JP7325688B1 - 触媒、及びそれを用いた化合物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、水銀圧入法により測定した細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)との比(B/A)が、2.5以上15.0以下であり、かつ累積比表面積が5m2/g未満である触媒に関する。

Description

本発明は、高活性であり、高収率で目的物を得られる新規触媒に関するものであり、特に不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸、又は共役ジエンを酸化的に製造する際に、触媒活性が高い領域においても安定して高収率な製造を可能とする触媒に関する。
プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法や、ブテン類から1,3-ブタジエンを製造する気相接触酸化方法は工業的に広く実施されており、ビスマスおよびモリブデンを主成分とした複合金属酸化物触媒の使用が当業者にとって公知である。
特に、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する方法に関しては、その収率を向上する手段として多くの報告がなされている(例えば特許文献1、2等)。上記のような手段をもって改良をはかっても、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等の部分酸化反応により対応する不飽和アルデヒド及び/又は不飽和カルボン酸の製造において、さらなる収率の改善が求められている。例えば、目的生成物の収率は、製造に要するプロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等の使用量を左右し製造コストに多大な影響を与える。
また、触媒そのものの生産性を向上させ触媒のコストを低減させる目的で、調合工程において触媒原料を種々混合させてできる母液を乾燥させる際、スプレードライヤーを用いることが当業者にとって公知である。前記複合金属酸化物触媒を得る場合、スプレードライヤーによる乾燥以外の方法として母液を蒸発乾固またはゲル化させるものも挙げられるが、工程後の半製品が増粘した、または固化した状態であり、工業スケールでの製法としてはハンドリングが難しく、触媒のコストも高くなる傾向にある。
特許文献3にあるように、上記複合金属酸化物において一般に流通している触媒は比表面積が5m/g以上である。比表面積が5m/g未満の場合、比表面積が小さく原料と触媒の接触面積が小さくなるため反応率が低下し、その結果目的生成物の収率が低下する。比表面積を大きくする方法として、全細孔容積のうち小さい細孔径の細孔容積の割合を大きくすることが考えられる。例えば、特許文献4では全細孔容積のうち、比較的小さい細孔により占められる細孔容積の割合を大きくすることで収率を向上させている。しかし、細孔径を小さくすることで比表面積を大きくした場合、触媒の内部の気孔率が増え、結果として触媒の強度が悪化する懸念がある。触媒の強度が弱いと反応管に充填した際に触媒の一部が欠落するなど、実用に耐えられないか、充填時の慎重な作業が求められるため作業効率が悪化することが当業者にとって公知である。
そのため、強度を向上させるためには一般的に強度助剤が使用されるが、強度助剤自体のコスト増加や投入工程の煩雑さから、強度助剤が無くても高い強度を有する触媒が望まれていた。強度助剤を使わずに強度を高める方法として、例えば、特許文献5に転動造粒法による造粒時の相対遠心加速度を操作することで強度の高い触媒を製造する方法が記載されている。しかし、この方法では高い強度は得られたが望まれる水準の収率は得られなかった。すなわち、充填時に必要な強度を維持でき、強度助剤を含まず低コストで収率が高い高度な触媒は実現できていない状況であった。
国際公開第2016/136882号 日本国特開2017-024009号公報 日本国特公平06-007924号公報 日本国特許第6447327号公報 日本国特許第5970542号公報
本発明は、選択性および目的生成物の収率が高い触媒を提案するものである。
本発明者らの研究によれば、特に細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)に着目し、触媒の組成、製造方法を検討したところ、(B/A)が特定の範囲にある場合において、比表面積が5m/g未満と小さくても高収率を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。これによって比表面積が5m/g未満であってもその欠点を補って、十分使用に耐えられる触媒を完成した。
即ち、本発明は、以下1)~9)に関する。
1)
水銀圧入法により測定した細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)との比(B/A)が、2.5以上15.0以下であり、
かつ累積比表面積が5m/g未満である触媒。
2)
上記細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.030~0.35μmの累積細孔容積(C)との比(C/A)が2.0以上15.0以下である上記1)に記載の触媒。
3)
モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む、上記1)又は2)に記載の触媒。
4)
下記式(1)で表される触媒組成を有する上記3)に記載の触媒。
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0<e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5を満たし、i1は各元素の酸化状態によって決まる値である。)
5)
不活性担体に担持された上記1)から4)のいずれか一項に記載の触媒。
6)
上記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである上記5)に記載の触媒。
7)
不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物製造用である上記1)から6)のいずれか一項に記載の触媒。
8)
上記1)から7)のいずれか一項に記載の触媒を用いた不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物の製造方法。
9)
上記不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、上記不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸であり、上記共役ジエン化合物がブタジエンである上記8)に記載の製造方法。
本発明の触媒は、気相接触酸化反応における十分な機械的強度を保ちつつ、原料転化率の向上、及び収率向上に非常に有効である。
本発明(実施例2)の細孔分布を表すチャートである。横軸は細孔直径D(μm)、縦軸はサンプル重量あたりの細孔容積V(cc/g)を表す。
本発明の触媒は、水銀圧入法により測定した細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)との比(B/A)が、2.5以上15.0以下であり、かつ累積比表面積が5m/g未満であることを特徴とする。なお本明細書において「~」の前後の数値は含むものとする。
[細孔直径、累積細孔容積の測定方法]
本発明における細孔直径、累積細孔容積はポロシメーターを用いた水銀圧入法により測定することで結果を得る。ここで、水銀圧入法とは、表面張力の高い水銀に圧力を加え、固体表面の細孔もしくは隙間の中に圧入し、その時に加えた圧力と押し込まれた水銀容積との関係から細孔分布を求め、それに基づいて細孔直径及び、細孔容積を求める方法である。具体的な測定方法として、例えば触媒に対して真空脱気などの前処理を行わずに、全自動細孔分布測定装置(例えばAnton Paar社製水銀圧入孔径分析装置 Pore Master 60-GT)を用いて、試料重量約5gをセル容積2ccのラージセル(10mmΦ×6cm)に入れ、セルに水銀を充填して水銀圧と細孔に充填される水銀の容積を測定する方法が挙げられる。水銀表面張力を480dyn/cm、水銀接触角を140°と設定し、測定温度20℃、測定する細孔直径の範囲を0.0036μm~400μmとする条件のもと測定する。すべての細孔が円筒型であるとみなし、測定時に加えた圧力とWashburnの式を用いて解析を行うことで、触媒の各細孔直径の細孔分布を得ることができる。
[累積比表面積の測定方法]
累積比表面積Sは、本発明においては上述の水銀圧入法の測定結果を使用し、測定されたすべての細孔が円柱形状であると仮定して比表面積分布(-dS/d(logD) vs D)に変換したのち、すべての細孔径範囲にわたってこれを積分することで算出する。具体的には、細孔分布(-dV/d(logD) vs D)の各細孔径Dにおける-dV/d(logD)の数値データから、以下計算式により-dS/d(logD)を算出する。なお、Vはサンプル重量あたりの圧入された水銀の容積(単位:mL/g)であり、Dは細孔径(単位:μm)であり、logDはDの自然対数、dは微分記号を表す。また、以下式において、Diは特定の細孔径における計算式であることを明示するため記載しており、添え字のiは水銀圧入法における測定点の番号を意味し、1から始まり測定点の数まであるものとする。
-dS/d(logD)D=Di(単位:m/g)=-dV/d(logD)D=Di(単位:mL/g)÷1,000,000(単位:mL/m)×4÷(Di(単位:μm)÷1,000,000(単位:μm/m))
