以下、本発明による検出装置、および、制御装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態による検出装置、および、制御装置を図1~図4に示す。図1に示すように、制御装置としてのECU10は、回転電機であるモータ80とともに、車両のステアリング操作を補助するための電動パワーステアリング装置8に適用される。図1は、電動パワーステアリング装置8を備えるステアリングシステム90の全体構成を示すものである。ステアリングシステム90は、操舵部材であるステアリングホイール91、ステアリングシャフト92、ピニオンギア96、ラック軸97、車輪98、および、電動パワーステアリング装置8等を備える。
ステアリングホイール91は、ステアリングシャフト92と接続される。ステアリングシャフト92には、操舵トルクを検出するトルクセンサ94が設けられる。ステアリングシャフト92の先端には、ピニオンギア96が設けられる。ピニオンギア96は、ラック軸97に噛み合っている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対の車輪98が連結される。運転者がステアリングホイール91を回転させると、ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92が回転する。ステアリングシャフト92の回転運動は、ピニオンギア96によってラック軸97の直線運動に変換される。一対の車輪98は、ラック軸97の変位量に応じた角度に操舵される。
電動パワーステアリング装置8は、モータ80およびECU10を有する駆動装置400、ならびに、モータ80の回転を減速してステアリングシャフト92に伝える動力伝達部としての減速ギア89等を備える。本実施形態の電動パワーステアリング装置8は、所謂「コラムアシストタイプ」であるが、モータ80の回転をラック軸97に伝える所謂「ラックアシストタイプ」等としてもよい。本実施形態では、ステアリングシャフト92が「駆動対象」に対応する。ステアリングホイール91から車輪98に至るメカ部分を「ステアリング系」とすれば、減速ギア89は、モータ80とステアリング系とを接続する部材である、といえる。
図2および図3に示すように、モータ80は、操舵に要するトルクの一部または全部を出力するものであって、図示しないバッテリから電力が供給されることにより駆動され、減速ギア89を正逆回転させる。モータ80は、3相ブラシレスモータであって、ロータ860およびステータ840を有する。
モータ80は、巻線組としての第1モータ巻線180および第2モータ巻線280を有する。モータ巻線180、280は、電気的特性が同等であり、共通のステータ840に、互いに電気角30[deg]ずらしてキャンセル巻きされる。これに応じて、モータ巻線180、280には、位相φが30[deg]ずれた相電流が通電されるように制御される。通電位相差を最適化することで、出力トルクが向上する。また、6次のトルクリプルを低減することができる。さらにまた、位相差通電により、電流が平均化されるため、騒音、振動のキャンセルメリットを最大化することができる。また、発熱についても平均化されるため、各センサの検出値やトルク等、温度依存の系統間誤差を低減可能であるとともに、通電可能な電流量を平均化できる。なお、モータ巻線180、280の電気的特性は異なっていてもよい。
以下、第1モータ巻線180の駆動制御に係る第1駆動回路120等の構成を第1系統、第2モータ巻線280の駆動制御に係る第2駆動回路220等の構成を第2系統とする。また、第1系統に係る構成を主に100番台で付番し、第2系統に係る構成を主に200番台で付番する。また、第1系統および第2系統において、同様の構成には、下2桁が同じとなるように付番する。以下適宜、「第1」を添え字の「1」、「第2」を添え字の「2」として記載し、適宜説明を省略する。
駆動装置400は、モータ80の軸方向の一方側にECU10が一体的に設けられており、いわゆる「機電一体型」であるが、モータ80とECU10とは別途に設けられていてもよい。ECU10は、モータ80の出力軸とは反対側において、シャフト870の軸線Axに対して同軸に配置されている。ECU10は、モータ80の出力軸側に設けられていてもよい。機電一体型とすることで、搭載スペースに制約のある車両において、ECU10とモータ80とを効率的に配置することができる。
モータ80は、ステータ840、ロータ860、および、これらを収容するハウジング830等を備える。ステータ840は、ハウジング830に固定されており、モータ巻線180、280が巻回される。ロータ860は、ステータ840の径方向内側に設けられ、ステータ840に対して相対回転可能に設けられる。
シャフト870は、ロータ860に嵌入され、ロータ860と一体に回転する。シャフト870は、軸受835、836により、ハウジング830に回転可能に支持される。シャフト870のECU10側の端部は、ハウジング830からECU10側に突出する。シャフト870のECU10側の端部には、検出対象としてのマグネット875が設けられる。マグネット875の中心は、軸線Ax上に配置される。
ハウジング830は、リアフレームエンド837を含む有底筒状のケース834、および、ケース834の開口側に設けられるフロントフレームエンド838を有する。ケース834とフロントフレームエンド838とは、ボルト等により互いに締結されている。リアフレームエンド837には、リード線挿通孔839が形成される。リード線挿通孔839には、モータ巻線180、280の各相と接続されるリード線185、285が挿通される。リード線185、285は、リード線挿通孔839からECU10側に取り出され、基板470に接続される。
ECU10は、カバー460、カバー460に固定されているヒートシンク465、ヒートシンク465に固定されている基板470、および、基板470に実装される各種の電子部品等を備える。
カバー460は、外部の衝撃から電子部品を保護したり、ECU10の内部への埃や水等の浸入を防止したりする。カバー460は、カバー本体461、および、コネクタ部462が一体に形成される。なお、コネクタ部462は、カバー本体461と別体であってもよい。コネクタ部462の端子463は、図示しない配線等を経由して基板470と接続される。コネクタ数および端子数は、信号数等に応じて適宜変更可能である。コネクタ部462は、駆動装置400の軸方向の端部に設けられ、モータ80と反対側に開口する。
基板470は、例えばプリント基板であり、リアフレームエンド837と対向して設けられる。基板470には、2系統分の電子部品が系統ごとに領域を分けて実装されている。なお、制御部70等、両系統で共通に用いる部品は、本実施形態では、1枚の基板470に電子部品が実装されているが、複数枚の基板に電子部品を実装するようにしてもよい。
