JP6750322B2 - 車輪用軸受装置及び車輪用軸受装置の製造方法 - Google Patents
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Description
車輪用軸受装置80は、ナックル81に固定される外輪82と、外輪82に対して同軸に配置され、回転自在の内軸83とを備えている。内軸83は、ハブシャフト85とその一方の軸端に圧入された内輪86とで構成されており、ハブシャフト85の他方の軸端には、車輪(図示を省略)を取り付けるハブフランジ87が一体に形成されている。車輪用軸受装置80では、車輪が取り付けられる側が車両の外側となるので、図4では、左側をアウタ側といい右側をインナ側という。
外輪82の内周と内軸83の外周との間に形成されている環状空間91は、軸方向の両側に開口している。それぞれの開口部には、密封装置92,93が装着されており、環状空間91に泥水などの異物が浸入するのを防止している。
組合せシールを使用することによって、リップ97のしめしろ、特に軸方向のしめしろを正確に組み付けることができるので、密封装置93では異物の浸入を適切に防止することができる。
このため、外輪82では、複列の外側軌道面88,88が単一の砥石で同時に研削加工されることによって、相互の同軸度が高精度で確保されている。また、各シール取付面24,99においても、外側軌道面88と同時に研削加工がされており、相互に高精度の同軸度が確保されている。これによって、スリンガ94とリップ97とのしめしろが全周にわたって一様となるので、耐泥水性能を高くすることができる。
こうして、外輪内周の研削加工に要する費用が高いため、外輪82の製造コストが上昇し、車輪用軸受装置80の製造コストが高いものとなっている。
図1は、本発明にかかる車輪用軸受装置10の一実施形態(以下、本実施形態)の要部拡大図であり、インナ側に装着された密封装置12(以下、単に「インナ側密封装置」という)の組込状態を示している。本実施形態の車輪用軸受装置10では、インナ側密封装置12の形態と、当該インナ側密封装置12が装着される外輪14の形態に特徴がある。その他の形態は、従来の車輪用軸受装置80と同様であるので、従来構造と共通する部分については、図4を参照しつつ同一の符号を付して説明する。
なお、以下の説明では、軸線mの方向を軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向、軸線mの回りを周回する向きを周方向という。
外輪14は、高炭素鋼を熱間で鍛造等することによって製造されており、略円筒形状の円筒部16と、その外周に形成されたフランジ部84とが一体に形成されている。フランジ部84は、円筒部16の外周の複数個所において、軸方向のほぼ中央から径方向外方に延びており、互いに周方向にリブ17でつながっている。
フランジ部84には、軸方向に貫通するボルト穴18が形成されており、このボルト穴18にボルト(図示を省略)を挿通して、外輪14が車両部材であるナックル81に固定されている。フランジ部84の側面及びリブ17の側面は、軸線mと直交する向きに面一に形成されており、ナックル81の取付面と当接している。
外側軌道面88,88は、互いに小径の肩20で軸方向につながっており、小径の肩20と反対側にはそれぞれ大径の肩21,22が形成されている。各肩20,21,22は、軸線mと同軸の円筒面である。こうして、軸方向断面では、曲率中心(図示省略)に対する各外側軌道面88,88の中心(円弧の中央をいう)の位置は、径方向外方に向かって互いに近づく方向に傾いている。
外側軌道面88,88は、熱処理が施されて表面硬さが60HRC程度まで高くされた後、研削加工が施されて、表面粗さが小さい滑らかな面に仕上げられている。
アウタ側シール取付面24は、研削加工によって表面粗さが小さい滑らかな面に仕上げられている。このため、芯金98とアウタ側シール取付面24との嵌め合い部からの水等の浸入を防止することができる。
外輪14では、円筒部16がフランジ部84より軸方向インナ側に突出している。この突出した部分27は、ハブユニットを車両に取り付けるときに、車両部材に嵌め合わされるので、以下の説明では「インロー部」という。
インロー部27の外周は、軸線mと同軸の円筒面で、インナ側の密封装置12が取り付けられるインナ側シール取付面29になっている。インナ側シール取付面29には、研削加工が施されて、表面粗さが小さい滑らかな面に仕上げられている。このため、インナ側密封装置12を嵌め合わせたときに、その嵌め合い面からの水等の浸入を防止することができる。インナ側密封装置12の形態については後述する。
