JP7331671B2 - ハブユニット軸受の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ハブユニット軸受の製造方法に関する。
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するためのハブユニット軸受は、泥水が直接跳ねかかる環境で使用される。このため、このようなハブユニット軸受には、密封装置を組み込んで、雨水や泥などの異物が転動体を設置した空間に入り込むことを防止するとともに、封入したグリースが外部に漏洩することを防止している。図7は、密封装置を備えたハブユニット軸受の1例として、特開2005-155882号公報(特許文献1)に記載された構造を示している。
ハブユニット軸受1は、使用状態で回転しない外輪2と、使用状態で回転するハブ3と、複数個の転動体4と、内側密封部材5と、外側密封部材6とを備えている。
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図7の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図7の右側である。
外輪2は、内周面に複列の外輪軌道7a、7bを有しており、外周面に静止フランジ8を有している。外輪2は、静止フランジ8をナックルなどの懸架装置に固定するため、使用状態で回転しない。
ハブ3は、外輪2の径方向内側に外輪2と同軸に配置されており、ハブ輪9と内輪10とを組み合わせて構成されている。ハブ輪9は、内輪10を外嵌保持する軸部材であり、軸部11と、回転フランジ12と、スプライン孔13とを有している。軸部11は、ハブ輪9の軸方向内側部から軸方向中間部にわたる範囲に設けられている。軸部11は、軸方向内側部に、内輪10を外嵌するための小径部14を有しており、軸方向中間部の外周面に、軸方向外側列の内輪軌道15aを有している。回転フランジ12は、軸部11の軸方向外側に隣接するハブ輪9の軸方向外側部から径方向外方に突出しており、略円輪形状を有している。回転フランジ12には、車輪を構成するホイール及び制動用回転体が固定される。スプライン孔13は、ハブ輪9の径方向中央部を軸方向に貫通している。スプライン孔13には、図示しない駆動軸部材を構成するスプライン軸がスプライン係合される。内輪10は、ハブ輪9の小径部14に外嵌されており、外周面に軸方向内側列の内輪軌道15bを有している。
保持器により転動自在に保持された転動体4は、複列の外輪軌道7a、7bと複列の内輪軌道15a、15bとの間に、配置されている。また、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、かつ、複数の転動体4が設置された環状の内部空間16には、図示しないグリースを封入している。そして、内部空間16に封入したグリースが外部に漏洩することを防止するとともに、泥水などの異物が内部空間16に侵入することを防止するために、内部空間16の軸方向内側の開口部を内側密封部材5により塞ぎ、かつ、内部空間16の軸方向外側の開口部を外側密封部材6により塞いでいる。
内側密封部材5は、組み合わせシールリングであり、外輪2の軸方向内側部に内嵌されたシールリング17と、内輪10の軸方向内側部に外嵌されたスリンガ18とを備えている。そして、シールリング17に備えられた複数本のシールリップの先端部を、スリンガ18の表面に全周にわたり摺接させている。
外側密封部材6は、図8に示すように、外輪2の軸方向外側部に内嵌された外側芯金19と、外側芯金19に固定された外側シール部材20とを備える。外側シール部材20は、サイドリップと呼ばれる外側リップ21と、グリースリップと呼ばれる内側リップ22と、メインリップと呼ばれる中間リップ23とを備える。外側リップ21、内側リップ22及び中間リップ23のそれぞれの先端部は、ハブ輪9の表面に備えられたリップ摺接面24に対して、直接摺接させている。具体的には、外側リップ21の先端部は、リップ摺接面24のうちで、回転フランジ12の軸方向内側面の径方向内側部に備えられた円輪状の第1摺接面25に摺接させている。内側リップ22の先端部は、リップ摺接面24のうちで、軸部11の外周面の軸方向外側部に備えられた円筒面状の第2摺接面26に摺接させている。中間リップ23の先端部は、リップ摺接面24のうちで、第1摺接面25と第2摺接面26との間に備えられた、凹曲面状の第3摺接面27に摺接させている。
特開2005-155882号公報 特開2017-180599号公報
近森徳重、河原由夫共著 「トライボロジー叢書7 密封装置」 幸書房出版、昭和50年12月1日、p155-156
ところで、上述したようなハブユニット軸受1を構成するハブ輪9の外周面のうち、リップ摺接面24を含む範囲には、特開2017-180599号公報(特許文献2)に記載されているような、研削加工が施される。すなわち、図9に示すように、回転フランジ12の軸方向外側面に磁気結合力により結合したマグネットチャック28を回転させることで、ハブ輪9を回転させる。この際、ハブ輪9の外周面を2つのシュー29の先端部により回転自在に支持し、ハブ輪9のラジアル方向の位置決めを図る。そして、ダイヤモンドホイールで成形した総形砥石(回転砥石)30の外周面を、ハブ輪9の外周面に押し付け、ハブ輪9の外周面に研削加工を施す。
ハブ輪9の外周面に上述のような研削加工を施した場合、リップ摺接面24を構成する第1摺接面25には、図10に誇張して示すように、軸方向に関する凹部31と凸部32とが径方向にわたり交互に配置された、対数螺旋状(渦巻き状)の研削筋目33が形成される可能性がある。そして、第1摺接面25に、研削筋目33が形成されると、図11に示したように、第1摺接面25に摺接する外側リップ21の先端部が、研削筋目33を構成する凹部31の内側に深く入り込み、ハブ輪9が回転した際に、径方向に往復移動させられる可能性がある。このため、外側リップ21が径方向に振動し、シール鳴きと呼ばれる異音を発生させる可能性がある。
