JP7326048B2 - 酸化珪素膜用研磨液組成物 - Google Patents

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Description

本開示は、酸化セリウム粒子を含有する酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び基板の研磨方法に関する。
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)技術とは、加工しようとする被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で研磨液をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面凹凸部分を化学的に反応させると共に機械的に除去して平坦化させる技術である。
現在では、半導体素子の製造工程における、層間絶縁膜の平坦化、シャロートレンチ素子分離構造(以下「素子分離構造」ともいう)の形成、プラグ及び埋め込み金属配線の形成等を行う際には、このCMP技術が必須の技術となっている。近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、半導体素子の歩留まり及びスループット(収量)の更なる向上が要求されるようになってきている。それに伴い、CMP工程に関しても、研磨傷フリーで且つより高速な研磨が望まれるようになってきている。例えば、シャロートレンチ素子分離構造の形成工程では、高研磨速度と共に、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)に対する研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨選択性(換言すると、研磨ストッパ膜の方が被研磨膜よりも研磨されにくいという研磨の選択性)の向上が望まれている。
例えば、特許文献1には、湿式セリア粒子、官能化ヘテロ環、pH調節剤、及び水性単体を含み、pH約1~6のCMP用研磨液組成物が提案されている。そして、該研磨液組成物には、ピコリン酸N-オキシド等の添加剤を添加してもよいことが記載されている(同文献の段落[0064]、実施例5)。
特許文献2には、アミノ化合物、ラジカル発生型酸化剤、ラジカル補足剤、及び水性キャリヤを含むCMP用研磨液組成物が提案されている。ラジカル補足剤の一例として、2-ヒドロキシピリジン等のヒドロキシル置換複素環式芳香族化合物や、1-(2-ヒドロキシメチル)ピペラジン-N-オキシド等のN-オキシド化合物が挙げられている(同文献の請求項2、段落[0032]、[0034]等)。
一方で、ガラスハードディスク基板の研磨工程において、キノリン構造を有する化合物を含む研磨液組成物を用いることが提案されている(例えば、特許文献3)。
特表2018-512475号公報 特開2015-195391号公報 特開2016-122487号公報
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められている。そのため、CMP研磨では、砥粒の粒径を小さくすることで欠陥の低減を図っているが、この場合研磨速度が低下する問題があり、酸化珪素膜の研磨速度の向上が要求されている。
そこで、本開示は、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び基板の研磨方法を提供する。
本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、添加剤(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bは、成分Bの10ppm水溶液をサイクリックボルタンメトリー(Ag/AgCl電極基準)で測定したときの還元電位が0.45V以上となる化合物である、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
本開示は、その他の態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、添加剤(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bは、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物もしくはその塩(成分B1)、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物もしくはその塩(成分B2)、及び、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物もしくはその塩(成分B3)から選ばれる少なくとも1種である、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法に関する。
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法に関する。
本開示によれば、一態様において、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物を提供できる。
本開示は、一態様において、酸化セリウム(以下、「セリア」ともいう)粒子を砥粒として含む研磨液組成物に、還元電位が0.45V以上となる化合物を含有させることで、酸化珪素膜の研磨速度の向上が可能となるという知見に基づく。
すなわち、本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、添加剤(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bは、成分Bの10ppm水溶液をサイクリックボルタンメトリー(Ag/AgCl電極基準)で測定したときの還元電位が0.45V以上となる化合物である、酸化珪素膜用研磨液組成物(以下、「本態様1の研磨液組成物」ともいう)に関する。本態様1の研磨液組成物によれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる。
本態様1の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
酸化珪素膜の研磨には、一般的に、セリア粒子が使用されている。通常、セリア粒子中のセリウムは4価であり、まれに酸素(O)が脱落して3価になる。セリア粒子中の3価のセリウムは、酸化珪素膜のSi-O結合を弱めて、酸化珪素膜が脆弱化し、研磨を促進させると考えられる。
本態様1では、セリア粒子と還元電位が所定値以上となる化合物である添加剤(成分B)とを併用することで、成分Bがセリア粒子の表面に存在している4価のセリウムを3価に還元し、セリア粒子中に存在する3価のセリウムの割合が多くなることから、酸化珪素膜のSi-O結合への作用が促進されて酸化珪素膜の脆弱化が進み、研磨速度が向上すると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示は、その他の態様において、酸化セリウム(セリア)粒子を砥粒として含む研磨液組成物において、特定のN-オキシド化合物又は特定の含窒素複素芳香環化合物が含まれていると、酸化珪素膜の研磨に用いた場合に研磨速度の向上が可能となるという知見に基づく。
すなわち、本開示は、その他の態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、添加剤(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bは、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物もしくはその塩(成分B1)、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物もしくはその塩(成分B2)、及び、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物もしくはその塩(成分B3)から選ばれる少なくとも1種である、酸化珪素膜用研磨液組成物(以下、「本態様2の研磨液組成物」ともいう)に関する。本態様2の研磨液組成物によれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上できる。
