(第1実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第1実施例に係るパイロット式の電磁弁について、図1~図5を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る電磁弁の断面図である。図2~図5は、図1の電磁弁の弁本体およびその近傍の拡大断面図である。図2~図5は、順に閉弁状態、途中状態1(パイロット通路が第1通路形態となる状態)、途中状態2(パイロット通路が第2通路形態となる状態)および開弁状態を示している。
図1~図5に示すように、第1実施例に係る電磁弁1は、弁本体10と、主弁体20と、駆動部30と、パイロット弁体40と、流路切換機構60と、を有している。
弁本体10は、有底円筒形状を有している。弁本体10は、周壁部11と、底壁部12と、を有している。底壁部12は、周壁部11の下端部に連設されている。弁本体10の内側には、主弁体20が配置される。主弁体20は、弁本体10の内側空間を、主弁室13と、背圧室14と、に区画している。主弁室13は主弁体20の下側にあり、背圧室14は主弁体20の上側にある。底壁部12は、主弁口15と、主弁座16と、を有している。主弁口15は、底壁部12を貫通している。円環形状の主弁座16は、主弁室13において主弁口15を囲むように配置されている。主弁口15は、主弁座16を介して主弁室13に接続されている。周壁部11には、入口通路である入口継手管17が接合されている。入口継手管17は、周壁部11を横方向に貫通し、主弁室13に接続されている。底壁部12には、出口通路である出口継手管18が接合されている。出口継手管18は、主弁口15に接続されている。
主弁体20は、弁本体10の内側に上下方向(軸線L方向)に移動可能に配置されている。主弁体20は、主弁体本体21と、フランジ22と、を有している。
主弁体本体21は、円柱形状を有している。主弁体本体21は、パイロット通路25を有している。パイロット通路25は、主弁体本体21を上下方向に貫通している。パイロット通路25は、背圧室14と主弁口15とを接続する。パイロット通路25の下部には、大径部25aが設けられている。パイロット通路25の上部には、大径部25aに接続された小径部25bが設けられている。小径部25bの径は、大径部25aの径より小さい。主弁体本体21の下端部は、主弁室13に配置されている。主弁体本体21の下端部には、主弁部21aが設けられている。主弁部21aは、主弁座16に接離される。主弁部21aが主弁座16に接すると、主弁口15が閉じる。主弁部21aが主弁座16から離れると、主弁口15が開く。主弁体本体21の上端部は、背圧室14に配置されている。主弁体本体21の上端部には、円環形状のパイロット弁座21bが設けられている。パイロット弁座21bは、パイロット通路25を囲むように配置されている。
フランジ22は、円環形状を有している。フランジ22の外径は、主弁体本体21の外径より大きい。フランジ22は、主弁体本体21に同軸に連設されている。フランジ22の外周面は、周壁部11の内周面と摺動する。フランジ22は、均圧通路26を有している。均圧通路26は、フランジ22を上下方向に貫通している。均圧通路26は、主弁室13と背圧室14とを接続している。フランジ22の外周面と周壁部11の内周面との隙間も、主弁室13と背圧室14とを接続する均圧通路となる。以下の説明において、フランジ22の外周面と周壁部11の内周面との隙間と、均圧通路26と、を合わせたものを「均圧通路26E」としている。なお、電磁弁1は、均圧通路26を省略して、フランジ22の外周面と周壁部11の内周面との隙間のみを均圧通路とした構成としてもよい。
駆動部30は、ケース31と、コイル32と、固定鉄心33と、プランジャー34と、プランジャーばね35と、を有している。
ケース31は、円筒形状を有している。ケース31の下端部は、周壁部11の上端部に取り付けられている。コイル32は、ケース31の外側に配置されている。固定鉄心33は、円柱形状を有している。固定鉄心33は、ケース31の上端部に挿入されている。プランジャー34は、円柱形状を有している。プランジャー34は、ケース31に上下方向に移動可能に収容されている。プランジャーばね35は、固定鉄心33とプランジャー34との間に配置されている。プランジャーばね35は、圧縮コイルばねである。プランジャーばね35は、プランジャー34を下方に押している。
パイロット弁体40は、球形状を有している。パイロット弁体40は、背圧室14に配置されている。パイロット弁体40は、プランジャー34の下端部にかしめによって取り付けられている。パイロット弁体40は、プランジャー34の下端部に溶接されていてもよい。パイロット弁体40は、駆動部30によって上下方向に移動される。パイロット弁体40は、パイロット弁座21bに接離される。パイロット弁体40がパイロット弁座21bに接すると、パイロット通路25が閉じる。パイロット弁体40がパイロット弁座21bから離れると、パイロット通路25が開く。
流路切換機構60は、パイロット通路25に配置されている。流路切換機構60は、流路切換弁体61と、弁座部62と、圧力差作動ばね63と、を有している。
流路切換弁体61は、パイロット通路25の大径部25aに上下方向に移動可能に配置されている。流路切換弁体61は、円筒形状の切換弁部61aと、切換弁部61aの上端部に同軸に連設された円筒形状のガイド部61bと、を有している。切換弁部61aの下端部には、上下方向に延在する第1流通孔61cが設けられている。切換弁部61aには、横方向に貫通する貫通孔61dが複数設けられている。ガイド部61bの上端部は開口している。ガイド部61bの外径は、切換弁部61aの外径より大きい。ガイド部61bの外周面は、パイロット通路25の大径部25aの内周面と摺動する。
弁座部62は、パイロット通路25(大径部25a)の下端部に配置されている。弁座部62は、円環板形状を有している。弁座部62の中央部には、上下方向に貫通する第2流通孔62cが設けられている。第2流通孔62cの径は、第1流通孔61cの径より大きい。第2流通孔62cの径は、パイロット通路25の小径部25bの径より小さい。なお、第2流通孔62cの径がパイロット通路25の小径部25bの径より大きくてもよい。
第2流通孔62cの流路面積A2は、第1流通孔61cの流路面積A1より大きい。均圧通路26Eの流路面積Aeは、第1流通孔61cの流路面積A1より大きく、第2流通孔62cの流路面積A2より小さい(A2>Ae>A1)。なお、流路面積とは、流路の最も狭い部分の断面積である。流体の流量は、実際には流路面積や流路の上流側と下流側との圧力差などの複数の条件によって決まるが、本明細書では、説明の便宜上、流路面積が大きいほど流量が大きくなるものとしている。電磁弁1の通路や孔を通過する流体の流量についてより正確に説明すると、均圧通路26E(流路面積Ae)の流量をQe、第1流通孔61c(流路面積A1)の流量をQ1、第2流通孔62c(流路面積A2)の流量をQ2としたとき、電磁弁1は各流量の大きさがQ2>Qe>Q1となるように構成されている。
