(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である循環通路の閉塞診断システムの概略説明図であり、図2は、図1に示す閉塞診断システムにおいて、燃料レベルが最大の状態を示す図であり、図3は、閉塞診断システムの制御機構の説明図である。本発明の閉塞診断システム10は、燃料タンク12と、燃料タンク12内に燃料を供給する給油管14とを接続する循環通路20の閉塞の有無を診断するものである。この閉塞診断システム10は、燃料タンク12が搭載された自動車等の車両に適用される。
閉塞診断システム10は、燃料タンク12と、給油管14と、循環通路20と、燃料タンク12とキャニスタ50とを接続するベーパ通路16と、を備えるとともに、圧力センサ30と、燃料レベルセンサ32と、車速センサ34と、制御装置40と、表示装置(警告手段)48とを備える。制御装置40は、各センサ30,32,34及び表示装置48と電気的に接続されている。なお、図2では、制御装置40と表示装置48の記載を省略している。
燃料タンク12は、車両のエンジンに供給する燃料11を貯留する容器である。給油管14は、燃料タンク12内に燃料11を給油するための配管であり、上端に給油口14aが形成されており、下端部14bが燃料タンク12に接続されている。給油タンク12には、給油管14の給油口14aに、図示しない給油装置の給油ガンを接続することで、給油装置から燃料タンク12内に燃料11を給油することができる。
ベーパ通路16は、燃料タンク12と、蒸発燃料を吸着する吸着材が内蔵されたキャニスタ50とを接続する通路である。キャニスタ50は、パージ通路18を介して図示しないエンジンの吸気通路と接続されている。
ベーパ通路16の燃料タンク12側の端部は、2つの通路16a,16bに分岐している。一方の通路16a(以下、主通路16aとも称する)と燃料タンク12との接続部には、満タン規制バルブ52が設けられている。他方の通路16b(以下、分岐通路16bとも称する)と燃料タンク12との接続部には、フューエルカットバルブ54が設けられており、分岐通路16bは、主通路16aよりも通路径が小さく形成されている。
満タン規制バルブ52及びフューエルカットバルブ54は、燃料タンク12内の燃料11の液面が上昇することによって、各通路16a,16bを閉塞するフロート弁である。フューエルカットバルブ54は、満タン規制バルブ52が主通路16aを閉弁する位置よりも更に液面が上昇した際に、分岐通路16bを閉塞する。燃料タンク12内に発生した蒸発燃料は、ベーパ通路16を通ってキャニスタ50に導入され、キャニスタ50内の吸着材で捕集されることにより、大気中への蒸発燃料の放出が防止される。
圧力センサ30は、燃料タンク12に設置され、燃料タンク12の内部圧力(内圧)を検出する。車速センサ34は、閉塞診断システム10が搭載された車両の速度を検出する。
燃料レベルセンサ32は、燃料タンク32内の燃料の液面高さ、すなわち、燃料レベルを検出するものであり、例えば、燃料の液面に浮かぶフロートを備えたフロート式のセンダーゲージを用いることができる。
循環通路20は、給油時に、燃料タンク12内の蒸発燃料が給油管14の給油口14aから大気中へ放散されることを抑制するために、燃料タンク12と給油管14とを接続する通路である。循環通路20は、一端が燃料タンク12の上部に接続され、他端が給油管14の給油口14aの近傍に接続された配管により形成されており、燃料タンク12の上部空間と、給油管14の給油口14a近傍とを連通している。
循環通路20の燃料タンク12側の端部開口22は、燃料タンク12における最大燃料レベルL1の高さ位置よりも、低い高さ位置に設定されている。ここで、最大燃料レベルL1の高さ位置とは、図2に示すように、満タン規制バルブ52が閉弁する液面の高さのうち、最も低い液面の高さ位置である。また、ここで、循環通路20の端部開口22の高さ位置とは、図1及び図2に示すように、燃料タンク12の上下方向における端部開口22の上端縁の位置をいい、以下の説明では、この端部開口22の高さ位置を開口レベルL2と称する。また、以下の説明では、燃料タンク12の上下方向における循環通路20の端部開口22の下端縁の位置を開口下端レベルL3と称する。循環通路20は、燃料タンク12内の燃料が開口レベルL2まで達すると、端部開口22が燃料11内に浸漬されて液没した状態、すなわち、端部開口22が燃料11で塞がれた状態となる。また、燃料レベルが開口下端レベルL3から開口レベルL2の間にある場合、端部開口22の一部が燃料に液没した状態となる。
