以下、本開示の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせることのできる数値であり、実施例の数値は数値範囲の上下限に用い得る数値である。
[化粧シート]
本実施形態の化粧シートは、基材層及び表面保護層を有し、表面保護層が樹脂、紫外線吸収剤及び粒子を含有し、JIS Z2247:2006に規定されるエリクセン試験方法に準拠して測定される押込み深さ(以下、単に「押込み深さ」と称することがある。)が4.0mm以上であることを特徴とする。
既述のように、より過酷な環境においても、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制することが要望されている。ブリードアウト、長期耐候性の低下が発生する状況としては、例えば以下のような知見が得られている。
(i)化粧シートを上記の建築物の内装部材や外装部材等の表面を装飾して化粧部材を得るために場合、その加工工程(例えば、被着材へのラッピング加工、真空成型、Vカット加工等の各種加工工程)、すなわち化粧シートを被着材に積層させる工程において、外力をもって積層させるため、化粧シートの表面に傷や割れが生じる場合がある。
上記(i)のような加工工程だけでなく、加工して化粧部材を得た後にも、
(ii)被着材の材質として金属等の硬い部材を用いる場合、化粧部材を保管する際に、化粧部材同士の接触により化粧シートに傷や割れが生じる場合がある。
(iii)化粧部材を特に外装部材として長期使用していると、砂、落ち葉等が触れることで、その表面に傷や割れが生じる場合がある。
本発明者らは、上記(i)~(iii)に挙げられる状況に関する知見から、ブリードアウト、長期耐候性の低下の要因が、化粧シートの表面に生じる傷や割れが生じる点で共通していることに着目した。そして、これらのケースにおいて、傷や割れから、以下のようにブリードアウト、長期耐候性の低下が生じると考えた。
上記(i)の場合、被着材へのラッピング加工、真空成型、Vカット加工等の各種加工工程により、化粧シートには、曲げ、延び、歪等の外力による変形が加わる。すると、加工工程において、化粧シートには微小な傷や割れ(亀裂)、また層間剥離等が生じる場合がある。
微小な傷や割れ(亀裂)又は層間剥離が化粧シート中に内在すると、加工した後に化粧部材として使用するうちに、経時で微小な傷や割れ(亀裂)、層間剥離が徐々に成長することにより、表面保護層が部分的に剥離しやすくなる。表面保護層が剥離した箇所では、表面保護層が基材層等を保護する機能が喪失するだけでなく、また耐候剤として用いられる紫外線吸収剤のブリードアウトが生じ、化粧シート全体としての耐候性が低下すると考えられる。そして、このような問題は、特に屋外曝露の際に顕著に生じると考えられる。
また、上記(ii)及び(iii)については、上記(i)のように加工工程において微小な傷や割れ(亀裂)が生じなかったとしても、加工した後に化粧部材として使用する際の、種々の要因により傷や割れ(亀裂)が生じる場合が想定される。この場合、さらに使用を継続すると、上記(i)と同様に、経時で微小な傷や割れ(亀裂)、層間剥離が徐々に成長し、表面保護層が部分的に剥離しやすくなることで、表面保護層が基材層等を保護する機能が喪失し、また耐候剤として用いられる紫外線吸収剤のブリードアウトが生じるため、化粧シート全体としての耐候性が低下すると考えられる。
以上の知見に鑑みれば、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制するには、化粧シートを、傷や割れ(亀裂)を発生しにくいものとすればよいことが分かる。そして、化粧シートの傷や割れ(亀裂)の発生を抑制するには、例えば表面保護層の硬度を高くして耐擦傷性を向上させることが考えられる。
表面保護層の硬度を高くすることで、上記(ii)及び(iii)のように化粧シートを化粧部材の構成要素として使用する際に生じる傷や割れ(亀裂)は抑制できる。しかし、硬度が高すぎると、表面保護層は脆弱化する傾向があるため、上記(i)の加工工程において割れや傷(亀裂)が発生しやすくなる。耐擦傷性は、基本的には上記(ii)及び(iii)のように被着材に積層して化粧部材として使用している際の性状であり、上記(i)のような加工工程における割れや傷の発生を抑制する性状とは異なる。また、耐擦傷性の向上は、加工工程における割れや傷の発生の抑制の点では不利に働きやすいといえる。
逆に、表面保護層の硬度が低いと、耐擦傷性が低下するため、化粧部材として使用している際には傷や割れ(亀裂)は発生しやすくなるが、他方、加工工程における割れや傷の発生は抑制される。
このように、傷や割れ(亀裂)の発生の抑制が、当該発生の要因、すなわち加工工程によるものか、あるいは化粧部材としての使用によるものかによって、特に硬度の点において、所望される表面保護層の性状は正反対となる。そのため、割れや傷の発生の抑制は、表面保護層の硬度として一定以上の硬度は必要であるといえるものの、単に表面保護層を形成する樹脂組成物の硬化物の硬度の高低だけで抑制することは困難である。
ところで、エリクセン試験方法は、通常は金属薄板の加工、とりわけ深絞り加工における塑性変形特性を把握するための試験方法であり、金属加工の分野においては汎用される試験方法である。ただし、通常のエリクセン試験方法により測定される「押込み深さ」は、しわ押えとダイスとの間に締め付けた試験片(測定対象物)に対して、球形の端部をもったパンチを押し込むことによって、貫通割れが発生した時点のパンチの押込み深さ(「エリクセン値」とも称される。)を意味するが、本開示では、後述するように表面保護層に微細割れが発生した時点のパンチの押込み深さを意味する。また、エリクセン試験方法は、塗料被膜の密着剥離強度、被膜強度等を測定するために、用いられる場合もある。
本発明者らは、エリクセン試験方法の原理を考慮すると、「押込み深さ」は、化粧シートが有し得る性状として、上記の硬度だけでなく、曲げ加工等の各種加工に対する耐性を示す「可撓性」に近い特性を示す指標として捉えることができるのではないかと考えた。さらに「可撓性」に近い特性を有することは、曲げ加工等の各種加工に対する耐性に強い、すなわち上記(i)にもある外力に対する耐性に優れるものになるのではないか、そして、「可撓性」に近い特性を化粧シートに付与することで、上記(i)~(iii)に挙げられるような、化粧シートの表面に生じる傷や割れを同時に抑制することができるのではないか、と考えた。
上記知見のもと更に検討した結果、本発明者らは、上記(i)~(iii)に挙げられるような傷や割れの発生を低減するには、化粧シートのエリクセン試験による押込み深さを4.0mm以上という構成を採用すればよいことを見出した。そして、傷や割れの発生を低減することにより、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制し、かつ外観の低下を抑制し得る本実施形態の化粧シートに至った。
〔押込み深さ〕
本実施形態の化粧シートは、化粧シートを試験片としてエリクセン試験を行い測定される押込み深さが、4.0mm以上であることを要する。4.0mm未満であると、上記(i)~(iii)のような状況下において傷や割れが生じやすく、結果としてブリードアウトと長期耐候性の低下とが進行し、外観の低下も進行することとなる。
ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制し、かつ外観の低下を抑制する観点から、押込み深さは好ましくは4.5mm以上、より好ましくは5.0mm以上である。押込み深さの上限としては特に制限なく、大きければ大きいほど好ましいが、耐擦傷性をはじめとし、耐候性、耐汚染性等の表面特性の向上、また化粧シートの製造の効率等を考慮すると、15.0mm以下である。
本明細書において、「押込み深さ」は、JIS Z2247:2006に規定されるエリクセン試験方法に準拠して測定される。ただし本開示における「押込み深さ」は、しわ押えとダイスとの間に締め付けた試験片(測定対象物)に対して、球形の端部をもったパンチを化粧シートの基材層側から押し込むことによって、表面保護層に微細割れが発生した時点のパンチの押込み深さを意味する。具体的には、エリクセン試験機(JIS B7729:2005準拠)を用い、実施例に記載される方法により測定する。
本実施形態において、押込み深さは、主に基材層を構成する材料、基材層の厚さ、表面保護層を構成する材料(樹脂の種類)、表面保護層の厚さにより調整することができる。また、所望に応じて設けられる、基材層及び表面保護層以外の層が採用される場合は、これらの層を構成する材料、厚さ等により調整することも可能である。
本実施形態の化粧シートの押込み深さは、上記各層を構成する材料、各層の厚さ等について、後述する好ましい態様を採用することで、調整しやすくなる。
〔化粧シートの積層構成〕
図1は、本実施形態の化粧シート100の代表的な一実施の形態を示す断面図であり、図2は、本実施形態の化粧シート100の好ましい一実施の形態を示す断面図である。図1及び図2において、Z軸方向は厚さ方向を示し、X軸及びY軸から形成される面は化粧部材をZ軸方向から観察した平面を示す。
図1の化粧シート100は、基材層60上に表面保護層10を有している。図2の化粧シート100は、基材層60と表面保護層10との間に、装飾層50、接着層40、透明性樹脂層30及びプライマー層20を有している。
本実施形態の化粧シートは、基材層上に表面保護層を備える基本構成を有する限りは、用途、要求性能等に応じて、様々な積層構成の形態を選択し得る。本実施形態の化粧シートは、図2に示されるように、基材層と表面保護層との間に、これらの層以外の層として、装飾層、接着層、透明性樹脂層及びプライマー層を有することができる。本実施形態の化粧シートがとり得る積層構成としては、例えば、下記(1)~(7)の積層構成、すなわち、基材層と表面保護層との間に、装飾層、接着層、透明性樹脂層及びプライマー層から選ばれる一以上の層を有する積層構成が好ましく挙げられる。図1に示す実施形態では、化粧シート100は下記(2)の積層構成であり、図2に示す実施形態では、化粧シート100は下記(1)の積層構成である。