本態様2の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
酸化珪素膜の研磨には、一般的に、セリア粒子が使用されている。通常、セリア粒子中のセリウムは4価であり、まれに酸素(O)が脱落して3価になる。セリア粒子中の3価のセリウムは、酸化珪素膜のSi-O結合を弱めて、酸化珪素膜が脆弱化し、研磨を促進させると考えられる。
本態様2では、セリア粒子と特定のN-オキシド化合物又は特定の含窒素複素芳香環化合物(成分B)とを併用することで、成分Bのヒドロキシル基又はチオール基がセリア粒子の表面に存在している4価のセリウムを3価に還元し、セリア粒子中に存在する3価のセリウムの割合が多くなることから、酸化珪素膜のSi-O結合への作用が促進されて酸化珪素膜の脆弱化が進み、研磨速度が向上すると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
[酸化セリウム(セリア)粒子(成分A)]
本開示の研磨液組成物は、研磨砥粒としてセリア粒子(以下、単に「成分A」ともいう)を含有する。成分Aは、1種類でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
成分Aの製造方法、形状、及び表面状態については特に限定されなくてもよい。成分Aとしては、例えば、コロイダルセリア、不定形セリア、セリアコートシリカ等が挙げられる。
コロイダルセリアは、例えば、特表2010-505735号公報の実施例1~4に記載の方法で、ビルドアッププロセスにより得ることができる。
不定形セリアとしては、例えば、粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアの一実施形態としては、例えば、炭酸セリウムや硝酸セリウムなどのセリウム化合物を焼成、粉砕して得られる焼成粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアのその他の実施形態としては、例えば、無機酸や有機酸の存在下でセリア粒子を湿式粉砕することにより得られる単結晶粉砕セリアが挙げられる。湿式粉砕時に使用される無機酸としては、例えば硝酸が挙げられ、有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する有機酸が挙げられ、具体的には、ピコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。湿式粉砕方法としては、例えば、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が挙げられる。
セリアコートシリカとしては、例えば、特開2015-63451号公報の実施例1~14もしくは特開2013-119131号公報の実施例1~4に記載の方法で、シリカ粒子表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆された構造を有する複合粒子が挙げられ、該複合粒子は、例えば、シリカ粒子にセリアを沈着させることで得ることができる。
成分Aの形状としては、例えば、略球状、多面体状、ラズベリー状が挙げられる。
成分Aの平均一次粒子径は、研磨速度向上の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、研磨傷発生の抑制の観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの平均一次粒子径は、5nm以上300nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、20nm以上150nm以下が更に好ましい。本開示において成分Aの平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出されるBET比表面積S(m2/g)を用いて算出される。BET比表面積は、実施例に記載の方法により測定できる。
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量は、成分A、成分B及び水の合計含有量を100質量%とすると、研磨速度向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.07質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、6質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.7質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Aの含有量は、0.001質量%以上6質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.07質量%以上0.7質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下が更に好ましい。成分Aが2種以上のセリア粒子の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
[添加剤(成分B)]
本開示の研磨液組成物に含まれる添加剤(以下、単に「成分B」ともいう)は、一又は複数の実施形態において、成分Bの10ppm水溶液をサイクリックボルタンメトリー(Ag/AgCl電極基準)で測定したときの還元電位が0.45V以上となる化合物である。前記還元電位は、研磨速度向上の観点から、0.45V以上であって、0.50V以上が好ましく、0.55V以上がより好ましく、そして、0.95V以下が好ましく、0.90V以下がより好ましい。還元電位は、実施例に記載の方法により測定できる。
成分Bは、一又は複数の実施形態において、研磨速度向上の観点から、成分Bの10ppm水溶液をサイクリックボルタンメトリー(Ag/AgCl電極基準)で測定したときに酸化電位が検出されないことが好ましい。本開示において、「酸化電位が検出されない」とは、成分Bの10ppm水溶液をALS電気化学アナライザー(モデル611D)で自動測定した場合に酸化電位が検出されない状態をいう。具体的には、実施例に記載の方法により酸化電位が測定されない状態をいう。
成分Bは、一又は複数の実施形態において、研磨速度向上の観点から、複素芳香環骨格を含む還元性化合物であることが好ましい。成分Bとしては、例えば、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩(以下、「成分B1」ともいう)、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩(以下、「成分B2」ともいう)、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物又はその塩(以下、「成分B3」ともいう)等が挙げられる。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
<N-オキシド化合物(成分B1)>
本開示の研磨液組成物に含まれる成分Bは、一態様において、含窒素複素芳香環の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩(成分B1)である。上記の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。成分B1は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
よって、本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、N-オキシド化合物(成分B1)と、水系媒体とを含有し、成分B1は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩である、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
本態様において、N-オキシド化合物とは、一又は複数の実施形態において、N-オキシド基(N→O基)を有する化合物を示す。N-オキシド化合物は、N→O基を1又は2以上有することができ、入手容易性の点からは、N→O基の数は1つが好ましい。