基板470の2つの主面のうち、モータ80側の面をモータ面471、モータ80と反対側の面をカバー面472とする。図3に示すように、モータ面471には、駆動回路120を構成するスイッチング素子121、駆動回路220を構成するスイッチング素子221、検出装置としての回転角センサ31、制御部70を構成するマイコン、および、カスタムIC79等が実装される。図3では、制御部70を構成するマイコンについて、70を付番した。カスタムIC79および制御部70の少なくとも一方をカバー面472側に設けてもよい。回転角センサ31は、マグネット875の回転に伴う磁界の変化を検出可能なように、マグネット875と対向する箇所に実装される。
カバー面472には、コンデンサ128、228、および、インダクタ129、229等が実装される。コンデンサ128、228は、バッテリから入力された電力を平滑化する。また、コンデンサ128、228は、電荷を蓄えることで、モータ80への電力供給を補助する。コンデンサ128、228、および、インダクタ129、229は、フィルタ回路を構成し、バッテリを共用する他の装置から伝わるノイズを低減するとともに、駆動装置400からバッテリを共用する他の装置に伝わるノイズを低減する。なお、図示しない電源リレー、モータリレー、および、電流センサ等についても、モータ面471またはカバー面472に実装される。
図4に示すように、ECU10は、駆動回路120、220、制御部70、および、回転角センサ31等を備える。図4中、駆動回路を「INV」と記載する。第1駆動回路120は、6つのスイッチング素子121を有する3相インバータであって、第1モータ巻線180へ供給される電力を変換する。第2駆動回路220は、6つのスイッチング素子221を有する3相インバータであって、第2モータ巻線280へ供給される電力を変換する。スイッチング素子121、221は、制御部70から出力される制御信号に基づいてオンオフ作動が制御される。
回転角センサ31は、位置検出部40、マルチターン検出部45、角度演算部50、カウント演算部55、および、通信部58を有し、図示しない車両のイグニッションスイッチ等である始動スイッチがオンされているときに、電源391から電力が供給される。電源391は、例えばレギュレータ等の定電圧電源である。以下適宜、始動スイッチを「IG」と記載する。位置検出部40は、モータ80の回転に応じたマグネット875の磁界の変化を検出するものであって、例えば、AMRセンサ、TMRセンサ、GMRセンサ等の磁気抵抗効果素子や、ホール素子等である。また、インダクティブセンサやレゾルバ等を用いてもよい。
マルチターン検出部45は、電力供給がなくてもマグネット875の回転に伴う磁束変化を捉えることが可能に構成される。換言すると、マルチターン検出部45は、電気以外の記憶方式(本実施形態では磁気記憶方式)を用いている。具体的には、マルチターン検出部45は、磁気検出素子が螺旋状に配列され、初期は特定の磁気方向を向いている。マグネット875が回転すると、磁気検出素子は、端部から順に磁気方向が変えられ、ロータ860の一周ごとに回転方向に応じて外側または内側に磁束が変化する箇所が変わる。磁気検出素子は、磁気方向に応じて抵抗値が変化する。磁気検出素子の磁気方向の変化には、電力は不要である。また、磁気検出素子に電流を流し、出力を検出することで、ロータ860の回転位置を測定可能である。すなわち、マルチターン検出部45は、検出時には電力が不要であって、検出値を読み出す際には電力が必要である。
マルチターン検出部45は、始端から終端までの所定数の回転位置を検出可能なものであってもよいし、始端と終端とを接続することで実用上、無限に回転位置を検出可能に構成してもよい。
角度演算部50は、図示しないAD変換部によりAD変換された位置検出部40の検出値に基づき、モータ回転角θmを演算する。モータ回転角θmは、ロータ860の回転角度に応じた値であって、回転角度に換算可能などのような値であってもよい。
カウント演算部55は、マルチターン検出部45に通電したときの出力に応じ、カウント値TCを演算する。カウント値TCは、ロータ860の1回転中にn回(nは1以上の整数)、回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンされる。nを3以上とすると、回転方向を検出できる。本実施形態では、n=4とし、ロータ860が90[deg]回転するごとにカウントアップまたはカウントダウンされる。本実施形態では、カウント値TCは、正回転時にカウントアップ、逆回転時にカウントダウンされるものとする。また、ロータ860の回転速度に対して十分な速度でのサンプリングを行うものとする。図中、二点鎖線にて囲まれたブロックは電力不要であり、破線で囲まれたブロックは、IGがオンされているときに給電される。
通信部58は、モータ回転角θmおよびカウント値TCを含む出力信号を生成し、例えばSPI通信等のデジタル通信にて出力信号を制御部70に出力する。通信方式は、SPI通信以外の方式であってもよい。また、モータ回転角θmおよびカウント値TCを別々に制御部70に出力するようにしてもよい。さらにまた、モータ回転角θmおよびカウント値TCに基づいて絶対角θaを演算し、絶対角θaを制御部70に出力してもよい。
制御部70は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部70における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。後述の実施形態に係る制御部170、270も同様である。
制御部70は、絶対角演算部75、制御演算部76、および、異常監視部77等を有する。絶対角演算部75は、カウント値TCおよびモータ回転角θmを用いて絶対角θaを演算する。絶対角θaは、基準位置からの回転角度であって、複数回転情報を含む。制御演算部76は、回転角センサ31から取得した情報等を用いて、各種制御演算を行う。本実施形態では、回転角センサ31から取得した情報を用い、モータ80の駆動制御に係る制御演算を行う。異常監視部77は、回転角センサ31の異常を監視する。
絶対角θaの演算を式(1)に示す。式中のINT(TC/n)は、カウント値TCを1回転あたりのカウント数nで除した商の整数部分を意味しており、モータ80の回転回数を示している。尚、カウント値TCとモータ回転角θmの0点が違うと、INT(TC/n)にて間違った回転回数を算出するため、必要に応じカウント値TCに、カウント値TCとモータ回転角θmの0点を一致させるためのTC補正値TC_cを加算した後に演算してもよい。その場合は、回転回数は、INT{(TC+TC_c)/n}となる。TC補正値TC_cはカウント値TCがリセットされる毎に演算が必要であり、TC補正値TC_cは不揮発領域に記憶される。図4の例では、絶対角演算部75が制御部70に設けられているが、回転角センサ31にて絶対角θaを演算し、絶対角θaを制御部70に出力するようにしてもよい。後述の実施形態においても同様である。
θa=INT(TC/n)×360+θm ・・・(1)
図17に示すように、ステアリングホイール91の回転角であるステアリング角θsを検出するために、ステアリングシャフト92にステアリングセンサ95が設けられることがある。図1、図16、図17および図21では、トルクセンサ94の機能を「TAS」、ステアリングセンサ95の機能を「SAS」、回転角センサ31の機能を「MPS」として、二点鎖線で囲んで示した。
