JP7326749B2 - 化粧シート - Google Patents

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Description

本発明は化粧シートに関し、特に絵柄模様と同調した凹凸模様や艶変化模様を有する意匠性の高い化粧シート、およびその製造方法に関する。
合成樹脂基材シートに絵柄を印刷した化粧シートは、デザイン性を必要とするさまざまな用途に用いられている。一例を挙げれば、住宅や店舗の床材、壁材、天井材、造作材等の表面化粧材、家電製品や各種什器の表面材、車両や航空機、エレベーターの内装材等である。
これらの化粧シートには、その用途や施工方法に応じてさまざまな材質が用いられているが、絵柄模様の形成方法としては、グラビア印刷法によるものが最も一般的である。これはグラビア印刷法においては、精密な印刷が可能であることに加えて、柄のツナギを目立たなくしたエンドレス模様を印刷するためのグラビア刷版が比較的容易に得られることにもよる。
表面デザインの意匠性を左右する要素としては、絵柄模様の他に、表面の凹凸模様や表面の艶が挙げられる。例えばオープンポア塗装仕上げを施した実際の木材の表面を観察すると、導管部がわずかに凹んでおり、しかも艶消状態となっている。化粧シートにおいても、印刷絵柄と表面エンボス模様と表面の艶変化とを同調させることが古くからの課題となってきた。
特許文献1に記載された化粧シートの製造装置および製造方法は、予めグラビア印刷法によって形成された印刷絵柄に、表面エンボス模様を同調させながら形成する方法および装置を提案したものである。
特許文献1に記載された方法は、グラビア印刷時に一定間隔でピッチマークを印刷しておき、これをエンボス装置に設置した検出装置によって測定して、ピッチの延び縮みを検出し、一定範囲内のピッチになるようにテンションを調節することにより、印刷絵柄とエンボス模様とを同調させるものである。
特許文献1に記載された方法によれば、印刷絵柄に同調したエンボス模様を有する化粧シートが得られるものの、例えば木目柄であれば、ワイピング手法を用いて導管エンボス部に着色することが可能であるが、この場合すべての導管エンボス部に着色剤が入ってしまうため、単調な仕上りとなり、実際の木材表面とはかけ離れた不自然さが残るものとならざるを得なかった。
特開2016-221871号公報
本発明の解決しようとする課題は、印刷絵柄と同調した凹凸模様や部分的に形成された艶変化模様を有する意匠性に優れた化粧シートおよびその製造方法を提案するものである。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材シート上に形成されたグラビア印刷法による下地絵柄層と、紫外線硬化型インクジェットインクの盛り上げ印刷によって形成された紫外線硬化型インクジェットインキ層とを有し、当該紫外線硬化型インクジェットインキ層は前記下地絵柄層に同調するように形成され、前記下地絵柄層と前記紫外線硬化型インクジェットインキ層との間に透明熱可塑性樹脂層をさらに有し、当該透明熱可塑性樹脂層にエンボス模様が形成されており、前記紫外線硬化型インクジェットインクの盛り上げ印刷の高さが5~12μmである化粧シートである。
また、請求項2に記載の発明は、前記透明熱可塑性樹脂層に形成された前記エンボス模様は、前記下地絵柄層と同調していることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
紫外線硬化型インクジェットインキは、固形分を高くすることが可能であり、これにより盛り上げ効果を得ることができる。また印刷直後に紫外線を照射して硬化させることが出来るので、インキ層のだれを防ぎ、シャープな凹凸感を得ることができる。また艶消から艶有りまで自由な表面光沢や、透明から濃色まで自由な色調を選択することができ、さらにこれらを数色組合わせることが出来るので、表現の自由度が極めて高い。
本発明に係る化粧シートは、繊細なグラビア印刷法による下地絵柄層と、この下地絵柄層に同調した紫外線硬化型インクジェットインキ層とを有する化粧シートであるので、幅広い意匠表現が可能である。
請求項2に記載の発明のように、下地絵柄層と紫外線硬化型インクジェットインキ層との間に透明熱可塑性樹脂層を有する場合には、透明熱可塑性樹脂層によって下地絵柄層が保護されると同時に、絵柄に深みが増すために意匠性が向上する。
請求項3に記載の発明のように、透明熱可塑性樹脂層にエンボス模様が形成されている場合には、さらに意匠性が向上する。また請求項4に記載の発明のように、透明熱可塑性樹脂層に形成されたエンボス模様が、下地絵柄層と同調している場合においては、より本物に近いリアルな表現を持った化粧シートとなる。
請求項5に記載の発明のように、紫外線硬化型インクジェットインキ層が、エンボス模
