以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のトレッド成形用金型の設計方法(以下、単に「設計方法」ということがある。)では、タイヤのトレッドパターンを成形する環状のトレッド成形用金型が設計される。図1は、タイヤ1のトレッド部2の一例を示す展開図である。
本実施形態のトレッド部2には、トレッドパターン3が設けられている。トレッドパターン3は、パターン構成単位4が、タイヤ周方向に繰り返し配置(例えば、50~90個配置)されることで形成される。パターン構成単位4は、それぞれのタイヤ周方向の長さLaが同一となる1種類のみであってもよいし、タイヤ周方向の長さLaが異なる複数種類を含んでもよい。本実施形態のパターン構成単位4は、複数種類(例えば、2~5種類)含んでいる。これにより、トレッド部2には、ピッチバリエーションが形成され、走行時のノイズを低減することができる。パターン構成単位4の種類については、例えば、タイヤ1が装着される車両や路面の条件等に応じて適宜設定されうる。本実施形態のパターン構成単位4は、2種類である場合が例示されており、第1パターン構成単位Sと、第1パターン構成単位Sよりも長さLaが大きい第2パターン構成単位Mとを含んで構成されている。
本実施形態では、パターン構成単位4がタイヤ周方向に配列されたパターン構成単位の列Rが、少なくとも1列(本実施形態では、5列)設けられている。各パターン構成単位4は、タイヤ軸方向で隣り合う他のパターン構成単位の列Rのパターン構成単位と、タイヤ周方向の位置が同一である場合が例示されるが、タイヤ周方向に位置ずれして(即ち、位相がずれて)いてもよい。
本実施形態のパターン構成単位4は、1つのブロック5と、このブロック5とタイヤ周方向の一方側で隣り合う1つの横溝6とで構成されており、ブロックパターンである場合が例示されているが、このような態様に限定されない。ブロック5は、横溝6と、横溝6と交わる向きにのびる縦溝7とで区分されている。
図2は、タイヤ加硫金型(以下、単に「加硫金型」ということがある。)10のタイヤ回転軸を含む子午線断面図である。本実施形態のタイヤ加硫金型(以下、単に「加硫金型」ということがある。)10は、従来のものと同様に、トレッド成形用金型11、一対のサイドウォール成形用金型12、一対のビード成形用金型13、及び、ブラダー14を含んで構成されている。なお、加硫金型10は、このような構成に限定されない。本実施形態の設計方法では、加硫金型10の構成部材のうち、トレッド成形用金型11が設計される。
加硫金型10(トレッド成形用金型11を含む)を用いて、生タイヤ1Lを加硫成形する工程では、例えば、高圧蒸気の供給によって膨張したブラダー14により、未加硫の生タイヤ1Lが、トレッド成形用金型11の成形面11s、一対のサイドウォール成形用金型12の成形面12s、及び、一対のビード成形用金型13の成形面13sに押し付けられる。これにより、この工程では、生タイヤ1Lを加硫成形することができ、タイヤ1を製造することができる。
図3は、図2のタイヤ赤道Cに沿ったセグメント16及び生タイヤ1Lの断面図である。図2及び図3に示されるように、トレッド成形用金型11は、タイヤ周方向に分割された複数のセグメント16を含んで構成されている。これらのセグメント16がタイヤ周方向に並べられることにより、パターン構成単位4(図1に示す)がタイヤ周方向に配列されたトレッドパターン3(図1に示す)を成形するための成形面(トレッド成形用金型11の成形面11s)が形成される。本実施形態のトレッド成形用金型11は、9個のセグメント16で構成されているが、このような態様に限定されない。図1に示されるように、本実施形態では、タイヤ周方向に配列された少なくとも1つのパターン構成単位4を横切る位置において、セグメントの分割位置21(二点鎖線で示す)が設定されている。
各セグメント16には、図1に示したトレッドパターン3のタイヤ周方向の一部を成形するための成形面16sがそれぞれ設けられている。各成形面16sには、図1に示したタイヤ周方向に配列された複数種類のパターン構成単位4(本例では、第1パターン構成単位S、及び、第2パターン構成単位M)が設定されている。したがって、各成形面16sには、トレッドパターン3(パターン構成単位4を含む)の縦溝7及び横溝6を形成するための溝形成部(図示省略)や、図示しないサイピングを形成用のブレード(図示省略)が含まれている。
図2に示されるように、各セグメント16は、例えば、セグメント16をタイヤ周方向に並べて保持するためのコンテナ17によって固定される。セグメント16とコンテナ17との固定には、例えば、ネジ等の固着具(図示省略)が用いられる。
図3に示されるように、トレッド成形用金型11には、例えば、コンテナ17(図2に示す)への固定位置や、セグメント16の構造(溝形成部やブレード)等の種々の制約によって、セグメント16をタイヤ周方向に分割できない領域(以下、単に「セグメント分割不可領域」ということがある。)19がある。一方、セグメント分割不可領域19以外の領域(以下、単に「セグメント分割可能領域」ということがある。)20では、セグメント16を分割することができる。したがって、このようなセグメント分割可能領域20に、少なくとも1つのセグメント16の分割位置21が決定される。なお、セグメント16の分割位置21は、タイヤ周方向で隣り合うセグメント16、16の分割面(側面)18、18が向き合うことによって形成される合わせ面によって特定される。
図4は、本実施形態の設計方法を実行するためのコンピュータ23の一例を示すブロック図である。本実施形態のコンピュータ23は、入力デバイスとしての入力部24、出力デバイスとしての出力部25、及び、種々の計算を実行する演算処理装置26を有しており、トレッド成形用金型を設計するための装置(設計装置)27として構成されている。