一方、非特許文献1には、摺接面の表面粗さが0.8Rmax以上になると、摺接面にねじポンプ作用が働く場合があることが記載されている。このため、研削筋目33が形成されたことに起因して、第1摺接面25の表面粗さが0.8Rmax以上になると、ねじポンプ作用が働き、ハブ3の回転方向によっては、第1摺接面25と外側リップ21との摺接部からグリースが外部に漏れ出る可能性がある。また、外側リップ21と中間リップ23との間の空間が負圧になり、外側リップ21が第1摺接面25に押し付けられて(貼り付いて)、シールトルクが上昇する可能性もある。
そこで、リップ摺接面24のうちの少なくとも第1摺接面25に、例えば、グリッドサンダーと呼ばれる回転ブラシを用いて研磨加工を施し、第1摺接面25から研削筋目33を除去することが考えられる。ただし、回転ブラシを用いて研磨加工を施した場合には、研削筋目33を除去できる代わりに、リップ摺接面24に、円弧状の研磨痕(研磨条)が新たに形成される可能性がある。リップ摺接面24に研磨痕が形成された場合、何らかの対策を施さないと、研磨痕を通じて異物が侵入したり、グリースが漏洩したりする可能性があり、外側密封部材6の密封性を低下させる可能性がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ハブのリップ摺接面に回転ブラシを用いて研磨加工を施す場合にも、外側密封部材による密封性を十分に確保できる、ハブユニット軸受を提供することを目的とする。
本発明の一態様にかかるハブユニット軸受の製造方法の対象となるハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数の転動体と、外側密封部材とを備える。
前記外輪は、内周面に外輪軌道を有する。
前記ハブは、外周面に内輪軌道を有する。
前記転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置される。
前記外側密封部材は、前記外輪の軸方向外側部に取り付けられ、前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向外側の開口部を塞ぐ。
前記ハブは、径方向内側が凸になるように湾曲した円弧状の第1研磨痕が形成された、軸方向内側を向いた円輪状の第1摺接面と、軸方向外側が凸になるように湾曲した円弧状の第2研磨痕が形成された、円筒面状の第2摺接面とを少なくとも有する、回転ブラシによる研磨面であるリップ摺接面をさらに有する。
前記外側密封部材は、前記第1摺接面に先端部を摺接させる外側リップと、前記第2摺接面に先端部を摺接させる内側リップとを有する。
前記第1摺接面に形成されたすべての前記第1研磨痕の径方向幅は、前記第1摺接面に対する前記外側リップの摺接範囲である第1摺接部の径方向幅よりも小さい
前記第2摺接面に形成されたすべての前記第2研磨痕の軸方向幅は、前記第2摺接面に対する前記内側リップの摺接範囲である第2摺接部の軸方向幅よりも小さい
本発明の一態様では、前記リップ摺接面を、前記第1摺接面と前記第2摺接面との間に、前記ハブの中心軸を含む仮想平面に関して円弧形の断面形状を有し、かつ、円周方向にわたり径方向位置及び軸方向位置がそれぞれ変化しない直線状の第3研磨痕が形成された、凹曲面状の第3摺接面をさらに有するものとすることができる。
また、前記外側密封部材を、前記第3摺接面に先端部を摺接させる中間リップをさらに有するものとすることができる。
本発明の一態様では、前記第2研磨痕の軸方向幅を、前記第1研磨痕の径方向幅よりも小さくすることができる。
あるいは、本発明の一態様では、前記第2研磨痕の軸方向幅を、前記第1研磨痕の径方向幅と同じとすることもできるし、前記第2研磨痕の軸方向幅を、前記第1研磨痕の径方向幅よりも大きくすることもできる。
本発明の一態様にかかるハブユニット軸受の製造方法は、研削工程と、ブラシ研磨工程とを備える。
前記研削工程は、前記ハブの表面のうち少なくとも前記リップ摺接面を含む範囲に、総形砥石を用いて研削加工を施す工程である。
前記ブラシ研磨工程は、前記リップ摺接面に、回転ブラシを用いて研磨加工を施す工程である。
本発明の一態様にかかるハブユニット軸受の製造方法では、前記回転ブラシとして、前記ハブの中心軸に対し傾斜して配置された回転中心軸と、前記回転中心軸から放射方向に伸長した複数本の毛を有する円環状のブラシ部とを備えたものを使用する。
そして、前記ブラシ研磨工程を、前記回転ブラシを、前記回転中心軸を中心として回転させながら、前記ブラシ部の外周部の円周方向1箇所を前記リップ摺接面の円周方向1箇所に押し当てるとともに、前記リップ摺接面に対する前記ブラシ部の押し当て位置を円周方向に変化させることにより行う。このようなブラシ研磨工程を行う際に、前記リップ摺接面に対する前記ブラシ部の押し当て量を調整することで、前記第1研磨痕の径方向幅及び前記第2研磨痕の軸方向幅のそれぞれを調整する。
具体的には、前記第1摺接面に形成されたすべての前記第1研磨痕の径方向幅を、前記第1摺接部の径方向幅よりも小さくし、前記第2摺接面に形成されたすべての前記第2研磨痕の軸方向幅を、前記第2摺接部の軸方向幅よりも小さくする。
本発明の一態様では、前記第1研磨痕の径方向幅を、前記第1摺接部の径方向幅よりも小さくし、前記第2研磨痕の軸方向幅を、前記第2摺接部の軸方向幅よりも小さくする。
本発明の技術的範囲からは外れるが、前記第1研磨痕の径方向幅を、前記第1摺接部の径方向幅と同じとし、前記第2研磨痕の軸方向幅を、前記第2摺接部の軸方向幅と同じとすることもできる。
本発明によれば、ハブのリップ摺接面に回転ブラシを用いて研磨加工を施す場合にも、外側密封部材による密封性を十分に確保できる、ハブユニット軸受を実現できる。
