジエニル、アリル、及び置換アリル配位子を含有する化合物である。第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適な有機ランタニド化合物としては、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、及びLn(アリル)2Cl(Lnは、ランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表す)が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、第1の実施形態のプロセスにおいて有用なヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子などを含有していてもよい。
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、アルキル化剤を含む。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、アルキル化剤(ヒドロカルビル化剤と称されることもある)には、1つ以上のヒドロカルビル基を別の金属に移すことができる有機金属化合物が含まれる。概して、これらの薬剤には、陽性金属、例えば第1族、第2族、及び第3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)の有機金属化合物が含まれる。第1の実施形態のプロセスで有用なアルキル化剤としては、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「有機アルミニウム化合物」という用語は、少なくとも1つのアルミニウム-炭素結合を有する任意のアルミニウム含有化合物を指す。1つ以上の実施形態では、炭化水素溶媒に可溶性である有機アルミニウム化合物を用いることができる。本明細書で使用するとき、「有機マグネシウム化合物」という用語は、少なくとも1つのマグネシウム-炭素結合を有する任意のマグネシウム含有化合物を指す。1つ以上の実施形態では、炭化水素に可溶性である有機マグネシウム化合物を用いることができる。後に詳細に説明するように、特定の好適なアルキル化剤をハライド化合物の形態とすることができる。ここで、アルキル化剤はハロゲン原子を含み、アルキル化剤は、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を任意に提供することもできる。
第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態では、利用される有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRanX3-nで表されるものが挙げられ、式中、各Raは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合した一価の有機基であり、各Xは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、nは1~3の範囲の整数である。1つ以上の実施形態では、各Raは、独立して、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基は、任意に、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。
一般式AlRnX3-nによって表される、第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤として使用するための有機アルミニウム化合物の種類の例として、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド、及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1-メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリス(2,6-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ-p-トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物の例として、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
プロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドの例として、エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn-オクチルアルミニウムジヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物の例として、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ-n-プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ-n-ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ-n-オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ-p-トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムクロリド、p-トリルエチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムクロリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムクロリド、p-トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物の例として、エチルアルミニウムジクロリド、n-プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n-ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn-オクチルアルミニウムジクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
一般式AlRnX3-nによって表される、第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適な他の有機アルミニウム化合物の例として、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2-エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2-エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機アルミニウム化合物は、アルミノキサンである。好適なアルミノキサンとしては、以下の一般式によって表すことができるオリゴマー直線状アルミノキサンと、
以下の一般式によって表すことができるオリゴマー環式アルミノキサンとが挙げられ、
式中、xは、1~100(例えば、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100)、又は10~50(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50)の範囲の整数であり、yは、2~100(例えば、2、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100)、又は3~20(例えば、3、5、10、15、又は20)の範囲の整数であり、各Rは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合している一価の有機基である。第1の実施形態のプロセスの一実施形態では、各Rは、独立して、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、好ましくは、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。本明細書で使用するとき、アルミノキサンのモル数は、オリゴマーアルミノキサン分子のモル数ではなく、アルミニウム原子のモル数を指す。この慣習は、アルミノキサンを用いる触媒系の技術分野において広く用いられている。
アルミノキサンの調製は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって行うことができる。この反応は、例えば、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解した後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含有される結晶体の水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させる方法、又は(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合するモノマー又はモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法などの既知の方法により行うことができる。
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤として使用するのに好適なアルミノキサン化合物の例として、メチルアルミノキサン(「MAO」)、変性メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及び2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤はMAOを含む。変性メチルアルミノキサンは、5~80パーセント(例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、又は80パーセント)のメチルアルミノキサンのメチル基を、C2~C12ヒドロカルビル基(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11又はC12)、好ましくはイソブチル基で、当業者に既知の手法を用いて置換することによって形成され得る。
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、アルミノキサンは、単独で、又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、メチルアルミノキサン及びアルミノキサン以外の少なくとも1つの有機アルミニウム化合物、例えば、AlRa
