本発明の実施形態のエンジン始動装置は、電動機の駆動によりエンジンを始動させる装置である。本実施形態のエンジン始動装置が適用されるエンジンは、シリンダと、シリンダ内を往復動するピストンと、ピストンの往復動に応じて回転する回転シャフトと、回転シャフトを回転可能に支持するエンジンケースとを有している。
本実施形態のエンジン始動装置は、エンジンの回転シャフトを回転させる電動機と、電動機に設けられた複数の永久磁石の位置を検出する磁石位置検出部と、電動機の駆動を制御する駆動制御部とを備えている。
電動機は、複数の永久磁石、コア、および3個のコイルを有している。各永久磁石は、例えば回転シャフトまたは回転シャフトに固定された部品に固定され、回転シャフトと共に回転する。複数の永久磁石は、例えば回転シャフトの周方向に等間隔に並ぶように配置されている。また、複数の永久磁石は、隣り合う2個の永久磁石の磁極の方向が互いに逆になるように配置されている。コアは、エンジンケースまたはエンジンケースに固定された部品に固定されている。3個のコイルは、コアに設けられ、複数の永久磁石の軌道に対向するようにそれぞれ配置され、かつY結線により結線されている。3個のコイルは例えば回転シャフトの周方向に等間隔に並ぶように配置されている。
駆動制御部は、磁石位置検出部より検出された各永久磁石の位置に基づき、3個のコイルに流す駆動電流を制御することにより電動機を駆動する。また、駆動制御部は、エンジンの始動前に、3個のコイルのそれぞれに直流電流を同時に流すことにより、回転シャフトを回動させ、複数の永久磁石のうちの1個の永久磁石と3個のコイルのうちの1個のコイルとの位置を合わせる位置合わせ処理を行う。
本実施形態のエンジン始動装置によれば、上記位置合わせ処理を行うことにより、電動機の駆動を迅速かつ円滑に開始させることができ、したがって、エンジンの回転シャフトの回転を迅速かつ円滑に開始させることができ、その結果、エンジンの始動の迅速性および円滑性を高めることができる。
駆動制御部は、複数の永久磁石と3個のコイルとの位置関係を認識し、認識した位置関係に応じて3個のコイルのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングおよび駆動電流の方向等を制御して電動機を駆動させる。電動機が駆動している間においては、駆動制御部は、磁石位置検出部により検出された各永久磁石の位置に基づき、3個のコイルのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングおよび駆動電流の方向等を決定する。しかしながら、電動機の駆動を開始させるときには、この時点において電動機は停止しているので、磁石位置検出部は各永久磁石の位置を検出することができない。その結果、駆動制御部は、磁石位置検出部により検出された各永久磁石の位置に基づいて3個のコイルのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングまたは駆動電流の方向等を決定することができない。
そこで、駆動制御部は、電動機の駆動を開始させるときには、上記位置合わせ処理を行うことにより、3個のコイルのうちの特定の1個のコイルを、複数の永久磁石のうち、磁極の方向が特定の方向を向いた1個の永久磁石の真正面に移動させる。
3個のコイルにおいてそれらの位置関係は予め定められている。また、複数の永久磁石においてそれらの位置関係は予め定められている。それゆえ、3個のコイルのうちの特定の1個のコイルと、磁極の方向が特定の方向を向いた1個の永久磁石との位置関係が定まれば、複数の永久磁石と3個のコイルとの位置関係を認識することが可能になる。その結果、3個のコイルのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングおよび駆動電流の方向等を決定することが可能になり、その決定に従って駆動電流を3個のコイルのそれぞれに流すことにより、電動機の駆動を迅速かつ円滑に開始させることができる。
また、駆動制御部は、位置合わせ処理において、3個のコイルのそれぞれに直流電流を同時に流すことにより、3個のコイルのうちの特定の1個のコイルを、複数の永久磁石のうち、磁極の方向が特定の方向を向いた1個の永久磁石の真正面に移動させる。ここで、3個のコイルのそれぞれに直流電流を同時に流すことにより、上記1個のコイルが上記1個の永久磁石の真正面に移動する原理について説明する。
電動機が有する3個のコイルをそれぞれU相コイル、V相コイルおよびW相コイルということとする。本実施形態における電動機においては、これらU相コイル、V相コイルおよびW相コイルがY結線により結線されている。上記位置合わせ処理において、駆動制御部は、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルのそれぞれに直流電流を同時に流す。Y結線により結線されたU相コイル、V相コイルおよびW相コイルのそれぞれに直流電流が同時に流れる態様には次の3個の態様がある。
(1)直流電流が、まず、U相コイルをY結線の中性点に向かって流れ、次に、中性点で分岐してV相コイルおよびW相コイルをそれぞれ流れる態様
(2)直流電流が、まず、V相コイルをY結線の中性点に向かって流れ、次に、中性点で分岐してW相コイルおよびU相コイルをそれぞれ流れる態様
(3)直流電流が、まず、W相コイルをY結線の中性点に向かって流れ、次に、中性点で分岐してU相コイルおよびV相コイルをそれぞれ流れる態様