本態様において、「少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格」とは、含窒素複素芳香環の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された構造を示す。
本態様において、成分B1の含窒素複素芳香環骨格に含まれる少なくとも1つの窒素原子がN-オキシドを形成する。成分B1に含まれる含窒素複素芳香環としては、一又は複数の実施形態において、単環又は2環の縮合環が挙げられる。成分B1に含まれる含窒素複素芳香環の窒素原子数としては、一又は複数の実施形態において、1~3個が挙げられ、研磨速度向上の観点から、1又は2個が好ましく、1個がより好ましい。
成分B1に含まれる含窒素複素芳香環骨格としては、一又は複数の実施形態において、ピリジンN-オキシド骨格、キノリンN-オキシド骨格等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本開示において、ピリジンN-オキシド骨格とは、ピリジン環に含まれる窒素原子がN-オキシドを形成している構成を示す。キノリンN-オキシドと骨格は、キノリン環に含まれる窒素原子がN-オキシドを形成している構成を示す。
成分B1としては、一又は複数の実施形態において、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基で置換されたピリジン環を有するN-オキシド化合物、キノリン環の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基で置換されたキノリン環を有するN-オキシド化合物、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、研磨速度向上の観点から、成分Bとしては、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基で置換されたピリジン環を有するN-オキシド化合物又はその塩が好ましい。
成分B1の具体例としては、2-ヒドロキシピリジンN-オキシド等が挙げられる。
<N-オキシド化合物(成分B2)>
本開示の研磨液組成物に含まれる成分Bは、その他の態様において、含窒素複素芳香環骨格の少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩(成分B2)である。上記の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、有機アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。成分B2は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
よって、本開示は、その他の態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、N-オキシド化合物(成分B2)と、水系媒体とを含有し、成分B2は、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩である、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
本態様において、N-オキシド化合物とは、一又は複数の実施形態において、N-オキシド基(N→O基)を有する化合物を示す。N-オキシド化合物は、N→O基を1又は2以上有することができ、入手容易性の点からは、N→O基の数は1つが好ましい。
本態様において、「少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格」は、含窒素複素芳香環の少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された構造を示す。
本態様において、成分B2の含窒素複素芳香環骨格に含まれる少なくとも1つの窒素原子がN-オキシドを形成する。成分B2に含まれる含窒素複素芳香環としては、一又は複数の実施形態において、単環又は2環の縮合環が挙げられる。成分B2に含まれる含窒素複素芳香環の窒素原子数としては、一又は複数の実施形態において、1~3個が挙げられ、研磨速度向上の観点から、1又は2個が好ましく、1個がより好ましい。
成分B2に含まれる含窒素複素芳香環骨格としては、一又は複数の実施形態において、ピリジンN-オキシド骨格、キノリンN-オキシド骨格等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本開示において、ピリジンN-オキシド骨格とは、ピリジン環に含まれる窒素原子がN-オキシドを形成している構成を示す。キノリンN-オキシドと骨格は、キノリン環に含まれる窒素原子がN-オキシドを形成している構成を示す。
成分B2としては、一又は複数の実施形態において、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子がチオール基(-SH)で置換されたピリジン環を有するN-オキシド化合物、キノリン環の少なくとも1つの水素原子がチオール基(-SH)で置換されたキノリン環を有するN-オキシド化合物、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、研磨速度向上の観点から、成分B2としては、ピリジン環の少なくとも1つの水素原子がチオール基(-SH)で置換されたピリジン環を有するN-オキシド化合物又はその塩が好ましい。
成分B2の具体例としては、2-メルカプトピリジンN-オキシド等が挙げられる。
<含窒素複素芳香環化合物(成分B3)>
本開示の研磨液組成物に含まれる成分Bは、その他の態様において、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物又はその塩(成分B3)である。上記の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、エタノールアミン塩等の有機アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。成分B3は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
よって、本開示は、その他の態様において、研磨砥粒(成分A)と、含窒素複素芳香環化合物(成分B3)と、水系媒体とを含有し、成分B3は、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物又はその塩である、研磨液組成物に関する。
本態様において、成分B3に含まれる含窒素複素芳香環としては、一又は複数の実施形態において、単環又は2環の縮合環が挙げられる。成分B3に含まれる含窒素複素芳香環の窒素原子数としては、一又は複数の実施形態において、1~3個が挙げられ、研磨速度向上の観点から、1又は2個が好ましく、1個がより好ましい。成分B3に含まれる含窒素複素芳香環骨格は、研磨速度向上の観点から、ヒドロキシル基が含窒素複素芳香環の窒素原子の置換基であり、含窒素複素芳香環に少なくとも1つのカルボニル基を有することが好ましい。
成分B3に含まれる含窒素複素芳香環骨格としては、一又は複数の実施形態において、1-ヒドロキシピリジン骨格、1-ヒドロキシキノリン骨格等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本開示において、1-ヒドロキシピリジン骨格とは、ピリジン環に含まれる窒素原子にヒドロキシル基を有する構成を示す。1-ヒドロキシキノリン骨格とは、キノリン環に含まれる窒素原子にヒドロキシル基を有する構成を示す。
成分B3としては、一又は複数の実施形態において、ヒドロキシル基がピリジン環の窒素原子の置換基である化合物、ヒドロキシル基がキノリン環の窒素原子の置換基である化合物、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、研磨速度向上の観点から、成分B3としては、含窒素複素芳香環に少なくとも1つのカルボニル基を有する化合物又はその塩が好ましい。