圧力差作動ばね63は、流路切換弁体61のガイド部61bと弁座部62との間に配置されている。圧力差作動ばね63は、圧縮コイルばねである。圧力差作動ばね63は、流路切換弁体61を上方に押している。パイロット通路25の上流側と下流側とで圧力差がないとき、圧力差作動ばね63は、流路切換弁体61を主弁体本体21の内側に設けられた環状平面である段部に押し付けている。
流路切換機構60において、パイロット通路25が開いた状態の場合に、パイロット通路25の上流側にある背圧室14の流体圧力P2と下流側にある主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP23が所定の切換設定値S1以上(ΔP23≧S1)のとき、パイロット通路25を流れる流体が流路切換弁体61を下流側に押す力が、圧力差作動ばね63が流路切換弁体61を上流側に押す力より大きくなる。これにより、流路切換弁体61が下流側に移動して弁座部62に接する。そして、流路切換弁体61が弁座部62に接しているとき、切換弁部61aが第2流通孔62cを閉じ、パイロット通路25を流れる流体は第1流通孔61cを通る(図3)。流体が第1流通孔61cを通る構成のパイロット通路25を「第1通路形態F1」という。第1通路形態F1のパイロット通路25において第1流通孔61cが最も狭く、第1流通孔61cの流路面積A1が第1通路形態F1のパイロット通路25の流路面積になる。
流路切換機構60において、パイロット通路25が開いた状態の場合に、圧力差ΔP23が所定の切換設定値S1より小さいとき(ΔP23<S1)、パイロット通路25を流れる流体が流路切換弁体61を下流側に押す力が、圧力差作動ばね63が流路切換弁体61を上流側に押す力より小さくなる。これにより、流路切換弁体61が上流側に移動して弁座部62から離れる。そして、流路切換弁体61が弁座部62から離れているとき、第2流通孔62cが開き、パイロット通路25を流れる流体は第2流通孔62cを通る(図4)。流体が第2流通孔62cを通る構成のパイロット通路25を「第2通路形態F2」という。第2通路形態F2のパイロット通路25において第2流通孔62cが最も狭く、第2流通孔62cの流路面積A2が第2通路形態F2のパイロット通路25の流路面積になる。なお、第2流通孔62cの径がパイロット通路25の小径部25bの径より大きい構成では、小径部25bの流路面積が第2通路形態F2のパイロット通路25の流路面積になる。
電磁弁1において、弁本体10(周壁部11、主弁口15、主弁座16)、主弁体20(主弁体本体21、主弁部21a、パイロット弁座21b、フランジ22、パイロット通路25)、ケース31、コイル32、プランジャー34、パイロット弁体40、流路切換機構60(流路切換弁体61、弁座部62)は、それぞれの軸が軸線Lに一致する。
次に、電磁弁1の動作の一例について、図2~図5を参照して説明する。
コイル32が非通電状態のとき、プランジャー34が、プランジャーばね35によって下方に移動する。プランジャー34がパイロット弁体40を主弁体20のパイロット弁座21bに押し付け、パイロット弁体40がパイロット通路25を閉じる。さらに、パイロット弁体40が主弁体20(主弁部21a)を主弁座16に押し付け、主弁体20が主弁口15を閉じる。これにより、主弁室13から主弁口15への流体の流れが遮断され、図2に示すように、電磁弁1は閉弁状態になる。閉弁状態において、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とが同一である(P1≒P2)。また、主弁口15の流体圧力P3は、主弁室13の流体圧力P1および背圧室14の流体圧力P2より低い。
そして、コイル32が通電状態になると、プランジャー34が、磁力によって上方に移動する。図3に示すように、プランジャー34がパイロット弁体40を主弁体20のパイロット弁座21bから離し、パイロット通路25が開く。このとき、背圧室14の流体圧力P2と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP23が大きいため(ΔP23≧S1)、流路切換弁体61がパイロット通路25を流れる流体に押されて下方に移動して弁座部62に接する。これにより、パイロット通路25を流れる流体は、流路面積の小さい第1流通孔61cを通って主弁口15に流れる。すなわち、流路切換機構60は、パイロット通路25を第1通路形態F1に切り換える。
背圧室14の流体が第1流通孔61cを通って主弁口15に流れると、主弁室13と背圧室14との間の流量より背圧室14と主弁口15との間の流量が小さくなる。そのため、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とが、ほぼ同じ値を維持したまま徐々に低下する。そして、背圧室14の流体圧力P2が低下して圧力差ΔP23が小さくなると(ΔP23<S1)、パイロット通路25を流れる流体が流路切換弁体61を下方に押す力が弱まり、図4に示すように、流路切換弁体61が圧力差作動ばね63に押されて上方に移動して弁座部62から離れる。これにより、パイロット通路25を流れる流体は、流路面積の大きい第2流通孔62cを通って主弁口15に流れる。すなわち、流路切換機構60は、パイロット通路25を第2通路形態F2に切り換える。
背圧室14の流体が第2流通孔62cを通って主弁口15に流れると、主弁室13と背圧室14との間の流量より背圧室14と主弁口15との間の流量が大きくなる。そのため、主弁室13の流体圧力P1より背圧室14の流体圧力P2が小さくなり(P1>P2)、背圧室14の流体圧力P2と主弁口15の流体圧力P3とがほぼ同じ値となる(P2≒P3)。これにより、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2との圧力差ΔP12によって主弁体20に対して上方に押す力が加わり、図5に示すように、主弁体20が主弁座16から離れ、主弁口15が開く。このとき、主弁室13の流体圧力P1と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP13が、パイロット通路25が開いた直後より小さくなっているので、主弁室13から主弁口15に急激に流体が流れ込むことを抑制できる。
以上説明したように、電磁弁1は、主弁室13と背圧室14とを有する弁本体10と、主弁室13と背圧室14とを区画するように配置され、主弁室13に接続された主弁口15を開閉する主弁体20と、主弁室13と背圧室14とを接続する均圧通路26Eと、背圧室14と主弁口15とを接続するパイロット通路25と、パイロット通路25を開閉するパイロット弁体40と、パイロット弁体40を駆動する駆動部30と、を有している。電磁弁1は、パイロット通路25を、均圧通路26Eより流路面積の小さい第1通路形態F1と、均圧通路26Eより流路面積の大きい第2通路形態F2と、に切り換える流路切換機構60を有している。そして、流路切換機構60は、パイロット通路25が開いた状態において、背圧室14の流体圧力P2と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP23が大きいときは第1通路形態F1に切り換え、圧力差ΔP23が小さいときは第2通路形態F2に切り換えるように構成されている。