上述した燃料タンク12、給油管14、循環通路20、ベーパ通路16、キャニスタ50、圧力センサ30及び燃料レベルセンサ32を備えた燃料タンクシステムでは、燃料タンク12に対して給油を行うと、燃料の増加により燃料タンク12の内圧が変化する。この時、循環通路20が閉塞していない正常状態にある場合と、循環通路20が閉塞している異常状態とでは、燃料レベルが開口レベルL2より低い位置から、開口レベルL2よりも高いレベルへ変化するときに、内圧の変化に違いが生じる。
次に、図4~図6を用いて、給油時の燃料タンク12の内圧の時間変化について説明する。
図4は、循環通路20が正常である場合、すなわち、循環通路20が閉塞していない場合の燃料タンク12の内圧の時間変化を示すグラフであり、燃料を開口下端レベルL3よりも低いレベルから、最大燃料レベルL1まで給油したときの様子を示している。
まず、燃料タンク12内へ燃料を供給するために、給油管14の給油口14aが開放されると、燃料タンク12の内圧は大気圧と等しくなる。給油開始時には、給油口14aに給油ガンが挿入されて大気の導入が制限された状態で、燃料タンク12内に燃料が流入することにより、燃料タンク12の内圧が急激に上昇する(図4の燃料開始を参照)。給油開始後は、図1に示すように、燃料タンク12内のガスが、ベーパ通路16を通ってキャニスタ50側へ流れていくとともに、循環通路20から給油口14aへ向かって流れていくことから、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に保たれる。
その後、更に燃料11の液面レベルが上昇して、開口レベルL2となり、循環通路20の端部開口22が燃料11内に液没すると、燃料タンク12内のガスは、循環通路20を流れることができなくなり、ベーパ通路16からキャニスタ50へ向かう流れのみとなることから、燃料タンク12の内圧が上昇する(図4の循環通路の液没燃料量を参照)。その後、燃料11が最大燃料レベルL1に達するまでの間、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に保たれる。燃料11が最大燃料レベルL1に達すると、ベーパ通路16に設けられた満タン規制バルブ52が閉弁して、燃料タンク12の内圧は急激に上昇する。また、燃料11が最大燃料レベルL1になると、給油ガンからの給油が終了し、給油ガンが給油口14aから取外されることにより、燃料タンク12内の内圧は急激に下降する(図4の給油終了を参照)。
このように、循環通路20が正常である場合には、給油開始時に、燃料タンク12の内圧が上昇した後、さらに、循環通路20の端部開口22が液没する時と、燃料11が最大燃料レベル11に達した時とに燃料タンク12の内圧の顕著な上昇が現れる。
次に、循環通路20が閉塞している異常時について説明する。図5は、循環通路20に異常がある場合、すなわち、循環通路20が詰まりや潰れ等により閉塞している場合の燃料タンク12の内圧の時間変化を示すグラフであり、燃料を開口下端レベルL3よりも低いレベルから、最大燃料レベルL1まで給油したときの様子を示している。
まず、燃料タンク12内へ燃料を供給するために、給油管14の給油口14aが開放されると、燃料タンク12の内圧は大気圧と等しくなる。給油開始時には、給油口14aに給油ガンが挿入されて大気の導入が制限された状態で、燃料タンク12内に燃料が流入することにより、燃料タンク12の内圧が急激に上昇する(図5の燃料開始を参照)。
給油開始後は、燃料タンク12内のガスは、循環通路20が閉塞しているため、循環通路20から給油口14aへ向かう流れは生じないが、ベーパ通路16を通ってキャニスタ50側へ流れていくことにより、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に保たれる。また、燃料11の液面レベルが開口レベルL2に達した時にも、内圧の上昇は見られず(図5の循環通路の液没燃料量を参照)、その後、燃料11が最大燃料レベルL1に達するまでの間、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に保たれる。