成分B3は、一又は複数の実施形態において、下記式(I)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
Figure 0007326048000001
上記式(I)中、R1は、水素原子又は炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、研磨速度向上の観点から、炭素数1以上10以下の炭化水素基が好ましい。R1の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの形態でもよい。R1の炭素数は、研磨速度向上の観点から、1以上10以下であって、3以上10以下が好ましく、4以上8以下がより好ましく、5以上7以下が更に好ましい。R1としては、研磨速度向上の観点から、炭素数3以上10以下の環状又は分岐鎖状の炭化水素基が好ましく、具体例としては、シクロヘキシル基又は2、4、4-トリメチルペンチル基が挙げられる。
上記式(I)中、R2は、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、研磨速度向上の観点から、炭素数1以上3以下の炭化水素基が好ましく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
上記式(I)で表される化合物としては、研磨速度向上の観点から、式(I)中のR1が炭素数3以上10以下の環状又は分岐鎖状の炭化水素基であり、R2がメチル基である化合物が好ましく、式(I)中のR1がシクロヘキシル基又は2,4,4-トリメチルペンチル基であり、R2がメチル基である化合物がより好ましく、式(I)中のR1がシクロヘキシル基であり、R2がメチル基である化合物が更に好ましい。
成分B3としては、例えば、シクロピロクス、ピロクトン、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分B3の具体例としては、シクロピロクスオラミン(6-シクロヘキシル-1-ヒドロキシ-4-メチル-2(1H)-ピリドンエタノールアミン塩)、ピロクトンオラミン(1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリドンエタノールアミン塩)等が挙げられる。
本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、一又は複数の実施形態において、成分A、成分B、及び水系媒体の合計含有量を100質量%とすると、研磨速度向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.06質量%以下が更に好ましい。より具体的には、成分Bの含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以上0.06質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、その他の一又は複数の実施形態において、成分A、成分B、及び水系媒体の合計含有量を100質量%とすると、研磨速度向上の観点から、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上が更に好ましく、0.01質量%以上がより更に好ましく、そして、同様の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.06質量%以下がより更に好ましい。より具体的には、成分Bの含有量は、0.0001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.006質量%以上0.1質量%以下が更に好ましく、0.01質量%以上0.06質量%以下がより更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
本開示の研磨液組成物中における成分Aと成分Bとの質量比A/B(成分Aの含有量/成分Bの含有量)は、一又は複数の実施形態において、研磨速度向上の観点から、0.001以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましく、1.6以上が更に好ましく、そして、6000以下が好ましく、200以下がより好ましく、70以下が更に好ましく、25以下が更に好ましい。より具体的には、質量比A/Bは、0.001以上6000以下が好ましく、0.1以上200以下がより好ましく、0.7以上70以下が更に好ましく、1.6以上25以下が更に好ましい。
本開示の研磨液組成物中における成分Aと成分Bとの質量比A/B(成分Aの含有量/成分Bの含有量)は、その他の一又は複数の実施形態において、研磨速度向上の観点から、0.001以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましく、1.6以上がより更に好ましく、そして、6000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、200以下が更に好ましく、100以下がより更に好ましい。より具体的には、質量比A/Bは、0.001以上6000以下が好ましく、0.1以上1000以下がより好ましく、0.7以上200以下が更に好ましく、1.6以上100以下がより更に好ましい。
[水系媒体]
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。水系媒体が、水と溶媒との混合溶媒の場合、混合媒体全体に対する水の割合は、本開示の効果が妨げられない範囲であれば特に限定されなくてもよく、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。被研磨基板の表面清浄性の観点から、水系媒体としては、水が好ましく、イオン交換水及び超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A、成分B、及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
[任意成分]
本開示の研磨液組成物は、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、防腐剤、塩基性物質、研磨速度向上剤、窒化珪素膜研磨抑制剤、ポリシリコン膜研磨抑制剤、カウンターイオン等の任意成分をさらに含有することができる。本開示の研磨液組成物が任意成分をさらに含有する場合、本開示の研磨液組成物中の任意成分の含有量は、研磨速度向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.0025質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、そして、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。より具体的には、任意成分の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.0025質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。
[研磨液組成物]
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、成分B及び水系媒体、並びに、所望により上述した任意成分を公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。例えば、本開示の研磨液組成物は、少なくとも成分A、成分B及び水系媒体を配合してなるものとすることができる。成分Aが複数種類のセリア粒子の組合せである場合、成分Aは、複数種類のセリア粒子をそれぞれ配合することにより得ることができる。成分Bが複数種類のN-オキシド化合物の組合せである場合、成分Bは、複数種類のN-オキシド化合物をそれぞれ配合することにより得ることができる。成分Bが複数種類の含窒素複素芳香環化合物の組合せである場合、成分Bは、複数種類の含窒素複素芳香環化合物をそれぞれ配合することにより得ることができる。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B及び水系媒体、並びに必要に応じて上述した任意成分を同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は特に限定されない。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示の研磨液組成物の製造方法における各成分の配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の含有量と同じとすることができる。