ステアリングホイール91は1回転以上回るため、ステアリング角θsを検出するステアリングセンサ95は、複数回転(すなわち360[deg]以上)の情報を取得できる構成となっている。例えば図18に示すように、ステアリングセンサ95は、回転部ギア930、第1ギア931、第2ギア932、および、検出用磁石935、936を有する。回転部ギア930は、ステアリングシャフト92に設けられており、ステアリングホイール91およびステアリングシャフト92と一体となって回転する。第1ギア931および第2ギア932は、回転部ギア930に噛み合っており、歯数が異なっている。検出用磁石935、936は、それぞれギア931、932の回転角度を検出する。第1ギア931の回転角度を第1ギア角度θg1、第2ギア932の回転角度を第2ギア角度θg2とする。
図19に示すように、第1ギア角度θg1と第2ギア角度θg2とは、周期が異なっているため、第1ギア角度θ1と第2ギア角度θ2との差分から、360[deg]以上のステアリング角θsを検出可能である。
また、図20に示すステアリングセンサ950は、ボールねじ951およびセンサ952を有する。ボールねじ951は、ステアリングシャフト92に設けられ、ステアリングシャフトの回転に応じて上下に移動する。センサ952は、ボールねじ951とのギャップ距離Lgapを測定し、ギャップ距離Lgapからステアリング位置を算出する。ここでは、ステアリングシャフト92にステアリングセンサ950を設ける例を説明したが、ボールねじ951をラック軸97に設けても同様に測定可能である。しかしながら、このようなステアリングセンサ95、950では、部品点数が多く、検出精度が低い。
また、トルクセンサ94とステアリングセンサ95とを一体化したり(図21参照)、電動パワーステアリング装置8の駆動装置400とステアリングセンサ95とを一体化したりすることで機能統合し、小型化することができる。しかしながら、単に一体化したとしても、部品点数が多い。
本実施形態では、図1および図4に示すように、電動パワーステアリング装置8のモータ80の回転を検出する回転角センサ31により検出されるモータ回転角θmおよびカウント値TCからステアリング角θsを算出する(式(2)参照)。式中のRgは、モータ80とステアリングホイール91との間に設けられるギア(本実施形態では減速ギア89)のギア比である。この場合、回転角センサ31に機能追加すればよく、少ない部品点数にてステアリング角θsを算出可能である。また、モータ回転角θmの分解能が高いため、高精度でステアリング角θsを算出可能である。
θs={INT(TC/n)×360+θm}/Rg
=θa/Rg ・・・(2)
回転角センサ31の情報からステアリング角θsを演算するためには、カウント値TCを常時検出する必要がある。そのため、電力が必要な素子にてカウント値TCを検出する場合、IGオフ中においても回転角センサ31への常時給電が必要となる。また、バッテリ上がりやバッテリ交換のあと、中立位置の学習が完了するまで間、ステアリング角θsを検出できない。
そこで本実施形態では、マルチターン検出部45を、電力供給がなくても磁気変化を検出可能に構成し、電力供給がない間もカウント値TCに係る磁気変化の検出を継続している。そして、IGがオンされ、回転角センサ31に電力が供給されたときに、マルチターン検出部45に電流し、出力を検出することで、IGオフ中にステアリングホイール91が回転した場合であっても、ステアリング角θsを適切に演算可能である。なお、モータ回転角θmは、始動スイッチがオンされたときの値を用いればよいので、IGがオフされている間の検出を継続する必要はない。
以上説明したように、回転角センサ31は、マルチターン検出部45と、位置検出部40と、カウント演算部55と、角度演算部51と、を備える。マルチターン検出部45は、ロータ860の複数回転の回転位置の検出を、電力を用いずに継続可能である。位置検出部40は、ロータ860の1回転中の回転位置を検出する。なお、位置検出部40は、マルチターン検出部45よりも分解能が高い。
カウント演算部55は、マルチターン検出部45の検出値に基づき、複数回転の回転位置に係る複数回転位置情報を演算する。複数回転位置情報は、ロータ860の回転回数の係る値であって、本実施形態では、ロータ860の1回転中にn回(nは1以上の整数)、回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンされるカウント値TCである。角度演算部50は、位置検出部40の検出値に基づき、1回転中の回転位置に係るモータ回転角θmを演算する。マルチターン検出部45は、電力を用いずに複数回転位置の検出を継続可能であるので、例えばバッテリの脱着や交換後等で電力供給が途絶えた場合も、カウント値TCの検出を継続することができる。
本実施形態のマルチターン検出部45は、複数回転の回転位置を磁気的に保持し、通電により保持された回転位置を読み出し可能である。これにより、電力を用いることなく、複数回転の回転位置の検出を適切に継続することができる。
ECU10は、回転角センサ31と、制御部70と、を備える。回転角センサ31または制御部70は、カウント値TCおよびモータ回転角θmに基づき、基準位置からの変位量である絶対角θaを演算する絶対角演算部75を備える。本実施形態では、カウント値TCを電源不要のマルチターン検出部45の検出値に基づいて演算するため、電源の着脱や交換時も、絶対角θaの演算を継続することができる。また、絶対角演算部75は、カウント値TCをTC補正値TC_cで補正した値を用いて絶対角θaを演算する。これにより、カウント値TCとモータ回転角θmの0点ズレによる回転飛ばしを防止可能であり、適切に絶対角θaを演算することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態を図5および図6に示す。図5に示すように、ECU11は、駆動回路120、220、制御部70、および、回転角センサ32等を備える。回転角センサ32は、メイン検出部41、サブ検出部42、マルチターン検出部45、角度演算部51、52、カウント演算部55、56、および、通信部58、59を有し、電源391、392から電力が供給される。電源391は、IGがオンされているときにIG経由で回転角センサ32に給電可能であり、電源392は、例えばレギュレータ等の定電圧電源であって、IGのオンオフ状態によらず、図示しないバッテリから回転角センサ32に給電可能である。図中、一点鎖線で囲まれたブロックは、常時給電される。