図1は、実施の形態の第1例にかかるハブユニット軸受を示す、断面図である。 図2は、図1のA部拡大図である。 図3の(A)は、第1摺接部と第1研磨痕との寸法関係を説明するために、最も径方向幅の大きい第1研磨痕を第1摺接部と重ねた状態で、第1摺接面を軸方向内側から見た模式図であり、図3の(B)は、第2摺接部と第2研磨痕との寸法関係を説明するために、最も軸方向幅の大きい第2研磨痕を第2摺接部と重ねた状態で、第2摺接面を径方向外側から見た模式図であり、図3の(C)は、第3摺接部と第3研磨痕との位置関係を説明するために、第3摺接面を径方向外側かつ軸方向内側から斜めに見た模式図である。 図4は、ハブ輪の外周面に総形砥石を用いて研削加工を施す状態を、ハブ輪の上方から見た断面図である。 図5は、ハブ輪のリップ摺接面に回転ブラシを用いて研磨加工を施す状態を、ハブ輪の上方から見た断面図である。 図6は、回転ブラシを構成する各毛の先端部の変形方向を説明するために、ブラシ部の軸方向両側の端部に存在する2本の毛と、ブラシ部の軸方向中央部に存在する1本の毛のみを取り出して示す、図5のB部拡大模式図である。 図7は、従来構造のハブユニット軸受の1例を示す断面図である。 図8は、図7のC部拡大図である。 図9は、ハブ輪の外周面に総形砥石を用いて研削加工を施す状態を、ハブ輪の上方から見た断面図である。 図10の(A)は、回転フランジの軸方向内側面を軸方向内側から見た模式図であり、図10の(B)は、図10の(A)のD-D断面模式図である。 図11は、外側リップの先端部を、研削筋目が形成された第1摺接面に対しそのまま摺接させた場合に生じる問題点を説明するために示す、図10の(B)に相当する図である。
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1~図6を用いて説明する。
〔ハブユニット軸受の構造説明〕
本例のハブユニット軸受1aは、内輪回転型で、かつ、従動輪用のいわゆる第3世代のハブユニット軸受であり、外輪2aと、ハブ3aと、複数個の転動体4aと、内側密封部材5aと、外側密封部材6aとを備えている。
なお、ハブユニット軸受1aに関して、軸方向外側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向外側となる図1、図2、図4、図5及び図6の左側であり、軸方向内側は、車両に組み付けた状態で車両の幅方向中央側となる図1、図2、図4、図5及び図6の右側である。
外輪2aは、S53Cなどの中炭素鋼製で、略円筒形状を有している。外輪2aは、内周面に、複列の外輪軌道7c、7dを有しており、外周面の軸方向中間部に、径方向外側に向けて突出した静止フランジ8aを有している。静止フランジ8aは、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する支持孔34を有する。外輪2aは、支持孔34へ挿通したボルトにより、懸架装置に対し支持固定され、車輪が回転する際にも回転しない。
ハブ3aは、外輪2aの径方向内側に外輪2aと同軸に配置されており、S53Cなどの中炭素鋼製のハブ輪9aと、SUJ2などの高炭素クロム鋼製の内輪10aとを組み合わせてなる。ハブ3aは、外周面のうち、複列の外輪軌道7c、7dと対向する部分に、複列の内輪軌道15c、15dを有している。
ハブ輪9aは、内輪10aを外嵌保持する軸部材であり、軸部11aと、回転フランジ12aと、パイロット部35とを有している。本例では、ハブユニット軸受1aを、従動輪用としているため、ハブ輪9aは、中実状に構成されている。ただし、本発明を、駆動輪用のハブユニット軸受に適用する場合には、ハブ輪として、前記図7に示したように、径方向中央部に、軸方向に貫通するスプライン孔を有するものを使用することができる。スプライン孔には、駆動軸がスプライン係合される。
軸部11aは、ハブ輪9aの軸方向内側部から軸方向中間部にわたる範囲に備えられている。軸部11aは、軸方向内側部に、軸方向外側に隣接する部分よりも外径が小さい、内輪10aが外嵌される小径部14aを有しており、軸方向中間部の外周面に、外側列の内輪軌道15cを有している。軸部11aは、小径部14aの軸方向外側に隣接する軸方向中間部の外周面に、軸方向内側を向いた段差面36をさらに有している。小径部14aは、軸方向内側の端部に、径方向外側に向けて折れ曲がり、内輪10aの軸方向内側の端面を押え付けるかしめ部37を有する。本発明を実施する場合には、軸部の軸方向内側の端部の外周面に雄ねじ部を形成し、該雄ねじ部にナット螺合することにより、ハブ輪に対して内輪を固定しても良い。
回転フランジ12aは、ハブ輪9aのうち、外輪2aの軸方向外側の端部よりも軸方向外側に位置する部分に備えられており、略円輪形状を有している。回転フランジ12aは、径方向中間部の円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する取付孔38を有する。取付孔38のそれぞれには、スタッド39が圧入されている。スタッド39の先端部には、図示しないナットが螺合される。これにより、車輪を構成するホイール及び制動用回転体を、回転フランジ12aの軸方向外側に固定する。本発明を実施する場合には、回転フランジに雌ねじ孔を形成し、該雌ねじ孔にハブボルトを直接螺合することにより、ホイール及び制動用回転体を、回転フランジの軸方向外側に固定しても良い。
ハブ輪9aは、外周面のうち、回転フランジ12aの軸方向内側面の径方向内側部から軸部11aの外周面の軸方向外側部にわたる範囲に、略L字状の断面形状を有する、リップ摺接面24aを有している。リップ摺接面24aは、後述する回転ブラシ55による研磨面であり、第1摺接面25aと、第2摺接面26aと、第3摺接面27aとを有する。