上記位置合わせ処理において、駆動制御部は、(1)~(3)のいずれかの態様となるように、直流電流をU相コイル、V相コイルおよびW相コイルのそれぞれに同時に流す。例えば、駆動制御部が(1)の態様で、直流電流をU相コイル、V相コイルおよびW相コイルのそれぞれに同時に流したとする。この場合、U相コイルの磁力が他の2個のコイルのいずれの磁力よりも大きくなる。それゆえ、電動機が有する複数の永久磁石のうち、現時点においてU相コイルに最も近い位置にあり、かつU相コイルと向かい合う側の磁極がU相コイルの磁極と反対である永久磁石(例えばU相コイルがS極に励磁された場合には、U相コイルと向かい合う側の磁極がN極の永久磁石)に接近するように、回転シャフトが回動を開始する。そして、U相コイルが当該永久磁石の真正面(回転シャフトの周方向において当該永久磁石の中央の位置)に達したときに、回転シャフトが停止する。このように、3個のコイルのそれぞれに直流電流を同時に流すことで、3個のコイルのうちの特定の1個のコイルを、複数の永久磁石のうち、磁極の方向が特定の方向を向いた1個の永久磁石の真正面に移動させることができる。
(エンジン始動装置)
図1は、本発明の実施例のエンジン始動装置11が設けられたエンジン1を示す断面図である。図1において、エンジン1は、4ストロークのエンジンであり、例えば鞍乗型車両等の車両に搭載される。エンジン1は、クランクケース2、シリンダ3およびシリンダヘッド4を備えている。シリンダ3内にはピストン5が往復動可能に設けられている。クランクケース2にはクランクシャフト6が回転可能に支持されている。ピストン5はコネクティングロッド7を介してクランクシャフト6に接続されており、クランクシャフト6は、エンジン1の稼働時において、ピストン5の往復動に応じて回転する。なお、クランクケース2は特許請求の範囲の記載における「エンジンケース」の具体例であり、クランクシャフト6は特許請求の範囲の記載における「回転シャフト」の具体例である。
本発明の実施例のエンジン始動装置11は、電動発電機12、電磁ピックアップ32および駆動制御回路35を備えている。電動発電機12は、エンジン1の始動時には、クランクシャフト6を回転させる電動機(具体的にはブラシレスモータ)として機能し、エンジン1の始動後には、エンジン1の稼働によるクランクシャフトの回転を利用して発電を行う発電機として機能する。電動発電機12は、クランクケース2内の右部に収容され、クランクシャフト6の右端側部分に接続されている。電磁ピックアップ32は、電動発電機12に設けられた永久磁石21の位置を検出する機能を有している。電磁ピックアップ32は、クランクケース2内の右部であって電動発電機12のロータケース14の外周面と対向する位置に配置され、クランクケース2、またはクランクケース2に固定された部品に固定されている。駆動制御回路35は、電動発電機12の駆動を制御する回路である。エンジン1およびエンジン始動装置11が設けられた車両が鞍乗型車両である場合には、駆動制御回路35は、例えば、保護ケースに収容され、鞍乗型車両のシートの下側、フロントカウルの内側等、鞍乗型車両において雨等が当たり難い箇所に配置されている。なお、図1では、電磁ピックアップ32および駆動制御回路35を模式的に示している。また、電動発電機12は特許請求の範囲の記載における「電動機」の具体例である。また、電磁ピックアップ32は、電動発電機12のロータケース14に設けられた後述する複数の凸部24(図3参照)と共に、特許請求の範囲の記載における「磁石位置検出部」の具体例である。また、駆動制御回路35は特許請求の範囲の記載における「駆動制御部」の具体例である。
また、クランクケース2内において、電動発電機12の右方には、エンジン1を冷却するための冷却風を発生させるファン8が設けられている。ファン8はクランクシャフト6に接続されており、クランクシャフト6と共に回転する。また、クランクシャフト6の左端側部分には変速機9のドライブプーリ10が接続されている。
(電動発電機)
図2は電動発電機12を示している。図3は、電動発電機12における永久磁石21、コイル31および凸部24等の位置関係、並びに電動発電機12の電気的・磁気的構造を電磁ピックアップ32と共に模式的に示している。
図2に示すように、電動発電機12は、クランクシャフト6に固定され、クランクシャフト6と共に回転するロータ13と、クランクケース2に固定されるステータ25とを備えている。
図4は電動発電機12のロータ13を示している。図5はロータ13の分解図である。図4および図5に示すように、ロータ13は、ロータケース14、12個の永久磁石21および磁石支持部材23を備えている。
ロータケース14は、例えば鉄鋼等の磁性材料により、底壁部15および周壁部16を有する有底円筒状に形成されている。ロータケース14の底壁部15の中心部はクランクシャフト6の右端側部分に固定される。具体的には、底壁部15の中央には孔が形成され、その孔には、例えば金属材料により円筒状に形成されたボス部17が挿入されている。ボス部17は底壁部15に固定されている。ボス部17の内側にはクランクシャフト6の右端側部分が挿入される。ボス部17とクランクシャフト6とは、例えば、ボス部17の内周面に形成されたキー溝18とクランクシャフト6の外周面に形成されたキー溝との間にキーを嵌合することにより固定される。
12個の永久磁石21は、ロータケース14内において周方向に全周に亘って等間隔に並ぶように配置され、ロータケース14の周壁部16の内面側に固定されている。具体的には、12個の永久磁石21は、図5に示すように、4枚の磁石板22A~22Dをロータケース14内に挿入し、4枚の磁石板22A~22Dが挿入されたロータケース14に磁石支持部材23を挿入し、磁石支持部材23をロータケース14に固定することにより、ロータケース14の周壁部16の内面側に支持されている。磁石支持部材23は金属等の磁性材料により円筒状に形成されている。