様の凹部に部分的に設けられている場合には、従来のワイピング手法による表現と比較して、より自然な感じが得られ、極めて意匠性が高い化粧シートとなる。
請求項6に記載の製造方法によれば、グラビア印刷工程とエンボス工程とインクジェット印刷工程を別々の工程として組合わせることができるので、大掛かりな一貫製造ラインを構築する必要がなく、容易に実施が可能である。
請求項7に記載の発明のように、紫外線硬化型インクジェットインキの25℃における粘度を、1~100mPa・sの範囲内とした場合には、安定した印刷適性と、良好な仕上り効果が得られる。
図1は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における断面構成を模式的に示した断面説明図である。 図2は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における断面構成を模式的に示した断面説明図であり、下地絵柄層とインクジェットインキ層の間に透明熱可塑性樹脂層を有する例である。 図3は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における断面構成を模式的に示した断面説明図であり、インクジェットインキ層がマットインキの例である。 図4は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における断面構成を模式的に示した断面説明図であり、透明熱可塑性樹脂層にエンボス模様が施されている例である。 図5は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における断面構成を模式的に示した断面説明図であり、透明熱可塑性樹脂層にエンボス模様が施されており、エンボス模様の凹部に、インクジェットインキ層が形成されている例である。 図6は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における断面構成を模式的に示した断面説明図であり、透明熱可塑性樹脂層にエンボス模様が施されており、エンボス模様の凹部に、インクジェットインキ層が形成されており、エンボス模様の凸部にもインクジェットインキ層が形成されている例である。 図7は、下地絵柄層とアライメントマークが形成された基材シートの平面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る化粧シートおよびその製造方法について詳細に説明する。図1~6は、本発明に係る化粧シートの断面構成を模式的に示した断面説明図である。図7は、下地絵柄層とアライメントマークが形成された基材シートの平面模式図である。
本発明に係る化粧シート1は、図1に示したように、基材シート2上に形成されたグラビア印刷法による下地絵柄層3と、この下地絵柄層3に同調した紫外線硬化型インクジェットインキ層6とを有する化粧シートである。また図2に示したように、下地絵柄層3と紫外線硬化型インクジェットインキ層6との間に透明熱可塑性樹脂層4を有する化粧シートである。図2の例では、透明熱可塑性樹脂層4にはエンボス加工が施されていないが、図4に示した例のように、透明熱可塑性樹脂層4にエンボス模様5を施しても良い。また、特に図示しないが、透明熱可塑性樹脂層4とインクジェットインキ層6との間に、さらに透明保護層を設けても良い。透明保護層は、表面光沢の調整や傷防止を目的としたコーティング層である。
紫外線硬化型インクジェットインキは、固形分を高くすることが可能であり、盛り上げ印刷効果により化粧シート表面に凹凸を付与することができる。また紫外線照射装置を印刷直後に配置することにより、印刷後のインキのレベリングを待たずに硬化せしめることが可能であり、凹凸感の向上に効果を発揮する。
図7は、下地絵柄層3とアライメントマーク7が形成された基材シート2の平面模式図である。グラビア印刷法による下地絵柄層3とインクジェットインキ層6を同調させる方法については、図7に示したように、予め下地絵柄層3と、これに同調したアライメントマーク7を形成した基材シート2を準備する。アライメントマークは、グラビアシリンダーの円周長に1個、または円周長の整数等分で、1m前後の間隔となるようにすると良い。アライメントマークは、専用のグラビアシリンダーを作成しても良いが、絵柄を構成するグラビアシリンダーの中で、最も濃色で印刷する柄版に付随させても良い。
次に、紫外線硬化型インクジェットインキ層6を形成する直前段階において、インクジェット印刷機に設置したカメラでこのアライメントマーク7を検知することにより、基材シートの伸びを計算し、これを基に基材シート2に掛かるテンションを調整して、基材シート2の搬送量を調節することにより、下地絵柄層3と紫外線硬化型インクジェットインキ層6とを同調させることが出来る。