なお、下記(1)~(7)の各構成において、「/」は各層の界面を意味しており、また本実施形態の化粧シートが下記(1)~(7)の積層構成に限られないことはいうまでもない。
(1)基材層60/装飾層50/接着層40/透明性樹脂層30/プライマー層20
/表面保護層10
(2)基材層60/表面保護層10
(3)基材層60/プライマー層20/表面保護層10
(4)基材層60/接着層40/透明性樹脂層30/表面保護層10
(5)基材層60/装飾層50/表面保護層10
(6)基材層60/接着層40/透明性樹脂層30/装飾層50/表面保護層10
(7)基材層60/接着層40/透明性樹脂層30/装飾層50/プライマー層20
/表面保護層10
以下、本実施形態の化粧シートを構成する各層について説明する。
〔基材層〕
基材層は、本実施形態の化粧シートが有する表面保護層の支持体として機能する層であり、化粧部材の装飾に用いる際には被着材との接着のしやすさにも寄与する層である。基材層としては、各種の紙類、プラスチック、金属、織布、不織布、木材及び窯業系素材等からなる、フィルム、シート及び板が挙げられる。
通常、所定の厚さを有する平面状の基材層は、厚さの薄い順にフィルム、シート、板と区別して呼称されるが、本開示においては厚さの相違を区別する必要性は特にないため、本明細書中においては、これら呼称は適宜相互に置き換えても特に本質的相違は無いものとして取り扱う。また、これら呼称の相違(厚さの相違)によって、本開示の特許請求の範囲の解釈に相違を生じるものでもない。本明細書において、プラスチックシートは、プラスチック製のフィルム、シート及び板を包含する。
基材層の中では、押込み深さの調整のしやすさ、また化粧シート全体としての取り扱い性を良好にする等を考慮すると、プラスチックシートが好ましい。
プラスチックシートを構成する樹脂の具体例としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂;三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂;などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの中でも、押込み深さの調整のしやすさ、耐候性、耐水性、印刷適性、成形加工適性及び価格等を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる1種以上が好ましい。
また、これらの中でもポリオレフィン樹脂は、本開示の効果をより発揮しやすい点、とりわけ押込み深さの調整のしやすさの点で好適である。ポリオレフィン樹脂としては、より詳細には、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体、すなわちポリエチレン(低密度、中密度、高密度)であってもよいし、エチレンと、エチレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。これらのポリエチレン樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ポリプロピレン樹脂もポリエチレン樹脂と同様に、プロピレンの単独重合体、すなわちポリプロピレンであってもよいし、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。これらのポリプロピレン樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポリオレフィン樹脂の中でも、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
基材層は、無色透明であってもよいし、意匠性の観点から着色されていてもよい。
基材層を着色する場合、基材層中には、染料及び顔料等の着色剤を添加することができる。これら着色剤の中では、退色を抑制しやすい顔料が好ましい。顔料としては、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、二酸化チタン(チタン白)、沈降性硫酸バリウム及びバライト等の白色顔料;カーボンブラック、アオメチンアゾ系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の黒色顔料;鉛丹、酸化鉄赤、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド等の赤色顔料;黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、イソインドリノンイエロー、ニッケル-アゾ錯体等の黄色顔料;ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料が挙げられる。
基材層の厚さは、特に制限はないが、基材層がプラスチックシートの場合、特に押込み深さの調整のしやすさを考慮すると、20~320μmが好ましく、40~160μmがより好ましく、40~100μmがさらに好ましい。これと同様の観点から、基材層が紙類の場合、坪量は、20~150g/m2が好ましく、30~100g/m2がより好ましい。
基材層の形状は、平板状に限られず、立体形状等の特殊形状であってもよい。
基材層は、化粧シートの他の層や被着材との密着性を高めるために、基材層の片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施したり、プライマー層を形成したりしてもよい。
基材層は、長期耐候性の向上の観点から、紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。基材層において好ましく用いられるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線については、後述する。本実施形態においては、紫外線吸収剤は一種単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
基材層が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、基材層の樹脂100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.2~3質量部がより好ましく、0.3~2質量部がさらに好ましい。
基材層は、耐候性向上の観点から、光安定剤を含有してもよい。光安定剤としては、例えば、ピペリジニルセバケート系光安定剤等のヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。
基材層の含有成分として好適に用いられる紫外線吸収剤、光安定剤は、それぞれ、分子中に(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する反応性官能基を有してもよい。
基材層には、必要に応じて、添加剤が配合されてもよい。添加剤としては、上記の紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤の他、例えば、炭酸カルシウム、クレーなどの無機粒子、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、酸化防止剤が挙げられる。添加剤の配合量は、押込み深さ、表面特性等を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、要求特性等に応じて適宜設定できる。
〔表面保護層〕
表面保護層は、樹脂及び紫外線吸収剤を含有し、本実施形態の化粧シートの表面を保護するための層である。表面保護層は、特に傷や割れ(亀裂)の発生を抑制する観点から、少なくとも耐擦傷性が求められ、また耐候性、耐汚染性等の表面特性も求められる層である。
表面保護層は、例えば、樹脂成分、紫外線吸収剤及び粒子を含有する樹脂組成物(以下、「表面保護層形成用樹脂組成物」とも称する。)により構成される。耐擦傷性、耐候性、耐汚染性等の表面特性の向上の観点から、該樹脂組成物は、樹脂成分として硬化性樹脂を含有することが好ましく、表面保護層は、硬化性樹脂、紫外線吸収剤及び粒子を含有する樹脂組成物の硬化物により構成されることが好ましい。すなわち、表面保護層に含まれる上記樹脂は、硬化性樹脂が硬化した硬化樹脂でもよい。
既述のように、化粧シートの押込み深さの調整は、表面保護層を構成する材料(樹脂成分の種類)、表面保護層の厚さにより調整することができる。したがって、表面保護層の構成、特に樹脂成分は、化粧シートの押込み深さに直接的に影響する要因の一つといえる。そのため、樹脂組成物の硬化物の硬度を一定以上のものとして耐擦傷性を向上させて、化粧部材として使用する際の傷や割れ(亀裂)の発生を抑制するだけでなく、可撓性を向上させて、加工工程における傷や割れ(亀裂)の発生も抑制する、すなわち化粧シート全体の押込み深さを上記所定の範囲内とする、という観点から、表面保護層を構成する樹脂組成物に含まれる樹脂成分を採用することが重要となる。
以下、表面保護層を形成する樹脂成分について、より詳細に説明する。
(樹脂成分)