各磁石板22A~22Dは例えばフェライト磁石またはネオジム磁石であり、円弧状に湾曲した板状に形成されている。機能的に見て、各磁石板22A~22Dには3個の永久磁石21が形成されている。すなわち、磁石板22Aは、その両端側部分の内周面がそれぞれS極となるように着磁され、中央部分の内周面がN極となるように着磁されている。磁石板22Aと対向するように配置される磁石板22Cも磁石板22Aと同様に着磁されている。また、磁石板22Bは、その両端側部分の内周面がそれぞれN極となるように着磁され、中央部分の内周面がS極となるように着磁されている。磁石板22Bと対向するように配置される磁石板22Dも磁石板22Bと同様に着磁されている。
4枚の磁石板22A~22Dをロータケース14内に周方向に磁石板22A、22B、22C、22Dの順番に配置することにより、機能的に見て、12個の永久磁石21がロータケース14内において周方向に、互いに隣り合う2個の永久磁石21の磁極の方向が互いに反対となるように配置される。すなわち、図3に示すように、内周側がN極となるように磁極の方向が設定された永久磁石21と、内周側がS極となるように磁極の方向が設定された永久磁石21とがロータケース14内の周方向に交互に配置される。以下、内周側がN極となるように磁極の方向が設定された永久磁石を、「N極の永久磁石」といい、内周側がS極となるように磁極の方向が設定された永久磁石を「S極の永久磁石」という。
また、ロータケース14の周壁部16の外面には、図4に示すように、11個の凸部24が設けられている。各凸部24は永久磁石21の位置を示す指標として機能する。各凸部24はロータケース14の周壁部16の外面から径方向に突出している。各凸部24は、例えばプレス加工または成形等によりロータケース14の周壁部16と一体形成されている。なお、例えば磁性材料からなる複数の円柱状の小片をロータケース14の周壁部16に溶接またはねじ止め等の手段で取り付けることにより11個の凸部24を形成してもよい。また、11個の凸部24は特許請求の範囲の記載における「指標部」の具体例である。
また、11個の凸部24のそれぞれの位置は、12個の永久磁石21のうち、11個の永久磁石21のそれぞれの位置と一対一に対応している。ここで、図6は、12個の永久磁石21のうちの1個の永久磁石21と、当該永久磁石21に対応する1個の凸部24を示している。図6中の矢示Aはロータ13の正転方向(すなわちクランクシャフト6の正転方向)を示している。図6において、永久磁石21に対応する凸部24は、当該永久磁石21と、ロータ13の正転方向前側において当該永久磁石21の隣りに配置された永久磁石との境界を通ってロータケース14の径方向に伸びる直線Bと接する位置に配置されている。11個の永久磁石21にそれぞれ対応する11個の凸部24はいずれも図6に示すように配置されている。
なお、図7に示すように、11個の凸部24を、互いに隣り合う2個の永久磁石21の境界に対応する位置にそれぞれ配置してもよい。また、図8に示すように、11個の凸部24を、ロータ13の周方向において永久磁石21の中央に対応する位置にそれぞれ配置してもよい。
図2に示すように、ステータ25は、コア26および18個のコイル31を備えている。コア26は、例えば金属材料により円板状に形成されたベース部27を備えている。ベース部27はクランクケース2に固定されている。ベース部27の中央には、ロータケース14に固定されたボス部17を挿入するための挿入孔28が形成されている。また、ベース部27の外周側には、例えば鉄鋼等の磁性材料により形成された18個のティース29が設けられている。各ティース29はベース部27の外周側からベース部27の径方向に突出している。18個のティース29はベース部27の外周の全周に亘って等間隔に配置されている。
18個のコイル31は、18個のティース29に巻線を施すことにより形成されている。18個のコイル31は3相のコイルを形成している。すなわち、電動発電機12は、18個のコイル31のうち、6個のコイルにU相の駆動電流を流し、他の6個のコイルにV相の駆動電流を流し、残りの6個のコイルにW相の駆動電流を流すことにより駆動される。以下、コイル31につき、駆動電流の位相を区別して説明する場合には、18個のコイル31のうち、U相の駆動電流を流すコイルには31Uの符号を付し、V相の駆動電流を流すコイルには31Vの符号を付し、W相の駆動電流を流すコイルには31Wの符号を付す。コイル31U、31V、31Wは、図3に示すように、コア26の周方向においてコイル31U、コイル31V、コイル31Wの順番に配置されている。
また、図2に示すように、ステータ25はロータ13と同軸に配置されている。具体的には、ステータ25は、ロータケース14内において、ボス部17と永久磁石21との間に配置されている。また、コア26のベース部27に形成された挿入孔28内には、ロータケース14に固定されたボス部17が挿入されている。ステータ25は、ボス部17、ロータケース14、磁石支持部材23および各永久磁石21のいずれからも離れている。すなわち、挿入孔28の直径はボス部17の外径よりも大きく、ボス部17の外周面は挿入孔28の内周面から離れている。また、コア26および各コイル31は、ロータケース14の底壁部15から離れている。また、各ティース29の先端部は、磁石支持部材23および各永久磁石21から離れている。また、図3に示すように、ステータ25のコア26に設けられた18個のコイル31は、ロータ13のロータケース14に設けられた12個の永久磁石21の軌道Pの内周側に位置し、軌道Pと対向するように配置されている。
(電磁ピックアップ)
電磁ピックアップ32は、図3に示すように、ロータケース14の外周側に、ロータケース14から所定距離離れた位置に配置されている。また、電磁ピックアップ32は、11個の凸部24の軌道Qと対向するように配置されている。