電磁弁1において、主弁口15が閉じた閉弁状態では主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とが同じ値(ほぼ同じ値を含む)であり、これらの流体圧力P1、P2より主弁口15の流体圧力P3が低い。そのため、パイロット通路25が開いた直後は圧力差ΔP23が大きく、流路切換機構60は、パイロット通路25を流路面積の小さい第1通路形態F1に切り換えて、主弁室13と背圧室14との間の流量より背圧室14と主弁口15との間の流量を小さくする。これにより、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とがほぼ同じ値を維持したまま徐々に低下する。そして、圧力差ΔP23が小さくなると、流路切換機構60は、パイロット通路25を流路面積の大きい第2通路形態F2に切り換えて、主弁室13と背圧室14との間の流量より背圧室14と主弁口15との間の流量を大きくする。これにより、主弁室13の流体圧力P1より背圧室14の流体圧力P2が小さくなり、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2との圧力差ΔP12によって主弁体20が主弁座16から離れて、主弁口15が開く。このとき、主弁室13の流体圧力P1と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP13が、パイロット通路25が開いた直後より小さくなっている。そのため、主弁室13から主弁口15に急激に流体が流れ込むことを抑制でき、主弁口15が開いたときに生じる騒音を効果的に抑制できる。
また、流路切換機構60は、第1流通孔61cが設けられた流路切換弁体61と、第1流通孔61cより径の大きい第2流通孔62cが設けられた弁座部62と、流路切換弁体61を上流側(背圧室14側)に押すように設けられた圧力差作動ばね63と、を有している。流路切換機構60において、上流側にある背圧室14の流体圧力P2と下流側にある主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP23に応じて流路切換弁体61が弁座部62に接離する。そして、流路切換機構60が、流路切換弁体61が弁座部62に接しているときはパイロット通路25を流れる流体が第1流通孔61cを通り、流路切換弁体61が弁座部62から離れているときはパイロット通路25を流れる流体が第2流通孔62cを通る、ように構成されている。このようにすることで、圧力差ΔP23を利用して、小径の第1流通孔61cと大径の第2流通孔62cとのいずれかを流体が通るようにして、第1通路形態F1と第2通路形態F2とを切り換えることができる。そのため、流路切換機構60を比較的簡易な構成にすることができる。
(第2実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第2実施例に係るパイロット式の電磁弁について、図6~図10を参照して説明する。
図6は、本発明の第2実施例に係る電磁弁の断面図である。図7~図10は、図6の電磁弁の弁本体およびその近傍の拡大断面図である。図7~図10は、順に閉弁状態、途中状態1(均圧通路が第2通路形態となる状態)、途中状態2(均圧通路が第1通路形態となる状態)および開弁状態を示している。以下の説明において、第1実施例に係る電磁弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図6~図10に示すように、第2実施例に係る電磁弁2は、弁本体10と、主弁体20と、駆動部30と、パイロット弁体40と、流路切換機構70と、を有している。電磁弁2は、上述した電磁弁1の流路切換機構60に代えて、構成の異なる流路切換機構70を有している。
流路切換機構70は、均圧通路26に配置されている。流路切換機構70は、流路切換弁体71と、弁座部72と、圧力差作動ばね73と、を有している。
流路切換弁体71は、均圧通路26に上下方向に移動可能に配置されている。流路切換弁体71は、円筒形状の切換弁部71aと、切換弁部71aの外周面から突出した複数のガイド部71bと、を有している。切換弁部71aの下端部には、上下方向に延在する第1流通孔71cが設けられている。切換弁部71aには、横方向に貫通する貫通孔71dが複数設けられている。切換弁部71aの上端部は開口している。ガイド部71bの先端を仮想的に結んだ円の径は、切換弁部71aの外径より大きい。ガイド部71bの先端はは、均圧通路26の内周面と摺動する。
弁座部72は、均圧通路26の下端部に配置されている。弁座部72は、円環板形状を有している。弁座部72は、主弁体20に一体的に設けられている。弁座部72の中央部には、上下方向に貫通する第2流通孔72cが設けられている。第2流通孔72cの径は、第1流通孔71cの径より大きい。
第2流通孔72cの流路面積B2は、第1流通孔71cの流路面積B1より大きい。パイロット通路25の流路面積Bpは、第1流通孔71cの流路面積B1より大きく、第2流通孔72cの流路面積B2より小さい(B2>Bp>B1)。なお、流路面積とは、流路の最も狭い部分の断面積である。パイロット通路25(流路面積Bp)の流量をQp、第1流通孔71c(流路面積B1)の流量をQ1、第2流通孔72c(流路面積B2)の流量をQ2としたとき、電磁弁2は各流量の大きさがQ2>Qp>Q1となるように構成されている。
圧力差作動ばね73は、流路切換弁体71のガイド部71bと、均圧通路26の上端部に配置された円環板形状のばね受け部材74と、の間に配置されている。圧力差作動ばね73は、圧縮コイルばねである。圧力差作動ばね73は、流路切換弁体71を下方に押している。均圧通路26の上流側と下流側とで圧力差がないとき、圧力差作動ばね73は、流路切換弁体71を弁座部72に押し付けている。
流路切換機構70において、パイロット通路25が開いた状態の場合に、均圧通路26の上流側にある主弁室13の流体圧力P1と下流側にある背圧室14の流体圧力P2との圧力差ΔP12が小さいとき、または、圧力差ΔP12が大きくかつ背圧室14の流体圧力P2と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP23が小さいとき、均圧通路26を流れる流体が流路切換弁体71を下流側に押す力が、圧力差作動ばね73が流路切換弁体71を上流側に押す力より小さくなる。これにより、流路切換弁体71が上流側に移動して弁座部72に接する。そして、流路切換弁体71が弁座部72に接しているとき、切換弁部71aが第2流通孔72cを閉じ、均圧通路26を流れる流体は第1流通孔71cを通る(図9)。流体が第1流通孔71cを通る構成の均圧通路26Eを「第1通路形態G1」という。フランジ22の外周面と周壁部11の内周面との隙間の断面積と、第1流通孔71cの流路面積B1と、を合わせた面積が、第1通路形態G1の均圧通路26Eの流路面積になる。第1通路形態G1の均圧通路26Eの流路面積は、パイロット通路25の流路面積より小さい。