メイン検出部41およびサブ検出部42は、位置検出部40と同様、モータ80の回転に応じたマグネット875の磁界の変化を検出するものである。メイン検出部41とサブ検出部42とは、異なるセンサ特性を有するものを用いることが望ましく、例えば、メイン検出部41をAMR素子とし、サブ検出部42をTMR素子とする。ここで、素子の種類が同じでも、レイアウトや材料の割合、製造ロットやロット内のウェハ番号、ウェハ内のチップ位置の違いについても、「検出素子に関わる構成が異なる」とみなしてもよい。また、素子に限らず、素子に接続される検出回路、演算回路、供給される電源の種類や電圧が異なる場合についても、「検出素子に関わる構成が異なる」とみなしてもよい。センサ特性が異なるものを用いることで、例えば磁束密度異常等の共通原因の故障しにくくなり、機能安全面から好ましい。サブ検出部42は、低消費電力を重視する場合、TMR素子が好適に用いられ、磁場耐性を重視する場合、AMR素子が好適に用いられる。
ここで、検出部41、42について、「メイン」、「サブ」と付しているのは、2つを区別するためであって、機能的に同等のものであってもよい。また例えば、メイン検出部41を制御用に用い、サブ検出部42を異常監視用に用いる、といった具合に機能を分けてもよい。後述の実施形態についても同様である。以下適宜、メイン検出部41に係る構成や値に「A」、サブ検出部42に係る構成や値に「B」を付す。
角度演算部51は、図示しないAD変換部によりAD変換されたメイン検出部41の検出値に基づき、モータ回転角θm_Aを演算する。角度演算部52は、図示しないAD変換部によりAD変換されたサブ検出部42の検出値に基づき、モータ回転角θm_Bを演算する。以下適宜、角度演算部51、52で演算された値を区別する場合、モータ回転角θm_A、θm_Bとし、区別不要の場合は単にモータ回転角θmとする。モータ回転角θm_A、θm_Bを比較することで、異常発生の有無を検出することができる。
カウント演算部56には、電源392から常時給電され、サブ検出部42の検出値に基づき、ロータ860のカウント値TCを演算する。以下適宜、カウント演算部55で演算された値とカウント演算部56で演算された値とを区別する場合、カウント演算部55で演算された値をカウント値NPTC(No Power Turn Count)、カウント演算部56で演算された値をLPTC(Low Power Turn Count)とする。カウント値NPTC、LPTCは、検出方式の異なる検出値を用いて演算されており、異種冗長構成になっている。なお、カウント値NPTCがロータ860の1回転で1カウントされ、カウント値LPTCがロータ860の1回転で4カウントされる、といった具合に、カウント値NPTCとカウント値LPTCとで、1回転あたりのカウント数が異なっていてもよい。例えばカウント値NPTC、LPTCを比較する場合、適宜換算すればよい。以下、検出部の区別が不要の場合は、単にカウント値TCとする。
カウント値NPTC、LPTCを比較することで、異常発生の有無を検出することができる。また、カウント値の比較は、回転角センサ32内で行ってもよいし、制御部70にて行ってもよい。モータ回転角θm_A、θm_Bについても同様である。また、絶対角θa_A、θa_Bに演算した後に比較しても同じ効果が得られる。通信部58はモータ回転角θm_Aおよびカウント値NPTCを制御部70に出力し、通信部59は、モータ回転角θm_Bおよびカウント値LPTCを制御部70に出力する。
マルチターン検出部45は、電源供給不要のメリットがあるものの、対応回転数のずれや、外乱磁場や長期データ保持によるデータ失陥等の虞がある。そこで本実施形態では、マルチターン検出部45の検出値を用いたカウント値NPTCの演算に加え、サブ検出部42およびカウント演算部56に常時給電し、カウント値LPTCを演算している。これにより、カウント値TCの演算が冗長化され、異常を検出することができる。また、マルチターン検出部45とサブ検出部42とを異なる構成とすることで、共通原因故障が生じにくく、異常を容易に検出することができる。
絶対角演算部75は、モータ回転角θm_Aおよびカウント値NPTCに基づいて絶対角θa_Aを演算し、モータ回転角θm_Bおよびカウント値LPTCに基づいて絶対角θa_Bを演算する。異常監視部77は、絶対角θa_A、θa_Bに基づく異常監視を行う。
本実施形態の異常監視処理を図6のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、制御部70にて実行される。ここで、カウント値TCを起動時初回演算で用い、動作中にカウント値TCを用いない場合は、IGがオフからオンに切り替わったとき、または、制御部70がリセットされた場合に実行される。カウント値TCを起動時初回演算だけでなく、動作中も継続して用いる場合は、動作中にも所定の周期で実行される。以下、ステップS101の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
S101では、制御部70は、モータ回転角θm_A、θm_B、カウント値NPTC、LPTCを取得する。S102では、制御部70は、カウント値NPTCおよびモータ回転角θm_Aを用いて絶対角θa_Aを演算し、カウント値LPTCおよびモータ回転角θm_Bを用いて絶対角θa_Bを演算する(式(1)参照)。
S103では、制御部70は、絶対角θa_A、θa_Bの比較により、異常判定を行う。S102で演算された値が2つの場合、差が正常範囲内であれば正常判定し、正常範囲外であれば2つとの異常判定する。また、例えば検出部が3つ以上あり、絶対角θaが3つ以上演算可能である場合、多数決により正常な値を特定する。正常な絶対角θaの演算に用いられたモータ回転角θmおよびカウント値TCを「正常信号」とする。
S104では、制御部70は、正常な絶対角θaがあるか否か判断する。正常な絶対角θaがあると判断された場合(S104:YES)、S105へ移行し、任意の正常信号、もしくは、複数の正常信号の集計値を用い、ステアリング角θsの演算等、各種制御演算を行う。正常な絶対角θaがないと判断された場合(S104:NO)、S106へ移行し、絶対角θaをリセットする。この場合、絶対角θaとステアリング角θsとの対応関係が不定となるため、例えばステアリングホイール91が中立位置となる車両直進時における絶対角θaの検出等により、絶対角θaとステアリング角θsとの対応関係を学習する。また、システムによっては、絶対角θaの検出を中止してもよい。
回転角センサ32は、サブ検出部42の検出値に基づき、カウント値TCを演算するカウント演算部56を備える。カウント値TCの演算に検出値が用いられるサブ検出部42、および、カウント演算部56には、常時給電される。これにより、マルチターン検出部45に外乱磁場異常等が生じた場合であっても、カウント値TCの検出を継続可能である。また、カウント値NPTC、LPTCを比較することで、異常検出を行うことができる。さらにまた、カウント値NPTC、LPTCの演算に用いられる検出値の検出原理が異なっているので、共通原因での故障の発生確率を低減することができる。
本実施形態では、位置検出部として、メイン検出部41およびサブ検出部42を備えている。換言すると、本実施形態の位置検出部は複数である。少なくとも1つの位置検出部であるサブ検出部42の検出値は、角度演算部52およびカウント演算部56に共用される。これにより、比較的簡素な構成にて、モータ回転角θmおよびカウント値TCの演算を冗長化可能である。