燃料11が最大燃料レベルL1に達すると、ベーパ通路16に設けられた満タン規制バルブ52が閉弁して、燃料タンク12の内圧は急激に上昇する。また、燃料11が最大燃料レベルL1になると、給油ガンからの給油が終了し、給油ガンが給油口14aから取外されることにより、燃料タンク12の内圧は急激に下降する(図5の給油終了を参照)。
このように、循環通路20に異常がある場合には、給油開始時に、燃料タンク12の内圧が上昇した後、燃料11が最大燃料レベル11に達した時に燃料タンク12の内圧の顕著な上昇が現れ、循環通路20の端部開口22が液没した時には内圧の上昇が現れない。
図6は、循環通路20が正常である場合、すなわち、循環通路20が閉塞していない場合の燃料タンク12の内圧の時間変化を示すグラフであり、開口下端レベルL3よりも低いレベルから給油を開始し、燃料レベルが開口レベルL2に達する前に給油を終了した場合の燃料タンク12の内圧の時間変化を示すグラフである。
まず、給油管14の給油口14aが開放されると、燃料タンク12の内圧は大気圧と等しくなり、給油開始時には、給油口14aに給油ガンが挿入されて燃料タンク12内に燃料が流入することにより、燃料タンク12の内圧が急激に上昇する(図6の燃料開始を参照)。給油開始後は、燃料タンク12内のガスは、ベーパ通路16を通ってキャニスタ50側へ流れていくとともに、循環通路20から給油口14aへ向かって流れていくことから、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に保たれる。その後、燃料レベルが開口レベルL2に達する前に給油を終了すると、給油ガンが給油口14aから取外されることにより、燃料タンク12の内圧は急激に下降する(図6の給油終了を参照)。
このように、燃料レベルが開口レベルL2に達する前に給油を終了した場合、給油開始の後に、燃料タンク12の内圧が顕著な上昇が現れずに、給油が終了する。
また、図示していないが、循環通路20に異常があり、且つ、燃料レベルが開口レベルL2に達する前に給油を終了した場合にも、図6と同様の挙動を示す。すなわち、給油開始時に内圧が上昇し、その後、ほぼ一定の内圧を保った後、給油終了によって内圧が下がる。
図4~図6に示すように、給油時の燃料タンク12の内圧の時間変化は、循環通路20の端部開口22が液没する際に、循環通路20の正常時と異常時とで、その挙動が異なる。制御装置40は、この内圧の時間変化の違いに基づき、各センサ30,32,34からの検出結果から循環通路20の閉塞の有無を診断する。
制御装置40は、閉塞診断システム10を含む車両に搭載された機器の制御を行うものであり、例えば、中央処理装置(CPU)や特定用途向け集積回路(ASIC)等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス等を有して構成される。
この制御装置40は、循環通路20の閉塞診断に必要な所定の値を記憶する記憶手段42を構成しているとともに、燃料タンク12に対する給油開始と給油終了とを判定する判定手段44と、判定手段44により給油中であると判定された場合に、圧力センサ30及び燃料レベルセンサ32の検出結果に基づいて、循環通路20が閉塞しているか否かを診断する診断手段46とを構成している。
記憶手段42には、診断手段46によって行われる閉塞診断の基準となる、燃料タンク12の内圧の上昇値に関する所定値(以下、基準値Pthとも称する)が設定されている。
判定手段44は、圧力センサ30による燃料タンク12の内圧の変化に基づいて、燃料タンク12に対する給油開始と給油終了とを判定する。具体的には、燃料タンク12に対して所定値以上の上昇勾配を有する内圧の上昇が検出された場合に、給油が開始されたと判定する。なお、このような内圧の上昇に加えて、さらに燃料レベルセンサ32による燃料レベルの上昇が検出された時に、給油開始と判定してもよい。また、判定手段44は、給油開始後、燃料タンク12の内圧が下降した時(例えば、所定の下降勾配よりも大きい内圧の下降が検出された時)に、給油が終了したと判定する。なお、このような内圧の下降に加えて、さらに燃料レベルセンサ32による燃料レベルの上昇停止が検出された時に、給油終了と判定してもよい。このように、給油開始のタイミングと給油終了のタイミングを判定することで、給油中であるか否かを判定することができる。