流路切換機構70において、パイロット通路25が開いた状態の場合に、圧力差ΔP12が大きくかつ圧力差ΔP23が大きいとき、均圧通路26を流れる流体が流路切換弁体71を下流側に押す力が、圧力差作動ばね73が流路切換弁体71を上流側に押す力より大きくなる。これにより、流路切換弁体71が下流側に移動して弁座部72から離れる。そして、流路切換弁体71が弁座部72から離れているとき、第2流通孔72cが開き、均圧通路26を流れる流体は第2流通孔72cを通る(図8)。流体が第2流通孔72cを通る構成の均圧通路26Eを「第2通路形態G2」という。フランジ22の外周面と周壁部11の内周面との隙間の断面積と、第2流通孔72cの流路面積B2と、を合わせた面積が、第2通路形態G2の均圧通路26Eの流路面積になる。第2通路形態G2の均圧通路26Eの流路面積は、パイロット通路25の流路面積より大きい。
次に、電磁弁2の動作の一例について、図7~図10を参照して説明する。
コイル32が非通電状態のとき、上述した電磁弁1と同様に、電磁弁2は閉弁状態になる(図7)。
そして、コイル32が通電状態になると、プランジャー34が、磁力によって上方に移動する。図8に示すように、プランジャー34がパイロット弁体40を主弁体20のパイロット弁座21bから離し、パイロット通路25が開く。パイロット通路25が開いた直後は背圧室14の流体圧力P2と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP23が大きく、背圧室14から主弁口15に流体が流れ、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2との圧力差ΔP12が大きくなる。このとき、均圧通路26を流れる流体の流量が大きく、流路切換弁体71が流体に押されて上方に移動して弁座部72から離れる。これにより、均圧通路26を流れる流体は、流路面積の大きい第2流通孔72cを通って背圧室14に流れる。すなわち、流路切換機構70は、均圧通路26Eを第2通路形態G2に切り換える。
主弁室13の流体が第2流通孔72cを通って背圧室14に流れると、主弁室13と背圧室14との間の流量が背圧室14と主弁口15との間の流量より大きくなる。そのため、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とが徐々に低下しつつ互いに近づき、圧力差ΔP12が小さくなる。そして、圧力差ΔP12が小さくなると、均圧通路26を流れる流体の流量が小さくなり、流体が流路切換弁体71を上方に押す力が弱まって、図9に示すように、流路切換弁体71が下方に移動して弁座部72に接する。これにより、均圧通路26を流れる流体は、流路面積の小さい第1流通孔71cを通って背圧室14に流れる。すなわち、流路切換機構70は、均圧通路26Eを第1通路形態G1に切り換える。
主弁室13の流体が第1流通孔71cを通って背圧室14に流れると、主弁室13と背圧室14との間の流量が背圧室14と主弁口15との間の流量より小さくなる。そのため、主弁室13の流体圧力P1より背圧室14の流体圧力P2が低下して、圧力差ΔP12が大きくなる(P1>P2)とともに圧力差ΔP23が小さくなり(P2≒P3)、均圧通路26を流れる流体の流量が小さく、流路切換弁体71は弁座部72に接した状態を維持する。これにより、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2との圧力差ΔP12によって主弁体20に対して上方に押す力が加わり、図10に示すように、主弁体20が主弁座16から離れ、主弁口15が開く。このとき、主弁室13の流体圧力P1と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP13が、パイロット通路25が開いた直後より小さくなっているので、主弁室13から主弁口15に急激に流体が流れ込むことを抑制できる。
以上説明したように、電磁弁2は、主弁室13と背圧室14とを有する弁本体10と、主弁室13と背圧室14とを区画するように配置され、主弁室13に接続された主弁口15を開閉する主弁体20と、主弁室13と背圧室14とを接続する均圧通路26Eと、背圧室14と主弁口15とを接続するパイロット通路25と、パイロット通路25を開閉するパイロット弁体40と、パイロット弁体40を駆動する駆動部30と、を有している。電磁弁2は、均圧通路26Eを、パイロット通路25より流路面積の小さい第1通路形態G1と、パイロット通路25より流路面積の大きい第2通路形態G2と、に切り換える流路切換機構70を有している。そして、流路切換機構70は、パイロット通路25が開いた状態において、圧力差ΔP12が大きくかつ圧力差ΔP23が大きいときは第2通路形態G2に切り換え、圧力差ΔP12が小さいときまたは圧力差ΔP12が大きくかつ圧力差ΔP23が小さいときは第1通路形態G1に切り換えるように構成されている。
電磁弁2において、主弁口15が閉じた閉弁状態では主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とが同じ値(ほぼ同じ値を含む)であり、これらの流体圧力P1、P2より主弁口15の流体圧力P3が低い。そのため、パイロット通路25が開いた直後は圧力差ΔP23が大きく、背圧室14から主弁口15に流体が流れて圧力差ΔP12が大きくなる。このとき、流路切換機構70は、均圧通路26Eを流路面積の大きい第2通路形態G2に切り換えて、主弁室13と背圧室14との間の流量を背圧室14と主弁口15との間の流量より大きくする。これにより、主弁室13の流体圧力P1と背圧室14の流体圧力P2とが徐々に低下しつつ互いに近づき、圧力差ΔP12が小さくなる。そして、圧力差ΔP12が小さくなると、流路切換機構70は、均圧通路26Eを流路面積の小さい第1通路形態G1に切り換えて、主弁室13と背圧室14との間の流量を背圧室14と主弁口15との間の流量より小さくする。これにより、主弁室13の流体圧力P1より背圧室14の流体圧力P2が低下して、圧力差ΔP12が大きくなるとともに圧力差ΔP23が小さくなる。そして、圧力差ΔP12によって主弁体20が主弁座16から離れて、主弁口15が開く。このとき、主弁室13の流体圧力P1と主弁口15の流体圧力P3との圧力差ΔP13が、パイロット通路25が開いた直後より小さくなっている。そのため、主弁室13から主弁口15に急激に流体が流れ込むことを抑制でき、主弁口15が開いたときに生じる騒音を効果的に抑制できる。