こうして得られた-dS/d(logD)D=Diを、測定したすべての細孔径範囲にわたり積分、具体的には区分求積により算出し、累積比表面積S(単位:m/g)を得ることができる。区分求積の計算式は以下の通りである。
Figure 0007325688000001

ここで、Σ[ ]はDに対して測定したすべての細孔径範囲の比表面積のうち、i=1と最大値(すなわち上述の通り水銀圧入法における測定点数)を省き和を取る演算である。i=1および最大値の場合を省く理由は、i=1および最大値において、隣接するデータが存在しない(例えば、i=1の場合に(logD)D=D0となるデータは存在しない)ためである。
[細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)との比(B/A)]
本発明の触媒は、単位重量当たりの細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)(cc/g)と単位重量当たりの細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)(cc/g)との比(B/A)が、2.5以上15.0以下である。
この細孔直径に着目する利点は、本範囲の細孔径の累積細孔容積の比を特定の範囲内とすることによって比表面積が5m/g未満と小さくなるにも関わらず高収率が得られる点であり、これまでそういった観点での開発はなされていない。すなわち、従来技術であれば0.35μmよりも小さい細孔径の細孔を増やすことにより、触媒としての反応活性を向上させていたが、同時に触媒の機械的強度も低下させていたことは上述の通りである。しかしながら、本発明者らによれば、後述する調合工程および乾燥工程を適切に制御することにより、0.35~10.0μmの範囲の細孔容積比を制御でき、触媒としての十分な活性を有しつつ機械的強度も高い触媒を見出し、さらに驚くべきことに、この触媒が高い選択率も有することを見出し、本発明に至った。ここで、0.35~10.0μmの細孔径領域は主に二次粒子由来の細孔であり、その形状および細孔径は、主に後述する乾燥工程において形成される触媒前駆体に、また副次的に後述する調合工程において調合液中で形成される分散粒子に、由来する。すなわち、本発明の触媒は、後述する調合工程および乾燥工程、またその他組成などの制御因子の調整により、達成されるものである。
また、B/Aが2.5以上15.0以下との数値範囲も、組成と製造方法の工夫から得られたものであって、公知の触媒では充足していない数値範囲となっている。これは5m/g未満の比表面積では高収率の触媒が得られないとの理由から、従来では使用できないと考えられる特徴を有することになる為である。そしてこの結果、以下説明する累積比表面積5m/g未満の触媒が実現可能なものとなる。
(B/A)の上限としては、好ましい順に12.5、12.2、10.0、8.0、7.0であり、特に好ましくは6.5である。また、下限としては、好ましい順に3.0、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0であり、特に好ましくは5.5である。従って、(B/A)の範囲としては好ましい順に3.0以上12.5以下、3.2以上12.2以下、3.5以上10.0以下、4.0以上8.0以下、4.5以上7.0以下であり、最も好ましい範囲は5.5以上6.5以下である。
なお単位重量当たりの細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)(cc/g)の好ましい範囲としては、0.007以上0.026以下であり、更に好ましい上限は順に、0.025、0.024、0.022、0.020であり、特に好ましくは0.018である。また、下限としては、更に好ましい順に0.008、0.010、0.012、0.014であり、特に好ましくは0.016である。従って範囲としては好ましい順に0.008以上0.025以下、0.010以上0.024以下、0.012以上0.022以下、0.014以上0.020以下であり、最も好ましい範囲は0.016以上0.018以下である。
単位重量当たりの細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)(cc/g)の好ましい範囲としては、0.060以上0.160以下であり、更に好ましい上限は順に、0.150、0.140、0.130、0.120であり、特に好ましくは0.110である。また、下限としては、更に好ましい順に0.065、0.070、0.075、0.080、0.085であり、特に好ましくは0.090である。従って、範囲としては好ましい順に0.065以上0.150以下、0.070以上0.150以下、0.075以上0.140以下、0.080以上0.130以下、0.085以上0.120以下であり、最も好ましい範囲は0.090以上0.110以下である。
[累積比表面積の上限および下限]
本発明の触媒は、累積比表面積が5.0m/g未満である。従来技術では比表面積が5.0m/g未満の触媒は反応率が低下し、その結果収率が低下する欠点があり、これを補う技術が無い限り実現可能性は高くないと考えられている。一方で累積比表面積が小さい触媒の可能性としては触媒の強度が上がることが上述の通り期待できる。本発明は、上記「細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)との比(B/A)」に特定の数値範囲を採用し、組成、製造方法の点からこの範囲を実現したところ、累積比表面積が5.0m/g未満であっても欠点を克服し、さらにはその利点を活用することに成功したものである。
累積比表面積の好ましい上限としては、順に4.5m/g、4.0m/g、3.5m/g、3.3m/g、3.0m/g、2.7m/g、2.5m/gであり、特に好ましくは2.0m/gである。また下限は、1.0m/g程度を想定できるが、好ましい下限としては順に1.1m/g、1.2m/g、1.3m/g、1.4m/gであり、特に好ましくは1.5m/gである。従って、累積比表面積の好ましい範囲としては順に1.1m/g以上4.5m/g以下、1.1m/g以上4.0m/g以下、1.1m/g以上3.5m/g以下、1.1m/g以上3.3m/g以下、1.2m/g以上3.0m/g以下、1.3m/g以上2.7m/g以下、1.4m/g以上2.5m/g以下であり、最も好ましくは1.5m/g以上2.0m/gである。
[細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.030~0.35μmの累積細孔容積(C)との比(C/A)]
本発明の触媒は、細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.030~0.35μmの累積細孔容積(C)との比(C/A)が、2.0以上15.0以下である場合がより好ましい。(C/A)がこの範囲であることによって、容積が小さい細孔が少ないにも関わらず高収率が得られる点においてより優れた効果を有する。
(C/A)の上限としては、好ましい順に11.0、10.5、10.0、9.0、8.0、7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.0、4.5であり、特に好ましくは4.2である。また、下限としては、好ましい順に2.5、3.0、3.5、3.8であり、特に好ましくは3.9である。従って、(C/A)の範囲としては好ましい順に2.5以上11.0以下、2.5以上10.5以下、2.5以上10.0以下、2.5以上9.0以下、2.5以上8.0以下、2.5以上7.5以下、2.5以上6.0以下、3.0以上5.5以下、3.5以上5.0以下、3.8以上4.5以下、最も好ましい範囲は3.9以上4.2以下である。
なお細孔直径0.030~0.35μmの累積細孔容積(C)(cc/g)の好ましい範囲としては、0.020以上0.150以下であり、更に好ましい上限は順に、0.130、0.110、0.090、0.080であり、特に好ましくは0.070である。また、下限としては、更に好ましい順に0.025、0.030、0.040、0.050であり、特に好ましくは0.060である。従って、範囲としては好ましい順に0.025以上0.130以下、0.030以上0.110以下、0.040以上0.090以下、0.050以上0.080以下、最も好ましい範囲は0.060以上0.070以下である。
細孔容積パラメーターを変化させるための方法として、調合工程におけるpHの調整や、乾燥工程における温度等の設定が挙げられるが、特に有効な方法は調合工程におけるpHの調整である。
[pHの調整]
すなわち、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含む各供給源化合物を溶媒または溶液に添加し一体化および加熱することにより調合液とする調合工程において、鉄原料の投入前に調合液のpHを1.0~7.5の範囲に調整する方法である。pHの調整方法としては、詳細は後述するが硝酸などの添加によりpHを下げる方法、またはアンモニア水などの添加によりpHを上げる方法が挙げられる。
調合液のpHの下限としてより好ましくは、1.5であり、さらに好ましい順に1.8、2.0、2.2、2.5、2.7、3.0、3.1、3.2、3.5、3.7、3.8、3.9である。調合液のpHが3.0より低いと調合液内に沈殿物やゲルが生じ後述する乾燥工程のスプレードライヤーにてノズル内で閉塞する恐れがあるが、本発明のようにスプレー条件とpHを制御することで細孔構造を変化させ、かつスプレーの閉塞の課題も回避することができる。また調合液のpHの上限としてより好ましくは、7.3であり、さらに好ましい順に7.0、6.7、6.5、6.3、6.1、6.0、5.9、5.8、5.5、5.3、5.0、4.8、4.5である。すなわち調合液のpHの値の範囲としては好ましい順に、1.5以上7.3以下、1.5以上7.0以下、1.8以上6.7以下、2.0以上6.5以下、2.2以上6.3以下、2.5以上6.1以下、2.7以上6.0以下、3.0以上5.9以下、3.1以上5.8以下、3.2以上5.5以下、3.5以上5.3以下、3.7以上5.0以下、3.8以上4.8以下であり、最も好ましくは3.9以上4.5以下である。本発明において、鉄原料の投入前に特にpH調整剤を添加せずとも、上記pHの範囲内に入ることがあるが、本発明の本質は鉄原料の投入前にpH調整剤を添加してpHを上記範囲内に調整することにある。
