JP2010082872A - エンボス加飾シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光沢度20以上の透明樹脂フィルムからなる基材上に少なくとも印刷層と接着剤層を有する加飾シートを加熱し、賦形用凹凸模様が施されたエンボスロール15と加圧ロール14との間に挿入し、加圧することで接着剤層側に凹凸模様を賦形するエンボス加飾シートの製造方法であって、凹凸模様が賦形される前の透明樹脂フィルムの光沢度と加圧ロールの光沢度の差を±10以内とし、かつ加圧ロールを冷却することを特徴とするエンボス加飾シートの製造方法。
【選択図】図1
Description
そこで、種々の工夫がなされ、例えば、特定の基材シートに設けられたエンボスパターンに、その凹凸を埋める厚さの透明又は半透明の接着性樹脂層を介して、透明又は半透明の熱可塑性樹脂シートが積層されてなる化粧シート(特許文献1、請求項1参照)などが提案されている。この化粧シートは、内側にエンボス加工が施された、いわゆる内部エンボスを有する化粧シートであり、真空成形等によってもシートの伸長などによるエンボス戻り現象が抑制されるとしている(特許文献1、段落[0056]参照)。
図1に示すようなエンボス製造装置を用いて、透明樹脂フィルムを基材とするシートにエンボス加工する場合には、加圧ロールとしてシリコーンゴムを用いることが一般的である。シリコーンゴムロールはシートとの離型性が良好であり、シートが加圧ロールに密着して離れなくなる、いわゆる「圧とられ」と呼ばれる現象を引き起こさない点で有利だからである。「圧とられ」が生じない理由としては、シリコーンゴムロールの光沢度が低い点にあり、通常、その光沢度は8程度である。
しかも、真空成形工程などの後工程における加熱条件、具体的には加熱温度及び加熱時間によって、その艶の戻り方が変化するために、安定した意匠性を有する加飾樹脂成形品が得られないことがわかった。
本発明は、このような状況下、真空成形工程などの後工程において、表面の艶変化が極めて小さいエンボス加工の施された加飾シート(以下「エンボス加飾シート」と称する。)の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、光沢度20以上の透明樹脂フィルムからなる基材上に少なくとも印刷層と接着剤層を有する加飾シートを加熱し、賦形用凹凸模様が施されたエンボスロールと加圧ロールとの間に挿入し、加圧することで接着剤層側に凹凸模様を賦形するエンボス加飾シートの製造方法であって、凹凸模様が賦形される前の透明樹脂フィルムの光沢度と加圧ロールの光沢度の差を±10以内とし、かつ加圧ロールを冷却することを特徴とするエンボス加飾シートの製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法は、図1に示すように、加飾シート1を、例えば、加熱ドラム11で予備的な加熱をした後、ガイドロール12を介して移動させ、ヒーター13にて加熱し、所定の賦形用凹凸模様が施されたエンボスロール15と加圧ロール14の間に挿入し、加圧することで、凹凸模様を賦形するものである。
本発明の特徴は、凹凸模様が賦形される前の透明樹脂フィルムの光沢度を前もって測定しておき、該光沢度と加圧ロール14の光沢度の差を±10以内とする点にある。
なお、光沢度はJIS K5600−4−7(ISO1512)に準拠して、(株)村上色彩研究所製の試験機「GMX−202」を用いて、60度の角度で測定したものである。
本発明に用いられる透明樹脂フィルムとしては、透明性に優れ、かつ優れた塗装感を付与できる基材であれば特に制限されず、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルムなどが好適に挙げられる。なお、透明樹脂フィルムは半透明であってもよいが、透明であることが印刷層3の着色を鮮やかにして好ましい。透明である場合は、無色透明の他に、着色透明でもよい。
本発明は透明樹脂フィルムの光沢度が20以上の加飾シートに適用される。該光沢度が20未満の加飾シートについては、従来の方法であっても加飾シートの艶変化の問題は特に生じないからである。
また、ポリカーボネート樹脂としては、ジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体が挙げられ、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンやビスフェノールAから製造されるポリカーボネート樹脂が挙げられる。
また、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
透明樹脂フィルムは上述の樹脂材料を単体又は2種以上の混合物として、単層又は2層以上の積層体のフィルムとして用いる。
また、透明樹脂フィルムの製造方法については、従来公知の一般的な方法、例えば、透明樹脂を直線状のスリットから押出すいわゆる押出しTダイ法、透明樹脂を熱ロールにより延伸するいわゆるカレンダ加工法、液状の透明樹脂を型内に流し込み固化させるいわゆる注型(キャスト)法等を用いることが可能である。
着色ベタ層及び絵柄層としては、バインダーの樹脂を特定の樹脂から構成し、所望する色彩を得るための適当な着色剤を配合する他は、基本的には特に制限は無い。着色ベタ層及び絵柄層は、通常は、印刷インキでグラビア印刷、活版印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法で形成すればよい。また、着色ベタ層は、ロールコート等の公知の塗工法でもよい。
印刷層3の厚さとしては、特に制限は無いが、通常は1〜20μm程度、好ましくは1〜10μmである。