メイン検出部41とサブ検出部42とは、検出素子に関わる構成が異なっている。これにより、同一原因での異常発生を抑制することができるので、機能安全性を向上することができる。「素子に関わる構成」とは、素子の種類が異なっている(例えば、TMR素子、AMR素子、ホール素子等)、素子の内部構成が異なっている(例えば、ウェハが異なる、レイアウトが異なる、材料が異なる、製造条件が異なる、製造ロットが異なる等)、素子に接続される回路構成が異なっている、または、素子に供給される電源の種類や電圧が異なっている、ということである。
絶対角θa_A、θa_Bは、異なるカウント値NPTC、LPTC、および、モータ回転角θm_A、θm_Bを用いて、少なくとも2つ演算される。制御部70は、異なる検出値を用いて演算された複数の絶対角θa_A、θa_Bに基づいて異常監視を行う異常監視部77を有する。これにより、回転角センサ32の異常監視を適切に行うことができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第3実施形態、第4実施形態)
第3実施形態を図7および図8、第4実施形態を図9に示す。図7および図9に示すように、本実施形態の制御部70は、絶対角θaに換算可能な外部検出値を外部センサ500から取得可能である。回転角センサとして、第3実施形態の図7では第2実施形態の回転角センサ32を示し、第4実施形態の図9では第1実施形態の回転角センサ31を示した。外部センサ500と制御部70との通信は、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、Flexray等、どのような通信方式であってもよい。外部センサ500は、例えばステアリングセンサ、ステアリングセンサ内蔵型のトルクセンサ、ストロークセンサ、ストロークセンサ内蔵型のトルクセンサ等である。外部センサ500の検出値から、モータ80とステアリング系とを接続するギアのギア比等を用いて、絶対角θa_A、θa_Bと比較可能に換算した値を、絶対角θa_Cとする。
以下、異常監視について、第3実施形態を中心に説明する。第3実施形態では、絶対角θaとして3つの値を利用可能であるので、図6中のS103にて、他の2つの値と差異が生じたものを異常と特定する。図8では、比較(1)が絶対角θa_A、θa_Bの比較、比較(2)が絶対角θa_A、θa_Cの比較、比較(3)が絶対角θa_B、θa_Cの比較とする。比較(1)、(2)、(3)がいずれも正常である場合、絶対角θa_A、θa_B、θa_Cが全て正常であると特定し、比較(1)、(2)、(3)が異常である場合、正常値および異常値の特定ができない。また、比較(1)、(2)、(3)のうち、2つが正常、1つが異常の場合も、特定不可である。
比較(1)、(2)が異常、比較(3)が正常の場合、絶対角θa_Aが異常と特定する。絶対角θa_Aが異常となる場合には、検出継続不能な故障が生じている場合、および、外乱磁場によるマルチターン検出部45のデータ飛びの場合が含まれる。
比較(1)、(3)が異常、比較(2)が正常の場合、絶対角θa_Bが異常と特定する。絶対角θa_Bが異常となる場合には、サブ検出部42に検出継続不能な故障が生じている場合、および、バッテリ交換等の電源失陥による場合が含まれる。
比較(2)、(3)が異常、比較(1)が正常の場合、絶対角θa_Cが異常と特定する。絶対角θa_Cが異常となる場合には、外部センサ500に検出継続不能な故障が生じている場合、および、モータ80とステアリングシャフト92との結合部のギアやベルトの飛びの場合が含まれる。
すなわち、絶対角θa_A、θa_B、θa_Cが異常である場合であっても、故障ではなくデータ異常の場合が含まれる。そこで、各センサの内部監視機能や、外部からの監視機能で、故障か否かを別途判定し、故障ではないと判定された場合、正常判定されたセンサとの差分に応じた補正処理を行ってもよい。
また、絶対角θa_A、θa_B、θa_Cのそれぞれを複数演算可能なセンサ構成とし、例えば絶対角θa_Aに対応する絶対角θa_Ax、θa_Ayが共に異常と特定された場合、故障ではなく、補正により検出継続可能なデータ異常と判定し、絶対角θa_Ax、θa_Ayの一方が異常の場合は故障と判定するようにしてもよい。
制御部70は、外部センサ500から、絶対角θaに換算可能な外部検出値を取得し、外部センサ500の検出値から演算される絶対角θa_Cと、回転角センサ31、32の検出値に基づく絶対角θa_A、θa_Bとの比較による異常監視を行う異常監視部77を有する。すなわち本実施形態では、絶対角θa_A、θa_B、θa_Cが「異なる検出値を用いて演算された複数の絶対位置」に対応する。これにより、外部センサ500の検出値を用いて、適切に異常監視を行うことができる。また、回転角センサ31、32の検出値に基づく絶対角、および、外部センサ500の検出値の少なくとも一方が複数であって、計3つ以上の絶対角を利用可能であれば、多数決により異常箇所を特定可能である。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第5実施形態)
第5実施形態を図10に示す。本実施形態のECU12は、駆動回路120、220、制御部170、270、および、回転角センサ133、233を備える。本実施形態では、2つの制御部170、270を備えているので、一方の制御部が故障した場合にもモータ80の駆動制御を継続できる。
第1制御部170は、絶対角演算部175、制御演算部176および異常監視部177を有する。第2制御部270は、絶対角演算部275、制御演算部276および異常監視部277を有する。絶対角演算部175、275は、絶対角θaに加え、ステアリング角θsを演算する。
制御演算部176は、第1スイッチング素子121のオンオフ作動を制御することで、モータ巻線180の通電を制御する。制御演算部276は、第2スイッチング素子221のオンオフ作動を制御することで、モータ巻線280の通電を制御する。異常監視部177、277は、絶対角の相互監視により、異常監視を行う。制御部170、270は、通信にて情報を送受信可能である。以下適宜、制御部170、270の通信をマイコン間通信という。
第1回転角センサ133は、メイン検出部141、サブ検出部142、マルチターン検出部145、角度演算部151、152、カウント演算部155、および、通信部158を有する。第2回転角センサ233は、メイン検出部241、サブ検出部242、マルチターン検出部245、角度演算部251、252、カウント演算部255、および、通信部258を有する。第1回転角センサ133には、IGがオンされているときに電源191から電力が供給され、第2回転角センサ233には、IGがオンされているときに電源291から電力が供給される。電源191、291は、上記実施形態の電源391と同様、レギュレータ等の定電圧電源である。