既述のように、樹脂成分としては、表面特性、特に耐擦傷性の向上の観点から、硬化性樹脂が好ましく、中でも熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。さらに、押込み深さの調整のしやすさ、押込み深さを調整することで、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制し、かつ外観の低下を抑制し得ることを考慮すると、電離放射線硬化性樹脂がより好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射によって架橋硬化する基(以下、「電離放射線硬化性官能基」と称することがある。)を有する樹脂のことであり、電離放射線の照射により架橋硬化する樹脂のことである。電離放射線硬化性樹脂を樹脂成分として含有する樹脂組成物は、電離放射線の照射により架橋硬化する樹脂組成物であり、電離放射線硬化性樹脂組成物とも称し得る。
電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基が好ましく挙げられる。
本明細書において、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電子線硬化性樹脂及び紫外線硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、無溶媒で塗布できるため環境負荷が小さく、重合開始剤が不要などの観点から、電子線硬化性樹脂が好ましい。表面保護層形成用樹脂組成物は、耐候性向上の観点から紫外線吸収剤等の耐候剤を好ましく含有することを考慮すると、紫外線硬化性樹脂組成物よりも電子線硬化性樹脂組成物の方が架橋密度を高くしやすいため、表面特性の中でも耐擦傷性、耐汚染性等の点で有利であり、また押込み深さの調整がしやすいため、結果として長期耐候性が向上し、外観の低下をより抑制することができる。
電離放射線硬化性化合物は、具体的には、電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
押込み深さの調整のしやすさ、耐擦傷性、耐候性、耐汚染性等の表面特性の向上を考慮すると、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上4以下がさらに好ましく、2以上3以下がよりさらに好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
また、シクロヘキシル(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることもできる。
これらの重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
押込み深さの調整のしやすさ、耐擦傷性、耐候性、耐汚染性等の表面特性の向上を考慮すると、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが更に好ましい。
これらの重合性オリゴマーの官能基数は、押込み深さの調整のしやすさ、押込み深さを調整することで、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制し、かつ外観の低下を抑制し得ること、また耐擦傷性、耐候性、耐汚染性等の表面特性の向上を考慮すると、2以上8以下が好ましく、上限としては、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、3以下がよりさらに好ましい。
また、これらの重合性オリゴマーの重量平均分子量は、押込み深さの調整のしやすさ、押込み深さを調整することで、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制し、かつ外観の低下を抑制し得ること、また耐擦傷性、耐候性、耐汚染性等の表面特性の向上を考慮すると、好ましくは1,100以上、より好ましくは1,250以上、更に好ましくは1,500以上、より更に好ましくは1,750以上、特に好ましくは1,900以上である。重合性オリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは7,500以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは6,000以下である。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、加熱することにより硬化する樹脂のことであり、樹脂成分として熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物は、加熱することにより硬化する熱硬化性樹脂組成物とも称し得る。
熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は、分子内に、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を2以上有することが好ましい。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。硬化剤としては、例えば、イソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物は、分子内にイソシアネート基を2以上有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びこれらの水添化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
表面保護層形成用樹脂組成物に含まれる全樹脂成分に対する硬化性樹脂の割合は、押込み深さの調整のしやすさ、押込み深さを調整することで、ブリードアウトと長期耐候性の低下とを抑制し、かつ外観の低下を抑制し得ることを考慮すると、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。これと同様の理由により、硬化性樹脂の割合は多ければ多いほど好ましく、上限については特に制限はない。よって、硬化性樹脂の割合は100質量%、すなわち表面保護層は、表面保護層形成用樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
押込み深さの調整のため、表面保護層形成用樹脂組成物は、例えば熱可塑性樹脂を樹脂成分として含有してもよい。すなわち、表面保護層は、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、上記基材層のプラスチックシートを構成する樹脂として例示した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
(紫外線吸収剤)
表面保護層は、長期耐候性の向上の観点から、紫外線吸収剤を含有することが好ましい、すなわち、表面保護層形成用樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。本実施形態においては、紫外線吸収剤は一種単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、例えば、一般式(I)で示される紫外線吸収剤である。
一般式(1)中、R11は単結合又は2価の有機基であり、R12は炭化水素基、-C(=O)OR15で示されるエステル基、-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基又は-OR17で示されるアルコキシ基であり、R13、R14、R15、R16及びR17は各々独立して1価の有機基であり、n11及びn12は各々独立して0~5の整数である。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、一般式(1)で示されるように、大きい分子構造を有するため、立体障害の観点から、基材層や表面保護層からブリードアウトして抜け難いという分子構造上の特性を有している。そのため、長期耐候性が向上する。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いることの効果、すなわちブリードアウトの抑制、長期耐候性の向上は、所定の押込み深さを有する化粧シートにおいて用いることで、より一層向上することとなる。
R11の2価の有機基としては、耐候性の観点から、アルキレン基、アルケニレン基等の脂肪族炭化水素基が好ましく挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。アルキレン基、アルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましい。
R12の1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。アルキル基、アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。
R13及びR14の1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が好ましく、アリール基が好ましい。
R13及びR14のアリール基の炭素数としては、好ましくは6以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。また、アリールアルキル基の炭素数としては、好ましくは7以上、上限として好ましくは20以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
R15、R16及びR17の1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基が挙げられ、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R15、R16及びR17がアルキル基、アルケニル基の場合の炭素数としては、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である。