診断手段46は、給油中に(すなわち、判定手段により給油開始と判定されてから給油終了と判定されるまでの間に)、燃料レベルセンサ32の検出結果により、燃料タンク12内の燃料レベルが、端部開口22よりも低いレベルから高いレベルへと上昇した際に、圧力センサ30の検出結果に基づいて循環通路20の閉塞の有無を診断する。
具体的には、診断手段47は、給油中に、燃料レベルセンサ32により、燃料タンク12内の燃料レベルが、開口下端レベルL3よりも低いレベルから、開口レベルL2よりも高いレベルへと変化したと検出された際に、圧力センサ30による内圧の上昇値が所定値である基準値Pth以上の場合に、循環通路20が閉塞されていないと診断する。また、診断手段47は、給油中に、燃料タンク12内の燃料レベルが、開口下端レベルL3よりも低いレベルから、開口レベルL2よりも高いレベルへと変化したと検出された際に、圧力センサ30による内圧の上昇値が基準値Pth未満である場合に、循環通路20が閉塞していると診断する。
表示装置48は、ユーザに対して視覚による情報提示を行う装置であり、閉塞診断システム10において、循環通路20が閉塞していると診断された場合に、ユーザに視覚による警告を行う警告手段として使用される。表示装置48としては、例えば、車両の運転席の前方に設置されて、車両に関する各種情報を表示させるメータ表示部を用いることができ、メータ表示部に設置された警告灯を点灯させることにより、警告を行うことができる。なお、警告手段は表示装置48に限られず、ユーザに対して聴覚による警告を行う装置、例えば、警告音を発生させるスピーカであってもよい。
次に、図7のフローチャートを参照して、制御装置40が循環通路20の閉塞診断を行う際の処理手順を説明する。
まず、制御装置40は、閉塞診断システム10が起動すると、車速センサ34から送信された信号に基づき、閉塞診断システム10が搭載された車両の速度が零であるいか否か(すなわち、車両が停止しているか否か)を判断する(ステップS10)。
ステップS10において車速が零ではない場合、すなわち、車両が走行状態にある場合(ステップS10:No)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。
ステップ10において車速が零である場合(ステップS10:Yes)、制御装置40の診断手段46は、燃料レベルセンサ32及び圧力センサ30から送信された信号に基づき、給油がなされていない状態で、燃料タンク12の燃料レベルが、開口下端レベルL3よりも低いレベルであるか否かを判断する(ステップS11)。
ステップS11において燃料レベルが開口下端レベルL3以上である場合、すなわち、循環通路20の端部開口22の少なくとも一部が燃料11内に液没している場合(ステップS11:No)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。
ステップS11において燃料レベルが開口下端レベルL3よりも低い場合、すなわち、循環通路20の端部開口22が燃料11の液面よりも上方にあり、液没していない場合(ステップS11:No)、制御装置40の判定手段44は、圧力センサ30の検出結果に基づいて、給油が開始されているか否かを判断する(ステップS12)。
ステップS12において給油が開始されていない場合(ステップS12:No)、制御装置40は、処理をリターンする。一方、判定手段44により給油が開始されたと判定された場合(ステップS12:Yes)、診断手段46は、圧力センサ30の検出結果に基づいて、基準値Pth以上の内圧の上昇があるか否かを判断する(ステップS13)。内圧の上昇が検出されない場合(ステップS13:No)、ステップS13の処理は、判定手段44により給油終了の判定がなされるまで繰り返される(ステップS14)。
基準値Pth以上の内圧の上昇が検出されず、給油が終了した場合(ステップS14:Yes)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。かかる場合には、図6で示したように、循環通路20の端部開口22が燃料11内に液没する前に給油が終了したと判断される。
ステップS13において、基準値Pth以上の内圧の上昇が検出された場合(ステップS13:Yes)、診断手段46は、燃料レベルセンサ32の検出結果に基づいて、燃料レベルが開口レベルL2以上であり、且つ最大燃料レベルL1未満であるか否か、すなわち、端部開口22が液没したタイミングで基準値Pth以上の内圧の上昇があったか否かを判断する(ステップS15)。
