以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置、医用情報処理装置、及び医用情報処理プログラムを説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用可能である。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力インタフェース102と、ディスプレイ103とを有する。超音波プローブ101、入力インタフェース102、及びディスプレイ103は、装置本体100に接続される。なお、被検体Pは、超音波診断装置1の構成に含まれない。
超音波プローブ101は、複数の振動子(例えば、圧電振動子)を有し、これら複数の振動子は、後述する装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101が有する複数の振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、振動子に設けられる整合層と、振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号(エコー信号)として超音波プローブ101が有する複数の振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
なお、実施形態は、図1に示す超音波プローブ101が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
入力インタフェース102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力インタフェース102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置であり、図1に示すように、送受信回路110と、信号処理回路120と、画像生成回路130と、画像メモリ140と、記憶回路150と、処理回路160とを有する。送受信回路110、信号処理回路120、画像生成回路130、画像メモリ140、記憶回路150、及び処理回路160は、相互に通信可能に接続される。
送受信回路110は、超音波プローブ101を制御することで、超音波走査(超音波スキャン)を実行する。送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路110は、後述する処理回路160の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信回路110は、被検体Pの2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信回路110は、被検体Pの3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。信号処理回路120により生成されたBモードデータは、画像生成回路130に出力される。なお、Bモードデータは、スキャンデータの一例である。
また、信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、信号処理回路120は、反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。信号処理回路120により得られた運動情報(血流情報)は、画像生成回路130に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、若しくはこれらの組み合わせ画像としてディスプレイ103にカラー表示される。なお、ドプラデータは、スキャンデータの一例である。
画像生成回路130は、信号処理回路120により生成されたデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路130は、信号処理回路120が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度で表したBモード画像データを生成する。また、画像生成回路130は、信号処理回路120が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
ここで、画像生成回路130は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路130は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路130は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成回路130は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路130が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、画像生成回路130は、信号処理回路120が3次元のスキャンデータ(3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータ)を生成した場合、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、ボリュームデータを生成する。そして、画像生成回路130は、ボリュームデータに対して、各種レンダリング処理を行って、表示用の2次元画像データを生成する。なお、ボリュームデータは、超音波画像データの一例である。
画像メモリ140は、画像生成回路130が生成した表示用の画像データ(表示用画像)を記憶するメモリである。また、画像メモリ140は、信号処理回路120が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ140が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路130を経由して表示用の超音波画像データとなる。
記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路150は、必要に応じて、画像メモリ140が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、記憶回路150が記憶するデータは、図示しないインタフェースを介して、外部装置へ転送することができる。