pH調整剤に関しては、pHを下げる方法においては硝酸、硫酸、塩酸、シュウ酸など当業者であれば触媒原料として使用する一般的なpH調整のための酸の他、後述する触媒活性成分の元素組成を変えない範囲内であればリン酸やホウ酸、モリブデン酸、硝酸鉄など焼成後に元素が残留するpH調整剤も含まれるものとするが、最も好ましくは硝酸である。pHを上げる方法においてはアンモニア水、ピリジン、炭酸アンモニウム水溶液など当業者であれば触媒原料として使用する一般的なpH調整のための塩基の他、後述する触媒活性成分の元素組成を変えない範囲内であれば水酸化カリウムや水酸化セシウムなど焼成後に元素が残留するpH調整剤も含まれるものとするが、最も好ましくはアンモニア水である。
またこの方法を実施する場合、鉄原料を投入し攪拌後にビスマス原料を調合液に投入するという順でスラリーを調製する方法が最も好ましい実施態様である。
pH調整剤の滴下に際しては、攪拌動力として0.01~5.00kw/mで攪拌しながら投入する。攪拌動力の下限として好ましくは0.05kw/m、0.10kw/m、0.50kw/m、1.00kw/mであり、攪拌動力の上限として好ましくは4.50kw/m、4.00kw/m、3.50kw/m、3.00kw/mである。すなわち攪拌動力の範囲は好ましい順に0.050.05~4.50kw/m、0.10~4.00kw/m、0.50~3.50kw/mであり、最も好ましくは1.00~3.00kw/mである。
pH調整剤の滴下時間は、1秒から5分の間である。滴下時間の下限として好ましくは5秒、10秒、15秒であり、滴下時間の上限として好ましくは4分、3分、2分30秒、2分、1分30秒、1分、45秒、30秒である。すなわち滴下時間の範囲は好ましい順に、5秒~4分、5秒~3分、5秒~2分30秒、5秒~2分、5秒~1分30秒、5秒~1分、10~45秒であり、最も好ましくは15~30秒である。
pH調整剤の滴下時の調合液の液温は、5~80℃である。液温の下限として好ましくは10℃、20℃、30℃であり、液温の上限として好ましくは70℃、60℃、50℃、40℃である。すなわち液温の範囲としては好ましい順に、10~70℃、10~60℃、20~50℃であり、最も好ましくは30~40℃である。
[乾燥条件]
上述の通り、本発明の触媒を得る方法の一つとして調合工程におけるpHの調整があるが、そのほかに有効な方法は噴霧乾燥による場合の噴霧器(ロータリーアトマイザー)の回転数の最適化である。最適なロータリーアトマイザーの回転数は、ロータリーアトマイザーや噴霧乾燥器の構造、乾燥させる液体の温度やpH、粘度、および触媒構成成分の配合比率などに影響されるため一概には言えないが、好ましくは10,000rpm以上18,000rpm以下である。更に好ましいロータリーアトマイザーの回転数の上限は、17,000rpmであり、特に好ましくは16,000rpmであり、最も好ましくは15,000rpmである。また更に好ましい下限は、11,000rpmであり、特に好ましい下限は12,000rpmであり、最も好ましい下限は13,000rpmである。すなわちロータリーアトマイザーの回転数のより好ましい範囲としては順に11,000rpm以上17,000rpm以下、12,000rpm以上16,000rpm以下であり、最も好ましくは13,000rpm以上15,000rpm以下である。
また、ロータリーアトマイザーの回転数は相対遠心加速度によっても表され、6000G以上20000G以下であることが好ましい。より好ましい下限としては、順に7500G、8500G、10000Gであり、より好ましい上限としては、順に18000G、16000G、14000Gである。すなわちロータリーアトマイザーの回転数のより好ましい範囲は順に7500G以上18000G以下、8500G以上16000G以下であり、最も好ましくは10000G以上14000G以下である。
噴霧乾燥の噴霧器の入口温度、出口温度も上記パラメーターに影響を与える(原因として触媒前駆体の平均粒子径、触媒前駆体の中空率、触媒前駆体の水分量の変化が考えられる)。入口温度としては、180℃以上320℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に200℃、220℃、230℃であり、より好ましい上限は順に300℃、280℃、270℃である。すなわち入口温度としてより好ましい範囲は200℃以上300℃以下、220℃以上280℃以下であり、最も好ましくは230℃以上270℃以下である。
また、噴霧乾燥の噴霧器の出口温度としては、100℃以上150℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に101℃、102℃、103℃、104℃、105℃であり、より好ましい上限は順に140℃、130℃、120℃である。すなわち出口温度としてより好ましい範囲は順に101℃以上150℃以下、102℃以上150℃以下、103℃以上140℃以下、104℃以上130℃以下であり、最も好ましくは105℃以上120℃以下である。
さらに、入口温度と出口温度の差としては、30℃以上220℃以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に50℃、80℃、100℃、120℃であり、より好ましい上限は順に200℃、180℃、165℃、150℃である。すなわち入口温度と出口温度の差としてより好ましい範囲は順に50℃以上200℃以下、80℃以上180℃以下、100℃以上165℃以下であり、最も好ましくは120℃以上150℃以下である。
さらに、本発明の触媒の製法として以下式で与えられるパラメーターSDの範囲は、22以上51以下が好ましい。より好ましい下限としては、順に26、28、30、32、34、35であり、より好ましい上限は順に48、44、42、40である。すなわちSDのより好ましい範囲としては26以上51以下、28以上51以下、30以上48以下、32以上44以下、34以上42以下であり、最も好ましくは35以上40以下である。
SD=51.3+0.0766×{(スプレードライヤーの入口温度、単位:℃)-(スプレードライヤーの出口温度、単位:℃)}-0.00173×(ロータリーアトマイザーの回転数、単位:rpm)
すなわち本発明の触媒は、上述した調合工程におけるpH制御および乾燥工程における乾燥条件を適切に制御することにより得ることができる。更に本発明の触媒は、以下に述べるその他の方法を必要に応じ組み合わせることによって得ることもできる。
[その他の方法]
その他、本発明の触媒を得る手段として、後述する各製造工程での各条件を変更しても制御できるが、例えば、(I)触媒組成を変更する方法、(II)焼成条件を変更する方法、(III)焼成後の降温条件を変更する方法、(IV)触媒製造の全工程において、触媒およびその前駆体に機械的強度を加えないよう制御する方法、(V)純度の高い原料を使用する方法、および(I)から(VIII)を組み合わせる方法があげられる。なお方法(VI)、方法(VII)および方法(VIII)の詳細については後述する。
方法(I)に関しては、後述する組成式(1)において、e1/b1の上限として望ましい順に、4.00、3.50、3.00であり、e1/b1の下限は望ましい順に、0.10、0.50、1.00、1.40、1.50、1.70、1.90、2.00であり、e1/b1の範囲として好ましい順に0.10以上4.00以下、0.50以上4.00以下、1.00以上4.00以下、1.40以上4.00以下、1.50以上4.00以下、1.70以上4.00以下、1.90以上3.50以下、2.00以上3.00以下である。d1/b1の上限として望ましい順に、12.0、11.0、10.0、9.5であり、d1/b1の下限として望ましい順に、2.0、3.0、4.0、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0であり、d1/b1の範囲として好ましい順に2.0以上12.0以下、3.0以上12.0以下、4.0以上12.0以下、5.0以上12.0以下、5.5以上12.0以下、6.0以上11.0以下、6.5以上10.0以下、7.0以上9.5以下である。c1/e1の上限として望ましい順に、4.0、3.0、2.5、2.0、1.7であり、c1/e1の下限として望ましい順に、0.1、0.4、0.6、0.8であり、c1/e1の範囲として好ましい順に0.1以上4.0以下、0.1以上3.0以下、0.4以上2.5以下、0.6以上2.0以下、0.8以上1.7以下である。c1/d1の上限として望ましい順に、2.0、1.0、0.8、0.6であり、c1/d1の下限として望ましい順に、0.1、0.2であり、c1/d1の範囲として好ましい順に0.1以上2.0以下、0.1以上1.0以下、0.1以上0.8以下、0.2以上0.6以下である。g1/d1の上限として望ましい順に、0.100、0.050、0.040、0.030、0.020、0.015であり、g1/d1の下限として好ましい順に、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005であり、g1/d1の範囲として好ましい順に0.001以上0.100以下、0.001以上0.050以下、0.002以上0.040以下、0.003以上0.030以下、0.004以上0.020以下、0.005以上0.015以下である。g1/c1の上限として望ましい順に、0.070、0.050、0.046であり、g1/c1の下限として望ましい順に、0.005、0.010、0.012であり、g1/c1の範囲として好ましい順に0.005以上0.070以下、0.010以上0.050以下、0.012以上0.046以下である。