nX3-nによって表される有機アルミニウム化合物は、アルキル化剤として組み合わせて使用される。この及び他の実施形態によれば、アルキル化剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、アルミノキサン、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、一実施形態によれば、アルキル化剤は、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミノキサン、又はこれらの組み合わせを含む。米国特許第8,017,695号には、アルミノキサン及び有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いることができる他の例が示されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
上述のように、第1の実施形態のプロセスで使用される好適なアルキル化剤としては、有機マグネシウム化合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、好適な有機マグネシウム化合物としては、一般式MgRb
2で表されるものが挙げられ、式中、各Rbは、独立して、炭素原子を介してマグネシウム原子に結合する一価の有機基である。1つ以上の実施形態では、各Rbは、独立して、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アイル置換アリール、アラルキル、アルカリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、好ましくは、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を任意に含有してもよい。
一般式MgRb
2によって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤として使用するのに好適な有機マグネシウム化合物の例として、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、及びジベンジルマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスの実施形態によるアルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機マグネシウム化合物は、一般式RcMgXcで表され、式中、Rcは、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基である。1つ以上の実施形態では、Rcは、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アイル置換アリール、アラルキル、アルカリル、及びアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、各基は、1個の炭素原子又は基を形成するための適切な最小数の原子から、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。一実施形態では、Xcは、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、各基は、1個の炭素原子から最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子)を含有する。
一般式RcMgXcによって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤としての使用に好適な種類の有機マグネシウム化合物の例としては、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
一般式RcMgXcによって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤としての使用に好適な有機マグネシウム化合物の例として、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、ハロゲン源を含む。本明細書で使用するとき、「ハロゲン源」という用語は、少なくとも1つのハロゲン原子を含む任意の物質を指す。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、ハロゲン源の全て又は一部は、ランタニド化合物、アルキル化剤、又はランタニド化合物及びアルキル化剤の両方によって任意に提供されてもよい。言い換えれば、ランタニド化合物は、ランタニド化合物とハロゲン源の全て又は少なくとも一部との両方として機能することができる。同様に、アルキル化剤は、アルキル化剤とハロゲン源の全て又は少なくとも一部との両方として機能することができる。
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ハロゲン源の少なくとも一部は、触媒系において、別個で異なるハロゲン含有化合物の形態で存在することができる。1つ以上のハロゲン原子を含有する種々の化合物(又はそれらの混合物)をハロゲン源として用いることができる。ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上のハロゲン原子の組み合わせを用いることもできる。本明細書に開示される芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素溶媒などの有機溶媒に可溶性であるハロゲン含有化合物は、第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適である。更に、触媒活性種を形成するために重合系中に懸濁され得る炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物も、第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態において有用である。
第1の実施形態のプロセスにおける使用に好適な種類のハロゲン含有化合物の例としては、元素ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハライド、無機ハライド、金属ハライド、及び有機金属ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、ハロゲン含有化合物は有機金属ハライドを含む。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な元素ハロゲンの例としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。好適な混合ハロゲンのいくつかの具体例として、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。
開示されるプロセスにおいてハロゲン源としての使用に好適なハロゲン化水素の例としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な有機ハライドの例として、t-ブチルクロリド、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、及びメチルブロモホルメートが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な無機ハライドの例として、リントリクロリド、リントリブロミド、リンペンタクロリド、リンオキシクロリド、リンオキシブロミド、ボロントリフルオリド、ボロントリクロリド、ボロントリブロミド、シリコンテトラフルオリド、シリコンテトラクロリド、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラヨージド、ヒ素トリクロリド、ヒ素トリブロミド、ヒ素トリヨージド、セレンテトラクロリド、セレンテトラブロミド、テルルテトラクロリド、テルルテトラブロミド、及びテルルテトラヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な金属ハライドの例として、スズテトラクロリド、スズテトラブロミド、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムトリブロミド、アンチモントリクロリド、アンチモンペンタクロリド、アンチモントリブロミド、アルミニウムトリヨージド、アルミニウムトリフルオリド、ガリウムトリクロリド、ガリウムトリブロミド、ガリウムトリヨージド、ガリウムトリフルオリド、インジウムトリクロリド、インジウムトリブロミド、インジウムトリヨージド、インジウムトリフルオリド、チタンテトラクロリド、チタンテトラブロミド、チタンテトラヨージド、亜鉛ジクロリド、亜鉛ジブロミド、亜鉛ジヨージド、及び亜鉛ジフルオリドが挙げられるが、これらに限定されない。
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な有機金属ハライドの例として、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、トリブチルスズクロリド、及びトリブチルスズブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、ハロゲン源は有機金属ハライドを含む。例えば、特定の実施形態によれば、ハロゲン源はジエチルアルミニウムクロリドを含み、これは上記のように、ランタニド系触媒系中のアルキル化剤としても機能することができる。したがって、第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ハロゲン源は、本明細書に開示される触媒系中のアルキル化剤によって全て又は部分的に提供されてもよい。
第1の実施形態のプロセスにおいて用いられるランタニド系触媒組成物は、前述の触媒構成成分を組み合わせるか又は混合することによって形成され得る。用語「触媒組成物」及び「触媒系」は、本明細書で言及されるとき、構成成分の単純な混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる様々な構成成分の合成物、構成成分の化学反応生成物、又は前述したものの組み合わせを包含する。用語「触媒組成物」及び「触媒系」は、本明細書において互換的に使用され得る。
共役ジエンモノマー