入力部24には、例えば、キーボード又はマウス等が用いられる。出力部25には、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。演算処理装置26は、各種の演算を行う演算部(CPU)28、データやプログラム等が記憶される記憶部29、及び、作業用メモリ30を含んで構成されている。
記憶部29は、例えば、磁気ディスク、光ディスク又はSSD等からなる不揮発性の情報記憶装置である。記憶部29には、データ部31、及び、プログラム部32が設けられている。
データ部31には、トレッド成形用金型の設計に必要な情報が記憶される。データ部31は、タイヤ1のトレッドパターン3(図1に示す)やトレッド成形用金型11(図2に示す)に関する情報等が記憶される初期データ記憶部31a、分割候補位置が記憶される分割候補位置記憶部31bを含んで構成されている。さらに、データ部31は、第1配列が記憶される第1配列記憶部31c、第2配列が記憶される第2配列記憶部31d、第3配列が記憶される第3配列記憶部31e、及び、トレッド成形用金型11の設計に関する情報が記憶される設計情報記憶部31fを含んで構成される。なお、分割候補位置、第1配列、第2配列及び第3配列については、後述する。
プログラム部32は、演算部28によって実行されるトレッド成形用金型の設計プログラム(以下、単に「プログラム」ということがある。)である。このコンピュータ用のプログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、トレッド成形用金型の設計装置27として機能させることができる。
プログラム部32は、分割候補位置を決定する分割候補位置決定部32a、第1配列を得る第1配列取得部32b、第2配列を得る第2配列取得部32c、第3配列を決定する第3配列決定部32d、及び、トレッド成形用金型11を設計する金型設計部32eを含んで構成されている。さらに、プログラム部32は、分割位置21(図3に示す)の分散性を評価する第1評価部32f、及び、セグメントの分割位置21の良否を評価する第2評価部32gを含んで構成されている。
図5は、トレッド成形用金型の設計方法、トレッド成形用金型の製造方法、及び、タイヤの製造方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態の設計方法では、先ず、パターン構成単位4(図1に示す)のそれぞれに、分割候補位置が決定される(工程S1)。
工程S1では、先ず、図4に示されるように、初期データ記憶部31aに記憶されているトレッドパターンに関する情報、及び、分割候補位置決定部32aが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、工程S1では、分割候補位置決定部32aが、演算部28によって実行される。この分割候補位置決定部32aの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、上記の分割候補位置を決定する手段として機能させることができる。
図6は、分割候補位置が決定されたパターン構成単位、及び、第1配列のタイヤ周方向の一部を示す図である。図6では、パターン構成単位4の具体的な構成(即ち、ブロック5、横溝6及び縦溝7)等が省略されており、図1の各パターン構成単位4のタイヤ周方向の長さLaと、分割候補位置35(二点鎖線で示す)とが示されている。
トレッドパターンに関する情報は、コンピュータ23(図4に示す)で取り扱いが可能な数値データ(例えば、CADデータ等)である。このトレッドパターンに関する情報には、タイヤ周方向に配列されたパターン構成単位に関する情報が含まれている。これらの情報には、例えば、図1に示したパターン構成単位4を含むトレッドパターン3を特定するための座標値等が定義されている。工程S1では、パターン構成単位4(本例では、第1パターン構成単位S、及び、第2パターン構成単位M)の情報が抽出される。
図6に示されるように、工程S1では、パターン構成単位4(本例では、第1パターン構成単位S、及び、第2パターン構成単位M)に、分割候補位置35がそれぞれ決定される。分割候補位置35は、各パターン構成単位4(第1パターン構成単位S及び第2パターン構成単位M)において、セグメント16の分割位置21(図1及び図3に示す)として決定可能な位置(本例では、タイヤ周方向の位置)を特定するためのものである。
分割候補位置35については、各パターン構成単位4(本例では、第1パターン構成単位S、及び、第2パターン構成単位M)において、適宜決定することができる。本実施形態では、各パターン構成単位4において、トレッドパターン3を成形するための図示しない溝形成部やブレードの変更への影響が小さい位置に、分割候補位置35が決定されている。これにより、後述の第3配列決定工程S4(図5に示す)において、分割候補位置35に、セグメント16の分割位置21(図3に示す)が決定されたとしても、溝形成部やブレードの変更を最小限に抑えることができる。
各パターン構成単位4の分割候補位置35の個数については、適宜設定することができる。本実施形態の工程S1では、少なくとも1つのパターン構成単位4(本例では、第2パターン構成単位M)において、複数の分割候補位置35が定義されている。このように、複数の分割候補位置35が定義されることにより、後述の第3配列決定工程S4(図5に示す)において、図3に示した分割位置21(後述の第3配列)を短時間で決定することができる。