メイン検出部141、241は第2実施形態のメイン検出部41と同様であり、サブ検出部142、242は第2実施形態のサブ検出部42と同様であり、角度演算部151、251は角度演算部51と同様であり、角度演算部152、252は角度演算部52と同様である。以下適宜、メイン検出部141に係る構成や値に「A1」、サブ検出部142に係る構成や値に「B1」、メイン検出部241に係る構成や値に「A2」、サブ検出部242に係る構成や値に「B2」を付す。また、マルチターン検出部145、245はマルチターン検出部45と同様であり、カウント演算部155、255はカウント演算部55と同様である。
ここで、角度演算部151にて演算される値をモータ回転角θm_A1、角度演算部152にて演算される値をモータ回転角θm_B1、角度演算部251にて演算される値をモータ回転角θm_A2、角度演算部252にて演算される値をモータ回転角θm_B2とする。また、カウント演算部155で演算される値をカウント値NPTC1、カウント演算部255で演算される値をカウント値NPTC2とする。
通信部158は、モータ回転角θm_A1、θm_B1およびカウント値NPTC1を第1制御部170に送信する。通信部258は、モータ回転角θm_A2、θm_B2およびカウント値NPTC2を第2制御部270に送信する。
本実施形態では、第1回転角センサ133および第1制御部170が第1系統に含まれ、第2回転角センサ233および第2制御部270が第2系統に含まれる。また、それぞれの系統では、1つのカウント値NPTC、および、2つのモータ回転角θmが演算される。本実施形態では、第1系統と第2系統とで、回転角センサ133、233および制御部170、270が同様に構成されているので、第1制御部170での処理を中心に説明し、第2制御部270での処理は、演算に用いる値を自系統の値に読み替えればよいので、説明を適宜省略する。
第1制御部170は、IGがオフからオンに切り替わった初回演算にて、カウント値NPTC1を用いてステアリング角θsを演算し、初回演算後、初回演算値にモータ回転角θmの変化量を積算することでステアリング角θsを演算する。これにより、カウント値NPTCの常時監視が不要となる。カウント値NPTC1は、IGオン後の初回演算前に、第3実施形態にて説明した系統内での自己監視、または、マイコン間通信にて取得されたカウント値NPTC2との比較による異常監視を行う。
また、モータ回転角θmは、各系統に2つの値を演算可能に構成されており、系統内での比較により、IGオン中は、所定周期にて常時監視を行う。これにより、他系統からマイコン間通信にてモータ回転角を取得して異常監視を行う場合と比較して、マイコン間通信の負荷を低減することができる。また、系統内での異常監視が可能であるので、正常判定された値を用いて絶対角θaを高速に演算可能である。このように構成することで、常時給電不要であり、かつ、適切に異常監視を行うことができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第6実施形態)
第6実施形態を図11に示す。本実施形態のECU13は、駆動回路120、220、制御部170、270、および、回転角センサ133、234を備える。第2回転角センサ234は、メイン検出部241、サブ検出部242、角度演算部251、252、カウント演算部256、および、通信部258を有し、電源291、292から電力が供給される。電源291は、電源391と同様、IGがオンされているときにIG経由で給電可能であり、電源292は、電源392と同様、IGのオンオフ状態によらず、バッテリから常時給電可能である。
本実施形態では、第2回転角センサ234において、マルチターン検出部が省略されており、カウント演算部256にて、サブ検出部242の検出値を用いてカウント値LPTC2を演算している。カウント演算部256は、カウント演算部56と同様である。通信部258は、モータ回転角θm_A2、θm_B2およびカウント値LPTC2を第2制御部270に送信する。また、第1制御部170は、外部センサ500の検出値を取得可能である。
本実施形態では、第1系統にてカウント値NPTCを用いて演算される絶対角θa_A1、第2系統にてカウント値LPTCを用いて演算される絶対角θa_B2、および、外部センサ500の検出値に基づく絶対角θa_Cの3つの値を用いる。絶対角θa_A1、θa_B2、θa_Cは、マイコン間通信にて、制御部170、270にて共有される。
異常監視の詳細は、第3実施形態と略同様であって、通常時は絶対角θa_A1、θa_B2、θa_Cの3つの値での比較を行う。バッテリ上がりやバッテリ交換等により電源失陥が生じた場合、絶対角θa_A1、θa_Cでの比較による異常監視を行い、強磁場等の外乱によりカウント値NPTCが異常になった場合、絶対角θa_B2、θa_Cでの比較による異常監視を行う。また、モータ80とステアリング系との接続部におけるギアの歯飛び等は、絶対角θa_A1、θa_B2と、絶対角θa_Cとの比較から検出可能である。
本実施形態では、絶対角θa_A1、θa_B2、θa_Cの3つの値を利用可能であるので、電源失陥や外乱による異常を、適切に検出することができる。また、外部センサ500の検出値に基づく絶対角θa_Cとの比較により、駆動装置400がステアリング系から取り外された場合の処置として、ギアとの連結部よりもステアリング系側との比較による異常検出を行うことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第7実施形態)
第7実施形態を図12に示す。本実施形態のECU14は、駆動回路120、220、制御部170、270、および、回転角センサ135、235を備える。第1回転角センサ135は、第4実施形態の第1回転角センサ133の構成に加え、カウント演算部156を有し、IGがオンされているときに電源191から給電され、IGのオンオフ状態によらず電源192から常時給電される。カウント演算部156は、サブ検出部142の検出値を用いてカウント値LPTC1を演算する。通信部158は、モータ回転角θm_A1、θm_B1およびカウント値NPTC1、LPTC1を第1制御部170に送信する。
第2回転角センサ235は、第4実施形態の第2回転角センサ233の構成に加え、カウント演算部256を有し、IGがオンされているときに電源291から給電され、IGのオンオフ状態によらず電源292から常時給電される。通信部258は、モータ回転角θm_A2、θm_B2およびカウント値NPTC2、LPTC2を第2制御部270に送信する。第2回転角センサ235には、マルチターン検出部245が1つであるが、これを複数として冗長化することで、さらに堅牢なシステムを構築可能である。第1回転角センサ135も同様である。
制御部170、270は、2つの外部センサ500、501から、絶対角に換算可能な外部検出値を取得可能である。外部センサ500、501は、例えばステアリングセンサ、ステアリングセンサ内蔵型のトルクセンサ、ストロークセンサ、ストロークセンサ内蔵型のトルクセンサ等であって、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。第3実施形態および第4実施形態においても、複数の外部センサから外部検出値を取得するようにしてもよい。