下地絵柄層3のピッチとアライメントマーク7のピッチは等しいので、アライメントマーク7のピッチを測定することにより、下地絵柄層3のピッチを知ることができ、下地絵柄層とインクジェットインキ層の同調をもたらすことが出来る。なお、下地シートは、搬送方向にテンションを掛けることにより、絵柄は幅方向に縮む傾向があるので、予めテンションの値の範囲を決めておき、インクジェット印刷する絵柄データに幅方向の縮み代を含ませた修正をしておくことが望ましい。
図3に示した例では、インクジェットインキ層6として艶消インキが用いられている。艶消インキを用いた場合には、艶有りのインキを盛り上げた場合とは全く異なる意匠効果が発揮される。このように、インクジェットインキ層6としては、色調については、無色すなわち透明から着色インキまで自由な色調が選択できる。また艶についても、艶有りから完全マットまで自由に選択することができる。
図4に示した例では、透明熱可塑性樹脂層4に施されたエンボス模様5は、下地絵柄層3に同調しているが、エンボス模様5は、下地絵柄層3に同調しないランダムエンボスでも構わない。この場合でもインクジェットインキ層6は下地絵柄層3に同調しているので、それなりの意匠効果が期待できる。
図5に示した例では、透明熱可塑性樹脂層4に施されたエンボス模様5は、下地絵柄層3に同調しており、さらにインクジェットインキ層6がエンボス模様5に同調して、エンボス模様の凹部に部分的に施されている。この手法は、例えば下地絵柄層3が木目柄であり、エンボス模様5が導管エンボスである場合などに、従来のワイピング手法によるとすべてのエンボス模様に着色されてしまうのに対して、着色を部分的に行うことが可能となり、非常に意匠効果の高い化粧シートが得られることになる。この場合のインクジェットインキとしては、艶消しタイプの着色インキを用いるのが好ましい。
図6は、図5に示した例に加えて、インクジェットインキ層6がエンボス模様の凹部に
着色するインキと、エンボス模様の凸部にさらに盛り上げるインキとの2種類のインキからなっている。このように、インクジェットインキ層6としては、1色に限らず複数色のインキからなるものとすることができる。色数については、インクジェット印刷機の仕様による。
インクジェットインキの粘度については、25℃における粘度が1~100mPa・s(パスカル秒)の範囲にあることが望ましい。粘度が1mPa・s未満であると特に盛り上げ効果を期待する場合には不適当である。また粘度が100mPa・sを超える場合には、安定した印刷が出来ず、ドット欠けを生じる恐れがある。但しインクジェットヘッドを加温することによって改善する場合がある。
本発明に係る化粧シート1に用いる基材シート2の材質としては、特に限定されないが、例を挙げれば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、共重合ポリエステル樹脂(代表的には1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET-G)等のポリエステル系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂や、6-ナイロン、6,6ナイロン、6,10ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂や、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含塩素系樹脂や、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物を使用することができる。基材シート2としては、これらの樹脂に顔料、充填剤、滑剤、安定剤等を混合した樹脂組成物をシート状に加工した樹脂シートが用いられる。
透明熱可塑性樹脂層4の材質としては、基材シート2に用いたと同様の合成樹脂を用いることができる。これらの樹脂をフィルム状に加工したものを印刷済みの基材シートに貼り合わせても良いが、押出機から溶融した樹脂を押し出して、押し出し同時ラミネートしても良い。この時、冷却ロールをエンボスロールとすることで、さらにエンボス模様も同時に付与することが出来る。
インクジェット印刷用インキとしては、固形分の高い公知の紫外線硬化型インクジェットインキを用いることができるが、本発明の趣旨から、インク滴がだれないように、チクソトロピック性を付与したインキは、さらに好ましい。また、印刷後にインキ層がレベリングしないうちに、直ちに紫外線を照射して硬化させることが望ましい。以下、実施例に基いて、本発明に係る化粧シートおよびその製造方法について具体的に説明する。
<実施例1>
木目柄のグラビア印刷版と、これに同調するエンボスロール、さらにこの木目柄のデータを準備した。ポリエチレン樹脂に木目柄の下地色となる顔料を添加した基材シートに、グラビア印刷法により木目柄の下地絵柄を印刷した。この時、インクジェット印刷柄と同調させるためのアライメントマークを基材シート端部に1000mm間隔で印刷した。