また、流路切換機構70が、第1流通孔71cが設けられた流路切換弁体71と、第1流通孔71cより径の大きい第2流通孔72cが設けられた弁座部72と、流路切換弁体71を上流側に押すように設けられた圧力差作動ばね73と、を有している。流路切換機構70において、上流側にある主弁室13の流体圧力P1と下流側にある背圧室14の流体圧力P2との圧力差ΔP12および背圧室14の流体圧力P2と主弁口15の流体圧力との圧力差ΔP23に応じて流路切換弁体71が弁座部72に接離する。そして、流路切換機構70が、流路切換弁体71が弁座部72に接しているときは流体が第1流通孔71cを通り、流路切換弁体71が弁座部72から離れているときは流体が第2流通孔72cを通る、ように構成されている。このようにすることで、圧力差ΔP12および圧力差ΔP23を利用して、小径の第1流通孔71cと大径の第2流通孔72cとのいずれかを流体が通るようにして、第1通路形態G1と第2通路形態G2とを切り換えることができる。そのため、流路切換機構70を比較的簡易な構成にすることができる。
(第3実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第3実施例に係るパイロット式の電磁弁について、図11~図16を参照して説明する。
図11は、本発明の第3実施例に係る電磁弁の断面図である。図12は、図11のXII-XII線に沿う断面図である。図13~図16は、図11の電磁弁の一部を示す断面図である。図13~図16において、(a)は主弁体およびその内部の断面図であり、(b)は(a)の一点鎖線で囲む部分の拡大断面図である。図13~図16は、順に第2主弁口が閉じた状態、途中状態1(第2パイロット通路が第1通路形態となる状態)、途中状態2(第2パイロット通路が第2通路形態となる状態)および第2主弁口が開いた状態を示している。図13、図16において、流体の流れを矢印で模式的に示している。
図11~図15に示すように、第3実施例に係る電磁弁3は、弁本体110と、第1主弁体120と、駆動部130と、第1パイロット弁体140と、第2主弁体220と、第2パイロット弁体240と、流路切換機構260と、を有している。
弁本体110は、第1空間110aと、第2空間110bと、入口流路110cと、中間流路110dと、出口流路110eと、を有している。
第1空間110aには、第1主弁体120が配置される。第1主弁体120は、第1空間110aを、第1主弁室113と、第1背圧室114と、に区画している。第1主弁室113は、第1主弁体120の下側にあり、第1背圧室114は、第1主弁体120の上側にある。第1空間110aの底面には、第1主弁口115と、第1主弁座116と、が設けられている。第1主弁口115は、上下方向に延在している。円環形状の第1主弁座116は、第1主弁室113において第1主弁口115を囲むように配置されている。第1主弁口115は、第1主弁座116を介して第1主弁室113に接続されている。入口流路110cは、第1主弁室113に接続されている。中間流路110dは、第1主弁口115に接続されている。
第2空間110bには、第2主弁体220が配置される。第2主弁体220は、第2空間110bを、第2主弁室213と、第2背圧室214と、に区画している。第2主弁室213は、第2主弁体220の下側にあり、第2背圧室214は、第2主弁体220の上側にある。第2空間110bの底面には、第2主弁口215と、第2主弁座216と、が設けられている。第2主弁口215は、上下方向に延在している。円環形状の第2主弁座216は、第2主弁室213において第2主弁口215を囲むように配置されている。第2主弁口215は、第2主弁座216を介して第2主弁室213に接続されている。中間流路110dは、第2主弁室213に接続されている。出口流路110eは、第2主弁口215に接続されている。第2背圧室214において、弁本体110と第2主弁体220との間に閉弁ばね235が配置されている。閉弁ばね235は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね235は、第2主弁体220を下方に押している。
第1主弁体120は、第1空間110aに上下方向(軸線L方向)に移動可能に配置されている。第1主弁体120は、第1主弁体本体121と、第1フランジ122と、を有している。
第1主弁体本体121は、円柱形状を有している。第1主弁体本体121は、第1パイロット通路125を有している。第1パイロット通路125は、第1主弁体本体121を上下方向に貫通している。第1パイロット通路125の下端部には、作動棒128の上端部が挿入されている。第1パイロット通路125は、作動棒128の上端部に設けられた流体通路128aを介して、第1背圧室114と第1主弁口115とを接続する。第1主弁体本体121の下端部は、第1主弁室113に配置されている。第1主弁体本体121の下端部には、第1主弁部121aが設けられている。第1主弁部121aは、第1主弁座116に接離される。第1主弁部121aが第1主弁座116に接すると、第1主弁口115が閉じる。第1主弁部121aが第1主弁座116から離れると、第1主弁口115が開く。第1主弁体本体121の上端部は、第1背圧室114に配置されている。第1主弁体本体121の上端部には、円環形状の第1パイロット弁座121bが設けられている。第1パイロット弁座121bは、第1パイロット通路125を囲むように配置されている。
第1フランジ122は、円環形状を有している。第1フランジ122の外径は、第1主弁体本体121の外径より大きい。第1フランジ122は、第1主弁体本体121に同軸に連設されている。第1フランジ122の外周面は、第1空間110aの内周面と摺動する。第1フランジ122は、第1均圧通路126を有している。第1均圧通路126は、第1フランジ122を上下方向に貫通している。第1均圧通路126は、第1主弁室113と第1背圧室114とを接続している。第1フランジ122の外周面と第1空間110aの内周面との隙間も、第1主弁室113と第1背圧室114とを接続する第1均圧通路となる。
駆動部130は、ケース31と、コイル32と、固定鉄心33と、プランジャー34と、プランジャーばね35と、を有している。これらの部材は、上述した電磁弁1のものと同一(実質的に同一を含む)の構成を有するため、同一の符号を付して説明を省略する。また、第1パイロット弁体140も、上述した電磁弁1のパイロット弁体40と同一の構成を有するため、説明を省略する。
第2主弁体220は、第2空間110bに上下方向に移動可能に配置されている。第2主弁体220は、第2主弁体本体221と、第2フランジ222と、を有している。