第1摺接面25aは、回転フランジ12aの軸方向内側面の径方向内側部に配置されている。このため、第1摺接面25aは、円輪状に構成されており、軸方向内側を向いている。第1摺接面25aは、ハブ輪9aの中心軸O9aに直交する仮想平面上に存在する平坦面である。第1摺接面25aには、ハブ輪9aの製造過程で、後述の研削工程を実施することにより、前記図10に示したような、対数螺旋状(渦巻き状)の研削筋目33が形成されるが、研削工程の後に実施する後述のブラシ研磨工程により、研削筋目33は除去されている。ただし、図3の(A)に示すように、第1摺接面25aには、研削筋目33が除去される代わりに、径方向内側が凸になるように湾曲した円弧状(略三日月状)の第1研磨痕40が、円周方向及び径方向の複数箇所に無数に形成されている。なお、図3の(A)には、第1研磨痕40のうちで最も径方向幅が大きい1つの第1研磨痕40のみを示している。第1研磨痕40は、第1摺接面25aのうちで、その他の部分に比べて軸方向外側にわずかに凹んだ微細な凹溝(傷)である。
第2摺接面26aは、軸部11aの外周面の軸方向外側部に備えられており、軸方向外側列の内輪軌道15cの軸方向外側に配置されている。第2摺接面26aは、軸方向にわたり外径寸法が変化しない円筒面状に構成されている。図3の(B)に示すように、第2摺接面26aには、後述のブラシ研磨工程により、軸方向外側が凸になるように湾曲した円弧状(略三日月状)の第2研磨痕41が、円周方向及び軸方向の複数箇所に無数に形成されている。なお、図3の(B)には、複数の第2研磨痕41のうちで最も軸方向幅の大きい1つの第2研磨痕41のみを示している。第2研磨痕41は、第2摺接面26aのうちで、その他の部分に比べて径方向内側にわずかに凹んだ微細な凹溝である。本例では、第2研磨痕41の円周方向長さ(第2研磨痕41の弦に相当する部分の長さ)は、第1研磨痕40の円周方向長さよりも短く、図3の(A)と(B)とを比較すれば明らかなように、第2研磨痕41の軸方向幅h41(弦に相当する部分に対する孤に相当する部分の高さ寸法)は、第1研磨痕40の径方向幅h40よりも小さい(h41<h40)。
第3摺接面27aは、第1摺接面25aと第2摺接面26aとの間部分に配置されている。第3摺接面27aは、ハブ輪9aの中心軸O9aを含む仮想平面に関して、円弧状の断面形状を有しており、凹曲面状に構成されている。第3摺接面27aの径方向外側部は、第1摺接面25aの径方向内側部に滑らかにつながっている。第3摺接面27aの軸方向内側部は、第2摺接面26aの軸方向外側部に滑らかにつながっている。図3の(C)に示すように、第3摺接面27aの幅方向中央部には、後述のブラシ研磨工程により、円周方向にわたり径方向位置及び軸方向位置がそれぞれ変化しない直線状の第3研磨痕42が形成されている。第3研磨痕42は、第3摺接面27aのうちで、その他の部分に比べて軸方向外側かつ径方向内側にわずかに凹んだ微細な凹溝である。
パイロット部35は、ホイール及び制動用回転体をがたつきのない隙間嵌めで外嵌するためのもので、ハブ輪9aの軸方向外側の端部に備えられており、略円筒形状を有している。
内輪10aは、円環形状を有しており、外周面の軸方向中間部に軸方向内側列の内輪軌道15dを有している。内輪10aは、軸部11aに備えられた小径部14aに締り嵌めで外嵌され、段差面36と、かしめ部37とにより軸方向両側から挟持されている。
転動体4aは、高炭素クロム鋼又はセラミック製で、複列の外輪軌道7c、7dと複列の内輪軌道15c、15dとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ、円周方向に等間隔に配置されるとともに、保持器43a、43bにより転動自在に保持されている。これにより、ハブ3aは、外輪2aの径方向内側に回転自在に支持される。本例では、転動体4aとして玉を使用しているが、玉に代えて円すいころを使用することもできる。また、本例では、軸方向内側列の転動体4aのピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体4aのピッチ円直径とを互いに同じとしているが、本発明は、軸方向内側列の転動体のピッチ円直径と、軸方向外側列の転動体のピッチ円直径とが互いに異なる異径PCD型のハブユニット軸受に適用することもできる。
外輪2aの内周面とハブ3aの外周面との間に存在し、かつ、複数の転動体4aが設置された環状の内部空間16aには、図示しないグリースを封入している。内部空間16aに封入したグリースが、外部空間44に漏洩することを防止するとともに、泥水などの異物が外部空間44から内部空間16aに侵入することを防止するために、内部空間16aの軸方向内側の開口部を内側密封部材5aにより塞ぎ、かつ、内部空間16aの軸方向外側の開口部を外側密封部材6aにより塞いでいる。
内側密封部材5aは、組み合わせシールリングにより構成されており、シールリング17aと、スリンガ18aとを備える。
スリンガ18aは、ステンレス鋼板又は防錆処理が施された冷間圧延鋼板(SPCC)などの金属板に、プレス加工を施して造られており、L字形の断面形状を有し、全体が円環状である。スリンガ18aは、内輪10aの軸方向内側の端部に外嵌固定されている。なお、スリンガ18aの軸方向内側面には、車輪の回転速度を検出するために利用するエンコーダを取り付けることもできる。
シールリング17aは、内側芯金45と、内側シール部材46とを備える。
内側芯金45は、冷間圧延鋼板などの金属板にプレス加工を施して造られており、略L字形の断面形状を有し、全体が円環状である。内側芯金45は、外輪2aの軸方向内側の端部に内嵌固定されている。
内側シール部材46は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などの弾性材製で、内側芯金45の表面に全周にわたり固定されている。内側シール部材46は、複数本(図示の例では3本)のシールリップ47を有する。シールリップ47のそれぞれの先端部は、スリンガ18aの表面に全周にわたり接触又は近接対向させている。
外側密封部材6aは、外輪2aの軸方向外側部に取り付けられ、内部空間16aの軸方向外側の開口部を塞ぐものであり、外側芯金19aと、外側シール部材20aとを備える。