上記のR11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17の基は、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、炭素数1以上4以下のアルキル基等の置換基を有してもよい。
n11及びn12は、各々独立して0~5の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1~2の整数である。n11及びn12が2以上の整数である場合、複数のR13及びR14は同じでもよく、異なっていてもよく、入手容易性の観点から、同じであることが好ましい。
上記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の中でも、特に以下の化学式(2)~(4)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物A~Cが好ましい。
化学式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Aは、上記一般式(1)において、R11がエチレン基、R12が-O-C(=O)R16で示されるアシルオキシ基(R16が3-ヘプチル基)、R13及びR14が水素原子のものであり、例えば市販品(「アデカスタブLA-46(品番)」株式会社ADEKA製)として入手可能である。
化学式(3)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Bは、上記一般式(1)において、R11が-CH(CH
3
)-C(=O)-で示される基、R12が-OR17で示されるアルコキシ基(R17がイソオクチル基)、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のものであり、例えば市販品(「Tinuvin479(品番)」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)として入手可能である。
化学式(4)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Cは、上記一般式(1)において、R11が単結合、R12がイソオクチル基、R13及びR14がフェニル基であり、n11及びn12が1のものであり、例えば市販品(「Tinuvin1600(品番)」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)として入手可能である。
また、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤について、上記ヒドロキシフェニルトリアジン化合物A~C以外のものとして、例えば以下の一般式(5)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Dも好ましく挙げられる。化学式(5)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Dは、上記一般式(1)において、R
11が単結合、R
12がヘキシル基、R
13及びR
14が水素原子のものであり、例えば市販品(「Tinuvin1577(品番)」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)として入手可能である。
表面保護層において、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いる場合、その組合せとしては、ブリードアウトの抑制、長期耐候性の向上の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物Aとヒドロキシフェニルトリアジン化合物Bとの組合せが好ましい。
これと同様の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物Aとヒドロキシフェニルトリアジン化合物Bとの組合せの場合は、これらの合計量に対するヒドロキシフェニルトリアジン化合物Bの含有量が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下であり、下限として好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%、更に好ましくは10質量%以上である。
また、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いる場合、その組合せとしては、長期耐候性の向上の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物Aとヒドロキシフェニルトリアジン化合物Cとの組合せも好ましい。
これと同様の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物Aとヒドロキシフェニルトリアジン化合物Cとの組合せの場合は、これらの合計量に対するヒドロキシフェニルトリアジン化合物Cの含有量が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下であり、下限として好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%、更に好ましくは10質量%以上である。
表面保護層に用いられる紫外線吸収剤の全量に対する、上記ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上である。紫外線吸収剤としてはヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が多ければ多いほど好ましいため、上限としての制限はなく、100質量%であってもよい。
表面保護層において、樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。紫外線吸収剤の含有量が上記下限値以上であると、紫外線吸収剤を使用する効果、紫外線吸収性能による耐候性が十分に得られる。
表面保護層において、樹脂100質量部に対する紫外線吸収剤の含有量は、上限として好ましくは10質量部以下、より好ましくは9質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは7質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が上記上限値以下であると、紫外線吸収剤がブリードアウトしにくくなり、長期耐候性を向上させ、かつ外観の低下をより抑制することができ、また効率的に紫外線吸収性能による耐候性が得られる。
表面保護層は、一実施形態において、第1波長に吸収ピークを有する第1の紫外線吸収剤と、第1波長より長波長の第2波長に吸収ピークを有する第2の紫外線吸収剤と、第2波長より長波長の第3波長に吸収ピークを有する第3の紫外線吸収剤とを含有してもよい。各吸収ピークは、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定される吸光度スペクトルに基づく。このような構成により、本開示の化粧シートは、直射日光に曝される環境下で長期間に亘ってより良好に耐候性を維持できる。一実施形態において、表面保護層への粒子の添加により耐候性が低下することがあるところ、このような構成により、長期耐候性を向上できる。
第1の紫外線吸収剤は、第1波長に吸収ピークを有する。第1波長は、270nm以上300nm以下の範囲にあることが好ましく、270nm以上290nm以下の範囲にあることがより好ましく、270nm以上280nm以下の範囲にあることがさらに好ましい。
第2の紫外線吸収剤は、第2波長に吸収ピークを有する。第2波長は、310nm以上330nm以下の範囲にあることが好ましく、310nm以上325nm以下の範囲にあることがより好ましい。
第3の紫外線吸収剤は、第3波長に吸収ピークを有する。第3波長は、340nm以上370nm以下の範囲にあることが好ましく、345nm以上365nm以下の範囲にあることがより好ましい。
上記吸収ピークは、270nm以上380nm以下の波長域における最大吸収ピークを意味することが好ましい。例えば第1の紫外線吸収剤が上記波長域において複数の吸収ピークを有する場合、最大吸収ピークが270nm以上300nm以下の範囲にあることが好ましい。
第2波長と第1波長との差は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは55nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
第3波長と第2波長との差は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上であり、好ましくは60nm以下、より好ましくは55nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
第3波長と第1波長との差は、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは60nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは95nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