上述したように、第1の実施形態のプロセスによれば、変性高シスポリジエンポリマーの生成プロセスの一部として、ある量の共役ジエンモノマーが重合される。共役ジエンは、単結合(すなわち、-C-C-)によって分離されている、2つの炭素-炭素二重結合(すなわち、2つの-C=C-結合)を有する化合物である。したがって共役ジエンは、少なくとも1つの-C=C-C=C-部分を含有する。本明細書に開示される第1~第3の実施形態のポリマー鎖に存在する、又は変性高シスポリジエンポリマー内に含まれる、第1の実施形態のプロセスで使用される共役ジエンモノマーの特定の構造は、様々であり得る。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、共役ジエンモノマーは、1,3-共役ジエンであり、好ましい実施形態では、共役ジエンモノマーの少なくとも99重量%は、1,3-共役ジエンモノマーである。第1~第3の実施形態によれば、1種以上の共役ジエンモノマーを利用することができる(これにより、得られるポリマー中に存在する)。本明細書において、1種以上の共役ジエンモノマーと称することにより、共役ジエンモノマーが、全てが1つの(種類の)式又は混合した(種類の)式を含み得ることを意味する。非限定的な例として、2種の共役ジエンモノマーを含有する、ある量の共益ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンとイソプレンとの組み合わせを含み得る。本明細書に開示する第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1-3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロヘプタジエン、又は1,3-シクロオクタジエンのうちの少なくとも1つを含む。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン又はイソプレン、より好ましくは1,3-ブタジエンを含む。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、共役ジエンモノマーは、イソプレンと組み合わせて1,3-ブタジエンを含む。第1~第3の実施形態の特定の特に好ましい実施形態では、用いられる共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンのみである。
官能性化合物
上記のように、第1の実施形態のプロセスは、リビング末端ポリマー鎖を、式I又は式IIから選択される官能化化合物と反応させることを含む。また上述のように、第2及び第3の実施形態によれば、変性高シスポリジエンは、式I又は式IIの官能化化合物由来の残基を有する共役ジエンモノマーの重合により生じる少なくとも1つのポリマー鎖を含む。官能化化合物由来の残基と称することにより、ポリマー鎖が官能化化合物に結合していることを示すと意味する(ポリマー鎖と官能化化合物との間の結合又は付着点は、以下でより詳細に論じられる)。
第1~第3の実施形態によると、構造Iは以下のとおりである。
式中、nは0~16の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16)である。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、構造Iを有する官能化化合物が利用され、nは、好ましくは1~10、より好ましくは1~3の整数である。構造Iを有する例示的な化合物としては、以下に限定されないが、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリジノン(N-ビニルピロリジノン、1-ビニル-2-ピロリジノン、及びN-ビニルピロリドンとしても知られる)、N-ビニルピペリドン(N-ビニル-2-ピペリドン又は1-ビニル-2-ピペリドンとしても知られる)、N-ビニル-4-ブチルピロリドン、N-ビニル-4-プロピルピロリドン、N-ビニル-4-メチルカプロラクタム、N-ビニル-6-メチルカプロラクタム、及びN-ビニル-7-ブチルカプロラクタムが挙げられる。
第1~第3の実施形態によると、構造IIは以下のとおりである。
式中、R1は、H、及びC1~C20のヒドロカルビル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、又はC20)から選択され、R2は、H、及びC1~C20のヒドロカルビル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、又はC20)から選択される。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、官能化化合物は構造を有し、R1、R2又はその両方は、C1~C10のヒドロカルビル、より好ましくはC1~C4のヒドロカルビルから選択される。第1~第3の実施形態によれば、R1及び/又はR2がヒドロカルビルである場合、ヒドロカルビルは好ましくはアルキルであり、直鎖又は分枝鎖であってもよい。
官能化化合物が構造Iを有する第1~第3の実施形態では、ポリマー鎖は、窒素に結合したビニル基由来のβ炭素(この場合、ビニル基由来のα炭素及びβ炭素は、もはや二重結合していない)及び/又はカルボニルの炭素(この場合、この炭素は、もはや酸素に二重結合していない)に結合してよい。上記のポリマー鎖の結合点は、構造I-A及びI-Bで以下に示しており、
*は、構造Iの官能化化合物へのポリマー鎖の結合点を示す。
特に、ポリマー鎖が、I-Aに示される官能化化合物に結合するとき、環は開放され、以下に示される構造I-A1又はI-A2が生じてもよい(ここでは、構造の残りの部分が官能化化合物の残基であるポリマー鎖としてcisBRを示す)。また、結合点がI-Aに示されるものであるとき、2つ以上のポリマー鎖が官能化化合物に結合することができ、以下のI-A2では、官能化化合物の残基に2本のポリマー鎖が結合していることにも留意されたい。
官能化化合物が構造IIを有する第1~第3の実施形態では、ポリマー鎖は、窒素に結合したビニル基由来のβ炭素(この場合、ビニル基由来のα炭素及びβ炭素は、もはや二重結合していない)、又はカルボニルの炭素(この場合、この炭素は、もはや酸素に二重結合していない)のいずれかに結合してよい。上記のポリマー鎖の結合点は、構造II-A及びII-Bで以下に示しており、
*は、構造IIの第1の官能化化合物から生じた第1の官能化基へのポリマー鎖の結合点を示す。
第1~第3の実施形態によれば、リビング末端ポリマー鎖の変性に使用される(すなわち、第1の実施形態のプロセスによる)、又は変性高シスポリジエンポリマー中に残基として存在する(すなわち、第2及び第3の実施形態による)、式I又はIIの官能化化合物の量は様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、官能化化合物は、10:1~100:1(例えば、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、又は100:1)、好ましくは20:1~80:1(例えば、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1)、より好ましくは30:1~60:1(例えば、30:1、32:1、34:1、35:1、36:1、38:1、40:1、42:1、44:1、45:1、46:1、48:1、50:1、52:1、54:1、55:1、56:1、58:1、又は60:1)のモル比で使用され、モル比は、官能化化合物のモル数:ランタニド化合物中のランタニドのモル数に基づく。
カップリング剤
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、リビング末端ポリマー鎖を、ハロゲン化ケイ素からなる群から選択されるカップリング剤を用いて式I又は式IIの官能化化合物と反応させることによって、生成される中間生成物をカップリングすることを含む。第2及び第3の実施形態によれば、変性高シスポリジエンポリマーは、カップリング剤由来の残基を含有する。より具体的には、第1及び第2の実施形態による変性高シスポリジエンポリマーでは、カップリング剤由来の残基は、そこに結合した少なくとも1つのポリマー鎖を有し(ポリマー鎖は、式I又は式IIの官能化化合物との反応から生じるポリマー鎖を指す)、カップリング剤はハロゲン化ケイ素から選択され、カップリング剤由来の残基は、(a)のポリマー鎖によって置換された少なくとも1つのハライドを有する。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、カップリング剤はハロゲン化ケイ素である。
第1の実施形態のプロセスによれば、共役ジエンモノマーが重合してリビング末端を有するポリマー鎖を生成した後、カップリング剤を重合系に添加する。したがって、このようなプロセスによれば、カップリング剤は、ランタニド触媒系又はその成分を添加する前にモノマー溶液に添加されない。
第1~第3の実施形態によれば、ハロゲン化ケイ素カップリング剤の特定の構造は様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、カップリング剤は、式III:Si(R*)n(Y)4-n又は式IV:R**[SiY3]2を有する。式IIIによると、各R*は、独立して、1~20個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、又はC20)、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する一価の有機基から選択される。式IVによると、R**は、1~20個の炭素原子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、又はC20)、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するヒドロカルビレン基である。特定の好ましい実施形態では、カップリング剤が式IVを有する場合、SiY3基は同じ炭素原子に結合せず、必然的に、R**は、少なくとも2個の炭素原子(例えば、2~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子)を有する。ヒドロカルビレン基R**は飽和又は不飽和であってもよく(すなわち、1つ以上の二重結合を含有してもよい)、脂肪族又は芳香族であってもよい。R**のヒドロカルビレン基は、直鎖又は分枝鎖であってもよい。式III及びIVによると、カップリング剤は、少なくとも1つのケイ素原子(Si)を含有し、各Yは、ハロゲン原子又はC1~C10(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、又はC10)、好ましくは、C1~C6、より好ましくはC1~C2のアルコキシであり、nは、0~3、好ましくは0~2の整数である。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、各Yはハロゲンである。当業者であれば、式IIIのnが0であり、Yがハロゲンである場合、カップリング剤は4つのハロゲンを含有し、金属テトラハライドと呼ばれ得ることを理解するであろう。式IIIによると、R*は、上記のような数の炭素原子を有するアルキル基及びアリール有機基から選択することができる。好ましくは、式III又は式IVのいずれかにおけるハロゲンは、塩素又は臭素であり、最も好ましくは塩素である。
