以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクタンクおよびこれを備えたインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
図1は、インクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)100の正面図である。図2は、プリンタ100の主要部(具体的には、本体部112)の内部構造を表す正面図である。なお、本明細書において「インクジェットプリンタ」とは、従来公知のインクジェット技術による印刷方法、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式等の連続方式や、サーマル方式、あるいは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式を利用したプリンタ全般をいう。また、「プリンタ」とは、二次元の画像を印刷する、所謂、2Dプリンタと、三次元の造形物を造形する、所謂、3Dプリンタ(三次元造形装置)と、を包含する用語である。
また、以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ100の正面にいるユーザ(プリンタ100の使用者)から見た左、右、上、下をそれぞれ意味し、プリンタ100からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ、前、後、左、右、上、下を表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではない。
図1に示すように、プリンタ100は、2Dプリンタである。プリンタ100は、記録媒体5に印刷を行うためのものである。プリンタ100は、所謂、Roll-to-Rollタイプである。プリンタ100は、大判サイズの記録媒体5に対して印刷を行う業務用の大型プリンタである。記録媒体5は、本実施形態ではロール状の媒体である。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類はもちろんのこと、例えば、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)やポリエステル等の樹脂材料、織布や不織布等の布帛、アルミニウム、鉄、木材、ガラス等の各種の材料からなる媒体が含まれる。
図2に示すように、プリンタ100は、本体部112と、ガイドレール113と、プラテン114と、インクヘッド120と、ダンパー122と、インク流路140と、インク供給装置170(図1参照)と、制御装置180と、を備えている。本実施形態において、インクヘッド120と、ダンパー122と、インク流路140と、インク供給装置170とは、各色のインク59(図3参照)毎に、8つずつ設けられている。ただし、他の実施形態において、インクヘッド120と、ダンパー122と、インク流路140と、インク供給装置170との数は、必ずしも全て同じでなくてよい。
本体部112は、記録媒体5に印刷を行う印刷空間を構成している。図1に示すように、本体部112は、左右方向に延びた筐体を有する。本体部112は、左右方向において、左側部112Lと、中央部112Mと、右側部112Rと、の3つに区画されている。左側部112Lの下面には、箱状のタンク支持部材118Lが取り付けられている。右側部112Rの下面には、箱状のタンク支持部材118Rが取り付けられている。右側部112Rの前面には、操作パネル112Cが設けられている。操作パネル112Cは、ユーザが印刷に関する情報を入力する入力部を兼ねている。操作パネル112Cには、印刷に関する情報が表示される表示部112Dが設けられている。
図2に示すように、ガイドレール113は、本体部112に設けられ、左右方向(主走査方向)に延びている。ガイドレール113には、キャリッジ130がスライド自在に係合している。キャリッジ130には、インクヘッド120とダンパー122とが搭載されている。なお、キャリッジ130には、従来公知のインクジェットプリンタと同様に、例えば光照射装置(例えば紫外線ランプ)等の種々の装置や部材がさらに搭載されていてもよい。キャリッジ130は、キャリッジ移動機構116により、ガイドレール113に沿って左右方向に往復移動する。
キャリッジ移動機構116は、ガイドレール113の左端側および右端側に配置されたプーリ117bおよびプーリ117aを有している。プーリ117aには、キャリッジモータ116aが連結されている。キャリッジモータ116aは、制御装置180と電気的に接続されており、制御装置180によって制御される。プーリ117aおよびプーリ117bには、それぞれ無端状のベルト115が巻き掛けられている。キャリッジ130はベルト115に固定されている。キャリッジモータ116aが駆動すると、プーリ117aが回転してベルト115が走行する。これにより、キャリッジ130がガイドレール113に沿って左右方向に移動する。
プラテン114は、本体部112に設けられ、左右方向に延びている。図2に示すように、プラテン114は、ガイドレール113よりも下方かつ前方に配置されている。プラテン114には、記録媒体5が載置される。プラテン114は、印刷の際、記録媒体5を支持するものである。記録媒体5への印刷は、プラテン114上において行われる。プラテン114には、上下一対のグリットローラ(図示せず)およびピンチローラ(図示せず)が設けられている。グリットローラはフィードモータ(図示せず)に連結されている。グリットローラはフィードモータによって回転駆動される。記録媒体5がグリットローラとピンチローラとの間に挟まれた状態でグリットローラが回転すると、記録媒体5は前後方向(副走査方向)に搬送される。
複数のインク供給装置170は、それぞれ、種類(色材、性状、用途等)が異なるインク59をインクヘッド120に供給するためのものである。なお、インク59は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。インク59は、ソルベント系の顔料インク(溶剤インク)や、水性顔料インク、水性染料インク等であってもよい。インク59は、例えば、光重合性モノマーと光重合開始剤系とを含み、光照射によって硬化する性質を有する光硬化性インク(例えば紫外線照射によって硬化するUVインク)であってもよい。インク59は、例えば、無溶剤UVインク、エコソルベント系UVインク、リアルソルベント系UVインク等であってもよい。本実施形態において、8つのインク供給装置170には、異なる色材を含んだインク、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ライトブラックインク等のプロセスカラーインクや、ホワイトインクが貯留されている。ただし、インク59の種類(色材、性状、用途等)は何ら限定されない。
本実施形態において、複数のインク供給装置170は、本体部112の左右に振り分けられている。また、複数のインク供給装置170は、左側部112Lおよび右側部112Rにおいて、それぞれ左右方向に並設されている。すなわち、正面視において、中央部112Mおよびプラテン114よりも左方に位置する左側部112Lには、4つのインク供給装置170が設けられ、中央部112Mおよびプラテン114よりも右方に位置する右側部112Rには、4つのインク供給装置170が設けられている。
左側部112Lに設けられた4つのインク供給装置170は、それぞれタンク支持部材118Lに固定されている。この4つのインク供給装置170は、タンク支持部材118Lを介して、それぞれ本体部112に支持されている。また、右側部112Rに設けられた4つのインク供給装置170は、それぞれタンク支持部材118Rに固定されている。この4つのインク供給装置170は、タンク支持部材118Rを介して、それぞれ本体部112に支持されている。インク供給装置170は、キャリッジ130に搭載されておらず、左右方向には移動しない。
本実施形態において、インク供給装置170の個数は、8つである。ただし、インク供給装置170の個数や配置は何ら限定されない。また、例えばインク59の種類が少ない場合等には、左側部112Lあるいは右側部112Rのみにインク供給装置170を設けてもよい。インク供給装置170は、インク59が貯留されるインクタンク151(図3、図4参照)を備えている。インクタンク151は、それぞれ、インク流路140を介してインクヘッド120に連通されている。インクタンク151は、ケースの一例である。なお、インク供給装置170の構成については後述する。
インクヘッド120は、記録媒体5に向かってインク59の液滴を吐出するものである。図2に示すように、インクヘッド120は、プラテン114よりも上方に配置されている。インクヘッド120は、キャリッジ130に搭載されている。インクヘッド120は、キャリッジ130を介してガイドレール113にスライド自在に係合している。インクヘッド120の個数は、本実施形態ではインク供給装置170の個数と同じ8つである。8つのインクヘッド120は、左右方向に並んでいる。インクヘッド120の下面120aは、プラテン114と対向している。インクヘッド120の下面120aには、インク59を吐出するノズル121(図3参照)が形成されている。インクヘッド120の内部には、圧電素子等からなるアクチュエータ(図示せず)が設けられている。このアクチュエータが駆動することにより、インクヘッド120のノズル121からインクタンク151内のインク59が吐出される。
図3は、インク流路140を示すブロック図である。インク流路140は、インクタンク151とインクヘッド120とを連結するインク59の経路である。インク流路140は、インクタンク151からインクヘッド120にインク59を導く流路を形成している。インクタンク151のインク59は、インク流路140を通じてインクヘッド120に供給される。また、本実施形態のインク流路140は、インクタンク151を含めてインク59が循環可能なように構成されている。このため、インクタンク151からインク流路140へ流れたインク59の一部は、再びインクタンク151へと還流する。図3の矢印は、インク59の流れる方向を表している。
インク流路140は、柔軟性や可撓性を有し、弾性変形可能なように構成されている。特に限定されるものではないが、インク流路140は、例えば可撓性のチューブによって構成されている。インク流路140は、ここではインクタンク151毎に設けられている。本実施形態では、インク流路140の数が、インクタンク151の個数と同じ8つである。ただし、インク流路140の数は、インクタンク151の個数と同じでなくてもよい。
インク流路140は、キャリッジ130が左右方向に移動しても破損しないように、本体部112内の大部分(少なくとも全長の半分以上)が左右方向に延びた状態で配置されている。インク流路140の本数は、本実施形態ではインク供給装置170の個数と同じ8本である。図2に示すように、インク流路140は、ケーブル類保護案内装置132で覆われている。ケーブル類保護案内装置132とは、例えばケーブルベア(登録商標)である。
図3に示すように、インクタンク151からインクヘッド120までのインク流路140の途中には、送液ポンプ141と、弁部材144と、ダンパー122と、が設けられている。ダンパー122は、インクヘッド120の真上に設けられている。ダンパー122は、印刷時にインク59の圧力変動を緩和して、インクヘッド120のノズル121からのインク59の吐出動作を安定させるものである。ダンパー122は、インクヘッド120と共に、キャリッジ130に搭載されている。なお、ダンパー122は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
また、インク流路140の途中には、従来公知のインクジェットプリンタと同様に、必要に応じて、さらに種々の装置や部材が設けられていてもよい。インク流路140には、例えば、インク59を濾過する濾過装置(例えばフィルタ等の濾過部材)、インク59から気泡を除去する脱気装置、インクタンク151をインク流路140に接続したりインク流路140から切り離したりする連結部材(例えば弁部材)等が設けられていてもよい。
インク流路140は、第1流路140aと、第2流路140bと、第3流路140cと、第4流路140dと、第5流路140eと、第6流路140fと、を備えている。第1流路140aの上流端は、インクタンク151のインク流出口152O(図6も参照)に接続されている。第1流路140aの下流端は、送液ポンプ141に接続されている。第2流路140bの上流端は、送液ポンプ141に接続されている。第1流路140aには、上記したような濾過装置や連結部材等が設けられていてもよい。第2流路140bの下流端は、分岐部材143に接続されている。第3流路140cの上流端は、分岐部材143に接続されている。第3流路140cの下流端は、ダンパー122に接続されている。第4流路140dの上流端は、ダンパー122に接続されている。第4流路140dの下流端は、インクヘッド120に接続されている。第5流路140eの上流端は、分岐部材143に接続されている。第5流路140eの下流端は、弁部材144に接続されている。第6流路140fの上流端は、弁部材144に接続されている。弁部材144の設けられた部分は、中途部の一例である。第6流路140fの下流端は、インクタンク151のインク流入口153I(図6も参照)に接続されている。
送液ポンプ141は、特に限定されないが、例えばチューブポンプ、ダイヤフラムポンプ、シリンジポンプ等である。送液ポンプ141は、インク59を脈動させる脈動ポンプであってもよい。送液ポンプ141は、連続的にあるいは段階的に駆動速度(例えば、単位時間あたりの回転数)を変化させることができ、インク流路140を流れるインク59の流量を可変可能なものであってもよい。送液ポンプ141は、モータ142に接続されている。モータ142は、制御装置180(図1参照)と電気的に接続されており、制御装置180によって制御される。