第1~第3の紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられ、耐候性に優れており吸光度の大きさ及び波長選択性の観点から、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、耐候性の観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的には、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び下記式で表される化合物が挙げられる。
一実施形態の表面保護層において、樹脂100質量部に対する、第1の紫外線吸収剤、第2の紫外線吸収剤、及び第3の紫外線吸収剤の合計含有量は、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。紫外線吸収剤の合計含有量が下限値以上であると、化粧シートの耐候性をさらに向上できる傾向にある。紫外線吸収剤の合計含有量が上限値以下であると、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できる傾向にある。
一実施形態の表面保護層において、樹脂100質量部に対する第1の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。これにより、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
一実施形態の表面保護層において、樹脂100質量部に対する第2の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは8質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。これにより、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
一実施形態の表面保護層において、樹脂100質量部に対する第3の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。これにより、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
表面保護層において、一実施形態において、第2の紫外線吸収剤の含有量が、第1の紫外線吸収剤の含有量より多く、且つ第3の紫外線吸収剤の含有量より多い。これにより、表面保護層が広範囲の波長を吸収することができ、例えば、耐候性をより向上できる傾向にある。
(その他の添加剤)
表面保護層形成用樹脂組成物は、上記樹脂成分及び紫外線吸収剤の他、例えば、光安定剤等の耐候剤、充填剤等の粒子、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、滑剤、溶剤等の添加剤を含有してもよい。表面保護層は、上記樹脂及び紫外線吸収剤の他、上記添加剤を含有してもよい。
上記添加剤の中でも、長期耐候性を向上させる観点から、光安定剤が好ましい。表面保護層に用い得る光安定剤は、上記基材層に用いられ得るものとして例示した光安定剤と同様である。
上記樹脂成分が紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂である場合、表面保護層形成用樹脂組成物は、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含有することが好ましい。該組成物がこれらの添加剤を含有することにより、紫外線硬化性樹脂の硬化が促進され、押込み深さが上記所定の範囲内となりやすくなる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができ、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
表面保護層は、粒子を含有することが好ましい。表面保護層が粒子を含有することにより、表面保護層のマット感(例えば艶消しによる意匠性)を向上できる。粒子を用いることで、表面保護層の耐擦傷性も向上する。
一方、表面保護層がシリカ等の粒子を含有する場合、該粒子を起点に、表面保護層に微細な割れが生じ、耐候性が低下することがある。この点について、化粧シートのエリクセン試験方法に準拠して測定される押込み深さが4.0mm以上という構成を採用することにより、このような微細な割れの発生を抑制することができる。すなわち、表面保護層が上記粒子を含有し、かつエリクセン試験方法による押込み深さが4.0mm以上であることにより、表面保護層のマット感と耐候性とを両立できる。
粒子としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の充填剤が挙げられるが、マット感の向上や、吸油量、粒子径、細孔容積等の材料設計の自由度が高く、所望に応じて性状を調整しやすいこと等を考慮すると、シリカが好ましい。
粒子の平均粒子径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限として好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、更に好ましくは10μm以下である。粒子の平均粒子径が下限値以上であると、表面保護層のマット感をより向上できる。粒子の平均粒子径が上限値以下であると、表面保護層からの粒子の脱落を抑制できる。
本開示において、平均粒子径は、化粧シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に選択した100個の粒子の非凝集体について測定した粒子径の平均値(算術(個数)平均径)を意味する。上記粒子径は、粒子の長軸径とする。
表面保護層に含まれる粒子の平均粒子径をA(μm)、表面保護層の厚さをB(μm)とすると、AとBとの比(A/B)は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上、特に好ましくは1.0以上であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下である。上記比が下限値以上であると、表面保護層のマット感をより向上できる。上記比が上限値以下であると、表面保護層からの粒子の脱落を抑制できる。
粒子の含有量は、表面保護層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、上限として好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。粒子の含有量が上記範囲内であると、効率的に表面保護層のマット感、耐擦傷性を向上させることができ、また表面保護層形成用樹脂組成物のチキソ性が良好となり、塗布性能が向上する。
粒子の含有量は、表面保護層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、上限として好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。粒子の含有量が上記範囲内であると、効率的に表面保護層のマット感、耐擦傷性を向上させることができ、また表面保護層からの粒子の脱落を抑制できる。
表面保護層の厚さは、押込み深さの調整のしやすさ、押込み深さを調整することで、ブリードアウトを抑制し、長期耐候性の低下を抑制し、かつ外観の低下を抑制し得ることを考慮すると、好ましくは1.5μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下、更に好ましくは3μm以上10μm以下である。また、表面保護層の厚さが上記範囲内であると、耐擦傷性、マット感、耐候性、耐汚染性等の表面特性がバランスよく向上する。
〔その他の層〕
既述のように、本実施形態の化粧シートは、基材層及び表面保護層の他、プライマー層、透明性樹脂層、装飾層、また接着層等のその他の層を有し得る。以下、本実施形態の化粧シートが好ましく有し得る、これらのその他の層について説明する。
(プライマー層)
本実施形態の化粧シートは、表面保護層の基材層側の面に接してプライマー層を有することが好ましい。化粧シートがプライマー層を有することにより、基材層と表面保護層との密着性、また化粧シートが後述する透明性樹脂層を有する場合は、透明性樹脂層と表面保護層との密着性、が向上する。
これらの層間密着性が向上すると、例えば本実施形態の化粧シートを屋外で用いるような場合に、日射等による層間剥離が生じにくくなり、化粧シートの劣化がより抑制される。また、プライマー層が紫外線吸収剤を含有する場合、長期耐候性が向上し得る。
プライマー層は、例えば、樹脂を含有する。
プライマー層を構成する樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体(ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端、側鎖に2個以上の水酸基を有する重合体(ポリカーボネートポリオール)由来のウレタン-アクリル共重合体)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の樹脂成分が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
プライマー層に含まれる樹脂は、これら樹脂成分に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加し、架橋硬化した硬化樹脂であってもよい。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂等のポリオール系樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化した硬化樹脂が好ましく、アクリルポリオール樹脂をイソシアネート系硬化剤で架橋硬化した硬化樹脂がより好ましい。