端部開口22が液没したタイミングで基準値Pth以上の内圧の上昇があった場合(ステップS15:Yes)、診断手段46は、循環通路20が潰れ等により閉塞していない正常状態であると診断(ステップS16)し、処理をリターンする。なお、ステップS15の判断は、燃料レベルセンサ32の検出結果に基づいて行うことができる。すなわち、燃料レベルが開口レベルL2に達し、且つ最大燃料レベルL1に達していない場合には、端部開口22が液没したタイミングで基準値Pth以上の内圧の上昇があったと判断することができる。
一方、ステップS15において、基準値Pth以上の内圧の上昇が、端部開口22が液没したタイミングではない場合(ステップS15:No)、診断手段46は、燃料が最大燃料レベルに達したことによって内圧が上昇したと判断するとともに、循環通路20が潰れ等により閉塞している異常状態であると診断し、表示装置48に設けられた警告灯を点灯する(ステップS17)。警告灯の点灯後、制御装置40は、処理をリターンする。
上述したように、本実施形態の閉塞診断システム10では、給油中に生じる燃料タンク12の内圧の変化と、燃料レベルの変化とに基づいて、循環通路20の閉塞の有無を診断することができる。
具体的には、給油により、燃料タンク12内の燃料レベルが、開口下端レベルL3よりも低いレベルから開口レベルL2へ上昇すると、循環通路20が閉塞していない正常状態では、循環通路20の端部開口22が燃料11に浸漬されて循環通路20が開放状態から閉塞状態に変化することにより、燃料タンク12の内圧が比較的大きく(すなわち、基準値Pth以上に)上昇する。一方、循環通路20が閉塞している異常状態では、循環通路20が常に閉塞状態にあるので、燃料レベルが開口下端レベルL3よりも低いレベルから開口レベルL2へ上昇しても、燃料タンク12の内圧はほぼ上昇せず、基準値Pth未満の上昇値となる。このように、燃料タンク12の燃料レベルが、循環通路20の端部開口22よりも低いレベルから高いレベルへ変化した際に、燃料タンク12の内圧が基準値Pth以上に上昇しているか否かを判断することで、循環通路20の閉塞の有無を診断することが可能である。
また、本実施形態の閉塞診断システム10では、給油中に閉塞診断ができない状況においては、診断をキャンセルすることで、システムの適正化を図ることができる。具体的には、給油開始時に、燃料タンク12の燃料レベルが循環通路20の端部開口22よりも高いレベルにある場合、循環通路20が閉塞していない正常時であっても、循環通路20の端部開口22が燃料に浸漬されて閉塞された状態にある。このような状況下では、循環通路20が正常時と異常時とで、燃料タンク12の内圧の変化に違いがほぼ生じないことから、診断をキャンセルする。
また、燃料レベルが、循環通路20の端部開口22の位置を超える前、すなわち、開口レベルL2以上になる前に給油を終了した場合、図6を用いて説明したように、燃料レベルの上昇にともなう内圧の上昇が生じないことから、循環通路20の閉塞診断を行うことができず、このような状況下では、診断をキャンセルすることで、システムの適正化を図ることができる。
さらに、上述した閉塞診断システム10では、循環通路20が閉塞している異常状態と診断された場合に、警告灯を点灯させて警告を行うことで、循環通路20の閉塞が解消されるように、ユーザに対して修理を促すことができる。
なお、上述した実施形態では、制御装置40の判定手段44が、燃料タンク12の内圧の上昇及び下降のそれぞれに基づいて、給油開始及び給油終了のそれぞれを判定しているが、判定手段44は、さらに、給油スイッチの押圧操作や、給油口14aを開閉する給油口フラップの開閉状態を給油開始や給油終了の判定に用いる構成とすることができる。かかる場合、制御装置40は、給油口フラップの開閉状態を検知する検知センサや、給油口フラップを開放するための指示を入力する給油スイッチと電気的に接続される。
判定手段44は、例えば、給油スイッチの押圧操作があり、且つ燃料タンク12の内圧の上昇が検出された時に給油開始と判定することができる。また、これに代えて、判定手段44は、検知センサにより給油口フラップの開放が検知され、且つ燃料タンク12の内圧の上昇が検出された時に給油開始と判定することができる。また、判定手段44は、燃料タンク12の内圧の下降が検出され、且つ給油口フラップが開状態から閉状態へ切り替わったことが検知された時に給油終了と判定することができる。