方法(II)に関しては、後述する予備焼成および本焼成、およびそれらの両方において、焼成温度は200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下、より好ましくは460℃以上550℃以下である。焼成時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下、より好ましくは2時間以上15時間以下、最も好ましくは2時間以上9時間以下である。焼成雰囲気は酸素濃度が10容量%以上40容量%以下、好ましくは15容量%以上30容量%以下、最も好ましくは空気雰囲気である。
方法(III)に関しては、後述する予備焼成および本焼成、およびそれらの両方において、焼成工程中の最高到達温度(予備焼成温度もしくは本焼温度)から、室温に低下するまでの触媒表面の温度の低下速度(降温速度)が、1℃/分以上200℃/分以下、好ましくは5℃/分以上150℃/分以下、より好ましくは10℃/分以上120℃/分以下、最も好ましくは50℃/分以上100℃/分以下、である。上述した降温速度範囲を達成するために一般に工業的に取られる降温手法、たとえば焼成炉から取り出した焼成後の触媒を不活性雰囲気や不活性な溶媒によるミストに暴露する手法や、あらかじめ十分に冷却された室内に焼成後の触媒を急速に移動させる手法はすべて、本発明実施の範疇となる。
方法(IV)に関しては、後述する触媒前駆体および/または各工程で形成された顆粒に対して、機械的な衝撃およびせん断応力等を加えないよう制御する手法である。当該手法では、顆粒に対して加えられうる機械的な衝撃およびせん断応力等を100kgf以下、好ましくは50kgf以下、より好ましくは20kgf以下、さらに好ましくは10kgf以下、最も好ましくは5kgf以下に制御する。
方法(V)に関しては、試薬級の高純度な原料を使用する方法であればその詳細を問わないが、たとえば硫黄およびその化合物、リチウム、ハロゲンおよびその化合物、鉛の含有量の合計が10000重量ppm以下、好ましくは1000重量ppm以下、より好ましくは100重量ppm、最も好ましくは10重量ppm以下である原料を使用する。
方法(VI)に関しては、後述するように触媒前駆体をいったん顆粒として得て、これを成型する方法が挙げられる。触媒前駆体を顆粒として得ることで、触媒の各成分をより均一に製造することができる。
方法(VII)に関しては、後述する触媒の調合工程において、コバルト原料とニッケル原料が調合釜の中で混合、反応、スラリー化、滞留する時間をなるべく短くなるよう制御する方法であり、より具体的にはモリブデンおよびアルカリ金属に由来する金属塩水溶液と、コバルトおよびニッケルに由来する金属塩水溶液の、調合釜での混合後の滞留時間を短くする方法、あるいは調合釜中のpHを上述の通り特定の範囲に制御した後、コバルトおよびニッケルに由来する金属塩水溶液を調合釜に投入した後の滞留時間を短くする方法である。上記滞留時間としては、24時間が好ましく、1時間がさらに好ましく、30分がさらに好ましく、10分が最も好ましい。上記pHの範囲としては1以上14以下、好ましくは2以上10以下、より好ましくは2以上8以下、最も好ましくは3以上7以下となる。
方法(VIII)に関しては、後述する触媒の調合工程において、各原料を調合工程の中で分割せず一括で投入する方法、あるいは調合液中の硝酸濃度を下げる方法が挙げられる。上記の一括で投入する方法とは、各原料の必要量を全て投入したのちに次の原料を投入することを意味する。また上記の調合液中の硝酸濃度を下げる方法では、調合完了し次工程に進む際の調合液の硝酸イオンとしての質量%での濃度が、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、最も好ましくは25質量%以下、である。
[組成]
本発明の触媒は、モリブデン、ビスマスおよび鉄を含むことが好ましく、下記式(1)で表される組成を有することがより好ましい。
Moa1Bib1Nic1Cod1Fee1f1g1h1i1・・・(1)
(式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0<e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5を満たし、i1は各元素の酸化状態によって決まる値である。)
上記式(1)において、a1=12としたときのb1~h1の好ましい範囲は以下である。
b1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6であり、上限としては好ましい順に、6.0、5.0、4.0、3.0、2.0、1.8、1.5、1.2、1.0、0.9である。すなわちb1の範囲としては好ましい順に、0.1以上6.0以下、0.1以上5.0以下、0.1以上4.0以下、0.1以上3.0以下、0.1以上2.0以下、0.2以上1.8以下、0.3以上1.5以下、0.4以上1.2以下、0.5以上1.0以下であり、最も好ましい範囲は、0.6以上0.9以下である。
c1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.3、1.5であり、上限としては好ましい順に、8.0、7.0、6.0、5.0、4.0、3.5、3.3である。すなわちc1の範囲としては好ましい順に、0.1以上8.0以下、0.2以上8.0以下、0.3以上8.0以下、0.5以上8.0以下、0.7以上8.0以下、0.8以上7.0以下、0.9以上6.0以下、1.0以上5.0以下、1.1以上4.0以下、1.3以上3.5以下であり、最も好ましい範囲は、1.5以上3.3以下である。
d1の下限としては好ましい順に、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、5.4であり、上限としては好ましい順に、10.0、9.5、9.0、8.5、8.0、7.5、7.0である。すなわちd1の範囲としては好ましい順に、1.0以上10.0以下、1.0以上9.5以下、2.0以上9.0以下、3.0以上8.5以下、4.0以上8.0以下、5.0以上7.5以下であり、最も好ましい範囲は、5.4以上7.0以下である。
c1+d1の下限としては好ましい順に、1.1、2.0、4.0、6.0、7.0、7.8であり、上限としては好ましい順に、20.0、15.0、12.5、11.0、10.0、9.5である。すなわち、c1+d1の範囲としては好ましい順に、1.1以上20.0以下、2.0以上15.0以下、4.0以上12.5以下、6.0以上11.0以下、7.0以上10.0以下であり、最も好ましい範囲は、7.8以上9.5以下である。
e1の下限としては好ましい順に、0.1、0.2、0.5、0.8、1.0、1.5、1.6、1.7であり、上限としては好ましい順に、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.2である。すなわちe1の範囲としては好ましい順に、0.1以上5.0以下、0.2以上5.0以下、0.5以上4.5以下、0.8以上4.0以下、1.0以上3.5以下、1.5以上3.0以下、1.6以上2.5以下であり、最も好ましい範囲は、1.7以上2.2以下である。
f1の上限としては好ましい順に、1.8、1.5、1.0、0.8、0.5であり、下限としては、0が好ましい。すなわちf1の範囲としては好ましい順に0以上1.8以下、0以上1.5以下、0以上1.0以下、0以上0.8以下、0以上0.5以下であり、最も好ましくはf1が0である。
g1の下限としては好ましい順に、0.01、0.02、0.03であり、上限としては好ましい順に、2、1、0.5、0.4、0.3、0.2、0.15、0.09である。すなわちg1の範囲としては好ましい順に0.01以上2以下、0.01以上1以下、0.01以上0.5以下、0.01以上0.4以下、0.01以上0.3以下、0.01以上0.2以下、0.02以上0.15以下であり、最も好ましい範囲は、0.03以上0.09以下である。
h1の上限としては好ましい順に、4.0、3.0、2.0、1.8、1.5、1.0、0.8、0.5であり、下限としては、0が好ましい。すなわちh1の範囲としては好ましい順に0以上4.0以下、0以上3.0以下、0以上2.0以下、0以上1.8以下、0以上1.5以下、0以上1.0以下、0以上0.8以下、0以上0.5以下であり、最も好ましくはh1が0である。
式(1)におけるXとしては、タングステン、アンチモン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、セリウムが好ましく、アンチモン、亜鉛が特に好ましい。
式(1)におけるYとしては、ナトリウム、カリウム、セシウムが好ましく、カリウム、セシウムが更に好ましく、カリウムが特に好ましい。
式(1)におけるZとしては、リンが好ましい。
乾燥温度としては、水分を除去できるものであれば特に制限はなく、圧力や時間を調整する場合には、常温(25℃)であっても良い。しかし、より確実に、短時間で水分を除去する為には、乾燥温度は80℃以上が好ましく、更に好ましくは90℃以上である。また圧力を調整しない場合には乾燥温度は100℃以上が好ましく、更に好ましくは150℃以上である。
予備焼成としては、200℃~600℃程度の温度で1~12時間程度の焼成を行う。焼成時の雰囲気や昇温速度は当業者の知る範囲であれば特に制限はないが、例えば空気雰囲気、窒素などの不活性雰囲気、メタノールやエタノールなどの有機化合物を0%より多く含んだ含有機化合物雰囲気であり、昇温速度は0.01℃/分以上10℃/分以下である。
[担持]