本実施形態では、それぞれの系統において、2つのモータ回転角θm、カウント値NPTC、LPTC、および、2つの外部センサ500、501からの外部検出値を利用可能であり、1つの系統にて多数決による異常特定が可能である。また、正常な検出値を用いた制御を継続可能である。また、回転角センサ135、235の一方が故障した場合であっても、正常である回転角センサの検出値をマイコン間通信にて制御部170、270にて共有することで、2系統でのモータ制御を継続することができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(第8実施形態)
第8実施形態を図13および図14に示す。本実施形態では、第2実施形態のECU11を例に説明するが、上記のいずれの実施形態についても適用可能である。
例えば製品組立時の外乱磁場や検査工程において、マルチターン検出部45が検出可能な回数を超えた回転磁場が与えられた場合、カウント値NPTCが下限値x_minまたは上限値x_maxに固着する虞がある。
そこで本実施形態では、カウント値TCが上限値に到達した場合、次のカウントアップ時にカウント値TCが下限値となるように構成する。また、カウント値TCが下限値に到達した場合、次のカウントダウン時にカウント値TCが上限値となるように構成する。これにより、カウント値TCがループするので、下限値または上限値に値が張り付くのを防ぐことができる。
また、マルチターン検出部45は、電力供給がなくても回転位置に係る情報が保持される。換言すると、電源をオフにしても、マルチターン検出部45は初期化されない。そのため、本実施形態では、例えばマルチターン検出部45の組み付け完了時等、任意のタイミングにて、カウント値TCを初期化可能に構成している。
カウント演算部55でのカウント演算処理を図13のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、カウント演算部55にて、カウント値NPTCの初期化が必要なときに開始される。なお、カウント演算部55への給電が停止された後に給電再開された場合であって、カウント値NPTCの初期化が不要であれば、S504以降の処理を行えばよい。
S501では、カウント値NPTCの初期化処理を行う。本実施形態では、マルチターン検出部45に強磁場や高電圧、高電流を印加することで、マルチターン検出部45を物理的に初期化する。また、物理的な初期化処理に限らず、例えば現在位置を初期位置とみなすよう、カウント演算部55の内部にてソフトウェア的に初期化するようにしてもよい。また、カウント演算部55は、カウント値NPTCを初期値x0とする。初期値x0は、下限値x_minと上限値x_maxとの間の任意の値に設定可能であり、例えば下限値x_minと上限値x_maxとの中間値に設定される。また、組み付け誤差等に応じ、適宜オフセットさせてもよい。後述のカウント値LPTCについても同様である。
S502では、カウント演算部55は、カウント値NPTCが初期値x0と一致しているか否か判断する。初期化異常は、マルチターン検出部45そのものの異常に限らず、カウント演算部55内部の異常によっても起こりうる。カウント値NPTCが初期値x0と一致しないと判断された場合(S502:NO)、S503へ移行し、制御部70にエラーを通知する。エラー通知は、フラグ等にて通知してもよいし、正常なカウント値として存在しない値として出力してもよい。カウント値NPTCが初期値x0と一致していると判断された場合(S502:YES)、S504へ移行する。
S504では、カウント演算部55は、マルチターン検出部45の検出値に基づき、正回転が検出されたか否か判断する。正回転が検出されていないと判断された場合(S504:NO)、S508へ移行する。正回転が検出されたと判断された場合(S504:YES)、S505へ移行する。
S505では、カウント演算部55は、カウント値NPTCが上限値x_maxか否か判断する。カウント値NPTCが上限値x_maxであると判断された場合(S505:YES)、S506へ移行し、カウント値NPTCを下限値x_minとし、S504へ戻る。カウント値NPTCが上限値x_maxではないと判断された場合(S505:NO)、S507へ移行し、カウント値NPTCをカウントアップし、S504へ戻る。
正回転が検出されてないと判断された場合(S504:NO)に移行するS508では、カウント演算部55は、マルチターン検出部45の検出値に基づき、逆回転が検出されたか否か判断する。逆回転が検出されていないと判断された場合(S508:NO)、S512へ移行し、カウント値NPTCを維持し、S504へ戻る。逆回転が検出されたと判断された場合(S508:YES)、S509へ移行する。
S509では、カウント演算部55は、カウント値NPTCが下限値x_minか否か判断する。カウント値NPTCが下限値x_minであると判断された場合(S509:YES)、S510へ移行し、カウント値NPTCを上限値x_maxとし、S504へ戻る。カウント値NPTCが下限値x_minではないと判断された場合(S509:NO)、S511へ移行し、カウント値NPTCをカウントダウンし、S504へ戻る。
また、サブ検出部42の検出値に基づいてカウント演算部56にて演算されるカウント値LPTCについても、値が上限値y_maxまたは下限値y_minに張り付かないように、ループさせる。
カウント演算部56でのカウント演算処理を図14のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、カウント演算部56にて、例えば組み付け等、カウント値LPTCの初期化が必要なときに開始される。
S601~S611の処理は、カウント値をLPTC、上限値をy_max、下限値をy_minに読み替えれば、図13のS501~S511の処理と同様である。また、S606、S607、S610またはS611に続いて、S612へ移行する。
S612では、カウント演算部56は、電源392から供給される供給電圧Vinが低電圧判定値Vthより小さいか否か判断する。供給電圧Vinが低電圧判定値Vth以上であると判断された場合(S612:NO)、S604へ戻る。供給電圧Vinが低電圧判定値Vthより小さいと判断された場合(S612:YES)、S603へ移行し、制御部70にエラーを通知する。
本実施形態は、カウント演算部55は、カウント値NPTCとして、下限値x_minと上限値x_maxの間のm回(mは2n以上の整数)をカウント可能である。カウント幅であるmは、マルチターン検出部45にて検出可能な範囲により規定される値であってもよいし、カウント演算部55にてカウント可能な範囲により規定される値であってもよい。nは1以上の整数であって、ロータ860の1回転中のカウント数である。カウント演算部55は、カウント値NPTCが上限値x_maxに到達した場合、次のカウントアップ時にカウント値NPTCを下限値x_minとし、カウント値NPTCが下限値x_minに到達したとき、次のカウントダウン時にカウント値NPTCを上限値x_maxとする。これにより、カウント可能な上下限をなくし、回転回数のカウントを継続することができる。