図6に示されるように、本実施形態では、2種類のパターン構成単位4(本例では、第1パターン構成単位S、及び、第2パターン構成単位M)のうち、タイヤ周方向の長さLaが大きい第2パターン構成単位Mに、複数(本例では、2つ)の分割候補位置35が定義されている。なお、第1パターン構成単位Sにも、複数の分割候補位置35が定義されてもよい。分割候補位置35が決定されたパターン構成単位4は、図4に示したコンピュータ23で取り扱いが可能な数値データ(例えば、座標値等)であり、分割候補位置記憶部31bに記憶される。
次に、本実施形態の設計方法では、図5に示されるように、分割候補位置35(図6に示す)のタイヤ周方向の配列を特定する第1配列36が取得される(工程S2)。工程S2では、先ず、図4に示されるように、分割候補位置記憶部31bに記憶されている分割候補位置35(図6に示す)、初期データ記憶部31aに記憶されているトレッドパターンに関する情報、及び、第1配列取得部32bが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、工程S2では、第1配列取得部32bが、演算部28によって実行される。この第1配列取得部32bの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、第1配列36(図6に示す)を得る手段として機能させることができる。
図6に示されるように、工程S2では、分割候補位置35が決定されたパターン構成単位4が、タイヤ周方向に配列される。これらのパターン構成単位4の配列は、例えば、トレッドパターンに関する情報に基づいて行われる。これにより、工程S2では、図1に示したトレッドパターン3でのパターン構成単位4の配列に基づいて、分割候補位置35のタイヤ周方向の配列を特定可能な第1配列36を得ることができる。図6では、図1に示したタイヤ1やトレッド成形用金型11の成形面11s(図3に示す)に形成される円筒状のパターン構成単位4(トレッドパターン3)の配列を、展開した状態を示している。第1配列36は、図4に示したコンピュータ23で取り扱いが可能な数値データ(例えば、座標値等)であり、第1配列記憶部31cに記憶される。
次に、本実施形態の設計方法では、図5に示されるように、セグメント分割可能領域20(図3に示す)のタイヤ周方向の配列を特定する第2配列が取得される(工程S3)。工程S3では、先ず、図4に示されるように、初期データ記憶部31aに記憶されているトレッド成形用金型11に関する情報、及び、第2配列取得部32cが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、工程S3では、第2配列取得部32cが、演算部28によって実行される。この第2配列取得部32cの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、上記の第2配列を得る手段として機能させることができる。図7は、第2配列37のタイヤ周方向の一部を示す図である。
図3に示したトレッド成形用金型11に関する情報は、コンピュータ23(図4に示す)で取り扱いが可能な数値データ(例えば、CADデータ等)である。このトレッド成形用金型11に関する情報には、例えば、コンテナ17(図2に示す)への固定位置等を特定可能な情報が含まれており、図3に示したセグメント分割可能領域20(及びセグメント分割不可領域19)を特定することができる。このようなトレッド成形用金型11に関する情報に基づいて、工程S3では、図7に示されるように、セグメント分割可能領域20(図7に示されるように、2点鎖線で囲まれる色付けした領域)のタイヤ周方向の配列を特定する第2配列37が取得される。図7では、トレッド成形用金型11の円筒状の成形面11s(図3に示す)、及び、セグメント分割可能領域20を展開した状態を示している。第2配列37は、図4に示したコンピュータ23で取り扱いが可能な数値データ(例えば、座標値等)であり、第2配列記憶部31dに記憶される。
次に、本実施形態の設計方法では、図5に示されるように、第1配列36(図6に示す)と第2配列37(図7に示す)とに基づいて、セグメントの分割位置のタイヤ周方向の配列を特定する第3配列が決定される(第3配列決定工程S4)。第3配列決定工程S4では、先ず、図4に示されるように、第1配列記憶部31cに記憶されている第1配列36、第2配列記憶部31dに記憶されている第2配列37、及び、第3配列決定部32dが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、第3配列決定工程S4では、第3配列決定部32dが、演算部28によって実行される。この第3配列決定部32dの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、上記の第3配列を決定する手段として機能させることができる。図8は、第1配列36、第2配列37及び第3配列38のタイヤ周方向の一部を示す概念図である。
図8に示されるように、第3配列38については、セグメントの分割位置21(図3に示す)のタイヤ周方向の配列を特定することができれば、適宜決定することができる。本実施形態の第3配列決定工程S4では、第2配列37で特定される全てのセグメント分割可能領域20に、第1配列36で特定される少なくとも1つの分割候補位置35が含まれるように、セグメント16の全ての分割位置21の第3配列38が決定される。図9は、第3配列決定工程S4の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第3配列決定工程S4では、先ず、図8に示した第1配列36及び第2配列37に、予め定められた基準位置40が設定される(工程S41)。この基準位置40は、第1配列36の分割候補位置35及び第2配列37のセグメント分割可能領域20について、基準位置40に対するタイヤ周方向の相対位置の特定に用いられる。基準位置40については、第1配列36及び第2配列37において、タイヤ周方向の任意の位置にそれぞれ設定することができる。