弁部材144は、第5流路140eと第6流路140fとの間を開閉する。特に限定されないが、弁部材144は、所定の開弁圧で自動的に開き、インク流路140の圧力を下げるように構成された加圧開放弁である。弁部材144は、所定の圧力がかかっていない状態では、第5流路140eと第6流路140fとの間を閉鎖している。開弁圧は、例えば、インク59の種類(色材、性状等)等に応じて適宜に設定されるものである。開弁圧は、例えば40kPaである。ただし、弁部材144は、例えば電磁弁等の開閉バルブであってもよい。弁部材144は、制御装置180(図1参照)と電気的に接続されていなくてもよいし、制御装置180と電気的に接続され、制御装置180によって制御されてもよい。第5流路140eと第6流路140fとの連通状態は、制御装置180によって切り換えられてもよい。
第1流路140aと、第2流路140bと、第3流路140cと、第4流路140dとは、印刷時やインクヘッド120のクリーニング時等に、インクタンク151内のインク59をインクヘッド120へ送液するインク供給流路を構成している。第5流路140eと、第6流路140fとは、インクタンク151内のインク59を循環させるインク還流流路を構成している。第1流路140aと、第2流路140bと、第5流路140eと、第6流路140fとは、インクタンク151内のインク59を循環させるインク循環流路を構成している。
なお、インク循環流路の全体長さは、インク59の種類(色材、性状等)で異なっていてもよい。例えば、相対的に沈降しやすい第1の色材を含むインク59(例えばホワイトインク)では、相対的に沈降しにくい第2の色材を含むインク59(例えばプロセスカラーインク)に比べて、分岐部材143が相対的にダンパー122の近くに設けられ、インク還流流路の全体長さが長くなるように構成されてもよい。これにより、沈降しやすい第1の色材(例えばホワイトインクの顔料)を好適に分散することができ、インク59を均質な状態に維持しやすくなる。
印刷停止時等にインクを循環させる際は、例えば弁部材144を開状態として、第5流路140eと第6流路140fとの間を開放してもよい。第5流路140eと第6流路140fとが連通された状態で、送液ポンプ141を駆動することにより、インクタンク151内のインク59が、インク循環流路を流れて、インクタンク151に戻される。これにより、インクタンク151内のインク59を撹拌することができ、例えば沈降しがちな色材(例えば顔料)等を好適に分散することができる。したがって、貯留されているインク59を均質な状態に維持することができる。
また、印刷動作中にあわせてインク59を循環させる際は、例えば弁部材144を開状態として、第5流路140eと第6流路140fとが連通された状態で、送液ポンプ141を駆動し、送液ポンプ141の送液量をインクヘッド120で必要な量よりも多くする。具体的には、印刷に必要なインク59の流量が第1の流量(例えば10mL/分)である場合、送液ポンプ141の送液量を第1の流量よりも多い第2の流量(例えば20mL/分)とすることで、差分の流量(例えば10mL/分)のインク59をインク循環流路に流し、循環・攪拌に使用することができる。第2の流量は、例えば、第1の流量の2倍以下の流量であってもよい。送液ポンプ141の送液量を第2の流量とすることで、印刷時にも継続してインク59を撹拌することができる。また、インクヘッド120のクリーニングを行う際等は、例えば、弁部材144を閉状態とし、第5流路140eと第6流路140fとの間を閉鎖する。この状態で、送液ポンプ141を駆動することにより、インクタンク151からインクヘッド120に集中してインク59が供給される。
次に、インク供給装置170の構成について説明する。インク供給装置170は、インクタンク151に貯留されているインク59が少なくなったときに、インクタンク151自体は交換せずに、インクタンク151にインク59を継ぎ足して繰り返し使用する、継ぎ足し式の(使い捨てない)インク供給装置である。特に限定されるものではないが、インクタンク151に収容可能なインク59の容量は、典型的には1L以上、例えば1.5~2Lである。このように、インクタンク151には、例えば消耗品としてのインクタンクに比べて、多くのインク59を収容し得る。このため、大型のプリンタ100で一度に大量の印刷を行う場合等にも、印刷の途中でインク59を継ぎ足す回数が少なくて済む。また、夜間等に無人で印刷を継続する場合にも、インク切れが起きにくくなる。
本実施形態において、インク供給装置170は、インク補充用の容器(サプライボトル、図示せず)に収容されているインク59を継ぎ足し可能なように構成されている。図示は省略するが、サプライボトルは、典型的には、インク59が収容され一端に開口部を有する容器本体と、容器本体の開口部を気密に封止する封止フィルムと、を備えている。サプライボトルの容器本体に収容されているインク59の容量は、典型的にはインクタンク151に貯留可能なインク量よりも少なく、概ね250mL以上、典型的には300~1000mL、例えば500mLでありうる。
なお、以下の説明において、インクタンク151(詳しくは、インクタンク151に貯留されているインク量)が予め定められた満タン状態であることを「インク満タン状態」といい、インクタンク151(詳しくは、インクタンク151に貯留されているインク量)が予め定められたエンプティの状態であることを「インクエンド状態」という。また、インク満タン状態とインクエンド状態との間で予め定められ、インク満タン状態に近い状態を「ニア満タン状態」といい、インクエンド状態に近い状態を「ニアエンド状態」という。インク満タン状態は、例えば、インクタンク151内のインク量が、インクタンク151に収容可能なインク59の容量の概ね70体積%以上、典型的には80体積%以上、例えば90体積%以上の状態であってもよい。インクエンド状態は、例えば、インクタンク151内のインク量が、インクタンク151に収容可能なインク59の容量の概ね40体積%以下、典型的には30体積%以下、例えば20体積%以下、10体積%以下の状態であってもよい。
図4は、インク供給装置170の斜視図である。図5は、インク供給装置170の平面図である。図6は、インク供給装置170の鉛直断面図である。なお、本実施形態では、8つのインク供給装置170が、全て同じ構成である。このため、以下では、1つのインク供給装置170を例として、インク供給装置の構成を説明する。ただし、複数のインク供給装置170は、必ずしも全てが同じ構成である必要はなく、一部または全部は、インク供給装置170と構成が異なっていてもよい。
図4に示すように、インク供給装置170は、インク貯留部150と、インク量検出部160と、インク補充部190と、を備えている。インク貯留部150は、インクタンク151を備えている。図6に示すように、インク量検出部160は、感圧膜161を備えている(図7も参照)。インク補充部190は、インク補充機構192を備えている。
インク貯留部150は、インク59を貯留する部分である。インクタンク151は、インク59が貯留される容器である。インクタンク151は、使い捨てずに連続使用が可能な容器である。図1および図4からわかるように、本実施形態において、インクタンク151は、一側面(図1の後面)がタンク支持部材118L、118Rに着脱不可能に固定されている。インクタンク151は、タンク支持部材118L、118R支持されている。インクタンク151は、キャリッジ130(図2参照)に搭載されておらず、左右方向には移動しない。図3に示すように、インクタンク151は、インクヘッド120の下面120aよりも下方に配置されている。
図4に示すように、インクタンク151の外形は、扁平な箱型である。図5に示すように、インクタンク151は、平面視において略矩形状である。ただし、インクタンク151は、平面視において、例えば楕円形状、円形状等であってもよい。インクタンク151は、一対の長辺151Wと、一対の短辺151Nと、を備えている。長辺151Wは、前後方向に沿って延びている。短辺151Nは左右方向に沿って延びている。図1および図5からわかるように、本実施形態では、複数のインクタンク151の長辺151W同士が対向するように、複数のインク供給装置170が並設されている。
インクタンク151の材質は、従来この種の用途で使用されているものと同じでよく、特に制限はない。インクタンク151は、適度な剛性と、ガスバリア性と、水蒸気バリア性と、を有しているとよい。インクタンク151のインク59と接する面は、耐インク腐食性に優れ、インク59を変質させにくい材質からなるとよい。インクタンク151は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコン、フッ素系樹脂等の樹脂製である。インクタンク151は、内表面あるいは外表面に、樹脂等で形成されたコーティング層を備えていてもよい。インクタンク151は、インク59が光硬化性である場合、例えば外観が黒色で遮光性を有していてもよい。
図6に示すように、インクタンク151は、上方に向かって開口された上方開口部152Uを有するタンク本体152と、上方開口部152Uを塞ぐ蓋体(封口板)153と、を備えている。タンク本体152は第1部材の一例であり、蓋体153は第2部材の一例である。タンク本体152および蓋体153は、例えば樹脂材料の射出成型によって形成することができる。タンク本体152および蓋体153は、本実施形態においてそれぞれ1つの部材として形成されている。ただし、タンク本体152および/または蓋体153は、複数の部材を組み合わせて接合することにより形成されていてもよい。また、詳しくは後述するが、インクタンク151は、例えば上下方向においてタンク本体152と蓋体153との間に、さらに他の部材を備えていてもよい。
タンク本体152は、上方開口部152Uの周縁にフランジ(縁部)152Eを有している。蓋体153は、周縁にフランジ153Eを有している。本実施形態では、タンク本体152のフランジ152Eと蓋体153のフランジ153Eとが重ね合わせられ、ボルト等の接合部材159によって接合されている。これにより、タンク本体152の上方開口部152Uが気密に封止されると共に、インクタンク151が一体化されている。
図6に示すように、タンク本体152は、第1下壁B1と、第1下壁B1の左端(図6の奥側)から上方に延びる左壁L1と、第1下壁B1の右端から上方に延びる右壁R1(図4参照)と、第1下壁B1の前端から上方に延びる第1前壁F1と、第1下壁B1の後端から上方に延びる後壁Rr1と、第1前壁F1の上端から前方に延びる第2下壁B2と、第2下壁B2の前端から斜め上方に延びる第2前壁F2と、を備えている。第1下壁B1と第2下壁B2とは、蓋体153と対向している。第1下壁B1と第2下壁B2とは、鉛直方向の上方を向く「下面」の一例である。第1下壁B1と第2下壁B2とは、いずれも平面、具体的には水平面である。後壁Rr1の左端は左壁L1の後端に接続され、後壁Rr1の右端は右壁R1の後端に接続されている。第1前壁F1、第2前壁F2および第2下壁B2の左端は、左壁L1の前端に接続されている。第1前壁F1、第2前壁F2および第2下壁B2の右端は、右壁R1の前端に接続されている。左壁L1と右壁R1とは平行に延びている。
図7に示すように、第1下壁B1には、上下方向に貫通した下方開口部152Dが形成されている。下方開口部152Dは、平面視において略円形状である。下方開口部152Dの下端部には、後述するインク量検出部160の感圧膜161が取り付けられている。このため、インク貯留室154内のインク59の水頭圧は、感圧膜161に作用する。
図6に示すように、第2前壁F2は、前方から後方に向かって漸次下方に傾斜するスロープ状をなしている。第2前壁F2は、傾斜面の一例である。第2前壁F2のインク59と接する側の表面は、平坦に形成されている。第2前壁F2は、平面視において、後述するインク溜まり部155に向かって傾斜している。第2前壁F2は、平面視において、インク流出口152Oに向かって傾斜している。本実施形態において、第2前壁F2の高さ(上下方向の長さ)は、90mmである。第1前壁F1の高さ(上下方向の長さ)は、30mmである。第2前壁F2の高さは、第1前壁F1の高さの2倍以上、例えば3~10倍であってもよい。
タンク本体152は、中空構造である。タンク本体152の容積は、典型的には、サプライボトルの容積よりも大きい。タンク本体152には、第1下壁B1と、左壁L1と、右壁R1と、第1前壁F1と、後壁Rr1と、第2下壁B2と、第2前壁F2と、感圧膜161と、によって囲まれたインク貯留室154が区画されている。特に限定されるものではないが、インク貯留室154に収容可能なインク59の容量は、典型的には1L以上、例えば1.5~2Lである。インク貯留室154に収容可能なインク59の容量は、サプライボトルに収容されているインク59の容量の概ね2倍以上、例えば3~5倍であるとよい。インク貯留室154には、空気とインク59との気液界面が存在している。
インク貯留室154には、第1下壁B1と、左壁L1と、右壁R1と、第1前壁F1と、後壁Rr1と、感圧膜161と、によって囲まれたインク溜まり部155が形成されている。インク溜まり部155は、インク貯留室154のなかで下方に窪んだ部分(凹部)である。インク溜まり部155は、本実施形態において略立方体形状である。第1下壁B1は、上方開口部152Uおよび第2下壁B2よりも小さい断面形状を有している。第1前壁F1の高さは、第2前壁F2の高さの概ね1/2以下、例えば1/3~1/10であってもよい。
本実施形態において、インク貯留室154には、第1下壁B1と、第1前壁F1と、第2下壁B2と、第2前壁F2と、によって、段差が形成されている。インク貯留室154の前面は、インク溜まり部155に向かって階段状に下降するように形成されている。インク貯留室154の前面は、インク流出口152Oに向かって階段状に下降するように形成されている。
インク貯留室154内のインク59が消費され、インク貯留室154内のインク量が少なくなると、残ったインク59はインク溜まり部155に集められる。これにより、インク59が少なくなったときにも、残ったインク59の水頭圧が感圧膜161に好適に作用する。したがって、インク貯留室154内のインク量を安定的に検出することができる。また、インク貯留室154内のインク59を無駄なく使用することができる。なお、インク溜まり部155は、必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