電磁ピックアップ32は、ロータケース14の外周面に形成された凸部24の位置に基づいて、ロータケース14内に設けられた永久磁石21の位置を検出する。具体的には、電磁ピックアップ32は、磁石およびピックアップコイルを内蔵している。ロータ13の回転時には、電磁ピックアップ32に内蔵された磁石により形成された磁界が凸部24の接近、離間により変化し、それに伴ってピックアップコイルに電流が流れる。電磁ピックアップはその電流に基づく信号を検出信号として出力する。したがって、この検出信号は、凸部24の位置を示す信号となる。上述したように、各凸部24の位置と各永久磁石21の位置とは対応しているので、電磁ピックアップ32から出力された検出信号に基づいて永久磁石21の位置を認識することができる。
(駆動制御回路)
図9は駆動制御回路35、および駆動制御回路35に接続されたコイル31U、31V、31Wを示している。説明の便宜上、図9においては、6個のコイル31Uのうちの1個のコイル31Uと、当該コイル31Uと120度の間隔を置いて配置された1個のコイル31Vと、当該コイル31Vと120°の間隔を置いて配置された1個のコイル31Wを示している。
駆動制御回路35は、コイル31U、31V、31Wにそれぞれ流す駆動電流を制御することにより電動発電機12を駆動する回路である。図9に示すように、駆動制御回路35は、駆動電流供給回路36およびマイクロコンピュータ41を備えている。
駆動電流供給回路36の入力端子37には、車両に搭載されたバッテリーから出力される例えば12Vの直流電圧Vbが印加され、これにより、駆動電流供給回路36に直流電流が供給される。また、駆動電流供給回路36の出力側には電流検出用抵抗39を介してコイル31U、31V、31Wが接続されている。また、駆動電流供給回路36は、6個のFET(電界効果トランジスタ)38A~38Fを備えている。FET38A~38Fのオン、オフにより、コイル31U、31V、31Wに供給される駆動電流が切り換わる。
マイクロコンピュータ41には、駆動電流供給回路36のFET38A~38Fのそれぞれのゲート端子G1~G6が接続されている。マイクロコンピュータ41は、駆動電流供給回路36のFET38A~38Fのオン、オフを切り換えることにより、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御する。具体的には、マイクロコンピュータ41は、予め設定された制御シーケンスに従い、オープンループ制御によりFET38A~38Fのオン、オフを切り換え、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングおよび駆動電流の方向等を制御することができる。また、マイクロコンピュータ41には電磁ピックアップ32が接続されている。マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32から出力された検出信号に基づき、クローズドループ制御(例えばベクトル制御)によりFET38A~38Fのオン、オフを切り換え、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングおよび駆動電流の方向等を制御することができる。そして、マイクロコンピュータ41は、このようにしてコイル31U、31V、31Wのそれぞれに対して駆動電流を流すタイミングおよび駆動電流の方向等を制御することで、ロータ13およびクランクシャフト6の回転方向および回転数(回転速度)を制御することができる。また、マイクロコンピュータ41は、車両に設けられたメインコントローラと接続されている。
また、駆動電流供給回路36とコイル31U、31V、31Wとの間には電流検出用抵抗39が接続されている。詳細な説明は省略するが、マイクロコンピュータ41は、電流検出用抵抗39を用いてコイル31U、31V、31Wのそれぞれを流れる駆動電流を検出することができる。
(エンジン始動処理)
図10は、エンジン始動装置11によるエンジン始動処理を示している。図10において、エンジン始動処理は、エンジン1の始動前にコイル31UとN極の永久磁石21との位置を合わせる位置合わせ処理(ステップS1)、スイングバック制御によりエンジン1を始動させる処理(ステップS2~S13)、および位置合わせ処理を行うタイミングを監視する処理(ステップS15)を含んでいる。エンジン始動処理は、車両の電源がオンになっている間、マイクロコンピュータ41の制御のもと、継続的に実行される。
エンジン始動処理は、車両の電源がオンになった直後に開始される。車両の電源がオンになった直後、マイクロコンピュータ41は位置合わせ処理を行う(ステップS1)。
位置合わせ処理において、マイクロコンピュータ41は、各コイル31U、各コイル31Vおよび各コイル31Wに同時に直流電流を流す。具体的には、マイクロコンピュータ41は、同時に、駆動電流供給回路36のFET38A、38Dおよび38Fをオンにし、FET38B、38Cおよび38Eをオフにする。図11はこの状態の回路を示している。駆動電流供給回路36のFET38A、38Dおよび38Fをオンにし、FET38B、38Cおよび38Eをオフにすると、図11中の破線の矢印により示すように、直流電流が、まず、コイル31UをY結線の中性点40に向かって流れ、次に、中性点40で分岐し、コイル31Vおよびコイル31Wをそれぞれ流れる。コイル31Uに直流電流が図11に示す方向に流れたとき、コイル31Uの外周端側の磁極がS極になるようにコイル31Uの巻線の巻回方向が設定されている。また、コイル31Vに直流電流が図11に示す方向に流れたとき、コイル31Vの外周端側の磁極がN極になるようにコイル31Vの巻線の巻回方向が設定されている。また、コイル31Wに直流電流が図11に示す方向に流れたとき、コイル31Wの外周端側の磁極がN極になるようにコイル31W巻線の巻回方向が設定されている。