次に、本実施形態の第3配列決定工程S4では、第1配列36において、基準位置40から各分割候補位置35までの距離L1がそれぞれ計算される(工程S42)。工程S42では、全ての分割候補位置35について、基準位置40からのタイヤ周方向の距離L1がそれぞれ計算される。本実施形態では、タイヤ周方向の予め定められた方向Dにおいて、全ての分割候補位置35の距離L1が計算される。これらの距離L1により、全ての分割候補位置35について、基準位置40に対するタイヤ周方向の相対位置(距離)が特定される。
次に、本実施形態の第3配列決定工程S4では、第2配列37において、基準位置40からセグメント分割可能領域20までの距離が計算される(工程S43)。工程S43では、全てのセグメント分割可能領域20のタイヤ周方向の一端20a及び他端20bについて、基準位置40からのタイヤ周方向の距離L2及びL3がそれぞれ計算される。本実施形態では、第1配列36の分割候補位置35と同様に、タイヤ周方向の予め定められた方向Dにおいて、全ての分割候補位置35の距離L2及びL3が計算される。これらの距離L2及びL3により、全てのセグメント分割可能領域20(本例では、一端20a及び他端20b)について、基準位置40に対するタイヤ周方向の相対位置(距離)が特定される。
次に、本実施形態の第3配列決定工程S4では、第2配列37のセグメント分割可能領域20に、第1配列36の分割候補位置35が含まれるか否かが判断される(工程S44)。工程S44では、第1配列36の基準位置40から分割候補位置35までの距離L1と、第2配列37の基準位置40からセグメント分割可能領域20(本例では、一端20a及び他端20b)までの距離L2及びL3とが比較される。そして、工程S44では、全てのセグメント分割可能領域20に、少なくとも1つの分割候補位置35が含まれるか否かが判断される。
全てのセグメント分割可能領域20に、少なくとも1つの分割候補位置35が含まれるか否かの判断については、適宜行うことができる。本実施形態の工程S44では、工程S42及び工程S43で計算された距離L1~L3に基づいて、全てのセグメント分割可能領域20の一端20aと他端20bとの間に、少なくとも1つの分割候補位置35が含まれるか否かが判断される。
工程S44において、第2配列37の全てのセグメント分割可能領域20に、第1配列36の少なくとも1つの分割候補位置35が含まれると判断された場合(工程S44で、「Y」)、セグメント分割可能領域20に含まれる分割候補位置35が、セグメント16の分割位置21としてそれぞれ特定される。そして、特定されたセグメントの分割位置21のタイヤ周方向の配列が、第3配列38として決定される(工程S45)。決定された第3配列38は、第3配列記憶部31e(図4に示す)に記憶される。
一方、工程S44において、第2配列37の全てのセグメント分割可能領域20に、第1配列36の少なくとも1つの分割候補位置35が含まれていないと判断された場合(工程S44で、「N」)、第2配列37の少なくとも1つのセグメント分割可能領域20において、セグメントの分割位置21を決定することができない。この場合、第1配列36及び第2配列37の少なくとも一方の基準位置40を、タイヤ周方向に位置ずれさせて(工程S46)、工程S42~工程S44が再度実施される。
工程S46では、第1配列36及び第2配列37の少なくとも一方の基準位置40を、タイヤ周方向に位置ずれさせることにより、分割候補位置35及びセグメント分割可能領域20(本例では、一端20a及び他端20b)の少なくとも一方について、基準位置40からのタイヤ周方向の相対位置(距離L1~L3)を変更することができる。そして、本実施形態の第3配列決定工程S4では、工程S44において、全てのセグメント分割可能領域20に、少なくとも1つの分割候補位置35が含まれると判断されるまで(工程S44で、「Y」)、分割候補位置35及びセグメント分割可能領域20の少なくとも一方について、基準位置40に対するタイヤ周方向の相対位置を変更させることができるため、上記のような第3配列38を確実に決定することができる。
基準位置40をタイヤ周方向に位置ずれさせる距離(図示省略)については、適宜設定することができる。本実施形態の基準位置40を位置ずれさせる距離は、好ましくは、トレッド成形用金型11の成形面11sのタイヤ周方向の全長さ(図示省略)の0.003%~0.6%である。本実施形態では、基準位置40を位置ずれさせる距離が、成形面11sの全長さの0.6%以下に設定させることにより、第3配列38を確実に決定することができる。一方、基準位置40を位置ずれさせる距離が、成形面11sの全長さの0.003%以上に設定されることにより、セグメントの分割位置21の決定に要する時間が大きくなるのを防ぐことができる。
このように、本実施形態の設計方法では、予め、セグメント分割可能領域20(図3及び図8に示す)を考慮して、セグメントの分割位置21(図3及び図8に示す)を決定することができるため、例えば、決定された分割位置21が、実際には分割できない領域(即ち、図3に示したセグメント分割不可領域19)に決定されるのを防ぐことができる。したがって、本実施形態の設計方法では、セグメント分割可能領域20に分割位置21が決定されるように、分割位置21を改めて決定し直す必要がなく、ひいては、短時間でセグメントの分割位置21(上述の第3配列38)を決定することが可能となる。