図6に示すように、タンク本体152の後壁Rr1には、インク流出管152Fが形成されている。インク流出管152Fは、インク溜まり部155と連通するように形成されている。インク流出管152Fは、後壁Rr1と直交する方向(図6の前後方向)に延びている。インク流出管152Fの下流端、すなわちインク貯留室154から離れた側の端部は、インク流出口152Oである。インク流出口152Oは、第1前壁F1と対向している。インク流出口152Oには、インク流路140の一端、具体的には、第1流路140aの上流端が接続されている。インク貯留室154内のインク59は、インク流出口152Oからインク流路140の第1流路140aに流出し、インクヘッド120に供給される。
蓋体153は、タンク本体152の上方開口部152Uを塞ぐ板状部材である。図5に示すように、蓋体153は、平面視において略矩形状である。蓋体153は、前後方向に延びている。蓋体153は、大気連通部153Aを備えている。大気連通部153Aは、インク貯留室154内を大気圧の状態で維持すると共に、インク貯留室154内のインク59の蒸発を抑制する部材である。大気連通部153Aは、インク貯留室154を大気開放している。大気連通部153Aは、大気の流れを蛇行させるラビリンス構造体である。
図5に示すように、大気連通部153Aは、蓋体153を上下方向に貫通し、インク貯留室154の内部と外部とを連通する貫通孔153Hと、蓋体153の外表面(図5の上面)に設けられ、貫通孔153Hと大気とを接続する蛇道153Sと、貫通孔153Hおよび蛇道153Sを覆う樹脂フィルム153Mと、を備えている。蛇道153Sは、貫通孔153Hから大気までの流体流路を長くするために、細長く蛇行している。蛇道153Sは、大気連通溝の一例である。樹脂フィルム153Mは、例えば気体の通過を許容する一方、インク59の通過を遮断する微小な孔を有する多孔質膜であってもよい。樹脂フィルム153Mは、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂製のフィルムであってもよい。樹脂フィルム153Mは、封止部材の一例である。
図6に示すように、蓋体153は、さらに開口部153Oと、インク流入管153Fと、を備えている。開口部153Oは、蓋体153を上下方向に貫通している。開口部153Oには、後述するインク補充部190のインク補充機構192が取り付けられている。開口部153Oは、インク補充口の一例である。開口部153Oは、平面視において、第2前壁F2と重なっている。詳しくは、上下方向において、第2前壁F2を、上端部F2U、中間部F2M、下端部F2Dと3等分したとき、開口部153Oの中心は、第2前壁F2の中間部F2Mと対向している。
上述の通り、第2前壁F2は第2下壁B2に向かって傾斜している。そのため、インク補充部190から補充されたインク59は、第2前壁F2を伝ってインク貯留室154内を移動する。これにより、インク59を補充したときに、インク貯留室154内のインク59に一方向の流れを生じさせ、インク59を撹拌することができる。また、たとえインク59が勢い良く補充されたとしても、インク59の泡立ちが抑えられる。これにより、インク59に微小な気泡が混ざりにくくなると共に、発生した泡がタンク本体152から溢れだすような事態が生じにくくなる。
インク流入管153Fは、上下方向に沿って延びている。インク流入管153Fの下端は、インク流入口153Iである。インク流入口153Iには、インク流路140の一端、具体的には、インク還流流路の一部である第6流路140fの下流端が接続されている。インク循環流路を流通したインク59は、インク流入口153Iからインク貯留室154に戻される。インク流入口153Iは、インク貯留室154の内部に突出している。インク流入口153Iは、インク流出口152Oよりも上方に設けられている。これにより、インク貯留室154内のインクを撹拌することができ、例えば沈降しがちな顔料等を分散することができる。
インク流入口153Iは、平面視において、第2前壁F2と重なっている。詳しくは、インク流入口153Iの中心は、第2前壁F2の上端部F2Uと対向している。上述の通り、第2前壁F2は第2下壁B2に向かって傾斜している。そのため、インク流入口153Iから流入したインク59は、第2前壁F2を伝ってインク貯留室154内を移動する。これにより、インク59がインク流入口153Iからインク貯留室154に戻されたときに、インク貯留室154内のインク59に一方向の流れを生じさせ、インク59を撹拌することができる。加えて、長期にわたって連続的にインクを循環させても、インク59の泡立ちが抑えられ、インク59に微小な気泡が混ざりにくくなる。また、微小な気泡を含んだインク59がインク流路140に流出しにくくなる。
インク流入口153Iは、インク貯留室154が満タン状態であっても、第2前壁F2と対向しているとよい。これにより、インク貯留室154内のインク59の液面に、インク流入口153Iからインク59が直接落下することが防止される。したがって、インク59の泡立ちがより良く抑えられる。
図7は、インク量検出部160を右斜め上方からみた断面図である。図8は、インク量検出部160の平面図である。なお、以下の図面は、プリンタ100の前後方向を逆にした状態で示している。インク量検出部160は、インク59の水頭圧を利用して、インクタンク151のインク貯留室154内のインク量を検出する検出機構である。インク59の水頭圧を利用することで、インク貯留室154内のインク量を長期に亘って精度よく検出することができる。インク量検出部160は、感圧膜161に加えて、被検出部材162と、付勢部材163と、センサ部164と、ケーシング165と、を備えている。
ケーシング165は、被検出部材162と、付勢部材163と、センサ部164と、を収容する筐体である。ケーシング165は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄等の金属製、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製である。ケーシング165は、インク59が光硬化性である場合、例えば外観が黒色で、遮光性を有していてもよい。
ケーシング165の内部空間は、上下方向において、区画壁165Sにより、上方空間165Uと下方空間165Dとに区画されている。区画壁165Sは、第1下壁B1に沿って延びている。平面視において、区画壁165Sの断面形状は、第2下壁B2と略同じである。区画壁165Sには、上下方向に貫通した開口165Oが設けられている。開口165Oは、被検出部材162が傾動したときに、遮蔽部162Dが通過可能な大きさに形成されている。上方空間165Uは、インク溜まり部155と前後方向に並んでいる。上方空間165Uは、下方空間165Dから上方に突出している。上方空間165Uの高さは、インク溜まり部155の高さと略同じである。上方空間165Uは、インク溜まり部155に嵌め合わせられる部分(凸状部)の一例である。
感圧膜161は、インク貯留室154内のインク59の水頭圧に応じて、撓み変形の度合いが変化する部材である。感圧膜161は、タンク本体152の下面に取り付けられている。なお、本明細書において「下面」とは、インク貯留室154を構成する壁部のうち、鉛直方向において一番低い面(底面)を包含し、鉛直方向の上方を向く全ての面のことをいう。本実施形態において「下面」とは、インク貯留室154を構成する壁部のうち、鉛直方向において一番低い位置にある第1下壁B1(底面)に加えて、第2下壁B2を包含する用語である。本実施形態において、感圧膜161は、第1下壁B1の下方開口部152Dの縁部分に沿って溶着されている。感圧膜161を第1下壁B1に設けることで、インク貯留室154内のインク59の水頭圧が効率良く感圧膜161に作用する。このため、感圧膜161の変位量が相対的に大きくなり、安定した水頭値を得ることができる。また、センサ部164での検出精度をより良く向上することができる。加えて、感圧膜161を、タンク本体152とは別部材とすることにより、例えば付勢部材163の個体差等に応じて、センサ部164との位置関係を容易に微調整することができる。
感圧膜161は、下方開口部152Dを覆っている。感圧膜161は、第1下壁B1に水平に取り付けられている。感圧膜161は、下方開口部152Dから遠ざかる方向、言い換えれば、インク貯留室154の気液界面から遠ざかる方向(図7の下方)に撓み変形できる程度の張力で取り付けられている。感圧膜161は、インク貯留室154およびインク溜まり部155の下面(ここでは底面)の一部を構成している。感圧膜161は、感圧部の一例である。
なお、感圧膜161の材質は、従来この種の用途で使用されているものと同じでよく、特に制限はない。感圧膜161は、ガス透過性や水蒸気透過性が低い材質で構成されているとよい。感圧膜161のインク59と接する面は、耐インク腐食性に優れた材質からなるとよい。感圧膜161は、例えば単層構造あるいは多層構造の樹脂製のフィルムである。本実施形態において、感圧膜161は、可撓性を有する可撓性フィルムである。これにより、インク貯留室154内の水頭圧の変化が感圧膜161に対して高感度に伝達されて、インク量の検出精度をより良く向上することができる。
感圧膜161は、インク貯留室154に十分な量のインク59が貯留されているとき、例えばインク満タン状態やニア満タン状態のときに、インク59の水頭圧によってインク貯留室154から遠ざかる方向(図7の下方)に変位する。言い換えれば、感圧膜161は、インク貯留室154に貯留されているインク59の水頭圧が高いほど、気液界面から遠ざかる方向に変位する。一方、感圧膜161は、インク貯留室154のインク59が減少したとき、例えばインクエンド状態のときに、インク貯留室154に近づく方向(図7の上方)に変位する。言い換えれば、感圧膜161は、インク貯留室154に貯留されているインク59の水頭圧が低いほど、気液界面に近づく方向に変位する。
被検出部材162は、インク貯留室154の外部かつ真下に配置されている。被検出部材162は、ケーシング165の内部に配置されている。このため、被検出部材162は、インク貯留室154に貯留されているインク59と接触しない。被検出部材162は、ケーシング165の長辺151Wに沿って延びている。これにより、センサ部164の検出感度を向上すると共に、インク量検出部160の省スペース、コンパクト化を実現することができる。被検出部材162の全長は、ケーシング165の長辺151Wよりも短い。被検出部材162は、感圧膜161よりも硬質で、かつ感圧膜161の変位を阻害しないような軽量な材質からなるとよい。
図8に示すように、被検出部材162は、ケーシング165の後壁165Rrに支持されている。詳しくは、ケーシング165の後壁165Rrから被検出部材162取り付け用のブラケット165Aが延びている。ブラケット165Aには孔部165Hが形成されている。被検出部材162の後端部162Fは、ブラケット165Aの孔部165Hに傾動可能に挿入されている。そのため、被検出部材162は、後端部162Fを支点部(傾動中心)として傾動可能となっている。被検出部材162は、感圧膜161の撓み変形の度合いに連動して、インク貯留室154に近づく方向とインク貯留室154から遠ざかる方向と(図7の上下方向)に傾動する。これにより、被検出部材162の位置が変化する(すなわち変位する)。
図9は、被検出部材162の側面図である。被検出部材162は、平板部162Cと、受圧部162Rと、遮蔽部162Dと、を備えている。本実施形態において、平板部162Cと、受圧部162Rと、遮蔽部162Dとは、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の樹脂材料を射出成型することによって、一体的に形成されている。ただし、被検出部材162は、複数の部材を組み合わせることで構成されていてもよい。平板部162Cは、前後方向に沿って延びている。平板部162Cは、均質な厚みに形成されている。平板部162Cは、受圧部162Rと遮蔽部162Dとを連結している。図7に示すように、平板部162Cは、区画壁165Sよりも下方の下方空間165Dに配置されている。
受圧部162Rは、上面が直接的または間接的に感圧膜161に接触して、感圧膜161の撓み変形が伝達される部位である。受圧部162Rの上面は、ここでは緩衝部材(例えばスポンジ)169を介して、間接的に感圧膜161に接触している。受圧部162Rは、区画壁165Sよりも下方に配置されている。受圧部162Rは、平板部162Cの延びる方向(図7の前後方向)において、支点部162Fと遮蔽部162Dとの間に設けられている。図9に示すように、受圧部162Rは、側面視において山型形状である。図8に示すように、受圧部162Rは、平面視において略円形状である。受圧部162Rの中心は、下方開口部152Dの中心と同軸線上に位置している。平面視において、受圧部162Rの面積は、感圧膜161の面積よりも小さい。受圧部162Rの下面には、後述する付勢部材163が取り付けられている。
遮蔽部162Dは、被検出部材162が傾動することによって、センサ部164で検出される部位である。遮蔽部162Dは、被検出部の一例である。図9に示すように、遮蔽部162Dは、平板部162Cの一端(図9の右端)から上方に延びている。遮蔽部162Dは、平板部162Cの延びる方向(図9の前後方向)において、受圧部162Rよりも支点部162Fから離れた位置に設けられている。遮蔽部162Dは、被検出部材162の揺動端に設けられている。上述の通り、被検出部材162は傾動するため、支点部162Fからの距離が遠い部分ほど、上下方向の変位量は大きくなる。そのため、てこの原理を利用して、受圧部162Rの小さな変位を遮蔽部162Dの大きな変位にかえることができる。したがって、センサ部164の検出感度を向上することができる。
特に限定されるものではないが、図9に示すように、平板部162Cの延びる方向(図9の前後方向)において、支点部162Fの中心から受圧部162Rの中心までの長さをd1とし、受圧部162Rの中心から遮蔽部162Dの中心までの長さをd2としたときに、d1とd2とが、d1<d2、さらには、2×d1<d2を満たしているとよい。これにより、受圧部162Rの小さな変位をより効率よく遮蔽部162Dに伝達することができ、インク量の検出感度をさらに向上することができる。