第2主弁体本体221は、円柱形状を有している。第2主弁体本体221の下端部は、第2主弁室213に配置されている。第2主弁体本体221の下端部には、第2主弁部221aが設けられている。第2主弁部221aは、第2主弁座216に接離される。第2主弁部221aが第2主弁座216に接すると、第2主弁口215が閉じる。第2主弁部221aが第2主弁座216から離れると、第2主弁口215が開く。第2主弁体本体221の上端部は、第2背圧室214に配置されている。第2主弁体本体221は、第2均圧通路226を有している。第2均圧通路226は、第2主弁体本体221の上面および外周面に開口を有する逆さのT字形状を有している。第2均圧通路226は、第2主弁室213と第2背圧室214とを接続している。
第2フランジ222は、円環形状を有している。第2フランジ222の外径は、第2主弁体本体221の外径より大きい。第2フランジ222は、第2主弁体本体221に同軸に連設されている。第2フランジ222の外周面は、第2空間110bの内周面と摺動する。第2フランジ222の外周面と第2空間110bの内周面との隙間も、第2主弁室213と第2背圧室214とを接続する第2均圧通路となる。以下の説明において、第2フランジ222の外周面と第2空間110bの内周面との隙間と、第2均圧通路226と、を合わせたものを「第2均圧通路226E」としている。なお、電磁弁3は、第2均圧通路226を省略して、第2フランジ222の外周面と第2空間110bの内周面との隙間のみを第2均圧通路とした構成としてもよい。
また、弁本体110は、第3空間110fと、作動棒挿通孔110gと、第2パイロット通路225と、を有している。
第3空間110fには、第2パイロット弁体240が配置される。第2パイロット弁体240は、第3空間110fを、第2パイロット弁室228と、ばね室229と、に区画している。第2パイロット弁室228は、第2パイロット弁体240の上側にあり、ばね室229は、第2パイロット弁体240の下側にある。
第2パイロット弁体240は、第3空間110fに上下方向に移動可能に配置されている。第2パイロット弁体240は、フレーム241と、パッキン242と、を有している。フレーム241は、円板形状を有している。フレーム241の外周面は第3空間110fの内周面と摺動する。パッキン242は、円環形状を有している。パッキン242は、フレーム241の上面にかしめにより取り付けられている。パッキン242は、第2パイロット弁室228の天井面228aに接離する。
第2パイロット弁室228の天井面228aから作動棒128の下端部が突き出ている。作動棒128は、その上端部が第1主弁体120の第1パイロット通路125に挿入されており、第1主弁口115、中間流路110d、作動棒挿通孔110gおよび第2パイロット弁室228に跨がるように配置されている。作動棒128の下端部は、フレーム241の上面に接している。作動棒128は、第1主弁体120とともに上下方向に移動する。作動棒128は、下方に移動すると第2パイロット弁体240を下方に押す。ばね室229において、第2パイロット弁体240と弁本体110との間には、閉弁ばね245が配置されている。閉弁ばね245は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね245は、第2パイロット弁体240を上方に押している。
第2パイロット通路225は、通路前半部225aと通路後半部225bとを有している。通路前半部225aは、第2背圧室214と第2パイロット弁室228とを接続する。通路後半部225bは、第2パイロット弁室228と出口流路110e(すなわち第2主弁口215)とを接続する。すなわち、第2パイロット通路225は、第2パイロット弁室228を介して、第2背圧室214と第2主弁口215とを接続する。第2パイロット弁室228の天井面228aには、第2パイロット弁座228bが設けられている。第2パイロット弁座228bは、通路後半部225bを囲むように配置されている。
図12に示すように、天井面228aにおけるパッキン242の接触領域228cから外れた箇所に通路前半部225aが開口している。天井面228aにおけるパッキン242の接触領域228cに通路後半部225b(第2パイロット弁座228b)が開口している。パッキン242は、第2パイロット弁座228bに接離して、第2パイロット通路225(通路後半部225b)を開閉する。通路前半部225aは、第2パイロット弁室228に対して常に開いている。
流路切換機構260は、第2パイロット通路225の通路後半部225bに配置されている。流路切換機構260は、流路切換弁体61と、弁座部62と、圧力差作動ばね63と、を有している。これらの部材は、上述した電磁弁1の流路切換弁体61、弁座部62および圧力差作動ばね63と、同一(実質的に同一を含む)の構成を有するため、同一の符号を付して説明を一部省略する。
第2流通孔62cの流路面積A2は、第1流通孔61cの流路面積A1より大きい。第2均圧通路226Eの流路面積Ae2は、第1流通孔61cの流路面積A1より大きく、第2流通孔62cの流路面積A2より小さい(A2>Ae2>A1)。なお、流路面積とは、流路の最も狭い部分の断面積である。第2均圧通路226E(流路面積Ae2)の流量をQe2、第1流通孔61c(流路面積A1)の流量をQ1、第2流通孔62c(流路面積A2)の流量をQ2としたとき、電磁弁3は各流量の大きさがQ2>Qe2>Q1となるように構成されている。
流路切換機構260において、第2パイロット通路225が開いた状態の場合に、第2パイロット通路225の上流側にある第2背圧室214の流体圧力P2と下流側にある第2主弁口215の流体圧力P3との圧力差ΔP23が所定の切換設定値S1以上(ΔP23≧S1)のとき、第2パイロット通路225を流れる流体が流路切換弁体61を下流側に押す力が、圧力差作動ばね63が流路切換弁体61を上流側に押す力より大きくなる。これにより、流路切換弁体61が下流側に移動して弁座部62に接する。そして、流路切換弁体61が弁座部62に接しているとき、切換弁部61aが第2流通孔62cを閉じ、第2パイロット通路225を流れる流体は第1流通孔61cを通る(図14)。流体が第1流通孔61cを通る構成の第2パイロット通路225を「第1通路形態F1」という。第1通路形態F1の第2パイロット通路225において第1流通孔61cが最も狭く、第1流通孔61cの流路面積A1が第1通路形態F1の第2パイロット通路225の流路面積になる。
流路切換機構260において、第2パイロット通路225が開いた状態の場合に、圧力差ΔP23が所定の切換設定値S1より小さいとき(ΔP23<S1)、第2パイロット通路225を流れる流体が流路切換弁体61を下流側に押す力が、圧力差作動ばね63が流路切換弁体61を上流側に押す力より小さくなる。これにより、流路切換弁体61が上流側に移動して弁座部62から離れる。そして、流路切換弁体61が弁座部62から離れているとき、第2流通孔62cが開き、第2パイロット通路225を流れる流体は第2流通孔62cを通る(図15)。流体が第2流通孔62cを通る構成の第2パイロット通路225を「第2通路形態F2」という。第2通路形態F2の第2パイロット通路225において第2流通孔62cが最も狭く、第2流通孔62cの流路面積A2が第2通路形態F2の第2パイロット通路225の流路面積になる。