したがって、直流電流がコイル31U、31Vおよび31Wに図11に示すように流れると、コイル31Uの外周端側の磁極がS極になり、コイル31Vの外周端側の磁極がN極になり、コイル31Wの外周端側の磁極がN極になる。また、このとき、コイル31Uに流れる電流の大きさが、コイル31Vおよび31Wのそれぞれに流れる電流の大きさよりも大きくなるので、コイル31Uの磁力がコイル31Vおよび31Wのいずれの磁力よりも大きくなる。以上の結果、コイル31UがN極の永久磁石21の真正面の位置となるように、ステータ25に対してロータ13およびクランクシャフト6が回動する。このように、駆動電流供給回路36のFET38A、38Dおよび38Fをオンにし、FET38B、38Cおよび38Eをオフにすると、各コイル31UがN極の永久磁石21の真正面に位置するようになる。なお、図3に示す電動発電機12は、各コイル31UがN極の永久磁石21の真正面に位置している状態にある。
位置合わせ処理により、各コイル31UをN極の永久磁石21の真正面の位置に合わせた後、マイクロコンピュータ41は、エンジン始動信号が入力されるまで待機する(ステップS2)。
例えば、ユーザが車両の電源をオンにした後、エンジン始動ボタンを押したときには、車両に設けられたメインコントローラからマイクロコンピュータ41にエンジン始動信号が入力される。マイクロコンピュータ41は、エンジン始動信号の入力に応じ、スイングバック制御を開始する(ステップS2:YES)。
スイングバック制御とは、エンジンの始動時にクランクシャフトを一旦逆転させてから正転させることで、電動機の動力によりクランクシャフトが圧縮上死点を乗り越えるための助走距離をかせぐ制御である。ここで、図12は、クランク角とシリンダ3内の圧力との関係を示している。図12に示すように、スイングバック制御では、現時点におけるクランク角P1からクランクシャフト6を電動発電機12により逆転させ、クランク角が圧縮上死点P3の手前の位置P2に達したときに、クランクシャフト6の回転を逆転から正転に切り換える。その後、クランクシャフト6に、電動発電機12により、圧縮上死点P0を乗り越えるのに十分なトルクを与え、クランクシャフト6がエンジン1における混合気の燃焼エネルギーによって正転可能となるまで、クランクシャフト6を正転させる。
具体的には、マイクロコンピュータ41は、まず、オープンループ制御で、電動発電機12のロータ13およびクランクシャフト6を逆転させる(ステップS3)。すなわち、位置合わせ処理が終了した時点では、クランクシャフト6およびロータ13は停止しているので、電磁ピックアップ32からの検出信号は得られない。しかしながら、位置合わせ処理により、各コイル31UがN極の永久磁石21の真正面に位置しており、位置合わせ処理を自ら行ったマイクロコンピュータ41はもちろんそのことを認識している。そして、ステータ25において、各コイル31U、31V、31Wの配置は予め定められており、ロータ13において各永久磁石21の配置は予め定められているので、各コイル31UとN極の永久磁石21との位置関係がわかれば、各コイル31U、31V、31Wと各永久磁石21との位置関係を認識することができる。したがって、ロータ13の回転を開始させるために、各コイル31U、31V、31Wのそれぞれに対して駆動電流を流す順序およびタイミング並びに駆動電流の方向を決めることができる。そこで、マイクロコンピュータ41は、予め設定された制御シーケンスに従ってFET38A~38Fのオン、オフを切り換え、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに対して駆動電流を流す順序およびタイミング並びに駆動電流の方向を制御することにより、ロータ13およびクランクシャフト6を逆転させる。また、このとき、マイクロコンピュータ41は、クランクシャフト6が逆転した状態で圧縮上死点を乗り越えることがないように、電動発電機12からクランクシャフト6へ与えるトルクを設定する。なお、ステップS3が特許請求の範囲の記載における「第1のシャフト逆転処理」の具体例である。
ロータ13およびクランクシャフト6が逆転を開始すると、電磁ピックアップ32から検出信号が得られるようになる。マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号が得られたか否かを判断する(ステップS4)。電磁ピックアップ32からの検出信号が得られるまでは(ステップS4:NO)、マイクロコンピュータ41は、オープンループ制御により、電動発電機12のロータ13およびクランクシャフト6を逆転させる。電磁ピックアップ32からの検出信号が得られた後は(ステップS4:YES)、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号に基づき、クローズドループ制御によりFET38A~38Fのオン、オフを切り換えることで、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御し、ロータ13およびクランクシャフト6の逆転を継続させる(ステップS5)。また、詳細な説明を省略するが、ロータ13およびクランクシャフト6が逆転を開始すると、回転角度に応じて特定のコイル31に無負荷誘起電圧が生じる。マイクロコンピュータ41は、クローズドループ制御を行うに当たり、電磁ピックアップ32からの検出信号に加え、上記無負荷誘起電圧を用いて、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御する。なお、ステップS5が特許請求の範囲の記載における「第2のシャフト逆転処理」の具体例である。