処理回路160は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路160は、入力インタフェース102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路120、及び画像生成回路130の処理を制御する。また、処理回路160は、画像メモリ140が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
また、処理回路160は、図1に示すように、検出機能161と、画像処理機能162と、出力制御機能163とを実行する。検出機能161は、検出部の一例である。画像処理機能162は、画像処理部の一例である。出力制御機能163は出力制御部の一例である。
ここで、例えば、図1に示す処理回路160の構成要素である検出機能161と、画像処理機能162と、出力制御機能163とが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路150)に記録されている。処理回路160は、各プログラムを記憶装置から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路160は、図1の処理回路160内に示された各機能を有することとなる。なお、検出機能161、画像処理機能162、及び出力制御機能163が実行する各処理機能については、後述する。
上記説明において用いた「プロセッサ(回路)」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
ここで、超音波診断装置1は、ボリュームデータのうち任意の輝度値(又は輝度値の範囲)を有する画素のみを用いて表示用画像を作成する画像処理を実行可能である。例えば、超音波診断装置1は、骨や血管などの対象物に対応する輝度値が操作者により設定されると、その対象物が描出された表示用画像を作成する。
しかしながら、上記の画像処理では、明瞭な画像が得られないことがある。例えば、ボリュームデータの中に、設定された輝度値に近い輝度値を有する別の対象物が存在する場合には、その別の対象物も描出されてしまう結果、明瞭な画像が得られないことがある。具体的には、骨の周辺に存在する筋組織にも、骨の輝度値に近い輝度値を有するものが存在する場合がある。この場合、骨を観察するために骨の輝度値を設定したとしても、骨とともに周辺の筋組織も描出されてしまう結果、骨の明瞭な画像が得られないことがある。
そこで、実施形態に係る超音波診断装置1は、明瞭な画像を提供するために、以下に説明する処理機能を備える。すなわち、超音波診断装置1は、対象物に対応する信号強度を有する位置を超音波データの深部から浅部に向かって探索することで、対象物の境界を検出する。超音波診断装置1は、対象物の境界に基づいて、超音波データに対する画像処理を実行する。
なお、本実施形態において、「超音波データ」は、「超音波画像データ」と「スキャンデータ」とを包含する概念である。また、超音波データの「位置」は、超音波画像データにおける「画素」と、スキャンデータにおける「サンプル点」とを包含する概念である。また、「信号強度」は、超音波画像データの各画素における「輝度値(画素値)」と、スキャンデータの各サンプル点における「信号値」とを包含する概念である。
なお、以下の説明では、指骨の観察が行われる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、観察の対象物は、指骨に限らず、上腕骨、胸骨、頭蓋骨など、人体における他の骨であっても良い。また、観察の対象物は、人工関節や金属ステントなど、体内に留置(或いは一時的に挿入)された金属であっても良い。すなわち、対象物は、骨及び金属のうち少なくとも一方である。
また、以下の説明では、超音波診断装置1が、対象物のボリュームデータ(3次元超音波画像データ)を用いて対象物を明瞭に描出するための処理を実行する場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、2次元のBモード画像データに対しても、以下の処理と同様の処理を実行することで、対象物を明瞭に描出することが可能である。
図2を用いて、実施形態に係る超音波診断装置1における処理手順を説明する。図2は、実施形態に係る超音波診断装置1における処理手順を示すフローチャートである。図2に示す処理手順は、例えば、超音波スキャンを開始する旨の指示が操作者によって入力されることにより開始される。
図2に示すように、超音波診断装置1は、超音波スキャンを開始する旨の指示が操作者によって入力された場合に(ステップS101肯定)、ステップS102以降の処理を開始する。なお、超音波スキャンを開始する旨の指示が入力されるまで(ステップS101否定)、ステップS102以降の処理は開始されず、図2の処理は待機状態である。
超音波スキャンが開始される旨の指示が入力されると、送受信回路110は、超音波スキャンを実行する(ステップS102)。例えば、送受信回路110は、超音波プローブ101を制御することで、被検体Pの指骨を含む3次元領域に対して超音波を送信させる。また、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って3次元の反射波データを生成する。
続いて、信号処理回路120は、スキャンデータを生成する(ステップS103)。例えば、信号処理回路120は、送受信回路110によって生成された3次元の反射波データから、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現された3次元のBモードデータを生成する。
そして、画像生成回路130は、ボリュームデータを生成する(ステップS104)。例えば、画像生成回路130は、信号処理回路120によって生成された3次元のBモードデータに対して座標変換(スキャンコンバート)を行うことで、ボリュームデータを生成する。
そして、検出機能161は、対象物に対応する輝度値を有する画素を、深部から浅部に向かって探索する(ステップS105)。例えば、検出機能161は、指骨に対応する輝度値を有する画素を、ボリュームデータの深部から浅部に向かって探索する。すなわち、検出機能161は、指骨に対応する輝度値を有する画素を振動子(超音波プローブ101)が当てられた体表に近づく方向に向かって探索する。