外側芯金19aは、冷間圧延鋼板などの金属板にプレス加工を施して造られており、略L字形の断面形状を有し、全体が円環状である。外側芯金19aは、外輪2aの軸方向外側部に内嵌固定された円筒状の固定筒部48と、固定筒部48の軸方向外側部から径方向内側に向けて折れ曲がった内向鍔状の折れ曲がり部49とを有する。固定筒部48は、軸方向内側半部に円筒部50を有しており、軸方向外側半部に円すい筒部51を有している。折れ曲がり部49は、クランク形の断面形状を有している。
外側シール部材20aは、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などの弾性材製で、外側芯金19aの表面に全周にわたり固定されている。外側シール部材20aは、加硫成形型を用いて加硫成形されており、円すい筒部51の外周面を全周にわたり覆うとともに、折れ曲がり部49の軸方向外側面及び径方向内側の端部を全周にわたり覆っている。
外側シール部材20aは、サイドリップと呼ばれる外側リップ21aと、グリースリップと呼ばれる内側リップ22aと、メインリップと呼ばれる中間リップ23aとを備える。外側リップ21a、内側リップ22a及び中間リップ23aは、それぞれの先端部を、ハブ輪9aの表面に備えられたリップ摺接面24aに対して直接摺接させている。
外側リップ21aは、軸方向外側に向けて伸長したアキシアルリップであり、外側シール部材20aの径方向中間部に備えられている。外側リップ21aは、リップ摺接面24aのうちで、回転フランジ12aの軸方向内側面の径方向内側部に備えられた円輪状の第1摺接面25aに対し、先端部を全周にわたり摺接させている。図3の(A)に示すように、第1摺接面25aに対する外側リップ21aの先端部の摺接範囲は、円周方向にわたり一定の径方向幅H52を有する、円輪帯状の第1摺接部52となる。
内側リップ22aは、径方向内側に向けて伸長したラジアルリップであり、外側シール部材20aの径方向内側の端部に備えられている。内側リップ22aは、リップ摺接面24aのうちで、軸部11aの外周面の軸方向外側部に備えられた円筒面状の第2摺接面26aに対し、先端部を全周にわたり摺接させている。図3の(B)に示すように、第2摺接面26aに対する内側リップ22aの先端部の摺接範囲は、円周方向にわたり一定の軸方向幅H53を有する、円筒帯状の第2摺接部53となる。
中間リップ23aは、軸方向外側に向けて伸長したアキシアルリップであり、外側シール部材20aの径方向内側の端部に備えられている。中間リップ23aは、リップ摺接面24aのうちで、第1摺接面25aと第2摺接面26aとの間に備えられた凹曲面状の第3摺接面27aに対し、先端部を全周にわたり摺接させている。図3の(C)に示すように、第3摺接面27aに対する中間リップ23aの先端部の摺接範囲は、円周方向にわたり一定の幅を有する、円環帯状の第3摺接部54となる。
特に本例では、後述のブラシ研磨工程時において、回転ブラシ55の押し当て量の大きさを調整することで、すべての第1研磨痕40に関して、それぞれの径方向幅h40の大きさを、第1摺接部52の径方向幅H52 よりも小さくなるように規制している。換言すれば、図3の(A)に示すように、第1研磨痕40の径方向幅h40の最大値h40maxの大きさを、第1摺接部52の径方向幅 52 りも小さくするように規制している。これにより、第1摺接部52の径方向位置にかかわらず、すべての第1研磨痕40は、第1摺接部52を径方向に横切らなくなる。別な言い方をすれば、第1研磨痕40が、第1摺接部52から径方向両側にはみ出すことがなくなる。
さらに本例では、後述のブラシ研磨工程時において、回転ブラシ55の押し当て量の大きさを調整することで、すべての第2研磨痕41に関して、それぞれの軸方向幅h41の大きさを、第2摺接部53の軸方向幅H53 よりも小さくなるように規制している。換言すれば、図3の(B)に示すように、第2研磨痕41の軸方向幅h41の最大値h41maxの大きさを、第2摺接部53の軸方向幅 53 りも小さくするように規制している。これにより、第2摺接部53の軸方向位置にかかわらず、すべての第2研磨痕41は、第2摺接部53を軸方向に横切らなくなる。別な言い方をすれば、第2研磨痕41が、第2摺接部53から軸方向両側にはみ出すことがなくなる。
また、図3の(C)に示すように、第3研磨痕42は、第3摺接部54から径方向及び軸方向にそれぞれはみ出さないように、第3摺接部54の内側に配置されている。換言すれば、第3研磨痕42は、中間リップ23aの先端部によって完全に覆われている。ただし、本発明を実施する場合に、第3研磨痕42は、第3摺接部54から径方向又は軸方向に外れた位置に配置することもできる。
〔ハブユニット軸受の製造方法〕
次に、ハブユニット軸受1aを構成するハブ輪9aの製造方法について説明する。本例では、ハブ輪9aを造るために、中炭素鋼などの鉄系合金製の素材に、据え込み加工や成形加工などの熱間鍛造加工(塑性加工)を多段階で施した後、外周面の形状を整えるとともに、酸化スラッジ/スケールや表面脱炭層の除去、表面粗さを小さくするなどの目的で、切削加工(旋削加工)及び研削加工を施し、その後、研削筋目を除去する目的で、研磨加工を施す。
本例の製造方法の特徴は、研磨加工時に、第1研磨痕40の径方向幅h40及び第2研磨痕41の軸方向幅h41のそれぞれの大きさを調整することにより、ハブユニット軸受1aの組立状態で、第1研磨痕40が第1摺接部52を径方向に横切ることを防止するとともに、第2研磨痕41が第2摺接部53を軸方向に横切ることを防止する点にある。以下、研磨工程の前工程で実施する研削工程について説明した後、研磨工程(ブラシ研磨工程)について説明する。本例のハブ輪9aを製造する際に、研削工程及び研磨工程以外のその他の工程については、特に限定されず、従来から知られた製造工程を採用することができる。
《研削工程》