ロータ13およびクランクシャフト6の逆転の制御をオープンループ制御からクローズドループ制御に切り換えた後、マイクロコンピュータ41は、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数を検出する(ステップS6)。マイクロコンピュータ41は、この回転数の検出を、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の移動平均を算出することにより行う。
続いて、マイクロコンピュータ41は、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の検出結果に基づき、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数が減少したか否かを判断する(ステップS7)。すなわち、電動発電機12はロータ13およびクランクシャフト6をシリンダ3内の圧力に抗して逆転させている。図12に示すように、ロータ13およびクランクシャフト6が逆転し、クランク角が圧縮上死点P3付近に接近すると、シリンダ3内の圧力が高くなるため、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数が減少する。マイクロコンピュータ41は、クランク角が圧縮上死点P3付近に接近したことにより、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数が減少したことを検出する。
ロータ13およびクランクシャフト6の回転数が減少したことが検出されない間(ステップS7:NO)、マイクロコンピュータ41は、クローズドループ制御による駆動電流の制御およびロータ13およびクランクシャフト6の回転数の検出を継続する。一方、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数が減少したことが検出されたとき(ステップS7:YES)、マイクロコンピュータ41は、ステップS6で検出したロータ13およびクランクシャフト6の回転数に基づき、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少が検出された時点から、ロータ13およびクランクシャフト6が停止するまでの推定所要時間を決定する(ステップS8)。すなわち、スイングバック制御では、図12に示すように、ロータ13およびクランクシャフト6が圧縮上死点P3に接近し、シリンダ3内の圧力に抗し切れずにロータ13およびクランクシャフト6が停止したときに、ロータ13およびクランクシャフト6の回転制御を逆転から正転に切り換える。ロータ13およびクランクシャフト6の回転が減少すると、電磁ピックアップ32からの検出信号が得られなくなる(また、上記無負荷誘起電圧も得られなくなる)ので、電磁ピックアップ32からの検出信号(または上記無負荷誘起電圧)に基づき、ロータ13およびクランクシャフト6の停止位置を認識することは困難である。そこで、マイクロコンピュータ41は、クローズドループ制御を行っている間のロータ13およびクランクシャフト6の回転数に基づき、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少が検出された時点から、ロータ13およびクランクシャフト6が停止するまでの推定所要時間を決定する。この推定所要時間の決定は、例えば、クローズドループ制御を行っている間のロータ13およびクランクシャフト6の回転数と、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数が減少を開始した時点からロータ13およびクランクシャフト6が停止するまでの所要時間との関係を実験等により調べて記述したデータテーブルまたは計算式等を用いて行う。
続いて、マイクロコンピュータ41は、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少が検出された時点から上記推定所要時間が経過したか否かを判断する(ステップS9)。
そして、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少が検出された時点から上記推定所要時間が経過したとき(ステップS9:YES)、マイクロコンピュータ41は、まず、オープンループ制御により、FET38A~38Fのオン、オフを切り換え、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御し、ロータ13およびクランクシャフト6の回転制御を逆転から正転へ切り換える(ステップS10)。このとき、マイクロコンピュータ41は、クランクシャフト6が圧縮上死点P0を乗り越えることができるように、電動発電機12からクランクシャフト6へ与えるトルクを設定する。
続いて、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号が得られたか否かを判断する(ステップS11)。電磁ピックアップ32からの検出信号が得られるまでは(ステップS11:NO)、マイクロコンピュータ41は、オープンループ制御により、電動発電機12のロータ13およびクランクシャフト6を正転させる。電磁ピックアップ32からの検出信号が得られた後は(ステップS11:YES)、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号に基づき、クローズドループ制御によりFET38A~38Fのオン、オフを切り換えることで、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御し、ロータ13およびクランクシャフト6の正転を継続させる(ステップS12)。なお、ロータ13およびクランクシャフト6をクローズドループ制御で正転させる際にも、マイクロコンピュータ41は、電磁ピックアップ32からの検出信号に加え、上記無負荷誘起電圧を用いて、コイル31U、31V、31Wのそれぞれに流す駆動電流を制御する。