触媒調製後に予備焼成を行った予備焼成粉体を不活性担体に担持させた触媒は、本発明の触媒として特に効果の優れたものである。
不活性担体の材質としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカアルミナ、炭化ケイ素、炭化物、およびこれらの混合物など公知の物を使用でき、さらにその粒径、吸水率、機械的強度、各結晶相の結晶化度や混合割合なども特に制限はなく、最終的な触媒の性能、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲が選択されるべきである。担体と予備焼成粉体の混合の割合は、各原料の仕込み質量により、下記式より担持率として算出される。なお、本操作において触媒成型助剤や強度向上剤等を用いる場合には、総量(分母)に算入する。
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100
上記担持率としての好ましい上限は、80質量%であり、さらに好ましくは60質量%である。
また好ましい下限は、20質量%であり、さらに好ましくは30質量%である。すなわち担持率として好ましい範囲は20質量%以上80質量%以下であり、最も好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
なお不活性担体としては、シリカ及び/又はアルミナが好ましく、シリカとアルミナの混合物が特に好ましい。
なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニルアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成型性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉体100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は10~30質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉末は成型機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。
[触媒の製造方法等]
本発明の触媒を構成する各元素の出発原料としては特に制限されるものではないが、例えばモリブデン成分の原料としては三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、パラモリブデン酸アンモニウム、メタモリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸またはその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸またはその塩などを用いることができる。
ビスマス成分の原料としては硝酸ビスマス、炭酸ビスマス、硫酸ビスマス、酢酸ビスマスのようなビスマス塩、三酸化ビスマス、金属ビスマスなどを用いることができる。これらの原料は固体のままあるいは水溶液や硝酸溶液、それらの水溶液から生じるビスマス化合物のスラリーとして用いることができるが、硝酸塩、あるいはその溶液、またはその溶液から生じるスラリーを用いることが好ましい。
その他の成分元素の出発原料としては、一般にこの種の触媒に使用される金属元素のアンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩、炭酸塩、次炭酸塩、酢酸塩、塩化物、無機酸、無機酸の塩、ヘテロポリ酸、ヘテロポリ酸の塩、硫酸塩、水酸化物、有機酸塩、酸化物またはこれらの混合物を組み合わせて用いればよいが、アンモニウム塩および硝酸塩が好適に用いられる。
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。スラリー液は、各活性成分含有化合物と水とを均一に混合して得ることができる。スラリー液における水の使用量は、用いる化合物の全量を完全に溶解できるか、または均一に混合できる量であれば特に制限はない。乾燥方法や乾燥条件を勘案して、水の使用量を適宜決定すれば良い。通常、水の使用量は、スラリー調製用化合物の合計質量100質量部に対して、100質量部以上2000質量部以下である。水の量は多くてもよいが、多過ぎると乾燥工程のエネルギーコストが高くなり、又完全に乾燥できない場合も生ずるなどデメリットが多い。
上記各成分元素の供給源化合物のスラリー液は上記の各供給源化合物を、(i)一括して混合する方法、(ii)一括して混合後、熟成処理する方法、(iii)段階的に混合する方法、(iv)段階的に混合・熟成処理を繰り返す方法、および(i)~(iv)を組み合わせた方法により調製することが好ましい。ここで、上記熟成とは、「工業原料もしくは半製品を、一定時間、一定温度などの特定条件のもとに処理して、必要とする物理性、化学性の取得、上昇あるいは所定反応の進行などをはかる操作」のことをいう。なお、本発明において、上記の一定時間とは、5分以上24時間以下の範囲をいい、上記の一定温度とは室温以上かつ水溶液または水分散液の沸点以下の範囲をいう。このうち最終的に得られる触媒の活性及び収率の面で好ましいのは(iii)段階的に混合する方法であり、更に好ましいのは段階的に母液に混合する各原料は全溶した溶液とする方法であり、最も好ましいのはモリブデン原料を調合液またはスラリーとした母液に、アルカリ金属溶液、硝酸塩の各種混合液を混合する方法である。ただし、この工程で必ずしもすべての触媒構成元素を混合する必要はなく、その一部の元素または一部の量を以降の工程で添加してもよい。
本発明において、必須活性成分を混合する際に用いられる攪拌機の攪拌翼の形状は特に制約はなく、プロペラ翼、タービン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、スクリュー翼、アンカー翼、リボン翼、大型格子翼などの任意の攪拌翼を1段あるいは上下方向に同一翼または異種翼を2段以上で使用することができる。また、反応槽内には必要に応じてバッフル(邪魔板)を設置しても良い。
次いで、このようにして得られたスラリー液を乾燥する。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の出口における温度が70℃以上150℃以下である。
上記のようにして得られた触媒前駆体は予備焼成し、成形を経て、本焼成することで、成形形状を制御、保持することが可能となり、工業用途として特に機械的強度が優れた触媒が得られ、安定した触媒性能を発現できる。
成形は、シリカ等の担体に担持する担持成形と、担体を使用しない非担持成形のいずれの成形方法も採用できる。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。成形品の形状としては、例えば、円柱状、リング状、球状等が運転条件を考慮して適宜選択可能であるが、球状担体、特にシリカやアルミナ等の不活性担体に触媒前駆体を担持した、平均粒径3.0mm以上10.0mm以下、好ましくは平均粒径3.0mm以上8.0mm以下の担持触媒であるとよい。担持方法としては転動造粒法、遠心流動コーティング装置を用いる方法、ウォッシュコート方法等が広く知られており、予備焼成粉体が担体に均一に担持できる方法で有れば特に限定されないが、触媒の製造効率等を考慮した場合、転動造粒法が好ましい。具体的には、固定円筒容器の底部に、平らな、あるいは凹凸のある円盤を有する装置で、円盤を高速で回転させることにより、容器内にチャージされた担体を、担体自体の自転運動と公転運動の繰り返しにより激しく撹拌させ、ここに予備焼成粉体を添加することにより粉体成分を担体に担持させる方法である。なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニルアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等がより好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液がさらに好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成型性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉体100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は15~50質量部が好ましい。担持に際してバインダーと予備焼成粉体は成型機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。また、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。なお、成形において添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
予備焼成方法や予備焼成条件または本焼成方法や本焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。予備焼成や本焼成は、通常、空気等の酸素含有ガス流通下または不活性ガス流通下で、200℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上550℃以下で、0.5時間以上、好ましくは1時間以上40時間以下で行う。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させない気体のことをいい、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。尚、触媒を使用して不飽和アルデヒド、及び/又は不飽和カルボン酸を製造する際の反応条件等に応じて、特に本焼成における最適な条件は異なり、本焼成工程の工程パラメーターすなわち雰囲気中の酸素含有率、最高到達温度や焼成時間等の変更を行うことは当業者にとって公知であるため、本発明の範疇に入るものとする。また、本焼成工程は前述の予備焼成工程よりも後に実施されるものとし、本焼成工程における最高到達温度(本焼温度)は、前述の予備焼成工程における最高到達温度(予備焼成温度)よりも高いものとする。焼成の手法は流動床、ロータリーキルン、マッフル炉、トンネル焼成炉など特に制限はなく、最終的な触媒の性能、機械的強度、成形性や生産効率等を考慮して適切な範囲が選択されるべきである。