ここで、アクリル樹脂としては、上述の基材2のところで列記したものと同様のものの中から適宜選択する他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオールを用いることもできる。
また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。必要に応じ、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体にさらにマレイン酸、フマル酸等のカルボン酸を共重合させてもよい。アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合比は、アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体=1/9〜9/1(質量比)程度である。この他、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン等の樹脂を混合してもよい。
また、インキ(あるいは塗液)に含有させる着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、カドミウムレッド、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド等の有機顔料、アルミニウム、真鍮等の金属の粉末又は鱗片等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母の粉末又は鱗片等の真珠光沢(パール)顔料、あるいは染料等が用いられる。
所望により、印刷層3が、光反射層、磁性体層、導電性層等の機能性層等を有していてもよい。ここで、光反射層としては、例えば、樹脂フィルムの表面に金属(アルミニウム、クロム、銀等)を蒸着して全面あるいは部分的に形成した金属薄膜層、あるいは表面に反射率が優れた白色塗膜又は金属光沢塗膜(アルミニウム、クロム、銀等の金属含有インキを用いる)を有する樹脂フィルム等が挙げられる。光反射層が印刷層3の全面に形成される場合は着色ベタ層となり、印刷層3の部分的に形成される場合は絵柄層となる。磁性体層には磁性体が含まれ、導電性層には導電性材料が含まれる。
接着剤層4は、これら樹脂による接着剤を、グラビア印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形成する。また、接着剤層4の厚さは特に制限は無いが、通常は1〜20μm程度、好ましくは1〜10μmである。
エンボス加工は、凹凸模様の意匠性が高まるように適宜深さを調整して行なわれる。本発明では、接着剤層4側に凹凸模様が賦形されるが、接着剤層4の厚みの範囲内の深さで行なってもよいし、印刷層3及び基材2にまで凹凸模様が付与される深さで行なってもよい。
本発明で用いる透明樹脂フィルムは光沢度20以上であるから、少なくとも加圧ロール14の表面の光沢度は10以上である。したがって、従来使用されている光沢度8のシリコーンゴムロールを用いることはできない。
本発明で使用することのできる加圧ロールとしては、エンボス加工される加飾シートの透明樹脂フィルムとの光沢度の差が±10以内であれば制限はなく、カーボン含有EPT(Ethylene-Propylene Terpolymer)などのゴムロール、鉄等の金属からなる円筒状の外周に前記したカーボン含有EPTなどの弾性体を円筒状に被覆したものを用いることができる。これらのうち、表面研磨の仕上げ加工適性の点から、カーボン含有EPTが好ましい。
また、加圧ロールの冷却方法についても、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されず、加圧ロールの内部に冷却水用の空間を設け、該空間に冷却水を注入する方法、加圧ロールの一部を直接冷却水タンク中の冷却水に接触させる方法、冷風装置により冷風を加圧ロールに吹き付ける方法、内部に冷却水を循環させた金属ロールを加圧ロールに接触させるタッチロール式などが挙げられる。
具体的には、以下のような用途に特に有用である。
(1)加飾シートを射出成形用金型の内側に入れ、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂表面に加飾シートを一体化接着させる方法(インモールド工法)に用いる加飾シート。
(2)加飾シートを射出成形用金型の内側に入れる前に、該シートを真空成形等により立体加工し、所望の形状に打ち抜き加工した後、射出成形用金型内の凹部等に嵌め込んで型締めし、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂表面に成形同時加飾シートを一体化接着させる方法(インサート成形)に用いる加飾シート。
(3)加飾シートを射出成形用金型内に入れてから、射出成形用金型の凹部に沿うように真空成形等により立体加工し、型締め後、成形樹脂をキャビティに射出し、成形樹脂表面に成形と同時に加飾シートを一体化接着させる方法(サーモジェクト成形)に用いる加飾シート。
(4)目的とする化粧材の三次元立体形状に予め成形した木質基材等の化粧材用基材の表面上に、加飾シートを加熱軟化しつつ展張し、該加飾シートの化粧材用基材側の空間を減圧し、必要に応じ反対側の空間を加圧することにより、該加飾シートを前記化粧材用基材の表面の三次元立体形状に沿って成形しつつ貼着積層する方法(メンブレンプレス法又はメンブレンレスプレス法)に用いる加飾シート。
また、バッカーフィルムは射出する成形樹脂との接着性を考慮して決定されるものであり、通常、該成形樹脂と同様の樹脂で構成される。すなわち、成形樹脂がABS樹脂である場合には、バッカーフィルムもABS樹脂で構成されていることが好ましい。
製造例1(加飾シートの製造)