(第2の実施形態)
次に、図8~図11を用いて循環通路20の閉塞診断システム10の第2の実施形態を説明する。図8において、上述した第1の実施形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の閉塞診断システム10は、図1に示す第1の実施形態と同様の構成を有する。また、図8に示すように、制御装置40は、記憶手段42と、判定手段44と、診断手段46とを備えるとともに、時間の経過を計測する経過時間計測手段45を備える。
記憶手段42には、診断手段46によって行われる閉塞診断の基準となる時間に関する所定値(以下、所定時間Tthとも称する)が設定されている。
判定手段44による給油開始と給油終了の判定は、第1の実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
経過時間計測手段45は、給油中に、圧力センサ30により燃料タンク12の内圧の上昇が検出されたタイミングから給油終了時までの経過時間を計測する。ここで、給油中に内圧の上昇が検出されたタイミングとは、給油開始時に発生する内圧の上昇を含まず、その後に生じる所定値以上の上昇勾配を有する内圧の上昇をいう。
診断手段46は、給油中に、経過時間計測手段45による計測が行われ、且つ計測された経過時間が所定時間Tth以上である場合に、循環通路20が閉塞されていない正常状態であると診断する。また、給油中に、経過時間計測手段45により計測された経過時間が所定時間Tth未満であって、且つ計測終了時に、燃料タンク12の燃料レベルが端部開口22の高さ位置を超えている場合に、循環通路20が閉塞している異常状態である診断する。
次に、図9及び図10を用いて、給油時の燃料タンク12の内圧の時間変化について説明する。本実施形態の閉塞診断システム10では、給油中に内圧が上昇してから給油終了までの時間Tを用いて、循環通路20の閉塞の有無を診断する。本実施形態において、内圧が上昇するタイミングとは、内圧の上昇勾配の値が、所定値P1以上と大きくなるタイミングをいい、図9及び図10において、タンク内圧上昇で示されたタイミングをいう。
図9は、循環通路20が正常である場合、すなわち、循環通路20が閉塞していない場合の燃料タンク12の内圧の時間変化を示すグラフであり、燃料を開口下端レベルL3よりも低いレベルから、最大燃料レベルL1まで給油したときの様子を示している。
循環通路20が正常である場合、燃料タンク12内へ燃料を供給するために、給油管14の給油口14aが開放されると、燃料タンク12の内圧は大気圧と等しくなる。給油開始時には、給油口14aに給油ガンが挿入され、燃料タンク12内に燃料が流入することにより、燃料タンク12の内圧が急激に上昇する(図9の燃料開始を参照)。給油開始後は、燃料タンク12内のガスが、ベーパ通路16を通ってキャニスタ50側へ流れていくとともに、循環通路20から給油口14aへ向かって流れていくことから、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に(すなわち、内圧の上昇勾配が所定値P1未満の状態に)保たれる。
その後、燃料11の液面レベルが開口レベルL2に達すると、循環通路20の端部開口22が燃料11内に液没し、燃料タンク12内のガスは、ベーパ通路16からキャニスタ50へ向かう流れのみとなることから、燃料タンク12の内圧が上昇する(図9のタンク内圧上昇を参照)。その後、燃料11が最大燃料レベルL1に達するまでの間、燃料タンク12の内圧は、ほぼ一定に保たれる。燃料11が最大燃料レベルL1に達すると、満タン規制バルブ52が閉弁して、燃料タンク12の内圧は急激に上昇する。また、燃料11が最大燃料レベルL1になると、給油ガンからの給油が終了し、給油ガンが給油口14aから取外されることにより、燃料タンク12内の内圧は急激に下降する(図9の給油終了を参照)。
このように、循環通路20が正常である場合には、循環通路20の端部開口22が液没し始めて燃料タンク12の内圧が上昇するタイミング(すなわち、内圧の上昇勾配が所定値P1以上となったタイミング)から、給油終了までの経過時間が比較的長く(すなわち、所定時間Tth以上に)なる。
次に、循環通路20が閉塞している異常時について説明する。図10は、循環通路20に異常がある場合、すなわち、循環通路20が詰まりや潰れ等により閉塞している場合の燃料タンク12の内圧の時間変化を示すグラフであり、燃料を開口下端レベルL3よりも低いレベルから、最大燃料レベルL1まで給油したときの様子を示している。