本実施形態において、被検出部材162は、感圧膜161が気液界面から遠ざかる方向(図7の下方)に変位したときに、遮蔽部162Dの上端は、区画壁165Sよりも下方の下方空間165Dに位置するように設けられている。遮蔽部162Dの上端は、インク貯留室154の底面を構成する第1下壁B1よりも下方に位置するように設けられている(図10も参照)。一方、被検出部材162は、感圧膜161が気液界面に近づく方向(図7の上方)に変位したときに、遮蔽部162Dの上端部は、区画壁165Sよりも上方の上方空間165Uに位置するように設けられている。遮蔽部162Dの上端は、インク貯留室154の底面を構成する第1下壁B1よりも上方に位置するように設けられている(図11、図12も参照)。
被検出部材162は、インクタンク151がインク満タン状態のときに、満タン位置に変位する。特に限定されないが、満タン位置は、平板部162Cと第1下壁B1とのなす角が、鋭角、概ね60°以下、典型的には45°以下、例えば30°以下の位置であってもよい。インク貯留室154内のインク59が消費され、インク貯留室154内のインク量が少なくなると、やがてインクタンク151がニアエンド状態となる。被検出部材162は、インクタンク151がニアエンド状態のときに、ニアエンド位置に変位する。ニアエンド位置では、遮蔽部162Dが満タン位置よりも上方に位置している。ニアエンド位置は、平板部162Cが略水平の位置であってもよい。なお、本明細書において「略水平」とは、必ずしも厳密に水平である必要はなく、例えば水平方向に対する傾斜角度が概ね15°以下、10°以下、または5°以下である場合を包含する用語である。
本実施形態において、遮蔽部162Dは均一な厚み(図8の左右方向の長さ)および光透過性を有している。図9に示すように、遮蔽部162Dは、平板部162Cの前端部から上方に延びる第1遮蔽部P1と、第1遮蔽部P1の上端から上方に延びる第2遮蔽部P2と、第2遮蔽部P2の上端から上方に延びる第3遮蔽部P3と、を備えている。第1遮蔽部P1と第2遮蔽部P2とは、前端の位置が一致している。第2遮蔽部P2と第3遮蔽部P3とは、後端の位置が一致している。第2遮蔽部P2は、第1遮蔽部P1および第3遮蔽部P3よりも平板部162Cの延びる方向(図9の前後方向)の長さが長い。
第3遮蔽部P3は、インクタンク151がニア満タン状態のとき、言い換えれば、感圧膜161がニア満タン位置にあるときに、センサ部164で検出されるよう、上下方向の長さが調整されている。第1遮蔽部P1は、インクタンク151がニアエンド状態のとき、言い換えれば、感圧膜161がニアエンド位置に達したときに、センサ部164で検出されるよう、上下方向の長さが調整されている。ニアエンド位置は、ニア満タン位置よりも上方に位置している。
付勢部材163は、感圧膜161に直接的または間接的に接触して、感圧膜161をインク貯留室154に近づける方向(図7の上方)に付勢する部材である。本実施形態において、付勢部材163は、受圧部162Rを介して、感圧膜161をインク貯留室154に近づける方向に付勢している。なお、付勢部材163は、従来この種の用途で使用されているものと同じでよく、特に制限はない。付勢部材163は、金属製であってもよい。付勢部材163は、弾性体であってもよい。付勢部材163は、本実施形態では円柱状のコイルバネである。
付勢部材163は、インク貯留室154の外部かつ真下に配置されている。付勢部材163は、ケーシング165の内部に配置されている。このため、付勢部材163は、インク貯留室154に貯留されているインク59と接触しない。これにより、インク59が付勢部材163と接触して変質したり、腐食された付勢部材163の破片が剥がれ落ちてインク59に混入したりすることを未然防止することができる。また、付勢部材163がインク59で腐食されて劣化し、付勢力が低下することを未然防止することができる。その結果、付勢部材163とインク59とが接している場合に比べて検出精度が低下しにくくなり、インク貯留室154内のインク量を長期に亘って精度よく検出することができる。
付勢部材163は、受圧部162Rの真下に配置されている。付勢部材163は、略上下方向に沿って配置されている。本実施形態において、付勢部材163は、一端が受圧部162Rの下面に固定され、他端がケーシング165の下面165Bに固定されている。付勢部材163は、圧縮された状態に維持されている。
センサ部164は、感圧膜161の位置を検出する部材である。本実施形態において、センサ部164は、被検出部材162の遮蔽部162Dの位置を検出することにより、感圧膜161の位置を間接的に検出するように構成されている。センサ部164は、インク貯留室154の外部に配置されている。センサ部164は、ケーシング165の内部に配置されている。センサ部164は、ケーシング165の区画壁165Sに取り付けられている。センサ部164は、平面視において上方空間(凸状部)165Uと重なる位置に配置されている。これにより、センサ部164の省スペース、コンパクト化を実現することができる。センサ部164は、制御装置180(図1参照)と電気的に接続されており、制御装置180によって制御される。
図7に示すように、本実施形態において、センサ部164は、第1センサS1および第2センサS2を備えている。第1センサS1は第2センサS2よりも受圧部162Rに近い側(図7の後方)に配置されている。第1センサS1および第2センサS2は、上下方向の位置が同じになるように、区画壁165Sにそれぞれ固定されている。第1センサS1および第2センサS2は、インクタンク151がニア満タン状態になったときの第3遮蔽部P3の位置と同じ高さに配置されている。第1センサS1および第2センサS2は、インクタンク151がニアエンド状態になったときの第1遮蔽部P1の位置と同じ高さに配置されている。なお、図7には、第1センサS1および第2センサS2の検出位置を仮想線Lsで示している。
第1センサS1および第2センサS2は、本実施形態において、非接触式センサの一種である透過型のフォトセンサ(フォトインタラプタ)である。フォトセンサは応答時間が早いため、リアルタイムで精度よく検出を行うことができる。図8に示すように、第1センサS1は、発光部S1aを有している。発光部S1aは、左右方向に延びる第1の光軸に沿って光を照射するように構成されている。第2センサS2は、発光部S2aを有している。発光部S2aは、左右方向に延びる第2の光軸に沿って光を照射するように構成されている。第1センサS1は、発光部S1aから照射された光を受ける受光部S1bを有している。第2センサS2は、発光部S2aから照射された光を受ける受光部S2bを有している。発光部S1aと受光部S1bとは、遮蔽部162Dの第2遮蔽部P2および第3遮蔽部P3を挟むように、左右方向に対向配置されている。発光部S2aと受光部S2bとは、遮蔽部162Dの第1遮蔽部P1および第2遮蔽部P2を挟むように、左右方向に対向配置されている。
上述の通り、被検出部材162は支点部162Fを傾動中心として傾動する。被検出部材162の傾動に伴い、遮蔽部162Dは上下に移動する(厳密には、上下に揺動する)。本実施形態のインク量検出部160では、1つの被検出部材162と複数のセンサ(第1センサS1および第2センサS2)とを組み合わせることで、例えば、インク満タン状態、ニア満タン状態、ニアエンド状態、インクエンド状態等のうちの2つ以上の状態、3つ以上の状態、例えば4つの状態を検出することができる。すなわち、図示は省略するが、インクタンク151がインク満タン状態のとき、遮蔽部162Dは、第1センサS1および第2センサS2の検出位置Lsよりも下方に位置している。
図10に示すように、インク貯留室154内のインク59が消費され、インク貯留室154内のインク量が減ると、インクタンク151がニア満タン状態となる。これに伴い、インク貯留室154内のインク59の水頭圧が小さくなる。すると、付勢部材163の付勢力によって、感圧膜161の撓み変形が緩和される。やがて、遮蔽部162Dがインク貯留室154に近づく方向(図10の上方)に移動すると、第3遮蔽部P3が検出位置Lsに到達する。その結果、第1センサS1が、第3遮蔽部P3を検出するHIT状態となる。すなわち、第3遮蔽部P3が第1センサS1の第1の光軸と重なると、発光部S1aから照射された光が第3遮蔽部P3によって遮られ、第1センサS1がHIT状態となる。一方、第3遮蔽部P3は第2センサS2の第2の光軸とは交差せず、発光部S2aから照射された光は、第3遮蔽部P3に遮られることなく受光部S2bに到達する。このため、第2センサS2はUNHIT状態となる。
図11に示すように、インク貯留室154内のインク59がさらに消費されると、サプライボトルに収容されているインク59の容量よりも空き容量が大きくなる。すなわち、インクタンク151がインク継ぎ足し可能状態となる。これに伴い、遮蔽部162Dがさらに上方に移動すると、第2遮蔽部P2が検出位置Lsに到達する。その結果、第1センサS1および第2センサS2が、いずれも第2遮蔽部P2を検出するHIT状態となる。すなわち、第2遮蔽部P2が第1センサS1の第1の光軸と重なると、発光部S1aから照射された光が第2遮蔽部P2によって遮られ、第1センサS1がHIT状態となる。また、第2遮蔽部P2が第2センサS2の第2の光軸と重なると、発光部S2aから照射された光が第2遮蔽部P2によって遮られ、第2センサS2がHIT状態となる。
図12に示すように、インク貯留室154内のインク59がさらに消費されると、インクタンク151がニアエンド状態となる。これに伴い、遮蔽部162Dがさらに上方に移動すると、第1遮蔽部P1が検出位置Lsに到達する。その結果、第2センサS2が、第1遮蔽部P1を検出するHIT状態となる。すなわち、第1遮蔽部P1が第2センサS2の第2の光軸と重なると、発光部S2aから照射された光が第1遮蔽部P1によって遮られ、第2センサS2がHIT状態となる。一方、第1遮蔽部P1は第1センサS1の第1の光軸とは交差せず、発光部S1aから照射された光は、第1遮蔽部P1に遮られることなく受光部S1bに到達する。このため、第1センサS1はUNHIT状態となる。
なお、インクタンク151のインク量を検出する方法としては、例えば、インクタンク151を重量センサの上に配置しておき、インクタンク151の重量を測定することでインクの残量を検出する方法も知られている。しかしながら、重量センサを用いる方法では、概してコストが高くなりがちである。これに対して、プリンタ100では、水頭圧の変化を利用することにより、低コストで高精度の検出を行うことができる。
インク補充部190は、インク補充用のサプライボトル(図示せず)からインク59を継ぎ足し可能なように構成されている。図6に示すように、インク補充部190は、補充口カバー191と、インク補充機構192と、を備えている。補充口カバー191は、インク補充機構192に埃やごみが混入することを防ぐ部材である。補充口カバー191は、インク59が光硬化性である場合、インク補充機構192に光が侵入することを防止する部材でもある。補充口カバー191は、開口部153Oの真上に設けられ、開口部153Oを覆っている。インクタンク151がニアエンド状態やインクエンド状態等になったとき、ユーザは、補充口カバー191を開いてインク59を継ぎ足す。
インク補充機構192は、ユーザがサプライボトルを挿入可能なように構成されている。詳しくは、インク補充機構192は、サプライボトルの容器本体を、封止フィルムで封止された状態のまま挿入可能なように構成されている。すなわち、図6に示すように、インク補充機構192は、上方に向かって尖った先端部192Eを備えている。ユーザがインク補充機構192に上方からサプライボトルを挿入すると、先端部192Eがサプライボトルの封止フィルムを貫通する。封止フィルムが破断されることで、サプライボトルに収容されているインク59が開口部153Oを介してインク貯留室154に流入する。これにより、インクタンク151にインク59が補充される。
制御装置180は、フィードモータ(図示せず)と、キャリッジ130のキャリッジモータ116aと、インクヘッド120の圧電素子と、送液ポンプ141のモータ142と、弁部材144と、センサ部164と、に通信可能に接続されており、これらの動作を制御する。制御装置180のハードウェア構成は、特に限定されない。制御装置180は、例えば、印刷用データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラム等を格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、を備えていてもよい。
図1に示すように、制御装置180は、印刷制御部181と、判定部182と、通知部183と、循環制御部184と、を備えている。ただし、循環制御部184は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。制御装置180の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置180の各部は、1つまたは複数のプロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
印刷制御部181は、印刷データに基づいて印刷動作を実行する制御部である。印刷制御部181は、フィードモータを制御することで、記録媒体5を前後方向(副走査方向)に搬送する。印刷制御部181は、キャリッジモータ116aを制御することで、キャリッジ130およびインクヘッド120の左右方向(主走査方向)への移動を制御する。印刷制御部181は、インクヘッド120の圧電素子を制御することで、ノズル121からのインク59の吐出を制御する。印刷制御部181は、弁部材144の開閉を制御してもよい。印刷制御部181は、送液ポンプ141のモータ142を制御して、送液ポンプ141の駆動と停止、および送液量を制御する。