さらに、本実施形態の設計方法では、パターン構成単位4に設定された分割候補位置35に、セグメントの分割位置21が決定されるため、例えば、工程S1において、図示しない溝形成部やブレードの変更への影響が小さい位置に、分割候補位置35を予め決定しておくことで、図5に示した後述の工程S5において、セグメントの分割位置21での溝形成部やブレードの変更を最小限に抑えることができる。したがって、本実施形態の設計方法は、トレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)を短時間で設計することができる。
また、本実施形態の設計方法では、例えば、既存のコンテナ17(図3に示す)に基づいて、セグメント分割可能領域20が特定されることにより、既存のコンテナ17に確実に固定することが可能なセグメントの分割位置21(上述の第3配列38)を決定することができる。したがって、本実施形態の設計方法では、決定されたセグメントの分割位置21に応じて、コンテナ17を新たに設計及び製造する必要がないため、トレッド成形用金型の設計コスト及び製造コストを低減することができる。
本実施形態の第3配列決定工程S4では、工程S44において、第1配列36の基準位置40から分割候補位置35までの距離L1と、第2配列37の基準位置40からセグメント分割可能領域20(本例では、一端20a及び他端20b)までの距離L2及びL3とが比較されたが、このような態様に限定されない。例えば、第1配列36の基準位置40から分割候補位置35までの中心角と、第2配列37の基準位置40からセグメント分割可能領域20(本例では、一端20a及び他端20b)までの中心角とが比較されてもよい。
次に、本実施形態の設計方法では、図5に示されるように、決定された第3配列38(図8に示す)に基づいて、トレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)が設計される(工程S5)。工程S5では、先ず、図4に示されるように、初期データ記憶部31aに記憶されているトレッドパターンに関する情報(図示省略)、及び、トレッド成形用金型に関する情報(図示省略)と、第3配列記憶部31eに記憶されている第3配列38と、金型設計部32eが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、工程S5では、金型設計部32eが、演算部28によって実行される。この金型設計部32eの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、トレッド成形用金型11を設計する手段として機能させることができる。
工程S5では、トレッドパターンに関する情報(図示省略)、及び、トレッド成形用金型に関する情報(図示省略)に基づいて、トレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)が設計される。このトレッド成形用金型11には、図8に示した第3配列38で特定されるセグメント16の分割位置21に基づいて、タイヤ周方向で隣り合うセグメント16、16間の分割面18、18(図3に示す)がそれぞれ設定される。工程S5では、セグメントの分割位置21に基づく溝形成部やブレードの変更が、必要に応じて行われる。これにより、工程S5では、トレッド成形用金型11を設計することができる。トレッド成形用金型11の設計情報は、図4に示したコンピュータ23で取り扱いが可能な数値データ(例えば、CADデータ等)であり、設計情報記憶部31fに記憶される。
次に、本実施形態のトレッド成形用金型の製造方法では、図5に示されるように、複数のセグメント16(図2及び図3に示す)が製造される(工程S6)。工程S6では、設計情報記憶部31f(図4に示す)に記憶されているトレッド成形用金型11の設計情報に基づいて、複数のセグメント16が製造される。複数のセグメント16、16間の分割面18、18(図3に示す)は、図8に示した第3配列38で特定されるセグメント16の分割位置21に基づいて形成される。このセグメント16の分割位置21は、セグメント分割可能領域20(図3及び図8に示す)が考慮されているため、各セグメント16をコンテナ17(図2に示す)に確実に固定することができる。そして、製造された複数のセグメント16が、コンテナ17に固定されることにより、トレッド成形用金型11を製造することができる。
次に、本実施形態のタイヤの製造方法では、図5に示されるように、トレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)を用いて、生タイヤを加硫成形する(工程S7)。工程S7では、先ず、工程S6で製造されたトレッド成形用金型11、一対のサイドウォール成形用金型12、一対のビード成形用金型13、及び、ブラダー14を配置して、加硫金型10が設置される。次に、工程S7では、従来の製造方法と同様に、加硫金型10の中に、生タイヤ1Lが投入される。次に、工程S7では、生タイヤ1Lの内腔内でのブラダー14の膨張により、生タイヤ1Lが成形面11s、12s、及び13sに押し付けられて加熱される。これにより、工程S7では、生タイヤ1Lが加硫成形され、タイヤ1(図1に示す)が製造される。
ところで、走行時のノイズを低減可能なタイヤ1(図1に示す)を製造するには、図1に示されるように、トレッド部2にピッチバリエーションを形成するだけでなく、図8に示したセグメント16のタイヤ周方向の長さ(タイヤ周方向で隣り合う分割位置21、21間の距離)L4を異ならせるのが望ましい。これは、発明者らが、鋭意研究を重ねた結果、セグメント16の長さL4を異ならせることで、セグメント16の分割数に起因する次数の異音(ノイズ)を低減できることを知見したことによる。したがって、設計方法には、図5に示した第3配列決定工程S4の後、図8に示した第3配列38に基づいて、セグメントの分割位置21の分散性が評価されるのが望ましい。