循環通路20に異常がある場合、給油開始時に、燃料タンク12の内圧が急激に上昇する(図10の燃料開始を参照)。その後、燃料レベルが最大燃料レベルL1に達するまでの間は、ほぼ一定の内圧となり、燃料11が最大燃料レベルL1に達すると、ベーパ通路16に設けられた満タン規制バルブ52が閉弁して、燃料タンク12の内圧は急激に上昇する。その後、給油ガンからの給油が終了し、給油ガンが給油口14aから取外されることにより、燃料タンク12の内圧は急激に下降してする(図10の給油終了を参照)。
このように、循環通路20に異常がある場合には、給油が開始されて、内圧が一定に保たれた後、燃料レベルが最大燃料レベルL1に達して内圧が上昇するタイミング(すなわち、内圧の上昇勾配が所定値P1以上となったタイミング)から、給油終了までの経過時間が、正常時と比べて短く(すなわち、所定時間Tth未満に)なる。
次に、図11のフローチャートを参照して、第2の実施形態の閉塞診断システム10において、制御装置40が循環通路20の閉塞診断を行う際の処理手順を説明する。
まず、制御装置40は、閉塞診断システム10が起動すると、車速センサ34から送信された信号に基づき、閉塞診断システム10が搭載された車両の速度が零であるいか否か(すなわち、車両が停止しているか否か)を判断する(ステップS20)。
ステップS20において車速が零ではない場合、すなわち、車両が走行状態にある場合(ステップS20:No)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。
ステップ20において車速が零である場合(ステップS20:Yes)、制御装置40の診断手段46は、燃料レベルセンサ32及び圧力センサ30から送信された信号に基づき、給油がなされていない状態で、燃料タンク12の燃料レベルが、開口下端レベルL3よりも低いレベルであるか否かを判断する(ステップS21)。
ステップS21において燃料レベルが開口下端レベルL3以上である場合、すなわち、循環通路20の端部開口22の少なくとも一部が燃料11内に液没している場合(ステップS21:No)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。
ステップS21において燃料レベルが開口下端レベルL3よりも低い場合、すなわち、循環通路20の端部開口22が液没していない場合(ステップS21:No)、制御装置40の判定手段44は、圧力センサ30の検出結果に基づいて、給油が開始されているか否かを判断する(ステップS22)。
ステップS22において給油が開始されていない場合(ステップS22:No)、制御装置40は、処理をリターンする。一方、判定手段44により給油が開始されたと判定された場合(ステップS22:Yes)、診断手段46は、圧力センサ30の検出結果に基づいて、給油開始後に、更に内圧の上昇があったか否か(すなわち、所定値P1を超える内圧の上昇勾配があったか否か)を判断する(ステップS23)。内圧の上昇が検出されない場合(ステップS23:No)、ステップS23の処理は、判定手段44により給油終了の判定がなされるまで繰り返される(ステップS24)。
内圧の上昇が検出されず、給油が終了した場合(ステップS24:Yes)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。かかる場合には、図6で示したように、循環通路20の端部開口22が燃料11内に液没する前に給油が終了したと判断される。
ステップS23において、内圧の上昇が検出された場合(ステップS23:Yes)、経過時間計測手段45は、内圧が上昇したタイミングからの経過時間を計測する(ステップS25)。経過時間の計測は、判定手段44により給油終了の判定がなされるまで繰り返される(ステップS26:No)。
ステップS26において、給油終了と判定されると(ステップS26:Yes)、診断手段46は、経過時間計測手段45により計測された経過時間が、所定時間Tth以上であるか否かを判断する(ステップS27)。
ステップS27において、経過時間が所定時間Tth以上である場合、診断手段46は、循環通路20が潰れ等により閉塞していない正常状態であると診断(ステップS28)し、処理をリターンする。