カップリング剤が式IIIを有し、ハロゲン化ケイ素である第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、好適なカップリング剤の非限定的な例としては、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシランなどが挙げられる。
カップリング剤が式IVを有し、Mがケイ素である第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、好適なカップリング剤の非限定的な例としては、1,1-ビス(トリクロロシリルメチル)エチレン、1,1-ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレン、1,3-ビス(トリクロロシリル)プロパン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,6-ビス(トリクロロシリルメチル)ヘキサン、1,6-ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、1,10-ビス(トリクロロシリル)デカン、1,2-ビス(トリクロロシリル)デカン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,4-ビス(トリクロロシリル)ベンゼン、1,4-ビス(トリクロロシリルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリクロロシリルメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリクロロシリルプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。特定の好適なカップリング剤は、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania)から入手可能である。
第1~第3の実施形態によれば、リビング末端ポリマー鎖を、ハロゲン化ケイ素からなる群から選択されるカップリング剤を使用して式I又は式IIの官能化化合物と反応させることにより生成される(すなわち、第1の実施形態のプロセスによる)、又は、残基として変性高シスポリジエンポリマー中に存在する(すなわち、第2及び第3の実施形態による)中間生成物のカップリングに使用されるカップリング剤の量は、様々であり得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、カップリング剤は、0.2:1~10:1(例えば、0.2:1、0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、又は10:1)、好ましくは1:1~5:1(例えば、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1)のモル比で使用され、モル比は、カップリング剤のモル数:ランタニド化合物中のランタニドのモル数に基づく。
変性高シスポリジエンポリマーの特性
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量と、少なくとも40、好ましくは45~80の100℃におけるムーニー粘度ML1+4とを有する、変性高シスポリジエンポリマーをもたらす。同様に上述したように、第2の実施形態の変性高シスポリジエンポリマーは、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量と、少なくとも40、好ましくは45~80の100℃におけるムーニー粘度ML1+4とを有する。第2の実施形態の変性高シスポリジエンポリマーは、第1の実施形態のプロセスを使用して調製され得る。したがって、第1の実施形態の特定の実施形態に関する上記の議論を、第2の実施形態のポリマー、並びに第3の実施形態の組成物で使用されるポリマーに可能なかぎり完全に適用することが理解されるべきである。第3の実施形態のタイヤゴム組成物は、第2の実施形態の変性高シスポリジエンポリマー又は第1の実施形態によるプロセスによって製造された変性高シスポリジエンポリマーのいずれかを利用するため、第3の実施形態の変性高シスポリジエンポリマーもまた、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量と、少なくとも40、好ましくは45~80の100℃におけるムーニー粘度ML1+4とを有するものとして理解され得る。シス1,4-結合含量が少なくとも92%であると述べることによって、92%以上(例えば、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%以上)であることを意味し、これは、92~99%、92~98%、92~97%、92~96%、92~95%などの範囲を含むと理解されるべきである。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーのシス1,4-結合含量は、少なくとも94%である。シス1,4-結合含量が少なくとも94%であると述べることによって、94%以上(例えば、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%以上)であることを意味し、これは、94~99%、94~98%、94~97%、94~96%、94~95%などの範囲を含むと理解されるべきである。本明細書で言及されるシス1,4-結合含量は、FTIR(フーリエ変換赤外線分光法)によって決定される。具体的には、ポリマー試料をCS2に溶解し、次いでFTIRに供する。100℃におけるムーニー粘度ML1+4が少なくとも40であると述べることによって、40以上(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100以上)であることを意味する。好ましくは、第1~第3の実施形態によれば、100℃におけるムーニー粘度ML1+4は、100以下、好ましくは45~80(例えば、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、65、68、70、72、74、75、76、78、又は80)又は40~80(例えば、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、65、68、70、72、74、75、76、78、又は80)である。
第1~第3の実施形態によれば、変性高シスポリジエンポリマーの他の特性は変化し得る。例えば、ポリマーは、様々なMw、Mn、及びMw/Mn値を有し得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーは以下のうち少なくとも1つを満たす。(a)150,000~400,000g/モル(例えば、150,000、175,000、200,000、225,000、250,000、275,000、300,000、325,000、350,000、375,000、又は400,000グラム/モル)、好ましくは200,000~350,000グラム/モル(例えば、200,000、225,000、250,000、275,000、300,000、325,000、又は350,000グラム/モル)、より好ましくは220,000~300,000グラム/モル(例えば、220,000、225,000、250,000、275,000、又は300,000グラム/モル)のMnを有する。(b)80,000~250,000グラム/モル(例えば、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、又は200,000グラム/モル)、好ましくは90,000~200,000グラム/モル(例えば、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、又は200,000グラム/モル)、より好ましくは100,000~150,000グラム/モル(例えば、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、又は180,000グラム/モル)のMnを有する。(c)1.5~3.5(例えば、1.5、1.7、1.9、2.1、2.3、2.5、2.7、2.9、3.1、3.3、又は3.5)、好ましくは1.8~3(例えば、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8、又は3)、より好ましくは2~2.5(例えば、2、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5)のMw/Mnを有する。又は、(d)40~80(例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80)の100℃におけるムーニー粘度ML1+4を有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれを満たす。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれの好ましい範囲を満たす。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれのより好ましい範囲を満たす。Mnは、グラム/モル(GPCによる)の数平均分子量を示し、Mwは、グラム/モル(GPCによる)の重量平均分子量を示し、Mw/Mnは、ポリマーの分子量分布又は多分散性を示す。一般に、これらのポリマーのMn及びMwは、問題のポリマーのポリスチレン基準及びマルク-ハウインク定数を用いて較正したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより測定することができる。
タイヤゴム組成物