プライマー層は、例えば、主として樹脂成分から構成されるプライマー層形成用樹脂組成物により形成される。プライマー層は、上記樹脂に加えて、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。すなわちプライマー層は、樹脂成分及び添加剤を含有する樹脂組成物により形成されるものであってもよい。
プライマー層に用い得る紫外線吸収剤は、上記表面保護層に用い得る紫外線吸収剤と同様であり、表面保護層と同様に、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。プライマー層に用い得る光安定剤は、上記基材層に用いられ得るものとして例示した光安定剤と同様である。
紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~25質量部、更に好ましくは3~20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に耐候性が得られる。
プライマー層の厚さは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上8μm以下である。プライマー層の厚さが上記範囲内であると、プライマー層を設ける効果、すなわち層間密着性が効率的に得られる。また、化粧シートの押込み深さの調整もしやすくなる。
化粧シートは、基材層の表面保護層とは反対側に、被着材との接着性を向上することなどを目的として、裏面プライマー層を有してもよい。
(透明性樹脂層)
本実施形態の化粧シートは、強度を高めるなどの観点から、基材層と表面保護層との間に透明性樹脂層を有してもよい。化粧シートが透明性樹脂層を有することにより、化粧シートの押込み深さの調整がしやすくなる。
化粧シートが透明性樹脂層を有する場合、透明性樹脂層は、基材層とプライマー層との間に位置することが好ましい。化粧シートが装飾層を有する場合、装飾層の保護の観点から、透明性樹脂層は、装飾層と表面保護層との間に位置することが好ましい。
透明性樹脂層を構成する樹脂としては、上記基材層のプラスチックシートを構成する樹脂として例示した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。これらの中でも、押込み深さの調整のしやすさを考慮すると、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂が好ましいことも、上記基材層と同様である。
透明性樹脂層は、上記熱可塑性樹脂を混合してもよく、上記熱可塑性樹脂を1種単独で又は2種以上を組み合わせた樹脂層であってもよい。
透明性樹脂層中のポリオレフィン樹脂の含有量は、押込み深さの調整のしやすさを考慮すると、透明性樹脂層の全樹脂に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
透明性樹脂層は、透明性樹脂層よりも基材側を視認できる程度に透明であればよく、また装飾層を有する場合は当該装飾層を視認できる程度に透明であればよく、無色透明の他、着色透明及び半透明であってもよい。すなわち、本明細書において、「透明性」とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むことを意味する。
透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤、また着色剤等の添加剤を含有してもよい。透明性樹脂層に用い得る紫外線吸収剤は、上記表面保護層に用い得る紫外線吸収剤と同様であり、表面保護層と同様に、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。透明性樹脂層に用い得る光安定剤は、上記基材層に用いられ得るものとして例示した光安定剤と同様であり、着色剤も、上記基材層に用いられ得るものとして例示した着色剤と同様である。
紫外線吸収剤の含有量は、透明性樹脂層の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5~40質量部、より好ましくは1~30質量部、更に好ましくは5~25質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に耐候性が得られる。紫外線吸収剤の含有量の下限値は、0.1質量部であってもよい。
透明性樹脂層の厚さは、好ましくは20μm以上150μm以下、より好ましくは40μm以上120μm以下、更に好ましくは50μm以上100μm以下である。透明性樹脂層の厚さが上記範囲内であると、押込み深さを調整しやすく、透明性樹脂層の効果、すなわち化粧シ-トの強度を高め、また装飾層を有する場合は装飾層の保護の効果が効率的に得られる。また、透明性樹脂層が紫外線吸収剤を含有する場合は、効率的に耐候性を向上させることができる。
(装飾層)
本実施形態の化粧シートは、意匠性を向上させる観点から、化粧シートの任意の箇所に装飾層を有することが好ましい。装飾層を形成する箇所は、装飾層を保護する観点から、基材層に近い側であることが好ましい。例えば、化粧シートがプライマー層を有する場合、装飾層は、基材層とプライマー層との間に位置することが好ましい。また、化粧シートが透明性樹脂層を有する場合、装飾層は、基材層と透明性樹脂層との間に位置することが好ましい。
装飾層は、例えば、全面を被覆する着色層(いわゆるベタ着色層)であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよく、着色層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。
絵柄層の絵柄(模様)としては、木材板表面の年輪や導管溝等の木目柄、大理石、花崗岩等の石板表面の石目柄、布帛表面の布目柄、皮革表面の皮シボ柄、幾何学模様、文字、図形、またこれらを組み合わせたものであってもよい。
装飾層に用いられるインキとしては、樹脂成分に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜混合した樹脂組成物が使用される。
装飾層を構成する樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂が挙げられる。また、1液硬化型樹脂、イソシアネート化合物等の硬化剤を伴う2液硬化型樹脂など、種々のタイプの樹脂を用いることができる。
着色剤としては、隠蔽性及び耐候性に優れる顔料が好ましい。顔料は基材層で例示したものと同様のものを用いることができる。着色剤の含有量は、装飾層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上70質量部以下がさらに好ましい。
装飾層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤等の添加剤を含有してもよい。
装飾層に用い得る紫外線吸収剤は、上記表面保護層に用い得る紫外線吸収剤と同様であり、表面保護層と同様に、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。透明性樹脂層に用い得る光安定剤は、上記基材層に用いられ得るものとして例示した光安定剤と同様である。
紫外線吸収剤の含有量は、装飾層の樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~25質量部、更に好ましくは3~20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に耐候性が得られる。
装飾層の厚さは、所望の絵柄に応じて適宜選択すればよいが、被着材の地色を隠蔽し、かつ意匠性を向上させる観点から、好ましくは0.5μm以上20μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、更に好ましくは2μm以上5μm以下である。
(接着層)
本実施形態の化粧シートが上記透明性樹脂層を有する場合、基材層と透明性樹脂層との間には、両層の密着性を向上するために接着層を形成することが好ましい。
化粧シートが、基材層と透明性樹脂層との間に、さらに装飾層を有する場合、接着層と装飾層との位置関係は特に限定されず、化粧シートは、例えば基材層に近い側から装飾層、接着層及び透明性樹脂層をこの順に有してもよいし、基材層に近い側から接着層、装飾層及び透明性樹脂層をこの順に有してもよい。
接着層は、例えば、接着剤層でもよい。接着層は、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等の汎用の接着剤から構成することができる。これら接着剤の中でも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。
ウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、イソシアネート化合物等の硬化剤とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。
接着層の厚さは、効率よく所望の接着力を得る観点から、好ましくは0.1μm以上30μm以下、より好ましくは1μm以上15μm以下、更に好ましくは2μm以上10μm以下である。
〔化粧シートの製造方法〕
本実施形態の化粧シートの製造方法について、図2に示される、基材層60上に、装飾層50、接着層40、透明性樹脂層30、プライマー層20及び表面保護層10を有する化粧シートを例にとって説明する。
図2に示される化粧シートは、基材上に装飾層を設ける装飾層形成工程、接着層を設ける接着層形成工程、透明性樹脂層を設ける透明性樹脂層形成工程、プライマー層を設けるプライマー層形成工程、及び表面保護層を設ける表面保護層形成工程を順に有する製造方法により製造することができる。化粧シートに接着層を設ける場合、例えば上記装飾層形成工程の後、かつ透明性樹脂層形成工程の前に、接着層形成工程を行えばよい。