凹部31では、インナ側密封装置12が隙間を持って収容されている。インナ側密封装置12は、インロー部27の外周側で外輪14に固定されているので、凹部31の内周面32は、インナ側密封装置12と接触しない。このため、内周面32に研削加工を施す必要がなく、内周面32は、鍛造された時の鍛造肌のままであってもよいし、旋削加工が施されていてもよい。
図4に示すように、内軸83は、ハブシャフト85と、内輪86とが一体に組み合わされた形態である。内軸83の形態は、従来構造と同等であるので、簡単に説明する。
内側軌道面89aは、熱処理が施されて表面硬さが60HRC程度まで高くされた後、研削加工によって表面粗さが小さい滑らかな面に仕上げられている。
内側軌道面89b及び大径の肩36は、熱処理が施されて表面硬さが60HRC程度まで高くされた後、研削加工によって表面粗さが小さい滑らかな面に仕上げられている。
環状空間91は、軸方向の両側に開口しており、それぞれの開口部に密封装置12,92が装着されている。
芯金41は、ステンレス鋼などの不錆性金属材料の圧延鋼板をプレス成型することによって環状に形成されている。芯金41は、円筒形状で外輪14に嵌め合わされる筒状部47と、筒状部47のインナ側の端部が径方向内方に折り曲げられた第1段部48と、インロー部27のほぼ内周端の位置で更に筒状部47の側に屈曲させた第2段部49とを備えた形態となっている。シールリップ43,44,45は、第2段部49に接着されている。こうして、外輪14のインナ側端面26より内側(外側軌道面88に近い側である)にシールリップ43,44,45を配置できるので、軸方向寸法の増大を抑制して、車輪用軸受装置10をコンパクトにすることができる。このため、車両への搭載性が良好になる。
第2段部49は、軸方向断面形状では、インナ側からアウタ側に向かって縮径する向きに傾斜した形態であるが、これに限定されず、軸線mと平行に形成された円筒面であってもよい。なお、この場合に、円筒面の外周と、凹部31の内周面32との間にはすきまを有している。
44はラジアルリップで、スリンガ40の外周と摺接しており、異物が環状空間91に浸入するのを防ぐとともに、環状空間91のグリースの流出を防いでいる。
45はアキシャルリップで、スリンガ40の鍔部42と摺接して、泥水や塵埃などの異物が、直接、ラジアルリップ44に到達するのを防いでいる。
各シールリップ43,44,45の材料には、ニトリルゴムやアクリルゴム等のゴム材料が使用される。各シールリップ43,44,45は、高温の金型で加硫成形されると同時に、芯金41と加硫接着されている。
鍔部42には、ゴム磁石で形成されたエンコーダ51が貼り付けられている。エンコーダ51は、円板状で、固定部と反対側の鍔部42の側面に、加硫接着等によって同軸に貼り付けられている。エンコーダ51の表面は着磁されて、周方向にS極とN極が交互に形成されている。
シールリング39の筒状部47の内径寸法は、外輪14のインロー部27外周に形成されたインナ側シール取付面29の外径寸法よりわずかに小さい。このため、筒状部47は、締りばめの状態で組み付けられている。また、スリンガ40は、内輪86の大径の肩36に締りばめの状態で組み付けられている。
インナ側シール取付面29及び大径の肩36には研削加工が施されている。このため、シールリング39とインナ側シール取付面29との嵌め合い部、及び、スリンガ40と大径の肩36との嵌め合い部からの水等の浸入を防止することができる。
これに対して、本実施形態の車輪用軸受装置10では、かかる不具合が生じないので、車両のメンテナンスが容易になるという利点がある。
図2は、外輪14の内周を研削加工する方法を説明する概念図である。
本実施形態の外輪14では、複列の外側軌道面88,88とアウタ側シール取付面24が、単一の砥石53で同時に研削加工されている。単一の砥石53で同時に加工することによって、複列の外側軌道面88,88及びアウタ側シール取付面24の相互の同軸度を高精度で確保することができる。
この結果、車両走行時の異音を低減するとともに、アウタ側密封装置92の耐泥水性能を高くすることができる。
従来の車輪用軸受装置80では、インナ側の密封装置93として組合せシールが使用されている(図5参照)。このため、従来の外輪82では、本実施形態の外輪14と異なり、インナ側の内周においてもシール取付面99が形成されている。