図3を用いて、検出機能161の処理を説明する。図3は、実施形態に係る検出機能161の処理を説明するための図である。図3の上段には、指骨を含む領域のボリュームデータに含まれる任意の断面像I10を示す。断面像I10において、縦方向は深さ方向に対応し、横方向は方位方向に対応する。また、断面像I10において、最浅部は体表面に対応する。また、図3の中段及び下段には、断面像I10に対する検出機能161の処理の遷移を示す。
なお、図3では、図示の都合上、断面像I10を用いて説明するが、ボリュームデータについても同様の処理が実行可能である。例えば、ボリュームデータを複数の断面像の重なりに見立て、各断面像に対して図3の処理を実行することで、ボリュームデータに対する処理が実行可能である。
図3の上段に示すように、検出機能161は、指骨に対応する輝度値を有する画素を、深部から浅部に向かって探索する(S10)。このとき、検出機能161は、ボリュームデータに含まれる複数のスキャンラインそれぞれについて画素の探索を行う。
なお、ボリュームデータは、スキャンデータがスキャンコンバートによって座標変換されたものであるので、ボリュームデータの深さ方向がスキャンラインと一致するとは限らない。しかしながら、スキャンコンバート前後の座標の対応関係を用いることで、ボリュームデータにおいてスキャンラインに相当するライン状の画素群を特定することが可能である。このため、検出機能161は、このライン上の画素群について、深部から浅部に向かって画素の探索を行うのが好適である。ただし、検出機能161は、処理の簡易化のため、ボリュームデータの深さ方向(つまり、単純な上下方向)において深部から浅部に向かって画素の探索を行っても良い。
また、検出機能161は、ボリュームデータに含まれる全てのスキャンラインについて探索を行わなくても良い。検出機能161は、ボリュームデータに含まれる全てのスキャンラインのうち任意のスキャンラインを選択し(間引き)、選択したスキャンラインについて探索を行っても良い。
そして、検出機能161は、最初に探索された画素の位置に基づいて、対象物の境界を検出する(ステップS106)。例えば、検出機能161は、図3の上段に示すように、ボリュームデータに含まれる複数のスキャンラインそれぞれについて画素の探索を行い、最初に探索された画素の位置を結ぶ線を境界B10として特定する。
そして、検出機能161は、図3の中段に示すように、最初に検出された画素の位置(境界B10)にオフセットを加える(S11)。ここで、オフセットは、操作者によって任意に設定・変更される値であり、例えば、対象物の種類に応じて決定されるのが好適である。オフセットは、通常、正の値であるが、0(ゼロ)であっても良いし、負の値であっても良い。オフセットが負の値である場合には、オフセットの加算によって検出位置が深い方へ移動することとなる。
そして、検出機能161は、図3の下段に示すように、境界B10にオフセットを加えた位置(境界B20)を、指骨の境界として検出する(S12)。このように、検出機能161は、対象物の境界を検出する。
なお、図3にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図3では、全てのスキャンラインに対する探索を行った後に、全ての探索位置に対してオフセットを加算することで、対象物の境界を検出するものと説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検出機能161は、各スキャンラインに対する探索を行うごとに、探索位置に対してオフセットを加算することで、対象物の境界位置を順次検出していくことも可能である。
また、図3では、図示の都合上、対象物の境界を「線」で描出したが、ボリュームデータから検出される対象物の境界は「面(平面又は曲面)」である。
そして、検出機能161は、対象物の境界に対して平滑化フィルタをかける(ステップS107)。例えば、検出機能161は、対象物の境界B20に対して任意の強さのガウシアンフィルタをかける。これにより、外れ値(探索の誤検出など)による境界のがたつきを抑えることができる。なお、検出機能161は、ガウシアンフィルタに限らず、例えば移動平均フィルタなどの任意の平滑化フィルタを利用可能である。
そして、画像処理機能162は、ボリュームデータのうち、対象物以外の領域のデータを削除する(ステップS108)。図3に示す例では、指骨の領域は、境界B20より深部の領域に対応する。そこで、画像処理機能162は、指骨以外の領域のデータとして、境界B20より浅部にあるデータを削除する。
そして、画像処理機能162は、データ削除後のボリュームデータに基づいて、表示用画像データを生成する(ステップS109)。例えば、画像処理機能162は、境界B20より浅部にあるデータが削除されたボリュームデータを用いて、指骨に対応する輝度値を有する画素のみを描出した表示用画像データを生成する。
図4を用いて、画像処理機能162の処理を説明する。図4は、実施形態に係る表示用画像の一例を示す図である。図4には、指骨を含む3次元領域が撮像されたボリュームデータから生成された表示用画像I20を例示する。表示用画像I20は、指骨の表面付近の様子を指骨の内側から見た画像に相当する。なお、表示用画像I20における視点位置(視線方向)は、任意に変更可能である。
図4に示すように、画像処理機能162は、境界B20より浅部にあるデータが削除されたボリュームデータのうち、指骨に対応する輝度値を有する画素を特定する。「指骨に対応する輝度値」とは、ある一つの値でも良いし、ある値を含む範囲であっても良い。そして、画像処理機能162は、特定した画素が有する輝度値に応じた色をマッピングすることで、3次元の表示用画像データを生成する。そして、画像処理機能162は、生成した3次元の表示用画像データを、任意の視点位置から見た平面画像に変換することで、ディスプレイ103に表示するための表示用画像I20を生成する。
ここで、骨は、人体の他の組織と比較して音響インピーダンスが高いため、超音波をほとんど透過せず、高度に反射する高反射体である。このため、指骨を含む3次元領域が撮像されたボリュームデータは、指骨の表面が高輝度に描出されている。このため、表示用画像I20には、指骨の表面の様子が描出される。