本開示の研磨液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。2液型の研磨液組成物の一実施形態としては、成分Aを含む第1液と、成分Bを含む第2液とから構成され、使用時に第1液と第2液とが混合されるものが挙げられる。第1液と第2液との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。第1液及び第2液はそれぞれ必要に応じて上述した任意成分を含有することができる。
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度向上の観点から、3.5以上が好ましく、4以上がより好ましく、4.5以上が更に好ましく、そして、9以下が好ましく、8.5以下がより好ましく、8以下が更に好ましく、8未満が更に好ましく、7以下が更に好ましく、6以下が更に好ましい。より具体的には、pHは、3.5以上9以下が好ましく、4以上8.5以下がより好ましく、4.5以上8以下が更に好ましく、4.5以上8未満が更に好ましく、4.5以上7以下が更に好ましく、4.5以上6以下が更に好ましい。本開示において、研磨液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨時、すなわち、研磨液組成物の研磨への使用を開始する時点での前記各成分の含有量をいう。本開示の研磨液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて水で適宜希釈して研磨工程で使用することができる。希釈割合としては5~100倍が好ましい。
[被研磨膜]
本開示の研磨液組成物を用いて研磨される被研磨膜としては、例えば、酸化珪素膜が挙げられる。したがって、本開示の研磨液組成物は、酸化珪素膜の研磨を必要とする工程に使用できる。すなわち、本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、酸化珪素膜の研磨に用いられる研磨液組成物(酸化珪素膜用研磨液組成物)である。一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、層間絶縁膜を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、埋め込み金属配線を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、又は、埋め込みキャパシタを形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨に好適に使用できる。その他の一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、3次元NAND型フラッシュメモリ等の3次元半導体装置の製造に好適に使用できる。
[研磨液キット]
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を製造するためのキット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。
本開示の研磨液キットの一実施形態としては、例えば、成分A及び水系媒体を含む研磨砥粒分散液と、成分Bを含む添加剤水溶液と、を相互に混合されない状態で含む、研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記研磨砥粒分散液と前記添加剤水溶液とは、使用時に混合され、必要に応じて水系媒体を用いて希釈される。前記研磨砥粒分散液に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の全量でもよいし、一部でもよい。前記添加剤水溶液には、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の一部が含まれていてもよい。前記研磨砥粒分散液及び前記添加剤水溶液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示の研磨液キットによれば、研磨速度を確保しつつ、研磨選択性の向上が可能な研磨液組成物が得られうる。
[半導体基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて酸化珪素膜を研磨する工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板の製造方法」ともいう。)に関する。本開示の半導体基板の製造方法によれば、酸化珪素膜の研磨速度向上が可能であるため、品質が向上した半導体基板を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
本開示の半導体基板の製造方法の具体例としては、まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒すことよりその表面に二酸化シリコン層を成長させ、次いで、当該二酸化シリコン層上に窒化珪素(Si34)膜又はポリシリコン膜等の研磨ストッパ膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、シリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された研磨ストッパ膜とを含む基板、例えば、シリコン基板の二酸化シリコン層上に研磨ストッパ膜が形成された基板に、フォトリソグラフィー技術を用いてトレンチを形成する。次いで、例えば、シランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の被研磨膜である酸化珪素(SiO2)膜を形成し、研磨ストッパ膜が被研磨膜(酸化珪素膜)で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、研磨ストッパ膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも研磨ストッパ膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と研磨ストッパ膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。本開示の研磨液組成物は、このCMP法による研磨を行う工程に用いることができる。酸化珪素膜の下層の凹凸に対応して形成された凸部の幅は、例えば、0.5μm以上5000μm以下であり、凹部の幅は、例えば、0.5μm以上5000μm以下である。
CMP法による研磨では、被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で、本開示の研磨液組成物をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面の凹凸部分を平坦化させる。
なお、本開示の半導体基板の製造方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨ストッパ膜との間に他の絶縁膜が形成されていてもよいし、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)と研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)との間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨パッドの回転数は、例えば、30~200r/分、被研磨基板の回転数は、例えば、30~200r/分、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重は、例えば、20~500g重/cm2、研磨液組成物の供給速度は、例えば、10~500mL/分以下に設定できる。研磨液組成物が2液型研磨液組成物の場合、第1液及び第2液のそれぞれの供給速度(又は供給量)を調整することで、被研磨膜及び研磨ストッパ膜のそれぞれの研磨速度や、被研磨膜と研磨ストッパ膜との研磨速度比(研磨選択性)を調整できる。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、被研磨膜(酸化珪素膜)の研磨速度は、生産性向上の観点から、50nm/分以上が好ましく、80nm/分以上がより好ましく、90nm/分以上が更に好ましい。