電磁弁3において、弁本体110(第1空間110a、第3空間110f、作動棒挿通孔110g、第1主弁口115、第1主弁座116、第2パイロット弁室228)、第1主弁体120(第1主弁体本体121、第1主弁部121a、第1パイロット弁座121b、第1フランジ122、第1パイロット通路125)、作動棒128、ケース31、コイル32、プランジャー34、第1パイロット弁体140、第2パイロット弁体240は、それぞれの軸が軸線Lに一致する。
次に、電磁弁3の動作の一例について、図13~図16を参照して説明する。
コイル32が通電状態のとき、プランジャー34が、磁力によって上方に移動する。第1主弁室113の流体圧力と第1背圧室114の流体圧力との圧力差によって第1主弁体120(第1主弁部121a)が第1主弁座116から離れ、第1主弁口115が開く。第1主弁体120とともに作動棒128が上方に移動する。閉弁ばね245によって第2パイロット弁体240が第2パイロット弁座228bに押し付けられ、第2パイロット通路225が閉じる。第2背圧室214の流体圧力P2が第2主弁室213の流体圧力P1と同じになる。閉弁ばね235によって第2主弁体220(第2主弁部221a)が第2主弁座216に押し付けられ、第2主弁口215が閉じる。これにより、図13に示すように、電磁弁3は第1主弁口115が開き、第2主弁口215が閉じた状態になる。この状態において、流体は、入口流路110cから入り、第1主弁室113、第1主弁口115を通り、中間流路110dから出て行く。また、第2主弁室213の流体圧力P1と第2背圧室214の流体圧力P2とが同一である(P1≒P2)。また、第2主弁口215の流体圧力P3は、第2主弁室213の流体圧力P1および第2背圧室214の流体圧力P2より低い。
そして、コイル32が非通電状態になると、プランジャー34が、プランジャーばね35によって下方に移動する。プランジャー34が第1パイロット弁体140を第1パイロット弁座121bに押し付け、第1パイロット弁体140が第1パイロット通路125を閉じる。さらに、第1パイロット弁体140が第1主弁体120(第1主弁部121a)を第1主弁座116に押し付け、第1主弁体120が第1主弁口115を閉じる。これにより、第1主弁室113から第1主弁口115への流体の流れが遮断される。
また、第1主弁体120とともに作動棒128が下方に移動し、作動棒128が第2パイロット弁体240を下方に押す。これにより、第2パイロット弁体240が第2パイロット弁座228bから離れ、第2パイロット通路225が開く。このとき、第2背圧室214の流体圧力P2と第2主弁口215の流体圧力P3との圧力差ΔP23が大きいため(ΔP23≧S1)、図14に示すように、流路切換弁体61が第2パイロット通路225を流れる流体に押されて下流側(左方)に移動して弁座部62に接する。これにより、第2パイロット通路225を流れる流体は、流路面積の小さい第1流通孔61cを通って第2主弁口215(出口流路110e)に流れる。すなわち、流路切換機構260は、第2パイロット通路225を第1通路形態F1に切り換える。
第2背圧室214の流体が第1流通孔61cを通って第2主弁口215に流れると、第2主弁室213と第2背圧室214との間の流量より第2背圧室214と第2主弁口215との間の流量が小さくなる。そのため、第2主弁室213の流体圧力P1と第2背圧室214の流体圧力P2とが、ほぼ同じ値を維持したまま徐々に低下する。そして、第2背圧室214の流体圧力P2が低下して圧力差ΔP23が小さくなると(ΔP23<S1)、第2パイロット通路225を流れる流体が流路切換弁体61を下流側に押す力が弱まり、図15に示すように、流路切換弁体61が圧力差作動ばね63に押されて上流側に移動して弁座部62から離れる。これにより、第2パイロット通路225を流れる流体は、流路面積の大きい第2流通孔62cを通って第2主弁口215に流れる。すなわち、流路切換機構260は、第2パイロット通路225を第2通路形態F2に切り換える。
第2背圧室214の流体が第2流通孔62cを通って第2主弁口215に流れると、第2主弁室213と第2背圧室214との間の流量より第2背圧室214と第2主弁口215との間の流量が大きくなる。そのため、第2主弁室213の流体圧力P1より第2背圧室214の流体圧力P2が小さくなり(P1>P2)、第2背圧室214の流体圧力P2と第2主弁口215の流体圧力P3とがほぼ同じ値となる(P2≒P3)。これにより、第2主弁室213の流体圧力P1と第2背圧室214の流体圧力P2との圧力差ΔP12によって第2主弁体220に対して上方に押す力が加わり、図16に示すように、第2主弁体220が第2主弁座216から離れ、第2主弁口215が開く。このとき、第2主弁室213の流体圧力P1と第2主弁口215の流体圧力P3との圧力差ΔP13が、第2パイロット通路225が開いた直後より小さくなっているので、第2主弁室213から第2主弁口215に急激に流体が流れ込むことを抑制できる。これにより、第1主弁口115が閉じ、第2主弁口215が開いた状態になる。この状態において、流体は、中間流路110dから入り、第2主弁室213、第2主弁口215を通り、出口流路110eから出て行く。
電磁弁3は、上述した第1実施例に係る電磁弁1と同様の作用効果を奏する。
(第4実施例)
以下、本発明の電気的駆動弁の第4実施例に係るパイロット式の電磁弁について、図17~図21を参照して説明する。
図17は、本発明の第4実施例に係る電磁弁の断面図である。図18~図21は、図17の電磁弁の一部を示す断面図である。図18~図21において、(a)は主弁体およびその内部の断面図であり、(b)は(a)の一点鎖線で囲む部分の拡大断面図である。図18~図21は、順に第2主弁口が閉じた状態、途中状態1(第2均圧通路が第2通路形態となる状態)、途中状態2(第2均圧通路が第1通路形態となる状態)および第2主弁口が開いた状態を示している。図18、図21において、流体の流れを矢印で模式的に示している。以下の説明において、第3実施例に係る電磁弁3と同一(実質的に同一を含む)の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図17~図21に示すように、第4実施例に係る電磁弁4は、弁本体110と、第1主弁体120と、駆動部130と、第1パイロット弁体140と、第2主弁体220と、第2パイロット弁体240と、流路切換機構270と、を有している。電磁弁4は、上述した電磁弁3の流路切換機構260に代えて、構成の異なる流路切換機構270を有している。
流路切換機構270は、第2均圧通路226に配置されている。流路切換機構270は、流路切換弁体71と、弁座部72と、圧力差作動ばね73と、を有している。これらの部材は、上述した電磁弁2の流路切換弁体71、弁座部72および圧力差作動ばね73と、同一(実質的に同一を含む)の構成を有するため、同一の符号を付して説明を一部省略する。