そして、出力制御機能163は、表示用画像データをディスプレイ103に表示させる(ステップS110)。例えば、出力制御機能163は、画像処理機能162によって生成された表示用画像I20をディスプレイ103に表示させる。
なお、出力制御機能163による表示用画像データの出力先は、ディスプレイ103に限定されるものではない。例えば、出力制御機能163は、任意の通信用ネットワークを介して接続される外部装置に表示用画像データを送信しても良い。また、出力制御機能163は、画像メモリ140、記憶回路150、又は、可搬性の記録媒体に表示用画像データを格納しても良い。
このように、超音波診断装置1は、超音波スキャンを開始する旨の指示の入力に応じて、図2の処理を実行する。なお、図2に示した処理手順はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、平滑化フィルタをかける処理(ステップS107の処理)は、必ずしも実行されなくても良い。また、図2に示した処理手順は、処理内容に矛盾が生じない範囲で任意に変更可能である。
上述してきたように、実施形態に係る超音波診断装置1において、検出機能161は、対象物に対応する信号強度を有する位置を超音波データの深部から浅部に向かって探索することで、対象物の境界を検出する。また、画像処理機能162は、対象物の境界に基づいて、超音波データに対する画像処理を実行する。これによれば、超音波診断装置1は、明瞭な画像を提供することができる。
例えば、指骨を含む3次元領域が撮像されたボリュームデータには、指骨の周辺に存在する筋組織も含まれる。また、この筋組織の中には、指骨の輝度値に近い輝度値を有するもの含まれる。このため、本実施形態に係る処理が適用されない場合には、図5の表示用画像I30に示すように、指骨とともに、指骨周辺の筋組織も描出される結果、指骨を明瞭に描出できない。なお、図5は、比較例に係る表示用画像I30の一例を示す図である。
これに対し、実施形態に係る超音波診断装置1は、指骨の境界を検出し、検出した境界より浅部にあるデータを削除する。これにより、超音波診断装置1は、筋組織を含め、指骨の表面より浅部にある組織のデータを削除した上で、表示用画像データを生成する。このため、超音波診断装置1は、対象物である指骨を明瞭に描出することができる。なお、図4の表示用画像I20が図5の表示用画像I30より明瞭であることを表現するため、表示用画像I20は、表示用画像I30と比較して多くのハッチングパターンを用いて図示している。
なお、上記の実施形態では、対象物以外の領域のデータを削除することで、対象物を明瞭に描出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、画像処理機能162は、対象物以外の領域のデータを減弱したり、対象物の領域のデータを強調したりしても良い。つまり、画像処理機能162は、画像処理として、ボリュームデータのうち対象物の領域を対象物以外の領域に対して強調する処理を実行すれば良い。
また、実施形態に係る超音波診断装置1は、対象物の領域のデータを削除しても良い。例えば、金属製の人工関節がインプラントされた被検体において、人工関節の周辺組織を観察する場合には、高反射体である人工関節が高輝度に描出されて周辺組織を明瞭に描出できない場合が考えられる。この場合、超音波診断装置1は、対象物である人工関節の境界を検出し、人工関節の領域のデータを削除した上で、表示用画像データを生成する。これにより、超音波診断装置1は、人工関節の周辺組織が明瞭に描出された画像を提供することができる。
なお、超音波診断装置1は、対象物の領域のデータを削除することに代えて、対象物の領域のデータを減弱したり、対象物以外の領域のデータを強調したりしても良い。つまり、画像処理機能162は、画像処理として、ボリュームデータのうち対象物以外の領域を対象物の領域に対して強調する処理を実行すれば良い。
(変形例1)
上記の実施形態では、スキャンコンバート前のデータである「ボリュームデータ」を処理対象とする場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、スキャンコンバート前のデータである「スキャンデータ」を処理対象としても良い。
すなわち、超音波診断装置1において、検出機能161は、超音波データとして、スキャンデータの深部から浅部に向かって探索することで、対象物の境界を検出する。そして、画像処理機能162は、スキャンデータから生成される超音波画像データに対して、画像処理を実行する。これにより、変形例1に係る超音波診断装置1は、明瞭な画像を提供することができる。
なお、変形例1において、画像処理機能162は、スキャンデータに対して画像処理を実行することも可能である。例えば、画像処理機能162は、スキャンデータのうち、対象物以外の領域のデータを削除する。そして、画像処理機能162は、データ削除後のスキャンデータに対してスキャンコンバートを行うことで、対象物以外の領域のデータが削除されたボリュームデータを生成する。ここで生成されたボリュームデータは、上記のステップS108により生成されたボリュームデータに相当するので、以後の処理を同様に行うことができる。
(変形例2)
また、上記の実施形態では、オフセットが操作者によって設定される場合を説明したが、自動的に設定することも可能である。
例えば、検出機能161は、対象物の種類に基づいて、オフセットの大きさを決定する。そして、検出機能161は、決定したオフセットを最初に検出された画素の位置に加えた位置を、対象物の境界として検出する。
図6を用いて、変形例2に係る検出機能161の処理を説明する。図6は、変形例2に係る検出機能161の処理を説明するための図である。図6には、オフセットを決定するためのオフセット決定テーブルを例示する。
図6に示すように、オフセット決定テーブルは、「対象物の種類」と、「オフセットの大きさ」とが対応付けられた情報である。「対象物の種類」は、指骨、胸骨、金属ステントなど、本実施形態の対象物となり得る高反射体である。また、「オフセットの大きさ」は、対象物の種類に応じて予め登録されたオフセットの大きさ(距離)である。オフセット決定テーブルは、例えば、記憶回路150に予め記憶されている。
検出機能161は、例えば、対象物の種類を指定する旨の指示を操作者から受け付ける。そして、検出機能161は、オフセット決定テーブルを参照し、操作者から指定された対象物の種類に対応するオフセットの大きさを読み出す。そして、検出機能161は、読み出した大きさのオフセットを用いて、対象物の境界を検出する。具体的には、検出機能161は、読み出した大きさのオフセットを、最初に探索された画素の位置に加えることで、対象物の境界を検出する。