ロータ13およびクランクシャフト6が圧縮上死点を乗り越えて正転を継続し、エンジン1が始動したとき、車両に設けられたメインコントローラからマイクロコンピュータ41に、エンジン1が始動したことを知らせる信号が入力される。これに応じ、マイクロコンピュータ41は、電動発電機12の制御を発電制御に切り換える(ステップS13:YES、ステップS14)。なお、発電制御については説明を省略する。
発電制御を行っている間、マイクロコンピュータ41は、エンジン1が停止したか否かを検出する(ステップS15)。例えば、車両が信号待ちのために停止し、アイドリングストップ機能によりエンジン1が停止したとき、車両に設けられたメインコントローラからマイクロコンピュータ41に、エンジン1が停止したことを知らせる信号が入力される。マイクロコンピュータ41は、その信号の入力に基づき、エンジン1が停止したことを検出する。エンジンが停止したことを検出したとき(ステップS15:YES)、マイクロコンピュータ41は位置合わせ処理を行う(ステップS1)。その後、車両に設けられたメインコントローラからマイクロコンピュータ41にエンジン始動信号が入力されたとき、マイクロコンピュータ41はスイングバック制御を行い、エンジン1を始動させ、エンジン1の始動後、電動発電機12の制御を発電制御に切り換える。以上の処理が、車両の電源がオンになっている間、繰り返し行われる。
以上説明した通り、本発明の実施例のエンジン始動装置11によれば、位置合わせ処理を行って、各コイル31UをN極の永久磁石21の真正面に移動させることにより、ロータ13の回転を開始させるために各コイル31U、31V、31Wに対して駆動電流を流す順序およびタイミング並びに駆動電流の方向を決定することができる。そして、その決定に従って駆動電流を各コイル31U、31V、31Wに流すことにより、電動発電機12の駆動を迅速かつ円滑に開始させることができる。したがって、クランクシャフト6の回転を迅速かつ円滑に開始させることができ、その結果、エンジン1の始動の迅速性および円滑性を高めることができる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、例えばアイドリングストップ機能等によりエンジン1が停止した直後に位置合わせ処理を行う。これにより、エンジン始動信号が入力された後に位置合わせ処理を行う場合と比較して、電動発電機12の駆動を迅速に開始させることができる。すなわち、エンジン始動信号が入力される前の段階で位置合わせ処理を済ませておくことで、エンジン始動信号が入力されたときに即時に電動発電機12の駆動を開始させることができる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、車両の電源がオンになった直後に位置合わせ処理を行う。これにより、車両の電源がオンになり、その後、エンジン始動信号が入力され、その後に位置合わせ処理を行う場合と比較して、電動発電機12の駆動を迅速に開始させることができる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、電動発電機12における永久磁石21の位置を電磁ピックアップ32により検出し、電磁ピックアップ32からの検出信号に基づいて、ロータ13の回転のクローズドループ制御を行う。電動発電機12における永久磁石21の位置検出に電磁ピックアップ32を用いることにより、次のような作用効果が得られる。
従来、ブラシレスモータ等、整流子を持たない電動機は、当該電動機のロータに設けられた永久磁石の位置(つまりロータの位置)を検出するためのホールセンサ(ホール素子)を備えている。ホールセンサの耐熱温度はおよそ120度である。電動機をエンジン始動装置に適用する場合には、通常、電動機をクランクシャフト内に取り付ける。電動機をクランクシャフト内に取り付けた場合、電動機にエンジンオイルがかかり、または電動機がエンジンオイルに浸かる。エンジンオイルの温度は、エンジンの駆動時には、ホールセンサの耐熱温度である120度を超える。したがって、ホールセンサを備えた従来の電動機をエンジン始動装置に適用することは困難である。これに対し、電磁ピックアップの耐熱温度は、エンジン駆動時におけるエンジンオイルの温度よりも十分に高い。したがって、電動機のロータに設けられた永久磁石の位置検出に電磁ピックアップを用いることにより、電動機をエンジン始動装置に適用することが可能になる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、電磁ピックアップ32により永久磁石21の位置を検出する際の指標として機能する複数の凸部24が、ロータケース14の周壁部16の外面に設けられている。したがって、他の部品の配置スペースが制限されることを防止することができ、かつエンジンが大型化することを防止することができる。すなわち、電磁ピックアップ32により永久磁石21の位置を検出する指標を形成する方法としては、例えば、クランクシャフトにおいて電動発電機が接続されている箇所とは別の箇所に歯車を設ける方法も考えられる。しかし、この方法では、歯車を設けるスペースをクランクケース内に確保しなければならず、その結果、他の部品の配置スペースが制限され、またはエンジンが大型化するおそれがある。本発明の実施例のエンジン始動装置11によれば、複数の凸部24がロータケース14の周壁部16の外面に設けられているので、電磁ピックアップ32により永久磁石21の位置を検出する指標を設けるためのスペースを別途確保する必要がない。よって、他の部品の配置スペースが制限されることを防止することができ、かつエンジンが大型化することを防止することができる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、11個の凸部24のそれぞれの位置が、12個の永久磁石21のうち、11個の永久磁石21のそれぞれの位置と一対一に対応している。この構成により、凸部24の位置に基づいて永久磁石21の位置を高精度に検出することができる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、図6に示すように、永久磁石21に対応する凸部24が、当該永久磁石21と、ロータ13の正転方向前側において当該永久磁石21の隣りに配置された永久磁石との境界を通ってロータケース14の径方向に伸びる直線Bと接する位置に配置されている。この構成により、凸部24の位置に基づく永久磁石21の位置検出の精度を一層高めることができる。なお、図7に示す変形例においても同様の作用効果が得られる。