基材としてガラス転移温度(以下、Tgと記載する。)が104℃の耐熱アクリル樹脂フィルム(厚さ125μm、表面の光沢度70)を用い、その裏面に、ポリブチルメタクリレート/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(質量比:2/1)組成物からなる絵柄層をグラビア印刷し、絵柄層が印刷されていない部分の一部に金属光沢塗膜をグラビア印刷し、絵柄層と同じ組成物に高隠蔽性顔料(チタン白及び着色顔料)を含有させた着色ベタ層をロールコートにより塗工し(印刷層として厚さ4μm)、さらに、アクリル樹脂からなる接着剤層(厚さ3μm)をロールコートにより塗工した後、乾燥して加飾シートを得た。
基材として、Tgが100℃の耐熱アクリル樹脂フィルム(厚さ125μm、表面の光沢度40)を用いたこと以外は、製造例1と同様にして加飾シートを製造した。
(1)エンボス加工
図1に示す装置を用いて、製造例1で得られた加飾シートの接着剤層側にエンボス加工を行った。エンボス加工は、加熱ドラム11の温度を60℃、賦形直前のシート温度を250℃、エンボスロールとして金属製エンボスロール(銅の表面にクロムメッキしたもの)を用い、エンボスロールの温度を100℃とした。加圧ロールとしては、カーボン含有EPTゴム製ロール(硬度80)の表面をバフ研磨して光沢度を60としたものを用い、タッチロール式にて100℃に冷却した。また加飾シートの搬送速度9m/sでエンボス加工を行った。いわゆる「圧とられ」は生じなかった。
エンボス加工後の加飾シート(エンボス加飾シート)の表面側(加圧ロールと接する側)の光沢度を(株)村上色彩研究所製の試験機「GMX−202」を用いて、60度の角度で測定したところ、光沢度58であった。
(2)真空成形加熱
上記(1)にて得たエンボス加飾シートについて、温度120℃の条件で、4秒間加熱し、その後真空成形を行って成形加工した表面の光沢度を上記と同様の方法で測定した結果、光沢度は60であり、大きな艶の変化は見られなかった。なお、真空成形も、フィルム温度を120℃として行った。
同様の加熱条件下で、5、6、7、8、9及び10秒間、それぞれ加熱し、その後真空成形を行って成形加工した表面の光沢度を測定した。結果を第1表に示す。いずれも大きな艶の変化は見られなかった。
製造例1にて製造した加飾シートに代えて、製造例2にて製造した加飾シートを用い、また、加圧ロールとして、カーボン含有EPTゴム製ロール(硬度80)の表面をバフ研磨して光沢度を40としたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエンボス加工を施し、同様に加熱処理し、その後真空成形を行って成形加工した表面の光沢度を測定した。結果を第1表に示す。なお、実施例2においても「圧とられ」は生じなかった。
実施例1において、加圧ロールとして、シリコーンゴムロール(硬度60、光沢度8)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエンボス加工を施し、同様に加熱処理し、その後真空成形を行って成形加工した表面の光沢度を測定した。結果を第1表に示す。
実施例2において、加圧ロールとして、シリコーンゴムロール(硬度60、光沢度8)を用いたこと以外は実施例2と同様にしてエンボス加工を施し、同様に加熱処理し、その後真空成形を行って成形加工した表面の光沢度を測定した。結果を第1表に示す。
一方、本発明の方法により製造したエンボス加飾シートは、各成形工程時間でばらつきが小さいことがわかる。すなわち、実施例1においては、4〜10秒の間での光沢度のばらつきが15以下であり、実施例2においては、10以下であった。したがって、成形工程時間の厳格な管理をすることなく、再現性よく、意匠性のばらつきの小さい成形品を得ることができる。
本発明のエンボス加飾シートを用いた成形品は、コンソールパネル、センタークラスター、スイッチベース等の自動車内装部品、塗装模様のサイドマットガード、バンパー、ホイルキャップやモール等の自動車外装部品、キッチン扉や学童机用部材等の様に、複雑な三次元立体形状を有する化粧材、建築物の外装、内装、建具、家具等の表面装飾等に好適に用いられる
2:基材
3:印刷層
4:接着剤層
5:エンボス面
10:エンボス製造装置
11:加熱ドラム
12:ガイドロール
13:ヒーター
14:加圧ロール
15:エンボスロール
Claims (6)
- 光沢度20以上の透明樹脂フィルムからなる基材上に少なくとも印刷層と接着剤層を有する加飾シートを加熱し、賦形用凹凸模様が施されたエンボスロールと加圧ロールとの間に挿入し、加圧することで接着剤層側に凹凸模様を賦形するエンボス加飾シートの製造方法であって、凹凸模様が賦形される前の透明樹脂フィルムの光沢度と加圧ロールの光沢度の差を±10以内とし、かつ加圧ロールを冷却することを特徴とするエンボス加飾シートの製造方法。
- 前記加圧ロールの温度が110℃以下である請求項1に記載のエンボス加飾シートの製造方法。
- 前記加圧ロールが金属ロール又はゴムロールである請求項1又は2に記載のエンボス加飾シートの製造方法。
- 前記ゴムロールがカーボン含有EPTゴムからなる請求項3に記載のエンボス加飾シートの製造方法。
- 加飾シートの加熱温度が150℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載のエンボス加飾シートの製造方法。
- 前記透明樹脂フィルムがアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム又はポリエステル樹脂フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載のエンボス加飾シートの製造方法。
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