本例では、図4に示すように、ハブ輪9aの外周面に、総形砥石30aを使用した研削加工(仕上加工)を施す。具体的には、回転フランジ12aの軸方向外側面に、マグネットチャック28aを磁気吸着力により結合させた状態で、マグネットチャック28aを回転させることにより、ハブ輪9aを回転させる。また、ハブ輪9aの外周面の軸方向中間部を、2つのシュー29aの先端部により回転自在に支持し、ハブ輪9aのラジアル方向の位置決めを図る。この状態で、総形砥石30aの外周面をハブ輪9aの外周面に押し付け、ハブ輪9aの外周面うち、リップ摺接面24a(第1摺接面25a、第2摺接面26a、第3摺接面27a)、及び、内輪軌道15cから小径部14aにわたる範囲に、同時に研削加工を施す。
また、ハブ輪9aの中心軸O9aとマグネットチャック28aの回転中心軸O28aとを偏心させて、ハブ輪9aに2つのシュー29aの間に向かう押圧力を付与する。このような研削加工により、ハブ輪9aの各部の形状及び寸法は、総形砥石30aの外周面形状に倣ったものになり、厳密に規制される。ただし、本例の場合にも、ハブ輪9aの中心軸O9aとマグネットチャック28aの回転中心軸O28aとの偏心の影響、及び、シュー29aの先端部の摩耗などの影響により、ハブ輪9aの中心軸O9aの高さ(芯高)と総形砥石30aの中心軸O30aの高さ(芯高)とが不一致になり、回転フランジ12aの軸方向内側面に対する総形砥石30aの研削面(研削点)の位置が変化する。この結果、第1摺接面25aには、前記図10に誇張して示すような、軸方向に関する凹部31と凸部32とが径方向にわたり交互に配置された、対数螺旋状の研削筋目33が形成される。
《ブラシ研磨工程》
本例では、第1摺接面25aに形成された研削筋目33を除去するために、上述の研削工程の後に、図5に示すように、第1摺接面25aを含むリップ摺接面24aを対象として、グリッドサンダーと呼ばれる回転ブラシ55を用いて研磨加工(仕上加工)を施す。
回転ブラシ55は、回転軸56と、ブラシ部57とを備える。回転軸56は、前述した研削工程において使用したモータやスピンドルなどの回転駆動源に、図示しない基端部(図5の左側の端部)を接続しており、回転中心軸O56回りに回転可能である。また、前記図4に示した研削加工を行う研削盤に対して、回転ブラシ55を、総形砥石30aに代えて取り付けることもできる。
ブラシ部57は、回転軸56の先端部に備えられており、円環状に構成されている。ブラシ部57は、回転軸56の先端部に外嵌固定された基部58と、基部58の外周部に備えられたブラシ本体59とを有する。ブラシ本体59は、基部58の外周面に、全周にわたり植毛された複数本の毛(毛束)60a~60cから構成されている。
毛60a~60cのそれぞれは、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製で、砥粒を含有しており、自由状態で、回転中心軸O56から放射方向に伸長している。毛60a~60cの長さ(放射方向寸法)は、回転軸56の軸方向にわたり一定ではなく、ブラシ部57の軸方向両側部に配置された毛60a、60bよりも、ブラシ部57の軸方向中間部に配置された毛60cの方が長くなるようにトリミングされている。これにより、ブラシ本体59は、凸円弧形の母線形状(輪郭形状)を有している。ブラシ部57の大きさは、特に限定されないが、図示の例のように、ハブ輪9aの回転フランジ12aの外径よりも大きな直径を有するものを使用することができる。
本例では、上述のような回転ブラシ55を用いて、ハブ輪9aのリップ摺接面24aに研磨加工を施す。研磨加工時には、回転ブラシ55の回転中心軸O56を、ハブ輪9aの中心軸O9aを含む仮想平面上に位置させるとともに、ハブ輪9aの中心軸O9aに対し傾斜させて配置する。具体的には、ブラシ本体59の母線形状が、研磨対象となるリップ摺接面24aの母線形状と略一致するように、回転ブラシ55の回転中心軸O56を、ハブ輪9aの軸方向に関して内側から外側に向かうほどハブ輪9aの中心軸O9aから離れる方向に傾斜させて配置する。なお、図示の例では、回転ブラシ55の回転中心軸O56を、ハブ輪9aの中心軸O9aに対して45°傾けて配置している。
そして、回転ブラシ55を、回転中心軸O56を中心として回転させながら、ブラシ部57(ブラシ本体59)の外周部の円周方向1箇所を、リップ摺接面24aの円周方向1箇所に押し当てる。また、ハブ輪9aを、図示しない回転駆動装置を利用して、中心軸O9a周りに回転させる。これにより、リップ摺接面24aに対するブラシ部57の押し当て位置を円周方向に変化させて、リップ摺接面24aを回転ブラシ55により全周にわたり研磨する。また、本例では、研削水をクーラントとして使用し、湿式にて研磨を行う。
上述のように、ブラシ部57の外周部をリップ摺接面24aに押し当てて研磨加工を行うと、ブラシ部57に備えられた毛60a~60cのそれぞれの先端部には、押し当てられる面に応じて、異なった変形を生じる。
具体的には、第1摺接面25aに押し当てられる毛60aの先端部は、回転ブラシ55の回転方向とは逆方向(回転方向に関して後方側)に湾曲するとともに、図6に矢印Xで示すように、第1摺接面25aに沿って、ハブ輪9aの径方向に関して内向きに湾曲する。また、毛60aの先端部に生じる変形量(湾曲量)は、第1摺接面25aの径方向に関する押し当て位置に応じて変化する。すなわち、第1摺接面25aの径方向外側部に押し当てられる毛60aのほうが、第1摺接面25aの径方向内側部に押し当てられる毛60aに比べて変形量が大きくなる。このため、第1摺接面25aのうちで最も径方向外側に押し当てられる(ブラシ部57の基端部側に位置する)毛60aの先端部の変形量が最大になる。なお、図6には、変形量が最大になる毛60aの変形前後の形状を示している。