図3に示すように、従来の外輪82では、複列の外側軌道面88,88とアウタ側及びインナ側のシール取付面24,99の相互の同軸度を高精度で確保する必要がある。このため、これらの面が単一の砥石60で同時に研削加工されている。
すなわち、従来の車輪用軸受装置80では、インナ側の密封装置として、組合せシールの形態の密封装置93(図5参照)が使用されている。この場合には、スリンガ94が内輪86の肩36に嵌め合わされているので、肩36と径方向に対向する外輪82の内周にシールリング95を固定する必要があった。しかし、本実施形態(図1参照)では、インナ側のシールリング39をインロー部27の外周に嵌め合わせることとしたため、インロー部27の内周側にシール取付面が不要となるからである。
なお、インロー部27の外周では、外輪14内周の研削加工時にシュー68が当接するため、従来の外輪82においても同様に研削加工が施されている。したがって、本実施形態の外輪14では、シールリング39を組み付けるために新たな加工を必要とせず、製造コストは上昇しない。
更に、砥石53では、従来の外輪82を研削加工する砥石60に形成されていたインナ側取付面研削部61が不要であるため、外周の形状を簡素化することができる。このため、ロータリードレスの製作コストを低減できるので、研削加工に要する費用をさらに削減することができる。
このため、本実施形態の車輪用軸受装置10では、密封装置12,93の耐泥水性能を確保して、長期にわたって滑らかな回転を維持することができる。
(従来構造)60:砥石、61:インナ側取付面研削部、68:シュー、80:車輪用軸受装置、81:ナックル、82:外輪、83:内軸、84:フランジ部、85:ハブシャフト、86:内輪、87:ハブフランジ、88:外側軌道面、89a,89b:内側軌道面、90:玉、91:環状空間、92:密封装置(アウタ)、93:密封装置(インナ)、94:スリンガ、95:シールリング、99:シール取付面(インナ)
Claims (3)
- 内周に複列の外側軌道面と、外周にフランジ部と、前記フランジ部よりインナ側に突出して車両部材に嵌め合わされる円筒形状のインロー部と、前記インロー部の外周に形成されたインナ側シール取付面と、を備え、前記車両部材に固定される外輪と、
外周に一方の内側軌道面を備えるとともに軸端に車輪を取り付けるハブフランジと外周に他方の内側軌道面を備える内輪とが一体に形成されて回転自在の内軸と、
互いに径方向に対向する前記複列の外側軌道面と前記複列の内側軌道面との間に転動自在に配置された複数の転動体と、
前記外輪と前記内軸との間に形成された環状空間のインナ側開口部に組み込まれ、芯金と弾性体のリップとが一体に形成され前記インナ側シール取付面に固定されるシールリングと、前記内輪の肩に固定されるスリンガとを組み合わせた組合せシールと、
を備えた車輪用軸受装置の製造方法であって、
前記インナ側シール取付面を研削加工によって形成する工程と、
前記インナ側シール取付面を基準面として前記外側軌道面を研削加工する工程と、を有することを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。 - 内周に複列の外側軌道面と、外周にフランジ部と、前記フランジ部よりインナ側に突出して車両部材に嵌め合わされる円筒形状のインロー部と、前記インロー部の外周に形成されたインナ側シール取付面と、を備え、前記車両部材に固定される外輪と、
外周に一方の内側軌道面を備えるとともに軸端に車輪を取り付けるハブフランジと外周に他方の内側軌道面を備える内輪とが一体に形成されて回転自在の内軸と、
互いに径方向に対向する前記複列の外側軌道面と前記複列の内側軌道面との間に転動自在に配置された複数の転動体と、
前記外輪と前記内軸との間に形成された環状空間のインナ側開口部に組み込まれ、芯金と弾性体のリップとが一体に形成され前記インナ側シール取付面に固定されるシールリングと、前記内輪の肩に固定されるスリンガとを組み合わせた組合せシールと、
を備えた車輪用軸受装置であって、
前記インナ側シール取付面に研削加工が施されており、
前記インロー部の前記内輪の肩と径方向に対向する内周面に、研削加工が施されず、
前記インロー部の内方に、インナ側端面から所定の深さまで形成された凹部を備えており、
前記芯金が、前記インロー部の内周端で屈曲して、前記リップが前記凹部に収容されていることを特徴とする車輪用軸受装置。 - 前記芯金は不錆性の金属製であることを特徴とする請求項2に記載する車輪用軸受装置。
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