装飾層形成工程、接着層形成工程、プライマー層形成工程及び表面保護層形成工程は、既述の各層形成用の樹脂組成物(接着層は接着剤)を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することにより形成することができる。
硬化については、例えば表面保護層を例にとる。
表面保護層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂成分が熱硬化性樹脂である場合は、熱硬化性樹脂の種類に応じた加熱条件で加熱して硬化させて、表面保護層を形成することができる。
表面保護層形成用樹脂組成物に含まれる樹脂成分が電離放射線硬化性樹脂である場合は、電離放射線の照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~200kGy(1~20Mrad)の範囲で選定される。電子線源としては、特に制限はなく、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光を照射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈が用いられる。
透明性樹脂層は、透明性樹脂層を形成する樹脂組成物を加熱溶融押出しすることにより、また透明性樹脂層を形成する樹脂シートをドライラミネートの方法で貼り合わせることにより、形成することができる。
例えば、上記装飾層形成工程により装飾層を形成し、接着層形成工程により接着層を形成した後、基材層、装飾層及び接着層を有する積層体上に、透明性樹脂層を形成する樹脂層性物を加熱溶融押出により積層させる、あるいは、基材層、装飾層及び接着層を有する積層体と、透明性樹脂層を形成する樹脂シートとをドライラミネートして積層させて、基材層、装飾層、接着層及び透明性樹脂層を有する積層体を形成すればよい。その後、透明性樹脂層上に、プライマー層形成用樹脂組成物を塗布して、必要に応じて硬化させてプライマー層を形成し、さらに表面保護層形成用樹脂組成物を塗布し、必要に応じて硬化させて表面保護層を形成することで、基材層上に、装飾層、接着層、透明性樹脂層、プライマー層及び表面保護層を有する化粧シートが得られる。
本実施形態の化粧シートには、エンボス加工等で所望の凹凸形状(凹凸模様ともいう)を付与(賦形ともいう)してもよい。エンボス加工を行う場合、例えば、化粧シートを好ましくは80℃以上260℃以下、より好ましくは85℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上180℃以下に加熱し、化粧シートにエンボス版を押圧して、エンボス加工を行うことができる。エンボス版を押圧する箇所は、化粧シートの表面保護層側とすることが好ましい。
[化粧部材]
本実施形態の化粧部材は、被着材と上記の本実施形態の化粧シートとを有し、具体的には、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材層側の面とを対向させて積層したものである。
(被着材)
被着材としては、例えば、後述する各種素材からなる平板、曲面板等の板材;後述する各種素材からなる円柱、多角柱等の立体形状物品;後述する各種素材からなるシート、フィルムが挙げられる。
各種素材としては、例えば、杉、檜、松、ラワン等の各種木材からなる木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の木質部材;鉄、アルミニウム、銅、或いはこれら金属の1種以上を含む合金等の金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、珪酸カルシウム系等の非セラミックス窯業系材料等の窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム等の樹脂部材が挙げられる。これらの素材は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
被着材は、上記の中から用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、壁、天井、床等の建築物の内装部材又は外装部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材を用途とする場合は、木質部材、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものを被着材とすることが好ましい。玄関ドア等の外装部材、窓枠、扉等の建具を用途とする場合は、金属部材及び樹脂部材から選ばれる少なくとも一種の部材からなるものを被着材とすることが好ましい。
被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、0.1mm以上100mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
(接着剤層)
被着材と化粧シートとは、優れた接着性を得るため、接着剤層を介して貼着されることが好ましい。すなわち化粧部材は、被着材と化粧シートとの間に、接着剤層を有してもよい。
接着剤層を構成する接着剤としては、汎用の感熱接着剤、感圧接着剤等を使用することができる。接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合体、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含むものが挙げられる。接着剤層を構成する接着剤としては、イソシアネート化合物等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤も挙げられる。
接着剤層の厚さは特に制限はないが、優れた接着性を効率的に得る観点から、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上30μm以下が更に好ましい。
(化粧部材の製造方法)
化粧部材は、化粧シートと被着材とを積層する工程を経て製造することができる。
本工程は、被着材と、本開示の化粧シートとを積層する工程であり、被着材の装飾を要する面と、化粧シートの基材層側の面とを対向させて積層する。被着材と化粧シートとを積層する方法としては、例えば、接着剤層を介して化粧シートを板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法が挙げられる。
接着剤としてホットメルト接着剤(感熱接着剤)を用いる場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は160℃以上200℃以下が好ましく、反応性ホットメルト接着剤では100℃以上130℃以下が好ましい。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、80℃以上130℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上120℃以下である。
以上のようにして得られる化粧部材は、任意に切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材の他、キッチン、家具又は家電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装部材、外装部材等に用いることができる。
本開示は、例えば以下の[1]~[10]に関する。
[1]基材層及び表面保護層を有し、表面保護層が、樹脂、紫外線吸収剤及び粒子を含有し、JIS Z2247:2006に規定されるエリクセン試験方法に準拠して測定される押込み深さが、4.0mm以上である、化粧シート。
[2]基材層が、ポリオレフィン樹脂を含有する、上記[1]に記載の化粧シート。
[3]基材層の厚さが、40μm以上100μm以下である、上記[1]又は[2]に記載の化粧シート。
[4]表面保護層における上記樹脂が、官能基数2以上の電離放射線硬化性樹脂の硬化樹脂を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の化粧シート。
[5]表面保護層における上記樹脂が、重量平均分子量が1,100以上7,500以下の電離放射線硬化性樹脂の硬化樹脂を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の化粧シート。
[6]紫外線吸収剤が、一般式(1)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の化粧シート。
(一般式(1)中、R
11は単結合又は2価の有機基であり、R
12は炭化水素基、-C(=O)OR
15で示されるエステル基、-O-C(=O)R
16で示されるアシルオキシ基又は-OR
17で示されるアルコキシ基であり、R
13、R
14、R
15、R
16及びR
17は各々独立して1価の有機基であり、n
11及びn
12は各々独立して0~5の整数である。)
[7]紫外線吸収剤が、下記化学式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物A及び下記化学式(3)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Bを含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の化粧シート。
[8]紫外線吸収剤が、下記化学式(2)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物A及び下記化学式(4)で示されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物Cを含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の化粧シート。