図10は、本発明の他の実施形態のトレッド成形用金型の設計方法、トレッド成形用金型の製造方法、及び、タイヤの製造方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の設計方法では、第3配列決定工程S4の後、図8に示した第3配列38に基づいて、分割位置21の分散性を評価する第1評価工程S8が含まれている。この第1評価工程S8では、先ず、図4に示されるように、第3配列記憶部31eに記憶されている第3配列38(図8に示す)、及び、第1評価部32fが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、第1評価工程S8では、第1評価部32fが、演算部28によって実行される。この第1評価部32fの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、セグメントの分割位置21の分散性を評価する手段として機能させることができる。図11は、第1評価工程S8の処理手順の一例を示すフローチャートである。
この実施形態の第1評価工程S8では、先ず、以下の工程(a)~(c)に基づいて、セグメントの分割位置の振幅Fkが求められる(工程S81)。図12は、パルス列42の一例を示す線図である。
(a)図8に示したセグメントの分割位置21に基づいて分割されたセグメント16の列を、各セグメント16をそれらのタイヤ周方向の長さL4に応じた大きさを有するパルス41(図12に示す)とする工程、
(b)パルス41を、1つのセグメント16(図8に示す)を起点として配列の順に、かつ、各セグメント16の長さL4(図8に示す)を隔てて並べたパルス列42に置換する工程、及び
(c)パルス列42を、下記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅Fkを求める工程。
N:セグメントの分割数
L:全てのセグメントのタイヤ周方向の長さの総和
k:1~5Nまでの自然数
i:1~5N-1までの自然数
X(j):パルス列の起点からj番目のセグメントまでのパルス位置(起点43からj番目までの長さの和)
P(j):パルス列の起点からj番目のパルスの大きさ
パルス41は、図8に示した各セグメント16について、それらのタイヤ周方向の長さL4に応じた大きさを有するものである。パルス列42は、トレッド成形用金型11(図3に示す)の一周に亘って作成される。図12において、縦軸は、パルス41の大きさを示している。横軸は、各パルス41が発生する間隔を示している。各パルス41の大きさは、そのパルス41に対応するセグメント16のタイヤ周方向の長さL4を、全てのセグメント16の長さL4の中央値に対する比で定義される。
パルス41の発生間隔は、等間隔ではない。パルス41の発生間隔は、図8に示した各セグメント16のタイヤ周方向の長さL4に応じた間隔である。本実施形態のパルス41の発生間隔は、セグメント16のタイヤ周方向の長さL4の比に基づいて設定されている。ここで、「セグメント16の長さL4の比」とは、複数種類のセグメント16の中で基準となる一つの基準セグメント(図示省略)を定め、かつ、この基準セグメントの長さL4に対する各セグメント16の長さL4の比で表される。基準セグメントは、好ましくは全種類のセグメント16を長さL4の順に並べたときに、中間もしくはそれに近い位置に配置されるセグメント16とするのが好ましい。
上記式(1)の総和Lは、図8に示したタイヤ周方向に配置されている全てのセグメント16について、長さL4を総和したものである。上記式(1)のパルス位置X(j)は、以下のように、パルス列42の起点43からj番目までのセグメント16の長さL4の和によって定義される。
X(1)=PL(1)
X(2)=PL(1)+PL(2)
・
・
・
X(j)=PL(1)+PL(2)+ … +PL(j)
なお、PL(i)(iは、1~Nまでの自然数)は、起点からi番目に配列されているセグメント16の長さL4を示すものとする。
図13は、振幅Fkと次数kとの関係の一例を示すグラフである。振幅Fkは、低次成分(本実施形態では、周波数が小さいノイズエネルギー)の予測に使用される。振幅Fkは、タイヤ走行時において、ピッチノイズを周波数分析したときのノイズエネルギーの大きさに相関がある。また、次数kは、ノイズエネルギーの周波数に相関があり、上記式(1)に示されるように、1次から5N次(即ち、セグメント16の数Nに5を乗じた次数)までの範囲に設定されている。
次に、この実施形態の第1評価工程S8では、振幅Fkの最大値FmaxA(図13に示す)が、予め定められた閾値以下であるか否かが評価される(工程S82)。閾値については、適宜設定することができる。本実施形態の閾値は、タイヤ周方向に均等に分割されたセグメント(即ち、図8に示した各セグメント16のタイヤ周方向の長さL4が同一)について、上記の工程(a)~(c)により求められる振幅Fkの最大値FmaxB(図示省略)の0.95倍に設定される。これは、種々の実験結果によって、発明者らが知見したものである。
発明者らによる実験では、先ず、セグメント16(図3に示す)の総数(分割数)N等を違えた複数のトレッド成形用金型11が試作され、図12のようなパルス列42が作成された。次に、パルス列42を上記式(1)でフーリエ変換して得られる1~k次の振幅(パワースペクトル密度)Fkの最大値Fmaxが求められた。そして、図2及び図3に示されるように、試作したトレッド成形用金型11を用いてタイヤ1(図1に示す)が製造され、このタイヤ1を実車に装着して、車内でのピッチノイズの音圧レベルの測定、及び、ドライバーによる官能テストが行われた。このような実験により、発明者らは、最大値Fmaxが、上記の閾値(最大値FmaxBの0.95倍)以下である場合に、振幅Fkのピークを次数kの広い範囲に均すことができ、ピッチノイズを低減(ホワイトノイズ化)できることを知見した。ピッチノイズをより効果的に低減するために、閾値は、より好ましくは、最大値FmaxBの0.65倍である。