判定部182は、センサ部164との通信結果に基づいて、インクタンク151内のインク量を判定する制御部である。判定部182は、第1センサS1の発光部S1aおよび第2センサS2の発光部S2aを制御して、光を照射する。判定部182は、第1センサS1の受光部S1bおよび第2センサS2の受光部S2bと通信可能に接続されている。判定部182には、受光部S1b、S2bから受光量が入力される。判定部182は、第1センサS1、第2センサS2のそれぞれについて、受光量が予め定められた基準値以下に変化した場合に、センサがUNHIT状態からHIT状態に切り替わったことを検出する。基準値は、予め判定部182に記憶されている。判定部182にはまた、第1センサS1および第2センサS2の状態と、インクタンク151の状態(具体的には、インクタンク151内のインク量)との関係を対応付けた対応テーブルが予め記憶されている。対応テーブルの一例を下記に示す。
第1センサS1 第2センサS2 インクタンク151の状態
UNHIT UNHIT インク満タン
HIT UNHIT ニア満タン
HIT HIT インク継ぎ足し可能
UNHIT HIT ニアエンド
上記の対応テーブルにおいて、判定部182は、インクタンク151の4つの状態を判定可能なように構成されている。すなわち、判定部182は、第1センサS1および第2センサS2がいずれもUNHIT状態であることに基づいて、インクタンク151がインク満タン状態であると判定する。判定部182は、第1センサS1がHIT状態であり、かつ第2センサS2がUNHIT状態であることに基づいて、インクタンク151がニア満タン状態であると判定する。判定部182は、第1センサS1および第2センサS2がいずれもHIT状態であることに基づいて、インクタンク151がインク継ぎ足し可能状態であると判定する。判定部182は、第1センサS1がUNHIT状態であり、かつ第2センサS2がHIT状態であることに基づいて、インクタンク151がニアエンド状態であると判定する。
通知部183は、判定部182の判定結果をユーザに通知する制御部である。ユーザへの通知方法は特に限定されない。通知部183は、例えば、プリンタ100の表示部112Dに文字やイラスト等でインクエンド状態であることを表示して、視覚的にユーザに対する通知を行ってもよい。通知部183は、例えば、ブザーやアナウンス等の音声で通知を行ってもよい。通知部183は、ユーザにインク59の補充を促す警告等を行ってもよい。通知部183は、判定部182の判定結果、例えばインクタンク151の状態を、そのままユーザに通知してもよい。これにより、ユーザは、インク59の残量を自ら確認する必要がなくなる。したがって、ユーザの手間を低減することができる。
通知部183は、判定部182で、インクタンク151がインク満タン状態あるいはニア満タン状態と判定された場合に、インク59の継ぎ足しが不可であることをユーザに通知してもよい。これにより、ユーザが、インク59を入れ過ぎてインクタンク151から溢れることがなくなり、プリンタ100の周囲がインク59で汚れることを抑制することができる。また、インク59を無駄なく使用することができる。
通知部183は、判定部182で、インクタンク151がインク継ぎ足し可能状態と判定された場合に、サプライボトル1本分の容量(例えば500mL)のインク59の継ぎ足しが可能であることをユーザに通知してもよい。通知部183は、判定部182で、インクタンク151がニアエンド状態と判定された場合に、サプライボトル2本分の容量(例えば1L)のインク59の継ぎ足しが可能であることをユーザに通知してもよい。これにより、ユーザは、インクエンド状態を迎える前にインク59が減っていることをいち早く察知して、例えばサプライボトルを注文する等、事前の対応を行うことが可能となる。
循環制御部184は、印刷停止時(例えばプリンタ100の待機時)に、インク循環流路にインク59を循環させる循環動作を実行する制御部である。循環制御部184は、すべてのインク59に対して循環動作を実行するように構成されていてもよく、相対的に沈降しやすい第1の色材を含むインク59(例えばホワイトインク)に対してのみ循環動作を実行するように構成されていてもよい。本実施形態において、循環制御部184は、印刷停止時(例えば夜間)に、同じ循環動作を定期的に(例えば1回/日)自動で行うように構成されている。すなわち、定期循環動作を行うように構成されている。循環制御部184は、送液ポンプ141のモータ142を制御して、送液ポンプ141の駆動と停止を制御する。循環制御部184は、送液ポンプ141の駆動速度を変化させて、インク59の流速(循環速度)、言い換えれば、単位時間当たりにインク循環流路を循環するインク59の量(循環量)を制御するように構成されていてもよい。
循環動作は、例えば、所定の時間、一定した流速でインク59を循環させるように送液ポンプ141を駆動させる動作である。インク59の流速および循環動作の所要時間(送液ポンプ141を駆動する時間)は、例えば、インクタンク151の容量、インク循環流路の長さ、インク59の種類(色材、性状等)等に応じて適宜に設定されるものである。循環動作は、すべてのインク59で共通していてもよく、例えばインク59の種類(色材、性状等)等で異なっていてもよい。インク59の流速は、例えば60L/分以上としてもよい。循環動作の所要時間は、概ね5分以内、例えば2分30秒としてもよい。
以上のように、プリンタ100は、インク還流流路(第5流路140e、第6流路140f)を備えている。インクタンク151は、インク流出口152Oの形成されたタンク本体152と、インク流入口153Iの形成された蓋体153と、を備えている。インクタンク151では、インク還流流路に接続されるインク流入口153Iが、インク流出口152Oよりも上方に位置している。かかる構成により、インクタンク151のインクを好適に循環させることができる。また、インク流入口153Iからインク59が還流したときに、インクタンク151内のインクを強い流れで撹拌することができる。そのため、例えば沈降しがちな顔料等を分散することができ、インクタンク151内のインクを均質に維持することができる。したがって、インクタンク151を使い捨てることなく、長期に亘って使用することができる。また、感圧膜161に顔料等が堆積することが抑えられ、感圧膜161を安定して変位させることができる。
加えて、インクタンク151では、例えば1Lを超えるような大容量のインク59であっても均質に維持することができる。したがって、大判の印刷物を大量に印刷する場合等に、例えば特許文献1に開示されるインクタンクに比べて、相対的に印刷の途中でインクを継ぎ足す回数が少なくて済む。したがって、ユーザの手間を低減することができる。また、例えば夜間等に無人で印刷を継続する場合等に、インク切れが起きて印刷が停止してしまうことも生じにくい。
本実施形態のプリンタ100では、タンク本体152は、第2下壁B2と、第2下壁B2に向かって傾斜する第2前壁F2と、を備える。平面視において、インク流出口152Oと第2前壁F2とが重なっている。これにより、インク貯留室154内のインク59に一方向の流れを生じさせ、インク59を撹拌することができる。加えて、長期にわたって連続的にインク59を循環させても、インク59の泡立ちが抑えられ、インク59に微小な気泡が混ざりにくくなる。また、微小な気泡を含んだインク59がインク流路140に流出しにくくなる。
本実施形態のプリンタ100では、タンク本体152は、第2下壁B2と、第2下壁B2に向かって傾斜する第2前壁F2と、を備える。蓋体153は、インク59をインクタンク151に補充する開口部153Oを備える。平面視において、開口部153Oと第2前壁F2とが重なっている。これにより、インク貯留室154内のインク59に一方向の流れを生じさせ、インク59を撹拌することができる。また、開口部153Oからインク59が勢い良く補充されたとしても、インク59の泡立ちが抑えられる。したがって、インク59に微小な気泡が混ざりにくくなると共に、発生した泡がタンク本体152から溢れだすような事態が生じにくくなる。
本実施形態のプリンタ100では、タンク本体152の第1下壁B1には、下方に窪んだインク溜まり部155が形成されており、インク溜まり部155の後壁Rr1にインク流出口152Oが設けられている。これにより、インク貯留室154内のインク59を無駄なく使用することができる。
本実施形態のプリンタ100では、蓋体153は、インクタンク151の内部と大気とを連通する大気連通部153Aを備え、インクタンク151の内部に、大気とインク59とが接する気液界面を有する。インクタンク151の内部が大気圧である(言い換えれば、加圧あるいは減圧されていない)ことにより、ユーザは、インク貯留室154のインク59が少なくなったとき、例えばニアエンド状態やインクエンド状態となったときに、インクタンク151を容易に開くことができる。したがって、インク補充部190からインク59を簡便に継ぎ足すことができる。
本実施形態のプリンタ100では、大気連通部153Aは、インクタンク151の内部と外部とを連通する貫通孔153Hと、蓋体153の外部に設けられ、貫通孔153Hと大気と接続する蛇道153Sと、貫通孔153Hと蛇道153Sとを覆い、インクタンク151の内部と大気とを連通する大気連通路を形成する樹脂フィルム153Mと、を備える。これにより、比較的簡便かつ低コストで大気連通部153Aを設けることができる。
以上、本実施形態に係るプリンタ100について説明した。しかし、本発明に係るインクジェットプリンタは、これに限定されない。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、上記した実施形態と以下の変形態様(1)ないし(20)とを適宜組み合わせることもできる。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
(1)例えば上記した実施形態では、図1、図4等からわかるように、インクタンク151が本体部112よりも下方に配置されていた。しかしこれには限定されない。インクタンク151は、例えば、本体部112の左側あるいは右側に配置されていてもよいし、本体部112の内部(例えばプラテン114の下側)に配置されていてもよいし、本体部112よりも上方に配置されていてもよい。
(2)例えば上記した図4等の実施形態では、インクタンク151が、タンク本体(第1部材)152と蓋体(第2部材)153とから構成され、タンク本体152の全体が蓋体153の全体よりも上方に位置していた。しかしこれには限定されない。インクタンク151は、例えば、次のいずれか:(1)タンク本体152と蓋体153との間に、インクタンク151の一部を構成する部材を設ける;(2)タンク本体152の上方に、インクタンク151の一部を構成する部材を設ける;(3)蓋体153の下方に、インクタンク151の一部を構成する部材を設ける;(4)タンク本体152の下端部に段差が形成されると共に、蓋体153の上端部に段差が形成され、タンク本体152の下端部の一部が、蓋体153の上端部の一部よりも下方に位置している;ように構成されていてもよい。
(3)例えば上記した図6等の実施形態では、インク貯留室154の内部に、他の部材が配置されていなかった。しかしこれには限定されない。例えばインク供給装置170では、インク59を継ぎ足すとき等に、インク貯留室154に埃やごみが混入するおそれがある。このため、インク貯留室154には、従来公知の濾過装置が配置されていてもよい。また、インク貯留室154には、従来公知の攪拌装置等が配置されていてもよい。また、攪拌装置や濾過装置を構成する一部または全部の部材は、交換可能に構成されていてもよい。
図13は、第1変形例に係るインク供給装置270の断面図である。図13に示すインク供給装置270は、以下の点を除き、上記したインク供給装置170と同様である。すなわち、インク供給装置270は、インクタンク251を備えている。インクタンク251は、タンク本体252を備えている。タンク本体252は、後壁Rr1にかえて後壁Rr2を備えている。後壁Rr2は、下端部に膨出部RrBを備えている。膨出部RrBは、インク流出口152Oの側(図13の右方)に膨出している。膨出部RrBは、第1前壁F1から離れる側に膨出している。膨出部RrBは、インク溜まり部255の壁面を構成している。インク流出管152Fは、後壁Rr2の膨出部RrBに形成されている。
インク供給装置270は、フィルタ156を備えている。フィルタ156は、インク貯留室154内に混入した埃やごみを除去する濾過部材である。フィルタ156を備えることで、埃やごみがインク流路140に流出しにくくなる。したがって、インク流路140の中途部、例えば送液ポンプ141やダンパー122で詰まりが生じにくくなる。本実施形態において、フィルタ156は、インク溜まり部255に配置されている。フィルタ156は、タンク本体252の後壁Rr2に着脱可能に取り付けられている。フィルタ156は、上下方向に延びている。フィルタ156の濾過面は、第1前壁F1と対向している。フィルタ156は、第1前壁F1に沿って配置されている。
本実施形態において、フィルタ156は、インク溜まり部255を鉛直方向に区画している。フィルタ156は、膨出部RrBを仕切っている。フィルタ156の近傍では、インク流出口152Oに向かってインク59が流れる。すなわち、インク流出管152Fの軸線方向(図13の前方から後方)に向かってインク59が流れる。フィルタ156の濾過面は、インク流出管152Fの軸線方向と直交するように配置されている。言い換えれば、フィルタ156の濾過面は、インク流出管152Fの延伸方向(図13の前後方向)と直交するように配置されている。
フィルタ156の上端は、インク溜まり部255の第1前壁F1の上端よりも下方に配置されている。本実施形態において、インク溜まり部255は、インクタンク151がニアエンド状態であっても、インク59で満たされるように構成されている。これにより、フィルタ156が常にインク59で濡れた状態となり、フィルタ156が空気を噛みにくくなる。したがって、インク59に微小な気泡が混ざりにくくなる。
本変形例のインク供給装置270において、インク流出口152Oは、タンク本体152の後壁Rr2に設けられている。インク溜まり部155は、インク流出口152Oの側に向かって膨出した膨出部RrBを備えている。インク溜まり部155には、膨出部RrBを区画するようにフィルタ156が配置されている。これにより、例えばフィルタ156を水平に配置する場合に比べて、相対的にフィルタ156に目詰まりが生じにくくなり、フィルタ156の交換回数が少なくて済む。したがって、メンテナンスの手間を軽減することができる。