上述のように、本明細書に開示される第3の実施形態は、第2の実施形態の変性高シスポリジエンポリマー又は第1の実施形態のプロセスによって生成された変性高シスポリジエンポリマーを含むタイヤゴム組成物を目的とする。より具体的には、第3の実施形態のタイヤゴム組成物は、(a)10~100phr、好ましくは30~80phrの、第2の実施形態による、又は第1の実施形態によって生成された変性高シスポリジエンと、(b)0~90phr、好ましくは20~70phrの、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーと、(c)10~100phrの少なくとも1つのカーボンブラック充填剤及び0~100phrの少なくとも1つのシリカ充填剤と、を含む。第3の実施の形態によれば、タイヤゴム組成物は、好ましくはタイヤ構成要素、より好ましくはタイヤトレッドに含有される。したがって、本明細書には、第3の実施形態によるゴム組成物から作製されたタイヤトレッドも開示される。
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物中に存在する変性高シスポリジエン(a)の量は、10~100phr(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100phr)で変化し得る。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、ゴム組成物中に存在する変性高シスポリジエン(a)の量は、30~80phr(例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80phr)である。前述の範囲内の(a)の量、例えば、40~80phr、50~80phr、40~70phr、40~60phrなどもまた、第3の実施形態のゴム組成物中で利用され得る。
タイヤゴム組成物用の他のゴム
また上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は、0~80phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、又は80phr)の、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ブタジエン-イソプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマーを含み得る。第3の実施形態の好ましい実施形態では、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマー(b)は、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、少なくとも1つのジエンモノマー含有ポリマー(b)の量は、20~70phr(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70phr)である。前述の範囲内の(b)の量、例えば、20~60、20~50、30~60、40~60などもまた、第3の実施形態のゴム組成物中で利用され得る。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、1つ以上の追加のゴムを、すなわち、(a)及び(b)に加えて含む。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物用エラストマー成分の100phr全体が、(a)と(b)との組み合わせからなる。換言すれば、このような実施形態では、(a)及び(b)以外に他のゴムが存在しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ポリイソプレンを含有しない(すなわち、0phrのポリイソプレン)。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、(a)による変性高シスポリブタジエン以外のポリブタジエンを含有しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は天然ゴムを含有せず、ポリイソプレンを含有しない。
タイヤゴム組成物用充填剤
上述のように、第3の実施形態によれば、タイヤゴム組成物はまた、充填剤成分として、10~100phr(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100phr)の少なくとも1つのカーボンブラック充填剤と、0~100phr(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100phr)の少なくとも1つのシリカ充填剤と、を含む。換言すれば、上記によれば、カーボンブラック充填剤は常に存在するとみなすことができ、シリカ充填剤は任意に存在する。第3の実施形態の好ましい実施形態によれば、カーボンブラック充填剤及び存在する任意のシリカ充填剤の両方が補強充填剤である。第3の実施形態の特定の実施形態では、シリカ充填剤は、少なくとも5phr、5~200phr、5~150phr、5~100phr、少なくとも20phr、20~200phr、20~150phr、20~100phr、少なくとも50phr、50~200phr、50~150phr、50~100phrの量、又は前述の範囲のうちの1つ内の量で存在する。
本明細書で使用するとき、「補強カーボンブラック充填剤」、「補強シリカ充填剤」、及び「補強充填剤」について使用される用語「補強」は、一般に、補強として従来説明されている充填剤、並びに半補強と従来説明される場合がある充填剤の両方の充填剤を包含すると理解されたい。従来、用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約100m2/g超、場合によっては、100m2/g超、約125m2/g超、125m2/g超、又は更に約150m2/g超、又は150m2/g超である、微粒子材料を指すために使用される。あるいは(又は加えて)、用語「補強充填剤」を伝統的に用いて、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する微粒子材料を指すためにも使用できる。伝統的に、用語「半補強充填剤」は、粒径、表面積(N2SA)のいずれか、又は両方において、非補強充填剤(以下で考察するとおり)と補強充填剤との中間である充填剤を指すために使用される。本明細書において開示されている第3の実施形態のある種の実施形態では、用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約20m2/g以上(20m2/g以上を含む)、約50m2/g超(50m2/g超を含む)、約100m2/g超(100m2/g超を含む)、及び約125m2/g超(125m2/g超を含む)である、粒子材料を指すために本明細書で使用される。本明細書において開示されている第3の実施形態のある種の実施形態では、用語「補強充填剤」は、約10nm~約1000nm(10nm~1000nmを含む)、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する、粒子材料を指すために使用される。
第3の実施形態によれば、使用されるカーボンブラックの特定の種類は様々であり得る。一般に、第3の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用するための好適なカーボンブラックには、少なくとも約20m2/g(少なくとも20m2/gを含む)及び、より好ましくは、少なくとも約35m2/g~約200m2/g又はそれより高い(35m2/g~200m2/gを含む)の表面積を有するものを含めた、一般に入手可能な商用製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、中補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第3の実施形態のある種の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックの2種以上の混合物を含む。好ましくは、第3の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第3の実施形態のある種の実施形態において使用するのに好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって指定されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
補強シリカ充填剤が第3の実施形態のタイヤゴム組成物に利用される場合、少なくとも1つの補強シリカ充填剤用の特定の種類のシリカは、様々であり得る。第3の実施形態のある種の実施形態において使用するのに好適な補強シリカ充填剤の非限定例としては、以下に限定されないが、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。第3の実施形態のある種の実施形態において使用するのに好適な他の補強シリカ充填剤としては、以下に限定されないが、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4など)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4.3SiO4.5H2Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3.CaO2SiO2など)などが挙げられる。列挙された補強シリカ充填剤の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填剤が好ましい。このような補強シリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから一次凝集体へと強力に結合し、順次、二次凝集体へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。表面積は、BET法で測定すると、様々な補強シリカ充填剤の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、100m2/g~400m2/g(例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、又は400m2/g)、150m2/g~350m2/g、200m2/g~300m2/g、又は150m2/g~250m2/gの表面積(BET法で測定される)を有する補強シリカ充填剤を含む。