なお、図6にて説明した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、対象物の種類としては、他の人体の骨が登録されても良いし、金属の素材などが登録されても良い。また、対象物の種類は、必ずしも操作者によって指定されなくても良い。例えば、対象物の種類は、患者の電子カルテに登録された疾患名等に基づいて自動的に指定することも可能である。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(医用情報処理装置)
また、例えば、上述した実施形態に係る処理機能は、医用情報処理装置に備えることも可能である。
図7は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示す図である。図7に示すように、例えば、医用情報処理装置200は、入力インタフェース210、ディスプレイ220、NWインタフェース230、記憶回路240、及び処理回路250を有する。
入力インタフェース210は、操作者から各種の指示及び情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース210は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路250に出力する。例えば、入力インタフェース210は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、入力インタフェース21は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース210の例に含まれる。
ディスプレイ220は、各種の情報及び画像を表示する。具体的には、ディスプレイ220は、処理回路250から送られる情報及び画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ220は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。なお、医用情報処理装置200が備える出力装置としては、ディスプレイ220に限らず、例えば、スピーカーを備えていても良い。例えば、スピーカーは、医用情報処理装置200の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音などの所定の音声を出力する。
NWインタフェース230は、処理回路250に接続されており、医用情報処理装置200と外部装置との間で行われる通信を制御する。具体的には、NWインタフェース230は、ネットワークを介して外部装置から各種の情報を受信し、受信した情報を処理回路25に出力する。例えば、NWインタフェース230は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC等によって実現される。
記憶回路240は、処理回路250に接続されており、各種のデータを記憶する。例えば、記憶回路240は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路250は、入力インタフェース210を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置200の動作を制御する。例えば、処理回路250は、プロセッサによって実現される。
処理回路250は、検出機能251、画像処理機能252、及び出力制御機能253を実行する。処理回路250が実行する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路240内に記録されている。処理回路250は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能を実現する。
例えば、医用情報処理装置200は、超音波診断装置によって生成された超音波データを受信し、受信した超音波データを記憶回路240に記憶している。そして、医用情報処理装置200は、操作者からの要求に応じて、記憶回路240から超音波データを読み出して、検出機能251、画像処理機能252、及び出力制御機能253の各処理機能を実行する。ここで、検出機能251、画像処理機能252、及び出力制御機能253の各処理機能は、図1に示した検出機能161、画像処理機能162、及び出力制御機能163の各処理機能と同様であるので、説明を省略する。これにより、医用情報処理装置200は、明瞭な画像を提供することができる。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図1に示した検出機能161及び画像処理機能162は、画像生成回路130が実行することとしても良い。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また上記の実施形態及び変形例で説明した医用情報処理方法は、予め用意された医用情報処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用情報処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
なお、上記の実施形態に記載した「画像データ」という用語と「画像」という用語は、厳密には異なるものである。つまり、「画像データ」とは、各画素位置と、各画素位置の輝度値とが対応付けられたものである。また、「画像」とは、各画素位置の輝度値に応じた色が各画素位置にマッピングされてディスプレイなどの表示装置に表示されたものである。しかしながら、一般的な画像処理技術は、「画像データ」及び「画像」の両者に影響するものが多く、いずれか一方にのみ影響するものは多くない。このため、特に言及する場合を除き、「画像データ」及び「画像」は厳密に区別されることなく表記される場合がある。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば明瞭な画像を提供することができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。