工程S82において、振幅Fkの最大値FmaxAが閾値以下である場合(工程S82で、「Y」)、図8に示したセグメントの分割位置21の分散性が高いと評価される。この場合、この実施形態の設計方法では、図10に示した工程S5において、分散性が高いと評価された第3配列38(図8に示す)に基づいて、トレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)が設計される。これにより、セグメント16の分割数Nに起因する次数の異音(ノイズ)を低減可能なタイヤ1を製造可能なトレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)を設計することができる。
一方、工程S82において、振幅Fkの最大値FmaxAが閾値よりも大である場合(工程S82で、「N」)、セグメントの分割位置21の分散性が低いと評価される。この場合、この実施形態の設計方法では、図10に示されるように、第3配列決定工程S4、及び、第1評価工程S8が再度実施される。これにより、この実施形態の設計方法では、セグメントの分割位置21の分散性が高いと評価されるまで、図8に示した第3配列38が再度決定されるため、走行時のノイズ(セグメント16の分割数Nに起因する次数の異音)を低減可能なタイヤ1を製造できるトレッド成形用金型11(図2及び図3に示す)を、確実に設計することができる。
ところで、図6に示されるように、1つのパターン構成単位4(本例では、第2パターン構成単位M)に複数の分割候補位置35が定義される場合、これらの分割候補位置35のうち、例えば、図示しない溝形成部やブレードの変更への影響がより小さい分割候補位置35に、セグメントの分割位置21(図8に示す)が決定されるのが好ましい。このように、複数の分割候補位置35には、セグメントの分割位置21(図3に示す)として優先して決定されるべき優先度(優先順位)が存在する場合があるため、このような優先度を考慮して、セグメントの分割位置21が決定されるのが望ましい。
図14は、本発明のさらに他の実施形態のトレッド成形用金型の設計方法、トレッド成形用金型の製造方法、及び、タイヤの製造方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図15は、本発明のさらに他の実施形態のパターン構成単位、及び、第1配列のタイヤ周方向の一部を示す図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の設計方法では、分割候補位置を決定する工程S1において、少なくとも1つのパターン構成単位4に、複数の分割候補位置35を決定する工程と、複数の分割候補位置35に、優先度を定義する工程を含んでいる。複数の分割候補位置35の決定については、上述のとおりである。
優先度については、適宜設定することができる。図15に示されるように、本実施形態では、第2パターン構成単位Mの複数の分割候補位置35、35のうち、図示しない溝形成部やブレードの変更への影響が小さい分割候補位置35ほど、高い優先度(本例では、数値が小さいほど、優先度が高い。)を定義している。本例では、優先度「1」が優先度「2」よりも優先される。このような優先度(本例では、優先度「1」、「2」)により、図8に示した第3配列決定工程S4で特定された分割位置21について、溝形成部やブレードの変更への影響を評価することが可能となる。なお、パターン構成単位4に1つの分割候補位置35のみが決定される場合(本例では、第1パターン構成単位S)には、その分割候補位置35に、最も高い優先度(本例では、優先度「1」)が定義される。
次に、この実施形態の設計方法では、図14に示されるように、第3配列決定工程S4の後、図15に示した分割候補位置35の優先度(本例では、優先度「1」、「2」)に基づいて、セグメントの分割位置21(図8に示す)の良否を評価する第2評価工程S9が含まれる。この第2評価工程S9では、先ず、図4に示されるように、第3配列記憶部31eに記憶されている第3配列38(図8に示す)、及び、第2評価部32gが、作業用メモリ30に読み込まれる。そして、第2評価工程S9では、第2評価部32gが、演算部28によって実行される。この第2評価部32gの実行により、プログラム(プログラム部32)は、コンピュータ23を、セグメントの分割位置21の良否を評価する手段として機能させることができる。図16は、第2評価工程S9の処理手順の一例を示すフローチャートである。図17は、本発明の他の実施形態の第1配列36、第2配列37及び第3配列38のタイヤ周方向の一部を示す概念図である。
この実施形態の第2評価工程S9では、先ず、第3配列38で特定される複数のセグメントの分割位置21について、これらの分割候補位置35に定義された優先度(本例では、優先度「1」、「2」)の合計値が計算される(工程S91)。上述したように、この実施形態では、優先度の数値が小さいほど、優先度が高く定義されている。したがって、優先度の合計値が小さいほど、優先度が高く設定された分割候補位置35に、セグメントの分割位置21が決定されている。
次に、この実施形態の第2評価工程S9では、第3配列38で特定される複数のセグメントの分割位置21について、優先度の合計値が、予め定められた閾値以下か否かが判断される(工程S92)。閾値については、例えば、図示しない溝形成部やブレードの変更への影響を考慮して、適宜設定することができる。
工程S92において、優先度の合計値が閾値以下である場合(工程S92で、「Y」)、高い優先度が定義された分割候補位置35に、セグメントの分割位置21が特定されており、セグメントの分割位置21が良好であると評価される。この場合、この実施形態の設計方法では、図14に示した工程S5において、図17に示したセグメントの分割位置21が良好であると評価された第3配列38に基づいて、図2及び図3に示したトレッド成形用金型11が設計される。