(4)例えば上記した図6等の実施形態では、平面視において、インク流入口153Iおよび開口部153Oが、スロープ状の第2前壁F2と重なっていた。しかしこれには限定されない。他の実施形態において、インク流入口153Iおよび/または開口部153Oは、第2前壁F2と重なっていなくてもよい。
図14は、第2変形例に係るインク供給装置370の断面図である。図14に示すインク供給装置370は、以下の点を除き、上記したインク供給装置170と同様である。すなわち、インク供給装置370は、インクタンク351を備えている。インクタンク351は、タンク本体352を備えている。タンク本体352は、第2下壁B2および第2前壁F2にかえて、下壁B3および前壁F3を備えている。前壁F3は、第2前壁F2とは異なり、下壁B3の前端から真っすぐ上方に延びている。また、インク供給装置370は、突出部157と、インク誘導部158と、を備えている。
突出部157は、下壁B3に設けられている。本実施形態において、突出部157は、山型形状(ドーム形状)である。ただし、突出部157の形状は、山型を上下方向に切断した形状、球状、半球状、円錐形状等であってもよい。突出部157は、下壁B3に対して、0°を超えて90°未満、あるいは、90°を超えて180°未満の傾斜角度で配置された板状部材であってもよい。突出部157の上端157Tの高さは、前壁F3の高さの1/2以下、例えば1/3~1/5であってもよい。
突出部157は、下壁B3に向かって傾斜する傾斜面を有している。詳しくは、上端157Tから下壁B3に近づくにつれて漸次下方に傾斜する傾斜面を有している。傾斜面は、上端157Tを中心に放射状に設けられている。本実施形態では、平面視において、突出部157と開口部153Oとが重なっている。詳しくは、平面視において、突出部157の上端157Tの位置が、検出位置Lsで示す開口部153Oの中心の位置と一致している。突出部157の中心は、開口部153Oの中心と同軸線上に位置している。そのため、例えばニアエンド状態やインクエンド状態のときには、インク補充部190から開口部153Oを介して補充されたインク59が、突出部157の上端157Tに落着する。上端157Tに落着したインク59は、放射状に分かれて傾斜面を伝い、インク貯留室154内を移動する。
これにより、図14に矢印で示すように、インク貯留室154内のインク59を強い流れで撹拌することができる。また、インク59が傾斜面を伝って移動することで、インク59の泡立ちが抑えられる。その結果、インク59に微小な気泡が混ざりにくくなると共に、発生した泡がタンク本体152から溢れだすような事態が生じにくくなる。加えて、突出部157はタンク本体352の任意の位置、例えば下壁B3の任意の位置に形成することができる。そのため、設計の自由度を広げることができる。
インク誘導部158は、インク流入口153Iから流入したインク59を突出部157の上端157Tに誘導する部材である。インク誘導部158は、インク流入口153Iから突出部157(詳しくは、突出部157の上端157T)に向かって延びている。本実施形態において、インク誘導部158は、インク流入口153Iと突出部157の上端157Tとに掛け渡されている。インク誘導部158は、例えば鎖、チェーン、ワイヤー、ロープ、紐等の長尺部材である。インク誘導部158は、変形容易であってもよい。インク誘導部158を備えることにより、平面視においてインク流入口153Iと突出部157とが重ならない場合にも、インク流入口153Iから流入したインク59を突出部157の上端157Tに落とし、傾斜面を伝ってインク貯留室154内を移動させることができる。このため、インク流入口153Iを自由にレイアウトすることができ、設計の自由度を広げることができる。
第2変形例のインク供給装置370において、タンク本体152は、下壁B3と、下壁B3に設けられ上方に突出した突出部157と、を備える。平面視において、インク流入口153Iと突出部157とは重なっていない。タンク本体152は、インク流入口153Iから突出部157に向かって延びるインク誘導部158をさらに備える。インク誘導部158を備えることで、インク流入口153Iと突出部157とが重なっていない場合にも、インク流入口153Iから流入したインク59を突出部157に落とすことができ、インク59の泡立ちが抑えられる。
第2変形例のインク供給装置370において、タンク本体152は、下壁B3と、下壁B3に設けられ上方に突出した突出部157と、を備える。蓋体153は、インク59をインクタンク151に補充する開口部153Oを備える。平面視において、開口部153Oと突出部157とが重なっている。これにより、インク流入口153Iから流入したインク59を突出部157に落とすことができ、インク59の泡立ちが抑えられる。
なお、上記した第2変形例では、平面視において、開口部153Oと突出部157とが重なり、かつ、インク流入口153Iと突出部157とは重なっていなかった。しかし、他の実施形態において、開口部153Oおよびインク流入口153Iが、いずれも突出部157と重なっていてもよい。あるいは、インク流入口153Iと突出部157とが重なり、かつ、開口部153Oと突出部157とが重なっていなくてもよい。この場合、インク誘導部158は、開口部153Oから突出部157に向かって延びていてもよい。
(5)例えば上記した図6、図7等の実施形態では、スロープ状の第2前壁F2の表面が平坦に形成されていた。しかしこれには限定されない。他の実施形態において、第2前壁F2の表面は、平坦でなくてもよい。図15は、第3変形例に係るインク供給装置470を前側から見た側面図の一部である。図15に示すインク供給装置470は、以下の点を除き、上記したインク供給装置170と同様である。すなわち、インク供給装置470は、タンク本体452を備えている。タンク本体452は、第2前壁F2にかえて第4前壁F4を備えている。第4前壁F4は、第2前壁F2と同様に、前方から後方に向かって漸次下方に傾斜するスロープ状をなしている。第4前壁F4は、略矩形状である。第4前壁F4は、インク拡散部458を有している。インク拡散部458は、インク循環流路を流れてインク流入管153Fのインク流入口153Iから戻ってきたインク59を、タンク本体452の内部で拡散させるように構成されている。詳しくは、インク59を、第4前壁F4の面内に拡散させるように構成されている。
インク拡散部458は、1つまたは複数のインク拡散用部材で構成されている。インク拡散部458は、インク拡散用部材として、ここでは平坦な面から上方に突出した複数の凸部459を有している。図15に矢印で示すように、複数の凸部459は、インク流入口153Iから流入したインク59の道を分岐するように配置されている。複数の凸部459は、第4前壁F4のインク流入口153Iに近い第1角部(図15の右方かつ上方の角部)から対向する第2角部(図15の左方かつ下方の角部)に向かう方向に並んで配置されている。上下方向において、第4前壁F4を、上端部F4U、中間部F4M、下端部F4Dと3等分したとき、インク拡散部458は、第2前壁F2の上端部F4Uに設けられている。複数の凸部459は、それぞれ三角形状である。ただし、凸部459はインク59を導くことができる形状であれば特に限定されず、任意の形状であって良い。また、インク拡散部458は、1つまたは複数の凸部459にかえて、あるいは1つまたは複数の凸部459に加えて、平坦な面から窪んだ凹部(溝部)を有していてもよい。凹部は、インク59を分岐させる分岐部を有していてもよい。
スロープ状の第4前壁F4にインク拡散部458を設けることで、インク流入口153Iから流入したインク59の流れる道を分岐させて、第4前壁F4に広く行き渡らせることができる。これにより、インク59がインク流入口153Iから一直線に下方に流れる場合(図15の前方側を偏って流れる場合)に比べて、タンク本体452の内部でインク59が対流しやすくなり、インク59をより均一に撹拌することができる。
(6)例えば上記した図5等の実施形態では、蓋体153に設けられた大気連通部153Aが、貫通孔153Hと、蛇道153Sと、樹脂フィルム153Mと、を備えるラビリンス構造体であった。しかしこれには限定されない。大気連通部153Aは、例えば、メッシュ状の気液分離フィルタや、遠心式分離器、表面張力式分離器、重力式分離器、コアレッサー等の、従来公知の気液分離器で構成されていてもよい。
(7)例えば上記した図6、図7等の実施形態では、タンク本体152と感圧膜161とが別体で、感圧膜161がタンク本体152の下方開口部152Dを塞ぐように取り付けられていた。しかしこれには限定されない。タンク本体152と感圧膜161とは単一の部材で構成されていてもよい。例えばタンク本体152は、下方開口部を有していなくてもよい。タンク本体152は、壁面と、壁面よりも厚みが小さく形成され、感圧膜として機能する薄肉部と、を有していてもよい。薄肉部は、例えば研磨等によって壁面を薄肉状に切り出すことによって形成されていてもよい。
(8)例えば上記した図6、図7等の実施形態では、鉛直方向の上方を向く「下面」としての第1下壁B1と第2下壁B2とが、いずれも平面、具体的には水平面であった。しかしこれには限定されない。第1下壁B1および/または第2下壁B2は、必ずしも平面や水平面である必要はなく、例えば、表面に凹凸が形成されていてもよいし、湾曲していてもいいし、傾斜していてもよい。
(9)例えば上記した実施形態では、循環制御部184は、循環動作の際、所定の時間、一定した流速(循環速度)でインク59を循環させるように送液ポンプ141を駆動していた。しかしこれには限定されない。循環制御部184は、1回の循環動作のなかで、送液ポンプ141を1回または複数回、一時的に停止して、インク循環流路にインク59を滞留させてもよい。また、循環制御部184は、1回の循環動作のなかで、送液ポンプ141の駆動速度を変化させて、インク59の流速を変動させてもよい。
一例では、1回の循環動作のなかで、送液ポンプ141の駆動と停止とを交互に繰り返してもよい。循環動作は、例えば、インク59が所定の流速(例えば60mL/分)となるように送液ポンプ141を駆動する第1駆動動作の後、第1の停止時間(例えば3秒間)だけ送液ポンプ141を停止し、再びインク59が所定の流速(例えば60mL/分)となるように送液ポンプ141を駆動する第2駆動動作を行うものであってもよい。循環動作は、第2駆動動作の後、第2の停止時間(例えば3秒間)だけ送液ポンプ141を停止し、さらにインク59が所定の流速(例えば60mL/分)となるように送液ポンプ141を駆動する第3駆動動作を含んでもよい。循環動作の合計時間は、概ね5分以内、例えば3分以内としてもよい。送液ポンプ141を一時的に停止することでインク59の流れが止まり、再度インク59が動き始める際にインク循環流路(例えば可撓性のチューブ)の内壁との摩擦抵抗が大きくなる。これにより、インク循環流路の内壁近傍(言い換えれば、中心から離れた部分)において、インク59を効果的に撹拌することができる。
また、他の一例では、1回の循環動作のなかで、複数の流速を織り交ぜてインク59を循環させてもよい。循環動作は、例えば、インク59が第1の流速(例えば60ml/分)となるように送液ポンプ141を駆動する第1駆動動作の後、インク59が第1の流速よりも遅い第2の流速(例えば30ml/分)となるように送液ポンプ141を駆動する第2駆動動作を行うものであってもよい。第1駆動動作と第2駆動動作との間では、送液ポンプ141を一旦停止してもよい。循環動作は、第2駆動動作の後、さらにインク59が第1の流速(例えば60ml/分)となるように送液ポンプ141を駆動する第3駆動動作を含んでもよい。第2駆動動作と第3駆動動作との間では、送液ポンプ141を一旦停止してもよい。インク59の流速を変動させることで、流速を一定とする場合に比べて、インク59を全体的に押し出す力が強くなる。これにより、インク循環流路の壁面に付着したインク59が取れやすくなり、インク59を効果的に撹拌することができる。
(10)例えば上記した実施形態では、循環制御部184が特定の循環動作を行うように構成されていた。しかしこれには限定されない。例えば、プリンタ100の稼働時間(印刷時間)を長く取る観点からは、循環動作をなるべく短時間で済ませたい。すなわち、循環動作では、インク59の流速(循環速度)を早くしたい。しかし、インク59の温度が低いときには、一般にインク59の粘度が高く、インク59の流動性が低くなる。インク59の種類によっても異なるが、常温時(例えば25℃)と低温時(例えば15℃以下)とで10mPa・s以上も粘度に差がある場合もある。インク59の粘度が高いと、インク59を高速で循環させた場合に、圧力損失の影響でダンパー122の直上の圧力が高くなり、インクヘッド120からインク59がボタ落ちしたり漏れ出したりするおそれがある。このため、一例では、循環制御部184が、温度に基づいて循環動作を変更するように構成されていてもよい。例えば、温度が予め定められた基準温度以上である場合に、インク59が第1の流速となるように循環動作を行い、温度が予め定められた基準温度未満である場合に、インク59が第1の流速よりも遅い第2の流速となるように循環動作を行う、ように構成されていてもよい。
図16は、第1変形例に係る循環制御部284の機能ブロック図である。循環制御部284は、循環動作記憶部284aと、温度検知部284bと、循環動作設定部284cと、循環動作実行部284dと、を備えている。循環動作記憶部284aには、インク59の流速が第1の流速(循環速度)となるように、第1の駆動速度で、第1の駆動時間、送液ポンプ141を駆動する第1循環動作と、インク59の流速が第1の流速よりも遅い第2の流速となるように、第2の駆動速度で、第2の駆動時間、送液ポンプ141を駆動する第2循環動作と、が記憶されている。第1循環動作と、第2循環動作とは、インク循環流路を循環するインク59の量(循環量)が同じになるように構成されている。そのため、第2の駆動時間は、第1の時間よりも長い時間である。第1循環動作は、例えば、インク59の流速が60ml/分となるように、2時間、送液ポンプ141を駆動するものである。第2循環動作は、例えば、インク59の流速が30ml/分(例えば第1の流速の1/2以下)となるように、4時間(例えば第1の時間の2倍以上の時間)、送液ポンプ141を駆動するものである。