これに対し、第2摺接面26aに押し当てられる毛60bの先端部は、回転ブラシ55の回転方向とは逆方向に湾曲するとともに、図6に矢印Yで示すように、第2摺接面26aに沿って、ハブ輪9aの軸方向に関して外向きに湾曲する。また、毛60bの先端部に生じる変形量(湾曲量)は、第2摺接面26aの軸方向に関する押し当て位置に応じて変化する。すなわち、第2摺接面26aの軸方向内側部に押し当てられる毛60bのほうが、第2摺接面26aの軸方向外側部に押し当てられる毛60bに比べて変形量が大きくなる。このため、第2摺接面26aのうちで最も軸方向内側に押し当てられる(ブラシ部57の先端部側に位置する)毛60bの先端部の変形量が最大になる。なお、図6には、変形量が最大になる毛60bの変形前後の形状を示している。
また、第3摺接面27aに押し当てられる毛60cの先端部は、回転ブラシ55の回転方向と逆方向にのみ湾曲し、ハブ輪9aの径方向及び軸方向には湾曲しない。
上述のようにして、毛60a~60cの先端部のそれぞれに変形を生じると、第1摺接面25a、第2摺接面26a、及び、第3摺接面27aには、それぞれ異なる形状の研磨痕(研磨条)が形成される。すなわち、第1摺接面25aには、径方向内側が凸になるように湾曲した円弧状の第1研磨痕40が、毛60aのそれぞれの先端部によって形成される。第2摺接面26aには、軸方向外側が凸になるように湾曲した円弧状の第2研磨痕41が、毛60bのそれぞれの先端部によって形成される。第3摺接面27aには、円周方向にわたり径方向位置及び軸方向位置がそれぞれ変化しない直線状の第3研磨痕42が、毛60cの先端部によって形成される。
第1摺接面25aに押し当てられる毛60aの先端部に生じる変形量(の最大値)、及び、第2摺接面26aに押し当てられる毛60bの先端部に生じる変形量(の最大値)が互いに同じであるとすると、円筒面である第2摺接面26aに形成される第2研磨痕41の円周方向長さは、円輪面である第1摺接面25aに形成される第1研磨痕40の円周方向長さよりも短くなるため、第2研磨痕41の軸方向幅h41は、第1研磨痕40の径方向幅h40よりも小さくなる(h41<h40)。
本例では、第1研磨痕40及び第2研磨痕41が、研磨加工時に、上述のようなメカニズムで形成されることに着目し、リップ摺接面24に対するブラシ部57の押し当て量(押し付け力)を調整することで、第1研磨痕40の径方向幅h40、及び、第2研磨痕41の軸方向幅h41のそれぞれを調整する。換言すれば、第1摺接面25aに押し当てられる毛60aの先端部に生じる、ハブ輪9aの径方向に関して内向きの変形量、及び、第2摺接面26aに押し当てられる毛60bの先端部に生じる、ハブ輪9aの軸方向に関して外向きの変形量を調整することで、第1研磨痕40の径方向幅h40(h40max)及び、第2研磨痕41の軸方向幅h41(h41max)を調整する。
リップ摺接面24aに対するブラシ部57の押し当て量を小さくすれば(回転ブラシ55の回転中心軸O56をハブ輪9aの中心軸O9aから遠ざければ)、第1研磨痕40の径方向幅h40、及び、第2研磨痕41の軸方向幅h41はそれぞれ小さくなる。これに対し、リップ摺接面24aに対するブラシ部57の押し当て量を大きくすれば(回転ブラシ55の回転中心軸O56をハブ輪9aの中心軸O9aに近づければ)、第1研磨痕40の径方向幅h40、及び、第2研磨痕41の軸方向幅h41はそれぞれ大きくなる。
そこで本例では、リップ摺接面24aに対するブラシ部57の押し当て量を調整することで、すべての第1研磨痕40に関して、それぞれの径方向幅h40を、第1摺接面25aに対する外側リップ21aの摺接範囲である第1摺接部52の径方向幅H52 よりも小さくするとともに、すべての第2研磨痕41に関して、それぞれの軸方向幅h41を、第2摺接面26aに対する内側リップ22aの摺接範囲である第2摺接部53の軸方向幅H53 よりも小さくしている。換言すれば、第1研磨痕40の径方向幅h40の最大値h40maxの大きさを、第1摺接部52の径方向幅H52 よりも小さくし、第2研磨痕41の軸方向幅h41の最大値h41maxの大きさを、第2摺接部53の軸方向幅H53 よりも小さくしている。
以上のような本例のハブユニット軸受1aによれば、リップ摺接面24aに回転ブラシ55を用いた研磨加工を施した場合にも、外側密封部材6aによる密封性を十分に確保できる。
すなわち、本例では、すべての第1研磨痕40に関して、それぞれの径方向幅h40を、第1摺接面25aに対する外側リップ21aの摺接範囲である第1摺接部52の径方向幅H52 よりも小さくし、かつ、すべての第2研磨痕41に関して、それぞれの軸方向幅h41を、第2摺接面26aに対する内側リップ22aの摺接範囲である第2摺接部53の軸方向幅H53 よりも小さくしている。このため、第1研磨痕40が第1摺接部52を径方向に横切ることを防止できるとともに、第2研磨痕41が第2摺接部53を軸方向に横切ることを防止できる。したがって、第1研磨痕40を通じて、外部空間44に存在する泥水などの異物が外側リップ21aの内側に侵入することを防止できる。また、第2研磨痕41を通じて、内部空間16aに封入したグリースが、内側リップ22aの外側に移動することを防止できる。このため、外側密封部材6aにより、泥水などの異物が外部空間44から内部空間16aに侵入することを有効に防止できるとともに、内部空間16aに封入したグリースが、外部空間44に漏洩することを防止できる。この結果、外側密封部材6aによる密封性を十分に確保することができる。
また、本例では、回転ブラシ55を用いたブラシ研磨工程時に、リップ摺接面24に対するブラシ部57の押し当て量を調整することで、外側リップ21a及び内側リップ22aのそれぞれの締め代を大きくしなくても、第1研磨痕40の径方向幅h40を第1摺接部52の径方向幅H52 よりも小さくすることができるとともに、第2研磨痕41の軸方向幅h41を第2摺接部53の軸方向幅H53 よりも小さくすることができる。このため、外側密封部材6aによるシールトルクを上昇させることなく、第1研磨痕40が第1摺接部52を径方向に横切ることを防止できるとともに、第2研磨痕41が第2摺接部53を軸方向に横切ることを防止できる。また、外側リップ21a及び内側リップ22aの締め代の大きさを変更する(大きくする)必要がないため、設計変更に伴う、コストの上昇を抑えることもできる。