透明熱可塑性樹脂層としてポリプロピレン樹脂を用い、Tダイから押し出して印刷済み基材シートと押し出しラミネートした。この時、冷却ロールとして下地絵柄に同調したエンボスロールを用い、基材シートのテンションを調節することにより基材シートの送り量を調整し、下地絵柄とエンボス模様とが同調するようにした。
以上によって得られた下地絵柄とエンボス模様とが同調した化粧シートをインクジェット印刷機(トライテック社製 Wi-ForJet、ヘッド:コニカミノルタ社製KM1024MHB)にセットし、UV硬化型インクジェットインキ(東洋インキ社製LIOJET FV-ZB、顔料未添加、粘度18~22mPa・s)を用いて下地絵柄に同調した盛り上げ印刷を行った。インクジェット印刷機用データは、下地絵柄に同調するように作成したインクジェット盛り上げ印刷用データをリップソフト(CALDERA社製GrandRIP+)を用いてインクジェット印刷用点情報に変換したものを用いた。なおインキ粘度の測定は、25℃環境下において東機産業社製B型粘度計TVB-10Hを用いて測定した。
インクジェット印刷機に取付けたカメラセンサーによって基材シートのアライメントマークを読み取り、印刷ステージの前後に取付けたサクションロールでシート搬送量の微調整をすることで、エンボス同調化粧シートに同調する盛り上げ印刷を行い、印刷ヘッド直後に設置した紫外線照射機を用いて、印刷とほぼ同じタイミングでインキを硬化させた。得られた化粧シートは、インクジェット印刷による盛り上げ模様が下地絵柄および導管エンボスと同調しており、より高い意匠性を持ったものであった。
<実施例2>
インクジェットインキに増粘剤(BYK社製 BYK-431)を添加して粘度を112MPa・sにした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作成した。インキ粘度が高過ぎるためドット欠けが多発し、意匠性は悪化したが、ヘッド加温機能を用いて温度を55℃まで上昇させるとドット欠けは解消した。
<実施例3>
インクジェットインキに希釈剤(ブチルジグリコールアセテート、以下BDGAC)を加えて粘度を5mPa・sに下げた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作成した。得られた化粧シートは、実施例1と遜色ないものであった。
<実施例4>
実施例3からさらにBDGACを増量し、インキの粘度を0.8mPa・sとした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作成した。得られた化粧シートは、盛り上げ効果が限定的であった。
<実施例5>
グラビア版データの導管部の一部に黒色のインクジェットインキを印刷した以外は、実施例1と同様の材料と方法を用いてインクジェット印刷を行った。その結果、エンボス導管の凹陥部と黒色のインクジェットインキが同調しており、より意匠性の高い化粧シートを得ることができた。従来のワイピング法でも導管部に着色された化粧シートを得ることはできるが、エンボス凹陥部すべてに着色されてしまうため、実施例5のように導管の一部のみを着色することはできない。この方法によれば意匠設計の自由度をより高めることが可能となる。
<比較例1>
インクジェット印刷機のカメラセンサーを用いない以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作成した。その結果、下地の木目柄とインクジェット印刷絵柄が同調せず、意匠的には劣るものとなった。以上の結果を表1にまとめる。
Figure 0007326749000001
1・・・化粧シート
2・・・基材シート
3・・・下地絵柄層
4・・・透明熱可塑性樹脂層
5・・・エンボス模様
6・・・インクジェットインキ層
7・・・アライメントマーク

Claims (2)

  1. 基材シート上に形成されたグラビア印刷法による下地絵柄層と、紫外線硬化型インクジェットインクの盛り上げ印刷によって形成された紫外線硬化型インクジェットインキ層とを有し、当該紫外線硬化型インクジェットインキ層は前記下地絵柄層に同調するように形成され、前記下地絵柄層と前記紫外線硬化型インクジェットインキ層との間に透明熱可塑性樹脂層をさらに有し、当該透明熱可塑性樹脂層にエンボス模様が形成されており、前記紫外線硬化型インクジェットインクの盛り上げ印刷の高さが5~12μmである化粧シート。
  2. 前記透明熱可塑性樹脂層に形成された前記エンボス模様は、前記下地絵柄層と同調していることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
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