一方、工程S92において、優先度の合計値が閾値よりも大きい場合(工程S92で、「N」)、低い優先度(優先度の数値が大きい)が定義された分割候補位置35に、セグメントの分割位置21が特定されており、セグメントの分割位置21が良好ではないと評価される。この場合、この実施形態の設計方法では、図14に示されるように、第3配列決定工程S4、及び、第1評価工程S8が再度実施される。これにより、この実施形態の設計方法では、トレッド成形用金型11を設計する工程S5において、例えば、図示しない溝形成部やブレードの変更を最小限に抑えることができるため、トレッド成形用金型11を短時間で設計することができる。また、溝形成部やブレードの変更は、トレッドパターン3を変更することになるため、タイヤ1のノイズ性能を低下させる傾向がある。本実施形態の設計方法では、溝形成部やブレードの変更を最小限に抑えることで、製造されるタイヤ1のノイズ性能の低下を防ぐこともできる。
これまでの実施形態の設計方法では、第3配列決定工程S4(図5、図10及び図14に示す)において、1つの第3配列38が決定されたが、このような態様に限定されない。例えば、第3配列決定工程S4では、図8及び図17に示した基準位置40をタイヤ周方向に位置ずれさせながら、第3配列38が複数種類決定されてもよい。この場合、図11に示した第1評価工程S8及び/又は図16に示した第2評価工程S9において、複数種類決定された第3配列38から、最も評価の高い1つの第3配列38を選択する工程を追加するのが望ましい。
なお、図8及び図17に示した基準位置40を位置ずれさせる距離については、上述のとおりである。また、基準位置40は、トレッド成形用金型11の成形面11sのタイヤ周方向の1周に亘って、位置ずれさせるのが望ましい。
これまでの実施形態では、図11に示した第1評価工程S8と、図16に示した第2評価工程S9とが、それぞれ独立して実施されたが、第1評価工程S8及び第2評価工程S9の双方が実施されてもよい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図2及び図3に示した基本構造を有するトレッド成形用金型が設計された(実施例1~4及び比較例1~6)。
実施例1~4では、図5に示した処理手順に基づいて、分割候補位置を決定する工程と、分割候補位置のタイヤ周方向の配列を特定する第1配列を得る工程と、セグメント分割可能領域のタイヤ周方向の配列を特定する第2配列を得る工程とが実施された。さらに、実施例1~4では、図9に示した処理手順に基づいて、セグメントの分割位置のタイヤ周方向の配列を特定する第3配列を決定する工程が実施された。
実施例2~4では、第3配列を決定する工程の後、図11に示した処理手順に基づいて、分割位置の分散性を評価する第1評価工程が実施された。さらに、実施例4では、図16に示した処理手順に基づいて、セグメントの分割位置の良否を評価する第2評価工程も実施された。
比較例1~6では、セグメント分割可能領域を考慮せずに、セグメントの分割位置のタイヤ周方向の配列を特定する第3配列を決定する工程が実施された。比較例2~3及び比較例5~6は、第3配列を決定する工程の後、図11に示した処理手順に基づいて、分割位置の分散性を評価する第1評価工程が実施された。さらに、比較例4~6は、図16に示した処理手順に基づいて、セグメントの分割位置の良否を評価する第2評価工程が実施された。
そして、実施例1~4及び比較例1~6の設計方法について、セグメントの分割位置の決定に要する時間、及び、設計されたトレッド成形用金型の製造に要する時間が測定された。さらに、実施例1~4及び比較例1~6で製造されたトレッド成形用金型を用いて、加硫成形されたタイヤについて、ノイズ性能が評価された。共通仕様は、次のとおりである。
タイヤサイズ:205/55R16
リムサイズ:16×6.5J
タイヤ内圧:230kPa
テスト車両:FF車(排気量2000cc)
<セグメントの分割位置を決定するのに要する時間、及び、トレッド成形用金型の製造に要する時間>
実施例1~4及び比較例1~6について、セグメントの分割位置の決定に要する時間、及び、トレッド成形用金型の製造に要する時間がそれぞれ測定された。結果は、セグメントの分割位置を決定するのに要する時間について、実施例1を100とする指数で表示している。一方、トレッド成形用金型の製造に要する時間については、実施例4を100とする指数で表示している。数値が大きいほど、良好である。
<ノイズ性能>
各供試タイヤを上記のリム、及び、上記のタイヤ内圧の条件下で、上記のテスト車両の右前輪に装着した。左前輪、及び、後輪には、トレッドパターンの無いスリックタイヤが装着された。そして、車両をスムース路面に走行させ、60km/hから20km/hまで惰行走行させたときのピッチノイズが、ドライバーの官能によって評価された。結果は、実施例4を100とする指数で表示している。数値が大きいほど、良好である。
テストの結果が表1に示される。
テストの結果、実施例1~4は、比較例1~6に比べて、セグメントの分割位置を、短時間で決定することができた。また、実施例2~4は、第3配列を決定する工程の後、分割位置の分散性を評価する第1評価工程が実施されたため、第1評価工程が実施されない実施例1に比べて、走行時のノイズを低減可能なタイヤを製造することができた。さらに、実施例4は、セグメントの分割位置の良否を評価する第2評価工程が実施されたため、第2評価工程が実施されない実施例1~3に比べて、溝形成部やブレードの変更を最小限に抑えることができ、トレッド成形用金型を短時間で製造することができた。