カウント演算部55は、カウント値NPTCの初期化が可能であって、カウント値NPTCを正常に初期化できた場合、カウント値NPTCのカウントを開始する。これにより、マルチターン検出部45のように、電源オフによりリセットされないセンサを用いた場合であっても、適切に初期化を行うことができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。カウント演算部56にて演算されるカウント値LPTCも同様である。
回転角センサ32は、回転検出部であるサブ検出部42と、カウント演算部56と、を備える。サブ検出部42は、検出対象であるロータ860の回転位置を検出する。カウント演算部56は、サブ検出部42の検出値に基づき、ロータ860の1回転中にn回(nは1以上の整数)、回転方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンされるカウント値を演算する。
カウント演算部56は、カウント値LPTCとして、下限値y_minと上限値y_maxとの間のm回(mは2以上の整数)をカウント可能であって、カウント値LPTCが上限値y_maxに到達した場合、次のカウントアップ時にカウント値LPTCを下限値y_minとし、カウント値LPTCが下限値y_minに到達した場合、次のカウントダウン時にカウント値LPTCを上限値y_maxとする。これにより、カウント可能な上下限をなくし、回転回数のカウントを継続することができる。
実施形態では、ロータ860が「検出対象」、ECU10~14が「制御装置」、回転角センサ31、32、133、135、233~235が「検出装置」、位置検出部40、メイン検出部41、141、241およびサブ検出部42、142、242が「位置検出部」に対応する。カウント演算部55、155、255が「複数回転位置演算部」および「第1複数回転位置演算部」、カウント値TCが「複数回転位置情報」、TC補正値TC_cが「角度情報補正値」に対応する。また、カウント演算部155、255が「第1複数回転位置演算部」、カウント演算部56、156、256が「第2複数回転位置演算部」に対応する。また、絶対角演算部75、175、275が「絶対位置演算部」、絶対角θaが「絶対位置」に対応する。また、サブ検出部42、142、242およびマルチターン検出部45、145、245が「回転検出部」に対応する。
(他の実施形態)
上記実施形態では、マルチターン検出部では、複数回転の回転位置を磁気的に保持する。他の実施形態では、マルチターン検出部では、電力を用いずに複数回転位置の検出が継続できればよく、磁気以外の手段を用いてもよい。例えば図15に示すように、モータ80のシャフト870と一体に回転するギア871と噛み合い、モータ80が複数回転すると1回転するギア873を搭載し、ギア873と一体に回転する磁石877を設け、通電再開後にギア873の回転位置から、モータ80の回転回数を検出するようにしてもよい。このように構成しても、電力を用いることなく複数回転の回転位置を検出可能である。また、通常のステアリングセンサよりも部品点数を低減することができる。
また、「検出対象の複数回転の回転位置の検出を、外部からの電力供給なしで継続可能」とは、上記実施形態のように磁気等での無電力での検出に限らず、広義ではセンサ内部に内部電池を設けることで、外部からの電力供給なしで複数回転の回転位置の検出を継続してもよい。
上記実施形態では、制御装置は、電動パワーステアリング装置に用いられる。他の実施形態では、図16に示すように、制御装置をステアバイワイヤシステムに用いてもよい。ステアバイワイヤシステム591は、反力装置401および転舵装置402を備える。反力装置401は、反力制御ユニット411および反力モータ801を備える。転舵装置402は、転舵制御ユニット412および転舵モータ802を備える。反力制御ユニット411と転舵制御ユニット412とは、CAN等の車両通信網を経由して通信可能である。
図16では、ステアリングシャフト921は、ラック軸97と機械的に分離されている。反力モータ801は、ステアリングシャフト921に設けられ、運転者の操舵に応じた反力をステアリングホイール91に与えることで、運転者に適切な操舵フィーリングを与える。転舵モータ802は、ラック軸97側に設けられ、転舵輪の転舵角を制御する。
反力装置401および転舵装置402は、上記実施形態の駆動装置400と同様に構成することができる。また、反力制御ユニット411および転舵制御ユニット412に、上記実施形態と同様の回転角センサを設けることで、絶対角演算を行うことができる。なお、図16では第1実施形態の回転角センサ31を例示しているが、第1実施形態以外の回転角センサを用いてもよい。
また、制御装置は、ステアバイワイヤシステム以外の回転回数および回転角を必要するアプリケーションにも好適に適用可能である。さらにまた、ギアを用いてストローク位置を回転系に変換すれば、ストロークセンサにも適用可能である。
第3実施形態では、外部センサとして、ステアリングセンサ、ステアリングセンサ内蔵型のトルクセンサ、ストロークセンサ、ストロークセンサ内蔵型のトルクセンサを例示した。他の実施形態では、外部センサとして、レーザ変位計やカメラによる画像の分析値を用いてもよい。
上記実施形態では、マイコン間通信にて制御部間の通信を行う。他の実施形態では、マイコン間通信に替えて、例えばCAN等の車両通信網を経由して制御部間の通信を行ってもよい。
上記実施形態では、1つのセンサ部には、1つのマルチターン検出部、および、1または2の位置検出部が設けられる。他の実施形態では、1つのセンサ部に、2以上のマルチターンセンサを設けてもよいし、3以上の位置検出部を設けてもよい。
上記実施形態では、1つのセンサ部に対して1つの制御部が設けられており、系統数が1または2である。他の実施形態では、系統数は3以上であってもよい。また、複数のセンサ部に対して1つの制御部が設けられていてもよいし、複数の制御部に対して1つのセンサ部が設けられていてもよい。
上記実施形態では、モータは三相ブラシレスモータである。他の実施形態では、モータは、三相ブラシレスモータに限らず、どのようなモータであってもよい。また、モータは、電動機に限らず、発電機であってもよいし、電動機および発電機の機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであってもよい。上記実施形態では、インバータおよびモータ巻線は2系統である。他の実施形態では、インバータおよびモータ巻線の系統数は1系統または3系統以上であってもよい。また、インバータおよびモータ巻線の数が異なっていてもよい。上記実施形態では、制御装置は、電動パワーステアリング装置に適用される。他の実施形態では、制御装置を電動パワーステアリング装置以外の装置に適用してもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。