本明細書に開示される第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、5.5~8(例えば、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、7.9、又は8)、6~8(例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、又は8)、6~7.5、6.5~8、6.5~7.5、又は5.5~6.8のpHを有する補強シリカ充填剤を含む。第3の実施形態の特定の実施形態で使用することができる市販の補強シリカ充填剤のいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって製造された、Hi-Sil(登録商標)EZ120G、Hi-Sil(登録商標)EZ120G-D、Hi-Sil(登録商標)134G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G-D、Hi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)190G-D、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G-D、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243LD、Hi-Sil(登録商標)255CG-D、Hi-Sil(登録商標)315-D、Hi-Sil(登録商標)315G-D、Hi-Sil(登録商標)HDP 320Gなど、が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、複数の有用な商用の異なる補強シリカ充填剤もまた、Evonik Corporation(例えば、Ultrasil(登録商標)320 GR、Ultrasil(登録商標)5000 GR、Ultrasil(登録商標)5500 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)VN2 GR、Ultrasil(登録商標)VN2、Ultrasil(登録商標)VN3、Ultrasil(登録商標)VN3 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)7005、Ultrasil(登録商標)7500 GR、Ultrasil(登録商標)7800 GR、Ultrasil(登録商標)9500 GR、Ultrasil(登録商標)9000 G、Ultrasil(登録商標)9100 GR)及びSolvay(例えば、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1200MP、Zeosil(登録商標)Premium、Zeosil(登録商標)195HR、Zeosil(登録商標)195GR、Zeosil(登録商標)185GR、Zeosil(登録商標)175GR、及びZeosil(登録商標)165 GR)から入手可能である。
第3の実施形態の特定の実施形態では、1つ以上のシリカカップリング剤もまた、(任意に)利用され得る。シリカカップリング剤は、ゴム組成物中のシリカ充填剤の凝集の防止又は低減に有用である。シリカ充填剤粒子の凝集は、ゴム組成物の粘度を上昇させると考えられ、したがって、この凝集を防止することにより、粘度が低下し、ゴム組成物の加工性及びブレンドが改善される。
概して、シラン及び構成成分、又はポリマー、特に加硫性ポリマーと反応可能な部分を有するものなどの任意の従来のシリカカップリング剤の種類が使用可能である。シリカカップリング剤は、シリカとポリマーとの間の連結架橋として作用する。第3の実施形態のある種の実施形態において使用するのに好適なシリカカップリング剤としては、アルキルアルコキシ、メルカプト、ブロックされたメルカプト、硫化物含有(例えば、一硫化物をベースとするアルコキシ含有、二硫化物をベースとするアルコキシ含有、四硫化物をベースとするアルコキシ含有)、アミノ、ビニル、エポキシ、及びこれらの組み合わせなどの基を含むものが挙げられる。ある種の実施形態では、シリカカップリング剤は、前処理されたシリカの形態でゴム組成物に添加されてもよい。当該前処理されたシリカは、ゴム組成物に添加される前にシランで前処理されている。前処理されたシリカを使用することにより、1つの成分に2つの成分(すなわち、シリカとシリカカップリング剤)を添加することが可能になり、これによって概してゴムの配合が容易になる傾向がある。
シリカカップリング剤が第3の実施形態によるタイヤゴム組成物中で利用される場合、使用される量は様々であり得る。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、いかなるシリカカップリング剤も含まない。第3の実施形態の他の実施形態では、シリカカップリング剤は、シリカカップリング剤の総量のシリカ充填剤に対する比が、0.1:100~1:5(すなわち、シリカ100部に対して0.1~20重量部)、1:100~1:10、1:100~1:20、及び1:100~1:25、並びに約1:100~約0:100、及び1:100~0:100となるように、十分な量で存在する。第3の実施形態による特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、0.1~15phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15phr)、0.1~12phr、0.1~10phr、0.1~5phr、1~15phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15phr)、1~10phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10phr)、1~5phr、又は1~3phrの量のシリカカップリング剤を含む。
タイヤゴム組成物用可塑剤
第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、炭化水素樹脂及び油のうちの少なくとも1つを含む可塑性システムを更に含む(また、備える)。
芳香族、ナフテン系、及び低PCA油が挙げられるがこれらに限定されない、様々な種類の油を利用してよい。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含有物を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,62nd editionに見出すことができる。好適な低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。好適なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。好適なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。好適な重ナフテン系油は、SHELLFELX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。好適な低PCA油としてはまた、野菜、木の実及び種子から採取できるものなど、様々な植物起源の油も挙げられる。非限定例としては、以下に限定されないが、ダイズ油、ヒマワリ油(少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%のオレイン酸含有量を有する高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられる。一般に、ほとんどの用途では、タイヤゴム組成物中に使用される油の総量は、1~70phr(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70phr)、2~60phr、3~50phrの範囲である。第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、10phr未満(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0phr)、5phr未満、1~5phr未満、又は更には0phrなどのごくわずかの量の油を含む。
可塑性樹脂を含む様々な種類の炭化水素樹脂が利用されてもよい。本明細書で使用するとき、可塑性樹脂という用語は、室温(23℃)において固体である化合物を指し、通常、少なくとも5phrとなる使用される量で、ゴム組成物中で混和性である。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、少なくとも1種の樹脂を約5~約60phr(例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60phr)、5~60phr、5~20phr、約25~約60phr、25~60phr又は30~50phr含む。ある特定のこのような実施形態では、少なくとも1つの炭化水素樹脂は、可塑性樹脂である。一般に、可塑性樹脂は希釈剤として作用し、一般に、非混和性である粘着性樹脂と対比的なものとなり得、移動してゴム組成物の表面に粘性をもたらすことができる。可塑性樹脂が利用される第3の実施形態のある種の実施形態では、可塑性樹脂は、炭化水素樹脂を含み、この中に含まれているモノマーに応じて、脂肪族タイプ、芳香族タイプ、又は脂肪族/芳香族タイプとすることができる。第3の実施形態のゴム組成物において使用するのに好適な可塑性樹脂の例としては、以下に限定されないが、シクロペンタジエン(CPDと略称)又はジシクロペンタジエン(DCPDとして略称)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びC5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる。このような樹脂は、例えば、個々に、又は組み合わせて使用することができる。第3の実施形態の特定の実施形態では、30℃超(好ましくは、40℃超及び/又は120℃以下若しくは100℃以下)のTg、400~2000グラム/モル(好ましくは、500~2000グラム/モル)の数平均分子量(Mn)、及び3未満(好ましくは、2未満)の多分散度指数(PI)(PI=Mvv/Mnであり、Mvvは、樹脂の重量平均分子量である)のうちの少なくとも1つを満たす可塑性樹脂が使用される。樹脂のTgは、ASTM D3418(1999)に準拠して、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。樹脂のMw、Mn、及びPIは、THF、35℃、濃度1g/1、流速1ミリリットル/分、注入前に0.45μmの気孔率を有するフィルターを通して濾過した溶液、ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正、一連の3つの「Waters」カラムのセット(「Styragel」HR4E、HR1、及びHR0.5)、示差屈折率計(「Waters 2410」)及びその関連する操作ソフトウェア(「Waters Empower」)による検出を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定することができる。
タイヤゴム組成物用硬化パッケージ