温度検知部284bは、サーミスタ128を制御して、プリンタ100の設置された環境の温度(環境温度)を検知する。サーミスタ128は、例えばインクヘッド120に設けられ、インクヘッド120の内壁面の温度を検知するものである。サーミスタ128は、プリンタ100の設置された環境の温度を検知する温度センサの一例である。ただし、サーミスタ128は、例えばインクヘッド120の外壁面やインク循環流路等に設けられていてもよい。また、サーミスタ128にかえて、例えばキャリッジ130やケーシング165に温度センサが設けられていてもよい。サーミスタ128は、例えば、ダイオードセンサや金属薄膜センサ等である。温度検知部284bで検知された温度は、循環動作設定部284cに入力される。
循環動作設定部284cは、温度検知部284bで検知された環境温度に基づいて循環動作時のインク59の流速を決定する。循環動作設定部284cは、ここでは、循環動作記憶部284aに記憶された循環動作のなかから1つの循環動作を選択する。一例では、環境温度が予め定められた基準温度以上(例えば15℃以上)である場合に、第1の流速でインク59を循環させる第1循環動作を選択し、環境温度が予め定められた基準温度未満(例えば15℃未満)である場合に、第1の流速よりも遅い第2の流速でインク59を循環させる第2循環動作を選択する。循環動作設定部284cで選択された循環動作は、循環動作実行部284dに入力される。循環動作実行部284dは、入力された循環動作を、循環制御部184に準じて実行する。このように、環境温度が基準温度未満の場合にインク59の流速を下げることで、循環動作の際にインクヘッド120からインク59が漏れることを防止することができる。また、環境温度が基準温度以上の場合にインク59の流速を相対的に上げることで、循環動作の所要時間を短縮して、プリンタ100をより長い時間稼働させることができる。
(11)例えば上記した実施形態では、循環制御部184が、例えば夜間(印刷停止時)に特定の定期循環動作を行うように構成されていた。しかしこれには限定されない。例えば、インクタンク151の容量が多かったりインク循環流路が長かったりする場合、インク59を十分に攪拌しようとすると、定期循環動作の所要時間が長くなる。しかし、夜間にもプリンタ100を稼働させたい(ほぼ24時間印刷したい)ユーザからは、定期循環動作をできるだけ短時間で済ませ、プリンタ100の稼働時間(印刷時間)を長く取りたい要望がある。また、上述の通り、プリンタ100では、印刷動作中に、あわせてインク59をインク循環流路に循環させることができる。このため、循環制御部184は、例えばプリンタ100の稼働時間等に応じて、定期循環動作を省略したり、定期循環動作の循環時間を変更したりするように構成されていてもよい。
図17は、第2変形例に係る循環制御部384の機能ブロック図である。循環制御部384は、印刷時間記録部384aと、循環量算出部384bと、循環動作要否判定部384cと、循環動作設定部384dと、循環動作実行部384eと、を備えている。ただし、循環動作要否判定部384cまたは循環動作設定部384dは必須ではなく、他の実施形態において一方を省略することもできる。印刷時間記録部384aは、所定の期間内(例えば1日のうち)で、印刷制御部181が印刷動作を行った時間(印刷時間)を記録する。印刷時間記録部384aには、先の定期循環動作の後に印刷制御部181が行った印刷時間を記録してもよい。
循環量算出部384bは、例えば印刷時間に基づいて、印刷動作時にインク循環流路に循環したインク59の量(循環量)を算出する。印刷動作時のインク59の循環量は、循環動作要否判定部384cと循環動作設定部384dとに入力される。循環動作要否判定部384cは、循環量算出部384bで算出された循環量に基づいて、インク59をインク循環流路に循環させる循環動作を実行するか否かを判定する。循環動作設定部384dは、循環量算出部384bで算出された循環量に基づいて、インク59をインク循環流路に循環させる循環動作を実行する際の循環条件を設定する。循環条件は、循環動作実行部384eに入力される。循環動作実行部384eは、循環動作設定部384dで設定された循環条件に基づいて循環動作を行う。
図18は、循環制御部384が実行する定期循環動作の処理手順を示すフローチャートである。定期循環動作は、所定の期間毎に(例えば1回/日)行われる。定期循環動作は、典型的には印刷停止時に行われる。図18のステップS1において、循環量算出部384bは、まず印刷時間記録部384aに記録された印刷時間を取得する。循環量算出部384bは、印刷時間記録部384aに記録された印刷時間に基づいて、印刷動作時のインク59の循環量を算出する。循環量算出部384bは、例えば、印刷動作時の送液ポンプ141の送液量から印刷に必要なインク59の流量を差し引いた差分と、印刷時間と、の積により、印刷動作時のインク59の循環量を算出する。
次に、ステップS2において、循環動作要否判定部384cは、循環量算出部384bで算出された循環量と、予め定められた必要循環量とを対比して、循環動作を行うか否かを判定する。必要循環量は、インク59を十分に攪拌することができる循環量の下限値である。必要循環量は、例えば、インクタンク151の容量、インク循環流路の長さ、インク59の種類(色材、性状等)等に応じて適宜に設定されるものである。必要循環量は、循環制御部384に予め記憶されている。循環動作要否判定部384cは、循環量算出部384bで算出された循環量が予め定められた必要循環量以上である場合に、ステップS3に進む。ステップS3において、循環動作要否判定部384cは、循環動作を行わないと判定する。そして、インク59をインク循環流路に循環させることなく、制御を終了する。一方、循環動作要否判定部384cは、循環量算出部384bで算出された循環量が予め定められた必要循環量未満である場合に、ステップS4に進む。ステップS4において、循環動作要否判定部384cは、循環動作が必要であると判定する。そして、ステップS5に進む。
次に、ステップS5において、循環動作設定部384dは、循環量算出部384bで算出された循環量に基づいて、送液ポンプ141の駆動時間を設定する。循環動作設定部384dは、例えば、循環量算出部384bで算出された循環量(言い換えれば、印刷動作時のインク59の循環量)と、循環動作における循環量と、の合計が、上記した必要循環量となるように、循環動作における送液ポンプ141の駆動時間を設定する。駆動時間は、概ね5時間以下、例えば2~4時間の範囲内で設定してもよい。一例では、所定の期間内で、印刷動作時のインク59の循環量が0(ゼロ)である場合、言い換えれば印刷動作を全く行わなかった場合に、駆動時間を最大値(例えば4時間)に設定してもよい。そして、ステップS6に進む。
次に、ステップS6において、循環動作実行部384eは、循環制御部184に準じて循環動作を行う。例えば、循環動作設定部384dで設定された駆動時間だけ送液ポンプ141を駆動するように送液ポンプ141の駆動と停止を制御して、循環動作を行う。このように、本変形例では、所定の期間毎、印刷動作時のインク59の循環量に応じて循環動作の要否を判定する。これにより、循環動作が不要な場合は、循環動作を省略することができる。また、循環動作が必要な場合は、印刷動作時のインク59の循環量に応じて循環時間を調節する。詳しくは、必要循環量の残り分を循環させるように循環動作を行う。これにより、循環動作における循環時間を大幅に短縮して、印刷可能な時間を長くとることができる。
(12)例えば上記した図6、図7等の実施形態では、感圧膜161が、タンク本体152の第1下壁B1(底面)に配置されていた。しかしこれには限定されない。感圧膜161は、例えばインク貯留室154を構成する壁部のうち、鉛直方向の上方を向いて高さ方向の位置が異なる面が複数設けられている場合、2番目に低い面に配置されていてもよい。あるいは、感圧膜161は、タンク本体152の鉛直方向に沿って延びる側壁(横壁)の下方部分に配置されていてもよい。この場合、例えば、タンク本体152の側壁に、側方開口部が形成されていて、感圧膜161は、上記側方開口部を塞ぐようにタンク本体152に取り付けられていてもよい。また、付勢部材163は、水平方向に伸縮自在なように、感圧膜161に取り付けられていてもよい。
(13)例えば上記した実施形態では、感圧膜161が可撓性フィルムで構成されていた。しかしこれには限定されない。感圧膜161は、可撓性を有していなくてもよい。感圧膜161は、例えば、ゴム製の部材であってもよい。感圧膜161は、例えば、インク貯留室154に近づく方向およびインク貯留室154から遠ざかる方向に伸縮可能な伸縮部材であってもよい。伸縮部材は、例えば、襞状の断面形状を有し、アコーディオン状に伸縮可能に構成されていてもよい。
(14)例えば上記した図6、図7等の実施形態では、感圧膜161が、インクタンク151の下端部、具体的には第1下壁B1の下方開口部152Dの縁部分に貼り付けられていた。本発明者らの検討によれば、第1下壁B1(感圧膜161を貼り付ける土台部分)がポリプロピレン(PP)等の樹脂製であり、かつ、インク59が溶剤インクやUVインクである場合、第1下壁B1がインク59と長期間接触することで膨張することがある。第1下壁B1が膨張すると、下方開口部152Dの外径が大きくなる。その結果、下方開口部152Dに撓ませた状態で貼り付けていた感圧膜161が引っ張られ、撓みが小さくなったり無くなったりすることがある。第1下壁B1の膨張によって感圧膜161の撓みが変化すると、インク量の検出精度が低下するおそれがある。このため、下方開口部152Dには、下方開口部152Dの膨張変形を抑制する変形抑制部材を取り付けてもよい。
図19は、第4変形例に係るインク供給装置570の下方開口部152Dの近傍を表す断面図である。図19に示すインク供給装置570では、下方開口部152Dの外周に沿って、リング状の変形抑制部材579が取り付けられている。変形抑制部材579は、感圧膜161の撓み変形する方向(例えば上下方向)と交差する方向(例えば上下方向と直交する水平方向)に第1下壁B1が変形することを抑制する部材である。変形抑制部材579は、感圧膜161の外縁に沿って取り付けられている。変形抑制部材579は、適度な強度があり、かつインク59と接触しても変形しにくい材質からなるとよい。変形抑制部材579は、例えば、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属製である。変形抑制部材579を設けることによって下方開口部152Dの外形が変化することを簡単に抑制することができ、インク貯留室154内のインク59の水頭圧を感圧膜161に安定して作用させることができる。これにより、インク量の検出精度を高めることができる。また、インク供給装置570を長期にわたって使用しても、インク量の検出精度を維持することができる。
(15)例えば上記した実施形態では、遮蔽部162Dが均一な厚みおよび光透過性を有していた。しかしこれには限定されない。遮蔽部162Dは、厚みや透明度が部分的に異なっていてもよい。遮蔽部162Dは、第1の光透過度を有する第1部分と、第1の光透過度とは異なる第2の光透過度を有する第2部分と、を有していてもよい。なお、光透過度は、発光部S1a、S2aから照射される光(例えば可視光や赤外線)を用いて測定した値であるとよい。遮蔽部162Dは、例えば、上下方向において、段階的にあるいは漸次(グラデーション的に)光透過度が変化するように構成されていてもよい。遮蔽部162Dは、例えば、第1遮蔽部P1と第2遮蔽部P2と第3遮蔽部P3とのそれぞれにおいて、第1部分と第2部分とを有していてもよい。遮蔽部162Dは、例えば、第1遮蔽部P1と第2遮蔽部P2と第3遮蔽部P3とで相互に光透過度が異なっていてもよい。
遮蔽部162Dが第1部分と第2部分とを有する場合、判定部182は、インクタンク151内のインク量の判定に加えて、インク量検出部160の不具合の有無を判定するように構成されていてもよい。インク量検出部160に不具合が無ければ、同じHIT状態のなかでも、遮蔽部162Dの変位によって、受光部S1b、S2bの受光量が変化するはずである。一方、センサ部164が故障したり、付勢部材163が動いていなかったりすると、HIT状態のなかで、受光部S1b、S2bの受光量は変化しない。そこで、判定部182は、センサがHIT状態のときに、受光量の値が変化したことに基づいて、インク量検出部160に「異常がない」と判定する。判定部182は、センサがHIT状態のときに、受光量の値が変化しないことに基づいて、インク量検出部160に「異常がある」と判定する。通知部183は、判定部182で、「異常がある」と判定された場合に、ユーザに通知してもよい。これにより、ユーザは、インク量検出部160の不具合を把握することができる。
(16)例えば上記した実施形態では、付勢部材163がコイルばねであった。しかしこれには限定されない。付勢部材163は、例えば、被検出部材162の下方に配置され、所定の磁極を有する第1の磁性体と、上記第1の磁性体と対向する位置に配置され、上記第1の磁性体と反発する磁極を有する第2の磁性体と、を備え、上記第1の磁性体と上記第2の磁性体の間に作用する反力によって、感圧膜161を付勢するように構成されていてもよい。
(17)例えば上記した図7、図8等の実施形態では、センサ部164が第1センサS1および第2センサS2を備えていた。しかしこれには限定されない。センサの個数は、3個以上であってもよい。また、1つのセンサで、複数のインクタンク151の状態を検出可能に構成されていてもよい。また、例えば上記した実施形態では、第1センサS1および第2センサS2がいずれも透過型のフォトセンサであった。しかしこれには限定されない。第1センサS1および第2センサS2は、相互に構成が異なっていてもよい。第1センサS1および/または第2センサS2は、例えば、反射型のフォトセンサであってもよいし、非接触式の位置センサであってもよいし、接触式のスイッチ等であってもよい。