本発明の触媒は、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を製造する為の触媒として使用される場合が好ましく、より好ましくは不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒として用いることが更に好ましく、プロピレンからアクロレインを製造する為の触媒として用いることが特に好ましい。不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を製造するような発熱反応のプロセスでは、実プラントにおいては反応により生じる発熱で触媒自身が劣化するのを防ぐ目的で、反応管入口側から反応管出口側に向けて活性が高くなるよう異なる触媒種を多層で充填することが当業者にとっては公知である。本発明の触媒は、反応管入口側および反応管出口側、およびその中間の触媒層のいずれでも使用できるが、たとえば反応管の最も出口側、すなわち反応管内の全触媒層の中で最も高活性な触媒に用いることが最も好ましい。なお、多層充填においては、2層又は3層充填が特に好ましい態様である。
[第二段目触媒]
本発明の触媒は、第一段目の触媒、すなわち不飽和アルデヒド化合物を製造する為の触媒としてだけではなく、第二段目の触媒、すなわち不飽和カルボン酸化合物を製造する為の触媒としても用いることができる。
第二段目の触媒としては、下記式(2)で表される触媒を用いることが好ましい。
Mo12a2b2Cuc2Sbd2X2e2Y2f2Z2g2h2・・・(2)
(式中、Mo、V、W、Cu、SbおよびOはそれぞれ、モリブデン、バナジウム、タングステン、銅、アンチモンおよび酸素を示し、X2はアルカリ金属、およびタリウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Y2はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を、Z2はニオブ、セリウム、すず、クロム、マンガン、鉄、コバルト、サマリウム、ゲルマニウム、チタンおよび砒素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素をそれぞれ示す。またa2、b2、c2、d2、e2、f2、g2およびh2は各元素の原子比を表し、0<a2≦10、0≦b2≦10、0<c2≦6、0<d2≦10、0≦e2≦0.5、0≦f2≦1、0≦g2<6を満たす。また、h2は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素原子数である。)。
上記式(2)で表される触媒の製造にあたっては、この種の触媒、例えば酸化物触媒、ヘテロポリ酸又はその塩構造を有する触媒を調製する方法として一般に知られている方法が採用できる。本発明の触媒を第二段目の触媒として用いる場合、触媒の製造にあたっては、上述した本発明の触媒を得る方法を適宜適用できる。触媒を製造する際に使用できる原料は特に限定されず、種々のものが使用できる。例えば、三酸化モリブデンのようなモリブデン酸化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムのようなモリブデン酸又はその塩、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸のようなモリブデンを含むヘテロポリ酸又はその塩などを用いることができる、アンチモン成分原料としては特に制限はないが、三酸化アンチモンもしくは酢酸アンチモンが好ましい。バナジウム、タングステン、銅等、その他の元素の原料としてはそれぞれの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、金属等が使用できる。
これら活性成分を含む化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記原料を水中で混合して得られたスラリー液を乾燥し、触媒前駆体固体とする。乾燥方法は、スラリー液が完全に乾燥できる方法であれば特に制約はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固などが挙げられ、スラリー液を短時間に粉末又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリー液の濃度、送液速度等によって異なるが、概ね乾燥機の入口のおける温度が140~400℃、出口における温度が70~150℃であり、入口温度が出口温度より高くなる。また、この際得られるスラリー液乾燥体の平均粒子径が10~700μmとなるように乾燥するのが好ましい。
前記のようにして得られた第二段目の触媒前駆体固体は、そのまま被覆用混合物に供することができるが、焼成すると成形性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~350℃、好ましくは150~300℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。このようにして得られた焼成後の固体は成形前に粉砕されることが好ましい。粉砕方法として特に制限はないが、ボールミルを用いると良い。
また、前記第二段目のスラリーを調製する際の活性成分を含有する化合物は、必ずしも全ての活性成分を含んでいる必要はなく、一部の成分を下記成形工程前に使用してもよい。
前記第二段目の触媒の形状は特に制約はなく、酸化反応において反応ガスの圧力損失を小さくするために、柱状物、錠剤、リング状、球状等に成型し使用する。このうち選択性の向上や反応熱の除去が期待できることから、不活性担体に触媒前駆体固体を担持し、担持触媒とするのが特に好ましい。この担持は以下に述べる転動造粒法が好ましい。この方法は、例えば固定容器内の底部に、平らなあるいは凹凸のある円盤を有する装置中で、円盤を高速で回転することにより、容器内の担体を自転運動と公転運動の繰返しにより激しく攪拌させ、ここにバインダーと触媒前駆体固体並びに、必要により、これらに他の添加剤例えば成型助剤、強度向上剤を添加した担持用混合物を担体に担持する方法である。バインダーの添加方法は、1)前記担持用混合物に予め混合しておく、2)担持用混合物を固定容器内に添加するのと同時に添加、3)担持用混合物を固定容器内に添加した後に添加、4)担持用混合物を固定容器内に添加する前に添加、5)担持用混合物とバインダーをそれぞれ分割し、2)~4)を適宜組み合わせて全量添加する等の方法が任意に採用しうる。このうち5)においては、例えば担持用混合物の固定容器壁への付着、担持用混合物同士の凝集がなく担体上に所定量が担持されるようオートフィーダー等を用いて添加速度を調節して行うのが好ましい。バインダーは、水やエタノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニルアルコール、結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、セルロース類及びエチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等が好ましく、特にグリセリンの濃度5質量%以上の水溶液が好ましい。これらバインダーの使用量は、担持用混合物100質量部に対して通常2~60質量部、好ましくは10~50質量部である。
上記担持における担体の具体例としては、炭化珪素、アルミナ、シリカアルミナ、ムライト、アランダム等の直径1~15mm、好ましくは2.5~10mmの球形担体等が挙げられる。これら担体は通常は10~70%の空孔率を有するものが用いられる。担体と担持用混合物の割合は通常、担持用混合物/(担持用混合物+担体)=10~75質量%、好ましくは15~60質量%である。担持用混合物の割合が大きい場合、担持触媒の反応活性は大きくなるが、機械的強度が小さくなる傾向にある。逆に、担持用混合物の割合が小さい場合、機械的強度は大きいが、反応活性は小さくなる傾向がある。なお、前記において、必要により使用する成型助剤としては、シリカゲル、珪藻土、アルミナ粉末等が挙げられる。成型助剤の使用量は、触媒前駆体固体100質量部に対して通常1~60質量部である。また、更に必要により触媒前駆体固体及び反応ガスに対して不活性な無機繊維(例えば、セラミックス繊維又はウィスカー等)を強度向上剤として用いることは、触媒の機械的強度の向上に有用であり、ガラス繊維を用いることが好ましい。これら繊維の使用量は、触媒前駆体固体100質量部に対して通常1~30質量部である。なお、第一段目の触媒の成形においては、添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
前記のようにして得られた担持触媒はそのまま触媒として気相接触酸化反応に供することができるが、焼成すると触媒活性が向上する場合があり好ましい。焼成方法や焼成条件は特に限定されず、公知の処理方法および条件を適用することができる。焼成の最適条件は、使用する触媒原料、触媒組成、調製法等によって異なるが、焼成温度は通常100~450℃、好ましくは270~420℃、焼成時間は1~20時間である。なお、焼成は、通常空気雰囲気下に行われるが、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気下での焼成後に必要に応じて更に空気雰囲気下で焼成を行ってもよい。