第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、硬化パッケージを更に含む(また、備える)。一般的に、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1種の加硫剤と、少なくとも1種の加硫促進剤と、少なくとも1種の加硫活性化剤と、任意に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤と、を含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として働く。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当分野で公知であり、所望の加硫特性に基づいて、当業者により選択され得る。
第1~第4の実施形態の特定の実施形態で使用する好適な加硫剤の種類の例としては、硫黄又は過酸化物系の硬化性構成成分が挙げられる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。一般に、加硫剤は、1~7.5phrを含む、1~5phr、好ましくは1~3.5phrを含む、0.1~10phrの範囲の量で使用してもよい。
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。好適な加硫促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバメート加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、使用される加硫促進剤の分量は、0.1~10phr、好ましくは0.5~5phrの範囲である。
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機構成成分及び有機構成成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及びこれらのそれぞれの亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般に、使用される加硫活性化剤の量は、0.1~6phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、又は6phr)、好ましくは0.5~4phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3 3.5、又は4phr)の範囲である。
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、以下に限定されないが、Santogard製のPVI(シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。一般的に、使用される加硫阻害剤の量は、0.1~3phr、好ましくは0.5~2phrである。
タイヤゴム組成物用の他の成分
本明細書に開示される第3の実施形態のゴム組成物に任意に添加され得る様々な他の成分としては、ワックス、加工助剤、粘着付与樹脂、補強樹脂、解膠剤、及び酸化防止剤が挙げられる。
第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤゴム組成物は、1~36個の炭素原子(又は5~25個又は10~20個の炭素原子)を有する脂肪酸の金属塩を含まない(すなわち、0.1phr未満又はより好ましくは0phrを含有する)。このような脂肪酸塩の例としては、以下の脂肪酸、すなわち、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、オクタン酸、ドデカン酸、オクタン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、及びエイコサン酸の塩が挙げられる。このような脂肪酸の例としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属を伴うものが挙げられる。
第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、タイヤゴム組成物は、脂肪族一級アミン又は脂環式一級アミン化合物を含まない(すなわち、0.1phr未満又はより好ましくは0phrを含有する)。このようなアミン化合物は、ゴム組成物中での使用に既知であり、改善された破断伸び特性をもたらす。例示的なこのようなアミンとしては、ヘプチルアミン、ステアリルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、及び2-エチルヘキシルアミンが挙げられる。
第3の実施形態の特定の特に好ましい実施形態では、タイヤゴム組成物は、上記の脂肪酸金属塩及び脂肪族一級アミン/脂環式一級アミン化合物の両方を含まない。
ゴム組成物の調製方法
本明細書に開示する第3の実施形態によるゴム組成物は、一般に、(上記で開示した)ゴム組成物の成分を、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらの成分をバンバリーミキサー又はロール機で混練するなど、共に混合することによって形成することができる。これらの方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階とを含む。非生産用マスターバッチ段階という用語は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階であると理解されている。用語、最終生産用混合段階も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。第3の実施形態の特定の実施形態では、1つの非生産用マスターバッチ混合段階が、ゴム組成物を調製する際に使用されてよい。第3の実施形態の特定の実施形態では、2つ以上の非生産用マスターバッチ混合段階が使用される。シリカ及びシリカ結合剤が用いられる第3の実施形態の特定の実施形態では、複数の非生産用マスターバッチ混合段階が使用され、シリカ充填剤の少なくとも一部は、第2の非生産用マスターバッチ混合段階(再ミル粉砕段階としても記載される)において添加され、ある種のこのような実施形態では、全てのシリカカップリング剤は、第2の非生産用マスターバッチ混合段階(シリカ充填剤の少なくとも一部分と共に)のみにおいて添加され、シリカカップリング剤は、初期の非生産用マスターバッチ混合段階では追加されない。
第3の実施形態の特定の実施形態では、マスターバッチ混合段階は、タンデム混合又は相互噛合混合のうちの少なくとも1つを含む。タンデム混合は、2つの混合チャンバを有し、各チャンバが1組の混合用ローターを有する、ミキサーを使用することを含むものとして理解することができ、一般に、2つの混合チャンバは、一次ミキサーである上部混合器と一緒に積層され、下部ミキサーは、上部又は一次ミキサーからバッチを受け入れる。ある特定の実施形態では、一次ミキサーは噛み合うローターを利用し、他の実施形態では、一次ミキサーは接線方向のローターを利用する。好ましくは、下部ミキサーは、噛み合うローターを利用する。噛み合い混合は、噛み合うローターを有するミキサーの使用を含むものとして理解され得る。噛み合うローターとは、ローターが互いに噛み合うように、セット内の1つのローターの大径が、セット内の対向するローターの小径と相互作用する。噛み合うローターは、ローター間の相互作用により、均一の速度で駆動されなければならない。噛み合うローターとは対照的に、接線方向ローターとは、各々のローターが、側面と称され得る空洞内で互いに独立して回転する、1組のローターを指す。一般に、接線方向のローターを有するミキサーは、ラムを含むのに対し、ラムは、噛み合うローターを有するミキサーでは必要ではない。
第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約130℃~約200℃の温度で行われる非生産用マスターバッチ混合段階(複数可)を伴うプロセスによって調製される。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の望ましくない事前硬化を回避するために加硫温度を下回る温度で行われる最終生産用混合段階を伴うプロセスによって調製される。したがって、生産用混合段階の温度は、約120℃を超えるべきでなく、典型的には約40℃~約120℃、又は約60℃~約110℃、特に、約75℃~約100℃である。
以下の実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特定の実施例に対する多くの変更が可能である。具体的には、異なる共役ジエンモノマーを使用し、異なる官能性化合物(すなわち、上記の構造I又は構造IIによる)を使用し/有し、かつ、異なるカップリング剤(上述)を使用し/有し、又は官能性化合物とカップリング剤との異なる組み合わせを使用し/有して、作製された変性高シスポリジエンポリマーを調製し、ゴム組成物中で使用できることが理解されるべきである。また、高シスポリジエンポリマー又は他のかかるポリマー(前述)は、実施例で用いられる相対量、組成、又はこれらの両方において異なる(すなわち、全段で開示したように完全に異なる)成分(例えば、更なるゴム、充填剤、硬化パッケージ成分)と共にゴム組成物中で用いられ得ることも理解するべきである。
以下に詳細に説明するように、実施例1~4で高シスポリジエンポリマーを生成した。実施例4は、第2の実施形態の例示的な高シスポリジエンポリマーであり、第1の実施形態の例示的なプロセスに従って生成されるとみなされ得、実施例1~3は、比較例又は対照例とみなされるべきである。次いで、実施例1~4で生成したポリマーを使用して、実施例5でゴム組成物を調製した。ゴム組成物5-4は、本明細書に開示される第3の実施形態の例示とみなされ得、実施例5-1、5-2、及び5-3は、比較例又は対照例とみなされるべきである。
一般的な重合手順