また、ブラシ研磨加工により、研削加工により第1摺接面25aに形成された研削筋目33(図10参照)を取り除くことができる。このため、シール鳴きと呼ばれる異音の発生を防止できる。また、ねじポンプ作用が働くことを防止できるとともに、外側リップ21aの貼り付きを抑え、シールトルクが上昇することを防止できる。
本発明を実施する場合には、外側密封部材が備えるシールリップの本数は、実施の形態で示した3本に限定されず、2本でも良いし、4本以上でも良い。外側密封部材は、少なくとも第1摺接面に先端部を摺接させる外側リップと、第2摺接面に先端部を摺接させる内側リップとを備えていれば良い。外側リップと内側リップのほかに、別のシールリップを備える場合には、別のシールリップの先端部は、リップ摺接面に対して摺接させても良いし、近接対向させても良い。なお、前記図4に示した研削加工を行う研削盤に対して、総形砥石30aに代えて回転ブラシ55を取り付ける場合には、ブラシ部57の大きさは、総形砥石30aと略同一とする。
本発明の製造方法を実施する場合に、回転ブラシを構成する毛の先端部に生じる変形量は、第1摺接面に押し当てられる毛と、第2摺接面に押し当てられる毛とで、互いに同じとしても良いし、互いに異ならせても良い。
1、1a ハブユニット軸受
2、2a 外輪
3、3a ハブ
4、4a 転動体
5、5a 内側密封部材
6、6a 外側密封部材
7a~7d 外輪軌道
8、8a 静止フランジ
9、9a ハブ輪
10、10a 内輪
11、11a 軸部
12、12a 回転フランジ
13 スプライン孔
14、14a 小径部
15a~15d 内輪軌道
16、16a 内部空間
17、17a シールリング
18、18a スリンガ
19、19a 外側芯金
20、20a 外側シール部材
21、21a 外側リップ
22、22a 内側リップ
23、23a 中間リップ
24、24a リップ摺接面
25、25a 第1摺接面
26、26a 第2摺接面
27、27a 第3摺接面
28、28a マグネットチャック
29、29a シュー
30、30a 総形砥石
31 凹部
32 凸部
33 研削筋目
34 支持孔
35 パイロット部
36 段差面
37 かしめ部
38 取付孔
39 スタッド
40 第1研磨痕
41 第2研磨痕
42 第3研磨痕
43a、43b 保持器
44 外部空間
45 内側芯金
46 内側シール部材
47 シールリップ
48 固定筒部
49 折れ曲がり部
50 円筒部
51 円すい筒部
52 第1摺接部
53 第2摺接部
54 第3摺接部
55 回転ブラシ
56 回転軸
57 ブラシ部
58 基部
59 ブラシ本体
60a~60c 毛

Claims (3)

  1. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、
    外周面に内輪軌道を有するハブと、
    前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に配置された複数の転動体と、
    前記外輪の軸方向外側部に取り付けられ、前記外輪の内周面と前記ハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向外側の開口部を塞ぐ外側密封部材と、を備え、
    前記ハブは、径方向内側が凸になるように湾曲した円弧状の第1研磨痕が形成された、軸方向内側を向いた円輪状の第1摺接面と、軸方向外側が凸になるように湾曲した円弧状の第2研磨痕が形成された、円筒面状の第2摺接面とを少なくとも有する、回転ブラシによる研磨面であるリップ摺接面をさらに有し、
    前記外側密封部材は、前記第1摺接面に先端部を摺接させる外側リップと、前記第2摺接面に先端部を摺接させる内側リップとを有し、
    前記第1摺接面に形成されたすべての前記第1研磨痕の径方向幅は、前記第1摺接面に対する前記外側リップの摺接範囲である第1摺接部の径方向幅よりも小さく
    前記第2摺接面に形成されたすべての前記第2研磨痕の軸方向幅は、前記第2摺接面に対する前記内側リップの摺接範囲である第2摺接部の軸方向幅よりも小さい
    ハブユニット軸受の製造方法であって、
    前記ハブの外周面のうち少なくとも前記リップ摺接面を含む範囲に、総形砥石を用いて研削加工を施す、研削工程と、
    前記リップ摺接面に前記回転ブラシを用いて研磨加工を施す、ブラシ研磨工程と、を備え、
    前記ブラシ研磨工程は、前記回転ブラシとして、前記ハブの中心軸に対し傾斜して配置された回転中心軸と、前記回転中心軸から放射方向に伸長した複数本の毛を有する円環状のブラシ部とを備えたものを使用し、前記回転ブラシを、前記回転中心軸を中心として回転させながら、前記ブラシ部の外周部の円周方向1箇所を前記リップ摺接面の円周方向1箇所に押し当てるとともに、前記リップ摺接面に対する前記ブラシ部の押し当て位置を円周方向に変化させることにより行い、前記リップ摺接面に対する前記ブラシ部の押し当て量を調整することで、前記第1研磨痕の径方向幅及び前記第2研磨痕の軸方向幅のそれぞれを調整する、
    ハブユニット軸受の製造方法。
  2. 前記リップ摺接面は、前記第1摺接面と前記第2摺接面との間に、前記ハブの中心軸を含む仮想平面に関して円弧状の断面形状を有し、かつ、円周方向にわたり径方向位置及び軸方向位置がそれぞれ変化しない直線状の第3研磨痕が形成された、凹曲面状の第3摺接面をさらに有し、
    前記外側密封部材は、前記第3摺接面に先端部を摺接させる中間リップをさらに有する、
    請求項1に記載したハブユニット軸受の製造方法
  3. 前記第2研磨痕の軸方向幅は、前記第1研磨痕の径方向幅よりも小さい、請求項1~2のうちのいずれか1項に記載したハブユニット軸受の製造方法
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