[研磨方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法(以下、本開示の研磨方法ともいう)に関する。本開示の研磨方法を使用することにより、酸化珪素膜の研磨速度向上が可能であるため、品質が向上した半導体基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、上述した本開示の半導体基板の製造方法と同じようにすることができる。
以下、実施例により本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
1.各パラメータの測定方法
(1)研磨液組成物のpH
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜電波工業社製、「HM-30G」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して1分後の数値である。
(2)セリア粒子(成分A)の平均一次粒径
セリア粒子(成分A)の平均一次粒径(nm)は、下記BET(窒素吸着)法によって得られる比表面積S(m2/g)を用い、セリア粒子の真密度を7.2g/cm3として算出した。
(3)セリア粒子(成分A)のBET比表面積
比表面積は、セリア分散液を120℃で3時間熱風乾燥した後、メノウ乳鉢で細かく粉砕しサンプルを得た。測定直前に120℃の雰囲気下で15分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
(4)還元電位及び酸化電位
1)支持電解質として用いる硫酸ナトリウム水溶液が0.1mol/Lになるよう超純水にて調製し、窒素置換を3時間以上行う。
2)ガラスバイアル(20mL)に硫酸ナトリウム水溶液を9.9mL秤量する。
3)ガラス状カーボン(グラッシーカーボン)作用電極の表面を、1μm研磨用ダイヤモンド及びダイヤモンド研磨用パッド(何れもビー・エー・エス社製)を用い、電極を垂直に押し当て、8の字を描くように十分研磨をする。続いて、0.05μmのアルミナ及びアルミナ研磨用パッド(何れもビー・エー・エス社製)を用い、電極表面が鏡面になるまで8の字を描くように十分研磨をする。その後、電極表面を超純水で洗浄し乾燥させる。
4)ガラス状カーボン電極、銀/銀塩化銀参照電極、白金カウンター電極をALS電気化学アナライザー(モデル611D)に接続し、硫酸ナトリウム水溶液に浸漬させて3極式電気化学セルを組み立てる。
5)サイクリックボルタンメトリー変数を高電位1V、低電位1V、スキャン速度0.1V/s、スィープセグメント5wに設定し、電位-電流データポイントをモニターに表示する。
6)ガラスバイアル内にテフロン(登録商標)チューブを通し窒素置換を十分に行った後、支持電解質のみで測定を行う。このとき、窒素置換が不十分であると、溶存酸素由来のピークが検出される。
7)測定サンプル(添加剤:1000ppm)を超純水にて調製し、窒素置換を十分に行った後、該測定サンプル0.1mLをガラスバイアル内の硫酸ナトリウム水溶液9.9mLに添加し、添加剤の10ppm水溶液を得た。
8)Open Circuit Potentialを測定し、サイクリックボルタンメトリー変数の初期電位に設定し、測定を行う。このとき、溶存酸素由来のピークが検出されていないことを確認し、測定サンプル由来のサイクリックボルタモグラムから酸化還元電位を確認する。
2.研磨液組成物の調製(実施例1~4及び比較例1~10)
セリア粒子(成分A)、添加剤(表1に示す成分B又は非成分B)及び水を混合して実施例1~4及び比較例1~10の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量は、成分Aが0.15質量%、成分B又は非成分Bが0.01質量%であった。水の含有量は、成分Aと成分B又は非成分Bとを除いた残余である。実施例1~4及び比較例1~10の研磨液組成物のpHは5であった。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
実施例1~4及び比較例1~10の研磨液組成物の調製に用いた成分A、成分B及び非成分Bを以下に示す。
コロイダルセリア[平均一次粒径26nm、BET比表面積32m2/g、SOLVAY社製の「HC30」](成分A)
2-ヒドロキシピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(成分B)
2-メルカプトピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(成分B)
ピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
2-ヒドロキシピリジン(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
4-メトキシピリジンN-オキシド(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)(非成分B)
4-クロロピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
4-ニトロピリジンN-オキシド(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)(非成分B)
カテコール(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
アスコルビン酸(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)(非成分B)
ピコリン酸(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
ピコリン酸-N-オキシド(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)(非成分B)
3.研磨液組成物(実施例1~4及び比較例1~10)の評価
[評価用サンプル]
評価用サンプルとして市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「T-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径200mm)を用意し、これを40mm×40mmに切断した。この評価用サンプルは、シリコン基板上に1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものと、500μmのものを測定対象として使用した。
[研磨条件]
研磨装置:片面研磨機[テクノライズ製「TR15M-TRK1」、定盤径380mm]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド[ニッタ・ハース社製「IC-1000/Suba400」]
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
[研磨速度の測定]
実施例1~4及び比較例1~10の各研磨液組成物を用いて、上記研磨条件でパターン基板を研磨した。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。算出結果を表1に示した。また、比較例10を1とした相対値についても表1に示した。
酸化珪素膜の研磨速度(nm/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(nm)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(nm)]/研磨時間(分)
Figure 0007326048000002