一方、ステップS27において、経過時間が所定時間Tth未満である場合、(ステップS27:No)、診断手段46は、燃料レベルセンサ32の検出結果により、燃料レベルが開口レベルL2以上であるか否か(すなわち、循環通路20の端部開口22が液没しているか否か)を判断する(ステップS29)。
ステップS29において、循環通路20の端部開口22が液没していない場合(ステップS29:No)、診断手段46は、閉塞診断をキャンセルし、処理をリターンする。かかる場合には、燃料レベルが開口下端レベルL3以上になって内圧が上昇したが、燃料レベルが開口レベルL2に達する前に給油が終了したと判断される。
一方、ステップS29において、循環通路20の端部開口22が液没している場合(ステップS29:Yes)、診断手段46は、循環通路20が潰れ等により閉塞している異常状態であると診断し、表示装置48に設けられた警告灯を点灯する(ステップS30)。警告灯の点灯後、制御装置40は、処理をリターンする。
上述したように、本実施形態の閉塞診断システム10では、給油中に生じる燃料タンクの内圧の変化、内圧上昇から給油終了までの経過時間、及び燃料レベルに基づいて、循環通路20の閉塞の有無を診断することができる。
具体的には、燃料タンク12へ給油を行うことにより、燃料タンク12内の燃料レベルが、循環通路20の端部開口22よりも低いレベルから高いレベルへ上昇すると、循環通路が閉塞していない場合には、燃料タンクの内圧が上昇する。その後、内圧は一定に保持され、さらに、給油を続けることにより、燃料タンク12内の燃料レベルが上限値に達すると、再び、燃料タンク12の内圧が急激に上昇し、その直後に給油が終了する。これにより、循環通路20が閉塞していない正常状態では、給油中に内圧の上昇が2回生じ、最初の内圧上昇から給油終了までの経過時間は、所定時間Tth以上になる。
一方、循環通路20が閉塞している異常状態では、給油開始後、燃料タンク12内の燃料レベルが上限値に達するまでの間、内圧がほぼ一定になることから、燃料レベルが上限値に達した際に、燃料タンク12の内圧が急激に上昇し、その直後に給油が終了する。これにより、循環通路20に異常が生じている場合には、最初の内圧上昇から給油終了までの経過時間Tが短く(すなわち、所定時間Tth未満に)なる。
このように、循環通路20が閉塞していない正常時と、循環通路20が閉塞している異常時とでは、燃料タンク12の内圧が最初に上昇してから給油終了までの時間が異なることから、燃料タンク12の内圧の変化とともに、経過時間計測手段45によって、内圧が上昇してから給油終了までの経過時間を計測し、計測された経過時間を所定時間Tthと比較することで、循環通路20の閉塞の有無を診断することができる。
また、上述した閉塞診断システム10では、給油中に閉塞診断ができない状況においては、診断をキャンセルすることで、システムの適正化を図ることができる。例えば、給油開始から給油終了までの間に、圧力センサにより前記所定値以上の内圧の上昇が検出されなかった場合(ステップS24:Yes)には、燃料タンク12の内圧の変化から循環通路の閉塞診断を行うことができず、このような状況下では、診断をキャンセルすることで、システムの適正化を図ることができる。さらに、本実施形態の閉塞診断システム10では、循環通路20が異常状態と診断された場合に、警告灯を点灯させて警告を行うことで、循環通路20の閉塞が解消されるように、ユーザに対して修理を促すことができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、第1の実施形態では、内圧の上昇値を基準値Pthと比較することにより、循環通路の閉塞の有無を診断しているが、これに代えて、給油開始が判定された後、給油終了までの間に、内圧の上昇が2回であるか、1回であるかによって閉塞の有無を診断してもよい。具体的には、循環通路が正常状態である場合、燃料レベルの上昇によって、端部開口22が燃料11内に液没した時と、燃料11が最大燃料レベルに達した時とで内圧が上昇することから、内圧が上昇る回数が2回となる。一方、循環通路が閉塞している異常状態では、端部開口22が燃料11内に液没した時には内圧が上昇せず、燃料11が最大燃料レベルに達した時の1回のみ内圧が上昇する。診断手段46によって、この内圧上昇の回数を判断することで、2回の場合には循環通路が閉塞していないと診断し、1回の場合には循環通路が閉塞していると診断することができる。