[触媒の用途等]
本発明の触媒を、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして対応する不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸を製造する反応、特にプロピレンを分子状酸素又は分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化してアクロレイン、アクリル酸を製造する反応に使用する場合において、触媒活性、および収率の向上をすることができ、公知の方法と比較して製品の価格競争力の向上に非常に有効である。また、炭素原子数4以上のモノオレフィン(ブテン類等)と分子状酸素を含む混合ガスから接触酸化脱水素反応により共役ジオレフィン(1,3-ブタジエン等)を製造する場合の酸化触媒、酸化脱水素触媒としても、当該触媒は有用である。
また、本発明の触媒を使用することで、安全に、安定して、低コストで気相接触酸化方法の長期運転を実現しうる。また、本発明の触媒は特に触媒活性が高い領域、または触媒活性が高くない領域においても収率向上に有効でありうるほか、ΔT(ホットスポット温度と反応浴温度の差)の低減のような発熱を伴う部分酸化反応のプロセス安定性の向上も期待できる。更に、本発明の触媒は、環境や最終製品の品質に悪影響の生じる副生成物、たとえば一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO)、アセトアルデヒドや酢酸、ホルムアルデヒドの低減にも有効でありうる。
こうして得られた本発明の触媒は、例えばプロピレンを、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化して、アクロレインおよび/またはアクリル酸を製造する際に使用できる。本発明の製造方法において原料ガスの流通方法は、通常の単流通法でもあるいはリサイクル法でもよく、一般に用いられている条件下で実施することができ特に限定されない。たとえば出発原料物質としてのプロピレンが常温で1~10容量%、好ましくは4~9容量%、分子状酸素が3~20容量%、好ましくは4~18容量%、水蒸気が0~60容量%、好ましくは4~50容量%、二酸化炭素、窒素等の不活性ガスが20~80容量%、好ましくは30~60容量%からなる混合ガスを反応管中に充填した本発明の触媒上に250~450℃で、常圧~10気圧の圧力下で、空間速度300~5000h-1で導入し反応を行う。
本明細書において触媒活性の向上とは、特に断りがない限り同じ反応浴温度で触媒反応を行って比較をしたときに原料転化率が高いことを指す。
本発明において収率が高いとは、特に断りがない限り、プロピレン、イソブチレン、t-ブチルアルコール等を原料にして酸化反応を行った場合には、対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の合計収率が高いことを指す。また、特に断りがない限り、収率とは後述する有効収率を指す。
本明細書において触媒前駆体の構成元素とは、特に断りがない限り、上記触媒製造工程において使用するすべての元素を指すが、本焼工程の最高温度以下にて消失、昇華、揮発、燃焼する原料およびその構成元素は、触媒の活性成分の構成元素に含めないものとする。また、成形工程における成形助剤や担体に含まれるケイ素およびその他の無機材料を構成する元素も、触媒の活性成分の構成元素として含まれないものとする。
本発明においてホットスポット温度とは、多管式反応管内の長軸方向に熱電対を設置し、測定される触媒充填層内の温度分布の最高温度であり、反応浴温度とは反応管の発熱を冷却する目的で使用される熱媒の設定温度である。上記温度分布の測定の点数には特に制限はないが、例えば触媒充填長を均等に分割する10~1000個の点の温度を測定する。
本明細書において不飽和アルデヒドおよび不飽和アルデヒド化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのアルデヒドを有する有機化合物であり、たとえばアクロレイン、メタクロレインである。本発明において不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸化合物とは、分子内に少なくとも一つの二重結合と少なくとも一つのカルボキシ基、またはそのエステル基を有する有機化合物であり、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチルである。本明細書において共役ジエンとは、1つの単結合によって二重結合が隔てられ化学的に共役したジエンであり、たとえば1,3-ブタジエンである。
本明細書において累積比表面積とは、前述した測定方法によって測定される触媒の特定の細孔径範囲での比表面積の総和であり、特に限定がなければ測定で検出できる全細孔径範囲における、触媒の比表面積の総和である。また、単に比表面積とも記載する。
本明細書において累積細孔容積とは、前述した測定方法によって測定される触媒の特定の細孔径範囲での細孔容積の総和であり、特に限定がなければ測定で検出できる全細孔径範囲における、触媒の細孔容積の総和である。また、単に細孔容積とも記載する。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例において、転化率、有効収率、有効選択率、担持率は以下の式に従って算出した。
原料転化率(%)=(反応したプロピレンのモル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
有効収率(%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸の合算モル数)/(供給したプロピレンのモル数)×100
有効選択率(%)=(生成したアクロレインおよびアクリル酸の合算モル数)/(反応したプロピレンのモル数)×100
担持率(質量%)=(成形に使用した予備焼成粉体の質量)/{(成形に使用した予備焼成粉体の質量)+(成形に使用した担体の質量)}×100
[実施例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を母液1に加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄32質量部、硝酸コバルト82質量部及び硝酸ニッケル38質量部を60℃に加温した純水81質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス23質量部を60℃に加温した純水24質量部に硝酸(60質量%)5.8質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで15000rpm、入口温度250℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.0:1.7:6.0:2.8:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒1を得た。得られた触媒の累積比表面積および細孔分布を水銀圧入法で測定し、細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)、および細孔直径0.030~0.35μmの累積細孔容積(C)をそれぞれ算出した。具体的には、上記触媒1を真空脱気などの前処理を行わずに、全自動細孔分布測定装置(Anton Paar社製水銀圧入孔径分析装置 Pore Master 60-GT)を用いて、試料重量約5gをセル容積2ccのラージセル(10mmΦ×6cm)に入れ、セルに水銀を充填して水銀圧と充填された水銀の容積を測定した。水銀表面張力を480dyn/cm、水銀接触角を140°と設定し、測定温度20℃、測定細孔直径範囲0.0036μm~400μmの条件のもと測定し、測定結果をすべての細孔が円筒型であるとみなし、測定時に加えた圧力とWashburnの式を用いて解析を行い、触媒の各細孔直径の細孔分布を得た。(B/A)および(C/A)を求めた結果を表1に示す。
(磨損度測定)
触媒1を50.0g準備し、内部に一枚の邪魔板を備えた、半径14cmの円筒型回転機に仕込み23rpmで10分間回転させた。その後剥離した粉末を1.7mm間隔のふるいで除去し、残存量(g)を測定し、以下の式から磨損度を求めたところ、0.37%であった。
磨損度(%) = (50.0(g)- 残存量(g))/50.0(g)×100
[実施例2]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を母液1に加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄36質量部、硝酸コバルト92質量部及び硝酸ニッケル27質量部を60℃に加温した純水83質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス18質量部を60℃に加温した純水19質量部に硝酸(60質量%)4.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで13500rpm、入口温度240℃、出口温度110℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:1.9:6.7:2.0:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒2を得た。実施例1と同様に得られた触媒の累積比表面積および細孔分布を水銀圧入法で測定し、(B/A)および(C/A)を求めた結果を表1に示す。また磨損度も実施例1と同様の方法で求めたところ1.14%であった。