第2流通孔72cの流路面積B2は、第1流通孔71cの流路面積B1より大きい。第2パイロット通路225の流路面積Bp2は、第1流通孔71cの流路面積B1より大きく、第2流通孔72cの流路面積B2より小さい(B2>Bp2>B1)。なお、流路面積とは、流路の最も狭い部分の断面積である。第2パイロット通路225(流路面積Bp2)の流量をQp2、第1流通孔71c(流路面積B1)の流量をQ1、第2流通孔72c(流路面積B2)の流量をQ2としたとき、電磁弁4は各流量の大きさがQ2>Qp2>Q1となるように構成されている。
流路切換機構270において、第2パイロット通路225が開いた状態の場合に、第2均圧通路226の上流側にある第2主弁室213の流体圧力P1と下流側にある第2背圧室214の流体圧力P2との圧力差ΔP12が小さいとき、または、圧力差ΔP12が大きくかつ第2背圧室214の流体圧力P2と第2主弁口215の流体圧力P3との圧力差ΔP23が小さいとき、第2均圧通路226を流れる流体が流路切換弁体71を下流側に押す力が、圧力差作動ばね73が流路切換弁体71を上流側に押す力より小さくなる。これにより、流路切換弁体71が上流側に移動して弁座部72に接する。そして、流路切換弁体71が弁座部72に接しているとき、切換弁部71aが第2流通孔72cを閉じ、第2均圧通路226を流れる流体は第1流通孔71cを通る(図20)。流体が第1流通孔71cを通る構成の第2均圧通路226Eを「第1通路形態G1」という。第2フランジ222の外周面と第2空間110bの内周面との隙間の断面積と、第1流通孔71cの流路面積B1と、を合わせた面積が、第1通路形態G1の第2均圧通路226Eの流路面積になる。第1通路形態G1の第2均圧通路226Eの流路面積は、第2パイロット通路225の流路面積より小さい。
流路切換機構270において、第2パイロット通路225が開いた状態の場合に、圧力差ΔP12が大きくかつ圧力差ΔP23が大きいとき、第2均圧通路226を流れる流体が流路切換弁体71を下流側に押す力が、圧力差作動ばね73が流路切換弁体71を上流側に押す力より大きくなる。これにより、流路切換弁体71が下流側に移動して弁座部72から離れる。そして、流路切換弁体71が弁座部72から離れているとき、第2流通孔72cが開き、第2均圧通路226を流れる流体は第2流通孔72cを通る(図19)。流体が第2流通孔72cを通る構成の第2均圧通路226Eを「第2通路形態G2」という。第2フランジ222の外周面と第2空間110bの内周面との隙間の断面積と、第2流通孔72cの流路面積B2と、を合わせた面積が、第2通路形態G2の第2均圧通路226Eの流路面積になる。第2通路形態G2の第2均圧通路226Eの流路面積は、第2パイロット通路225の流路面積より大きい。
次に、電磁弁4の動作の一例について、図18~図21を参照して説明する。
コイル32が通電状態のとき、上述した電磁弁3と同様に、電磁弁4は第1主弁口115が開き、第2主弁口215が閉じた状態になる(図18)。
そして、コイル32が非通電状態になると、プランジャー34が、プランジャーばね35によって下方に移動する。プランジャー34が第1パイロット弁体140を第1パイロット弁座121bに押し付け、第1パイロット弁体140が第1パイロット通路125を閉じる。さらに、第1パイロット弁体140が第1主弁体120(第1主弁部121a)を第1主弁座116に押し付け、第1主弁体120が第1主弁口115を閉じる。これにより、第1主弁室113から第1主弁口115への流体の流れが遮断される。
また、第1主弁体120とともに作動棒128が下方に移動し、作動棒128が第2パイロット弁体240を下方に押す。これにより、図19に示すように、第2パイロット弁体240が第2パイロット弁座228bから離れ、第2パイロット通路225が開く。第2パイロット通路225が開いた直後は第2背圧室214の流体圧力P2と第2主弁口215の流体圧力P3との圧力差ΔP23が大きく、第2背圧室214から第2主弁口215に流体が流れ、第2主弁室213の流体圧力P1と第2背圧室214の流体圧力P2との圧力差ΔP12が大きくなる。このとき、第2均圧通路226を流れる流体の流量が大きく、流路切換弁体71が流体に押されて上方に移動して弁座部72から離れる。これにより、第2均圧通路226を流れる流体は、流路面積の大きい第2流通孔72cを通って第2背圧室214に流れる。すなわち、流路切換機構270は、第2均圧通路226Eを第2通路形態G2に切り換える。
第2主弁室213の流体が第2流通孔72cを通って第2背圧室214に流れると、第2主弁室213と第2背圧室214との間の流量が第2背圧室214と第2主弁口215との間の流量より大きくなる。そのため、第2主弁室213の流体圧力P1と第2背圧室214の流体圧力P2とが徐々に低下しつつ互いに近づき、圧力差ΔP12が小さくなる。そして、圧力差ΔP12が小さくなると、第2均圧通路226を流れる流体の流量が小さくなり、流体が流路切換弁体71を上方に押す力が弱まって、図20に示すように、流路切換弁体71が下方に移動して弁座部72に接する。これにより、第2均圧通路226を流れる流体は、流路面積の小さい第1流通孔71cを通って第2背圧室214に流れる。すなわち、流路切換機構270は、第2均圧通路226Eを第1通路形態G1に切り換える。
第2主弁室213の流体が第1流通孔71cを通って第2背圧室214に流れると、第2主弁室213と第2背圧室214との間の流量が第2背圧室214と第2主弁口215との間の流量より小さくなる。そのため、第2主弁室213の流体圧力P1より第2背圧室214の流体圧力P2が低下して、圧力差ΔP12が大きくなる(P1>P2)とともに圧力差ΔP23が小さくなり(P2≒P3)、第2均圧通路226を流れる流体の流量が小さく、流路切換弁体71は弁座部72に接した状態を維持する。これにより、第2主弁室213の流体圧力P1と第2背圧室214の流体圧力P2との圧力差ΔP12によって第2主弁体220に対して上方に押す力が加わり、図21に示すように、第2主弁体220が第2主弁座216から離れ、第2主弁口215が開く。このとき、第2主弁室213の流体圧力P1と第2主弁口215の流体圧力P3との圧力差ΔP13が、第2パイロット通路225が開いた直後より小さくなっているので、第2主弁室213から第2主弁口215に急激に流体が流れ込むことを抑制できる。これにより、第1主弁口115が閉じ、第2主弁口215が開いた状態になる。この状態において、流体は、中間流路110dから入り、第2主弁室213、第2主弁口215を通り、出口流路110eから出て行く。
電磁弁4は、上述した第2実施例に係る電磁弁2と同様の作用効果を奏する。
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。