(18)例えば上記した図3等の実施形態では、インクタンク151から送液ポンプ141までの第1流路140aが、インクタンク151内のインク59の水頭値よりも低い位置に存在することがある。この場合、送液ポンプ141をメンテナンスしたり交換したりする際に、インクタンク151内のインク59をすべて排出したり、第1流路140aを作業者がストッパー等で閉鎖したりする等の対応が必要になる。しかし、メンテナンス時等にインクタンク151内のインク59をすべて排出するとなると、インク59の無駄が生じることがある。また、作業者が第1流路140aをストッパー等で閉鎖する場合、ふとした拍子にうっかりストッパーが外れると、インクタンク151からインク59が漏れ出し、プリンタ100の近くの床面がインク59で汚れるおそれがある。このため、第1流路140aには、インク流路140からインクタンク151を切り離し可能な連結部材が設けられているとよい。
図20は、第1変形例に係るインク流路240を示すブロック図である。図20に示すインク流路240は、以下の点を除き、上記した図3のインク流路140と同様である。すなわち、インク流路240は、濾過装置248をさらに備えている。インク流路240は、第1流路140aにかえて、第1上側流路240a1と、第1下流側流路240a2と、を有している。第1上側流路240a1の上流端は、インクタンク151に接続されている。第1上側流路240a1の下流端は、濾過装置248に接続されている。第1下流側流路240a2の上流端は、濾過装置248に接続されている。第1下流側流路240a2の下流端は、送液ポンプ141に接続されている。
本変形例のインク流路240において、濾過装置248は、インクタンク151をインク流路240に接続したりインク流路240から切り離したりする部材である。すなわち、濾過装置248を取り付けることで、インクタンク151をインク流路240に接続された状態とし、濾過装置248を取り外すことで、インクタンク151をインク流路240から切り離された状態とすることができる。濾過装置248は、インクタンク151をインク流路240から切り離し可能な連結部材を兼ねている。濾過装置248は、連結部材の一例である。ただし、第1上側流路240a1と第1下流側流路240a2との間には、濾過装置248にかえて、ジョイントや弁部材(例えばチョークバルブ)等の流路閉塞部品が設けられていてもよい。濾過装置248が連結部材を兼ねていることにより、別途ジョイントや流路閉塞部品等を使用しなくてもインク流路240からインクタンク151を容易に切り離すことができ、コストを抑えることができる。
濾過装置248は、インクタンク151内のインク59の水頭よりも高い位置に配置されている。このため、インクタンク151から第1上側流路240a1へと流れたインク59は、インクタンク151の上方を通過する。本変形例において、濾過装置248は、インクタンク151よりも上方に配置されている。濾過装置248は、平面視において、インクタンク151の少なくとも一部と重なるように配置されていてもよい。濾過装置248は、左右方向において、蓋体153の大気連通部153Aとインク補充部190との間に配置されていてもよい。
濾過装置248は、典型的には定期的に交換される消耗品である。濾過装置248を交換する際は、例えば、インク流路240の内圧を解除した後、濾過装置248をそのまま取り外す。本変形例では、濾過装置248の位置がインクタンク151内のインク59の水頭値よりも高いため、濾過装置248をそのまま取り外しても、インクタンク151内のインク59が漏れ出すことを防止することができる。また、送液ポンプ141のメンテナンス時等には、例えば、インク流路240の内圧を解除した後、第2上側流路240a2から送液ポンプ141を取り外し、ストッパーを取りつける。本変形例では、濾過装置248の位置がインクタンク151内のインク59の水頭値よりも高いため、万が一、ストッパーが外れても、インクタンク151からインク59が漏れ出して床面に漏れ広がるリスクを低減することができる。
(19)例えば上記した図3等の実施形態において、送液ポンプ141の流速に脈動がある場合、例えば送液ポンプ141がチューブポンプやダイヤフラムポンプ等の脈動ポンプである場合は、印刷動作時に、脈動によってインク流路140内の圧力が変動する。上述の通り、特に、相対的に沈降しやすい第1の色材を含むインク59(例えばホワイトインク)では、相対的に沈降しにくい第2の色材を含むインク59(例えばプロセスカラーインク)に比べて、インクを還流させる分岐部材143をダンパー122に近い位置に設けることでインク還流流路の全体長さが長くなっていることがある。この場合、圧力損失の影響でダンパー122の直上の圧力が高くなり、送液ポンプ141が脈動したときの圧力の変動量が殊に大きくなる。
例えば、印刷動作時の送液ポンプ141の流速を20mL/分とすると、インク還流流路の全体長さが短いプロセスカラーインクのインク流路140では、ダンパー122の直上の圧力の変動量が1kPa程度であるのに対し、インク還流流路の全体長さが長いホワイトインクのインク流路140では、ダンパー122の直上の圧力の変動量が25kPa程度になりうる。さらに、印刷動作中にあわせてインク59を循環させる際、送液ポンプ141の流速を40mL/分とすると、ダンパー122の直上の圧力の変動量が50kPa程度にまで大きくなりうる。その結果、インクヘッド120からのインクの吐出が不安定になるおそれがある。このため、印刷動作の際にはインク59の還流流路の全体長さをより短くして、ダンパーにかかる圧力変動を小さく抑えることが望まれる。一方、沈降しやすい第1の色材を含むインク59(例えばホワイトインク)のインク流路140では、循環動作の際にインク循環流路の全体長さを長くしてインク59を十分に攪拌することが望まれる。
図21は、第2変形例に係るインク流路340を示すブロック図である。インク流路340は、沈降しやすい第1の色材を含むインク59(例えばホワイトインク)のインク流路の一例である。図21に示すインク流路340は、以下の点を除き、上記した図3のインク流路140と同様である。すなわち、インク流路340は、第2の弁部材346をさらに備えている。第2の弁部材346は、例えば電磁弁等の開閉バルブである。
インク流路340は、第7流路340aと、第8流路340bと、をさらに有している。第7流路340aの上流端は、第2の分岐部材345に接続されている。第7流路340aの上流端は、第2の分岐部材345を介して、第3流路140cの中途部に接続されている。第7流路340aの下流端は、第2の弁部材346に接続されている。第8流路340bの上流端は、第2の弁部材346に接続されている。第8流路340bの下流端は、第3の分岐部材347に接続されている。第8流路340bの下流端は、第3の分岐部材347を介して、第6流路140fの中途部に接続されている。第2の分岐部材345は、分岐部材143よりもダンパー122に近い側に配置されている。第3の分岐部材347は、分岐部材143よりもインクタンク151に近い側に配置されている。第2の弁部材346は、制御装置180(図1参照)と電気的に接続されており、制御装置180によって制御される。第7流路340aと第8流路340bとの連通状態は、制御装置180によって切り換えられる。第2の弁部材346は、切替部材の一例である。
本変形例において、循環制御部184(図1参照)が循環動作を行う際には、第2の弁部材346を開状態として、第7流路340aと第8流路340bとの間を開放する。さらに、弁部材144を閉状態として、第5流路140eと第6流路140fとの間を閉鎖してもよい。この状態で、送液ポンプ141を駆動することにより、第1流路140aと、第2流路140bと、第3流路140cの分岐部材143から第2の分岐部材345までと、第7流路340aと、第8流路340bとに、インク59が流れる。すなわち、第1流路140aと、第2流路140bと、第3流路140eの分岐部材143から第2の分岐部材345までと、第7流路340aと、第8流路340bとが、循環動作時のインク循環流路を構成する。これにより、インク循環流路の全体長さを長くして、インク59を十分に攪拌することができる。
また、印刷制御部181(図1参照)が印刷動作を行う際には、第2の弁部材346を閉状態として、第7流路340aと第8流路340bとの間を閉鎖する。この状態で、送液ポンプ141を駆動することにより、インク59が、第1流路140aと、第2流路140bと、第3流路140cと、第4流路140dとを流れ、インクヘッド120から吐出される。すなわち、第1流路140aと、第2流路140bと、第3流路140cと、第4流路140dとが、印刷動作時のインク供給流路を構成する。また、印刷動作時にインク59の流量が印刷に必要な流量よりも多い場合は、インク59の一部が、第5流路140eと、第6流路140fとを流れて、インクタンク151へと戻される。これにより、印刷動作を行う場合には、還流するための分岐位置(分岐部材143)が、循環動作を行う場合の分岐位置(分岐部材345)に比べて、ポンプ141に近くなりインク59が流れる還流流路の長さが短くなる。したがって、インク流路340の圧力損失を抑えることができ、ダンパー122の直上の圧力の変動量を小さく抑えることができる。例えば、ダンパー122の直上の圧力の変動量を1kPa程度にまで小さく抑えることができる。
図22は、第3変形例に係るインク流路440を示すブロック図である。インク流路440は、沈降しやすい第1の色材を含むインク59(例えばホワイトインク)のインク流路の他の一例である。図22に示すインク流路440は、以下の点を除き、上記した図3のインク流路140と同様である。すなわち、インク流路440では、上述のインク流路140(例えばプロセスカラーインクのインク流路)に比べて、分岐部材143が相対的にダンパー122の近くに設けられている。インク流路440は、第2の弁部材446をさらに備えている。第2の弁部材446は、例えば電磁弁等の開閉バルブである。
インク流路440は、第7流路440aと、第8流路440bと、をさらに有している。第7流路440aの上流端は、第2の分岐部材445に接続されている。第7流路440aの上流端は、第2の分岐部材445を介して、第2流路140bの中途部に接続されている。第7流路440aの下流端は、第2の弁部材446に接続されている。第8流路440bの上流端は、第2の弁部材446に接続されている。第8流路340bの下流端は、第3の分岐部材447に接続されている。第8流路340bの下流端は、第3の分岐部材447を介して、第5流路140eの中途部に接続されている。第2の分岐部材445および第3の分岐部材447は、分岐部材143よりもインクタンク151に近い側に配置されている。第2の弁部材446は、制御装置180(図1参照)と電気的に接続されており、制御装置180によって制御される。第7流路440aと第8流路440bとの連通状態は、制御装置180によって切り換えられる。第2の弁部材446は、切替部材の一例である。
本変形例において、循環制御部184(図1参照)が循環動作を行う際には、第2の弁部材446を閉状態として、第7流路440aと第8流路440bとの間を閉鎖する。この状態で、送液ポンプ141を駆動することにより、第1流路140aと、第2流路140bと、第5流路140eと、第6流路140fとに、インク59が流れる。すなわち、第1流路140aと、第2流路140bと、第5流路140eと、第6流路140fとが、循環動作時のインク循環流路を構成する。これにより、インク循環流路の全体長さを長くして、インク59を十分に攪拌することができる。
また、印刷制御部181(図1参照)が印刷動作を行う際には、第2の弁部材446を開状態として、第7流路440aと第8流路440bとの間を開放する。この状態で、送液ポンプ141を駆動することにより、第1流路140aと、第2流路140bの送液ポンプ141から第2の分岐部材445までと、第2の分岐路445から分岐部材143までの第2流路140bと、第4流路140dとに、インク59が流れる。すなわち、第1流路140aと、第2流路140bの送液ポンプ141から第2の分岐部材445までと、第2の分岐路445から分岐部材143までの第2流路140bと、第4流路140dとが、印刷動作時のインク供給流路を構成する。また、印刷動作時にインク59の流量が印刷に必要な流量よりも多い場合は、インク59の一部が、第5流路140eの第3の分岐部材447から弁部材144までと、第6流路140fとを流れて、インクタンク151へと戻される。これにより、印刷動作を行う場合には、還流するための分岐位置(分岐部材445)が、循環動作を行う場合の分岐位置(分岐部材143)に比べて、ポンプ141に近くなることでインク59が流れる還流流路の長さを短くすることができる。したがって、インク流路440の圧力損失を抑えることができ、ダンパー122の直上の圧力の変動量を小さく抑えることができる。例えば、ダンパー122の直上の圧力の変動量を1kPa程度にまで小さく抑えることができる。
(20)例えば上記した実施形態では、キャリッジ130が主走査方向に移動し、記録媒体5が副走査方向に移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ130と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向または副走査方向に移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ130が走査方向および副走査方向の両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ130および記録媒体5のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、プリンタ100の構成は特に限定されない。プリンタ100は、例えばフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。プリンタ100は、紫外線を照射する照射装置を備えていてもよいし、記録媒体5をカットするカッティングヘッドを備えていてもよい。