実施例1:窒素をパージした乾燥2-ガロン容の反応器に、1184グラムのヘキサン及び2893グラムのヘキサン中21.4重量%の1,3-ブタジエン(Bd)溶液を添加し、ヘキサン中15.0重量%のBd溶液(4128グラム又は11.45モルのBd)を得た。溶液を22℃に維持した。7.17ミリリットルのトルエン中4.32モル(M)のメチルアルミノキサン、1.7gのヘキサン中21.4重量%の1,3-ブタジエン、0.61ミリリットルのシクロヘキサン中0.508Mのネオジムベルサテート、6.31ミリリットルのヘキサン中1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド、及び1.16ミリリットルのヘキサン中1.07Mのジエチルアルミニウムクロリドを混合することにより、事前形成触媒を調製した。触媒を20分間エージングして、反応器内に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。触媒を添加してから約60分後に、重合混合物を室温に冷却した。結果として得られたポリマーセメントを、5gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを含有する12リットルのイソプロパノールを用いてクエンチし、凝固させ、その後ドラム乾燥させた。得られたポリマーのムーニー粘度(ML1+4)は、大型ローター、ウォームアップ時間1分間、試験時間4分間でAlpha Technologies Money粘度計を用いて、100℃にて測定した。分子量及び多分散性を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。ポリマーのポリマー微細構造を赤外分光分析によって測定した。結果として得られたポリマーの特性を表1にまとめる。
実施例2:窒素をパージした乾燥2-ガロン容の反応器に、1294グラムのヘキサン及び2695グラムのヘキサン中21.8重量%の1,3-ブタジエン(Bd)溶液を添加し、ヘキサン中15.0重量%のBd溶液(4309グラム又は11.95モルのBd)を得た。溶液を22℃に維持した。5.69ミリリットルのトルエン中4.32Mのメチルアルミノキサン、1.5gのヘキサン中21.8重量%の1,3-ブタジエン、0.48ミリリットルのシクロヘキサン中0.508Mのネオジムベルサテート、5.01ミリリットルのヘキサン中1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド、及び0.92ミリリットルのヘキサン中1.07Mのジエチルアルミニウムクロリドを混合することにより、事前形成触媒を調製した。触媒を20分間エージングして、反応器内に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。触媒を添加してから約60分後に、重合混合物を室温に冷却した。結果として得られたポリマーセメントを、5gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを含有する12リットルのイソプロパノールを用いてクエンチし、凝固させ、その後ドラム乾燥させた。結果として得られたポリマーの特性を表1にまとめる。
実施例3:窒素をパージした乾燥2-ガロン容の反応器に、1308グラムのヘキサン及び2951グラムのヘキサン中21.9重量%の1,3-ブタジエン(Bd)溶液を添加し、ヘキサン中16.5重量%のBd溶液(4309グラム又は11.95モルのBd)を得た。溶液を22℃に維持した。7.48ミリリットルのトルエン中4.32Mのメチルアルミノキサン、1.7gのヘキサン中21.9重量%の1,3-ブタジエン、0.64ミリリットルのシクロヘキサン中0.508Mのネオジムベルサテート、6.59ミリリットルのヘキサン中1.03Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド、及び1.21ミリリットルのヘキサン中1.07Mのジエチルアルミニウムクロリドを混合することにより、事前形成触媒を調製した。触媒を20分間エージングして、反応器内に充填した。次いで、反応器ジャケットを、65℃に設定した。触媒の添加から約60分後、約175グラムの疑似リビングポリマーセメントを窒素パージしたボトルに滴下し、続いてイソプロパノールで凝固させ、ドラム乾燥機で乾燥した。ベースポリマーは、31.6のMLを有していた。反応器内のポリマーセメントの残りの部分に、18.5ミリリットルのヘキサン中1.0MのN-ビニルカプロラクタム(NVCL)[NVCL/Ndのモル比=60]を加えた。混合物を65℃で更に30分間撹拌した。次いで、約720グラムのポリマーセメントを窒素パージしたボトルに滴下し、イソプロパノール中の3ミリリットルの12重量%2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール溶液を用いて急冷し、0.5グラムの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを含有する2リットルのイソプロパノールを用いて凝固させ、そしてドラム乾燥させた。結果として得られたNVCL変性ポリマーの特性を、表1にまとめる。
実施例4:実施例3で合成した残りのNVCL変性ポリマーセメントに、0.11ミリリットルの未希釈(4.35M)1,1-ビス(トリクロロシリルメチル)エチレンを添加した。混合物を65℃で更に30分間撹拌した後、室温まで冷却した。結果として得られたポリマーセメントを、5gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを含有する12リットルのイソプロパノールを用いてクエンチし、凝固させ、その後ドラム乾燥させた。結果として得られたポリマーの特性を表1にまとめる。
実施例5:実施例1~4に従って生成したポリマーを用いて、以下の表2に記載の式に従ってゴム組成物を調製した。実施例5のゴム組成物の調製には、表3に記載の混合手順を用いた。
実施例5のゴム組成物ごとに、表4に列挙した特性を以下のように決定した。
・本明細書に開示される粘度は、ローターを持たないAlpha Technologies RPA(ゴム加工分析器)機器を用いて決定される実際の動的粘度である。測定を、厳密にではないが、ASTM D 6204に従って実施した。ASTM D 6204に従って、3点周波数掃引を実施した。ゴム組成物を、130℃で1分間、予熱した。ASTM手順に準拠して、130℃で歪み掃引を行い、歪み100パーセント及び1Hzで行った。報告された粘度データは、266°F、0.2分のG’で稼働させて得たものである。
・結合ゴムの含量試験を使用して、各ゴム組成物における、充填剤粒子に結合したポリマーのパーセントを決定した。大過剰のトルエン中における未硬化素材の小試験片を3日間浸漬させることにより、結合ゴムを測定した。溶媒により、可溶性ゴムを試料から抽出した。3日後、過剰なトルエンを排液して、試料を空気乾燥させ、次にオーブン内で約100℃にて一定の重量へと乾燥させた。残留する試験片は、充填剤及び元のゴムのいくらかを含有する弱い凝集性ゲルを形成する。充填剤を伴い残留するゴムの量は、結合ゴムである。結合ゴムの含量は、次に以下の式に従って計算される。
Wdは乾燥ゲルの重量であり、Fはゲル中の充填剤の重量又は溶媒不溶性材料(元の試料中の充填剤の重量と同一)であり、またRは元の試料中のポリマーの重量である。ゴム(ポリマー)と充填剤との間の、増大し、かつ有益な相互作用を示す比較的高い結合ゴム百分率を伴う結合ゴムの百分率は、ゴム組成物中のゴム(ポリマー)と充填剤との間の相互作用の測定手段を提供する。
・tanδ値は、TA Instruments製のAdvanced Rheometric Expansion System(ARES)で行った歪み掃引試験によって測定した。試験片は、14.4mmの長さ及び7.8mmの直径を有する円筒形状を有した。試験は、10rad/秒の周波数を使用して行った。歪みを0.1%から16%まで掃引し、温度を22℃で開始して60℃まで上昇させ、60℃で保持した。2%及び10%歪みの両方における60℃での測定値を、ゴム組成物のそれぞれについて記録した。ゴム組成物の60℃における指標tanδは、タイヤトレッドに組み込まれる場合の、その圧延抵抗の指標である。tanδ値は、指数(対照ポリマーの値1に対して所与の実施例の値を比較することによって計算される)として示され、100を超える数は改善とみなされる。60℃においては、低いtanδ値が改善とみなされるため、指数は(対照/値)x100として計算された。
表4のデータから分かるように、ゴム組成物5-4は、対照例5-1(実施例1のポリマーを使用)又は対照例5-2(実施例2のポリマーを使用)よりも、改善された特性、すなわち、60℃でのtanδ値、より高いムーニー粘度、及びより高い結合ゴムを示した。
上記のデータでは報告されていないが、実施例4のポリマーは、実施例1~3のポリマーと比較して、改善されたコールドフロー特性を有するであろう。換言すれば、実施例4のポリマーは、(実施例1~3のポリマーと比較して)コールドフローを経験しない。コールドフロー特性の改善は、より高いムーニー粘度とより高いT80値との組み合わせによって予測することができる。特に、実施例1~4で生成されたポリマーのうち、実施例4のポリマーは、最も高いムーニー粘度及び最も高いT80値を有した(表1の値)。したがって、式I(例えば、NVCL)又はIIの官能化化合物を式III又はIVのカップリング剤と組み合わせて使用すると、式I又はIIの官能化化合物のみを用いて作製された高シスポリブタジエンよりも、高いムーニー粘度及びT80値を有する変性高シスポリブタジエンを生成する(両ポリマーとも同じMw及びMn値を有すると仮定)。(ポリマー試料(表1に記載)についてのT80応力緩和時間(T80)は、回転が停止した瞬間から要する時間(分)を測定することにより決定した(ML1+4値が80%まで低下するのに要した100℃でのML1+4の測定直後の、ポリマーのML1+4ムーニー粘度試験中)。一般に、ポリマー又はゴム組成物試料のコールドフローは、所与のポリマー/ゴム組成物の試料を圧縮力にさらし、圧縮力が適用される前後の試料の高さを測定することによって測定することができる。よりコールドフローを経験しない(つまり、改善されたコールドフロー特性を有する)試料は、圧縮力にさらされたときに、その元の高さのより多くを維持する。ポリマーのコールドフローは、ポリマーの安定した貯蔵を可能にする(かつ、梱包形態のポリマーの望ましくないフローを回避する)のに重要であり得る。
本出願は、本明細書において開示されている組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。様々な単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかしながら、かかる語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、かかる記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、少なくとも記載される番号を意味するものと解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、一般に、このような構成は、当業者がその慣例を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるだろう。特許、特許出願、非特許文献を含むが、これらに限定されない全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。