また、本発明の実施例のエンジン始動装置11においては、スイングバック制御において、逆転するロータ13およびクランクシャフト6がシリンダ3内の圧力に抗し切れずに停止するタイミングを推定し、推定したタイミングで、ロータ13およびクランクシャフト6の回転制御を逆転から正転に切り換える。具体的には、逆転しているロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少を検出し、そして、クローズドループ制御を行っている間のロータ13およびクランクシャフト6の回転数に基づき、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少が検出された時点から、ロータ13およびクランクシャフト6が停止するまでの推定所要時間を決定し、そして、ロータ13およびクランクシャフト6の回転数の減少が検出された時点から推定所要時間が経過したときに、ロータ13およびクランクシャフト6の回転制御を逆転から正転に切り換える。これにより、電磁ピックアップ32からの検出信号が得られない状況下においても、ロータ13およびクランクシャフト6の回転を逆転から正転に切り換えるタイミングを定めることができる。
なお、上記実施例では、12個の永久磁石21および18個のコイルを有する電動発電機12、すなわち、12極18スロットの電動発電機12を例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明は、2極3スロット、4極3スロット、4極6スロット等、極数およびスロット数の異なる電動発電機を有するエンジン始動装置にも適用することができる。
また、上記実施例では、電動発電機12を備えたエンジン始動装置11を例にあげたが、本発明はこれに限らない。本発明は、発電機能を有していない電動機を備えたエンジン始動装置にも適用することができる。
また、上記実施例では、電動発電機12をクランクシャフト6に直接接続する場合を例にあげたが、電動発電機12をクランクシャフト6と連動する他の回転シャフトに接続してもよい。
また、上記実施例では、コア26および電磁ピックアップ32は、クランクケース2に直接固定してもよいし、クランクケース2に固定された他の部品に固定してもよい。
また、上記実施例では、電磁ピックアップ32により永久磁石21の位置を検出する指標を、ロータケース14の周壁部16の外面に設けられた複数の凸部24により構成する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。ロータケース14の周壁部16の外面に複数の凹部を設け、これら凹部により上記指標を構成してもよい。また、クランクシャフト6に別途歯車を設け、この歯車により上記指標を構成してもよい。
また、上記実施例では、12個の永久磁石21のうちの11個の永久磁石21に対応する11個の凸部24を設けた。永久磁石21の個数に対して凸部24の個数が1つ少ないのは、凸部を1箇所の欠落を、エンジンの点火や燃料噴射のタイミングを図るための指標として利用するためである。しかしながら、エンジンの点火や燃料噴射のタイミングを図ることを考慮せずに、12個すべての永久磁石21に一対一に対応するように12個の凸部24を設けてもよい。
また、上記実施例では、ロータ13がステータ25の外周側に配置された電動発電機12を例にあげたが、本発明のエンジン始動装置の電動発電機として、ロータがステータの内周側に配置された電動発電機を用いることができる。
また、上記実施例では、位置合わせ処理において、図11に示すように、直流電流が、コイル31UをY結線の中性点40に向かって流れ、その後、中性点40で分岐し、コイル31Vおよびコイル31Wをそれぞれ流れるように、駆動電流供給回路36のFET38A、38Dおよび38Fをオンにし、FET38B、38Cおよび38Eをオフにする場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。直流電流が、コイル31VをY結線の中性点40に向かって流れ、その後、中性点40で分岐し、コイル31Wおよびコイル31Uをそれぞれ流れるように、FET38B、38Cおよび38Fをオンにし、FET38A、38Dおよび38Eをオフにしてもよいし、直流電流が、コイル31WをY結線の中性点40に向かって流れ、その後、中性点40で分岐し、コイル31Uおよびコイル31Vをそれぞれ流れるように、FET38B、38Dおよび38Eをオンにし、FET38A、38Cおよび38Fをオフにしてもよい。
また、上記実施例では、エンジン始動処理においてスイングバック制御を行う場合を例にあげたが、スイングバック制御を行わず、エンジン始動信号に応じてロータ13およびクランクシャフト6を直ちに正転させる制御を行ってもよい。
また、本発明は、車両に限らず、船外機等、他の機械または装置にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うエンジン始動装置もまた本発明の技術思想に含まれる。