さらに、その他の実施例により本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
4.研磨液組成物の調製(実施例1、5及び比較例1~2、10~13)
セリア粒子(成分A)、添加剤(表2に示す成分B1又は非成分B)及び水を混合して実施例1、5及び比較例1~2、10~13の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量は、成分Aが0.15質量%、成分B1又は非成分Bが表2に示す含有量であった。水の含有量は、成分Aと成分B1又は非成分Bとを除いた残余である。実施例1、5及び比較例1~2、10~13の研磨液組成物のpHは5であった。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
研磨液組成物の調製に用いた成分A、成分B1及び非成分Bを以下に示す。
コロイダルセリア[平均一次粒径26nm、BET比表面積32m2/g、SOLVAY社製の「HC30」](成分A)
不定形セリア[平均一次粒径19nm、BET比表面積44m2/g](成分A)
2-ヒドロキシピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(成分B1)
ピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
4-ヒドロキシピリジン(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
2-ヒドロキシピリジン(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
5.研磨液組成物(実施例1、5及び比較例1~2、10~13)の評価
[評価用サンプル]
評価用サンプルとして市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「T-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径200mm)を用意し、これを40mm×40mmに切断した。この評価用サンプルは、シリコン基板上に1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものと、500μmのものを測定対象として使用した。
[研磨条件]
研磨装置:片面研磨機[テクノライズ製「TR15M-TRK1」、定盤径380mm]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド[ニッタ・ハース社製「IC-1000/Suba400」]
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
[研磨速度の測定]
実施例1、5及び比較例1~2、10~13の各研磨液組成物を用いて、上記研磨条件でパターン基板を研磨した。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。算出結果を表2に示した。また、比較例10を1とした相対値についても表2に示した。
酸化珪素膜の研磨速度(nm/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(nm)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(nm)]/研磨時間(分)
Figure 0007326048000003
表2に示されるように、成分B1を用いた実施例1、5は、成分B1を用いない比較例1~2、10~13に比べて、研磨速度が向上していた。
さらに、その他の実施例により本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
6.研磨液組成物の調製(実施例2、6~7及び比較例1、3~5、10~11、13)
セリア粒子(成分A)、添加剤(表3に示す成分B2又は非成分B)及び水を混合して実施例2、6~7及び比較例1、3~5、10~11、13の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量(有効分)は、成分Aが0.15質量%、成分B2又は非成分Bが表1に示す含有量(質量%)であった。水の含有量は、成分Aと成分B2又は非成分Bとを除いた残余である。実施例2、6~7及び比較例1、3~5、10~11、13の研磨液組成物のpHは5.0であった。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
研磨液組成物の調製に用いた成分A、成分B2及び非成分Bを以下に示す。
コロイダルセリア[平均一次粒径26nm、BET比表面積32m2/g、SOLVAY社製の「HC30」](成分A)
不定形セリア[平均一次粒径19nm、BET比表面積44m2/g](成分A)
2-メルカプトピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(成分B2)
ピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
4-クロロピリジンN-オキシド(東京化成工業株式会社製)(非成分B)
4-ニトロピリジンN-オキシド(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)(非成分B)
4-メトキシピリジンN-オキシド(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)(非成分B)
7.研磨液組成物(実施例2、6~7及び比較例1、3~5、10~11、13)の評価
[評価用サンプル]
評価用サンプルとして市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「T-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径200mm)を用意し、これを40mm×40mmに切断した。この評価用サンプルは、シリコン基板上に1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものと、500μmのものを測定対象として使用した。
[研磨条件]
研磨装置:片面研磨機[テクノライズ製「TR15M-TRK1」、定盤径380mm]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド[ニッタ・ハース社製「IC-1000/Suba400」]
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
[研磨速度の測定]
実施例2、6~7及び比較例1、3~5、10~11、13の各研磨液組成物を用いて、上記研磨条件でパターン基板を研磨した。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。算出結果を表3に示した。また、比較例10を1とした相対値についても表3に示した。
酸化珪素膜の研磨速度(nm/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(nm)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(nm)]/研磨時間(分)
Figure 0007326048000004
表3に示されるように、成分B2を用いた実施例2、6~7は、成分B2を用いない比較例1、3~5、10~11、13に比べて、凸部の研磨速度が向上していた。
さらに、その他の実施例により本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
8.研磨液組成物の調製(実施例3~4、8~10及び比較例10、13)
セリア粒子(成分A)、添加剤(表4に示す成分B3)及び水を混合して実施例3~4、8~10及び比較例10、13の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量は、成分Aが0.15質量%、成分B3が表1に示す含有量であった。水の含有量は、成分Aと成分B3とを除いた残余である。実施例3~4、8~10及び比較例10、13の研磨液組成物のpHは5で、実施例8の研磨液組成物のpHは7あった。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