[9]基材層と表面保護層との間に、装飾層、接着層、透明性樹脂層及びプライマー層から選ばれる一以上の層を有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の化粧シート。
[10]被着材と、上記[1]~[9]のいずれかに記載の化粧シートと、を有する化粧部材。
次に、本開示の化粧シートを実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示の化粧シートは、これらの例によってなんら限定されない。
[評価及び測定方法]
(押込み深さの測定)
各実施例及び比較例で得られた化粧シート(寸法:100mm×100mm)について、エリクセン試験機(東洋精機製)を用いて球状のパンチ(直径:20mm)を基材層側から、移動速度12mm/minで、一定の押込み深さで押し込んだ。その状態で、表面保護層に白マーカーを塗布した。その後化粧シートを取り出し、平らな状態で白マーカーをふき取った後、マイクロスコープ(光学顕微鏡、500倍)で表面保護層の表面を観察し、微細割れの発生した際のパンチの移動距離を押し込み深さ(mm)とした。表面保護層に割れが発生していると、当該割れている部分にのみ白マーカーが残るため、割れの発生の有無を確認できる。
(長期耐候性の評価)
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、サンシャインウェザーメーター(「WEL-300」、スガ試験機株式会社製)を用いて、ブラックパネル温度63℃、120分(120分中18分降雨)を1サイクルとする条件下で4000時間放置する耐候試験を行った。耐候試験の前及び後に、化粧シートの表面保護層側の面について、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS K 5600-4-7:1999に準拠して60°グロス値を測定した。
1:耐候試験前後のグロス値の変化率が20%未満であった。
2:耐候試験前後のグロス値の変化率が20%以上40%未満であった。
3:耐候試験前後のグロス値の変化率が40%以上であった。
(傷や割れの発生に関する評価)
平らなアルミニウム板(厚さ:0.5mm)の表面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して化粧シートの基材層側の面を貼り合わせた。2液硬化型ウレタン系接着剤の塗布量は、20g/m2とした。得られた試験片を曲げ試験機を用いて曲げ角度:1mmRで曲げて、その曲げ部分(曲げ角度:1mmR)を目視、又はマイクロスコープ(光学顕微鏡、500倍)で観察したときの、傷や割れの発生状況について、以下の基準で評価した。1及び2であれば合格である。
1:マイクロスコープを用いても、傷や割れは全く確認されなかった。
2:目視にて傷や割れは確認されなかったが、
マイクロスコープを用いて観察したところ、極わずかな傷や割れが確認された。
3:目視にて傷や割れが確認された。
(外観の評価)
各実施例及び比較例で得られた化粧シートについて、表面保護層側の面を、100g/m2の荷重でスチールウール(「ボンスター#0000」、日本スチールウール社製)を20往復させて、ラビング試験を行った。ラビング試験の前及び後に、グロスメータ(「マイクログロス(機種名)」、BYKガードナー社製)を用いて、JIS K 5600-4-7:1999に準拠して60°グロス値を測定した。ラビング試験前のグロス値をG0、ラビング試験後のグロス値をG1とし、ラビング試験前後のグロス値の変化率(G0-G1)/G0(%)を算出した。1及び2であれば合格である。
1:グロス値の変化率が10%未満であった。
2:グロス値の変化率が10%以上20%未満であった。
3:グロス値の変化率が20%以上であった。
(実施例1)
両面コロナ放電処理を施した厚さ60μmのポリプロピレン樹脂シートを基材層として準備した。基材層の一方の面に、樹脂成分である2液硬化型アクリル-ウレタン樹脂100質量部に対して、着色剤を30質量部含有する印刷インキを、グラビア印刷法で塗布して、木目模様の厚さ3μmの装飾層を設けた。次いで、装飾層上に、ウレタン樹脂系接着剤を用いて厚さ3μmの接着層を形成した。
ポリプロピレン樹脂100質量部に対してヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(商品名:TINUVIN400、BASF社)を0.12質量部含有する、透明なポリプロピレン樹脂組成物を調製した。接着層の上に、透明なポリプロピレン樹脂組成物をTダイ押出機により加熱溶融押出しして、厚さ80μmの透明性樹脂層を形成した。
次いで、透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、下記のプライマー層形成用樹脂組成物を塗布、乾燥し、厚さ4μmのプライマー層を形成し、さらに下記の表面保護層形成用組成物を塗布し、電子線を照射して表面保護層形成用組成物を架橋硬化させることにより、厚さ5μmの表面保護層を形成した。
以上のようにして、実施例1の化粧シートを得た。
得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
(プライマー層形成用樹脂組成物)
・(主剤)ポリカーボネート系ウレタン-アクリル共重合体及びアクリルポリオール樹脂を含有する組成物: 100質量部
・(硬化剤)ヘキサメチレンジイソシアネート: 5質量部
(表面保護層形成用樹脂組成物)
・電離放射線硬化性樹脂: 100質量部
(2官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量:4,000)
・充填剤: 20質量部
(シリカ粒子、平均粒子径:5μm)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤: 3質量部
(商品名:TINUVIN479、BASF社)
・光安定剤: 3質量部
(商品名:TINUVIN123、BASF社)
(実施例2)
実施例1において、表面保護層形成用樹脂組成物における電離放射線硬化性樹脂を、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:2,000)に変更した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、表面保護層形成用樹脂組成物における電離放射線硬化性樹脂を、3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:2,000)に変更した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、表面保護層形成用樹脂組成物における充填剤の配合量を30質量部に変更した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4において、表面保護層形成用樹脂組成物における紫外線吸収剤を以下のとおり変更した以外は実施例4と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
・第1の紫外線吸収剤 0.5質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、
商品名:アデカスタブLA-46、ADEKA社、
吸収ピークの波長:275nm
・第2の紫外線吸収剤 3質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、
商品名:TINUVIN479、BASF社、
吸収ピークの波長:322nm
・第3の紫外線吸収剤 0.5質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、
商品名:TINUVIN477、BASF社、
吸収ピークの波長:356nm
(比較例1)
実施例1において、表面保護層形成用樹脂組成物における電離放射線硬化性樹脂を、2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:1,000)に変更した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、表面保護層形成用樹脂組成物における電離放射線硬化性樹脂を、熱硬化性樹脂(アクリルポリオール樹脂を主剤、ポリイソシアネートを硬化剤としたイソシアネート硬化型アクリル系樹脂組成物(ポリイソシアネート添加量:主剤(アクリルポリオール樹脂)に対して10重量部))とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製した。表1に記載の官能基数及び重量平均分子量は。アクリルポリオール樹脂についての値である。得られた化粧シートについて、上記評価を行った。その結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例1~5の化粧シートは、押込み深さが各々7mm、5mm、6mmと、4mm以上であり、傷や割れの評価、及び外観の評価のいずれにも優れていることが確認された。実施例1~5の化粧シートは、傷や割れが発生しにくいことから、ブリードアウトの抑制に優れるとともに、長期耐候性にも優れることが分かる。
他方、比較例1及び2の化粧シートは、押込み深さがいずれも3mmと、4mm未満であるため、傷や割れの評価及び外観の評価がいずれも劣ることが確認された。また、比較例1及び2の化粧シートは、傷や割れの発生によりブリードアウトが生じやすくなるため、長期耐候性が低下することが分かる。