[実施例3]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.32質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を母液1に加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄31質量部、硝酸コバルト84質量部及び硝酸ニッケル40質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス18質量部を60℃に加温した純水19質量部に硝酸(60質量%)4.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14000rpm、入口温度250℃、出口温度120℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:1.6:6.1:2.9:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒3を得た。実施例1と同様に得られた触媒の累積比表面積および細孔分布を水銀圧入法で測定し、(B/A)および(C/A)を求めた結果を表1に示す。また磨損度も実施例1と同様の方法で求めたところ0.77%であった。
[参考例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.45質量部を純水45質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄38質量部、硝酸コバルト71質量部及び硝酸ニッケル38質量部を60℃に加温した純水76質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス36質量部を60℃に加温した純水41質量部に硝酸(60質量%)9.7質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にてロータリーアトマイザーで14000rpm、入口温度240℃、出口温度115℃の条件で乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.6:2.0:5.2:2.8:0.10)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、530℃、4時間、空気雰囲気下の条件で本焼成を行い、触媒4を得た。
[比較例1]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.17質量部を純水1.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸第二鉄41質量部、硝酸コバルト89質量部及び硝酸ニッケル33質量部を60℃に加温した純水85質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス16質量部を60℃に加温した純水17質量部に硝酸(60質量%)4.1質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.2:6.5:2.4:0.04)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、550℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒5を得た。実施例1と同様に得られた触媒の累積比表面積および細孔分布を水銀圧入法で測定し、(B/A)および(C/A)を求めた結果を表1に示す。
[比較例2]
ヘプタモリブデン酸アンモニウム100質量部を60℃に加温した純水380質量部に完全溶解させた(母液1)。次に、硝酸カリウム0.31質量部を純水2.9質量部に溶解させて、母液1に加えた。次に、硝酸(60質量%)10.6質量部を母液1に加えpH=4になるようにした。次に、硝酸第二鉄35質量部、硝酸コバルト84質量部及び硝酸ニッケル36質量部を60℃に加温した純水82質量部に溶解させ、母液1に加えた。続いて硝酸ビスマス17質量部を60℃に加温した純水18質量部に硝酸(60質量%)4.4質量部を加えて調製した硝酸水溶液に溶解させ母液1に加えた。この母液1をスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を440℃、4時間の条件で予備焼成した。こうして得られた予備焼成粉体(仕込み原料から計算される原子比はMo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.8:1.9:6.1:2.6:0.07)に対して5質量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして33質量%グリセリン溶液を用いて、不活性の担体に担持率が50質量%となるように球状に担持成形した。こうして得られた粒径5.3mmの球状成形品について、520℃、4時間の条件で本焼成を行い、触媒6を得た。実施例1と同様に得られた触媒の累積比表面積および細孔分布を水銀圧入法で測定し、(B/A)および(C/A)を求めた結果を表1に示す。
触媒1から触媒3、および触媒5、および触媒6を用いて、以下の方法によりプロピレンの酸化反応を実施し、原料転化率および有効収率を求めた。内径28mmステンレス鋼反応管のガス入り口側に触媒4を33.8mL充填し、ガス出口側に触媒1から触媒3および触媒5、触媒6の各々を47.3mL充填し、ガス体積比率がプロピレン:酸素:水蒸気:窒素=1.00:1.65:1.27:9.53の混合ガスを反応管内の全触媒に対するプロピレン空間速度100hr-1で導入し、プロピレンの酸化反応を実施した。反応浴温度315℃にて反応開始から20時間以上のエージング反応後、反応浴温度320℃における反応管出口ガスの分析より、表1に示す原料転化率および有効収率を求めた。
Figure 0007325688000002
表1より、(B/A)および(C/A)が本発明の範囲にある触媒1から触媒3は、有意に高い有効収率を示すことがわかる。さらに、それらの触媒は磨損度が3%以下であるため実用に耐えられる強度を持つこともわかった。
本出願は、2021年11月30日出願の日本特許出願2021-193718に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の触媒を使用することにより、不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物を酸化的に製造する場合に、触媒活性が高い領域において高収率で得ることが可能である。

Claims (4)

  1. 水銀圧入法により測定した細孔直径4.0~10.0μmの累積細孔容積(A)と細孔直径0.35~4.0μmの累積細孔容積(B)と細孔直径0.030~0.35μmの累積細孔容積(C)の関係が以下であり、
    下記式(1)で表される触媒組成を有し、不活性担体に担持され、
    かつ累積比表面積が5m/g未満である不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物製造用触媒。

    0.007cc/g ≦ 累積細孔容積(A) ≦0.026cc/g
    0.060cc/g ≦ 累積細孔容積(B) ≦0.160cc/g
    0.020cc/g ≦ 累積細孔容積(C) ≦0.150cc/g
    2.5 ≦ (B/A) ≦ 15.0
    2.0 ≦ (C/A) ≦ 15.0

    Mo a1 Bi b1 Ni c1 Co d1 Fe e1 f1 g1 h1 i1 ・・・(1)
    (式中、Mo、Bi、Ni、CoおよびFeはそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルトおよび鉄を表し、Xはタングステン、アンチモン、錫、亜鉛、クロム、マンガン、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、セリウムおよびチタンから選ばれる少なくとも一種の元素、Yはナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、およびタリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、Zは周期表の第1族から第16族に属し、上記Mo、Bi、Ni、Co、Fe、X、およびY以外の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を意味するものであり、a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、およびi1はそれぞれモリブデン、ビスマス、ニッケル、コバルト、鉄、X、Y、Zおよび酸素の原子数を表し、a1=12としたとき、0<b1≦7、0≦c1≦10、0<d1≦10、0<c1+d1≦20、0<e1≦5、0≦f1≦2、0≦g1≦3、0≦h1≦5を満たし、i1は各元素の酸化状態によって決まる値である。)
  2. 前記不活性担体がシリカ及び/又はアルミナである請求項に記載の不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物製造用触媒。
  3. 請求項1又は2に記載の不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物製造用触媒を用いた不飽和アルデヒド化合物、不飽和カルボン酸化合物、又は共役ジエン化合物の製造方法。
  4. 前記不飽和アルデヒド化合物がアクロレインであり、前記不飽和カルボン酸化合物がアクリル酸であり、前記共役ジエン化合物がブタジエンである請求項に記載の製造方法。
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