研磨液組成物の調製に用いた成分A及び成分B3を以下に示す。
コロイダルセリア[平均一次粒径26nm、BET比表面積32m2/g、SOLVAY社製の「HC30」](成分A)
不定形セリア[平均一次粒径19nm、BET比表面積44m2/g](成分A)
シクロピロクスオラミン(東京化成工業株式会社製)(成分B3)
ピロクトンオラミン(東京化成工業株式会社製)(成分B3)
9.研磨液組成物(実施例3~4、8~10及び比較例10、13)の評価
[評価用サンプル]
<ブランケット基板>
シリコンウェーハの片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
<パターン基板>
評価用サンプルとして市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「T-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径200mm)を用意し、これを40mm×40mmに切断した。この評価用サンプルは、シリコン基板上に1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものと、500μmのものを測定対象として使用した。
[研磨条件]
研磨装置:片面研磨機[テクノライズ製「TR15M-TRK1」、定盤径380mm]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド[ニッタ・ハース社製「IC-1000/Suba400」]
定盤回転数:90rpm
ヘッド回転数:90rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
[研磨速度の測定]
実施例3~4、8~10及び比較例10、13の各研磨液組成物を用いて、上記研磨条件でパターン基板を研磨した。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜の膜厚を測定した。酸化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。算出結果を表4に示した。また、比較例10を1.0とした相対値についても表4に示した。
酸化珪素膜の研磨速度(nm/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(nm)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(nm)]/研磨時間(分)
Figure 0007326048000005
表4に示されるように、成分B3を用いた実施例3~4、8~10は、成分B3を用いない比較例10、13に比べて、酸化珪素膜の研磨速度が向上していた。
本開示の研磨液組成物は、高密度化又は高集積化用の半導体基板の製造方法において有用である。

Claims (19)

  1. 酸化セリウム粒子(成分A)と、添加剤(成分B)と、水系媒体とを含有し、
    成分Bは、成分Bの10ppm水溶液をサイクリックボルタンメトリー(Ag/AgCl電極基準)で測定したときの還元電位が0.45V以上となる化合物である、酸化珪素膜用研磨液組成物。
  2. 成分Bは、成分Bの10ppm水溶液をサイクリックボルタンメトリー(Ag/AgCl電極基準)で測定したときに酸化電位が検出されない、請求項1に記載の研磨液組成物。
  3. 成分Bは、複素芳香環骨格を含む還元性化合物である、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
  4. 成分Bは、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩(成分B1)である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
  5. 成分B1は、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基に置換されたピリジン環を有するN-オキシド化合物、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基に置換されたキノリン環を有するN-オキシド化合物、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の研磨液組成物。
  6. 成分Bは、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物又はその塩(成分B2)である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
  7. 成分B2は、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換されたピリジン環を有するN-オキシド化合物、少なくとも1つの水素原子がチオール基に置換されたキノリン環を有するN-オキシド化合物、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の研磨液組成物。
  8. 成分Bは、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物又はその塩(成分B3)である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
  9. 成分B3は、ヒドロキシル基がピリジン環の窒素原子の置換基である化合物、ヒドロキシル基がキノリン環の窒素原子の置換基である化合物、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の研磨液組成物。
  10. 成分B3は、下記式(I)で表される化合物又はその塩である、請求項8又は9に記載の研磨液組成物。
    Figure 0007326048000006
    上記式(I)中、R1は、水素原子又は炭素数1以上10以下の炭化水素基、R2は、炭素数1以上6以下の炭化水素基である。
  11. 式(I)中のR1が炭素数3以上10以下の環状又は分岐鎖状の炭化水素基であり、R2がメチル基である、請求項10に記載の研磨液組成物。
  12. 成分B3は、シクロピロクス、ピロクトン、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項8から11のいずれかに記載の研磨液組成物。
  13. 成分Bの含有量が、0.001質量%以上1質量%以下である、請求項1から12のいずれかに記載の研磨液組成物。
  14. 成分Aの含有量が、0.001質量%以上6質量%以下である、請求項1から13のいずれかに記載の研磨液組成物。
  15. 成分Aと成分Bとの質量比A/Bが、0.001以上6000以下である、請求項1から14のいずれかに記載の研磨液組成物。
  16. pHが3.5以上9以下である、請求項1から15のいずれかに記載の研磨液組成物。
  17. 酸化セリウム粒子(成分A)と、添加剤(成分B)と、水系媒体とを含有し、
    成分Bは、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシル基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物もしくはその塩(成分B1)、少なくとも1つの水素原子がチオール基で置換された含窒素複素芳香環骨格を含む、N-オキシド化合物もしくはその塩(成分B2)、及び、少なくとも1つのヒドロキシル基及び少なくとも1つのカルボニル基を有する含窒素複素芳香環骨格を含む化合物もしくはその塩(成分B3)から選ばれる少なくとも1種である、酸化珪素膜用研磨液組成物。
  18. 請求項1から17のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
  19. 請求項1から17のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、研磨方法。
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